AWARD WINNING DRUMMER (TIME)

MAX ROACH (1959)

AWARD WINNING DRUMMER


【パーソネル】

BOOKER LITTLE (tp) GEORGE COLEMAN (ts) RAY DRAPER (tuba)
ARTHUR DAVIS (b) MAX ROACH (ds)

【収録曲】

TUBA DE NOD / MILANO / VARIATIONS ON THE SCENE / PIES OF QUINCY
OLD FOLKS / SADIGA / GANDOLFO'S BOUNCE

【解説】 (2007年06月10日更新)

 ビジネスホテルに泊まった時の楽しみと言えば、何と言っても “ミックスナッツ” ですよね。 自動販売機で缶ビールを買って、あ、そう言えば、つまみを買ってくるのを忘れたなぁ。…といった場合でも大丈夫。ビジネスホテルには大抵、歯ブラシと歯磨き粉のセットや剃刀と並んで、おつまみの自動販売機というのも設置されておりまして、100円玉を何枚か投入してハンドルをガチャンと回すと、商品がボトっと落ちてくるという、そういうタイプのやつでありますな。歯ブラシと歯磨き粉のセットや剃刀の自動販売機は1種類しかなくて、自分の好みのタイプをチョイスすることは出来ないんですが、おつまみのほうはバラエティーに富んでおりまして、4種類くらいの中から選べるシステムになっております。 “さきいか” “柿の種” “おつまみ昆布” なんてのもありますが、僕だったら断然 “ミックスナッツ” を選びますね。 “さきいか” だったらイカだけ、“おつまみ昆布” は昆布だけ、“柿の種” にしたところで、せいぜい柿の種とピーナッツの2種類が入っているくらいで、バリエーションという点ではかなり不満が残ったりするんですが、その点、ミックスナッツというのはナッツがミックスされているわけですからね。 ま、ビジネスホテルの自動販売機で売られているミックスナッツというのは値段のわりに箱が小さくて、しかも中身の約8割がジャイアントコーンやんっ!…といった傾向にあるところが不満ではあるんですが、部屋に戻ってミックスナッツをぼりぼり食べながらビールをぐびぐび飲んで、テレビのバラエティ番組を見るというのが出張時のささやかな楽しみですよね。

 という人は少なくないのではないかと思いますが、僕の場合はですね、ちょっと違います。 おつまみに関する趣向に関しては、概ね共通してると言えるんですが、僕の場合、あまりビールは飲みません。 かつては僕も、ビジネスホテルに泊まったら、とりあえずビールやろ!…と思っていた時期もあるんですが、意気込みのわりには、ほとんど飲めなかったりするんですよね、僕の場合、350ミリ缶ですら持て余して、そのうちに、もういいっ!…という捨て鉢な気分になって、ビールの半分以上を便器に流して捨ててしまうことになるんですが、どうして便器なのかというと、心の隅のどこかに、ちょっと勿体ないかな?…という思いがあるからなんですけどね。 ビールを洗面所の流しに捨てるというのは飲み物を粗末にしているみたいで罪悪感があるわけなんですが、そこを我慢して無理に飲んでみたところで、すぐに小便として排出されるか、もしくは気持ちが悪くなってゲロを吐くという破目になって、いずれにせよ、行き着く先は便器ということになるわけです。 それなら最初から便器に捨てたほうが合理的であるわけですが、そうまでしてビールに拘る必要もないよな?…ということに気が付くくらいには僕もオトナになりましたので、最近ではビールをやめて、チューハイとかを飲むようにしております。 チューハイだったら350ミリ缶でも大丈夫だったりするんですよね、僕の場合。

 チューハイとミックスナッツというのは今ひとつ相性がよくなくて、チューハイのつまみと言えば、やっぱり “ハイチュウ” やろ?…という気がするんですが、例えばチューハイがレモンだったら、ハイチュウはグレープにするなどして、お口の中で2つのフルーツを味を楽しむことが出来ますもんね。 ただ、ハイチュウというのは世間では酒のつまみとして認識されていないようで、ビジネスホテルの自動販売機では一度も見掛けたことがないので、仕方なくミックスナッツで我慢することになるんですが、次なる問題は、部屋に戻って如何にして過ごすかという点でありますな。 おつまみとして “さきいか” をチョイスした人であれば、如何にして過ごすも何も、イカをしゃぶって過ごすに決まってるじゃん。…ということになるんですが、生憎と僕の場合はミックスナッツです。 イカに比べてナッツのほうはボリボリと簡単に食べられる分、どうしても時間を持て余すことになるわけなんですが、そこでまあ、仕方がないからテレビでバラエティでも見ようか。…という事になるわけですよね。 普段、家にいる時でもそうして過ごしている人であれば問題はないんですが、生憎、僕は家でもほとんどテレビを見ません。 たまに見るバラエティ番組と言えば、NHKの 『バラエティ生活笑百科』 くらいのものなんですが、生憎と中田カウス・ボタンは出演出来なくなっちゃいましたしねー。 そこで僕は仕方なく、有料の “すけべビデオ” に手を出してしまう事になるわけなんですが、もし他にもっと有益な時間の過ごし方というのがあれば、余計なところにお金を使わなくても済むんですけどねぇ。。。

 このサイトにはよく、僕がビジネスホテルで “すけべ”ビデオ” を見ている話が登場するので、サバさんってもしかして、ただのエロ好き?…などと思っているギャル系読者がいるかも知れませんが、それは大きな間違いです。 他にやる事がないから仕方なく、苦汁の選択で有料放送に100円玉をつぎ込んでいるというのが実情なんですが、他に時間を費やす手段としては、ちょっと気の利いたビジネスホテルでコーヒーサーバーがあったりするくらいですからね。 すけべビデオの鑑賞よりも、ゆっくりとコーヒーを楽しむほうがよい趣味であるというのは僕も重々承知しております。 出来れば僕だってそうしたいところなんですが、生憎と僕は極度の猫舌なんですよね。 熱いものが大の苦手である上に、苦いのも駄目だったりするので、僕は苦汁の選択で、苦い汁はヤメにして、すけべビデオの道を選んでいるわけでありますが、せめて、もうちょっと小マシなリスニング・システムでも備え付けてあれば、こんな苦労はしなくても済むんですけどねー。 ビジネスホテルにある奴はラジオとか地味なBGMが聴ける程度で、まったく実用的ではなかったりしますからねー。

 とまあ、僕はかねてからちょっぴり不満に思っていたんですが、世の中には440chマルチ有線放送が完備されたホテルというのもあったりするんですなぁ。 僕は最近になって、そういうところに一度だけ宿泊する機会があったんですが、いや、とても有意義でありました。 最近はテレビの有料放送を見るのに1000円のプリペイドカードを購入させられる場合が多いんですが、10時間も 見る気は無いんだって!ほんの5時間程度でいいんだって!…といった程度にしか有料放送に意義を見出せないでいる僕にしてみれば、100円玉1枚で10分間という従来の方式に比べて、どうしても割高になってしまいます。 何だか悔しいので、意味も無く、とりえあず寝ている間も付けっぱなしにして憂さを晴らしているわけでありますが、値段の代償として有料放送が3chほど用意されている点は評価していいと思うんですけど。 たいてい、スケベなのが2ch、そうでないのが1chという構成になっているんですが、すけべ物に出演している女優があまり好きなタイプでなかったり、あるいは、あまりスケベなシーンでは無くなってしまった場合に、違うチャンネルに換えることが出来るというのは大きなアドバンテージだと思います。 また、いざという時、僕は別にスケベなのを見たくて1000円のテレビカードを買ったわけじゃないんだ! たまたま、どうしても見たい映画をやっていたから、ちょっと買ってみただけなんだ!…と、申し開きが出来るところも、なかなか粋な計らいだったりしますよね。 本屋で 『アクションカメラ』 を買おうと思ったらレジにいるのが若いネーチャンだったので、とりあえず上に 『アサヒカメラ』 を重ねて出すことによって、カメラ好きの中年であることをアピールするのと同等の効果を期待することが出来ます。 たった3chでもこれだけ有意義だというのに、有線放送のほうはというと、なんと440chっ! これはもう、存分に楽しむしかありませんよねー。 ただ、あまりにもチャンネル数が多過ぎて、目的の番組を探し出すのにかなり苦労することに成りかねないんですが、そこで今日は “ジャズファンの為の徹底有線放送講座” というテーマでお届けしたいと思うんですが、いや、すけべビデオのほうに力が入り過ぎて、もうあまり書くスペースが残っていなかったりするんですけど。

 有線放送でジャズを楽しむにはどうすればいいのかと言うと、とりあえず ここ を見て、自分で好きなのを探してくださいね。…という一言に尽きるわけなんですが、そうそう、有線放送のチャンネルって “” 〜 “” に分かれたりしていて、何が何だかよく分からなかったりするんですよね。 “A” が歌謡曲、“B” がポップス、“C” が民謡で、“D” は演歌で、“E” が沖田浩之の 「E気持ち」 専用チャンネル。…ということであれば、まだ分かりやすいんですが、実際のところは各バンドの中に色々なジャンルが混在する形になっていて、何が何だかよくわかりません。 とりあえずジャズに関係のありそうなところをピックアップしてみたいと思いますが、まずはえーと、 『A/E-13』 。 “A” なのか “E” なのか、はっきりしろ!…と言いたくなりますが、ステレオ放送する為には、2つのバンドが必要ということなんでしょうか? その辺りの事情は、そっち方面に極めて疎い僕には今ひとつよく分からなかったり、とにかく “ジャズ・スタンダード” と名付けられたこのチャンネルは、モダン・ジャズの名曲名演の中から、とくにスロー〜ミディアム・テンポのスタンダード・ナンバーを中心に選曲構成されており、大人の夜の静かな時間にぴったりのB.G.M.として好評放送中です。…というのがコンセプトのようでありまして、放送中の曲&アーチスト例として、「ワルツ・フォー・デビー/ビル・エヴァンス」 「セイ・イット/ジョン・コルトレーン」 「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ/ジョニー・ハートマン」 などが挙げられております。 いや、これば無難ですな。 ジャズにまったく詳しくない人が、今夜はちょっぴりジャジーなムードに浸ってみたいナ♪…という気分になったりした場合に最適なプログラムであると言えるでしょう。 “ええ)ぞ、ゴルゴ13” と覚えておいて、いざという時に活用出来るようにしておきましょう。

 続いては 『A/E-37』。 こちらは “ジャズ・ステーション” という名前が付いておりまして、朝のソフト・ジャズから真夜中のスロー・ジャズまで、1日24時間の各時間のTPOに合わせたジャズBGMを追求し続けている…というのが営業方針であるようです。 なるほど、朝のお菓子は “すっぽんの郷” で、夜のお菓子は “うなぎパイ” だったりするんですが、朝のジャズはソフトで、夜のジャズはスローなわけなんですね。勉強になります。 もう少し具体的に言うと、16時から18時がケニー・ドーハムの 『静かなるケニー』 路線で、18時から20時がコルトレーンの 『ブルートレイン』 っぽい奴…ということになるんですかね? 昼下がりの気怠いムードで聴いてみたい “jazz bossa” が10〜12時にセットされるなど、やや納得のいかない点もあるし、時間帯によっては自分の好みと違ったジャンルを聴かされる恐れもありそうなんですが、ま、押えておいて損はないかも知れませんね。  “ええ)ぞ、サナギ(37)マン” と覚えておくようにしましょう。

 で、続いて “B/Fバンド” に目を転じてみるとですね、 『B/F-31』 に “モダン・ジャズ” というのがありますな。 ジャズがもっとも熱かったモダン・ジャズ全盛期のハード・バップを中心に、ウェスト・コースト、ファンキー、モード、新主流派等、様々なスタイルのモダン・ジャズの名曲名演がお楽しみ頂けます。…ということで、ソニー・クラークの 『クール・ストラッティン』 のジャケットを喜んで出しているところはちょっと素人臭かったりするんですが、6月は新主流派特集ということで、ボビー・ハッチャーソンウェイン・ショーターの名前が出ておりますな。 おおっ、エエやん、これ♪   “佐藤作()、判(31)沙汰” と暗記しておいて、チャンスがあれば是非とも聴いてみたいところなんですが、あとはまあ、

  『B/F-32』 “ジャズ・ヴォーカル”  『B/F-33』 “フュージョン”  『D-19』 “ディキシーランド・ジャズ
  『H-10』 “スウィング・ジャズ”  『H-11』 “スロー・ジャズ

…といったあたりは、各自の趣味に応じて聴いて貰えばいいとして。 で、ジャズはいつも家で聴いているから、この機会にちょっとちがったジャンルの音楽も聴いてみようかな?…などと思う人もいるかも知れませんが、 “JKバンド” には音楽以外のなかなか面白そうなコンテンツが揃っておりますな。落語、漫才、講談、詩吟、浪曲、小唄というのはまだ分かるとして、 『J-17』 には “般若心経”なんてのがありますな。7分プログラムを繰り返し放送ということで、変化という点では “さきいか” や “おつまみ昆布” 以上にまったく期待が持てないと言ってもいいと思うんですが、不眠に陥った時にでも試しに聞いてみるといいかも知れません。 不眠と言えば 『J-26』羊の数” というのもありますが、羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹…と順番に数えていって、いったい何匹までカウントする気なんですかね? それを考え出すと気になって気になって、夜も眠れなくなってしまうんですが、それではあまりにも本末転倒なので、ここで答えを明らかにしておきましょう。 1001匹なんだそうです。 羊が1000匹、羊が1001匹…まで来たところで、 「まだ起きてるの?もう一度頭から聞く?」 という事になって、それでまた1匹に戻るんだそうです。 それを知ってしまった以上、例えばスイッチを入れた時の数字が 786匹ぐらいだったりすると、1001匹目が気になって、それを聞くまでは眠れなくなっちゃいますよねー。 安らかな眠りを求めるのなら、般若心経か、あるいは 『J-27』 の “心音” あたりのほうが無難かも知れません。 間違っても 『J-28』 の “客の呼び込みコメント” なんてのを選んではいけませんが、それにも増して安眠を妨害される事になるのが、朝まで付けっ放しにされた “すけべビデオ” でありまして、ウトウトしたと思ったら、いきなり 「ああん♪」 とか妖しい声が聞こえてきたりして、気になって寝られへんちゅうねん!!

 せめて有線放送が完備されたホテルに泊まった時くらいは、ゆっくりと朝まで熟睡したいところなんですが、タイマーとの連動でセットした時間に電源を入り切りしたり、自動的にチャンネルを変えてくれたりする装置があったりすると、もっといいんですけどねー。 “うなぎパイ” を齧りつつ、真夜中のスロー・ジャズをBGMに布団の中に潜り込んで、安らかな眠りについた頃を見計らって、 “般若心経” にチェンジ。 その後、 『J-27』 の “心音” を5分ほど流してから電源をオフにして貰えれば、さぞやゆっくり眠れることでありましょう。 で、朝はやはり 『A/E-16』 の “小鳥の声” で、爽やかな目覚めを迎えたいものでありますなー。 カーテンの隙間から朝日が部屋に差し込む頃、部屋に備え付けられたスピーカーから流れ出す、爽やかな声。 「エッ、鳳啓助でございます!」  しまった! 「小鳥の声」「鳳の声」 を間違えた! …とまあそんなことで、有線放送のお話はおしまい。 ポテチン!

 ということで、今日はマックス・ローチなんですが、有線放送のスイッチを入れた時、スピーカーからローチのリーダー作が流れて来たりしたら、君はどうするかな? 僕なら迷わずチャンネルを変えますが、まだ 『C/G-25』 の “アニメ・ステーション” に 「 PAPAPAPAPANTSU〜だってパンツだもんっ! 」をリクエストするほうがマシなような気がしますもんね。 ブラウン=ローチ・クインテットの諸作はともかくとして、 『ウイ・インシスト!』 で態度が反抗的になって以降のローチには今ひとつソソられるものがないというのが実情でありまして、で、今日取り上げる 『アワード・ウイニング・ドラマー』 はどうなのかと言うと、これはちょっと微妙なところでありますな。 1959年なので、 『僕たち、反抗しちゃうんだもんね!』 の1年ほど前のセッションということになりますか。 ブッカー・リトルジョージ・コールマンというメンバーは、その手のサウンドが好きな人ならちょっとソソられるものがあるかも知れませんが、ベースのアーサー・デイビスというのはアート・デイビスと同じ人なんすかね?…という問題も、とりあえずはいいとして。 僕としてはピアノレスというフォーマットなのがちょっと気になるところでありまして、チューバのレイ・ドレイパーが入っているのは、もっと気になるところだったりします。 チューバ入りのジャズって、凄く出来がいいか、凄くつまらないか、どうでもいいかのどれかだったりしますからねー。 で、演奏のほうに入る前に、 『アワード・ウイニング・ドラマー』 というアルバム・タイトルに触れておかなければなりませんが、 『賞の勝利ドラマー』 。 ここでいう賞というのは、各種ジャズ雑誌の人気投票の類ではないかと思うんですが、ジャケットの左下のほうには三角形で囲まれた “Down Beat : 1955 Metronome : 1951 and 1954 Jazz-Hot(Paris) : 1956 The Musicians' Musicians Poll : 1956 Down Beat International Critics' Poll : 1957-1958-1959” といった記載が見られますもんね。 この事から当時のローチがアメリカの一般人の間で人気があって、国際的評論家の間からも高く評価されていたことが窺われるんですが、だからと言って何も、ジャケットの左下のほうに三角形で囲って、自慢げに “栄光の記録” なんかを書かなくてもいいじゃん。…と、僕はちょっぴり反抗的な態度になったりもするんですが、ま、それはそうとして、では1曲目から聴いてみることにしましょうかー。

 まずはえーと、 「チューバ・デ・ノッド」 という曲でありますな。 その昔、 「パンチDEデート」 というテレビ番組があったりしましたが、こちらは 「チューバDEノッド」 でありますか。真ん中の “DE” 意外、まったく共通点はありませんな。 “パンチ” と “デート” と “チューバ” は分かるとしても、“ノッド” って、何や?…と思って調べてみたところ、えーと、うなずく、会釈する、うなずいて同意する。…といった意味なんすかね? チューバDEうなずき? 今ひとつよく分からなかったりするんですが、よく考えたら “パンチDEデート” というのも何だか今ひとつ意味がよく分からなかったりするので、あまり深く追及するのはヤメにしてて、さっさと演奏のほうにいっちゃいましょう。 テナーとチューバの絡み(?)で地味に幕を開けて、そこにドラムスとトランペットが参入してくるという導入部はなかなかいい感じでありまして、続くテーマ部のメロディもマイナーなムードがあって、悪くありませんな。 ローチやブッカー・リトルという人たちは、例えばアート・ブレイキーやリー・モーガンあたりと比べると、ちょっぴりお利口な雰囲気があったりするんですが、いや、別にブレイキーやモーガンがアホと言いたいわけではなくて、あくまでも気分の問題なんですが、どことなく知性を感じさせる仕上がりになっておりますな。 それがいいか悪いかは個人の趣味の問題なので、僕がとやかく言う筋合いはないんですが、テーマに続いて登場する最初のソロがアーサー・デイビスのベースで、その次がドレイパーのチューバ・ソロというのは、誰がどう考えても、悪い!…と言わざるを得ません。地味すぎるちゅうねん! 盛り上がらへんちゅうねん! とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 次の年にはローチが人気投票トップの座から滑り落ちることが懸念される、そんな1曲なのでありました。

 2曲目の 「ミラノ」 はジョン・ルイスの曲ですよね。 MJQの実質的なリーダーであるジョン・ルイスという人も知性と教養を感じさせるキャラだったりするんですが、そこのところがローチくんとリトルくんのお気に召したのでありましょうか? ほの暗いヨーロピアン・ムードの漂う、なかなか地味な演奏に仕上がっておりますな。 陰々滅々とした3管ハーモニーによるイントロに続いて、テーマ部はブッカー・リトルが吹く主旋律に、その他の2管が絡むというスタイルでありますな。 リトル特有の腺病質なトーンが、イタリアのミラノというよりも、どことなくボスニア・ヘルツェゴビナ的だったりして、好きか嫌いかという問題は別にして、地味で盛り上がらないというのは衆目の一致するところではなかろうかと。 唯一の救いはテーマに続いて出てくるソロがベースでもチューバでもなくて、ジョージ・コールマンのテナーであることなんですが、節度のある抑えた吹きっぷりは、ま、それなりに評価してもいいのではなかろうかと。 モードに走ったジョージ君は、ややもすれば単調に流れすぎる丹頂鶴。…といった嫌いがないでもないんですが、ここではハード・バップ的なアプローチによって、ま、それなりにそこそこなのではないかという気がします。少なくとも、チューバよりはマシ? …とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 今日の後半は久しぶりにすんなり終わってしまいそうな気配が濃厚なんですが、3曲目は 「バリエーションズ・オン・ザ・シーン」 。 場面場面に応じた、色々なバリエーションが期待出来そうなタイトルなんですが、ミディアム・テンポですな、こりゃ。 テーマはマイナー調で、まずまずキャッチーなメロディであると評価していいと思いますが、ローチのドラミングからは、さすがやん!…と言ってもいいかもしれない切れ味が感じられたりしますよね。 …と思ったら、アドリブ・パートに入ってからは意外と地味なバッキングに徹していたりするんですが、とにかくまあ、ソロ先発はジョージ・コールマンでありますな。 出来としてはまあ、可もなく不可もなく加茂郡八百津町大字伊岐津志。…といった感じなんですが、いや、いいところなんですけどね、八百津町。 なんとなく八百屋が多そうなところが個人的にはお気に入りなんですが、伊岐津志 (いきつし) という地名も何となく “生きのいい津市” みたいで、いいと思います。 で、続くリトルのソロはかなり彼らしさが出ていると思うんですが、彼らしさというのは、華麗なテクを誇りながらも、どことなく陰りを感じさせたりする、そんなところだったりするんですけどね。 カレーらしさというのであれば、辛いよね。…の一言で終わりだったりするんですが、ブッカー・リトルの彼らしさは、ちょっと複雑だったりします。クリフォード・ブラウンの直系と呼ぶには明るさが足りないし、どちらかというと前衛派なんだけど、遠泳は苦手。そういったタイプだと思うんですが、とまあそんなことで、アドリブ・パートの締めは ts→ds→tp→ds の4バースでありますか。 どうやら8小節交換だと思い込んでいたらしいジョージ・コールマンが5小節目に入ろうとしたところで、無情にもローチのドラムによって遮られるところが人生の悲哀を感じさせるわけなんですが、何とも冷徹なんですよね、ローチくんって。 山本クンは小鉄なんですけどね。 いいですよね、山本小鉄。 こてっちゃんの食べすぎでコテっと死んじゃいそうなところが個人的にはお気に入りだったりするんですが、とんだ恥さらしだったジョージ君が次の出番では妙に張り切っているところがなんとも微笑ましくて、で、4バースはすぐに終わってローチのドラム・ソロへと移行して、いや、これはなかなか、さすがやな。…と思わせる出来だったりして、で、そのままテーマに戻らずに、おしまい。 ま、ここまでのところでは、まだ聴ける部類の出来であると言っていいのではないでしょうか。ローチくんもそろそろ、エンジンが掛かってきましたかねー?

 で、続いては 「パイズ・オブ・クインシー」 という曲なんですが、いいですよね、パイ。 僕は無類のパイ好きだったりするんですが、子供の頃は森永のエンゼルパイが大好きでした。 子供だった僕はエンゼルパイでマシュマロに目覚めたと言ってもいいわけなんですが、おおっ、スパゲティにマシュマロが入ってるやん!…というので喜んで頼んでみたら、何か変なキノコのようなものしか入ってなくて、心の底からガックリしたという苦い体験もあったりするんですけどね。 そっか!マシュマロとマッシュルームは違うものやったんや!…ということに気付いたのは、わりと大人になってからだったんですが、マシュマロというのも単体で袋に入って売られているのを食べたら、さほど美味しくもなかったんですけどね。 パイで挟んでチョコでコーティングしてこそのマシュマロなんやな。…という事に気付いたのはわりと早くて、小学5年生頃だったように記憶しているんですが、ここでいう “PIES” というのはお菓子のパイとは何の関係もなくて、シンバルメーカーが呼ぶところのシンバルの事である。…というような記載が原文ライナーにあったりするんですが、でもって、クインシーというのはクインシー・ジョーンズのことではなくて、シンバルを製造しているメーカーの名前なんだそうです。 つまり 「パイズ・オブ・クインシー」 というのは、たとえて言うなら 「ヤマハのエレクトーン」 とか、そういった意味合いのタイトルであるようなんですが、おそらくローチくんはクインシー社からいくばくかの袖の下を貰って、このような名前を付けたのではないかと思われます。 宣伝し過ぎですよね、こりゃ。 うちのサイトの “be-bop掲示板” には、別にリベートを貰っているわけでもないのに勝手に “若狭湾サバのへしこ” という宣伝が勝手に表示されたりして迷惑この上ないんですが、ま、無料の掲示板なので仕方の無いところではあるんですけど。 一時期、骨折系の宣伝が多かったんですが、今見たらどういうわけだか “厳選の高層マンション情報” と “東京都内にある快適・便利なマンスリーマンション” が表示されておりました。 “サバのへしこ” はともかくとして、高層マンションまではなかなか手が出せませんなぁ。 とまあそれはともかく、演奏のほうはどうなのかと言うと、テーマの部分はほんの付けたしのようなもので、シンバルを中心とした僕のソロを思う存分に聴かせてやりたい!…というローチくんの欲望を、そのまま形にしたものだと思っておけば間違いないわけですが、そんな自己満足に付き合わされる僕たちのほうこそ、いい迷惑なんですけどね。 ま、ドラマーのリーダー作なんか買ってしまった僕が悪いとも言えるんですが、すいません、全部ボクが悪いんです。…と反省するほどのことでもなくて、ローチのドラム・ソロというのは、ま、それなりに楽しめたりするんですけどね。少なくとも、チューバよりはマシ?

 5曲目は 「オールド・フォークス」 なんですが、いや、いいですなー。 僕は個人的にこの曲がけっこう好きだったりするんですが、ところで “OLD FOLKS” って、どういう意味なんですかね?…と思って翻訳サイトに掛けてみたところ、 “年取った人々” という結果が出たんですが、なるほど、言われてみれば確かに、ちょっと枯れた味わいのメロディだったりしますよね。 僕はマイルスのバージョンがいちばん好きだったりするんですが、当然、バラードやよな。…という僕の期待とは裏腹に、ローチくんはこの曲をアップ・テンポで料理しちゃったんですな。 が、綺麗なメロディの曲というのは速いテンポで演ってもそれなりにいい感じに仕上がるものでありまして、いや、イントロのアレンジを耳にした時は、なんじゃこりゃ?…と思ってしまったんですが、ブッカー・リトルのトランペットと中心にしたテーマ部の演奏はそれなりに “年取った人々” しておりました。いや、年を取ってるとは思えないほど動作が機敏で俊敏だったりして、尿瓶とかあまり必要なさそうな感じなんですが、テーマからそのままアドリブ・パートへと突入していくブッカー・リトルの吹きっぷりが素晴らしいですな。 どちらかと言うとアタマで考えるタイプの彼が筋肉だけで勝負している感じでありまして、とは言っても、けっして暴走したりせず、どことなく陰気臭かったりするところがこの人の長所でもあり、短所でもあり、便所だったりもするわけなんですが、とか言ってるうちにテーマに戻って、演奏は終わってしまって、ということで、続いては6曲目です。 「サディーガ」 です。タイトルの意味は不明です。 ややエキゾチックな雰囲気のイントロは、そういえばチューバ、いたんだっけ?…というのを改めて思い出させてくれたんですが、テンポが速くなったり遅くなったりして、重厚なサウンドであるな。…と思っていると、いきなりスインギーに転じたりして、でもって、テーマそのものはマイナーなムードもあったりして、なかなかいい感じでありますな。 ソロ先発のリトルが前曲に続いてなかなか張り切っておりまして、続くジョージ・コールマンも久しぶりに存在感を発揮した感じなんですが、その後のドレイパーのソロは別に無くてもよかったんじゃないですかね? あまりにも地味過ぎて、バカでかくで邪魔なだけの楽器をわざわざ参加させた意図があまり読めなかったりするんですが、ローチくんとしても、ハズしたか?…という思いがあったのか、チューバのソロのバックにトランペットとテナーのハモりを配したアレンジは賢明な措置だったと思います。 が、続いてベースとドラムスの地味な絡みを持ってきたというのは今ひとつ暗愚だったような気もするんですが、ま、ローチが張り切っている分、純粋なベース・ソロよりは、まだマシ?…という気がしないでもないんですけど。 全体的に、懲り過ぎたところが裏目に出た感が無きにしもあらずなんですが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 ということで、最後の曲です。 「ガンドルフォス・バウンス」 「ガンモドキを焼いたの」 なら何となく想像が付くんですが、 「ガンドルフォス・バウンス」 となるとこれはもうお手上げでありまして、そもそも “ガンドルフォ” というのはいったい何なのかと思って調べてみたところ、ローマの郊外にカステル・ガンドルフォという、何となくカステラが名物っぽい感じのする共同体があるみたいなんですけど。 それが分かったところで、何も分からなかったのとさして大きな違いは無いような気もするんですが、曲そのものは確かにガンドルフォっぽいムードが漂っておりまして、いや、かなり複雑で凝った作りでありますな、こりゃ。 聴いてみて楽しいのかというと、お世辞にもそうは思えないところがネックなんですが、いやあ、ローチくん、6曲目まででヤメておいたほうがよかったかも知れませんね。 とまあそんなことで、後半はあまりヤル気の感じられないレビューになってしまいましたが、今日のところは以上です。

【総合評価】

 スタート・ダッシュに失敗して、3曲目から何とか調子を取り戻して必死に追い上げたものの、最後の最後でコケた。…といったレース展開の1枚でありましたな。 『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』 あたりが好きな人なら、いいかも知れないね?…という気はするんですが、そうでない人には、あまりよくないかも知れないね。…という気がします。 有線でこのアルバムの1曲が掛かったりしたら、やっぱりチャンネルを変えちゃうでしょうな、僕は。 どうしてもというのなら、せめて3〜6曲目の間でお願いしたいと思います。


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