TRANCE (ECM)

STEVE KUHN (1974/11/11,12)

TRANCE


【パーソネル】

STEVE KUHN (p,el-p) STEVE SWALLOW (el-b) JACK DeJOHNETTE (ds) SUE EVANS (per)
【収録曲】

(01-03) TRANCE / A CHANCE OF FACE / SQUIRT
(04-06) THE SANDHOUSE / SOMETHING EVERYWHERE / SILVER
(07-08) THE YOUNG BLADE / LIFE'S BACKWARD GRANCE

【解説】 (2009年04月26日更新)

 長野県へお花見に行ってきました。2泊3日の行程だったので、今日から3回シリーズでレポートしようと思うんですが、初日は小諸の懐古園の隣の 小諸グランドキャッスルホテル というところに泊まることしました。観光予定としては、ま、懐古園かな。…といったところなんですが、お花見 (昼の部) なんて、そこで飲み食いしたり宴会したりするのでなければ、基本的に1時間で完結してしまいますからね。あまり早く着き過ぎても暇を持て余すことになるので、とりあえず諏訪あたりで高速を降りて、ビーナスライン経由で行ってみることにしました。

<岡谷湖畔公園> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 桑名から諏訪方面に行く場合、とりあえず諏訪あたりで高速を降りるとなると、中央道の諏訪インターということになるんですが、今回は少し長野道方面に走って、岡谷インターで降りることにしました。岡谷で降りて下諏訪を通って、あるいは上諏訪の駅前にクルマを止めて、 高島城 にでも行ってみようかと思っていたんですが、桜の名所らしいですからね、ここ。 ところが、ひとつ曲がり角、ひとつ間違えて、迷い道くねくね♪…という渡辺真知子状態になってしまって、ふと気が付いたら諏訪湖の南のほうに出てしまったんですが、何やら水門のようなものがあって、おまけに桜も咲いている公園のようなところがあったので、立ち寄ってみることにしました。 これでわざわざ高島城まで行く手間が省けて、ラッキー♪ どうやらここは 岡谷湖畔公園 というところらしいんですが、小口太郎の像とかもあって、なかなかいいところでありますな、こりゃ。 小口太郎というのが一体どういう人なのか、僕は寡聞にしてよく知らんのですが、恐らく決して大口を叩いたりしない、謙虚な性格な太郎なんだと思います。 調べてみたらどうやら科学者兼歌人であるようなんですが、 「琵琶湖周航の歌」 の作者として知られているそうです。 どうして岡谷市の生まれなのに 「諏訪湖周航の歌」 にしなかったんですかね? 郷土愛がみじんも感じられない太郎というので、地元では像に石を投げられているのではないかと思うんですが、何だか妙に金ピカで、あまり謙虚さが感じられないしー。 写真を撮ったんですが、めっちゃボケてしまっていたので、今回の公開は見送らせて頂きます。

 通る時に見えていた水門のようなものは “釜口水門” という名前の水門のようなんですが、こんなところから天竜川が流れ出していたんですな。ちっとも知りませんでした。 調べてみたら諏訪湖には31もの河川が流入しているそうですが、流出するのは天竜川だけなんだそうです。水門の上は橋になっていて、諏訪湖の反対側に歩いていくことが出来るんですが、そちらのほうも公園になっていて、謙虚な色をした像がたくさん立っていたり、座っていたり、寝そべったりしておりました。 いや、道に迷ったおかげで、なかなかいいところに立ち寄ることが出来ましたな。ということで、諏訪インター方面に向けて、出発ー。 諏訪湖の南側の道は今回初めて走ったんですが、道幅も広く、快適なドライブコースでありました。ほとんど散っておりましたが、桜並木みたいになっていて、1週間早かったら見事な景色だったことでしょう。 すわっこランドを過ぎた先のところで諏訪湖に別れを告げて、地味な川を遡る形で東のほうに走ると、やがて諏訪インターの前に到着します。 ここから蓼科方面に向うには国道152号線とビーナスラインの2つのルートがあるんですが、2つに分かれた道は途中でまた合流することになるので、どちらを走っても大丈夫です。ビーナスラインと言ってもこの区間は景色のよくない単なる地味な道なので、敢えて走る必然性もありません。 ただ僕の場合、ビーナスライン沿いにある たてしな自由農園 のブルーベリーコンポートが大好きなので、いつもこちらを走ることにしているんけど。 と思ったら、国道のほうにも “堀店” というのがあったんですな。ちっとも知りませんでした。 で、この先、白樺湖に向うには152号線のほうが近いんですが、今回はそのままビーナスラインを走って、蓼科湖方面に向ってみることにしました。


<聖光寺と蓼科湖> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 蓼科湖。何度かその前を通ったことはあるんですが、一度もちゃんと散策したことはありません。 というのも、ここには 蓼科湖レジャーランド などというのがあるんですが、果たしてここの駐車場に勝手にクルマだけ止めて、ボートにも乗らず、パターゴルフもせず、そのまま何事も無く立ち去ることが可能なのか、今ひとつ心配だからなんですが、今回、レジャーランドの少し手前の左側に、かなり大きな駐車スペースがあるのを発見しました。 早速クルマを止めたんですが、よく見ると “聖光寺専用駐車場” と書いてあるんですよね。 見ると、確かに横のところに寺のようなものが見えております。 僕は聖光寺専用駐車場に勝手にクルマだけ止めて、聖光寺には見向きもせずに蓼科湖だけ散策するような厚かましさは持ち合わせていないので、仕方なく聖光寺のほうも覗いてみることにしました。入場無料みたいだしー。 が、これが思わぬ拾い物でありまして、意外と立派なお寺だったんですよね、これがまた。 あとで調べたらこういうところだったようなんですが、そうですか。桜の名所だったんですな。見頃は5月上旬とのことで、現時点ではまださっぱりだったんですが、その代わり、入口を入ってすぐのところにある池が絶品でありました。 いくつか仏像が配置されていくんですが、特に阿修羅は興福寺のそれに劣るとも勝らない出来のよさでありまして、もしかして、国宝? ま、国の宝とまでは言えないものの、少なくとも寺の備品くらいには指定されていると思うんですが、更にその右上には、ただの太ったオッサンにしか見えない大自在天というのもあって、恐らく興福寺の関係者は 「うちには阿修羅しかないやぁ。。。」 と、地団駄踏んで悔しがるに違いありません。

 奥の本堂のほうはあまり大したことありませんでしたが、駐車場の近くには三重塔まであって、なかなか大したものでありますなぁ。 今回、思いきり逆光になって、何やら怪しげな写真になってしまいましたが、これだけ見て、相当立派なものを想像していると、実物を目の当たりにした時のギャップが半端ではないので、心しておかなければなりません。 ということで、続いて蓼科湖を散策してみますかー。 歩いて道路を横断しかけてすぐ、反対側にも駐車場があることに気付いたんですが、最初からこっちに止めておけば、聖光寺で無駄な時間を費やさなくて済んだのにぃ。。。 ま、何事も社会勉強なので、運が悪かったと思って諦めるしかありませんが、ということで、蓼科湖。 “湖” という名前で相当立派なものを想像していると、実物を目の当たりにした時のギャップが大きいので、最初から “蓼科溜池” くらいに思ってたほうがいいんですが、天気がよければ蓼科山とか、八ヶ岳とかが見えるので、それなりではないかと思います。 ということで、全般的に満足度はそれなりな寄り道でありましたが、小諸方面に向けて、出発ー。 朝のうちは雲っていたんですが次第に天気も回復して、何とも気持ちのいいドライブでありましたが、遠くのほうにはアルプスらしき山々がチラっと見えたりしております。 チラっと見せられると、もっとよく見せろ!…という欲望が沸いてくるのが人情なんですが、 ピラタス蓼科 というスキー場の駐車場まで行けば、もっとよく見えますかね?ビーナスラインを外れて、ちょっと寄り道してみますかね?


<アルプス展望> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 ということで、ピラタスのちょっと手前、 蓼科アミューズメント水族館 の駐車場に到着ー。 ここまで来ればもう十分モロ見えなので、わざわざピラタスまで行くこともないでしょう。 ここでカメラのレンズを AF Zoom-Nikkor 70-300mm F4-5.6G に換えて、望遠で撮影ー。 あっちに見えてるのは南アルプス (たぶん) 、そっちのほうが中央アルプス (おそらく) 、で、正面には御嶽山が非常によく見えております。 その右は…と思ってファインダーを覗くと、おおっ、これは乗鞍岳でありますなー。 すっかり満足したのでビーナスラインに戻ることにしたんですが、その先、10分ほど走ったところにもちょっとした展望スポットがありました。 ここからは北アルプスの山がよく見えたんですが、あっちに見えてるのが槍ヶ岳、その隣が常念岳、となるとこのあたりが鹿島槍で、その横が白馬三山ということになりますかー。 更には妙高山まで見えて、さすが35mm判換算で450mmの望遠レンズっ♪…という感じなんですが、ここに 3分間100円の双眼鏡を設置すれば、けっこう儲かると思うんですけどねー。 とりあえず、僕のカメラを 1分間200円で貸してあげますので、覗いてみたい人は気軽に声を掛けて下さいね。


<蓼科神社と光得寺> (←クリックすると写真ページに飛びます。)

 この先、白樺湖にぐるっと回りこんで、国道152号線で上田に抜けるという手もあるんですが、そっちのルートは何度か走ったことがあるので、今回は県道40号線で小諸を目指すことしました。 白樺高原 という、冬はスキー場になるレジャー施設があるんですが、その前の道をずーっと北上するというルートになります。 結果として、このルートを選択したのは、んー、まあまあ?…という感じだったんですが、小諸の手前で色々な県道が入り乱れて、今ひとつ進路が分かりにくいのと、ところどころ狭い箇所があったのがネックでありましたな。蓼科から先は景色のほうもさっぱりだったしー。 大人しく国道を走ったほうが賢明だったかも知れませんが、その中で唯一、ちょっとした見所と言えなくも無いのが、蓼科神社光得寺でありました。場所はえーと、立科町ということになるんですかね? この町は Chakuwiki に、町の中心(北部)と観光地(南部)が道路1本だけでつながっており、それに沿った町の形であるため、まるで鉄アレイだ。 …などと書かれているんですが、確かに変な形をしてますよね。何でも、いちばん幅の狭いところは56mしか幅が無いそうなんですが、そういうところを走っていたら左手のほうに綺麗に桜の花が咲いているスポットがありました。 手前のほうには、馬鹿でかい木の残骸のようなものもありました。 その隣に生えている木も太さはさほどでもないんですが、背丈だけはえらく高くて、こちらは元気そのもの。 後から調べてみたら、どうやら蓼科神社の里宮というところらしいんですが、詳しくは ここ を見てもらうとして。 階段を上っていくと、なかなか由緒がありそうな本殿らしきものがあったんですが、でもって、その隣にあるのは 光得寺 というお寺だったんですな。 見た感じ、さほど由緒がありそうでもなかったし、階段のところに家族連れが座り込んで弁当を食ったりしてたので、中まで立ち入るのはやめておいたんですが、不開門などという立派な門があったんですな。それを知ってれば、ちょっとでも覗いておくべきでありましたなぁ。。。

 とまあそんなことで、小諸に到着ー。 朝の6時に桑名を出て、めっちゃ回り道して、寄り道までして、12時半を少し過ぎたところだったでしょうか? 1時から懐古園でお花見 (昼の部) を始めたとしても、終了時間は2時。 懐古園でのお花見 (夜の部) の開始が6時だとすると、4時間も間がありますな。暇やん!…というので、列車に乗って、 海野宿 というところに行ってみることにしたんですが、その話は ここ を見て貰うとして。 ということで、小諸に戻って来ました。懐古園でお花見をしました。 その話は ここここ を見て貰うとして、とまあそんなことで、1日目のお話はおしまい。 この続きは、また来週〜♪

 ということで、今日はスティーブ・キューンです。 いい名前ですね。スティーブ急運と漢字で書くと、荷物を急いで運んでくれるスティーブという感じがするとことがいいです。どうせならスティーブも漢字にしたいところなんですが、 “素恥部” とか、そんなのしか浮かんでこないところは、ちょっと今ひとつです。 で、今日はそんなキューン君の 『トランス』 という1枚を紹介したいと思うんですが、 『変圧器』 ですか。 ヘンなものをテーマに持ってきましたな。トランスというとどうしても、毎年2つずつ不合格の科目が残ってしまう電験3種のことを思い出して、ちょっぴりユウウツな気分になるんですが、暇なこの時期から勉強を始めたほうがいいですかね? …と思いつつ、毎年、試験の3週間くらい前にならないとヤル気が沸き起こらないんですけど。 スティーブ・キューンは見た目、かなり理系っぽいところがあるので、変圧器のイメージを音楽にしたとしてもさほど不思議ではないんですが、ここでいうトランスというのは、あるいは “恍惚” という意味なのかもしれず、むしろそのほうがキューンのイメージにはぴったりくるんですが、とりあえずまあ1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まずはアルバム・タイトル曲の 「トランス」 。 先日、リンガーハットで “ちゃんぽんランチB” を頼んだんですが、ちゃんぽん+ご飯+ギョーザ3個というセットであります。テーブルの上には醤油と酢とラー油の容器があるんですが、よく見たら今まで醤油だとばかり思っていた容器にですね、 “ギョーザのたれ” と書かれているんですよね。 ということは、酢は入ってるのか?…と思って、タレとラー油だけで食べてみたんですが、醤油とラー油の味しかしませんでした。世間で言うところの “足らん酢状態” だったわけですが、 「トランス」 というと僕の場合、まず最初に変圧器が出てきて、続いて “酢の不足” が頭に浮かぶんですよね。だから、恍惚なんだって!…と、理性では分かっているんですが、本能がそれを許しません。 で、この曲も酸っぱいのかどうか、ちょっと心配だったんですが、大丈夫でした。ピアノの透明なトーンが恍惚の境地へと誘う、そんな “よっちゃんいか” のような世界が展開されておりました。 スー・エバンスのパーカッションも非常に効果的でありまして、いやあ、実にトランスでありましたな。

 ということで、次。  「ア・チェンジ・オブ・フェイス」 。 「顔を取替える」 といった意味でしょうか? あんぱんまんの得意技でありますな。宇宙人もたまにやるみたいですけどね。 ここ の下のほうに出てくる緑色の引用部分の奴とか。 で、ここでのキューンはですね、エレピを弾いております。ジャズでエレピというのは、ちょっとどうか?…と思ってしまう、そんな保守派の僕なんですが、ここでのコレは、アリかも知れません。 エレピはおもちゃみたいなものだけど、個性的なスタイルを維持するために色彩として使っているよ。でもアコースティックでやるようなヴォイシングが出来ない。濁ってしまうんだ。…と、キューン本人も分かっているようなので、これはこれでいいんだと思います。 で、ここで特筆すべきはジャック・ディジョネットのドラミングでありまして、沖縄人風のルックスにモノを言わせて、なかなかスリリングで野性的なタイコを聞かせてくれております。これならもし昆虫に生まれ変わったとしても、タイコウチとして立派にやっていけそうなんですが、ちなみに僕は、もし昆虫に生まれ変わるとするなら、サバムシになってみたいと思うんですけど。 ところでサバムシって、どんな虫なんですかね?…と思って調べてみたら、釣餌として使われる着色された蛆虫であることが判明したので、やっぱりヤメておくことにしますが、テーマの後、キューンのエレピ・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。

 3曲目、 「スクァート」 。 僕はスカートが大好きで、めくってみたい。もしくは、まくってみたいと、いつも心の中で思っているんですが、なかなか実行に移すことが出来ません。めくれぬなら、めくれるまで待とうと、風とかで自発的にめくれあがることに期待している次第でありますが、ところで  「スクァート」 というのは、いったい何なんですかね? …と思って調べてみたら、噴出する、ほとばしる、注射器、消火器、いやなやつ、青二才。 そういった意味があるようです。 “いやなやつ” というのは嫌ですな。ハンサムデイイヤツならまだ許せるんですが、不細工で嫌なヤツというのは最悪だと思います。 キューンが果たして、どういう意味で 「スクァート」 と名付けたのか分かりませんが、聴いてみたらそれほど嫌な曲というわけではなく、ほとばしるようなアップテンポのナンバーだったので、それが正解かも知れません。 最初の2曲は、よく言えば聴きやすい、辛口な見方をすれば、やや軟弱なタイプの作風だったんですが、ここに来て一気に前衛化しちゃいましたな。 さきほど、それほど嫌な曲ではないと言ったのは、大いに間違っていたと反省しているところでありますが、少なくとも演奏そのものは、かなり嫌です。 でもまあ、3分ちょっきりと短めに纏められているので、どうしても我慢出来ないという事でもなくて、ということで、おしまい。

 続いては 「ザ・サンドハウス」 でありますか。 「ザ・砂の家」 。 雨が降ればすぐに流れてしまいそうなんですが、それならまだ、しるこサンドで家を作ったほうがマシなような気もします。蟻がたかりそうなんですけど。 で、これ、スワロウは独特な音色を持つベーシストだが、キューンの官能的なリリシズムとよくマッチしていて、それは 「ザ・サンドハウス」 でも認められる。…と、杉田宏樹クンが日本語ライナーに書いているので、恐らくそういうことなんだと思うんですが、いいですよね、スティーブ・スワロウ。 立っているとすぐに 「座ろう。」 と言い出して、ちょっぴり巨弱体質な感じのするところがいいです。 ま、実際のところ、座っているとベースを弾きにくいので、 「やっぱり立とう。」 という事になるのかも知れませんが、で、曲のほうはと言うと、かなり退屈な感じのバラードでありますな、こりゃ。 徐々に盛り上がりそうな気配は感じられたものの、結局は燃え尽きて終わってしまって、アルバム全体としては、幸先よく開幕2連勝を飾ったものの、その後は2連敗という結果に終わりました。

 5曲目、 「サムシング・エブリホエア」 。 とってもエレピな音色でありますが、楽曲的には3勝目でありますな。スワロウ君は、めっちゃエレベを弾いております。 で、テーマの後、めっちゃフィーチャーされてて、そこにキューンが絡んできて、かなりラテンっぽいノリになって来るんですが、サンバ・テイストの楽想はキューンらしくないとの声も聞こえそうだが、コマーシャルの仕事も多く手がけた彼の引き出しの一つがこの曲を生んだのだろう。…と、杉田クンは分析しております。秘密結社鷹の爪のレオナルド博士も、 「男は引き出しが多いほうがいい」 と言って、タンス男を作ってましたので、方向性としては間違っていないと思うし、僕はこういう分かりやすい演奏のほうが好きです。フュージョンっぽく聞こえてしまうんですが、キューンはしっかりソロを取っているし、ディジョネットの相変わらず好調で、何より。 とまあそんなことで、おしまい。 続く 「シルヴァー」 キューンの持つ官能的なリリシズムがよく発揮されたナンバーです。無伴奏ソロなので、ちょっと退屈なところもあるんですが、2分54秒という、ちょっとした小品なので、何とか耐え切ることは可能かと思われます。さほど盛り上がりはしないんですが、ま、ちょっとした気分転換ということで。

 7曲目、 「ザ・ヤング・ブレイド」 。 “blade” というのは刃物のことなんですが、 “威勢のいい青年” という意味もあるようで、その前にヤングという単語があることからすると、 「ザ・若い威勢のいい青年」 と訳すのが正解かも知れません。  となると、さぞや威勢のいい曲なんだろうと想像されるわけですが、実際のところ、8ビートを用いたジャズロック調の作品になっておりました。 が、分かりやすいのは出だしの部分だけで、テーマの途中から前衛風の作品に転じることになるんですが、融通無碍というか、変幻自在というか。 キューン、スワロウ、ディジョネット、スー・エヴァンスの4者が、各自で各々、好き勝手にやっているというか、コレクティブ・インプロビゼーション的な要素が強いんですが、いやあ、小難しかったです。 ということで、ラストです。 「ライフズ・バックワード・グランス」 。 ベースとピアノをバックに、陰気臭い詩が陰々滅々と朗読されます。こりゃ、気が滅入りますなぁ。…と思っているうちに普通の演奏になるんですが、いかにもキューンらしい耽美的なピアノが心を打ちます。ちょっぴり環境音楽っぽいムードもあるんですが、ま、浣腸音楽とかに比べれば上品だし、これはこれでいいんじゃないですかね?…と思っているうちに、わりとあっさりした感じで演奏は終わってしまうんですが、ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 平易さと甘美さと難解さが綯い交ぜになった、なんともミステリアスなアルバムでありました。 あ、 「ないまぜ」 って、こういう字を書くんですな。平易さと甘美さと難解さがない交ぜになった…では、難解さが無いんだか、交ざっているんだか、分からなくなってしまうので、敢えて漢字を使っておいたんですが、もともとは歌舞伎の用語みたいなんですけどね。 途中、何だかよく分からんのもいくつかあったんですが、最初と最後をきっちりキューンらしく纏めているので、トータル的に、いかにもキューンやなぁ。…という印象が残る仕上がりとなっております。 基本、真っ黒なファンキー系が好きな僕なんですが、たまにはこういうのも、いいかも?


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