TIME WAITS (BLUE NOTE)

BUD POWELL (1958/5/24)

TIME WAITS


【パーソネル】

BUD POWELL (p) SAM JONES (b) "PHILLY" JOE JONES (ds)
【収録曲】

(01-03) BUSTER RIDES AGAIN / SUB CITY / TIME WAITS
(04-05) MARMALADE / MONOPOLY
(06-07) JOHN'S ABBEY / DRY SOUL
【解説】 (2008年07月06日更新)

 君は映画が好きかな?僕はですね、さほどでもありません。映画を見るよりもエイや蛾を見るほうが好きで、子供の頃は水族館や昆虫館にばかり行っておりました。…とか、そういう少年時代を送っていたのかというと別にそういうわけでもなく、生き物系とかにもあまり興味はなかったんですけどね。そんな僕にとって映画にまつわる思い出といえば、小学校の修学旅行で京都太秦の映画村に行ったこと、中学生の頃、学校の行事で桑名市民会館で何か映画を見たような気がしないでもないこと、高校生の頃、学校の行事で四日市のホールで何か映画を見たような気がしないでもないこと、高校生の頃、キリスト教倫理の授業で 「イエスの生涯」「未成年の性」 という2本立ての映画を鑑賞したこと。以上、トータルして4回くらいしか経験がなかったりするんですが、中では学校行事の一環として見せられた寅さん映画がですね、当初の期待の薄さとは裏腹に、意外とツボにはまってしまったりしたんですが、毒の無いベタな人情系のお笑いで、ちょっぴり泣かされる要素もある世界が嫌いではない自分を再発見させられた思いでありました。 とまあそんなことで、僕と映画に関するお話は以上です。 オトナになってからは映画とは何の関わりもない生活を続けておりまして、この歳になるまで映画館というところには一度も足を踏み入れたことがありません。…という、そういう人生がですね、39歳の後半になるまで続いていたんですが、昨年、遂に映画館デビューを果たすことになりました。何を見たのかというと 『ALWAYS 続・三丁目の夕日』 なんですが、“続” でないほうをDVDで見たらめっちゃ泣けたので、“続” のほうは映画館で見ました。めっちゃ泣きました。 『マリと子犬の物語』 の予告編にもウルウルしてしまったんですが、本編が始まる前に流れていた 『鷹の爪』 とかいうのは、アレはいったい何だったんですかね?

 …というのがちょっと気にはなっていたものの、基本的にどうでもいいことなので、さほど気にとめる事もないまま40歳になってしまったんですが、つい先日、総統や吉田君、デラックスファイターたちと再会を果たすことが出来ました。 こんなところ にいたんですな。TVシリーズを見て、第9話でレオナルド博士が食われてしまった時はちょっと泣いてしまいましたが、この “GyaO” には 昭和TV などというコンテンツもあったりして、0〜20歳くらいまでの間、昭和と言う時代を生きた僕としても非常に懐かしかったりします。おおっ、『アタックNo.1』 もありますなー。洗濯洗剤のアタックを洗濯機に投入しながら、思わず 「アタックぅ〜、アタックぅ〜、ナンバーワーン♪」 と歌ってしまう主婦は少なくないに違いありませんが、あとはえーと、映画もありますな。ラインナップは非常に限定的なんですが、有料版の Show Time のほうならシネマ、Vシネマ、シネマ[R18] と、色んなタイプのシネマを楽しむことが出来ます。秘密結社・鷹の爪の吉田君は島根出身なんですが、よく探せば島根のシネマというのもあるかも知れません。 ま、たとえそんなものがあったとしても、さほどソソられるものはないんですが、島根以外にはいくつか、ちょっぴりソソられる作品もありましたので、とりあえず鑑賞してみました。で、今回はその感想などを書いてみたいと思います。

『野性の証明』 (1978)

監督:佐藤純彌/原作:森村誠一/脚本:高田宏治
出演:高倉健、薬師丸ひろ子ほか

昭和TV” でも配信されておりますので、今なら無料(ただ)♪…なんですが、いやあ、懐かしいですな。1978年というと、さばクンは10歳くらい。僕の家が火事で燃えたのがちょうどこの年ではなかったかと思うんですが、この原稿を書いている今日(7月5日)がまさにファイアー・メモリアル・デーだったりします。 「お父さん、怖いよ!大勢でお父さんを殺しに来るよ!」 とか、そんなコマーシャルが盛んに流れていたのを覚えていますが、実際の映画を見るのは今回が初めてです。原作のほうは10歳よりも、もうちょっとだけオトナになった頃に読んだ事があるんですが、茄子プレイが出てきたのが、コドモ心…というか、ちょっとだけオトナ心には強く印象に残っております。あらすじのほうは、ま、上のタイトルのところをクリックすれば出てくるので、そちらを見て貰うとして、 『三丁目の夕日』 でお母さん役をやってた薬師丸ひろ子が若いっ!めっちゃ若いっ!というか、まだお子様? 1964年生まれということなので、当時14歳くらいですかぁ。いいですな♪ 映画はまず、自衛隊の訓練シーンから始まるんですが、何かこういうのって、フィールドアスレチックにありそうですよね。冒険とりで?楽しそうですなー♪

 ただ高所でこういう作業を行なう場合、やはりヘルメットを着用したほうがいいのではないかと思うんですが、ゼネコンの下請けの作業現場とかなら、即刻で出入り禁止だと思います。 「ゴー!」 「レンジャー!」という掛け声もちょっぴり意味不明。ゴレンジャーごっこのノリなんでしょうか?あるいはレンジャー部隊のイメージ? ただ、いくらレンジャー部隊だからといって、 「レンジャー!」 という掛け声はどうかという気もするんですが、例えば八百屋のおっちゃんとか、別に 「八百屋ー!」 と叫びながら大根を売ったりはしませんもんね。 で、パッと見、子供の遊びのようにも見える特殊工作隊の訓練なんですが、実は極めて過酷なものらしく、例えば1ヶ月に及ぶ山岳行動訓練の場合、たった3日分の食料しか与えられずに、あとは自給自足を余儀なくされるんだそうで。空腹のあまり、思わず自分の腕をナイフでえぐって食う奴まで出てくる始末なんですが、自給自足なら腕ではなく、自分の足を食ったほうがいいような気もするんですけどね。ま、いずれにせよ、こういうグロいシーンはやめて欲しいところなんですが、一般住民との接触は絶対に厳禁なんだそうで、それが後に悲劇を巻き起こす要員となってしまいます。高倉健が扮する主人公の味沢クンはその特殊工作隊の隊員なんですが、ここで若いギャルが登場。一人で山道をハイキングしていると森の中からレゲエのおっさんみたいなのが飛び出してきて、一撃で殺されてしまいます。その後、村の住民も次々と斬殺されてしまって、いやあ、グロいですなぁ。。。画面いっぱい血飛沫に染まったりして見るに耐えませんが、集落の住民13名のうち13歳になる少女、長井頼子だけが生き残って、その替わりにハイキングのギャルが巻き込まれてしまったんですが、このギャルの名前は越智美佐子。彼女には双子の妹がいて、そちらの名前は越智朋子。普通、双子だったらもっとよく似た名前を付けると思うんですが、例えばザ・ピーナッツだったら伊藤エミと伊藤ユミだし。お姉さんが美佐子なら妹は美佳子にするとか、最低でも久美子とか、せめてどちらも漢字3文字にする程度の統一感は欲しかったところですが、ま、僕の小学校時代の同級生だった双子の柳川兄弟の場合もケンイチとトモオで、さほど名前には共通点がなかったので、世の中にはそういう親もいるのかも知れませんけど。…とか思っていたらこの姉妹、別に双子ではなくて、双子のようによく似ているという事でありましたか。となれば柳川兄弟の話とか、まったく意味がなくなってしまうんですが、今さら書き直すのも面倒なのでとりあえずそのまま先に進みます。

 事件のショックで記憶をなくした頼子ちゃんは親戚と思われるオバチャンに引き取られることになるんですが、1980年という設定で、この服装はちょっとどうか?…という気がしないでもありません。80年なら僕は小6になっていたと思うんですが、同じクラスにこんな格好をした女子はいませんでしたからね。ま、可愛いからいっかぁ♪…という気もするんですが、そして1年が経過しました。沼に沈んだクルマを引き上げると中からオッサンの死体が出てきて、さあ大変。羽代新報という新聞社に勤める越智朋子の同僚の立山クン、死んじゃいましたかぁ。警察では単なる事故死として処理してしまうんですが、これは怪しいですな。めっちゃ怪しいです。朋子ちゃんも怪しいと思っているし、味沢クンだって怪しんでおります。どうしてここで味沢クンが出てくるのかというと、自衛隊をやめて保険の外交員になっているからなんですが、立川クンの車に同乗していたホステスの明美ちゃんには事故の10日ほど前に多額の保険金が掛けられていたんですよね。ただ明美ちゃんの死体は上がっていないし、彼女の旦那はヤックン関係みたいだし、これはもうあまりにも怪しいので保険金の支払いは応じかねるところでありますが、朋子ちゃんと同じ店に勤めているホステスは余計なことを喋ったのがタタったのか、ボコボコに殴られて蹴られて、朋子ちゃんは大場総業の会長の長男が率いる暴走族に襲われて、それを助けようとした味沢クンは無抵抗のままボコボコに殴られて蹴られて、もう、めっちゃバイオレンス。見ているほうが嫌になっちゃうほど、無意味に暴力的でありますな、こりゃ。 あ、ちなみに大場総業というのは羽代市を牛耳っている大企業らしくて、警察とか新聞社とかも押さえているらしいんですが、この会長の息子の役が舘ひろしだったりします。僕は子供の頃からずっと “やかたひろし” だとばかり思っていて、 “たちひろし” やったんか!…というのに気付いたのは、わりとオトナになってからだったんですが、この人、あぶない刑事になる前は、あぶない暴走族だったんですな。 ま、暴走族が危ないのは極めて普通のことだったりするんですけど。 で、大場総業という会社そのものも裏でとても悪いことをやっているらしく、新聞記者の立山クンはその不正を暴こうとして事故死させられちゃったようなんですが、以後、味沢クンと朋子ちゃんの権力に対する挑戦の姿が描かれることになります。 で、一方、頼子ちゃんのほうはというと、いつの間にやら味沢クンと一緒に暮らしていたりして、その辺りの経緯がよく分からなかったりするんですが、で、この味沢クンはですね、自衛隊からも付け狙われているようですね。何故かというと、どうやら除隊の経緯に何か問題があったようなんですけど。

 明美ちゃんの死体はどうやら土木工事のどさくさに紛れて、堤防に埋められちゃったらしい。そう判断した2人は夜中にこっそり工事現場に行って、とめてあったユンボで堤防を掘り返すんですが、いや、何とも無茶な話ですよね。ユンボの鍵を付けっ放しにしてたんですかね?夜中に勝手に民間人に使われて、これはもう、重機管理責任者は次の日から現場へは出入り禁止になっちゃうに違いありません。ま、ユンボの鍵はよく座席の下とかに隠してある場合が多いので、そこのところを味沢クンに付け込まれたのかも知れませんが、味沢クンも味沢クンです。いくら死体発掘の為とは言え勝手に堤防を掘り返したりして、もし大雨が降って堤防が決壊して水死者が出たりしたら、業務上過失致死罪は免れないところです。 そもそも、堤防に埋められた死体がそんなに簡単に出てくるのかというと、これが意外とすんなり明美ちゃんの遺体が発見されてしまって、埋めたほうも埋めたほうだと思うんですが、こんなことならまだ立山クンと一緒に沼に沈めたほうがよかったのではなかろうかと。保険金目当てで事故死に見せかけるのに、わざわざ他のところに埋めた意図が今ひとつ掴めませんよね。もしかして、犯人はアホですかね? が、アホはアホなりにそれなりに勘はいいようで、死体遺棄現場をほじくり返されている気配を感じ取って現場に駆けつけて、乱闘騒ぎになって、味沢クンの運転するユンボのアームで叩き殺されそうになっちゃいます。ああん、だから朝のKYミーティングで 「旋回範囲内に立ち入らない」 って、みんなで唱和したのにぃ。。。ちなみに土建屋業界で言うところの “KY” は “空気読めない” ではなくて “危険予知” だったりするんですけど。

 で、その後、生命保険会社をクビになった味沢クンは何故だか大場総業で働くことになったり、頼子ちゃんを惨殺現場に連れて行って、無理やり記憶を取り戻させようとしたりして、今ひとつ理解に苦しむ行動を取ったりするんですが、やめろ、高倉健!薬師丸ひろ子が可哀想やーん! 原作ではいちばん最後に明かされる事件の真相が、何故か映画では真ん中あたりで回想シーンとして出てきたりして、悪いことは言いません。もし原作をまだ読んでなくて、後から読んでみようと思っている人がいるなら、回想シーンの直前で映画を停止させましょう。ネタばれもいいところです。グロいしー。 とまあそんなこんなで、土木作業員として働くことになった味沢クンなんですが、あー、ヘルメットの顎紐をちゃんと締めなければ駄目ぢゃん! どうもこの映画は土建屋の事情に疎いようなんですが、これでは映画監督は務まっても、とても現場監督は任せられませんね。ま、別にいいんですけど。 で、その後、大場総業の不正を暴こうとした朋子ちゃんが返り討ちにあって舘ひろしの一味に殺されてしまって、あ、このレビューこそネタばれもいいところなので、もしこれから映画を見ようとしている人がいるなら、柳川兄弟が出てきた辺りで読むのをやめたほうが賢明だとは思うんですが、それにしても朋子ちゃん、乱暴された上に殺されて、あまりにも非道ですなぁ。。。 ま、これは原作にもある展開だし、むしろ原作にあった茄子プレイが省略されていただけ、まだ後味が悪くなかったりするんですが、やはり茄子というのはあまりにアレなので、人道的な見地から取りやめにしたんでしょうか? ま、茄子はなくても若いギャルがボコボコに殴られるシーンは十分に後味が悪くて、舘ひろし、めっちゃタチが悪い。。。

 朋子ちゃんを殺されて羽代市を去る決意をする味沢クン。暢気に駅弁なんか食ってる場合か?…と言いたくなるほど頼子ちゃんは屈託がなかったりするんですが、そこに大場の手下が現れて、健さん、ピンチ! そんなこんなで頼子ちゃんが記憶を取り戻し、彼女の一言で、味沢クンを付け回している刑事によって、健さん、あっさりお縄になってしまいました。ああん! まさに連行されようとする時、あっちのほうから自衛隊がやってきて、味沢クンを強奪! 特殊工作隊員は一般住民との接触は絶対に厳禁だというのに、その約束を破って越智美佐子と接触なんかしちゃって、おまけに大量虐殺事件に巻き込まれちゃったりして。その事が世間にばれると自衛隊のイメージが悪くなるので、とりあえず除隊にしたんだけど、この際だから始末しちゃおうと。そうだ!自衛隊の演習場に連れてって、間違って撃っちゃったことにして、始末しちゃおう! そういう、とってもナイスなアイデアが浮かんだらしいんですよね。ついでだから目障りな刑事と頼子ちゃんも一緒に始末しちゃう方針のようなんですが、演習で女の子を撃ち殺しちゃったら自衛隊のイメージは最悪になるに違いないのに、この映画に出てくる自衛隊の上層部の人って、もしかしてアホですか? 原作にはまったくこんな展開はなくて、画面上、ただ派手にしたいだけの無駄な脚本なんですが、とまあそんなことで、あとは各自でエンディングまで見届けてくださいね。 ユーザーレビューを見ると意外と評価が高くて、5つ星とか4つ星半とかを付けてる人が少なくありません。かと思うと、5人に1人くらいの割合で星0個というのもあったりして、どうにも両極端なんですが、ひろ子ちゃんと健さんに罪はありません。職場の安全と言う点では、ちょっとどうか?…と思われる行動も多々見られるんですが、もともと安全志向は皆無な作風のようですしー。悪いのはすべて脚本家です。音楽監督は大野雄二で、ところどころジャズっぽい雰囲気があったりするところは、よかったです。町田義人が歌う 「戦士の休息」 もいいです。 が、全体として個人的にはどうにも後味が悪くて、さ、口直しに 『実写版・まいっちんぐマチコ先生』 でも見ようっと♪

 とまあそんなことで、今週から “ピアノ編” をお届けしようと思うんですが、本来なら “その他の楽器編” の次は “ボーカル編” ということになるんですけどね。 が、手持ちのネタが極端に少ない上、特にギャル系ボーカルはジャケ絵を書くのが非常に面倒なものが多いので、やめました。賢明な措置だったと思います。 ということで今日は バド・パウエルのアルバムを紹介しようと思うんですが、パウエルもそろそろ手持ちが少なくなってきました。そのうち、ジャケ絵がどうのこうのと贅沢なことを言ってる場合では無い!… という日がやって来るのは間違いないところなんですが、とりあえず今回は大丈夫でした。ブルーノート盤の 『タイム・ウェイツ』 。内容的には今ひとつソソられるものがないものの、ジャケットのセンスは悪くないです。腐ってもブルーノートというか、いや、ブルーノートというレーベル自体、まだ全然、腐り始めるような時期には達していないんですが、パウエルのBN盤というのは 『アメイジング・バド・パウエル』 の第1集・第2集以降、特に玄人筋の間ではあまり評判がよくなかったりしますからね。この 『タイム・ウェイツ』 という作品も。世間ではほとんど取り上げられる機会がなかったりするんですが、それでもジャケットだけはきっちりブルーノートらしい作りになっていて、ところで、今回の前半ネタの映画批評なんですが、3つほど作品を取り上げる予定だったのが、最初の1本で手間取って、結局それだけで終わってしまいましたな。今回、取り上げようと思っていた映画はまた、ネタにうーんと困った時にでも復活させようと思うんですが、そんな僕は今度の週末、会社の慰安旅行で北海道に行くことになっております。よって来週はプチ・コーナーでお茶を濁すことになると思うし、それ以降はおそらく、しばらく北海道レポに費やされることになると思うんですが、そういう事務的な連絡で無駄に行数を費やすのはこれくらいにして、では1曲目から聴いてみることにしましょうか。

 まず最初は 「バスター・ライズ・アゲイン」 。1950年代の半ば以降、この天才の想像力は著しく減退してしまったと言われておりますが、1958年のこのアルバムは7曲すべてをオリジナルで固めて、それなりにヤル気の感じられる出来になってますよね。中でもこの 「破壊する人は元に戻ります」 は、ちょっぴりラテンっぽい能天気な仕上がりでありまして、躁状態の気配が感じられたりするんですが、ピアノを弾きながら唸ったりするところも、ちょっとアブナイですよね。ま、この人の場合、体調がいい時ほどよく唸るという傾向にあるようなので、変な声が聞こえるのは御機嫌な証拠なんですが、ただ聞かされるほうとしては、いい迷惑です。黙って弾けんのか?…みたいな。 ま、それさえ我慢すれば、なかなかノリのいいプレイであるのは確かでありまして、特に、ありそうで意外となかったフィリー・ジョー・ジョーンズとの絡みがドライブ感をより一層加速させているように思われます。フィリー・ジョー、いいじょー♪ パウエルのソロそのものは決して鬼気迫るようなものではなく、嬉々とした樹木希林。…といった感じで軽く流しているだけなんですが、世の中にはソーメンとか、流したほうが楽しいものもいくつかあるわけなので、これはこれで悪くはないと思います。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。出だしとしては、まあまあ。ま、そういったところでしょうか。

 2曲目、 「サブ・シティ」 。タイトルはおそらく、さぶ系の多い街。…とか、そういう意味ではないと思うんですが、世の中にいくつも種類のある変態系の趣向の中で、 “さぶ” というのはパンストフェチと同じくらい僕には理解不能のものだったりします。さぶ系の多い街。そんなの考えただけでも、さぶけがしますよね。ま、ここで言うサブ・シティというのはおそらく “補助的な街” とか、そういう意味だと思うのでぜんぜん大丈夫なんですが、曲そのものからも別段、 「ああん、兄貴ぃ♪」 といった妖しい気配は伝わってきません。普通にハード・バピッシュな作風です。パウエルのソロはやや単調で、やはり絶好調とは言えそうにないんですが、ひらめきが乏しい中でも、それなりに唸り声は発せられているし、地味ながらもサム・ジョーンズのピチカート・ソロがフィーチャーされてるし、フィリーのソロもあるし、ま、手堅くまとまっていると言ってもいいのではなかろうかと。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 続いて3曲目です。ピアノ・トリオのアルバムって、書くことがほとんど無くて、苦しむんじゃないか?…と密かに懸念していたんですが、ホントにそうですな。書くことがありません。あまりにも書くことがないので、とりあえず角 (かく) のことでも書こうかと思うんですが、君は将棋の駒のうち、飛車と角ではどっちのほうが好きかな?僕はですね、飛車のほうが好きです。ということで、角の話はおしまい。 あまり間が持ちませんでしたが、とりあえず本題に入ることにすると、続いてはアルバム・タイトル曲の 「タイム・ウェイツ」 。JRの線路の中では羽越線がわりと好きな僕としてはちょっと気になる名前なんですが、ところで羽越線って、どこからどこまで走っているんですかね?何となく語呂がいいから好きなだけで、鉄道にはまったく詳しくないので、ぜんぜん分からなかったりするんですが、 “タイム羽越” はアレです。ちょっと小綺麗なバラードだったりしております。パウエルのバラードのうまさは定評のあるところで、個人的には豚ラードと同じくらい好きだったりするんですが、ラードはやっぱり豚ですよね。というか、豚の脂のことをラードというわけなので、豚以外のラードというのはありえないんですが、さしものパウエルも全盛期に比べると、やや凄みに欠ける嫌いが無きにしもあらず。ま、その分、人間的な温かみの感じられる仕上がりとなっておりまして、ほとんどアドリブらしいアドリブの無い、メロディーを軽くフェイクする程度の演奏なんですが、天才という仮面を脱ぎ捨てて、仮面ライダーの仮面をかぶった男。好きな爬虫類はカメ。そんな自然体の姿は、大いに共感が持てます。教官とかになると、けっこういい仕事をするかも知れません。

 次。 「マーマレード」 。ジャムとマーマレードはどこが違うのかというと、たとえばイチゴはジャムになって、オレンジはマーマレードになると。そこのところにポイントがあるのではないかと思うんですが、皮なり砂糖で煮詰めるとジャムではなくてマーマレードになるんでしたかね? イチゴの場合、どのあたりが皮に相当するのは今ひとつ判然としないので、なかなかマーマレードにはしにくいんですが、逆に皮さえあれば何でもマーマレードになるとかと言うと、必ずしもそうとも言い切れず、例えば鳥皮なんかは皮なり砂糖で煮詰めてみたところで、あまり美味しい食い物になるとは思えません。イメージ的には何となく、マーマレードのほうはママが作ってくれそうで、ジャムのほうはジャムおじさんが作ってくれそうな感じがあるんですが、で、曲のほうはと言うと、パウエルはおそらく、タイトルは別に何でもよかったんやろな。…という気のする、わりと投げやりな仕上がりだったりしております。アドリブで弾いたフレーズを、そのまま曲にしちゃったような感じ? ま、ビ・バップの世界ではよくあることです。パウエルを責めないでください。ついでにハイエナも責めないでください。いや、パウエルとハイエナって、1文字目と3文字目だけを見れば、ちょっと似てる?…という気がしたのでちょっと書いてみたんですが、死肉をあさる薄汚いヤツ。…とか誤解されていて、ちょっと可哀想ですもんね、ハイエナ。ま、確かに見た目のカラーリングこそ、ちょっぴり薄汚なかったりするんですが、実際は自分でせっかく狩った獲物をライオンに横取りされたりする気の毒な生き物だったりするみたいです。ま、カッショクハイエナという褐色のハイエナは、主にライオンとかが食べ残したカスを食って生きているみたいですけど。何でも他の動物が食えないような硬い骨までも噛み砕ける強い顎の力を持ったハイ・エネルギーな生き物なんだそうで、ハイエナという名前もそこから来ているんだそうです。ハイ・エネルギー、ハイ・エネルギー、ハイ・エナルギー、ハイエナ。…みたいな。 あ、いちばん最後のところは嘘なので、信用してはいけません。 ま、根がシンプルなだけにアドリブの出発点としてはよさそうで、ここでのパウエルのソロはわりとフレージングとかもスムーズだったりするんですが、とまそんなことで、ベースのソロがあって、3人による4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。ハイエナで十分に行数を稼げたので、本題は別におざなりでも構いません。端から真面目に解説しようなどという気は、あまりありません。

 ということで、次。 「モノポリー」 。そんな名前のボードゲームがありますよね。億万長者ゲームのパクリみたいな。いや、もしかしたら億万長者ゲームのほうがパクっているのかも知れませんが、最近では1億円くらい持ってたところで、とても長者とは言えなかったりしますよね。やはり1億兆万円くらいは持ってないと、長者として認定してもらえないようですが、おくせんまん、おくせんまん♪…の郷ひろみでは、ちょっぴり力不足です。 “力うどん” でも食べて、出直してください。ところで、力うどんって、どうしてモチが入っているのかと思ったら、力持ちは力餅。ただそれだけのことだったんですな。 ま、 “カうどん” とかいって、中に蚊が入ってるよりはマシなんですけど。よく見たらこれ、片仮名の “カ” やん!…みたいな。 で、これ、個人的には全7曲中で最も好きな楽曲だったりするんですが、ちょっぴりマイナー調で、なかなかいい感じですよね。パウエルのソロもなかなかいい感じでありまして、ということで、ベースのソロがあって、ドラムのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。 6曲目、 「ジョンズ・アビー」 。 アビーというのは何かと思ったら大修道院とか大寺院とか、そういった意味らしいんですが、大寺院だからといって、大いにジーンと感動しちゃった♪…とか、そういう作品に仕上がっているわけではなく、とりたてて書くことがなくて、ま、普通です。パウエルのソロも普通です。 で、ベースのソロがあって、ドラムのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。

 すごく盛り上がったところで、いよいよ最後の曲になってしまいましたが、 「ドライ・ソウル」 。これはアレです。乾いた魂です。略して乾魂 (かんたま) 。ちょっぴり “忍たま乱太郎” みたいなんですが、せっかくの魂も乾燥してしまってはいけませんね。せっかくのブドウも乾燥して干しブドウになってしまうと、瑞々しさが無くなって台無しなんですが、椎茸なんかも干したヤツより生のヤツほうが美味しいですよね。干し椎茸のほうがよくダシが出て、美味しいぢゃん。…という人がいるかも知れませんが、僕の場合、その椎茸のダシがあまり好きではないので駄目です。ビーフジャーキーというは、ま、それなりに評価していいような気もするんですが、で、魂を乾かした結果、どうなったのかというと、スロー・ブルースになりました。かなりディープな雰囲気が漂っておりまして、完全に乾ききっているというより、どちらかというと生乾き。 ま、そんな感じなんですが、アフターアワーズっぽくて悪くないですよね。ただ、このテンポであまり長くやられると途中でダレちゃうのも事実でありまして、でも大丈夫。パウエルくんもその点はよく心得ているようで、途中でちょっぴりテンポを速めたりして、それなりに周囲に気を遣ってくれている気配がちょっぴり窺えたりももします。。いやあ、彼もオトナになりましたなぁ。録音当時、パウエルはえーと、33歳? 今の僕より7つもコドモなんですが、立派な事だと思います。33歳の頃、僕はいったい何をしてたのかと言うと、宴会の三本締めの時、間違えて三三七拍子をしちゃったりとか、そういう散々な33歳だったような気がするんですが、でもってソロ2番手はサム・ジョーンズでありますか。振り返ってみるとこのアルバム、けっこうベースとドラムスのソロが多かったような気がするものの、今まであまり真面目には聞いてきませんでした。最後くらいは一言、何か乾燥を…、いや、感想を書いておきたいと思うですが、ベースのソロというのはこの手のスローなブルースにはなかなかお似合いでありますな。特にサム・ジョーンズの場合、めったにアルコに走る事がないので気分的にも安心なんですが、地に足のついた堅実なウォーキング・ベースやな。…といった感じで、なかなか良好です。 とまあそんなことで、最後にまたパウエルが戻ってきて、テーマに戻って、おしまい。 ということで、今日は以上です。

【総合評価】

 はっきり言って、かなりインパクトは薄いです。全曲がオリジナルとは言え、 「クレオパトラの夢」 みたいな決定打がないところが、ちょっと辛いですな。 とはいえ、あまり多くの物を期待せずに軽い気持ちで聴いてみたら、意外と悪くはなかったりして、ま、腐ってもパウエルだね。…という、そういう1枚なのではないかと思います。


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