幹事クリタのコーカイ日誌2003

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8月16日 ● 奨学金返還完了。

 日本育英会から借りていた奨学金を今年の夏で無事返還完了しました。卒業してから20年にわたって返してきたものがやっと終わって、一区切りついた気分です。

 僕は高校でも大学でも奨学金を貸与されていました。大学はさほど珍しくないのですが、高校時代に育英会の奨学金を借りていた学生は少ないと思います。今回返し終わったのも高校の分で、大学は卒業後12年で返すことになっているので、もう8年前に返還を完了しています。

 僕たちの中学の進路指導を当時担当していたH先生は、自ら働いて貯めたお金で苦学して教師になったという人だったので、高校進学時にあるレベル以上の成績の生徒には、みな奨学金を借りるように勧めました。

 もちろん中には親の収入が多くて対象外の生徒もいましたし、また年収が低くても「高校くらい自分たちで行かせてやれる、余計なことをするな」と怒った親もいたようです。しかし学校は親に行かせてもらうものではなく、自分の意志で行くものだし、その学費も極力自分で払うべきだ、という信念を持っているH先生は、粘り強く親に奨学金を受けるように勧めていました。

 我が家は貧乏だったので、もちろん「貰えるものは貰っておけ」(貰えるのではなく借りるんですけどね)と喜んで手続きをしました。結局学年で240人くらいいたのですが、20人近くは奨学金を受けることになったと思います。

 これがいかに割合として多いかということが後になってわかりました。高校入学後、奨学金を受けている生徒と高校の校長との会食会が行われました。苦労している貧乏な家の生徒を校長先生が励まそうという、我々にしてみれば「余計なお世話」という企画です。「同情するなら金をくれ」という名言はまだ当時ありませんでしたが、ほとんどそういう気分でした。

 で、新入生450人中奨学金を受けていた生徒は7人。進学校ですから成績面では誰でも有資格者だったはずです。すでに随分少ないなという感じですが、その7人のうち我々の中学出身者がなんと4人を占めていたのです。僕たちの中学からこの高校に入学したのも7人。その半数以上が奨学金をもらっていたのに、他校から来た残り443人中3人しか奨学金を受けていなかったという事実に僕たちはビックリしました。これでは我々の中学は貧民街にあるのか、という感じです。もちろん、これはH先生の尽力の賜物です。

 僕はH先生の考えには同感ですし、実際家も貧乏だったので高校から奨学金を受けられたことには大いに感謝しています。育英会の奨学金は無利息。しかも僕のような特別貸与奨学生は2割ほど返還額を免除してもらえるので、返還総額は今となっては一括で返すことだってできる程度の金額なのですが、僕は敢えて毎年こつこつと返し続けました。これは毎年返すことで、いつまでも当時の感謝の気持ちを忘れたくなかったからです。決してケチだからではありません。

 結果として高校から僕は自分の学費は自分で払ったことになりました。もちろん大学の学費も自分でアルバイトと奨学金で払いました。親に経済的な負担をかけずに学校を卒業でき、H先生の教えをきちんと守ることができたわけです。もっとも家が貧乏だったから仕方なくそうしただけで、本当は東京の私大でブイブイ言わせたかったんですけどね。誰が10代で好きこのんで苦学したいものでしょうか。H先生の教えに共感を抱いているのは、もちろん今や親になった僕です。教育費にお金かけるくらいなら、自分が遊びに使いたいと思ってしまうタイプなので。


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