TEX BOOK TENOR (BLUE NOTE)

BOOKER ERVIN (1968/6/24)

TEX BOOK TENOR


【パーソネル】

WOODY SHAW (tp) BOOKER ERVIN (ts) KENNY BARRON (p)
JAN ARNET (b) BILLY HIGGINS (ds)

【収録曲】

GICHI / DEN TEX / IN A CAPRICORNIAN WAY
LYNN'S TUNE / 204

【解説】

 「痛いよー、痛いよー。」

 これは僕が小学生時代に書いた作文の名作、 『僕と虫歯』 の冒頭部分であります。 いや、僕のオリジナルではもっと普通の書き出しになっていたんですけどね。 「僕は小さい頃から虫歯になやまされていました。」 …みたいな。 が、この作文が担任のナカヒロ先生の目に留まって、クラスの代表として桑名市主催 「よい子のよい歯・作文コンクール」 に出すということになった時点で、担任による大幅な作品のテコ入れ…というか、ほとんど捏造ちゃうか?…と言いたくなるような添削指導が行われることになって、その結果、作文の書き出し部分の変更を与儀なくされる羽目になりました。 「文章というのは出だしが肝心である。」 というのがナカヒロ先生の持論だったようで、夏目漱石の 「我輩は猫である」 やら、川端康成の 「雪国」 の例まで持ち出して力説するものだから、気が弱くてとってもシャイな性格の僕はその勢いに押されてしまったわけなんですが、心の中では、人の作文を勝手に変えるなって!…とか思っていたんですけどね。 でもまあ、元々の作文にしたところで、うちのおかんが考えたものを僕が忠実に口述筆記しただけのものだったし、何よりナカヒロ先生による改ざんによってコンクールでは3位に入賞することになったので、インパクトのある書き出しというのは、それなりに審査員の心に訴えかけるものがあったみたいです。 ただ、負けず嫌いの僕としては、どうせなら桑名で一番になりたかったところでありまして、ナカヒロ先生にはもう一頑張りして欲しかったところなんですが、表彰式の時、1位になったのはどこのどいつや!?…と、敵意のこもった視線で注目していたところ、それがとっても可愛いギャルでありましたので、ま、この娘になら1位を譲ってあげてもいいかぁ。…と、僕はすっかり大らかな気分になったものでありました。 いやあ、うちの学校の中ではアイスまんじゅうちゃん (仮名) が、いちばん可愛いかな?…とか思っていたんですが、他校には他校なりに可愛いギャルがいたりするものなんですなー。

 …という作文ネタは前にも書いたことがあるんですが、今日、再びこの話を持ち出したのは他でもない、他に書く事が無かったからなんですけどね。 試しに前回はどういう展開だったのかと思ったら こんな感じ だったりしたんですが、4コマ漫画だとかごんあじ嬢の描いたイラスト、それに一刀両断されたオサカナの写真などもあって、なかなかお得なページではありますな。 ま、書かれていることは今回とほとんど同じだし、最初からこのページを引用しておけば、今日の最初の段落は無くてもよかったわけなんですが、どうして僕がまたしてもこの作文を思い出してしまったのかと言うと、3日ほど前から僕の歯がですね、 「痛いよー、痛いよー。」 という状況になってしまったからなんですけどね。 僕の歯は年に数回、季節の変わり目になると思い出したように痛くなったりするんですが、今回、どれくらい歯が痛くなったのかというと、今年も海へ行くって、いっぱい映画も観るって、約束したじゃない、あなた約束したじゃない、歯痛い〜♪ と、思わず沢田知可子を歌ってしまったほどなんですが、歯が痛いと他人と話をするのも億劫になってしまって、駄目ですよね。 ま、仲のいい友達だったりしたら問題はないんですが、例えばナガ○ワ所長代理とかとはなるべくなら口を利きたくなくて、歯痛 (はいた) になると人はどうしても排他的になってしまうものであります。 が、幸いにも、僕が歯痛になるのと合わせたかのように、ナ○ナワ所長代理は名古屋へ転勤することが決まってしまって、いや、僕はこの異動には大きなショックを受けてしまいました。 この人がいなくなると、うちの営業所は仕事が回らなくなってしまうし、僕としても大いに困ってしまいます。 どうでもいい書類を役所に持って行くといった “パシリの仕事” を、これからいったい誰に頼めばええねん!?

 …という社内人事に関してはとりあえず置いといて、どうして僕が歯痛になってしまったのかと言うとですね、これはもう、歯のケアを怠ったからでありましょう。 もう、ずいぶんと昔からボロボロですからね、僕の歯は。 “玉子ぼうろ” くらいならボロボロの歯でもまだ何とかなるんですが、 “蕎麦ぼうろ” となるとちょっと硬いからだんだん怪しくなってきて、ホーローの鍋でもカジろうものなら、もう完全にアウトです。 ま、そんなものをカジったりすれば、いくら歯の丈夫な人でも駄目なような気はするんですが、僕は小さな頃から歯が悪くて、ずっと歯医者さんに通っていたらしいです。家の近くの栗山歯科はヤブだという評判だったので、内堀にある森栄歯科というところに行っていたんですが、それはそうと中学生の時にですね、同じクラスに洋子ちゃんというコがいたんですけどね。ポニーテールのよく似合う可愛い娘だったんですが、それと不釣合いなガラガラ声の持ち主でありまして、そこのところが何とも言えずにアンバランスで、いいよな♪…とか思っていたんですよね。いや、君の憧れの的はアイスまんじゅうちゃんではなかったのか?…と言われると困るんですが、それはその、アイスちゃんとは中学に入ってからからはずっと違うクラスになっちゃったし、うちの中学には近隣の4つほどの小学校から生徒が集まることになっていて、他校には他校なりに可愛いギャルがいたというわけでありまして。 で、ある日の事、母親参観日が何かの際に、うちのおかんと洋子ちゃんのお母様が顔を合わせたことがあったんですが、何でも僕と洋子ちゃんは小さい頃、一緒に森栄歯科に通っていて、待ち時間には2人で仲良く遊んでいたんだとか。 それ、めっちゃエエ話やん!…と思いましたね。 「ああん、私と稲葉クン、そんな昔からお友達だったんだぁ。これからもずっと仲良くしようね♪」 といった今後の展開が大いに期待されるところでありますが、それを聞いた洋子ちゃんは何だかちょっと迷惑そうな顔をして、それから2人の仲が急速に進展するようなことはまったく無かったわけなんですけどね。

 そんな歯医者さん通いの過程において、僕の奥歯にはたくさんの “詰め物” が施されておりました。アマルガムと呼ばれる銀色の詰め物なんだと思うんですが、銀紙を噛むと何とも言えない嫌な感触があったりして、アマルガムとガムの包み紙というのはあまり相性がよろしくありませんでした。 が、その不快なアマルガムの詰め物も今ではすっかり取れてしまっているんですが、左上の奥歯の詰め物はミルキーを食べている時に、そして右上の奥歯のほうはハイチュウを噛んでいて取れました。 そして右下の奥歯の詰め物は、イカの詰め物蒸しを食べていて取れちゃったのではないかと思うんですが、取れちゃった時点ですぐに歯医者さんに行っておけばよかったんですけどね。 が、僕は歯医者というのが衛生車よりも嫌いだったりします。 衛生車のほうはちょっぴり香ばしい匂いがするだけでさしたる実害はないんですが、歯医者のほうは痛いですからね。出来れば一生、そんなところには行かないで済ませたいところであります。 奥歯のアマルガムが取れて、銀紙を噛んだ時のピキっ!…という刺激が無くなって、僕はむしろ清々しい気分だったりしたんですが、それから数年が経過して、僕の歯は季節の変わり目になると思い出したようにキリキリと痛むようになってしまいました。いつの間にやら奥歯がボロボロの状態になっていたんですよね。 こうなってしまった以上、今さら歯医者などには行けないわけでありまして、もし痛みに耐えかねて歯医者になんぞ行ってしまったら、「どうしてこんなになるまで放っておいたの!?」…と、めっちゃ叱られるに違いありません。こうなってしまった以上、自分の力で何とかしなければなりません。 とりあえず、もっとも手っ取り早い治療法としては奥歯に正露丸を詰めるという手があるんですが、あれは実に効果的ですからね。 ただ、普通の正露丸というのはあまりにも苦くて不味くて歯に詰めたりするのは嫌なので、僕は一度 “正露丸糖衣” で試してみたことがあるんですが、あれはあまり効果がありませんでした。 というか、むしろ逆効果なんとちゃうか?…と思ってしまうほど、歯の痛みが余計に酷くなってしまったんですが、ま、普通の正露丸でも歯痛への効果は甚だ疑問だったりするんですけどね。 ただ、あまりの刺激に神経が麻痺して痛みを覚えなくなるだけの話で根本的なところではまったく何の解決にもなっていなくて、いたずらに虫歯を悪化させるだけではないか?…と思わずにはいられなくて、やはりもっとこう、殺菌作用のあるモノが虫歯には効果があるような気がします。 例えばの話、歯痛 (はいた) にキッチンハイターなんてのはどうせすかね? 茶渋とか黒ずみとかが綺麗になるんだから、恐らく歯もぴかぴかになるのではないかと思うんですが、ま、あまりにも副作用が強すぎるので、よい子のみんなはぜったいに真似をしてはいけません!!…という気がするんですけどね。

 もっと穏やかに歯痛を治す方法はないのか?…というのを考えているうちに、僕は子供の頃に書いた作文を思い出すことになったんですが、いや、さすがにうちのおかんとナカヒロ先生が力を合わせて考えただけのことはあって、なかなかいい事が書かれていたんですよね。 これからはじゃこや煮干など、歯にいいものをたくさん食べて、食後にはきちんと歯をみがくようにしたいと思います。…とか何とか。 が、書くだけ書いて、僕はそれをまったく実行に移すという事はなかったんですが、あの作文はあくまでも僕の親の願望を文章化しただけのものであって、僕の意向とはまったく掛け離れたものでありましたからね。だから食後の歯磨きはいつもサボってばかりいたし、無論、じゃこや煮干を食べたりもしておりません。 たまにダシを取った煮干が味噌汁の中に混入してたりすると速攻で排除して、間違って食べてしまわないように細心の注意をはらっております。 ちなみに、うちで飼っている黒猫のクロコは今年で18歳になるピチピチのギャルなんですが、煮干が大好きだったりするんですよね。 ただ、味噌汁でダシを取った後の煮干は、うまみ成分が汁のほうに出てしまって今ひとつ美味しくないからなのか、あまり喜んで食べたりはしません。 クロコですら食わないようなものを、この僕が食えるかっ!…と思っていたワケなんですが、現実問題としてこうして奥歯がキリキリと痛むようになってしまった以上、この際、贅沢を言わずに煮干も食べなければならないし、食後にはちゃんと歯磨きだってしなければなりません。 いや、それはあくまでも虫歯予防の段階の話であって、痛くなってからそんなことをしても既に手遅れではないのか?…という気がしないでもないんですが、ま、何もしないよりは遥かにマシだと思うんですね。 で、奥歯が痛む要因としては、やはり詰め物が取れちゃったことに一因があるような気もするので、この問題に関してもとりあえず自分の力で解決してみることにしました。 自力でアマルガムを手に入れるというのはちょっと難しいので、とりあえずティッシュペーパーを千切って小さく丸めて、痛む奥歯の穴に詰めておきました。さすがにそれだけではちょっと心もとないので液体歯磨きをティッシュに染み込ませてやって、これでもう “詰め物問題” は完璧です。 あとは熱心に歯磨きさえしてやれば、虫歯ごときは裸足で逃げ出しちゃうに違いありません。

 ただ、うちにある歯磨き粉というのがですね、ちょっと問題アリなんですよね。 歯磨き粉と言っても粉状のものではなく、ペースト状のものがチューブに入っていて、そのチューブだってちゃんとラミネートチューブになっております。容器としては申し分のない歯磨き粉…というか、練り歯磨きなんですが、その銘柄にちょっと難があったりします。どういうブランドなのかというと “ナス” という名前のヤツなんですけどね。ナスという名前だけにちゃんとナスの黒焼きが配合されたりしているんですが、イモリの黒焼きが惚れ薬として効果があるというのは知っていますが、果たしてナスの黒焼きが歯痛に効いたりするんですかね? ナスの黒焼きが入っているだけに練り歯磨き自体の色も真っ黒でありまして、こんなんでホンマに歯が真っ白になるんか? 黒くなるだけとちゃうんか? お歯黒になるんとちゃうか? おかん、何でこんな変な歯磨きを買ってくるねん!?…と、言いたいことはいくつもあるんですが、今はただナスの黒焼きパワーにすがるしか歯痛治療の道はありません。 それにこのナス歯磨きはただ塩辛いだけでスースー成分が入っていないので、歯磨きをした直後にミカンを食べても味が変わらないという利点もありますしね。ま、多少はミカンがしょっぱくなったりするんですけど。 そして、歯が痛くなって今日で3日目ということになるんですが、頑張ってナスの黒焼きで歯磨きを続けたお陰でしょうか、心なしか、ちょっとだけ痛みが和らいで来たような…?

 ナスば成る、ナスねば成らぬ、何事も

僕はこの先ずっと、ナスにすがって生きていこうと思っております。 ということで、今日のお話はおしまい。

 

 ということで、今日はブッカー・アービンです。 ジャズ界で最も “茄子の黒焼き” が似合う男…と言えば彼をおいて他に無いわけですが、あ、ローランド・カークという手もあるんですけどね。この人の場合 『ブラックナス』 というアルバムがあったりするので、むしろこちらのほうが本命かも知れませんが、ジャズ界で2番目くらいにナスが似合うとすれば、やはりブッカー・アービンでありましょう。 そんなアービン君は1930年にテキサス州で生まれております。テキサスというところではテキサスヒットとか、テキサスバーガーとか、ブッシュ大統領だとか、色々なものが誕生しているわけなんですが、テキサステナーというのも彼の地の生まれだったりしますよね。 テキサステナーというのは、いかにもテキサスやな。…といった感じのするテナーの事でありまして、主にテキサスの出身者がテキサステナーを吹いたりするわけですが、突き刺すような音色というより、むしろテキサスようなトーンで、どす黒く、下品に、お下劣に演奏されるところが特徴ではなかろうかと。 で、ブッカー・アービンという人も見た目がとってもお下劣なので、根っこのところではテキサスなんだと思いますが、その枠だけでは捉えきれないワクワクするような個性を持っていますよね。惜しくも1970年、癌のためにブッカー君は物故しちゃいましたが、晩年はアーシーな中にも変にモーダルだったりする独特のスタイルを構築しながらシナチクを齧っていたりして、今日はそんな中から 『テックス・ブック・テナー』 という1枚を紹介したいと思うんですけどね。テキストブックとテキサステナーとブッカーという名前を混ぜ合わせたような洒落たタイトルのこのアルバムは1968年に吹き込まれ、結局、1976年になるまで日の目を見ることはなかったんですが、さば君の大好物であるウディ・ショウが入っているし、ま、ピアノがケニー・バロンというのはどうか?…というところが懸念されたりもするんですが、ベースはジャン・アーネットじゃん。 で、タイコはビリー・ヒギンズっすね。個人的にヒギンズというのは好きなキャラだったりするんですが、懸念されるケニー・バロン問題、略して “懸念バロン問題” を払拭するまでのインパクトはなくて、でもまあ、ショウ君とアービンのフロントだけで十分に食っていけるような気もするので、ということで、では1曲目から聴いてみることにしましょうかー。

 まず最初は 「ジチ」 という曲でありますな。これはアレです。ケニー・バロンのオリジナルなんですな。ピアノを弾いてるだけでなく、曲まで提供しちゃっているのかぁ。…と、ケニ・バロ嫌いの僕は暗澹たる気分になってしまいますが、僕がどうしてそこまでバロンを嫌っているのかというと、ただ何となくなんですけど。お兄さんであるビル・バロンの演奏を聴いたら今ひとつ面白くなかったので、弟もきっと駄目やろう。…という気もするしー。 ま、兄貴は駄目でも弟のほうは優れているというのは、塩サバ兄弟を筆頭によくある話なので、ある程度は期待していいのかも知れませんが、実際に演奏が始まってみたところ、これが何とも言えずにいい感じだったので、思わぬ拾い物だったんですけどね。少なくとも古い鋳物よりは拾い物だよな?…という気がするわけなんですが、古い鋳物など拾ってみたところで、重しくらいの役にしか立ちませんからね。 で、具体的にどのような演奏が繰り広げられているのかと言うと、まずはイントロです。核実験問題によって北朝鮮への大トロの輸入は禁止されたみたいなんですが、ピアノとベースとドラムスの絡みによる、ここでのイントロは絶妙でありますな。ケニー・バロンの弾く反復フレーズが何ともモーダルで、エキゾチックな味と香りのオリエンタル・マースカレー的な世界を醸し出しておりまして、そのパターンはアービンとウディ・ショウの2管のハモり具合が素晴らしいテーマ部に入ってからも継承されることになるんですが、いかにも新主流派的なサウンドは時代の空気を色濃く反映していて、秀逸です。 この 「ジチ」 というタイトルはパレスチナ自治政府とイスラエルの抗争だとか、自治会長がゴミを出す日のことでいちいち文句を言ってきて、ウザい。…といった、さまざまな自治問題に関係して付けられたものではないかと思うんですが、でもって、ソロ先発はアービンでありますか。  この人の場合、アドリブの出だしはいいんですよね。 スケールの大きな悠揚迫らざる吹きっぷりからは “大人(たいじん)” の気配さえ感じられ、そのブロウに僕たちは打ちのめされてしまいます。 が、演奏が進むに従って次第にクドくなって、ウザくなっちゃうところが最大の難点なんですが、ここではそうなる直前のところでウディ・ショウのソロにスイッチされておりまして、いや、際どいタイミングでありました。 で、ショウ君はいいですなー。 地味好みの僕としてはフレディ・ハバードよりも断然ウディ・ショウを支持したいところでありまして、ま、演奏自体は似たようなものだったりするんですけどね。 で、続いてが懸念材料となっていたケニー・バロンのソロなんですが、作曲の才能共々、さほど大きな問題はありませんでした。そのスタイルを例えていうなら、めんこいマッコイと言ったところでしょうか?顔に似合わず、けっこう繊細なタッチの持ち主でありまして、意外と癖のないサカナなんですな、ナマズって。…と、初めてナマズの天麩羅を食べた時と同じような感想を持った次第でありますが、とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 いや、このアルバム、上々の滑り出しだじょー。

 で、2曲目です。 「デン・テックス」 は、恐らくテキサスと何らかの関係があるものと思われるアービンのオリジナルでありまして、何とも調子のいい反復リフ・ブルースの風情が感じられる曲調でありますな。 が、単純なリフではなく、ちゃんとAABA形式にしておくだけの芸は持ち合わせておりまして、この人、ああ見えて結構、音楽のことをちゃんと分かってやっているのかも知れませんな。 …という前向きの評価はアドリブ・ソロが始まった瞬間に消し飛んでしまうことになるんですが、いやこれは最初っから、クドさ、下品さ、ばりばり全開でありますなー。 恐らく音楽のことなど何にも分かっていなくて、ただ本能の赴くままに喚き散らしているだけではないかと思われ、ま、そのワイルドなところが悪いどー。 ということではなくて、それが彼の持ち味だったりするんですけどね。歯磨きに例えると茄子の黒焼きなんですが、オサカナの世界ではサバでありますな、こりゃ。 脂ぎっていて下品で、嫌いな人なら蕁麻疹が出ちゃうに違いありませんが、下品なオッサンには中毒的に好かれちゃうという。 そんなサバに僕は…なりたくありません。どうせならギャルに好かれるサヨリのようなお上品な魚のほうがいいですよね。 で、ソロ2番手はウディ・ショウなんですが、どちらかと言うと知性派であると思われるこの人もサバの毒気に当てられて、かなり最初から飛ばし気味でありますな。それに引き換え、ソロ3番手のバロン君は顔に似合わずクール・ビューティなプレイに徹しておりまして、いや、人は見かけによらないものですなー。 時おり、フレーズがフリーになりそうな場面のあるんですが、フリチンになる直前で自己を制御するだけの知性派持ち合わせているようでありまして、でもってジャン・アーネットのベース・ソロで地味に盛り上がって、テーマに戻って、おしまい。微妙にテキサスっぽい雰囲気もあって、まずまずよかったのではないでしょうか。

 続く3曲目の 「イン・ア・カプリコーニアン・ウェイ」 はウディ・ショウのオリジナルです。この人は作曲の才能にも秀でておりまして、数々の名曲をモノにしているわけなんですが、このカプリコニアンもいいですな。好きなんですよね、グリコのカプリコ。東尾理子よりもいいよな?…と思ったりしているわけなんですが、子供の頃、冬の最中に外でカプリコを食べていると 「このクソ寒いのに。」 と、よく言われましたけどね。そりゃあんた、ジャイアントコーンとごっちゃになってるやろ?…という気がするわけなんですが、見た目がよく似たグリコのアイスクリームがありますからね。 ちなみにジャイアントコーンには、ミックスコーンの中にミックスされているほうのジャイアントコーンというのもあるんですが、僕はミックスナッツの中ではジャイアントコーンがいちばん嫌いです。亀田の 「つまみ種」 の中では何と言っても “こざかな” が余計ですよね。僕はなるだけジャイアントコーンと “こざかな” だけは食べないようにしているんですが、固いものとか、カルシウムのあるものを食べないから、歯が悪くなるんだって!…という気がしないでもないんですけど。 ちなみに“capricorn” というのは南回帰線という意味らしいんですが、昔、堀内孝雄が、あーりがとう♪…と歌っていたヤツですよね。相棒の “滝ともはる” はどうした? というのがちょっと気になることろなんですが、 “滝ともはる” が 「養老の滝」 で友達と春巻きを食べていたという目撃情報はあったりするんですけど。 とまあそれはそうとウディ・ショウ作曲のカプリコーニアンなんですが、いい曲でありますな、こりゃ。新主流派っぽいです。モーダルです。…ということ以外、言葉では説明のしようがないんですが、AA形式のテーマに続いて、ソロ先発はショウ君でありますな。…と思わせておいて、まだテーマが続いてたりしているところが、何とも言えずに憎いです。 で、本当のソロ先発はアービンなんですが、ここでの吹きっぷりは何とも言えずに憎いです。…というよりも、何とも言えずに肉です。 といったところでしょうか? もう、肉体派テナーの面目躍如といったところでありまして、これだけ曲調とかそう言ったものは一切お構いなしに自分の欲望だけでやって頂けると、むしろ清々しい気分になってしまいます。いいですなぁ、人生にあまり悩みが無さそうで。 対して、悩みだらけの人生を送ることになってしまったウディ・ショウも楽器を吹いている時はなんだか幸せそうで、特に自分で作った曲であるだけに、その演奏からはいつにも増して凄みのようなものが感じられます。 で、続くバロンが相変わらずクールなマッコイ風のタッチで渋いソロを披露しておりまして、でもって、テーマに戻って、おしまい。いや、いい出来でありますな、このカプリコは。

 さ、残すところあと2曲です。 「リンズ・チューン」 はアービンが娘のリンちゃんに捧げた曲のようでありますが、哀感のあるメロディは、何だかリンちゃんを愛人にしたくなっちゃいますよね。何となくウェイン・ショーターが書きそうな、微妙な感じの佳曲でありまして、ソロ先発のウディ・ショウが君、なかなかブルーでいい感じのプレイを展開しております。超アップ・テンポの火を吹くような演奏も凄みがあって悪くないんですが、こういう落ち着いた感じもいいですな。落ち着きついでに、リンちゃんのお乳を突きたくなったりもするんですが、続くケニー・バロンも哀愁ムードをうまく継承しておりまして、秀逸です。 が、やはりというか案の定というか、ブッカー・アービンが出てきた時点で、空気がちょっと怪しくなってしまうんですが、リンちゃんもクドいキャラのお父さんを持って、何かと苦労が絶えませんなぁ。乳をツンツンと突かれたりもしますしね。…って、それは僕のほうですかい。 ということで、いよいよ最後の曲です。 「204」 。 ランディ・ウエストンにもまったく同じタイトルのオリジナルがあるそうですが、その名前をどうしてアービンが自曲に付けることになったのか、その経緯は、ま、各自でライナーノートを読んで解明して下さい。僕は英語が不得手なので、今ひとつよく分かりません。 ま、無理して訳そうとすれば、60年代にブッカーが継承したランディのアパートの街路数を参照させる。…と言うことになるのではないかと思われますが、ま、要するにストリート・ナンバーを参照しろという事みたいなんですけど。 で、曲のほうはアレです。勢いだけのブロウイング物やな。…といった感じで、ま、曲がどうあれ、この人のソロはごり押しに近いものがあるので、下手に凝ったアレンジのものをやらせるよりもギャップが少なくていいかも知れませんけどね。 で、シンプルなテーマを得たアービンは、まさに水を得た魚とでも言いましょうか、壮絶なまでの肉体派ブロウをブチかましてくれておりまして、聴いているこっちのほうとしては、まさに水煮にされたサバのように、ぐったりと疲れきってしまいます。 とまあそれはそうと、 “サバ水煮” でググっていたら、とっても可愛い 猫ブログを発見してしまったんですけどね。 ああん、ののちゃん、シナくんとよく似ていて、可愛いにゃ〜♪ いや、シナくんって誰や?…という問題はとりあえず置いといて、オサカナの写真もたくさん掲載されておりますので、サカナ好きの人にも楽しめるのではなかろうかと。 …と、猫とオサカナに見とれているうちにアービン君は引っ込んで、いつの間にやらショウ君が出てきてラッパを吹いたりしているんですが、いや、これもなかなか壮絶でありますな。何か、血ぃ吐きそう。…と聴いているほうが心配になっちゃうようなテンションなんですが、いつもはクールなバロン君も今回ばかりは釣られて、かなりハイになっていますからね。 ま、そんな熱くならないで、まったりと猫たんの写真でも見ながら、のんびりしたらぁ? …などと、この人たちに忠告しても無駄です。いつもフルスイング!…というのがこの人たちの信条ですからね。フルチンとフリチン。正しいのはどっち?…とか、いつもそんな事ばかり考えている僕も、少しは見習わなければなりませんなぁ。。。

 ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 アービン好きの人なら間違いなく楽しめるでしょう。 が、アービン嫌いの人なら間違いなく蕁麻疹が出るでしょう。…というくらい、彼の個性が色濃く反映されておりますが、ウディ・ショウの参加によって普通の新主流派好きの人なら何とか耐えられるかも?…という気がしないでもない、なかなかの秀作に仕上がっております。バロン君とショウ君、各1曲ずつのオリジナルの出来もいいし、アービン作のリンちゃん曲もなかなかだしー。 とまあ、そんな1枚でありますな。


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