FOUR FOR TRANE (IMPULSE)

ARCHIE SHEPP (1964/8/10)

FOUR FOR TRANE


【パーソネル】

ARCHIE SHEPP (ts) JOHN TCHICAI (as)
ROSWELL RUDD (tb) ALAN SHORTER (flh)
REGGIE WORKMAN (b) CHARLES MOFFETT (ds)

【収録曲】

(01-03) SYEEDA'S SONG FLUTE / MR.SYMS / COUSIN MARY
(04-05) NIEMA / RUFUS (swung,his face at last to the wind , then his neck snapped.)

【解説】 ( 2011年01月02日更新 / 連載 962回 )

 新年、明けましておめでとうございます。 いやあ、正月休みは原稿書きから離れてのんびりと過ごすことが出来て、いいですなぁ。 …と、すっかり油断していたんですが、今年は1月2日が日曜日なんですな。 おかげで元旦から執筆活動に励まなければならなくて、えらく迷惑な話なんですが、こんなことなら大晦日に書いた 地獄ネタ を、こっち用に温存しておけばよかったですなぁ。 正月早々 “地獄ネタ” というのも、どうか? …と、余計なホトケ心を出したのが間違いでした。 そこで今日は “間違いだらけのマテ貝選び” というテーマでお届けしたいと思うんですが、みんな、ちゃんと間違えずにマテ貝を選んでいるかな? 僕は無理です。 というか、根本的に貝の類はあまり好きではないので、積極的に選びたいとも思わないんですが、ということで、テーマを変えましょう。 “間違いなく寝違えな話” 。 朝起きて首が痛かったら、それは間違いなく寝違えです。おしまい。 うーん、どうも話が発展しませんなぁ。。。 新年早々、ひどいスランプに陥ってしまいましたが、そもそも 「間違い」 という言葉に拘るのが、間違いだ。そんな気もしてきました。 そこで今度は少し視点を変えて “” について考えてみたいと思うんですが、どうして唐突にそんなものが出て来たのかというと、年末に聞かれたんですよね。 「遠心クラッチに入れるのって、どんな油?」 って。 で、調べてみた結果、どうやらそれは “ギャー油” らしいと判明したんですが、4年ほど前に遠心クラッチの油を交換した際の報告書を見たら、書いてあったんですよね、ギャー油。  どうして 「ャ」 が小文字なんだ? 普通に “ギヤー油” とか “ギアー油” では駄目なのか? …と不思議に思って、でもまあ、そんなことは別にどうでもいいので、あまり深く考えないまま新年を迎えた次第でありますが、何故だか今、その事を不意に思い出してしましました。 いい機会なので、ちょっと調べてみたいと思います。 題して “油断ならない油の話” 。

 君は “油” というと、どんな油を思い出すかな? 僕の場合はですね、“ヒマシ油” です。 日増しに寒さが募り、ヒマシ油が恋しい季節になりましたが、そもそもヒマシ油って、どんな油なんすかね? ということで、調べてみました。 ひまし油 (ひましゆ、蓖麻子油、英語 Castor oil) は、トウダイグサ科のトウゴマの種子から採取する植物油の一種。工業用としては石鹸、潤滑油、作動油、塗料、インキ、ワックス (中略) 香水、ポマードなどの原料、医薬用としては伝統的に下剤として用いられる…と。 なるほど。別に日増しに寒さが募ったからと言って、恋しくなるような油ではなかったんですな、ひまし油。 寒くなると、ベンジンとかのほうが恋しくなります。 いいですよね、ベンジン。僕はベンジンが好きです。少なくともニンジンよりはベンジンのほうが好きです。美味しくないですからね、ニンジン。 ニンジンが好きなのって、ウサギかニジンスキーくらいじゃないかと思うんですが、ま、ベンジンが好きだというのも、変人の類である気がしないでもないんですけど。 ハクキンカイロには欠かせないんですが、臭いんですよね、ベンジン。 これならまだニンジン臭いほうがマシなんじゃないか?…と思ってしまうんですが、2ちゃんねるの 【ハクキンカイロ45個】 というスレによると、純正のベンジン (←通称・おっさんベンジン) を使えば、臭いはそれほど気にならないみたいなんですけど。僕のベンジンに関する記憶は小学5年生くらいで停滞しているんですが、最近では改良が加えられているのかも知れませんなー。 ちなみにベンジンには懐炉用のものと染み抜き用のものがあって、染み抜き用のものには添加物が含まれているので懐炉用には使えず、一方、懐炉用のものを染み抜きに使うことは可能なんですが、添加物が含まれていないので、あまり染みは抜けない。 そういう関係にあるようです。 ま、何事も適材適所、もしくは餅は餅屋。 そういうことなんでしょうな。 たまに 「とんかつ屋さんのハンバーグ」 という看板を出している店があったりしますが、とんかつ屋ならメンチカツにしろよ! そう思わずにはいられません。

 とんかつ屋と言えば、トンカツって普通、どんな油で揚げるんですかね? ひまし油? もしそうだとしたら下痢を覚悟しなければならないんですが、ま、普通に考えれば普通の天麩羅油の類だと思うんですけど。 高級な店だとラードを使うという話を聞いたことがあるんですが、あんな固形の脂で、揚げ物なんか出来るんすかね? あるいは、揚げるのではなく、焼くんでしょうか? ということで調べてみました。 ラードを熱して液状にしてから揚げる。なるほど。簡単なことでしたな。 ま、調べてみる前からそんな気はしてたんですが、だとすると、とんかつの温度が下がったら脂が固まったりしないんですかね? ま、脂が固まるからベチョっとしなくて、カラっと揚がる。 そういうことなのかも知れませんが、ちなみにラードの融点は 27〜40℃なんだそうです。意外と低いですな。もし豚が豚インフルエンザに罹って高熱が出たりしたら、脂が溶けちゃうじゃないですかね? というか、平熱でもヤバそうなんですが、生きてる豚って、実は半融け状態だったりするとか? ああ見えて豚もけっこう大変なんですなぁ。 その点、牛の脂 (ヘット) の融点は 35〜55℃なので、普通に健康な状態で生きていれば “ちょい融け” くらいで済むのでまだ楽なんですが、ただ高級な和牛の脂だと 25℃くらい、松阪牛の脂の中には 14℃で融けちゃうヤツもいるんだそうで、それってもしかして、ウシとしてはかなりヤバイ状態だったりするんじゃないですかね? というか、飼育方法によって、そこまで牛の脂が融ける温度をコントロール出来るものなんでしょうか? 聞いた話によると松阪牛はビールを飲ませたり、マッサージしたりして育てるそうなんですが、温泉とかに行ってビールをたらふく飲んで、マッサージを呼んで、極楽極楽♪ …とか言ってると、そのうちに脂肪が体温でドロドロに融けだしちゃうかもしれませんなぁ。

 で、ラードではない普通の天麩羅油の類にはどんなものがあるのかというと、思いつくところでは、えーと…、例えば “コーン油” だとか。これはどういう時に使うのかというと、コーンコロッケを揚げる時に使うんだと思います。 あと “綿実油” なんてのもありますよね。 これはえーと…、特に何も思いつかなくて、こんなことなら、とっておきの “コーンコロッケねた” は最後まで温存しておくべきだったと後悔しているんですが、その他、“大豆油” “菜種油” “べに花油” などがあるようです。 そういえば桑名には 桑名のこめ油 というのがあるようなんですが、初代・清九郎、二代目・清六、三代目・清太郎、四代目・清次、五代目・清造、六代目・清六って、ずっと “清” という字に拘っているんですな、油清。 ただ、残念なことに 七代目になってネタが尽きちゃったようで、“清多佳” などという無理やりなネーミングになっておりますが、何て読むんですかね? せいたか? 子供の頃のあだ名はおそらく “セイタカアワダチソウ” でしょうな、こりゃ。 いや、もしかしたら “きよたか” と読むのかも知れませんが、あー、そんなこと言っちゃったら、せっかくの “アワダチソウねた” が台無しじゃーん。 今日の僕って、ちょっぴり不調でありますが、胃腸にいいらしいですな、米油特有の成分、γ-オリザノール。 そういえば、2ちゃんねるでよく見られる “orz”(←ひざまずいてガックリうな垂れている様子を示すアスキーアート) の読み方は “オリザノール” だった! …という話題を目にしたことがあるんですが、ある薬の成分表記のところに 「ガンマ-オリザノール γ-Orz」 と書いてあったとか、何とか。 個人的には “O” が大文字な時点で 「うなだれ感」 が著しく阻害されているので、駄目じゃん。…という気がするんですが、ひざまずいてガックリではオリザノール、ひいては桑名のこめ油のイメージも悪くなっちゃうしー。 とりあえず清多佳クンには、オフィシャルサイトのお洒落度向上から頑張って欲しいと思うんですが、ま、これはこれで手作りの味があって、悪くないのかも知れませんけどー。

 ということで、次です。“鉱物油”。 油には大きく分けて、植物性のもの、動物性のもの、鉱物性のものという3つのタイプがあるんですが、今までの例で言うとコーンとか米が植物、牛と豚が動物、ベンジンが鉱物ということになりますね。 植物と動物と鉱物では、鉱物がいちばん好物♪ そういう人はあまり多くないんですが、鉱物好きにはベンジン好きと同じく、ちょっぴり変人の香りがします。ベンジン臭そう。頭が固そう。そういう偏見を持たれがちなんですが、意思が固そう。 そう、前向きに評価することも出来ますよね。実際のところ、固いですもんね、石。 柔らかい石というのもないわけではないんですが、例えば “柔らか石焼ステーキ” だとか。 たとえ食わされた肉がめっちゃ固かったとしても、焼いている石が柔らかければ、ぜんぜん大丈夫♪ とまあ、そんな石からも油が取れたりするんですが、例えばどんな油が取れるのかというと、石油だとか。 それ以外にはどんなものがあるのかというと、エンジンオイルだとか。 いずれもですね、たまに漏れたりします。 僕のところにも時々 「発電機の油が漏れてる」 という連絡がくることがあるんですが、この場合、漏れている油というのは石油の類(軽油、重油などの燃料)である場合と、エンジンオイルである場合の、2つのケースが考えられます。 素人にはその2つの区別があまりつかなかったりするようなんですが、僕みたいなプロになると、一目瞭然。 いや、一目見ただけではよく分からなかったりするんですが、一嗅瞭然。 漏れている油を指につけて臭いを嗅いでやれば一発です。 ツンと刺激臭があるのが燃料で、ないのがオイル。 指につけた段階でも、粘度によってある程度は当たりをつけることが出来るんですが、一般的に燃料よりもオイルのほうがネトネトしております。 ただ、当たりをつけることが出来ると言っても、たまにはハズレをつけちゃうこともあるので、やはり嗅いでみたほうが確実であると言えましょう。 そういう地味な判別方法しかないのか? …という不満を持たれた方には、ライターの火を近づけてみるという方法をオススメしますが、燃料に比べてエンジンオイルのほうは引火点が高いですからね。 より軽症で済めばオイル。 そのように判断していいのではないかと思います。

 とまあ、燃料とオイルのプロである僕が鉱物油について知っていることは、以上です。 そういえば “ギャー油” の話はどうなった? …というと、エンジンオイル以外の油に関してはまったくプロではないので、よく分かりません。 仕方が無いので簡単に調べておもうと思うんですが、僕の知識によると、機会油の類にはエンジンオイル(潤滑油)やギャー油のほかに、タービン油とか、ミシン油なんてのもあったりしますよね。 こいつらは何がどのようにどうなっているんでしょうね? とりあえず、いちばん気になる “ギャー油” についてググってみたいと思うんですが、 もしかして: ギヤー油。 やはりそう来ましたか。 “orz” は小文字が基本なんですが、ギヤーはやっぱり大文字ですよね。 “ギャー” だと “ギャートルズ肉” とかしか候補に挙がってこないしー。 が、ここは敢えて “ギャー油” で検索を強行することにしたんですが、するとかなりの頻度で “ギャー” であることが判明しました。日本工業規格の表記が “ギャー” なんすかね? で、ギャー油とミシン油とタービン油の違いとか、そういう難しい話に関しては、よく分かりませんでした。 ということで、油の話は以上です。 えー、そんな適当なまとめ方でいいの? …と思われるかも知れませんが、新年早々、まったくヤル気が出ないんだから、しょうがないよねー。 たかだかギャー油くらいのことで、ぎゃーぎゃー言うな! …ということで、おしまい。

 ということで、今日はアーチー・シェップです。 えー、新年早々、シェップぅ? …と思われるかも知れませんが、ぎゃーぎゃー言うな! ま、正直、僕としても出来れば避けたかったんですが、よくよく考えるとシェップなんて人は、節分だろうと、バレンタインだろうと、春分の日だろうと、入学式だろうと、えー、シェップぅ? そう言われてしまうキャラですからね。 それならいっそのこと、早いうちに片付けておいたほうがいいんじゃないか? そういう考え方も出来るわけです。 新年早々、シェップはなかろう。 そう油断している隙を突くわけでありますな。 油断と言えばアレですな。 油というのは本当に、断つと大変なことになっちゃいますな。 今から15年ほど前、発電機用エンジンのオイルを交換する際、つい油断して制御電源を切るのを忘れていたら、オイルを抜ききった状態でエンジンが回ってしまって、500万円くらいのエンジンが再起不能になっちゃいましたからね。 まさに油断大敵やな! その事を身をもって体験することが出来たので、決して高い授業料では無かったと思うんですが、とまあそんなことで、アーチー・シェップ。 この人はですね、熱いです。 熱いから、アーチー。 名前の由来は恐らくそういうことなんだと思いますが、去年の夏はクソ暑かったですなぁ。毎日 「あちぃ、あーちぃ。。。」 と言って過ごしていたような気がしますが、もう、しょうがないほど、猛暑。 そんな感じでした。 8月でこれだけ暑かったら、12月になったらどうなるんやろう?…とか思っていたら、普通に寒くなって、そして今は1月なんですが、寒い日に聴く、ベンジンのように熱く燃えるアーチー・シェップ。 あまりソソられるものはありませんなぁ。。。 ということで、なるべくなら火傷の被害が最小限で済むように、わりと無難そうな1枚を選んでみました。  『フォア・フォー・トレーン』 。 『トレーンのための4』 ですか。 ここで言うトレーンというのは無論、大した用もないのにわざわざジャケットに写っていて、今の段階から僕をちょっぴりブルーにさせてくれているジョン・コルトレーンの事でありまして、で、 “” のほうはアレです。 シェップ以下、ジョン・チカイラズウェル・ラッドアラン・ショーターという、4人の管楽器奏者を意味するのでありましょう。 トレーンの薫陶を受けた4人が師に捧げる1枚。 そういう意味合いなんでしょうが、ということはつまり、ベースのレジー・ワークマンと、ドラムスのチャールズ・モフェットの2人は、トレーン? 別に、どうでもいいやぁ。 そう思いながら演奏していたんでしょうな。

 …と思っていたら、違ってました。 “4” はフロントの4人のことではなく、トレーンのオリジナルを4曲演奏している。そういう意味なんだそうです。 日本語ライナーで岩浪洋三クンがそう書いているので、多分それで間違いないと思うんですが、それはさておき、この参加メンバーはかなり興味深いものがありますな。 チャーネット・モフェットの実父として知られるチャールズ・モフェットに、ウェイン・ショーターの実兄として知られるアラン・ショーター。 ラズウェル細木の名前の由来になったラズウェル・ラッドに、便所が近いことで知られるジョン・チカイ。 寒くなりましたからなぁ。頻尿になっちゃうのも仕方のないところなんですが、僕なんかも最近、12時に昼飯を食う前に便所に行って、13時に仕事を始める前に念のために便所に行っておいても、13時30分くらいになると、また行きたくなちゃいますからね。 ま、さすがにそれで体内の水分が出尽くすのか、それからしばらくは大丈夫だったりするんですが、とまあそんなことで1曲目です。  「シーダズ・ソング・フルート」 。 コルトレーンの 『ジャイアント・ステップス』 に入っていたナンバーでありますな。 インパルス盤だから、インパルス時代のトレーンの曲を取り上げているのかと思ったら、意外にもトレーンの “4” はアトランティック物ばかりだったりします。 うち、この 『巨人の足跡』 から3曲。 偏り過ぎではないかという気がしないでもないんですが、曲を選ぶのが面倒だったんでしょうな。よくある事です。 で、演奏のほうはと言うと、ワン・ホーンだったトレーン版と比べて、こちらは4管編成。 そのハモり具合が聴き所になろうかと思うんですが、で、その出来はというと、まずまずなかなか頑張ったほうだと思います。 決してパワフルではないが、カラフルなフルチン。 …といった感じで、いや、僕は “フルチン” と “フリチン” 、どっち? …と言われれば、断然フリチン派なんですが、今回ばかりは韻を踏むことを優先して。 で、テーマに続いて、シェップのソロが登場します。 この人のプレイはよく “塩辛いトーン” と言われたりするんですが、なるほど、確かに言い得て妙ですな。確かにそんな感じがします。 で、これ、ピアノレスなのが祟って、わりとアバンギャルドな雰囲気が漂っているんですが、フレーズそのものを聴くと、意外とオーソドックス。 何だか無駄に先鋭化しちゃった時のロリンズと、さほど大差はなかったりします。 途中からラズウェルのボントロが絡んできて、集団即興演奏っぽい、ヤバい展開になりそうになるんですが、途中で消えるので、何とか許容の範囲内かと。 で、続いてテナーとボントロが主従を入れ替えた形のソロ・パートがあって、この辺りは我慢のしどころなんですが、最後、レジー・ワークマンとモフェットが地味にフィーチャーされるパートがあって、でもって、テーマに戻って、おしまい。 ま、何というか、シェップっぽい演奏ではありました。

 で、次。 「ミスター・シムズ」 。 もしかしてこれ、ズート・シムズに捧げられた物だとか? …と、ふと思ったりもしたんですが、調べてみたらあっちは “SIMS” 、こっちは “SYMS” なので、ぜんぜん関係ないかも知れません。 日本人の清水クンとかも絡んでこないだろうし。 ちなみにこれは 『コルトレーン・プレイズ・ザ・ブルース』 で演奏されていた曲なんですが、ここでは4管のハモリ具合が何とも意味深な、がましん。 そんな作品に変貌を遂げております。 いつぞやも、特に深い意味も無く出てきたことがありましたよね、がましん。 蒲郡信用金庫の愛称なんですが、でもって、ソロ先発は、んーと、アラン・ショーター? 何となくフリューゲルホーンっぽい音色なので多分そうだろうと思っていると、そこに突如としてシェップが乱入して来るんですが、そのちょっぴり強引なところが素敵♪ で、しばらくこの2人の地味なバトルが繰り広げられ、中盤以降はリーダーのシェップくんがしっかり存在感を見せ付けてくれるんですが、特にテンポがめまぐるしく変化するあたり、1964年という激動の時代をうまく表現していると思います。 この年、世界ではどんな出来事があったのかと言うと、えーと…、ベトナム戦争始まる。 調べてみたら激動っぽいのがあって何よりなんですが、ちなみに東京オリンピック開催の年でもあるんですな。あとはスギ花粉症の日本で最初の症例が、齋藤洋三博士により栃木県日光市の成人男子の患者について報告されたり。 花粉症ってそんな昔からあったんですなー。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 3曲目、 「カズン・マリー」 。 コルトレーンが従姉妹のマリーちゃんに捧げた作品だったのではなかろうかと。 オリジナルの 「カズン・マリー」 は、こじんまりとした仕上がりだったんですが、こちらのほうはというと、テーマはわりとシンプルにまとめられておりますな。 で、その後、シェップのソロになるんですが、バックで時折、残りの3管が主旋律をハモっている様が漏れ聞こえてきたりもして、アレンジそのものはわりと凝った感じのバルブコッタ。 そんな仕上がりだったりします。 エンジンの部品にあるんですよね、バルブコッタ。 「なんのこった、バルブコッタ」 とか、「パンナコッタ、肩が凝った」 とか、いろいろ応用の利く部品として、エンジニアの間では重宝されております。 最後の例はバルブコッタ、関係ないんですけどね。 で、その後、アラン・ショーター(だと思う)の、かなり生き生きとしたソロがあって、そこにも残りの3管がハモって絡んできたりするんですが、で、続いてフィーチャーされているのはジョン・チカイっすかね? 音の感じがアルトに近い気がするんですが、なかなかよく頑張っているな。 そんな気はします。 でもって、明確な形ではテーマに戻らずに、おしまい。

 で、次。 「ネイマ」 。 コルトレーンの最初の奥さんの名前を関したナンバーでありますな。 CDを見ると曲名の表記が 「NIEMA」 となっていて、これだと 「ニエマ」 なんじゃね? …という気がするんですが、原文ライナーを見てもやっぱり「NIEMA」 になっていて、おそらく誰かが間違えちゃったんでしょうな、こりゃ。 どうせ間違えるなら 「禰依魔」 とか、そういうインパクトのある誤表記にして欲しかったところですが、ま、アメリカ人にそこまで求めるのは、ちょっと酷かもしれませんけど。 で、これはアレです。根はバラードなんですが、かなりビターな味付けがなされておりますな。 だし汁を入れすぎて、びたびたになっちゃった茄子の煮浸し。 そんな感じの仕上がりだったりします。 それはただビタビタなだけで、ちっともビターではないんじゃないか?…と思われるかも知れませんが、それだったら、正露丸を入れ過ぎちゃった茄子の煮浸し。 うん、それなら確かにビターそうですよね。 もっとも、それなら正露丸さえ入れ過ぎればいいだけの話で、茄子である必要も、煮浸しである必要も、まったくないような気もするんですけど。 とまあそんなことで、主にシェップのソロに残りの人たちが絡む形で演奏が進められて、でもって、テーマに戻って、おしまい。

 さ、ラストです。 唯一、フォア・トレーンのフォーでないワンであるところのシェップのオリジナル、 「ルーファス」 。 副題として、何やら括弧書きでごちゃごちゃと書かれておりますが、この部分を日本語に訳すと (揺らされて、そして、ついにの風への彼の顔であり彼の首は折りました) となるんですが、何でも 「奇妙な果実」 同様、リンチされた黒人の様子を表現したものなんだそうで。 いやあ、新年早々ヘビーなテーマですなぁ。。。 こういう政治色の強いナンバーって、正直あまり好きではないんですよね。 政治より、ソーセージのほうがいいよな? そんな気がしてならないんですが、幸い、この 「ルーファス」 は余計な副題さえ気にしなければ、それなりにボロニアソーセージっぽい仕上がりでありまして、メンバー各自の個性が、ギューっと牛の腸に腸詰めって感じ? テーマそのものは、ちょっぴりオーネット・コールマンっぽい感じで、概ね意味不明。 で、その後、シェップのソロになるんですが、途中、残る3人のフリーブロウを絡めるあたり、プリンの上のカラメルのような効果があったりして、いや、そんなスイーツっぽさは実際のところ、みじんも感じられないんですけど。 ウニの上にみじん切りのパセリを乗せたようなと言うか。 で、終盤はベースとドラムスとの絡みでそれなりに盛り上がって、テーマに戻って、おしまい。 とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 当方の思惑どおり、シェップにしてはまだ聴きやすい部類 (ただし最後のリンチ曲は除く) と言えるんじゃないでしょうか? ただこれ、本当に心の底からコルトレーンを賛美しているというより、どこか皮肉まじりに聞こえたりするところが、何ともこの人らしいですよね。 ジャケット写真もトレーンを後ろに立たせて、「ケッ!」 みたいな顔でパイプを咥えていたりして、そんな反抗期的なシェップが、ちょっぴり可愛い♪ そんな1枚なのでありました。


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