幹事クリタのコーカイ日誌2001

 
 7月26日 ● キャッチフレーズだけの男。

 先日会社の同僚コピーライターMっちゃんが、「『パールハーバー』なんて、許せないと思うんだよね」と言うので、「おおっ、いきなりそんな発言をするなんて、何かまた読んで影響されたの?」と聞いたら「いや、何となく思ったんだけど」と言うので、具体的にどういう意味で許せないのか、と尋ねたら「別にそんな深い意味はないけど、ラブロマンスの映画のダシに戦争を使うなんて、何となくおかしいかなと思って」とのこと。さらにいろいろ突っ込んで聞いてみても、「作る会」や小林よりのりに影響されたわけでもなく、本当に単純に戦争映画とラブストーリーの合体に腹を立てているだけのようでした。

 これはMっちゃんのよくある発言パターンのひとつです。どうも「何となく知っているようなこと言ってみたい」という欲求が強いようなのです。会話の中で、ちょっとわかっているようなことを言って気を引きたい、という時に、ジャンルを問わずMっちゃんはこの手の発言をします。「日本ってさ、2つの選択肢がある時に常に間違った方を選ぶと思わない?」と言ったのは先の自民党総裁選で橋本龍太郎が小泉純一郎に勝ちそうだ、と言われている時でした。

 もちろん僕たちはそんな時ばかりではないし、欧米諸国だって間違った選択をすることもあるはずだ、と言ったのですが、Mっちゃんは橋龍が嫌いなので、彼が勝ちそうだというだけで、先のような法則を主張するのです。結果はご存知のようにMっちゃんの予想とは裏腹に日本で小泉が勝ち、逆にアメリカでは賢そうなゴアよりもお間抜けなブッシュが勝ったのですが、これもつまるところ政治について詳しくはないけど、とりあえず気を引くような発言をしてみただけなのでした。

 「結局Mっちゃんってさ、10秒で語るキャッチフレーズだけの男だよね。ボディコピーは何もないけど、いかにももっと深い部分がありそうに思わせようとしているわけだ」と僕が指摘したら、「そうなんだよねぇ、いやぁ、クリタさんに言われて自分のことがよくわかったよ。本当に中身はないんだけど、ありそうに見せているんだな」って、自分でそこまで言うか、というくらい素直に感心していました。こちらは誉めているつもりはないのですが、本人に感心されてしまうと、まるで長所を言ってあげたのか、と思ってしまいそうです。

 Mっちゃん曰く、深いところまで突っ込んでくる人間は、深い知識を持っているからこそ突っ込んでくるわけで、合コンではそんな奴はいないからキャッチフレーズだけ言っていれば賢そうに見える、とのこと。確かにMっちゃんに引っかかるくらいなのですから、賢くはないのでしょう。また女の子だけではなく、仕事でもそうやってハッタリかませた方が、知っているのに黙っているタイプよりもとりあえずはクライアント受けするかも知れません。ただし、付き合いが深くなるにつれて化けの皮がはがれて、女の子からもクライアントからも信頼を失っていきそうですが。

 良く知りもしないのに偉そうなことを言う、というMっちゃんの癖は恐らく一生抜けないだろうと思いますが、それでも「あいつ、知ったかぶりやがって」とあまり言われないのは、Mっちゃん自身は知ったかぶりをしている訳ではなく、本当にそう信じて言っているからです。見栄を張っている訳ではなく、素直に自分で思いついた「Mっちゃんの法則」を主張するから、周りから笑って見逃してもらえるのでしょう。ま、これもひとつの人徳というものかも知れませんね。


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