DOWN IN THE VILLAGE (FONTANA)

TUBBY HAYES (1962/5/17,18)

DOWN IN THE VILLAGE


【パーソネル】

JIMMY DEUCHAR (tp) TUBBY HAYES (ts,ss,vib) GORDON BECK (p)
FREDDY LOGAN (b) ALLAN GANLEY (ds)

【収録曲】

JOHNNY ONE NOTE / BUT BEAUTIFIL / THE MOST BEAUTIFUL GIRL IN THE WORLD
DOWN IN THE VILLAGE / IN THE NIGHT / FIRST ELEVEN

【解説】

 みんなはもう、今年の初滑りは済ませたかな? 日本人というのは年中行事というのをとっても大切にする民族なんだけど、僕もその端くれとして、季節ごとの伝統的な行事やしきたりというのは、ずっと守り続けていきたいと思っているんだ。 お正月の “姫始め” …というのは、ま、ともかくとして、節分には豆を撒き、桃の節句には “ぼんぼり” に灯りをともして、端午の節句には屋根より高く鯉のぼりを上げる。 そして七夕には笹の葉に願い事を記した短冊をつるして、中秋の名月には里芋とススキをお供えする。 いいですなぁ、日本人って。 が、よく考えたら僕はこの1年、そのような行事を何ひとつ実行することのないまま、今日に至っているわけなんですが、何だか面倒ですからね、日本の伝統行事って。 節分に撒く豆にしたところで、大豆の煎ったのではさほどソソられるものが無いし、お正月のおせち料理というのも田作りとか、黒豆とか、数の子とか、僕のあまり好きではないものばかりだったりするので、ちっとも嬉しくはありません。おせち料理は揚げパンと、鯨のノルウェー風と、ミルメークと、フルーツゼリーにしろって!…と思わずにはいられませんが、子供の頃はそれなりにどんな行事もそつなくこなしていたような気がするんですけどね。小学校では “七夕集会” などという催しもあったりして、そこで披露する出し物の稽古を終えて学校から帰ったら隣の家から火が出たりして、それ以来、僕が短冊に書く願い事はいつも“火の用心!” になってしまったわけですが、そういう年中行事は別ににして、僕が個人的に決めている “遊びの恒例行事” のほうはですね、今年も今のところ順調に消化しておりますな。

 遊びの恒例行事。それがどんなものであるかを具体的に言うと、4月の初旬に有給休暇を1日取って2泊3日で春スキー、梅雨明け時期には有給休暇を1日取って2泊3日で夏レジャー。 …というのがここ数年の恒例となっております。 そして秋のこの時期には1泊2日でスキーの初滑りというわけなんですな。 考えてみると、今年は春も夏も志賀高原もしくは湯田中温泉に泊まっているわけなんですが、そして今もまた、僕は湯田中温泉にいたりします。初滑りと言っても11月アタマのこの時点では志賀高原のスキー場はまだオープンしておらず、滑れるところと言えばこの近辺では “軽井沢プリンスホテル” と “鹿沢スノーエリア” くらいなんですよね。 いずれもコースとしては、2時間も滑れば十分。…と言った感じなので、半分はドライブと紅葉見物が目的と言ってもいいでしょう。そんなことでまあ、今回は ホテル星川館 というところを押さえたわけなんですが、場所が分かりやすくて駐車場が広くて、そして何より “相田みつを・心のギャラリー” があるっ!…というのがここを選んだポイントでありました。好きなんですよね、相田みつを。 僕はもう、このギャラリーを凄く楽しみにしていたんですが、実際に見てみたら下手クソな字で 「おかげさん」 とか書いてあるだけで、あれ?えっ? 「ナハナハ」 は? 僕は自分の重大な間違いに気付いて、愕然として叫びました。 しまった! “相田みつを” と “せんだみつお” を勘違いしてた!

 かくして僕にとって “心のギャラリー” はどうでもいいものになってしまったんですが、その他の2つのポイントである場所の分かりやすさと駐車場の広さのほうは、期待通りのものでありました。夏に来た時はこの旅館の第2駐車場が “湯田中夏祭り” の会場となっていて、屋台やら舞台やら甘鯛やらが作られていたんですが、いや、もしかしたら駐車場に甘鯛は作られてなかったかも知れませんが、旅館のほうで 12,600円 (税込) ほど払えば別注で “鯛の姿造り” は出るみたいだし、ま、僕は素泊まり 5400円 (消費税・入湯税込) というプランだったので、1キロほど歩いて岩戸屋まで麻婆ラーメンを食べに行ったんですけどね。 とまあそれはそうと、第2駐車場のほうは既に屋台も舞台も取り払われていて余裕でクルマを止めることが出来たので、それだけでこの旅館を選んだ意味はあったと言えるでしょう。僕はクルマの駐車と予防接種の注射がどうも苦手でありまして、 “お医者さんごっこ” の時は注射される患者の役ではなくて、聴診器を当てる医者の役ばかりをやっていたんですが、車をうまく駐車することが出来て、すっかり安心してフロントに向かうと、そこにはそこそこ愛想のいいオッサンがいて、きちんと4階の部屋まで案内してくれました。入口のドアのところにはちゃんと 「歓迎・さば様(仮名)」 という貼り紙があったりして、歓迎されているんだ♪…と、嬉しく思うか、余計なことをしてくれた。…と、疎ましく思うかは人それぞれだと思いますが、ちなみに僕の向かいの部屋には 「関様4名」 がお泊りの様子でありました。 この状況を見て、 “さば” と “関” が向かい合わせで “関サバ状態”やん♪…と、嬉しく思うか、でも実際のところ、僕の苗字は普通に本名で書かれておりましたので、ただの“関稲葉状態”やん。…ということにしかならないわけなんですが、で、中に入ってみたところ、お部屋の様子は “可も無く不可も無く” といったところですかね? 可も無い替わりに蚊もいなかったので刺されて痒い思いをすることはないし、不可も無い替わりにフカフカのソファとかもなくて、8畳の和室の向こうには固い椅子と小さなテーブルが置いてあったりしました。

広くて便利な第2駐車場♪(ただし夏祭り期間中は利用不可) そこそこのお部屋♪

 とりあえず駐車場が広かったというだけで、ここを選んだ意味はあったよな。…と、最初のうちは思っていた僕でありますが、人間というのは次第に色んな欲が出てくるものでありまして、星川館にまったく不満が無かったと言えば嘘になってしまいます。そこでこの場をお借りして、ちょっと気になった点を指摘させて貰おうかと思うんですが、まずそこのオッサン! 自分の働いている旅館の部屋の電灯のスイッチの位置くらいはきちんと把握しておいて欲しい。…と思わずにはいられなくて、固い椅子と小さなテーブルのあるスペースの電灯をつけようとして散々そこら中を探し回った挙げ句、 「あっ、ここですね!」 と自信を持ってスイッチを入れてくれたのは、それ、床の間の蛍光灯やん! ま、それから2分後くらいに正しいスイッチを発見してくれたからよかったようなものの、ちなみに座卓の上に置いてあったお茶菓子は “お抹茶シュークリーム” でありました。 僕は饅頭とかよりも洋菓子系のほうが好きなので、これは大いに評価していいポイントだと思いますが、一緒に置いてあったお茶が “とうがらし梅茶” であるというのは、どうか?…という気がしますな。僕はヘンな茶、嫌いやねん! ま、それ以外に普通のお茶の葉っぱも用意されていたのでよかったようなものの、あとはえーと…、あ、部屋にユニットバスも付いているんですな。 ま、温泉旅館で大浴場があるんだから、ユニットバスのうちの “便所の部” はともかくとして、風呂のほうはいらないんじゃないか?…という気がしないでもないんですが、世の中には人前で裸になるのが恥ずかしい、とってもシャイな性格の露出狂とかもいるらしいですからね。ユニットバスに “風呂の部” があったとしても文句を言われる筋合いはありません。 ま、強いて難点を挙げるとすれば “便所の部” のほうにウォッシュレットを付けて、トイレットペーパーをもう少し高級なタイプにして貰わないと、痔が悪化するぢゃないか!…ということくらいなんですが、お茶が “とうがらし梅茶” だったことと言い、そっちの方面にはあまり気が遣われていないような気がしないでもありません。 で、そっち方面が駄目だとしても、あっち方面はどうなの?…というと、備え付けの冷蔵庫にはちゃんと “スタミナドリンク¥350” というのが3本も入っていたので、それなりに配慮されているみたいなんですけどね。試しに銘柄を調べてみたところ、単なるリポビタンDだったんですけど。 “赤マムシ” にしろって!!

 とまあ、悪い点ばかりを “あら捜し” するというのもあまり建設的な話ではないので、この旅館のいいところをいくつかピックアップしてみると、洗面所にちゃんとトニック、リキッド、ミルクローションの3点セットが置かれているところは親切だと思います。ただ、その銘柄がポーラというのはどうか?…という気がしないでもにないんですが、何となくオバサン向けの化粧品メーカーの印象が強いんですよね、ポーラ。 ま、僕は別にトニックもリキッドもミルクローションも使わないので、多少おばさん臭いイメージがあったとしてもさほど大きな問題ではないんですが、以上で “いいところ” は出尽くしてしまったので、また “あら捜し” に戻るとして、えーと、タオルが薄いっ! ま、これはどこの旅館でも似たようなものなんですが、日本手拭いにうっすらと毛が生えた程度の布キレのことを、僕らの国ではタオルとは呼ばんっ!…と言いたくなってしまいますよね。 でもまあ、靴磨きをするには便利そうなのでこれはこれで別にいいんですが、部屋の窓からの眺めがあまりにもパッとしないのはちょっと残念なところです。 どうせ、素泊まり 5400円 (消費税・入湯税込) の客だしぃ。…というので、旅館の中でもいちばん眺めの悪い部屋をあてがわれたんでしょうが、まず最初に布団が敷いてある横の、障子がはまっているほうの窓から外を眺めて見たところ、このような景色が目に飛び込んできました。

とっても開放感のある窓からの眺め(その1)♪

  ま、それなりに山が見えたりもしているんですが、どういうわけだか窓のスペースを十字に4等分して、その左上と右下の部分に木の枠のようなものが嵌め込まれているので、どうにも視界が開けませんなー。写真、暗すぎだしぃ。。。 が、大切なのは固い椅子と小さなテーブルが置いてあるほうの窓でありまして、ここからの眺めが素晴らしければ、ゆったりと椅子に腰掛けて景色を愛でながら、赤まむしドリンク…は無いので、とりあえずリポビタンDでも飲んだりして、極上のリゾート気分を満喫することが出来るわけです。 僕は期待に胸を踊らせながらそっとカーテンを開けてみたんですが、するとそこには、おおっ!

とっても開放感のある窓からの眺め(その2)♪

 目の前、壁やんっ! 窓から手を伸ばせば届きそうな距離まで隣のビルが迫っていて、向こうの窓が見えるだけやんっ! 僕は心の底からガックリしてしましましたが、が、よく見るとこれはアレですよね。向かいの建物の窓は、外側にもうひとつ目隠しの擦りガラスのようなものが取り付けられていたりして、も・も・もしかしてこれ、と・と・隣の旅館の女風呂だったりするとか??? 僕は激しい胸の高まりを覚え、こちらの部屋の電気を消して30分ほど様子を窺っていたんですが、んー、特に何にも見えないような。。。 僕は心の底からガックリしてしまって、こうなったらもう、自分のほうで星川館の風呂に入ってやるぅ!…と捨て鉢な気分になって1階の大浴場へと向かったのでありました。 この旅館は1階に大浴場、3階に2つの展望露天風呂があって、露天風呂のほうは24時を境に男風呂と女風呂が入れ替えになるというシステムが取られております。 露天風呂のほうは洗い場がないという恐れがあるな。…と思って、とりあえず大浴場に行ってみることにしたんですが、こちらのほうは、ま、大浴場と言ってもそれほど大きく欲情するほどのことでもない大浴場でありまして、ま、オッサンの裸を見たところで欲情などする筈も無いので、仕方のない話ではあるんですけど。 広さとしてはまあまあでありまして、洗い場も14人分ほどのスペースが用意されているので、特に不満はありません。 不満があるとすれば、露天風呂に移動するのに、いちいちパンツを穿かなければならないところでありまして、ま、気合を入れてフリチンのまま3階までダッシュするという方法もあるんですが、とってもシャイな性格の僕はちゃんとパンツを穿いて、ジャージのズボンまで穿いてから移動したんですけどね。 で、その露天風呂からの眺めはと言うと、さすがは旅館が “展望露天風呂” と称しているだけのことはあって、おおっ♪…と感動するのかと思ったら、何だか今ひとつでありますな。 露天風呂といっても、窓ガラスを入れる予算をケチっただけとちゃうの?…と言いたくなるような構造であまり開放感はなく、ただ、その窓ガラスをケチった部分には高さ1メートルくらいの壁があるだけで、けっこうオープンな作りではあるんですけどね。 試しにそこから外を眺めてみると、おおっ!むっちゃ道路やんっ!! 外には近所のオバハンたちが普通に歩いていたりして、果たしてこんな普通の町中で、3階部分からフリチンで外を眺めていたりして大丈夫なんやろかー???

 …とまあそんなことで、やる事と言えば後はもう寝るだけになってしまったんですが、部屋の灯りを消す段階になって、僕は大きな問題に直面してしまいました。旅館のオッサンが固い椅子と小さなテーブルのあるスペースの電気を付けようとして、間違えて点灯させた床の間の蛍光灯のスイッチがどこにあるのか、まったく分からんのですよね。僕は部屋を真っ暗にしないと寝れない性質(たち)なので、15分ほどかけて部屋のあちこちを探してみたんですが、どうしても見つけることが出来なくて、オッサン、いったいどこでスイッチ入れたんや!? 僕は泣く泣く、明るいままフテ寝をする羽目になってしまったんですが…と、普通の人であればそういう展開になるところなんですが、そこはそれ、僕は人並み外れてよく機転の利く青年でありまして、そうやん!蛍光灯を器具から外せばエエんやん!…ということに布団に入って15分ほど経ってから気付いて、お陰で朝までぐっすりと安眠することが出来たのでありました。 で、朝、もういちど温泉に入ることにしたんですが、いやあ、 “月の湯” と “星の湯” という2つの露天風呂は、ほとんど代わり映えがしませんでしたなぁ。。。 桧風呂が岩風呂になっているだけの違いで、果たしてこんな普通の町中で、朝っぱらからフリチンで外を眺めていたりして大丈夫なんやろか???…と不安になってしまうところなど、まったく同レベルであると言っていいと思います。

 とまあ、色々と細かいところで文句ばかり書き連ねてしまいましたが、細かいところさえ気にしなければ、大まかなところでは概ね問題のない旅館でありまして、特に “みつをファン” にとってはパラダイス♪…と言っても過言ではないかも知れませんね。 だって人間だもの。スイッチを間違えることだってあるさ!

 ということで、今日はタビー・ヘイズです。 前半が旅ネタだったから、タビー。 僕が今日この人を選んだのは、ただそれだけの理由なんですが、それはそうと星川館の展望露天風呂はあまりにも開けっぴろげでありましたなぁ。 ま、山奥の一軒宿とかならそれでも別にいいんですが、普通に温泉饅頭屋のおばちゃんが道路に水を撒いているような環境ですからね。 試しに帰りがけ、露天風呂を外からデジカメで撮影してみたんですが、

露天風呂を覗く♪

 思いきり拡大してやれば、若いギャルが露天風呂から外を覗いている姿が見えるかも?…と、確かめてみるだけ無駄だと思います。 僕もやってみたんですが、やっぱり無駄でした。 とまあそんなことでタビー・ヘイズの 『ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ』 なんですが、これはアレですな。ロンドンにある “ロニー・スコッツ・クラブ” というところでのライブ・セッションなんですな。 そもそもタビー・ヘイズというのはどういうオッサンなのか?…というところから勉強しなければならんのですが、ジャケットの写真を見る限りでは、オッサンですよね。それも白人のオッサンみたいです。僕の分かり得る範囲で提供できる情報は以上なので、あとは星野秋男クン (←誰?) の書いた日本語ライナーから引用するしかありませんが、えーと、本名はエドワード・ブライアン・ヘイズで 1935年ロンドンの生まれだ (タビーはニックネームであり、そんな本名が有り得ないことは知ってますよね) 。…って、知らんがな、そんなこと! 何だか、私の名前はカルメンでっす。もちろんあだ名に決まってまっす♪…と、ピンクレディに言われた時と同じような不快感を覚えてしまいましたが、1973年に心臓病で亡くなったが、まだ 38歳という若さであり、ウェイン・ショーターと同世代であったことを考えると、まだまだ活躍できる年齢だった。…って、確かにそれはそうだと思いますね。38歳で活躍できない年齢ということになれば、今がちょうど38歳である僕の人生は終わったも同然ということになってしまって、それはそうと、タビー君が 1973年に死んでいたとはちっとも知りませんでしたな。 何となく、今でも元気に生きてるよね?…といった印象があったんですが、1973年と言えばカルメン暦で言うと B.C.4年ということになりますね。 カルメン暦というのはピンクレディが 「カルメン '77 」 を発売した 1977年を紀元とする暦法でありまして、B.C.は “Before Christ” の略ではなくて、 “Before Carmen” を意味しております。ちなみに明治の “カルミン” というお菓子の名前の由来はピンクレディのカルメン人気にあやかったわけではなくて、カルシウム入りミントの略なんだそうですが、もしかしてカルメンが語源なのか?…と思って調べてみたら、ぜんぜん関係なかったので、僕はちょっぴり捨て鉢な気分になってしまいました。 そんなことでまあ、1曲目から聴いてみることにしましょう。

 まず最初はロジャース=ハートのコンビによるスタンダード、 「ジョニー・ワン・ノート」 でありますな。ライブ盤らしくタビー本人のM.C.で始まるところが何ともいい雰囲気なんですが、無論、英語でしゃべっているので何を言っているのかよく分かりません。基本的にはメンバーと曲の紹介だと思うんですが、1箇所だけ観客が笑っているところが今ひとつよく分からんのですよね。あるいは、マイ・ネーム・イズ・タビー・ヘイズ。 伊豆へ旅をするのが好きっ♪…とか言っているのかも知れませんが、今ひとつ面白くないぞ、タビー・ヘイズ!…って、勝手にギャグを捏造して罵倒するというのはどうかという気もするんですが、地味なカウントに続いて、いきなりテナーとトランペットが飛び出してくるところが何ともスリリングでありますな。 客席でトコロテンを食べようとしていた客は、びっくりして酢にむせてしまうに違いなくて、いや、ジャズのライブで酢の物というのは、ちょっと危険かも知れませんなー。 で、テーマ部に入るとちょっぴり演奏のほうは落ち着いてくるんですが、全体的に何となくロリンズがいた頃をブラウン=ローチ・クインテットを彷彿させる演奏であるような気がしないでもありません。アレンジなんかもけっこう凝っていて、パンナコッタ好きの人には楽しめるかも知れません。 で、続いてタビーのソロになるんですが、これがまた、実に素晴らしい出来でありますな、これがまた。 根はやっぱりロリンズなんだと思いますが、これだけのアップ・テンポであるにも関わらず、フレージングにはまったく破綻が見られなくて、悲嘆に暮れる暇もないブタンガス。…といったところでしょうか? ブタンガスというのは何となく豚臭そうな感じがするんですが、実際は無臭なんだそうでありまして、いやあ、化学って面白いものですなぁ。 …ということで、続いてはジミー・デューカーのソロなんですが、この人は当時のイギリスを代表するハード・バップ・トランペッターなんだそうですね。 ここでの彼の吹きっぷりはハード・バップというよりもむしろ、ガレスピーを彷彿させる純正ビ・バップで直球勝負を挑んでおりまして、で、続くピアノのソロも軽佻浮薄なところがなく、傾聴に値するケイチャン。…といった感じがします。トンチャンの鶏バージョンとでも言える食べ物なんですけどね、ケイチャン。ちなみにこのゴードン・ベックという人は後にフィル・ウッズのヨーロピアン・ジャズ・マシーンに抜擢されることになるそうですが、いやあ、なかなか馬鹿に出来ませんな、ヨーロッパのジャズも。 少なくとも六把野 (ろっぱの)よりもジャズ的な土壌が整っていると思うんですが、東員町にあるただの田んぼ地帯ですからね、六把野って。 ということで、テーマに戻って、おしまい。エンディングもばっちりと決まっていて、いや、ライブの冒頭を飾るに相応しい熱演ぶりでありますな。もう、熱延鋼板もびっくりって感じぃ?

 ということで、2曲目です。 「バット・ビューティフル」 。これはアレです。ムードが一転して、すごく地味な仕上がりとなっております。 タビーはテナーから一転、ヴァイブを演奏したりしているんですが、ま、余興というより、けっこうマジでこの楽器に取り組んだりしているみたいなんですけど。 途中、フレディ・ローガンのベース・ソロも出てきたりして、演奏は大いに盛り上がる…はずもなくて、ま、1曲目で酢にむせた観客も、今度は落ち着いて酢の物に取りくむ事が出来るに違いありません。 “もずく酢” とかを注文するなら今のうちです。 …とか言ってるうちに3曲目の 「ザ・モースト・ビューティフル・ガール・イン・ザ・ワールド」 が始まるわけですが、 「世界一美しい娘」 でありますかー。 それはね、○○子ちゃんのことだよ♪ …と、今、これを読んでいるギャル系読者の人は “○○子” の部分に自分の名前を入れて貰うといいんですが、でも私の名前は最後に “子” なんか付かないしぃ。…というギャルの場合は、ま、世界五千八百六十七番目くらいだと思うか、あるいは東員町の六把野地区一くらいにまで範囲を狭くしてみるとか。 いずれにせよ僕の場合、ちょっぴり不細工くらいのほうが可愛いよね♪…という趣向の持ち主でありますので、モースト・ビューティフルなガールにはあまり興味はないんですけど。 で、この曲はロリンズの得意技のひとつではなかったか?…という気がするんですが、えーと、 『テナー・マッドネス』 の最後を飾っていたんでしたか? ここでのタビーもワルツ・タイムに乗せて、ロリっぽい雰囲気のワン・ホーンでテーマを演奏しておりまして、…と思ったら途中からトランペットも絡んできたりして、1曲目同様、なかなかアレンジにも凝ったものが感じられます。パンナコッタ好きの人…は、既に1曲目で登場したので、今度はバルブコッタ好きの人にしておこうと思いますが、いや、エンジンの部品の名前なんですけどね、バルブコッタ。 僕は別にそんなものはぜんぜん好きではなく、何といってもターボチャージャーがいちばんカッコいいよな!…と思っているわけなんですが、三菱重○業からうちの会社にやって来た水谷クンは、注文書に “ターボチャーヂャ” と書いたりしているので、プロの世界ではこの表記のほうがナウいということなのかも知れません。名古屋でいちばんお洒落なビルの名前も “大名古屋ビルヂング” だったりしますもんね。

 で、演奏のほうはテーマに続いてタビー・ヘイズのソロになるんですが、これがまた豪放にして磊落な合法ドラッグ。…といった感じでありまして、ハッピーターンの粉と同じくらい恍惚感に浸ることが出来るのではなかろうかと。 続くジミー・デューカーのトランペット・ソロも流麗にして端麗で、城下カレイ。…といった感じで、でもってソロ3番手のゴードン・ベックのピアノは艶やかでありながら細やで、とってもマカヤ・ン・チョコ。 …って、ワケが分からなくて、ほとんど何の解説にもなっておりませんが、昨日、旅館で何とか書く事が出来たのは “相田みつを・心のギャラリー” の辺りまでで、日曜日の今日も気が付けばもう夜の20時50分でありますか。 さば兄のところの上のお子様のお誕生日祝いということで、柿安の肉を焼いたりしてビールを飲んでウダウダしてたら、すっかり時間が厳しくなってしまって、僕は今、ちょっぴり焦っております。まだジャケ絵も手付かずの状態でありまして、ま、タビー君がわりと描きやすそうな単純な顔立ちをしているのが唯一の救いなんですが、そんなことで演奏のほうはピアノ・ソロの後は ts→ds→tp→ds の8バースとドラムのソロで大いに盛り上がったところで、テーマに戻って、おしまい。 さ、残すところあと3曲です。 4曲目はタビー・ヘイズのオリジナルで、アルバム・タイトルにもなっている 「ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ」 という曲です。 あ、その前にピアノ・トリオの演奏をバックにした挨拶パートがあったりして、それが何とも小粋な感じなんですが、でもって4曲目のタイトル曲は、どこか 「マイルストーンズ」 を彷彿させるモーダルな響きのあるタビーとしてはかなり異色の演奏が興味深い。…と、日本語ライナーに書いてある通りでありまして、特にヴァイブとミュート・トランペットのユニゾンで演奏されるテーマ部が何とも言えず、いい感じでありますな。何とも言えないので、特に言うべきこともなかったりするんですが、ソロ先発はタビーがそのままヴァイブでいっちゃいますかぁ。 正直、2曲目の演奏を聴いた限り、所詮は余興のようなもので、あまりヴァイブのテクはないよな。…とか思っていたんですが、そのイメージが完全に払拭されるほどの本格的なヴァイブ・プレイでありまして、で、続くジミー・デューカーのソロも自己のベストを記録している。…と、星野秋男クンが勝手な評価を下しているほどの素晴らしい出来となっておりますな。自己のベストって、そんなん、本人でなければ言えないことではないかと思うんですが、自分の思いと他人の評価というのは、けっこう違っていたりしますからね。自分で買った袖の無い上着を見せて、これが僕のベストや!…とは言えると思うんですけど。 ただ、おじさん相手の場合、チョッキと言わないと通じないかも知れませんけどね。 とまあそんなことで、トランペットに続いてかなり長くてイケているピアノのソロがあって、後半はそこにデューカーとヘイズが絡んで大いに盛り上がって、テーマに戻って、おしまい。 いや、完璧な1曲でありますな、こりゃ。

 で、5曲目の 「イン・ザ・ナイト」 もタビーのオリジナルでありまして、ここでの彼はソプラノ・サックスを吹いたりしております。 いやあ、タビー君もマルチですなぁ。 小型の直流モーターはマブチですけどね。 どことなく日本の童謡を思わせるようなメロディのピアノのイントロに続いて登場するソプラノは、何とも言えずコルトレーン風でありまして、ロリンズとトレーンの2人が彼にとってはアイドルだったんでしょうな。 ちなみに僕が高校生だった頃のアイドルは、なんてったって 「なんてったってアイドル」 の小泉今日子だったんですけど。 出来ればキョンキョンのような女の子と付き合いたいな♪ …と思っていたものですが、結局のところはキョンシーのような女の子にすら相手にされず、今日に至っております。 ということで、いよいよラストです。 「ファースト・イレブン」 は3曲目の娘モノと同じく、ティゾル、ドレイク、レンク、ジェラルド・ウィルソンという4人 (?) の名前がクレジットされておりまして、同じミュージカルからのナンバーとか、そういうことなんでしょうかね? あまり明確な旋律の無い、勢いだけの曲みたいな感じなんですが、トランペット、テナー、ピアノという順番で繰り広げられるアドリブ・パートは各自好調そのものでありまして、で、それに続く4バースの部分は tp→ds→tp→ds… と来て、今度は ts→ds→ts→ds… に転じる変則的なものとなっていて、その捻り具合が何とも言えずに効果的でありますな。 で、テーマに戻って、おしまい。…ということになるんですが、アルバムの最後には3曲目と同じくピアノ・トリオの演奏がちょっとだけ入っていて、楽しかったジャズのライブも、これにておしまい♪

【総合評価】

 この日の観客は、実にいいものを聴かせて貰ったと言えるのではないでしょうか? 酢にむせたりしたのも、今となっては楽しい思い出のひとつだよね♪ …という気がのする、実に素晴らしいライブ・セッションだと思います。 タビーは本職のテナーのほかにヴァイブとソプラノもマルチにこなして、選曲といい、構成といい、演奏の出来といい、飽きのこない逸品であると言っていいと思います。 これ、お薦めだねっ♪


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