DIGGIN’ THE CHICKS (ARGO)

BILL LESLIE (1962/10/19)

DIGIN' THE HICKS


【パーソネル】

BILLESLIE (ts,saxella) TOMMY FLANAGAN (p) THORNEL SCHWARTZ (g)
BEN TUCKER (b) ART TAYLR (ds)

【収録曲】

GOOD NIGHT IRENE / ANGEL EYES / MADGE / MARGIE
LONEY WOMAN / GOT A DATE WITH AN ANGEL / ROSETTA

【解説】 (2007年03月04日更新)

 いやあ、春ですなぁ。 「食慾の」 とくれば、それに続く言葉は 「秋」 となるのが普通なんですが、春だって負けてはおりません。 春になると美味しくなる食べ物だって、たくさんあります。 春になると美味しくなる食べ物というと、春巻春雨、あとはえーと…、それくらいですか。 たくさんあると言っておきながら、実際に出てきたのはたったの2つだけで、しかも春とはあまり関係なさそうな食べ物でしたが、あ、サカナ関係で言うと、サワラなんてのもそうですかね? 魚偏に春と書いて、鰆 (さわら) 。 これはもう、春になると美味しくなるサカナであると断言してもいいでしょう。 ちなみに魚偏に秋は鰍 (かじか) 、魚偏に冬は鮗 (このしろ) と、今ひとつメジャーでないものが各季節を代表する魚として漢字化されているようですが、魚偏に夏というのは無いみたいですね。 やはり夏は暑くて魚が腐りやすいので、どれも旬とは呼び難いということなのかも知れませんが、それはそうと、サワラ。 “鰆” という字は小さなフォントで見るとちょっぴり “鯖” と紛らわしいものがありますが、塩焼きにしても塩サバほどギトギト感が無くて、お上品で、中年のおっさんの食い物としてはちょっと物足りないものがありますよね。 どちらかというと西京焼きにしたほうがサワラの食べ方としては最強かも知れませんが、最強と言っても “K-1” の世界に持ってくれば、曙太郎よりは強い。…といったレベルなんですけどね。 僕はそれほどサワラが好きではなくて、もし世の中にサワラを肴に洋酒を飲ませる “さわらバー” というのがあったとしても、僕は行きません。 “さわらバー” への誘いを断って、 “おさわりバー” に行くことになると思います。

 で、春に美味しくなるサカナというと、白魚を忘れてはいけません。 いや、僕はすっかり忘れていたんですが、つい先ほど思い出しました。 白魚は別名 “春告げ魚” とも呼ばれ、この季節を代表する旬の味覚なんですよね。 ちなみに僕は旬の味覚よりも新味覚のギョーザのほうが好きなんですが、いや、桑名駅前のメイトの2階にあるんですけどね、新味覚。 いつ食べても、いつも変わらない餃子の味で、とりたてて新しい味覚というわけでもないよな?…という気はするんですが、旧な味覚でも、美味しければ別にそれでいいんですけどね。 話がそれました。旬の味覚、白魚でしたよね。 一口に “白魚” と言っても、実はそれには2つの種類があるということを知っていましたか? 僕はちゃんと知っていました。博学多識ですからね、僕は。 雪印の牛乳がいつの間にか “メグミルク” という名前になっていたというのは、つい最近まで知らなかったんですが、青木記念病院の朝食にいつもメグミルクの200tパックがついていたんですが、聞いたことない名前の牛乳やなぁ。…と、ずっと思っていたんですけどね。 青木記念病院と言えば、昼食の時、たまに田舎饅頭が出たりしたんですが、養老町にある “飯ノ木金蝶園(はんのき・きんちょうえん)” というヘンな名前のお店の饅頭だったんですけど。 聞いたことない名前の饅頭屋やなぁ。…と思いつつ食べていたんですが、退院してからしばらくして、 「まんじゅうにノロウイルスか 83人が下痢など訴え」 という記事が新聞に載っておりました。どこの饅頭や?…と思ったら、思いきり飯ノ木金蝶園やんっ!! そういえば僕は退院直後に激しい下痢に苦しめられたんですが、もしかしたら入院していた頃から既に、あの饅頭にはノロくんが混入していたのかも知れませんなぁ。。。 飯ノ木金蝶園には今後、もっと緊張感を持って衛生管理に当たるよう、願わずにはいられません。

 また話がそれました。旬の味覚、白魚でしたよね。 このままズルズルと話をそらしていって、本題に入る前に何とか1回分の原稿を書き上げられないか?…と思っている次第なんですが、書き上げると言えば、白魚というのは掻き揚げにして食べると美味しいですよね。 というか、掻き揚げにでもしないと、あまり美味しくは食べられないよな。…という気がするわけなんですが、一口に “白魚” と言っても、実はそれには2つの種類があるというところまで話を戻さなければなりません。 どういう種類があるのかというと、白魚と書いて “シラウオ” と読む白魚と、 “シロウオ” と読む白魚とがあります。 シロウオのほうは正しくは 素魚 と書くそうなんですが、 “シロ” と “シラ” とが混同されているのが実情でありまして、あ、春の風物詩として知られているのはシロウオのほうなんですかね?…と、僕の頭の中も激しく混乱しているところでありますが、シラウオ、もしくはシロウオとして知られるサカナは、卵とじにして食べるのが最強であると言われています。 ただ、最強と言っても僕はシラウオ、もしくはシロウオの卵とじというのがあまり好きではなくて、“K-1” の世界に持ってくれば、曙太郎にも負けちゃうかも?…という気がしております。 そういえば松尾芭蕉には

  あけぼのや 白魚白きこと一寸

という有名な俳句がありますが、この一句は芭蕉クンが桑名に来て作ったものなんだそうですね。…という話は前にもどこかに書いたような気がするんですが、時雨蛤のお店に行くと、よく一緒に “白魚紅梅煮” なんてのも売ってたりします。 個人的には多度の “紅梅焼き” 同様、まったくソソられるものがない食い物だったりするんですが、以上を持ちまして、白魚のお話はおしまい。 あとはえーと、春菊ですか? いや、春を感じさせる食材という話の流れなんですが、春菊というのはその名の通り “春の菊” でありまして、とっても春を感じさせる食べ物だったりしますよね。 いや、冬には鍋に入れてよく食べたりするんですが、春になるとあまり見掛けなくなるような気もするんですけど。 ちょっと調べてみたら春菊の旬は11月から3月なんだそうで、やはり春本番になると姿を消す食材であると言えそうなんですが、君は春菊が好きかな? 僕はですね、ま、普通に好きだったりします。 白魚の卵とじよりは遥かに美味しいと思うんですが、 “おさわりバー” ほどにはソソられるものがない。 ま、そういったスタンスにあるわけですが、ちょっと癖のある味なので、春菊はちょっと苦手なのぉ。…というギャルは少なくないかも知れませんね。 オバチャンなんかはわりと春菊が好きそうなイメージがあって、春菊が苦手なのはギャルの中でも若手の部類に多いような気がします。 ま、若手の部類でないのは普通 “ギャル” とは呼ばないのではないか?…という意見もあろうかとは思いますが、春菊が嫌いなギャルというのは大抵、青紫蘇とか、セロリとか、三つ葉とか、パクチーとかも駄目だったりしますよね。 僕の場合、春菊と青紫蘇はどちらかというと好きな部類で、三つ葉は微妙。 で、パクチーって、何やそれ?…とか思ってしまったんですが、あ、タイ料理のトムヤンクンとかに入っているヤツですか。コリアンダーとは同じものなんですね。 コリアンダーを初めて口にして、 「こりゃ何だー?」 と、思わずつまらない事を口にしてしまったオッサンは少なくないと思いますが、癖のある食材と言えば、春の到来を最も強く感じさせる “フキノトウ” とか、 “つくし” なんてのもそうですよね。 いや、僕はこの2つのことをすっかり忘れていたんですが、春巻とか春雨とかの話をする前に思い出しておくべきでありましたなぁ。。。

  雪がとけて川になって 流れて行きます つくしの子が恥ずかしげに 顔を出します〜
  もうすぐ春ですねえ ちょっと気どってみませんか〜♪

  風が吹いて暖かさを 運んできました どこかの子が隣の子を 迎えにきました〜
  もうすぐ春ですねえ 彼をさそってみませんか〜♪

  泣いてばかりいたって 幸せはこないから 重いコートぬいで 出掛けませんか〜
  もうすぐ春ですねえ 恋をしてみませんか〜♪


 僕は春先になると真っ先にこの歌を思い出すんですが、そうです。春と言えば “つくし” です。 だからと言って何も1番を最後まで歌いきって、行数稼ぎをすることはないじゃないか?…という気がしないでもないんですが、 “つくしの子” は1行目に登場してますもんね。 春先になると、堤防の土手で “つくし” を摘むオッチャンやオバチャンの姿をよく見掛けますが、例年、3月も半ばを過ぎてから出没することになるこれらの人々を、今年は暖冬の影響からなのか、2月の下旬の時点でちらほらと見掛けるようになりました。 そうして摘み取ったツクシちゃんを、恐らく卵とじとかにして食べるんだと思いますが、ただ苦いだけでそれほど美味しいものではないような気がしないでもありません。 個人的に “つくしの卵とじ” というのは、 “白魚の卵とじ” と同じくらい、あまりソソられるものがない食べ物だったりするんですが、ただ “つくし” というのはネーミングが素晴らしいですよね。 何だかこう、一生懸命に尽くしてくれそうな気がして、いじらしい感じがあります。 もし僕が将来、誰かと漫才をやることがあるとすれば、その時のコンビ名は “いたし・かゆし” にしようと思っているんですが、フルネームでは “頭いたし” と “頭かゆし” 。 が、それがもし夫婦漫才ということであれば、 “あらし・つくし” なんてのもいいかもしれませんな。 フルネームは “春野あらし” と “春野つくし” 。 つくしちゃん、めっちゃ可愛いよなっ♪…と、ぼくは思うわけなんですが、すけべ女優の “早乙女つくし” なんてのもいいですよね。 そんなとってもお茶目なツクシたんなんですが、植物としては一体どういう素性であるのか、ご存知ですか? 卵とじだけでなく、酢醤油で食べても大丈夫な素性なのかどうか、大いに気になるところなんですが、僕はずっと、ツクシというのは大きくなってもずっと “ツクシ” という植物なのだと思っておりました。 春になると土手から顔をだす、あの卵とじにして食べる部分は “生まれたばかりのちいさなツクシ” なんだとばかり思っておりました。 それが証拠にキャンディーズも “つくしの子が恥ずかしげに…” と歌ってますもんね。 が、調べてみたら違っておりました。

 蛙の子は蛙…ではなくて、オタマジャクシなんですが、ツクシの親もツクシではありませんでした。 つくし誰の子、スギナの子〜♪ と歌われるように、ツクシというのは実はスギナの子供だったんですな。 スギナというのはどんなヤツなのかと思ったら、庭とか畑とかにニョキニョキと生えて、育って、繁茂して、除去するの変困る大変にやっかいなシダ植物なんだそうですが、子供のツクシちゃんはとっても可愛がられて、卵でとじられたりしているといういうのに、その父親はただの薄汚い雑草野郎であるわけでして、しかも “スギナ” という名前が何とも実によくありませんな。 何か、めっちゃ花粉症の元凶になりそうやんっ!! 僕は春先のこの時期 “スギ” という言葉にはどうしても過敏になってしまうんですが、例えばウチの辺りでは大いに幅を利かせているドラッグストアの2大チェーンである “スギ薬局” と “ドラッグスギヤマ” 。 お前ら、自分らでスギの花粉を撒き散らしておいて、花粉症の患者にティッシュとか、マスクとか、目薬とか、点鼻薬とかを売りつけて、それで暴利を貪ってるんやろ?…としか思えないようなネーミングに、目にする度に思わず、鼻水とくしゃみが止まらなくなっていまいます。 スギナなんてのも、どうせロクな奴ではないに違いないんですが、それに比べて子供のツクシちゃんのほうは、何ともよくデケたお子様であるらしんですよね。 何と、ツクシちゃんには花粉症にとっても効果のあるエキスが含まれているんだそうで、その成分から作った つくし飴 などというアメちゃんまでが作られているんだそうで。 父親が酒を飲んで暴れて、スギナの花粉(?)をばら撒いているその影で、娘のツクシちゃんは、いじらしくも花粉症の治療に心血を注いでエキスまで搾り出されているわけでありまして、それにしても、つくし飴が 20粒入りで2000円というのは人の弱みに付け込んで、ちょっと暴利を貪り過ぎではないですかね? たかだかスギナの子供の汁が入っているだけにしては、ちょっと高スギナような気がするんですけど。。。 ま、そこらに生えているナマのつくしだって効果はあると思うので、この春は ノーズマスクピット の代わりに、つくしの胞子の部分でも鼻の穴に突っ込んでみようかと思うのでありました。 おしまい。

 ということで、今日はビル・レスリーです。 どういう人なんだかよく分からなくて、あまり書くこともなさそうなので、とりあえず花粉症の話を続けようと思うんですが、むさくるしい男がモデルになった結果、わざわざ見えるようなポーズで写してみてもほとんど見えないことが判明した “ノーズマスクピット” なんですが、つい先日、こいつを装着していることを見破られてしまいました。 某浄化センターの事務所に行ったら、担当者に 「あれ、花粉症の?」 と言われてしまったんですよね。 ただ、馬鹿にされたというわけではなく、テレビでやっているのを見たんやけど、どこにも売っていない。…というので、むしろ羨ましがられたんですけどね。 去年からこれを愛用していて、今年も通販で取り寄せた僕は何だか誇らしいような気分になってしまいましたが、念の為に言っておくと、効果のほうはどうも今ひとつと言う気がするんですけど。 鼻マスクだけで一日外で仕事をしていたら、思いきり花粉を吸い込んでしまったらしく、その日の夕方以降は鼻水とくしゃみが止まらなくて大変でしたからね。 翌日から用心して鼻マスクと普通のマスクを併用するようにしたところ、かなり症状は改善されたんですが、ま、何も使わないよりは遥かにマシだと思うんですけど。 来年は是非、つくしエキスも練り込んで欲しいところでありますが、ということで、ビル・レスリー。 寺島のやっくんが書いた日本語ライナーを見ても、ネットで調べてみても、その正体はまったく不明でありました。 いや、気合を入れて調べればそれなりに情報も得られるんでしょうが、そこまで気合を入れるほどのことでもないしぃ。…といった気がするんですよね。 で、今回、アーゴ盤の 『ディッギン・ザ・チックス』 というアルバムを紹介しようと思うんですが、ジャケットの写真を見る限り、こういう顔をしたオッサンって、わりとどこでもよく見掛けるよなっ!…といったルックスの持ち主であることがよく分かります。 それ以外のことは何も分かりません。 なかなか人のよさそうな顔なんですが、意外と意固地な一面もありそうで、なかなか油断がならんのですが、とりあえず僕はこういう顔のオッサンからキトサンのマルチまがい商法の話を持ちかけられたりしたら断りますね。 ま、どういう顔の人から薦められても、マルチまがい商法は断っておいたほうが賢明だとは思うんですが、このアルバムはなかなかいいメンバーが揃っていますよね。 メンマラーメンというのはいいメンマを使っているかどうかがポイントなんですが、ジャズのセッションはメンバーが勝負。 麺棒で耳クソを掃除するのは得意なんだけど、楽器のほうはからきし駄目。…といったメンバーでは、いい演奏は期待出来ません。 そこへいくと、トミー・フラナガンベン・タッカーアート・テイラーという極上のピアノ・トリオを従えた本作などは大いに期待が出来ると言ってもよく、ま、ギターのソーネル・シュワルツが入っているというのはちょっぴり邪魔なような気もするんですが、とりあえず1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 まず最初は 「グッド・ナイト・アイリーン」 という曲でありますか。 「おやすみアイリーン」 。 アイリーンというのは奥さんなのか恋人なのか、はたまたアイリーンだから愛人 (あいじーん) なのかはサダカでありませんが、レスリー君のオリジナルというわけではなく、歌物ナンバーのようですね。 とっても3拍子でワルツなイントロに続いて、何とも脱力系のほのぼのしたタッチでテーマが演奏されるんですが、何となく 「ザ・ケリー・ダンサーズ」 を彷彿させるトラディショナルな曲調でありますな。 単純でシンプルなメロディを数回、少しずつ味付けを変える格好で反復してリピートした後、レスリーのテナー・ソロということになるんですが、リズムへの乗り具合になかなか個性的なものが感じられ、フレージングにしても単純にハード・バップというわけではなく、かと言ってモーダルでもないし、いろいろなスタイルが混在して今ひとつよく分からんかったりするんですが、小難しい感じはなくて、どちらかと言うと小優しいので、概ね大丈夫なのではなかろうかと。強いて言うなら、ロリンズに近いですかね?…という気がしないでもないんですが、典型的なロリ系というわけでもなく、微妙にデクスター・ゴードンも入ってたりして、ま、人生いろいろですよね。スケベはエロエロですけど。 続くトミー・フラナガンのソロはいかにもトミフラ的というか、トミナガ的というか、 「お笑いマンガ道場」 における富永一朗のようなスタンスで僕たちを楽しませてくれるわけでありますが、君は富永派だったかな?それとも鈴木義司派かな? ちなみに僕は川島なお美が好きでありました。 本人はどうやらこの経歴を 「無かったこと」 にしておきたいらしく、ま、その気持ちも分からんでは無いんですが、ほとんど末代までの恥さらしみたいなテレビ番組でしたからね、お笑いマンガ道場。 で、ピアノのソロに続いて、またしてもレスリー君が出てきたなぁ。…と思っているうちに、何となくテーマ部に戻っていたりして、この辺りの流れはとってもナチュラルだったりするんですが、で、何となくフェードアウトしていって、1曲目はおしまい。 いや、アルバム冒頭から、なんとも “ほうとう” な演奏を持ってきたものでありますなぁ。 山梨県の出身なんですかね? ビル・レスリーくん。

 で、2曲目はおなじみ、マット・デニスの 「エンジェル・アイズ」 でありますな。いいですよねぇ、 「天使の瞳」 。 少なくと僕は 「便器のイソジン」 よりはいいよな?…という気がするわけなんですが、便器の中にうがい薬があったりしても、あまりそれで喉をゆすぎたくはないですからね。 で、レスリー君はこのしっとりしたバラードを、何とも暗くて陰気に料理しておりまして、ま、ある意味、魅惑のムード・テナー的な風情も感じられたりするんですけど。 AABA形式の “A” の部をテナーで吹いて、 “B” の部はピアノとギターにおまかせするというスタイルなんですが、そういえばこのアルバムにはギターが入っていたんですよねー。 1曲目でもほとんど目立つ活躍がなかったので、まったくその存在を忘れてしまっておりましたが、こうして2曲目の途中で思い出して貰って、ソーネル・シュワルツ君としても本望でありましょう。 で、テーマに続いてトミー君のピアノ・ソロになるんですが、この人の演奏はほんとうにアレですなぁ。 心の琴線に触れるというか、心の襞に入り込むというか、心のココココ、ココココ、ココナ〜ッツ♪…というか、あ、正しくは、夏夏夏夏、ココナ〜ッツ♪…でしたっけ? ココココ、ココココでは何だかニワトリがエサをついばんでいるみたいですもんね。 そもそもニワトリというのは…、とか言ってるうちにピアノのソロは終わってビル・レスリーが登場して来ましたが、ここでの彼の吹きっぷりはアレですな。 物すごくソフトで全身から力が抜けまくっていますよね。 その様を寺島のやっくんは日本語ライナーで 「肩のちからを抜いた普通の吹奏」 などと称しておりますが、僕はその様を、殿さまキングスのようだ。…と言っておきたいと思います。殿様にして王様まで兼務しているわけなので、あまり生きることに力を入れなくたって、周囲の人たちが何とかしてくれるんですよね。 ここでもフラナガン以下、優秀な家臣のサポートを得て…、とか言ってるうちに、すぐにテーマに戻ってしまいましたが、ソロ・パートとも言えないような短いパートでありましたな。 ま、淡々とメロディを吹いているだけで殿様や王様という商売はやっていけるので、これはこれで大丈夫なんですが、ということで、2曲目までおしまい。

 3曲目の 「マッジ」 という曲は、寺島靖国氏の解説によるとトミー・ドーシーがオハコにしていた曲なんだそうです。 が、作曲者のところを見ると “W.M.Leslie” とクレジットされていて、もしかしてこれはビル・レスリーの本名なんじゃないかという気がしないでもないんですが、いや、やっくんの書いてることを疑っているわけではないんですけど。 曲自体はゆったりとしたテンポのシンプルなブルースでありまして、もっさりとした感じの彼のテナーの音色に、実によくマッチしている近藤真彦。…といったところでしょうか? 2004年の 8月には和歌山県の白浜で溺れていた小学生を救助して、名前も告げずに去っていったらしいですけどね、近藤真彦。 後に少年の父親は、助けてくれたオッサンが近藤真彦であることを知って、ちょっとしたニュースにもなったんですが、その時の朝日新聞の見出しは 「人命救助さりげなく」 だったそうです。 ごくたまに、凄い洒落モノがいたりしますからね、朝日新聞の記者って。 で、テーマに続いてアドリブ・ソロを取るレスリー君でありますが、リズムへの後ノリはデクスター・ゴードンを彷彿させるものがありますな。 箱型スカイラインに箱乗りしたりするのは、暴走族のライフワークだったりするんですけどね。 小学生の頃、あこがれていたんですよね、箱スカ。 大人になったら箱スカに乗って横須賀に行くんだ!…というのが僕の憧れだったんですが、大人になったらあんなヤンキー車のことは別にどうでもよくなってしまったんですけど。 で、横須賀という街にもまだ行ったことがないんですが、 赤須賀 なら何度か行ったことがあるんですけどね。 僕たちは子供の頃、1〜10までの数字を数えるのに “あ・か・す・か・の・し・じ・み・う・り (赤須賀のしじみ売り) ” というフレーズをよく使ったものですが、この曲ではソーネル・シュワルツのギターの音色もさりげなく目立ったりしておりますな。 ギンギラギンではなくて、さりげないところが邪魔にならなくて殊勝な心がけだと思うんですが、そういう意味では続いてソロを取るトミー・フラナガンという人もよく自分の立場をわきまえていますよね。 転がるようなタッチのシングル・トーンが何とも耳に心地よく、ここでの演奏はちょっぴりソニー・クラーク的な哀愁も感じさせて、とか言ってるうちにテーマに戻って、おしまい。 何ていうことのない、ただのブルースやん。…といった演奏なんですが、その何でもないところが実にいいと、僕は思います。

 4曲目は 「マーギー」 という曲でありますな。 3曲目が 「MADGE」 で、その次が 「MARGIE」 。 紛らわしいやんっ!…と思わずにはいられませんが、やっくんの書いた日本語ライナーもここの部分で混乱したのか、先ほどのトミー・ドーシーがオハコにしていたという話は、こちらの 「マーギー」 のことを言いたかったのかも知れません。 最初に 「マッジ」 の話があって、ブルースがどうのこうのと書いてあって、続いて、 「マッジ」 は昔、トロンボーンのトミー・ドーシーがオハコにしていた曲である。…という記載があるんですよね。 本来、「マーギー」は昔、トミー・ドーシーが…と書いてあったのを、校正の段階で勝手に書き直されてしまったものと思われ、いや、先ほどは寺島クンの書いたことを疑ったりして、どうもすいませんでした。 いや、僕は決してやっくんの書いたことを疑っていたわけではないんですけどね。 で、やっくんはまた、8頭身美人がどうのこうのとか、ビル・レスリーのテナー・プレイは6頭身の魅力ではないかとか、何だかワケの分からないことを書いていたりして、真面目にやろうよ、ジャズの評論は。…と思わずにはいれれないんですが、なんとものんびりとした、寛いだ感じの演奏でありますな。 コルトレーンと違って肩が凝らないと寺島クンが絶賛するのも分かるような気がするんですが、ただの凡庸なB級テナーというわけではなくて、寛容の精神のある2流テナーといったところでしょうか。 ここでの吹きっぷりを聴いていると、ハンク・モブレイに通じる魅力を感じることが出来るんどすが、あ、キーボードを打つ指がもつれて、思わず京都弁になってしまいましたが、サンリオキャラクターの はんなりこまち とか、けっこう可愛いですよね。 『オシャレ魔女ラブ&ベリー』 の “はんなりこまちカード” のほうが、すっかりメジャーになってしまいましたけど。

 ということで、5曲目です。 「ロンリー・ウーマン」 。 オーネット・コールマンの例の曲をこんなところに持って来ちゃいましたかぁ。 ギターとベースによる何やら妖しげなイントロに続いて登場するレスリー君は、おっ、ここではソプラノサックスを吹いているんですな。…と思ったら、パーソネルのところを見ると、これはどうやら “saxella” という楽器らしいんですけどね。 ま、要するにソプラノ・サックスの親戚のようなものだと思っておけば、あながち間違いではないと思うんですが、ここでのビル・レスリーの吹きっぷりは何とも言えずにアバンギャルドだったりするんですよね。 あまり若手の部類ではないギャルの事を世間では “おばんギャル” と呼んだりするそうで、いや、あるいは年は若いんだけど、立ち振る舞いや動作、所作がオバハンくさいギャルのことをそのように呼ぶのかも知れませんけど。 いずれにせよ僕は、普通のギャルよりも “おばんギャル” のほうが好きでありまして、で、アバンギャルド系のジャズというのも、それが度を越して難解だったり、意味不明だったり、精神的に苦痛だったりしない限りは、わりと寛容に受け入れるタイプだったりします。 その意味で、ここでのビル・レスリーの取り組みは、ま、若気の至りだと思えばそれなりに我慢出来る範囲に収まっておりまして、ま、たまには羽目を外すのもいいんじゃないかな?…と、イランのハメネイ師も言っておりました。 いや、イランの最高指導者って、羽目を外すような行為には最も厳格であるような気もするんですけどね。

 ということで6曲目です。 「ゴッド・ア・デイト・ウィズ・アン・エンジェル」 。 あの物識りで知られる寺島クンですら、この曲は知らなくてもそれほど恥ずかしくないかもしれない。あなた、知ってました?…などと書いておりますが、ファッツ・ウォーラーの曲なんですな、これは。 綺麗なタッチのピアノのイントロに続いて演奏されるテーマは、小粋という言葉がぴったりするような小さくて粋な感じのナンバーでありまして、これはいかにもヤックン好みでありますなぁ。 アート・テイラーのきっちりとしたドラムスも耳に心地よく、レスリーのテナーもハンク・モブレイっぽいという点では、ここでのソロがその最右翼であると言えるかも知れません。 テーマの部分はわりとゆっくりしたテンポなんですが、アドリブ・パートでは倍テンポを多用して緊張感のある世界を構築している名古屋コーチンといった感じで、続くトミ・フラのソロも実にうまくツボを押さえたホルモンキッチン。…と言えるのではなかろうかと。 いや、うちの会社の近くにあるんですけどね、 元祖!!壷漬け焼肉 「ホルモンキッチン」 茜部店 。 壷のマークが目印だったりします。 いや、僕はホルモンがさほど好きではないので、一度も行ったことはないんですけど。 で、ピアノのソロに続いて、ベース好きにはたまらない、ベン・タツことベン・タッカーのピチカート・ソロも聴かれたりして、実に正統的なハード・バップの名演として素直な心で楽しめる1曲に仕上がっているのでありました。 で、ラストでありますが、 「ロゼッタ」 という歌モノを最後に持ってきましたかぁ。 これまた、いかにもハンク・モブレイ的な選曲にして、演奏のほうも以下同文でありますなぁ。 こういう、まったりとしたタイプのテナーマンは好き嫌いがはっきりと分かれる嫌いがあるんですが、嫌いな人はとことん嫌いだったりしますからね。 が、僕はそんなビル・レスリーが 大好きっ♪

 ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 実に愛すべきアイス饅頭。…といったキャラでありますな、レスリー君。 ほのぼのとした雰囲気は何者にも換え難く、隠れた歌物を中心とした選曲も渋いところをついておりまして、意固地かとも思えたんですが、やはり根っから人のよいキャラであると信用していいかも知れません。 彼の誘いであればマルチまがい商法だって、大丈夫かも?


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