THE STINGER (PRESTIGE)

JOHNNY “HAMMOND” SMITH (1965/5/7)

THE STINGER


【パーソネル】

EARL EDWARDS (ts) HOUSTON PERSON (ts) <#1,3,4,6>
JOHNNY "HAMMOND" SMITH (org) FLOYD SMITH (g) JOHN HARRIS (ds)


【収録曲】

(01-02) THE STINGER / THERE IS NO GREATER LOVE
(03-04) BROTHER JOHN / CLEOPATRA AND THE AFRICAN KNIGHT
(05-06) YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS / BENNY'S DIGGIN'

【解説】 (2007年11月18日更新)

 飛行機がよく落ちますなぁ。10月28日に航空自衛隊岐阜基地で行なわれた航空祭を見に行ったという話を2回シリーズでお届けしたんですが、その3日後には県営名古屋空港で航空自衛隊のF2支援戦闘機が離陸に失敗して墜落炎上しました。11月2日にはアメリカ・ミズーリ州空軍所属のF15戦闘機が墜落事故を起こして航空自衛隊でも同型機が飛行停止となって、もし航空祭の日程が1週間遅れだったとしたら、行事はとりやめになったものと思われます。 で、11月15日には岐阜の恵那山に小型機が墜落したりして、このところ本当によく飛行機が落ちますよねー。桑名でも6年ほど前、ヘリコプターと小型飛行機が衝突して墜落炎上、出口さんちが全焼するという惨事があったので、とても他人事とは思えません。 で、F2支援戦闘機の墜落は、某・三菱重○業で点検整備した際の配線ミスが原因だったそうですが、これも他人事とは思えませんな。 僕もよく、制御盤の改造とかをしていて配線を間違えて、電源を入れた途端に、ぽん!…と音がして、部品が黒焦げになるというミスをすることがあるんですが、人間だもの。そういうことは大いに有り得るわけです。人間というのは過ちを犯す生き物なので、誤ったことをしてしまった場合は、ゴメンな!…と謝っておけば、それで世の中は丸く収まるわけです。 で、何度も同じ失敗を繰り返すと、さすがに少しは学習して、線を外すときにマジックで印を付けるなどの知恵が付いてくるんですが、たまたま手元にマジックが無かったりすることもあるんですよね。クルマに行けばあるんだけど、今日はちょっと遠い駐車場に止めてあるし、取りに行くのも面倒だから、ま、いっかぁ。…と、印を付けずに外しちゃった時に限って、復旧する時にどっちがどっちだったか分からなくなったりして、でもまあ、確率は50%だし、もし反対につないだとしても、大したことにはならないかも知れないし、イチかバチかで、ええい!…と適当に線をつないで試しに飛行機を飛ばしてみたところ、思いきりドツボにはまって墜落炎上しちゃいました。ああん!

 …とまあ、事故が起こる時というのは物事が悪いほうへ、悪いほうへと進んでいってしまうものなんですが、で、こういう事故が起こるとですね、報道ではたいてい、目撃者の証言というのが取り上げられることになります。桑名で起きた事故の時は、麦藁帽子を被ったオッチャンの桑名弁丸出しの証言が何度もテレビで取り上げられ、 “2ちゃんねる” で 「麦ワラ」 とか 「」 といったあだ名を付けられておりましたが、かく言う僕も飛行機が墜落する現場というのは今まで何度も見たことがあります。 何故だかそういうシチュエーションの夢をかなり頻繁に見たりするんですが、大型旅客機とか、小型機とか、ヘリコプターとか、いろいろな種類のものが墜落する現場を僕は目撃しております。 あっ!落ちたー!今までのは全部 “夢” やったんやけど、今度は間違いなく落ちたー!ついに “夢” の中の出来事が本当に起きてしもた!…と思って呆然としているところで、たいてい目が覚めることになるんですが、 “夢” は自分の心の奥深くに隠された深層真理が表に出てきたもの。…という説があったりしますよね。 子供の頃、家が火事で燃える夢をよく見たりしたのは、実際にそういう体験をしているわけだし、暑くて寝苦しいという外的な要素も影響しているんだと思うんですが、僕は今まで夢以外では飛行機が墜落する現場など、一度も見たことがありません。 にも関わらず、どうしてこうも頻繁に飛行機が落ちる夢を見るんでしょうか?他の人も同じような夢を見たことがあるんでしょうか?僕の心の奥深くには、一体どんな暗闇が隠されているのでしょうか?

 恵那山の事故の目撃者の話をラジオのニュースで聞いて、ふとそんな疑問を持ってしまったんですが、とまあそんなことで、今日は “夢診断” について、ちょっと考えてみたいと思います。 ざっと検索してみたところ、 こんなサイト があったんですが、果たしてここが信憑性のあるサイトなのかというと、それは甚だ疑問であると言わざるを得ません。まず第一に “夢診断” ではなくて “夢占い” であるというのが怪しいんですが、占いであればもし外れてしまったところで、どうせ所詮は占いだしぃ。…というので、何とでも言い逃れが出来ますもんね。 でまた 『夢の商品』 と称して、TVで話題になり大ブレイク中のボージョボー人形は、願いが叶うすぐれもの!…などという怪しい商品を紹介しているのも、何とも言えずに怪しかったりするんですが、クリックしたらリンク先が消えていて、ますます怪しかったりします。ボージョボー人形って、どんなんやったんやろ? めっちゃ気になるやん! …と思って調べてみたら、どうやらサイパンのお土産のようなんですが、とりあえず今は “夢占い” のほうの話を進めておいて、で、とても1回分のネタにはなりそうもないという事が判明した時点で、また人形ネタをぶり返してみることにして。 で、僕が見たちょっと気になる夢のキーワードは、ずばり “飛行機” ですよね。 飛行機に乗ったとも、飛行機が飛んだとも、飛行機が落ちたとも、飛行機が非行に走ったとも、シチュエーションが何も書かれていないので、今ひとつ不安だったりするんですが、とりあえず “飛行機” のところをクリックしてみたところ、えーと、なになに。

夢に飛行機が出てきた
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環境や天候の変化、忘れ物や事故を暗示します。
一緒に乗り合わせていた人がケガをしていたら、身内の人がすべての乗り物で事故にあう可能性が高いので、注意が必要になってきます。

 ということでボージョボー人形なんですが、その前にちょっと他のサイトを当たってみますかね? “夢 飛行機が墜落” というキーワードで検索すれば、あるいは僕の心の奥の暗闇が明らかになるかも知れませんが、あ、これこれ。この 20代男性 の診断依頼というのが、僕の状況とぴったり一致しているんですが、そうですかぁ。漠然とした不安や自信のなさを表すものだったんですかぁ。あるいは自己過信に対する警告夢の場合もあるそうなんですが、僕の場合、どちらにも当てはまるような気がします。 僕は今までプロレスなど一度もまともにやった事がないにも関わらず、もしかしたらプロレスでケンドー・カシンに勝てるかも? ま、プロレスでは無理だとしても、剣道ならカシンに勝てるかも?…と、何の根拠もなく過信してたりしますからね。 が、どちらかというと、漠然とした不安を抱えている時にこの夢をよく見るような気がするので、小さなことにくよくよせず前を向いて歩きましょう。…というアドバイスを参考に、これからは少し肩の力を抜いて、ついでに鼻毛も抜いたりしながら、のんびり気楽に生きていこうと思います。最近、何だか鼻毛がよく伸びたりするんですよねー。 それはそうとこのサイト、結構いい線いってるじゃん!…という気がしたので、トップページ に戻ってみることにしたんですが、“墜落・落ちる夢” は “性行為の夢” に次いで、人気の点では第2位にランクされているんですな。わりとみんな頻繁に同じような夢を見ているようで、ちょっぴり安心しました。

 これはちょっとイケるかも?…と思って他のページも見たところ、あまり大したことは書いてなくて、これはいよいよボージョボー人形の出番かという気がしないでもないんですが、もうひとつだけ他を当たってみることにしましょうか。飛行機が墜落の夢はどれも似たような事しか書かれていないので、続いては 「デパートが閉店時間になっちゃう夢」 。これに秘められた謎を解明してみましょう。最近はそうでもないんですが、子供の頃はよく見たんですよね。問題のデパートというのは大抵、桑名駅前の “パル” だったように記憶しているんですが、果たして “パル” をデパートと呼んでいいものか?…という問題はとりあえず置いといて、ここで買い物をしているとですね、いきなり閉店時間になってしまうんですよねー。閉店は大抵、午後の7時だったと思います。閉店になるとどうなるのかというと、いきなり店内の照明が消えて真っ暗になって、出口にも鍵が掛けられて外に出れなくなって、恐ろしさのあまり泣き叫んでいるところで目が覚めるんですが、いや、今から思い出しても魘されちゃうような悪夢でありましたな。 で、調べてみたところ、どうも心にぴったりくるような事例が見つからなかったので、これはどうやら失敗だったようなんですが、ということで、次。 「忘れ物をする夢」 。 これは大人になってからも時々見たりするんですが、夢の中に出てくる僕はたいてい小学生です。朝、学校の教室に入ったところで、しまった!忘れ物をした!…ということに気が付いて、呆然とするというのが大方のストーリーなんですが、忘れてくるものというのはたいてい決まっています。体操服赤白帽です。この 「体操服を忘れる夢」 というのはそこそこポピュラーなようで、診断を求める事例もいくつか見受けられましたが、今回は このサイト で占って貰うことにしましょう。僕の見た夢の内容はこんな感じです。

  さばくんはしょうがくせいだったはずです。
  がっこうにいって、わすれものをしてしまったことにきがついて、とてもこまってしまいました。
  わすれものというのはたしか、たいそうふくとか、あかしろぼうとか、なにかそのようなものではなかったかというきがするんですが、さだかではありません。

 さて、気になる診断結果は!? 「占う!」 をクリック!

分析結果
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あなたの夢には象徴的なシンボルが見つかりませんでした

1.夢に出てきたシンボルをちゃんと思い出せていない。
2.夢が深層心理からのメッセージではない。

 …って、ああん! もしかして僕の入力した文章に何か問題があったんですかね?途中で改行したから?ぜんぶ平仮名で書いたから? 「さばくん」 という固有名詞を入力したから?曖昧な記憶で入力したから? あるいはこのうちのどれかが引っ掛かった恐れがまったくないでもないので、念のため、ちょっと書き直してみることにしたんですが、 「朝、学校の教室に入ったところで忘れ物をしたことに気が付いた。体操服を忘れてしまった。」 さ、これでどうでしょう?

夢からのメッセージ
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あなたの夢は、あなたの計画に何か見落としている点があって、そのためにうまくいかなくなる可能性があることを示しています。一人でやり遂げようとすると、必ず行き詰まります。意地を張らずに他人に意見を求めるようにしてください。そうすると、新たな道が開けるはずです。

 思い当たる節無し。面白みも無し。こうなったらもう、夢の内容を捏造してでも何とかこの話にオチを付けなければならなくなってしまいましたが、とりあえず飛行機墜落バージョンで試してみますかね? なるべくシンプルにまとめるとして、「空を見上げていると飛行機が地上に墜落して炎上した。」

夢からのメッセージ
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あなたの夢は、計画の挫折を意味しています。もう一度最初から計画を練り直してください。ダメとわかったら、一気に全てを捨てる、という勇気も時には必要です。いつまでの固執しないようにしましょう。

 やっぱり、僕の計画はうまくいかずに挫折するんかいっ! こうもぴったり同じ診断が出てくるとなると、僕もちょっと考えなければならなくなるんですが、ちなみに僕は今、 「夢診断」 で1回分の原稿を書き上げようという、そんな計画にかなりしつこく固執しているわけなんですけど。 どうやら僕はもう一度最初から計画を練り直して、一気に全てを捨てるという勇気を持たなければならないようなんですが、でもまあ、既にここまで書いてしまった以上は全てを残すしか手立てはなくて、とまあそんなことで、今日のところは、おしまいっ!

 ということで、今日はジョニー・ハモンド・スミスです。もしかして、このコーナーで取り上げるのは初めてだったりするんですかね? となると、彼の人となりを簡単に紹介しておかなければなりませんが、この人はですね、ジョン・ロバート・スミスというのが本名のようですね。ジョンもロバートもスミスも、めっちゃありきたりな名前やん!…と思わずにはいられませんが、平凡な名前のプロ野球選手は大成しないというジンクスを気にしてか、ジョンをジョニーとアレンジしてロバートは捨てて、替わりに “ハモンド” を持ってきましたかぁ。 “ハモンド” の由来はハモンド・オルガンを弾くからなのか、師匠に破門されたからなのか、あるいはハモとウドが好きだからなのか、色々な説があって波紋を広げるところではあるんですが、ハモの湯引きもウドも酢味噌で和えると美味しいので、ハモウド酢味噌にした。…という説がいちばん有力なのではないかという気がします。 1933年ケンタッキー州の生まれということで、おそらくフライドチキンも好物なんだと思われますが、育ったのはオハイオ州のクリーブランドだったようです。13歳でピアノを始め、ワイルド・ビル・デイヴィスのプレイに感激して56年にハモンド・オルガンに転向。58年に自己のグループを結成し、59年にはプレスティッジの傍系レーベルであるニュージャズからオルガン奏者としての実質的な初リーダー作を発表。 以後、3年ほどリバーサイドに浮気をしたことがあるものの、71年まではプレスティッジの専属アーティストとして活躍を続け、とまあそんなことで今日は1965年録音の 『ザ・スティンガー』 を紹介したいと思うんですが、このアルバムはアレですよね。何と言ってもジャケットが印象的ですよね。原田和典クンの書いたCD盤の日本語ライナーも、しばらくはジャケットの話で盛り上がっているんですが、このイラストを描いたのはプレスティッジのスーパーバイザー (他レーベルで言うところのプロデューサ) であるところのドン・シュリッテンなんだそうで。 シュリッテンだけにバイクの修理店なんかをやらせたら、そつなくこなしてくれそうなんですが、漫画を描く才能もあったんですな。いや、大したものです。ちなみに “STINGER” というのは “刺すもの” といった意味のようなんですが、別に包丁で刺すでもなく、指からビームのようなものを出したりしてますけどね。 いずれにせよ、ミュージシャンのポートレートを用いたものが多いジャズのCD売り場では、かなり目立つ異質の存在と言えるでありましょう。

 で、これ、見た目から受ける妖しげなイメージとは裏腹に、中身のほうは意外とオーソドックスだったりするんですが、ハモンド・スミスフロイド・スミスジョン・ハリスという、語尾がみんな “” なトリオを核にして、そこにヒューストン・パーソンアール・エドワーズという2人のテナー奏者が加わることになります。2人のテナー奏者が加わることになりますが、クレジットを見ると2テナー編成による演奏は1曲目だけということになっていて、が、原田クンのライナーによるとそれは間違いで、2曲目と5曲目を除いた4曲が2テナー編成ということらしいんですが、どちらが正しくて、どちらが間違っているのかは実際に演奏を聴いてみないと分かりません。とまあそんなことで、まずは1曲目の 「ザ・スティンガー」 なんですが、これはアレです。間違いなく2本のテナーが入っております。ま、この点は最初から2人の意見が一致していたので、まったく問題はないわけなんですが、それはそうと、これはアレですな。めっちゃディープなブルースでありますな。超コテコテ系で、ギャル受けしないことこの上ないサウンドだったりするんですが、ゆったりとしたテンポのシンプルなリフ物で、とても包丁で人を刺せるような切れ者のキャラとは思えません。 ま、2テナーのゆるい絡み具合が、ちょっぴりジョージ・ブレイスの “ひとり2管” みたいで、面白いかな?…という点に若干の活路を見出せない事もないんですが、でもって、ソロ先発はハモンド・スミスでありますか。フロイド・スミスのギター伴奏が何とも言えずにカントリーだったりするんですが、ハモンドの弾くハモンド・オルガンは何とも言えずに神取忍だったりします。 でもって、続いてテナーのソロが披露されることになるんですが、果たしてこれがヒューストンなのか、あるいはアール・エドワーズなのか、そういう野暮なことを僕に聞いてはいけません。分かりそうにもないことは敢えて追及しないのがオトナとしての正しい態度でありまして、ここはひとつ、何も言わずに臭みたっぷりのディープなテナーにどっぷりと身を委ねようではありませんか。 で、続くフロイド・スミスのギター・ソロは伴奏時と同様にカントリーでありまして、この辺り、アーバンな都会派のギャルにはかなりツライものがありますな。 その後、もう一人のほうのテナー奏者が出てきて、さっきの人を更に泥沼に漬け込んだようなプレイを展開することになるんですが、ここまで来るともう、ただ笑うしかありませんね。わははははは。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 続いてはスタンダードの 「ゼア・イズ・ノー・グレーター・ラブ」 でありますか。 こういうコテコテ系のセッションで、この手の爽やかな歌モノを取り上げるというのは、どうか?…という気がしないでもないんですが、オルガン・トリオのフォーマットで演奏されるミディアム・テンポのテーマ部は何だかとってもな瀟洒な仕上がりになっていたりして、ちょっと意外な感じがしました。 ムール貝とムラサキイガイが同じ貝だというのも、ちょっと意外だったんですが、ジョン・ハリスの叩き出すシンプルなシンコペーションも悪くありません。AABA形式の “Bの部” に入ったところでテナーが入って来て、ムードが急に下品になったりするんですが、ここで吹いているのはアール・エドワーズのほうであると判断して、概ね間違いではなさそうです。 聴きようによっては、かなりクドいアイク・ケベックみたいで、それなりに楽しめるのではないかと思うんですが、最後の “Aの部” で再びトリオ演奏に戻って、ソロ先発もハモンド・スミスのオルガンとなっております。かなり細かいフレージングで、きらびやかなプレイを展開しているんですが、無意味に、ピャ〜♪ という下品な音でがなり立てるわけでなく、それなりに抑制の効いた演奏であると言っていいかも知れません。続いて、テナーではなくギターのソロを持ってきたというのも賢明なところでありまして、ちょっぴり古めかしいスタイルの持ち主ではあるものの、ここでのフロイド・スミスの演奏はそれなりに健闘していて、悪くないと思います。 で、最後にテナーのソロが出てくるわけなんですが、テーマのメロディを軽くフェイクするような感じで、あまり我が強くないところが蛾があまり好きではない僕でも、なんとか許容出来る範囲内ではありました。 で、提示部よりもかなり砕けた感じのテーマの再現があって、とまあそんなことで、おしまい。 いや、なかなか正統的な出来でありました。

 続いてはハモンド・スミスのオリジナルの 「ブラザー・ジョン」 という曲なんですが、2管の微妙なハモり具合といい、かなりお間抜けなテーマのメロディのといい、1曲目以上にジョージ・ブレイス的な胡散臭さを感じさせる作品に仕上がっております。 こりゃ、どう考えても1曲目だけが2テナー編成であるとしたクレジットのほうが間違っていて、原田クンの指摘のほうが正しいと言わざるを得ないんですが、サム・クックやレイ・チャールズあたりが歌ったら大ヒットしたに違いないというのも、なかなか的を得たレビューではないかと思います。確かにベタなくらいポップな旋律だったりするんですよね。ジョン・ハリスの叩き出すジャズ・ロック風の8ビートも駄菓子屋のくじ引きみたいにスカスカだし、ま、そういうところがマニアにはたまらないんだと思うんですが、でもって、ソロ先発はハモンド・スミスでありますか。ピャラピャラとした、わりと忙しない感じのフレージングがこの人の特徴ではないかと思うんですが、途中で2管のハモりが絡んできたりするところも、何とも言えずにベタでいいですよね。 で、続くテナーのソロは日本語ライナーによると、どうやらアール・エドワーズらしいんですが、まるでプリーチするかのごとくサックスをブロウしているではないか。…などとも書かれていたりするんですけど。エドワーズくん、髪の毛を脱色中?…って、それはプリーチ(半濁点)ではなくて、ブリーチ(濁点)でありますか。エドワーズくん、下半身露出?…って、それはプリーチ(半濁点)ではなくて、フリチンですしね。 プリーチ(半濁点)というのはアレです。恐らく “説教” のことではないかと思うんですが、ホレス・シルバーの 「ザ・ぷりーちゃー」 という曲は 「ザ・説教師」 という意味らしいですからね。 で、ここでの彼の演奏が説教臭いのかというと、それほどでもなく、どちらかというとラッキョ臭いような気がするんですが、いわゆるテキサス系というヤツですかね? テキサス・テナーが敵を刺す。いかにもスティンガーらしい展開だと思います。 で、続いてフロイド・スミスのローカル色豊かなギター・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。 いや、なかなかソウルな出来でありました。

 4曲目もハモンド・スミスのオリジナルで、 「クレオパトラ・アンド・ジ・アフリカン・ナイト」 などというタイトルが付けられております。 「クレオパトラとアフリカの夜」 ではなくて、 「アフリカの騎士」 のほうのナイトでありますな。いかにもクレオパトラらしいエキゾチックなメロディが印象的なナンバーでありまして、2テナーのハモり具合も何だか妖しいムードを醸し出しております。 で、これ、アフリカンというよりも、ちょっぴりボサノヴァっぽいお洒落な感じもあったりして、いや、オルガン・トリオ+2テナーという編成でこのようなサウンドが描けるとは、ちょっと意外でした。井川クンが大リーグでまったく活躍しなかったのは意外でも何でもありませんでしたが、出川哲朗よりはちょっとマシ?…といった程度のキャラだったりしますからね、井川クン。 で、演奏のほうはテーマに続いてテナー(その1)のソロとなるわけですが、かすれたようなトーン、畳み掛けるようなフレージング、タタミイワシのような味わいと、このアルバムにこんなテナー奏者、入ってたっけ?…と思ってしまうほど、素晴らしい出来となっております。ソウルではなく、ハード・バップと言ってよさそうな演奏が繰り広げられることになるんですが、続くギターのソロもこれまでと比べるとカントリー臭が希薄になっていて、では結構モダンだったりするのかと思ったらそうでもなくて、何だか不思議な響きだったりしているんですけど。 で、続いてテーマ・メロディをちょっとアレンジしたようなホーン・アンサンブルが出てくるところも、なかなか凝ったアレンジだと思うし、最後をハモンド・スミスがドライビングなオルガン・ソロで締めくくって、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 いや、意外なところに意外なプチ名演が紛れ込んでいたものでありますなぁ。さばクンはこれ、けっこう気に入ってしまいました。アルバム全体の好感度もかなりアップしたと言えるのではなかろうかと。

 …とか思っていたら、次に思いきりムードぶち壊しなコテコテのブルースが出てきたりして、もう、オルガンを弾く人ってぜんぜん空気を読めてなくって、ああん! …みたいな展開が懸念されるところなんですが、ここでハモンド・スミスは歌モノの 「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」 を持ってきましたかぁ。賢明ですな。2曲目同様、ヒューストン抜きの1テナーによる演奏であるものと思われますが、オルガンの無伴奏ソロによるイントロはけこうオシャレ♪ そこにギターとドラムスが加わってテーマの演奏になるわけですが、バラードというよりはスロー・ブルースに近いノリでありますな。 あなたは、恋が何であるかを知りません。あなたがブルースの意味を学ぶまでは。…とその歌詞にもあるように、根はブルースなのかも知れませんな、この曲って。 AABA形式の “Bの部” のところでテナーが入って来るというのは2曲目と同じパターンなんですが、咽び泣く魅惑のムード・テナーといった感じのベタな吹きっぷりが、ある意味でちょっぴり新鮮だったりしますよね。ベン・ウエブスター好きの人ならきっと耐えられるのではなかろうかと。 最後の “Aの部” に戻ったところでトリオ演奏に戻って、で、そのままオルガンのソロへと流れていくことになります。 アドリブ・パートに入るとちょっぴりテンポも速くなって、感情が次第に高ぶってくることになるわけですが、続くテナー・ソロのドラマティックな盛り上げも、闘牙のモミアゲと同じくらい魅力的です。引退してモミアゲを切っちゃいましたけどね、闘牙。 続くフロイド・スミスのギターも慣れてしまえば結構スムーズだよね。…と思えるようになって来たし、とまあそんなことで、ここでテーマに戻るわけなんですが、AABA形式のうちの “AAの部” だけを弾いて、その後はカデンツァになって、最後の最後にテナーが出てきて、おしまい♪ いや、なかなか凝ったエンディングでありました。

 ということで、最後の曲です。ハモンド・スミスのオリジナル、 「ベニーズ・ディギン」 。 diggin' というのが diggings の略であるとするならば、タイトルは 「ベニーの居所」 といった意味になるのではないかと思うんですが、ベニーというのはいったい誰のことなんですかね? ベニズワイガニ? だとすればその居所は日本海全域と東北地方の太平洋岸沖、水深450〜2500mのあたりということになるわけなんですが、聴いてみたらわりと北大西洋っぽい感じの曲だったりしたので、あるいはズワイガニとは無関係なのかも知れません。 急速調のハード・バピッシュな作品でありまして、2テナーの絡み具合はユニゾンを基調として、時おりハモリに転じるなど、なかなか凝ったアレンジが施されております。 テーマに続いてテナー(その1)のソロになるんですが、ストレートで真っ直ぐな吹きっぷりが何とも言えずに爽快でありますな。最後のところで短くもう1本のテナーが絡んでくるところが実にカッコよくて、続くハモンド・スミスのオルガン・ソロも良好で、最後のところで短く2本のテナーが絡んでくるところも実にカッコよくて、その絡みがドラムスとの4バースみたいになってるところもよくて、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 とまあそんなことで、今日のところは以上です。


【総合評価】 見た目からして、かなり馬鹿にしてかかっていたんですが、実際、1曲目あたりはちょっと難のあるサウンドだったりしたんですが、2曲目以降、持ち直しましたな。 特に4曲目と6曲目はソウル系オルガン・ジャズらしからぬ仕上がりで、ハード・バップ好きの人でも、ま、そこそこ楽しめるのではなかろうかと。騙されたと思って、是非一度聴いてみてください。 ま、騙されたところで2000円くらいの出費だしー。


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