哀  歌 (M&I)

川 嶋 哲 郎 (2008/7/16,17)

哀歌


【パーソネル】

川嶋哲郎 (ts) 田中信正 (p) 安田幸司 (b) 長谷川学 (ds)
【収録曲】

(01-03) 哀歌 / YOU MUST BELIEVE IN SPRING / VEGA
(04-06) MAELSTROM / SOMBRE DIMANCHE / EASY LIVING
(07-08) RUN WAY / GAIVOTA
(09-10) MAI-KAI? / UP STREAM
【解説】 ( 2012年08月19日更新 / 連載 1,043回 )

 8月11〜13日という日程で、天竜峡と八ヶ岳の山麓あたりに行ってきました。 事前の予報によると、期間中のお天気はずーっと 「曇時々雨」 とか 「曇のち雨」 とか、そんな感じ。 梅雨明けしてこの方、ずーっと雨の心配などしなくてもよい日々が続いていたというのに、何の嫌がらせっすかぁ? やはり 「土建屋の呪い」 っすかね? 土日返上で頑張って仕事しようとしているのに、現場監督がサボって遊びに行く気満々だったりすれば (← 前回ネタ 参照) 、嫌がらせの1つや2つもしたくなりますよね、そりゃ。 ただ、同じ嫌がらせをするにしても、めっちゃ嫌な柄のパンツの詰め合わせ、 「嫌柄セット」 を送り付けてくるとか、そういう嫌がらせにしてくれればいいものの、よりによって雨乞いっすか。 外の現場でタイルを貼ったりモルタルを塗ったりする、とってもお盛んな左官屋の仕事なので、雨が降ったら自分たちも嫌だと思うんですが、前日に足場を組んで仮設の屋根をしつらえたりして、もう、ヤル気満々。 その熱意にほだされて、朝、30分だけ現場に顔を出してすぐに抜け出す気満々だった僕も、心を入れ替えることにしました。 1時間くらいは頑張ってみよう。 そんな気持ちにさせられました。 とりあえず、材料搬入と作業中の写真さえ何枚か撮ってしまえば、それで現場監督としての任務を果たすことが出来るんですが、後は盆休み明けにでもゆっくり 「作業完了」 の写真を撮れば完璧っすよね。 が、1時間粘ってみても 「作業中」 と呼べるような仕事には取り掛かってくれなくて、左官屋のオッサン曰く、 「準備だけで昼までは掛かるな。」 との事だったので、仕方なく現場を一旦離れて会社に行って、適当に書類でも作って時間を潰して、昼からまた現場に戻る。 そういう方向で手を打つことにしました。 どうやら初日は宿への移動だけで終わってしまいそうなですが、昼過ぎから猛烈な雨が降り出して、とても観光どころではなさそうな状況だったので、ま、諦めは付きましたけどね。 午後3時、 「階段部分タイル貼り、モルタル仕上げ状況」 という、立派な作品を撮ることが出来たので、 「じゃ、後はヨロシクぅ〜!」 と左官屋のオッサンに挨拶して、作業服から私服に着替えて、さ、いよいよ至福の旅の始まりっす♪

 午後6時前、 「静かな渓谷の隠れ宿峡泉」 に到着〜。 宿ネタに関してはそのうち、しかるべき専用コーナーで取り上げることにして、で、次の日の朝、9時に旅館を出発〜。 この日は終日、 八ヶ岳ジャズフェスティバル の鑑賞。 そういう予定になっております。 会場は野外なんですが、さすがの土建屋もここまでは仮設の屋根をしつらえてくれてはいなくて、お天気のほうがとっても心配だったんですが、事前の予報が悪いほうに外れてくれて、何とか夕方までは雨に降られずに済みそうな気配。 諸般の事情により、16:40開始の “本田竹広トリビュートスペシャルグループ” 以降は捨てて会場から立ち去る予定なので、16時半まで持ってくれれば御の字なんですが、ちなみに宿泊地の天竜峡温泉からジャズフェス会場の小淵沢までは中央道を走って2時間弱といったところでしょうか? 直行すれば11時開始の1stステージに何とか間に合いそうなんですが、そんなに積極的に見たいというワケでもないし、せっかく天竜峡温泉に泊まったんだから、少しくらいは天竜峡を散策をしないと天龍源一郎に申し訳ないし、ま、個人的には天龍よりも長州力派だったりするんですが、何故かというと、長州とチャーシューって、ちょっと似てるよね? …という、それだけの理由なんですけど。チャーシュー、美味しいしー。 で、とりあえず この遊歩道 を反時計回りに遊歩してみることにしました。


< 天竜峡 > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

  思ったよりもアップダウンが激しくて、ちょっと大変だったんですが、いや、確かにこれは “峡” っすな。  “峡” とは、両側に山が迫っている所。山と山の間。 そういう意味なんだそうですが、で、山と山との間が谷になっていると “峡谷(きょうこく)” ということになります。 よく似たのに “渓谷(けいこく)” というのもあるんですが、渓谷の幅と比較して更に深い谷が峡谷。そういう関係にあるようです。天竜峡は僕が思っていた以上に川幅が狭くて谷が深かったので、渓谷ではなくて峡谷ということになると思うんですが、で、天竜川と言えば舟下り。 1年ほど前に、舟が転覆して5人がお亡くなりになる痛ましい事故がありましたが、あれはもっと下流の浜松のほうの天竜川。 もっと上流のほうにも転覆しないタイプの川下りがあるというのは知っていたんですが、天竜峡の川下りにも2つのタイプがあるみたいです。 天龍ライン下り天竜舟下り 。 どこがどう違いのかというと、 ここがこう違う みたいです。 Q.舟下りの事故がありましたが・・・ A.それは静岡県の「遠州天竜舟下り」で、当地(長野県飯田市)の川下りとは別の地域です。当地では、 「天龍ライン下り」 と 「天竜舟下り」 の二社が舟を運行しておりますが、どちらも安全対策を講じておりますので、ぜひお越し下さい。 何だかこう、遠州のほうは安全対策を講じてなかったような口ぶりなんですが、ま、実際、講じてなかったからあんな事になっちゃったんでしょうけどね。 遊歩道から見えているのはライン下りのほうになるようですが、確かに景色は自慢してよさそうですな。 が、さほど急流というワケではないので、豪快な水しぶきはあまり期待出来なさそうです。 で、遊歩道のほうはと言うと、唯一無二の見所はというと、やはり “つつじ橋” ということになりますか。 もうひとつの “姑射橋” のほうは近代建築過ぎるので、姑を射ち殺したい鬼嫁以外にはあまり評判がよくない気がします。  一方、つつじ橋もほうもそれなりに近代的な建築物なんですが、腐っても吊り橋。 いや、腐っている吊り橋はちょっと嫌なんですが、渡るとそれなりに揺れる立派な吊り橋だったりします。 長さ70m、高さ20mという、そこそこの規模なんですが、1年半ほど前に こんな工事 をしたみたいで、スリルとサスペンス度が3割引きくらいになっちゃってました。転落しそうになってこその吊り橋だというのに、なんて余計なことをしてくれたんや! もっとも僕は高いところが大の苦手なので、このネットが無かったら、 「怖くてわたれないー」 という方になっていたような気もするんですけど。 で、この橋以外には特に見所もなさそうなので、そのまま引き返そうかと思ったんですが、せっかくなのでとりあえず周回してみることにしました。 結果、正解でした。 途中、かなり高いところから見下ろす展望台があって、そこから見る景色もなかなか。 (写真・ちょうど真ん中)(写真・いちばん下)に6階建てくらいの白いビルが写っておりますが、これがおそらく 絶景の宿 龍峡亭 。 名前が紛らわしいんですが、僕が泊まった峡泉は龍峡亭の対岸になります。 ちょっと分かりにくいんですが、(写真・いちばん下) の真ん中左側あたりに屋根らしきものが見えております。 このブログ に舟から撮った写真が載っておりますが、マジかよ!?  ちょっとした三仏寺の投入堂みたいになってるやんっ! そうとも知らずに普通に飯を食ったり、安眠したりしていたんですが、もし大地震が起こったらそのまま川に転落して、安眠 → 永眠コース、まっしぐら。 いや、さすがに安全対策は講じられていると思うんですが、なかなかスリルとサスペンス度の高い宿だったんですなぁ。 貴重な体験が出来て、何より。


 ということで、天竜峡はおしまい。 10時頃出発して、一路、小淵沢に向かうことにしました。 到着予想時刻は11時45分頃。 山崎千裕たんのバンドは天龍くんの犠牲になってしまいましたが、古谷淳くんは何とかなりそうですな。 …と思ったら、途中、事故渋滞に巻き込まれ、1時間以上も無駄にロスしてしまって、小淵沢のインターを降りたのは13時過ぎ。 結局、淳くんは事故の犠牲になってしまいましたが、で、ジャズフェスの会場は ここ でありますな。インターを降りて、八ヶ岳高原ラインを清里方面に向かって走って、ナビの指示に従って 「馬術競技場入口」 の信号を左折しようとしたところ、“八ヶ岳ジャズフェスティバル駐車場・直進 ↑ ” という表示を持ったオッサンがいることに気付いて慌てて直進したところ、そのすぐ先にもオッサンが立っていて、そこを左に曲がった空地のようなところが駐車場になっておりました。 “道の駅・小淵沢” の道を挟んだ反対側でありますな。 地図でいうと、 ここ 。  当日は係員が駐車場まで誘導いたします。 そんな記載があったので安心していたんですが、係員のオッサンが積極的に誘導してくれるわけではないので、心して掛からなければなりません。 ま、分かってしまえば分かりやすいところだし、出遅れたわりには余裕でクルマを止めることも出来たので、特に問題はないんですけど。 で、駐車場から5分ほど歩いて、いよいよ会場に到着〜。


< 八ヶ岳ジャズフェスティバル (その1) > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 (写真・いちばん上) は帰りがけに撮ったものなので、観客の数が増えておりますが、到着時点ではもっと空いておりました。 前のほうと、後ろのほうと、右と左の端っこのほうは埋まっていたんですが、直射日光を避けようがない真ん中の部分はガラガラ。余裕で座る場所を確保することが出来て何よりでありましたが、で、続いては昼食の確保。 入口付近のテントで 宇都宮グルメ が売られていたんですが、無難なところでまずは “宇都宮焼き餃子” (200円) 。 “ジャズまんじゅう” は (蒸し) も (焼き) も同じくらいソソられるものがなかったので、パス。 “霜降高原牛串焼き” には、かなり魅力を感じたんですが、その日に泊まるホテルの夕食がステーキプランなので、自重して “霜降高原豚串焼き” (300円) のほうにしておきました。 お買い物は以上っす。 (写真・上から2番目) に小さな俵おむすびのようなものが写っておりますが、これは天竜峡の宿がおまけしてくれたものです。 で、お味のほうはというと、焼き餃子は作り置きでちょっと冷めていたのがアレなんですが、ま、普通。 一方、豚串焼きのほうはけっこうボリュームがあって、けっこう脂身もあって、めっちゃ焼き肉のタレ味で、美味ちい♪ 売店のオッサンやおばちゃんが素人っぽくて、ちょっぴりトロくさいのと、豚串焼きのタレが垂れてタレくさいのがちょっとアレなんですが、合格点を与えてもいいランチ状況であったと評価していいと思います。 で、食うものを食って、ようやく演奏のほうに集中することが出来たんですが、ステージでは大坂昌彦くんとMAYAたん達が頑張っているところでありますな。音だけはしっかり聞こえてくるんですが、肝心のお姿はというと、椅子の背もたれと日傘の隙間からかろうじて覗ける程度。 もっと後ろのほうだと小高くなっているのでステージを見渡すことが出来るんでしょうが、何だか、最悪の位置取りっぽいっすな、こりゃ。 どうりで誰もいない筈ですが、とりあえず今は耐えましょう。 MAYAたんが何曲が歌を披露して、その後、大坂くんによるメンバー紹介が行われたんですが、これがちょっとスベった感じで、会場にはやや微妙な空気が流れておりました。 とまあそんなことで、大坂くんは退場。 次のグループが登場するまでの空き時間を利用して、もっと前のほうに移動することにしたんですが、おお、今度はバッチリでありますな。 左のほうにウザい酔っぱらいのおっさんカルテットが陣取っているのが目障りなんですが、ステージの様子は障害物もなく、よく見えるようになりました。 司会のお姉さんとお兄さんのご尊顔も、くっきり。 この2人組の喋りが大坂くんに負けず劣らずスベり気味で、聞いてるほうがいたたまれなくなって来たりするんですが、それもまた、いかにもローカル・ジャズ・フェスっぽい風情であるなと、自分の心に言い聞かせて、で、そうこうしているうちに、森山威男くんの一座が登場〜♪


< 八ヶ岳ジャズフェスティバル (その2) > (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 山下洋輔のエッセイからジャズに興味を持つようになった経歴の僕からすると、森山威男というのは何とも懐かしい名前だったりするんですが、生で見るのはこれが初めてです。 期待3割、不安7割という配分だったんですが、いやあ、思った以上によかったっすな、威男くん。 超エネルギッシュなタイコの叩きっぷりと、ちょっとボケが入った老人のような訥々とした語り口とのギャップが、何とも。 で、共演者の川嶋哲郎クン (ts) と、 田中信正クン (p) の出来も素晴らしかったっす。 かなりフリーでアバンギャルドな作風なんですが、ライブだとこういう無茶苦茶な奴らのほうが断然、盛り上がりますなー。 演目としては、僕の記憶や知識に間違えがなければ、 「マイ・フェイバリット・シングス」 とか、夕方になって家に帰りたくなっちゃう奴とか、 「ハッシャバイ」 といったお馴染みの曲ばかり。 川嶋くんはコルトレーンっぽいハードなブロウで、田中くんは山下洋輔っぽいアクレッシブな弾きっぷりで、観客たちを興奮の坩堝へと誘ってくれました。 かと思えば、一転、田中くんがロマンチックなピアノを弾き始めて、しんみりとさせてくれたり、クラシックの有名なフレーズを引用して笑わせてくれたりもして、いやあ、なかなかやってくれますなぁ。 とまあそんなこんなで、続いては、MALTAたん。 山下洋輔のエッセイからジャズに興味を持つようになって、で、とりあえず何故だかMALTAに走ってしまった経歴を持つ僕としては、これまた何とも懐かしい名前でありました。 生で見るのは初めてなんですが、何だか凄くオッサンっぽいキャラだったりして、ちょっぴりアレだったりしました。 ま、DQNっぽい観客のヤング達は、何だか無駄に盛り上がっていたし、超懐かしい80年代ヒットメドレーも聞くことが出来たし、とりあえず、思い残すところはありません。

 とまあそんなことで、今年の僕の八ヶ岳ジャズフェスティバルは以上っす。 今回、諸般の事情により、最後のセットを見ずに帰っちゃったんですが、夕暮れ時とかもなかなか雰囲気がよさそうだし、 「お楽しみジャムセッション 当日出演者多数参加」 というのもお楽しめそうだし、来年、また見る機会があるとすれば、今度はしっかり最後まで見届けたいところでありますな。 で、今回、動画も撮ったので、最後にそれを紹介しておきたいと思います。

   “八ヶ岳ジャズフェスティバル 2012”  ( ← Click Here!! )

 左クリックすれば勝手に再生が始まるかも知れないし、始まらない場合は右クリックで保存するなりして、自力で何とかして頂きたいと思うんですが、いやあ、めっちゃ盛り上がってますなぁ、青い猫柄シャツのお兄さん。 時折、ステージ上の音楽家ではでなく、手前の観客のオッサンの後頭部にピントがいっちゃう場面がまれによく見られたりするんですが、それもまあ、ご愛嬌。 とまあそんなこんなで、今日のところは以上です。

 ということで、今日は川嶋哲郎です。 生演奏を聞いてけっこう感動しちゃったので、早速CDを買ってみることにしました。 森山威男くんは入っておりませんが、田中信正クンも入っているので、 『哀歌』 というアルバムをチョイスしてみました。 八ヶ岳の感動が、自宅でお手軽に再現出来るのではなかろうかと期待が持たれるんですが、今日の僕には時間がありません。マジでありません。 13日に旅から戻って、15日までは盆休みだったので、時間はたっぷりあったんですが、でもまあ、週末に何とかすればいいやぁ。 …とか思って、何もせずに無為にダラダラと過ごしていたんですよね。 で、余裕をぶっこいていたら、金曜日が最悪でした。 日中の屋外現場監督業務はクソ暑くて汗ダラダラで死にそうだし、と思ったら、夕方、いきなり雨が降ってきて、作業服はべちょべちょ。 とても疲れる1日だったので、会社には寄らず、そのまま家に直帰しようと思ったら、某ポンプ場の計装回路が雷でやられてしまって、そっちに呼ばれてしまいました。家に帰ったのは11時半過ぎで、で、次の日にもしっかり現場の仕事を入れてくれているし、一体、いつ原稿を書けばエエねん!? 先週はこのコーナーをお休みさせて頂いて、2週連続のおサボりはちょっと気がひけるので、何とか頑張って前半をでっち上げてはみたんですが、今の時点で日曜日の午後2時半を過ぎちゃってます。 とても真面目に後半を書くだけの気力も意欲もヤル気もないので、軽く流して終わりにしたいところでありますが、とまあそんなことで、まずは1曲目。 アルバム・タイトル曲の 「哀歌」 。 哲郎クンのオリジナルでありますな。 日本語ライナーと同じ文面が ここ にあるので、詳しくはここを見て貰うとして、何でもいいけどこのアルバムのジャケットを見た瞬間、おおっ! 八ヶ岳で見たのと、まったく同じ顔やんっ♪ …というので、ちょっぴり感動してしまいました。 よく考えたら、よく考えなくても当たり前の話なんですが、このオッサン、1998年に脳梗塞に襲われて、で、2007年11月には交通事故にあったりもしているんですな。 で、このアルバムの吹き込みが2008年の7月。 「哀歌」 という演歌っぽいタイトルはそういう状況を踏まえたものなのかも知れませんが、曲の出来のほうはアレです。 コルトレーンの 「クレッセント」 あたりを彷彿させるような気がしないでもない、そういうアレだったりします。 「哀愁でいと」 や 「哀愁トゥナイト」 を彷彿させる 「哀」 に満ち溢れた歌でありまして、そういえば桑名正博って、まだ頑張って生きているんでしたっけ? 一時期、桑名ネタと言えばマサヒロばかりだったんですが、最近はマリオンというのも出てきましたな。 パチ屋の駐車場で5ヶ月のお子様がお亡くなりになったとか。 今年の桑名は思ったほど最高気温が上がらないんですが、それでもさすがに締め切った車内に乳児を放置というのはヤバいっすよね。 ここに哀悼の意を表させて頂いて、でもって、次。

  「ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング」 は、マイケル・レグランドとかいう人の作品っす。 誰?…と思ったら、 Michel Legrand と書いて、ミシェル・ルグランと読むんですな。 言われてみれば確かにルグランっぽいお洒落な仕上がりだったりするんですが、…と書こうと思ったら、まったくそんな風ではなかったんですが、哲郎くんの吹きっぷりはピアノレスという編成のせいもあってか、アグレッシブ化したロリンズといった感じがしないでもありません。 途中からテーマらしきメロディが聞こえるようになって、ピアノも入って、わりと普通っぽくなるんですが、最後までハードさは損なわれず、なかなか硬派っぽくて、いいと思います。適度にワイルドな田中くんのピアノ・ソロもフィーチャーされていて、悪くないと思います。 でもって、次。  「ヴェガ」 は哲郎くんのオリジナル。 テーマがとても短いのですが、そのなかに多くの転調を含んだ曲です。それをどう盛り上げていくか。そういう曲を作るのが夢ですし、即興演奏家としてそのほうが面白い。それが、ようやくできるようになったかなと思ってます。 そう、本人が語っているようですが、静かな雰囲気のテーマと、それに続くリリカルなピアノのソロ。 そこから一転、テナーのソロに入ると、なかなかいい感じに盛り上がっていて、自画自賛もまんざらではないな。 そんな気がしないでもありません。 地味ながら安田幸司くんのベース・ソロもフィーチャーされていて、でもって、テーマに戻って、おしまい。 ということで、次。  「メイルストロム」 も哲郎くんのオリジナル。 アバンギャルド系で、聞いていると気分が滅入るストロムであるな。 そんな感じがしないでもないんですが、ま、1曲くらいはこういうのが混在していても、なんとか我慢の出来る範囲内ではあったりします。 ライブで聞いた時の印象とマッチした人格は形成されていると思うし、ま、次でどうなるかが勝負どころであると言えそうですな。

 ということで、次。  「ソンブレ・ディマンチェ」 。 読み方が正しいのかどうか、まったく自信は無いんですが、日本語で言うと 「暗い日曜日」 。 めっちゃ暗い歌として名高いシャンソン曲っすな。 性格がめっちゃ暗い僕としては、どれだけ絶望的に暗いのか、期待に胸が高まったりするんですが、暗いというよりむしろ、スピリチュアルで崇高な仕上がりだったりして、普通に感動しました。 かなり速いテンポで演奏されているんですが、ソロ先発の田中くんがめっちゃ張り切ってるし、続く哲郎くんも逝っちゃってるし、ライブで取り上げても大ウケするに違いありませんが、ここで一転。 続くスタンダードの 「イージー・リビング」 では正統的なバラード・プレイが披露されていて、そのメリハリ感はなかなかの物だと評価していいのではなかろうかと。 ということで、残すところあと4曲。 時刻は4時半を回っておりますが、頑張りましょう。 ということで、7曲目。 哲郎オリジナルの 「ラン・ウェイ」 。 オーソドックスでハード・バピッシュで、ラリー・パリッシュ。 そんな作風だったりするんですが、昔、ヤクルトにいましたよね、ワニを食う外人。 どんな味がするのかと思ったら、鶏みたいなものらしいんですけど。 少なくとも、ウニよりはワニのほうが美味そうなんですが、とまあそんなことで、次。 。  「ガイヴォタ」 。 読み方が正しいのかどうか、まったく自信は無いんですが、日本語で言うと 「かもめ」 。 ポルトガルの民族歌謡、ファドの有名曲のようです。 聞いた感じ、コルトレーン風スピリチュアル、ばりばり全開だったりするんですが、田中くんのマッコイっぽいピアノも、なかなかいい感じ。 八ヶ岳では威男爺ちゃんに話を振られて、「・・・」 と沈黙し、 「ホントに田中くんは無口だねぇ。」 とか言われておりましたが、それを聞いて、同じくシャイで無口なキャラである僕は親近感を覚えました。調べてみたら1968年生まれらしく、僕と同い年なんですな。 ますます親しみを覚えてしまいますが、とまあそんなことで、次。  「マイ・カイ?」  哲郎くんの自作曲なんですが、タイトルの意味するところは、毎回? ハワイ語とかにもありそうな響きだったりするんですが、たとえば、明るいサンバのような曲をいれ、アルバムを立体的にしたかったので 「マイカイ」 を入れました。 そう本人が語っているところをみると、やはり南の島の大王的な意味があるのかも知れません。 で、実際のところ、明るいサンバのような仕上がりになっていて、アルバムが立体的になったような気がしないでもないので、意図するところは成功裏に終わった。 そう評価していいのではなかろうかと。 で、ラストも自作曲で、 「アップ・ストリーム」 。 正月に (中略) なりました。 そう本人が語っているんですが、なるほど、確かにそんな感じですな。 途中を省略し過ぎて、何を言ってるのかさっぱり分からないかと思いますが、もはや僕にはライナーノートを書き写すだけの気力もなくて、とまあそんなことで、今日は以上っす。

【総合評価】 生で体感した破天荒さは思った程でもなかったんですが、そこはやはり、ライブとスタジオ録音の差でありましょう。 外で聞くなら無茶苦茶でも勢いだけで何とか乗り越えることが出来るんですが、家でじっくり聞くなら、これくらい落ち着いていたほうが無難かと。 と言っても、熱いナンバーは必要十分に燃えているし、自作曲の出来も思った以上にいいし、シャンソンやファドといった自作以外の選曲も洒落ているし、ライブに浮かれて勢いだけで買っちゃった1枚なんですが、まったく後悔しなくて済みそうです。 もう死んじゃった黒人ばかりではなく、たまにはまだ生きている日本人のジャズも聞いてみよう。 そんな気にさせてくれる作品でありました。 いいぞぉ、哲郎ぉ♪


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