KING SIZE (CONTEMPORARY)

ANDRE PREVIN (1958/11/26)

KING SIZE


【パーソネル】

ANDRE PREVIN (p) RED MITCHELL (b) FRANKIE CAPP (ds)

【収録曲】

(01-03) I'LL REMEMBER APRIL / MUCH TOO LATE / YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
(04-06) IT COULD HAPPEN TO YOU / LOW AND INSIDE / I'M BEGINNING TO SEE THE LIGHT

【解説】 (2009年02月01日更新)

 キング。それは王様です。アメリカ公民権運動の王様がキング牧師なら、ペンギン界の王様はキングペンギン、そして殿様界の王様と言えば殿様キングス。世の中にキングより強いものはおりません。 いや、ペンギンならキングよりもエンペラーのほうがデカいのではないか?…とか、そういう意見もあるかも知れませんが、ま、たまに皇帝に負けることがあるとは言え、王様というのはそこそこ偉い。そういう事でいいのではなかと思います。 とまあそんなことで、今日は事務用品業界の王様、キングジムについて考えてみたいと思うんですが、この会社はですね、強いです。何と言ってもキングファイルという、ファイル界の王様のようなヒット商品があるのが強みなんですが、右と左、どっちにでも開く “スーパードッチ” というのも実に画期的な商品だと思います。あとはえーと、 “テプラ” ですか。僕たちが子供の頃、筆箱とか、習字の道具を入れる箱とか、絵の具と筆を入れる箱とか、家庭科の裁縫道具を入れる箱とか、そういう箱の類に名前を入れる道具としては “ダイモ” というのがあったんですが、アルファベットや数字の書かれたダイヤルを回して、ぐぢゃ。…といった感じでレバーを握ると、赤や青のテープに白い文字が浮かび上がるという、そういう仕掛けになっておりました。ぐぢゃ。…というところまで力を込めず、んかんか。…と軽くレバーを握ることによって、空打ちしてテープを送ることも可能だったんですが、ただアルファベットと数字しか打てないところがネックでありました。 いや、文字盤を取り替えることによってカタカナやひらがなも打てる機種があったんですが、カタカナで “イナバユウジ” と打って缶ペンケースに貼ったりするのは、子供心にもダサいような感じがしたので、もっぱらローマ字専門で使用しておりました。当時、カタカナで名前を貼っていたのはおそらく、 “タケカワユキヒデ” くらいでは無かったかと思われます。

 そんなある日、キングジムから彗星のように登場したテプラは、何と漢字が打てるっ!…というので、一世を風靡することになるんですが、ちなみに初代のテプラはキーボード式ではなく、平仮名が書かれたダイヤルを回すという、まさに “電子式ダイモ” といったスタイルになっておりました。1988年の発売らしいんですが、社会人になりたての頃、会社にあった初代機を使ったような覚えがあります。ヘルメットに名前を貼るとか、確かそういう用途に使ったのではないかと思うんですが、ちなみにテプラという名前の由来は “テープライター”を縮めたものなんだそうですね。 スーパードッチ同様、今ひとつストレート過ぎるネーミングであるような気もするんですが、当時、名前の候補としては “ニョロニョロ” なんてのもあったそうです。なるほど、テプという機械は中からテープがニョロニョロと出てきますもんね。その他 “知る人ぞシール” という案もあったそうですが、そんな変な名前にしなくて、本当によかったと思います。もうちょっとで、くだらんギャグ言って一人で喜んでいるキモリテジャズオヤジの典型みたいなやつだな。…とか言われることになるところでしたが、テープライターだから、テプラ。 シンプルで分かりやすい名前ではありませんか。

 そんなキングジムから去年の暮れに新しいガジェットが発売されたんですが、ところで、ガジェットって何なんすかね?ガシっと入るポシェットみたいなもん?…とか思って調べてみたら、どうやらデジタル家庭電化製品のうち、デジタルカメラや携帯電話、携帯ゲーム機など、目新しい小型の電子機器を指す用語なんだそうですが、その新しいガジェットの名前は “ポメラ” 。 何だか小型の室内犬とガメラとが過ちを犯した結果、生まれてしまった不貞の子のような名前なんですが、ポケット・メモ・ライター、略してポメラなんだそうです。これで何が出来るかのいうと、まず最初にメモ書き。あとはえーと、以上っ!…という、極限まで機能を限定した超割り切りスタイルの代物なんですが、こんなものを一体、何に使うのかというと、例えばえーと、メモ書きとか。 txtファイルが作成出来るということなので、ま、Windows付属の “メモ帳” だと思っておけばいいんですが、2万円も出して、いったい誰がこんなもん買うんですかね?…という大方の予想と裏腹に、品薄になっちゃうくらい売れているらしいんですよね、これがまた。 どうやら (1) コンパクトなサイズなのに、わりとちゃんとしたキーボードが付いている。 (2) 電源を入れると2秒で起動して、すぐに入力が可能になる。 (3) 単4乾電池2本で20時間使える。 (4) ATOK搭載で、変換もサクサク。 …といったところが評価されているようなんですが、なるほど。確かにノートパソコンは小さくなったといっても気軽に持ち運ぶには邪魔くさいし、起動に時間が掛かるし、電池の持ちは悪いし、単なるメモ書きマシンとしてはちょっと大げさ過ぎますよね。そのため、僕は外で塩サバの原稿を書くのに、もっぱら “Zaurus SL-C760” を使っているんですが、お世辞にもキーボードが使いやすいとは言えないし、日本語入力システムも決してお利口さんとは言えません。むしろ、アホか!…と思わずにはいられない所業にイライラさせられることも多く、もし僕の書いた原稿がキモリテだとするなら、その原因の約2%はザウルスにあるものと言えるでしょう。 ま、パソコンで書いても似たようなものなので、残りの98%は僕個人の資質によるものだとは思うんですけど。 書く内容がどうであれ、ポメラ、いいかも知れない。…という気がしないでもないので、モノは試しに買ってみることにしました。

ぽめらVS文庫本 大きさ比較♪

 とまあそんなことで、買ってみました。 色は白・黒・オレンジの3種類あるんですが、僕は断然、黒が好きっ♪パンツは白でも、ガジェットは黒っ♪ オレンジなんてのは問題外なんですが、ま、尿漏れした時に目立たないという利点はあるんですけど。ネット通販でほとんど何も考えずに黒を注文して、その後で口コミ情報を見たら、黒は指紋が付きやすくて、今ひとつ。…などと書かれていたんですが、もう今さら取り返しは付きません。血液型A型で根が神経質な僕にとって指紋ベタベタという状況は耐えられないに違いありませんが、こうなったらもう、本体に変なシールを貼ってやるぅ!…という、あまり意味のよく分からない破壊的な衝動により、手元に届いたポメラには恥ずかしいフジサンクンを貼っておきました。おかげで指紋にはあまり目がいかないようになりましたが、天板以外の部分はラバーコート仕上げになっているので、どうせなら全身ゴム仕立てでもよかったような気がするんですけどね。大きさはほぼ文庫本サイズ。かなり厚みあって、 “Zaurus SL-C760” より一回りは大きいです。昔のカラーザウルスに近い感じ? ドラえもんの四次元ポケットでない限り、ポケットに入れるにはかなり無理があるんですが、ノートパソコンを持ち歩くことを思えば、ぜんぜん許容出来るサイズです。見た目的にも、けっこうカッコいい? これでフジサンクンさえ貼ってなければ言うことはないんですが、蓋の部分をパカっと開けると、中にはキーボードの展開方法が書かれておりました。説明を見る限り、ちょっと難しく思われるかも知れませんが、慣れてしまえば操作は極めて簡単。左にあるボタンを押すとキーボードの右半分が、ガチッ!…と起きあがってくるので、左側を左にスライドさせながら右半分を開いていって、最後にカチっと押し込んでやれば、オーケー。この開動作が、いいっ♪ スライドさせながら開いていくところが、いいっ♪ かなりギミックな作りなので、すぐに壊れるんじゃないかと心配になるんですが、造りがしっかりしているので、大丈夫そうですかね?

ぽめら開操作(その1)♪ ぽめら開操作(その2)♪ ぽめら開操作(その3)♪

 机の上に置いた時にキーボードの両端がガタつかないようにちゃんと工夫されているし、そこかしこに事務の王様としてのキングジムの誇りが感じられ、いい仕事をしていると評価することが出来るでしょう。伊達に2万円も取っているわけではありませんな。

裏ぽめら♪

 ディスプレイは640×480のVGA。 ただ今どき、白黒というのはどうか?…と思う人もいるかも知れませんが、どうせメモ書きしか出来ないわけなので、カラーなどまったく不要。ザウルスの場合、屋外ではまったく画面が見えないところがかなり不満だったんですが、バックライト無しの白黒なら、その心配も不要。おかげで電池の持ちもいいわけだしー。 ただ、せっかくのVGA画面なのに最小フォントが24というのはちょっとどうか?…という気がしたんですが、1行あたり26文字くらいしか表示出来ませんもんね。 もうちょっと小さいフォントを使えたほうがいいかと思っていたんですが、実際に使ってみると、これくらいの表示でちょうどいいのかも知れません。キーボードの打ちやすさも日本語入力の賢さも、サバ君的にはまったく問題無し。 かく言うこの原稿はすべてポメラで書いているんですが、最大の弱点とされる1ファイルあたり8000文字という制限もファイルを2つに分ければいいだけの話なので、さほど大きな欠点ではないですな。 で、敢えて不満な点を挙げるとすれば、ユーザー辞書の機能がちょっと貧弱なところでしょうか。辞書にhtmlのタグを登録してみたんですが、全角18文字 (半角36文字) までしか登録出来ないので、長いタグは駄目でした。このあたり、ちょっと工夫が必要なところではあるんですが、あとはえーと、ファイル操作が貧弱なところとか。ファイル名で並び替えが出来ないところなど、あのキングファイルで鳴らしたキングジムの商品とは思えないほどなんですが、ま、そのファイルとこのファイルとはまた別の話なので、このことによってスーパードッチの名声に傷が付くというワケではないんですけど。 あとはえーと、本音を言えばやっぱり8000文字の制限は無いほうがいいし、“txt”以外に“html”とかの拡張子も受け付けて欲しいし、画面はもうちょっと大きいほうがいいし、でも全体のサイズはもうちょっと小型のほうがいいし、単4電池1本で4000時間持つようにして欲しいし、mp3で音楽を聴きたいし、動画ファイルだって鑑賞したいし、となるとやはり白黒のディスプレイというのは痛いし、ネットにも接続出来るようにして欲しいし、ワンセグだって見たいし、デジタル一眼レフカメラの機能も組み込んで欲しいし、テプラとしても使えるようにして欲しいし、いざという時には労働2号になったりすると便利だし、金正日の後継者は三男の正雲より長男の正男のほうがいいと思うし、…とまあ、欲を言い出せばきりがないんですが、余計な機能が付いてないからテキスト書きに集中出来るのだという意見もあるし、なるほど、パソコンだとついつい余計なスケベ動画の鑑賞とかに走ったりして、ちっとも原稿が進まなかったりしますからね。今のままのスタイルを貫くという姿勢が、王様としては大切なのかも知れません。

 ただやはりプレミアムブラックは指紋のベタベタが目立つので、もし今のポメラが開閉操作のやり過ぎで壊れちゃった場合、2号機は違う色にしたいところでありますなぁ。新色発表の噂もあるんですが、事務機器の王道である黄土色バージョンの発売を切望して、とまあそんなことで、今日のお話はおしまい。

 ということで、今日はアンドレ・プレビンです。 前回の原稿 で “トートバッグ(ライオン)” の話を取り上げたんですが、そういえばこの 『キング・サイズ』 というアルバム、まだ聴いたことがなかったっけ?…という事に気付いて、慌ててAmazonで取り寄せてみました。中古品しかなくて、2,800円という値段が付けられていたんですが、今見たら 13,889円などという法外な値段を付けている出品者もおりました。こういう無法者に天罰が下ることを祈らずにはいられませんが、ちなみに “トートバッグ(ワニ)” の存在が期待されたコンコードのジャズ系グッズなんですが、調べてみたらどうやらデザインは全部で6種類。残念ながらワニはいなくて、マイルスの 『クッキン』 とかがありました。コンテンポラリー盤だけでなく、プレスティッジも扱っているようなんですが、トート以外にマグカップもありました。 HMV の通販で売られておりますので、希望者は各自、自力で入手して下さい。ジャズにはまったく興味のないギャル達にデザインの選択を委ねたそうで、結果、世間で言うところの “名盤” とは必ずしも一致しないラインアップになっているんですが、ケリー・スミスのベイシー物とか、なかなか渋い趣味だったりしますよね。 とまあそんなことで、百獣の王ライオンのジャケットがギャルにも人気の 『キング・サイズ』 のレビューを、キングジムのポメラを使って書いてみましょうか。

 アンドレ・プレビンはアンドレ・ザ・ジャイアントやアンドレ・カンドレと並ぶ “世界3大アンドレ” のひとりとして、日本でも抜群の知名度を誇ります。代表作はシェリー・マン 『マイ・フェア・レディ』 。人様の名前で出されたアルバムばかりが取り上げられて、ちょっぴり不満だとは思うんですが、意外なところで自分のリーダー作が富士サファリパークの土産になったりして、よかったではありませんか。 で、この 『キング・サイズ』 、ジャケットばかりが有名になって、肝心の中身のほうがどういったものなのか、まったく知らずにいたんですが、ベースのレッド・ミッチェルとドラムスのフランキー・キャップを従えたトリオ編成で、スタンダードを中心にした選曲という、かなりオーソドックスな作品となっておりました。 とまあそんなことで、1曲目。 「アイル・リメンバー・エイプリル」 。日本では 「四月の思い出」 という邦題で知られているスタンダードなんですが、ラテンのリズムで賑やかに演奏するというのが定番になっております。おそらく、四月→四月馬鹿→馬鹿騒ぎ…という連想が、ジャズマンをして思わずラテンに走らせるのではないかと思うんですが、ここでのプレビンも概ね、基本に忠実なスタイルで演奏しております。この人は後にクラシックの世界に転じた事もあって、何となく堅苦しいカタクチイワシ。…といったイメージがあったんですが、賑やかなリズムに乗ったイントロや、オーソドックスなテーマ部の処理など、ごく普通にジャズしておりまして、何も恐れることはありませんでした。特にフランキー・キャップのドラミングが、いかにもフランキーな帽子やな。…といった感じで、切れ味抜群なんですが、プレビンのピアノも抜群のテクニックを誇っておりまして、特にアドリブ・パートに入ってからの息をもつかせぬ淀みのないフレージングは、けだし圧巻です。 ただ、あまりにもお上手過ぎて、今ひとつ面白くはないんですけどね。息をつく暇がないから窒息しそうになって、ちょっとアレだったりするんですが、終盤にはベースをフィーチャーしたパートがあって、そこでようやく息を吸えるようにはなるんですけどね。 ま、プレビンらしさは存分に発揮されたナンバーだと評価することは出来るんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 2曲目の 「マッチ・トゥ・レイト」 はプレビンのオリジナルです。 「遅過ぎる」 というタイトルからも分かるように、思い切りテンポを落としたスローなブルースなんですが、こういうタイプの曲はプレビンの持つイメージからすると、ちょっと違うような気がしないでもありません。 ま、その意外性が狙いなのかも知れませんが、出来としても意外と悪くないですしね。黒人のソレのように息が詰まるほどアーシーではなく、どことなく洒落っ気の感じられるところがいかにもプレビンなんですが、同じアンドレでもアンドレ・カンドレではこうは行きません。デビュー曲の 「カンドレ・マンドレ」 とか、あまりお洒落ではないですもんね。 いや、聴いたことはないので、どういう曲なのかよくは知りませんけど。 で、この 「マッチ・トゥ・レイト」 は遅過ぎるのと同時に、長過ぎるところがネックだったりするんですが、 9分28秒もありますもんね。並々ならぬ決意の感じられる大作であると評価する事も出来ようかと思いますが、僕は途中で飽きました。飽きて途中でアキラの声が聴きたくなってきました。いいですよね、フィンガーファイブのアキラ。僕は将来、大きくなったらアキラになるんだ♪…とか、そんな夢を抱いたこともありましたが、あの髪型とメガネを真似するのはどう考えても恥ずかしいので、アキラになる道は諦めたんですけど。 途中、レッド・ミッチェルのベース・ソロがフィーチャーされるなど、無駄に長い中で、それなりに飽きさせない工夫は凝らされているんですが、最後はやっぱり飽きてしまって、とまあそんなことで、次。

 3曲目、 「ユー・ド・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」 。日本では 「帰ってくれれば嬉しいわ」 という邦題で知られているスタンダードなんですが、そうですか。帰ってくれれば嬉しいですか。呼んでもいないのに勝手に遊びに来て長居するヤツとか、いますもんね。誰とは言いませんが、永井クンとか。大した用事もないのに無駄に長居をする仲居というのもちょっと迷惑なんですが、お茶の用意をしたら、さっさと帰れよ!…とか思わずにはいられません。 とまあ、そんな話はあまり関係がなくて、正確には 「早く帰って来てくれれば嬉しいわ」 といったシチュエーションの歌だったりするんですが、わりとカラっとした感じで、スインギーに演奏されることが多いナンバーです。 ここでのプレビンも極めて湿り気の希薄な弾きっぷりだったりするんですが、出だしの部分は何だか違う曲みたいで、一瞬、あれ?…とか思ってしまいます。 が、途中から出てくるメロディは紛れもなく 「ユード・ビー・ソー・ナイス」 なので、あれこれ言うことはそう無いっす。それなりにナイスな仕上がりだとは思うんですが、期待したほど傑出した出来というわけでもなくて、ま、普通といったところでしょうか? でもまあ、悪くはないので、よかったのではないかと思います。

 ということで、4曲目。 「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」 。 ジミー・ヴァン・ヒューゼンが1944年のパラマウント映画 『アンド・ジ・エンジェル・シング』 の為に書いたもので、プレビンはバラードとしてロマンチックに弾きこなしている。…と、岡崎正通クンが日本語ライナーに書いておりますが、いいですな、ロマンチック。僕はロマンチックな曲が大好きです。マロンちっくな曲よりも、いいよな。…という気がするんですが、マロンちっくな曲というと、例えば 「大きな栗の木の下で」 とか。あれはマロンですよね。いけません。 一方、ロマンチックな曲と言うと例えば、 『ドラゴンボール』 のエンディング・テーマ、 「ロマンティックあげるよ」 なんかが挙げられるんですが、貰えるものなら欲しいですよね、ロマンティック。 筋肉痛の時だと、サロメチールとかのほうが嬉しいんですけど。 で、この 「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」 は、紛うこと無き極めつけのロマンティック・バラードでありまして、どんなオッサンが弾いてもそれなりにうっとりさせられてしまうんですが、ここでのプレビンのプレイも悪くありません。玉を転がすようなお上品なタッチが耳に心地よく、無駄にテクに走らない控えめな態度も、謙虚を美徳とする日本人には好印象。あとはえーと、特に書くことを思いつかないんですが、ま、よかったのではないでしょうか。

 で、続く 「ロー・アンド・インサイド」 は本作2つめのプレビン・オリジナルです。 またしても “遅過ぎ&長過ぎ” のスローブルースだったりして、途中で飽きるのが懸念されるんですが、 「マッチ・トゥ・レイト」 よりは気持ちノリがいいし、演奏時間も30秒くらい短いので、ま、何とか許容出来る範囲内であると言えるでしょうか。プレビンはわざとリズムをずらしたりしながら、奔放なアドリブを繰りひろげてゆく。クラシックをしっかりと会得しているだけあって、両手を充分に使った、ダイナミックな展開が素晴らしい。…と岡崎クンは書いておりますが、ま、確かにそれなりにアレだとは思います。 途中、レッド・ミッチェルの赤ミッチェルなベース・ソロも聴けて、とってもお得。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 アルバムの最後を飾るのはエリントン・ナンバーの 「アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト」 。1944年にエリントン自身がジョニー・ホッジス、ハリー・ジェイムスと合作したものだそうですが、いいですよね、ホッジス。何となくJISマークが付いていそうな安心感があって、ホッと出来るホッジスだったりするんですが、新JISとか旧JISとか、色んな規格があって機械の世界も結構ややこしかったりするんですけど。出力軸キーの寸法が違ったりして、合わんやん!…みたいな。モーターはそのままでポンプだけ乗せ換えたりする時に注意が必要なんですが、ホッジスの書く曲にはそういう小難しいところが無くて、いいですよね。共作者のエリントンとハリー・ジェイムスに関しては、特にネタを思い付かなかったのでスルーしておきますが、ハリー・ジェイムスは、はりはり漬けと天むすが好きっ♪…とか、そんな不確実な情報を書いても、あまり意味はないですからね。 で、曲のほうはというと、ミディアム・テンポのなかなか小粋なナンバーだったりするんですが、フランキー・キャップのブラッシュ・ワークも冴えていて、素晴らしい仕上がりだと言えるのではなかろうかと。こういう、何気ない演奏に味がありますよね、プレビン。いいんじゃないでしょうか。 とまあそんなことで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 全体的に投げやり感の漂うレビューになってしまいましたが、悪くは無い1枚だったと思います。プレビンのピアノも非常によく弾けているし、サイドマンのサポートも適切だし、2曲のオリジナルがディープなのはちょっとアレなんですが、それ以外の選曲は適切だし、大きな欠点はどこにも見当たりません。にも関わらず、何だか完全に乗り切れない自分を感じたまま今日に至っているんですが、いや、具体的に何がどうのということでは無いんですけどね。でもまあ、別に実害があるわけではないし、バラードの出来は普通にいいと思うし、ま、2,800円だったし、これはこれで、たまにはいいのではないでしょうか。


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