MUCHO CALOR (ANDEX)

ART PEPPER (1957/10)

MUCHO CALOR


【パーソネル】

CONTE CANDOLI (tp) ART PEPPER (as) BILL PERKINS (ts)
RUSS FREEMAN (p) BEN TUCKER (b) CHUCK FLORES (ds)
JACK COSTANZA (conga) MIKE PACHEKO (bongo)
【収録曲】

(01-03) MUCHO CALOR / AUTUMN LEAVES / MANBO DE LA PINTA
(04-06) I'LL REMEMBER APRIL / VAYA HOMBRE VAYA / I LOVE YOU
(07-08) MAMBO JUMBO / OLD DEVIL MOON
(09-10) PERNOD / THAT OLD BLACK MAGIC

【解説】 (2010年01月31日更新)

 君は “” が好きかな? 僕はですね、あまり好きではありません。 兄、ウニ、鬼。 この3つの中でいちばん尊敬に値しないのは兄なんですが、鬼はその次に駄目な気がします。 じゃ、ウニは尊敬に値するのか?…と言われると、ぜんぜんそんなことはないんですが、ま、ウニの場合、見た目が人間離れしているところがちょっと嫌なだけで、あまり悪さをしたりはしませんからね。 それに比べて、鬼はいけません。悪さをします。どういう悪さをするのかというと、ワルサーをぶっ放すとか。  いや、そういう近代的な武器は持ってないような気がするんですが、とりあえず村を襲って、食べ物や金品を奪ったりはします。 あと、村の娘を襲って、婦女を暴行したりもします。 「いやぁ、やめてぇ!許してぇ!」 と懇願しても聞く耳を持たず、 「鬼〜!ケダモノぉ!」 と言われても、どこ吹く風。 「だって俺、鬼だしぃ。」 と、うそぶくというのだから始末に負えません。 始末に負えないんですが、誰かが始末しなければなりません。鬼をこのまま、のさばらせておけば、将来に禍根を残すことになります。  で、誰が鬼を始末するのかというと、え、僕? 話の流れからしてそういう事になるんじゃないかと、薄々、嫌な予感はしてたんですが、やっぱりそう来ましたかぁ。。。 ま、ここでうまく鬼を退治することが出来れば、村の娘が僕に惚れてくれるに違いないし、あまり自信はないんですが、モノは試しに、ちょっとやってみましょうかね? ただ、ここで闇雲に鬼に向かっていくというのは得策ではありません。敵を倒すにはまず、敵を知るところから始めなければなりません。天知る、地知る、チルチルミチル。 ブラジル、豚汁、恋する、セシル。昔の人はいい事を言ったものですが、ということで今日は “” について徹底的に検証してみたいと思います。

 まずは鬼の種類。 鬼には大きく分けて、2つのタイプが存在します。 赤鬼青鬼。その2つです。この2つの鬼は、どこがどのように違うんでしょうか。 んなもん、どっちも似たようなもんやろ? そう思ったとしたら、それは大きな間違いです。素人考えだと言わざるを得ませんが、鬼のプロである僕に言わせれば、赤鬼と青鬼とでは大きく違います。どこが違うのかというと、色が違います。赤鬼は赤いんですが、青鬼は青い。 素人には区別がつきにくいかも知れませんが、プロなら一目で見分けることが可能です。僕には赤緑色弱の気があるので、もし鬼の種類が緑っぽい赤鬼と、赤っぽい緑鬼だったら、かなり悩む事になるところでしたが、赤と青なので大丈夫です。 で、続いて色の違いが鬼に与える影響について検証したいと思うんですが、青鬼は進め、赤鬼は止まれ。 何となくそういう感じがします。青鬼なら渡っても大丈夫なんだけど、赤鬼だと危険。 よく、「渡る世間に鬼はなし」 なんてことを言いますが、無視して渡ると車に轢かれちゃう恐れがある鬼。それが赤鬼ということになります。 少なくとも人間社会の常識ではそういうことになります。 が、鬼に人間の常識など通用しません。 青鬼だから、いいやぁ♪…と思って、油断しきって進んでみたら、いきなり鬼にパカーンと殴られたりして、いやあ、青鬼というのも赤鬼と同じくらい危険なヤツだったんですなぁ。。。 結果、赤鬼も青鬼も、どっちも似たようなものだという素人考えは、正鵠を得ていたということになるんですが、ま、それはあくまでも結果論ですからね。単なる思いつきの発言と、論理的に煮詰めて得られた結論とでは、まるで重みが違います。この事で僕のプロとしての存在意義に、みじんの揺るぎも生じるものではありません。

 色によって鬼に違いがない事が判明したのは。有意義でありました。これで、色別にいちいち鬼対策を講じる必要がなくなるわけですもんね。 むこうから紫色っぽい鬼が歩いて来た場合でも、赤なのか青なのか、頭を悩ます心配もありません。 で、続いて今度は鬼の持っている武器について検証したいと思うんですが、鬼はですね、 “金棒” を持っています。これはなかなか、手ごわいです。 「鬼に金棒」 ということわざもあるように、この2つが手を組むと無類のパワーを発揮するんですよね。こちらもそれに対抗出来るだけの、強力な武器を用意しなければなりません。そっちが金棒なら、こっちは “うまい棒” や!…みたいな。 いや、駄目でしょうな、多分。 金棒でパシっとへし折られて、バリバリと潰されて、粉になって、おしまい。 まだ “うまか棒” のほうが可能性があるような気がします。アイスの部分を食べると木の棒のようなものが残るんですが、アレをナイフで削って尖らせて、鬼を目掛けて投げつける。 「痛っ!」 と、鬼が思わず金棒を取り落としたところで、強奪する。完璧ですな。これで鬼の戦闘力は、相撲取りの貴闘力くらいになるに違いありません。貴闘力も、そこそこ強い力士だったんですが、所詮は痛風持ちですからね。付け入る隙は十分あると思います。

 となると、鬼の持ち物は “打ち出の小槌” だけということになりますな。これは武器ではなく、振れば何でも好きなものが出てくるという、そういう画期的なアイテムです。そんないいものがあるなら、わざわざ村を襲って、食べ物や金品を奪う必要はないぢゃん。…という気もするんですが、所詮は鬼のやることなので、そこまで機転が利かなかったんでしょう。仕方ありません。 で、これ、武器でないからと言って放っておくわけにはいきません。放っておいたら、鬼は小槌を振って新しい金棒を出して攻撃してくるに違いなくて、なるほど、そう来ましたかぁ。 敵ながら、あっぱれですな。 ま、それならそれで、こっちはまた “うまか棒” を食べて、残った木の棒を削って鬼に放り投げればいいんですが、どれだけ金棒を奪っても、鬼の生産体勢は無尽蔵です。 “うまか棒” 、どんだけ食べなアカンねん!?下痢になるちゅうねん!? 作戦を変更し、金棒を奪うのではなく、先に打ち出の小槌を取り上げたほうが賢明であると言えそうです。 で、首尾よく敵を丸腰にすることが出来たとして、あと気を付けなければならないのは、鬼が自前で装備している “” でありますな。見るからに強そうですもんね、ありゃ。 が、僕に言わせればあんなもの、実はぜんぜん大したことがありません。 鬼の角が相手を攻撃する為に生えていると思っている人がいるかも知れませんが、それは素人考えです。あれが単なる “こけおどし” であることを、僕は見抜きました。カコーン。 ( ← それは “ししおどし” 。 ) そもそも角というのは牛や鹿などの四つ足動物だからこそ意味があるのであって、二足歩行する鬼にとっては、あまり使い勝手がよくありません。角で相手を突こうとすれば、頭を下げた不自然な体勢を取らなければなりませんもんね。頭を下げて猛然と突っ込んでみたものの、はたき込まれて、あっさり負け。 貴闘力は大抵そういう負け方をするんですが、これではほとんど武器としての意味をなしません。生やすだけ無駄なような気がします。にもかかわらず、どうして鬼は頭に角を生やしているんでしょうか?

 その答えは既に出ています。頭に角が生えてないと “鬼” に見えないから。そんだけ。 試しに頭に角が生えている鬼を見てみましょう。 これ ( 資料提供: Canon )です。 おお、これは鬼ですな。誰がどう見ても立派な赤鬼です。 で、試しに、この赤鬼から“角”を取ってみましょうか。  こう なりました。 ただの “顔が赤いオッサン” ですな、こりゃ。 こういう外人、普通にいるような気がします。 かつて、また頭に角が生えてなかった頃の鬼は、鏡に写った自分の顔を見て、 「これではちっとも、“鬼”らしくないなぁ。。。」 と嘆息したに違いありません。 で、見た目が “鬼” らしくなるように、色々なアイテムを試してみたものと思われます。 例えば ハコフグのかぶりもの とか。 “さかなクン” かいっ! 自分で自分にツッコミを入れる鬼の姿が目に浮かぶようですが、試行錯誤の末、頭に “角” を生やした時がいちばん “鬼” らしく見えるという結論が出て、以来、鬼はああいう姿になったものと思われます。 で、頭に角を生やしてしまった以上、無理してでもソレを使おうとして、頭を低く下げた状態で突っ込んでくる鬼を、すかさず、はたき込み。相撲ならそれで勝負は決まりなんですが、始末するとなると、止めを刺しておかねばなりません。 弁慶の泣き所は “向こう脛” なんですが、鬼の急所というのは一体、どの部分なんでしょうか?

 その問題を考える場合、僕は彼が着用している “トラ皮のパンツ” に着目したいと思います。 どうして鬼は毛皮のパンツを履いているのか?寒いからか? ま、そう考えるのが普通でしょう。小学生の女子児童は、そういう理由で毛糸のパンツを履いてますからね。 が、その論理は鬼には通用しません。寒くて毛皮のパンツを履いているのなら、上半身にも何か温かいものを着るべきなんですが、鬼の場合、パンツ一丁ですもんね。 ということはつまり、毛皮のパンツは防寒用ではありません。 にも関わらずパンツを履いてるという事は、恐らく鬼は “パンツの中身” を見られたくない。 そう思っているんでしょう。鬼に羞恥心などあるとは思えないのに、見られたくない。何故か? 僕は鬼のパンツの中に “コンプレックス” が隠されているのではないかと踏んでいます。 フリチンで村を歩いている姿を子供に見られ、 「あは、小せえ!」 と、小バカにされて、深く傷付いた。そういう暗い過去があるんでしょうな、多分。 で、隠すだけならべつにグンゼの白ブリーフとかでもよさそうなんですが、少しでも下半身を力強く見せたい。そういう劣等感から、彼は虎の皮を選んだのでしょう。虎の威を借るパンツ。そういうことなんでしょうな、ありゃ。

 もうすぐ節分。 お父さんが “鬼” になって、豆まきをする。そういう家庭も多いことでしょう。 さ、もう退治の仕方は分かりましたね? わざわざ金棒まで用意するお父さんはいないと思うので、 “うまか棒” は必用ありません。 定番の “炒った豆” 。 それだけあれば大丈夫です。 鬼は頭に生やした角を生かそうとして、頭を下げて突進してくるので、すかさず、はたき込み。 で、土俵に這わせたところで、すかさずパンツを脱がせる。 局部がモロ出しになったところで、その部分に思いきり、豆をぶつける。 で、急所を指差して、止めの一言。 「あは。豆粒みたいっ!」 鬼は目に薄っすらと涙を浮かべて、ほうほうの体で去っていくことでしょう。 ああ、鬼の目にも涙。 とまあそんなことで、おしまい♪

 ということで、今日はアート・ペッパーなんですが、それはそうと、お父さん鬼。 イジけて、しばらく家に戻ってこないかも知れませんなー。 さすがに 「豆粒」 は、ちょっと言い過ぎだったかも知れません。 せめて 「米粒」 くらいにしておいたほうが…。 って、それでは更に小さくなっちゃいますが、ま、そのうち、腹が減ったら戻ってくるとは思うんですけどね。 悪の象徴で、稀代の嫌われ者なんですが、鬼がいなくなったらいなくなったで、ちょっと困ったことも起こります。 例えば世間の鬼達が集団で心を入れ替えて、 「先生、俺たち、間違っていたよ!今日限りで “鬼” はやめるよ!明日から俺たち、立派な“ウニ”になるよ!」 と宣言したらどうなるか? 困ります。 誰が困るのかというと、初代・若乃花とか。豪快な相撲から 「土俵の鬼」 と呼ばれたんですが、明日からは 「土俵のウニ」 と呼ばなければならなくて、困ります。 あと、姑も困ります。 姑の服を便座カバーと一緒に洗ったりする鬼嫁が、朝起きたら突然、普通の 「ウニ嫁」 になっていたら、姑としても張り合いがなくなってしまいますよね。 琴椿と壮絶な突っ張り合いを演じた貴闘力も、琴椿が引退して突っ張り合いが出来なくて、張り合いがなくなったと寂しそうに話していました。 ヒーローは強力な悪役がいてこそ輝きを増すのでありまして、鬼にも頑張って欲しいところです。 とまあそれはそうとアート・ペッパーなんですが、稀代のアルト奏者として名前を残した彼も、小学生時代は医者に憧れていたんだとか。 もし、子供の頃の夢が適っていたら、彼は将来、ドクター・ペッパーになっていたわけですが、中学に入ると今度は一転、警察官を目指したそうです。 もし、その夢が実現して順調に出世していたら、彼は将来、ペッパー警部になっていたわけなんですが、幸か不幸か、大人になった彼はジャズマンとなり、薬をカジって警察に捕まるほうの道を選びました。 で、今日は、そんな彼の 『ムーチョ・カラー』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、正式に言うとこれ、ペッパーのリーダー作ではありません。コンテ・カンドリビル・パーキンスラス・フリーマンといったウエストコーストな面々が集まって、ラテン・ジャズを演奏する。そういうコンセプトの作品であるようです。外人ギャルの半裸な後姿ジャケが、いいですなぁ。 ムーチョだからって、マッチョな男をモデルにしなかったのは、正解です。 欲を言えば下半身を布に隠すのではなく、モロ見えにして欲しかったところではあるんですが、鬼のパンツ同様、大人の事情というのがあるのかも知れませんね。 とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはアルバム・タイトル曲の 「ムーチョ・カラー」 。 ビル・ホルマンのオリジナルのようです。 いいですよね、ビル・ホルマン。 何だかホルモン焼きの店ばかりが集まっている雑居ビルみたいで。 で、曲名の 「ムーチョ・カラー」 というのはおそらく、湖池屋の 「カラムーチョ」 のことだと思うんですが、ジャケットを見ると下のほうに小さく “MUCH HEAT” と書かれているので、あるいはこれが “MUCHO CALOR” の英訳なのかも知れません。 「もっと熱く」 。 ヒートアップした熱い演奏が期待されるところですが、これはアレですな。ラテンですな。 管楽器とラテン・パーカッションとの絡みで幕を開け、ピアノが入って、で、ホーンのアンサンブルでテーマが演奏されるんですが、哀愁味を帯びた、なかなかの佳曲でありますな、こりゃ。 やるな、ホルマン。 この演奏で最初に気付いたのはコンポーザー、アレンジャーのビル・ホルマンが、ラテンのハッピーなエンタテイメント性を表現したのではなく、ラテンのもう一つの側面である物悲しい哀愁とけだるさをジャズの哀愁に巧みに融合してみせたことだ。…と、日本語ライナーで寺島のヤックンが、しごくマトモな事を書いているんですが、でもって、ソロ先発はペッパーでありますか。 リズムが一転、ラテン調から4ビートに変わるんですが、いやあ、実にジャズの哀愁でありますな。 このアルバムをペッパーのリーダー作として売りに出したくなる気持ちがよく分かる、畢生の出来栄え…とか言ってるうちにトランペットのソロになりましたが、カンドリ → ビル・パーキンス → ラス・フリーマンと続く各自のソロの出来もよくて、ペッパーのリーダー作として売りに出すのは、やはりちょっと間違っているような気もしてきました。 でもって、テーマに戻って、おしまい。 各自のソロが短すぎるところが玉に瑕なんですが、いや、名作の予感でありますな、こりゃ。

 2曲目はお馴染み 「オータム・リーブス」 。 日本では 「枯葉」 というタイトルでお馴染みなんですが、ラテン作品なのに、ここでいきなりシャンソンを持ってきましたか。 新春シャンソン・ショーでも必ず歌われる、定番中の定番ですよね。 ジャズの世界でもマイルスやエバンスを始め、多くのミュージシャンが取り上げているんですが、ここでのペッパー達はどうかというと、ラテン風です。 でも、これではあまりにストレート過ぎる。 しかし、イントロの一種幻想的なムードには感心した。 だから、一層テーマ旋律のひねりの無さが無念に思えるのである。…と、寺島のヤックンが辛口な評価を下しておりますが、 「ムーチョ・カラー」 には甘口でも、 「枯葉」 には辛口なんですな。 個人的には、いかにもウエストコーストな凝ったアレンジで、悪くないと思うんですけどね。 カンドリの吹く主旋律に2本のサックスが絡み、サビのフレーズはペッパーが吹く。 十分、ひねりが効いていると思うんですけどね。 で、ソロ先発はペッパー。 バックでは残りの2管が彩りを添えて、ま、これはやや演出過剰のような気もするんですが、続くフリーマンのソロはシンプルでいいですなぁ。 この人、白人なのにけっこうファンキーな香りがあったりして、個人的には好きです。 後テーマのアレンジもなかなか凝っているし、ということで、おしまい。 ここまで、なかなかいい感じに推移しております。

 で、3曲目、 「マンボ・デ・ラ・ピンタ」 。 これはアレです。 「でら、マンボだでかんわ〜。」 と、河村たかしが言いそうなナンバーでありまして、カンカン、コン、カン、「ウーッ!」 …というシャウトが、あまりにもベタ過ぎるような気がしないでもありません。曲そのものは、ま、普通にマンボなんですけどね。3管の巧みな絡みが楽しめるペッパーのオリジナルで、 『リターン・オブ・アート・ペッパー』 というアルバムでも演奏されているようです。 アルト、トランペット、で、アンサンブル・パートを挟んで、ピアノ。 …と続くソロはどれも良好で、でもって、テーマに戻って、おしまい。 コンガとボンゴのラテン・チームも頑張っていて、何より。 で、次。  「アイル・リメンバー・エイプリル」 。 日本名 「四月の思い出」 でありますな。 ジャズの世界ではラテンのリズムで料理するのが定番なんですが、ここでのアレンジはあまりにも軽過ぎではないですかね? カルメ焼きは軽めのほうが美味しいんですが、カルメン・マキは、もっと暗さがあったほうがいいような気がします。この前、死んじゃいましたけどね、カルメン・マキ。…と思ったら、あ、違いました。この前、死んじゃったのはカルメンではなく、浅川マキのほうでした。 で、とか言ってるうちに演奏のほうは終わってしまって、5曲目、 「ヴァヤ・ホンブレ・ヴァヤ」 。 このアルバムの中で、もっともラテンっぽい名前のナンバーでありますな。 が、演奏のほうはこのアルバムで、もっともジャズっぽい仕上がりになっております。 作曲したのはビル・ホルマン。 ボンゴとコンガが、パコパコ♪ カポカポ♪…と頑張っておりますが、リズムはオーソドックスな4ビート。 カンドリ → ペッパー → ビルキン → フリーマンの順でソロ廻しが行なわれるんですが、個人的には最初の2人が健闘していると思います。 ビルキンも悪くはないんですけどね。 ちなみに桑名で “ビルキン” と言えば、駅前にあるキングというパチンコ屋 (←ビル建築風) なんですが、ジャズの世界で “ビルキン” と言えば、ビル・パーキンス。  “ビルパー” でいいんじゃないか?…と言われると、確かにそんな気もするんですが、でもって、テーマに戻って、おしまい。

 で、次。  「アイ・ラブ・ユー」 。 「あ、伊良部よ。」 という空耳でお馴染みなんですが、引退しちゃいましたな、伊良部秀輝。 というか、まだ現役だったのか?…という事のほうが驚きだったんですが、四国・九州アイランドリーグの高知で地味にプレイをしていたんですな。 独立リーグと言えば今年、ナックルりえちゃんが三重スリーアローズに入団するそうですな。 去年は神戸の生田神社で節分の豆まきをしたそうですが、今年は多度大社に来ませんかね? …と思って オフィシャルサイト を調べてみたら、今年もやっぱり松田次夫なんですな。 去年はまったく活躍しなかったんですけどー。 その為なのか、アントニオ古賀も呼んでいるようなんですが、桑名に何か縁があるとは思えないし、単なる営業活動なんすかね? 祈祷料 30,000円ですかぁ。ゲストと一緒に食事が出来て、記念品が貰えて、裃に着替えることが出来るとはいえ、高いですなぁ。昼食も写真で見る限り、ショボそうだしぃ。 「※ 料理はイメージです。」 との事なんですが、こういうイメージが悪くなるような写真は載せないほうがいいと思うんですけどね。 とまあそれはそうと、「アイ・ラブ・ユー」。 コール・ポーターの曲ですな。 「四月の思い出」 同様、ジャズの世界ではラテンでやるのが定番なんですが、ここでは思ってたより、ちょっぴりスローなテンポで演奏されております。 抜群のムード・テンポ、音色のアヤで <ムーチョ・カラー> に次ぐトラックになっている。…と、ヤックン絶賛。 「そうかぁ?」 と、フックンやモックンは、その見解にやや懐疑的なようですが、僕もどちらかと言えばフックン・モックン派ですな。もうちょっと普通に、アップ・テンポでやったほうがよかったような気がします。保守的ですからね、僕。 ま、ペッパーのソロは普通にいい感じなので、別にいいんですけど。 続くコンテ・カンドリのソロも神取忍を彷彿させる味があるし (←定番) 、ビルパー、ラスフリだって、頑張ってます。 ま、確かに演奏そのものとしては、いい出来でありましたな。不本意ながら、ヤックンに同意せざるをえないような気がしないでもありません。

 で、次。  「マンボ・ジャンボ」 。 マンボ王、ペレス・プラドに同じタイトルの曲があるそうですが、それとは別のカンドリ・オリジナルのようです。 で、これはアレです。マンボです。 「ウーッ!」 というシャウトこそ無いんですが、どこにでもあるような、オーソドックスなラテン曲であると言っていいでしょう。アドリブ・パートではペッパーのアルトも少しだけ聞けますが、概ねフリーマンのソロをフィーチャーしたナンバーであると思っていいでしょう。中盤にはコンガ、ボンゴ、ならびに奇声なども楽しめたりします。 でもって、テーマに戻って、おしまい。 ということで、8曲目。  『オールド・デビル・ムーン』 。 定番のラテン調・歌物ナンバーで、この曲でビル・パーキンスが最も彼らしいソロを聞かせる (← by 寺島靖国 ) とのことなんですが、ま、言われてみれば確かにそうかも知れません。 で、次。  「パーノッド」 でもペッパーのソロが抜きんでて光っている。 日本語ライナーで、この曲について書かれているのは、以上です。 お互い、疲れが感じられますなぁ。

 ということで、ラスト。  「ザット・オールド・ブラック・マジック」 。 いいですよね、黒いマジック。 自分の持ち物に名前を書く時など、とっても重宝します。独特の有機溶剤臭は不良たちの間でも評価が高いんですが、ただ、古くなるとスカスカになってすぐに書けなくなるのが欠点ではあるんですけど。 で、この 「ザット・オールド・ブラック・マジック」 は古くて書けなくなった黒マジックの悲哀を歌ったものだと思われるんですが、そこはラテンのノリ。 カポカポ、ポコポコと、能天気なリズムで、あっけらかんとした世界が展開されております。 日本人なら 「マジたんのお墓」 とかを建てて、しんみりと冥福を祈るところなんですけどね。 とまあそんなことで、今日は以上です。

【総合評価】

 冒頭のタイトル曲が最高っ♪ 続く 「枯葉」 も、なかなかいい感じ。 が、3曲目以降、正直なところ、ちょっぴり飽きました。 全曲ラテンというのは、日本人にはちょっと辛いですなぁ。。。 ま、ペッパーのソロそのものは全体的に好調で、傾聴に値するものだと思うんですけど。 前世がブラジル人とか、そういう人なら理屈抜きで楽しめるかも知れない、そういう1枚なのでありました。


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