サークルのメンバーの間で、それぞれの業界で使われる「業界用語」のことが話題になりました。我々のサークルは実に様々な業種のメンバーが集まっています。広告、証券、生保、銀行、自動車、電機、通信、機械、住宅、製薬、旅行、製菓、不動産などなど、本当に多彩なメンバーなので、業界用語もいろいろ集まって楽しいです。

　ただ、いざ自分が広告業界用語を披露しようと思ったら、意外に難しいことに気づきました。と言うのも、長年そこにいると、なにが業界用語なのかわからなくなってしまうからです。特に広告業界の言葉というのは、テレビや新聞、印刷などの業界用語も入り混じっているので、ますます混沌としてきます。

　これで思い出したのが新入社員時代、東京で研修中に「クリタ、名古屋弁を喋ってみろよ」と言われた時のこと。僕は生粋の名古屋人ですから、もちろん名古屋弁も自在に操ることができるはずなのですが、いざそうやって話せと言われるとなかなか言葉が出てこないのです。

　いつも平気で話しているだけに、かえってどれが名古屋弁でどれがそうでないのかわからなくなっていたのです。しかも、同じように名古屋弁を話す相手がいればモードが切り替えられるのですが、周りが全て他の地方の出身者という時は、うまく名古屋弁モードに切り替わらないことも発見しました。

　さらに中学の同窓会なんかに行くと、今度は「クリタ、なんでそんな気取った言葉しゃべっとるんだぁ、名古屋弁しゃべれんくなってまったんかぁ？」と責められます。どうやら名古屋弁機能が弱体化しつつあるようで、ずっと地元で暮らしている同級生から見ると、まるで整形で白人になろうとしているマイケル・ジャクソンを見るかのようなのです。

　言葉は生き物です。自分自身の言葉すらうつろっていくのに、日本語全体が変化していくのを無理にとどめようとしても難しいだろうなと思います。それでも職業柄、なるべく正統な日本語を使いたいとは願っていますが。