たまに仕事でモデルさんのオーディションに立ち合うことがあります、と言うと、広告にあまり関わったことがない人は「へー、すごい」とか「楽しそう」「羨ましい」なんて思われるようですが、これが実際にやってみると結構面倒なものです。

　なにせあくまでも仕事ですから、私情を挟んでも後で自分の首を絞めるだけ。極力クールにビジネスライクに好き嫌いを排除して決定します。もちろんドラマやマンガにあるようなセクハラまがいのことはしませんし、いわんや「それなりのことを俺にしてくれれば、考えてやらないでもないぞ、へへへ」なんてことは全然ありません。いや、世の中なにがあるかわからないので、全く皆無とは言い切れませんが、少なくとも僕のような「非実力者」にはあり得ません。断言できます。なんか書いてて哀しいなぁ。

　モデルさんのオーディションをしていて思い出すのは、会社の採用面接官をした時のことです。これも全く似たような状況で、緊張して自己アピールする相手を、値踏みするように観察する自分。こちらの胸ひとつで相手の仕事が決まると思うと、かえってその責任の重さにうんざりしてしまいます。

　大袈裟に言えば生殺与奪の権利を握っているというこうした状況を、なかには喜ぶ人もいると思います。相手が自分に気に入られようと努力している姿は、ある種の快感があることでしょうし、また逆の立場に立たされたら、面接官の持っている力を羨ましいと思うかも知れません。しかし、僕のように他人の人生まで責任持てないよ、なんて思っている人間には、これはうざったいだけです。

　と言うことで、昨日のオーディションも随分迷いました。あの子もいいけど、こっちの子も悪くないし、でもイメージ的にはこっちでしょ、いや、あっちの子の方がインパクトが強い、うーん、無難な方がいいんじゃないの、なんて議論をカメラマンやアートディレクターと戦わせて、ようやく1人に絞り込みました。結局決まったのは、一番声のでかかった人が一番好みだった子です。ま、綺麗事もいいますが、世の中そんなもんです。ちなみに僕は議論すると結構声がでかい方です。

　

---

とりあえず、読むたびに（１日１回）

を押してください。 日記猿人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。

この日記をマイ日記猿人に登録してみる