THE SOUND OF SONNY (RIVERSIDE)

SONNY ROLLINS (1957/6/11,12,19)

THE SOUND OF SONNY


【パーソネル】

SONNY ROLLINS (ts) SONNY CLARK (p) PERCY HEATH (b) <#2,3,5-7,9>
PAUL CHAMBERS (b) <#1,4,10> ROY HAYNES (ds)

【収録曲】

THE LAST TIME I SAW PARIS / JUST IN TIME / TOOT , TOOT , TOOTSIE
WHAT IS THERE TO SAY / DEARLY BELOVED / EV'RY TIME WE SAY GOODBYE
CUTIE / IT COULD HAPPEN TO YOU / MANGOES
FUNKY HOTEL BLUES
【解説】

 夏ですなぁ。夏と言えばスイカですよね。ということで、今日は “すいか甘いか塩っぱいか。” というテーマでお届けしたいと思うんですが、え?何ですか?電験三種? そういえば昔、そんな話をしていたような記憶があるんですが、試験まであと1ヶ月という段階になって、僕はきっぱりと諦めることに成功しました。 “法規” “理論” “電力” “機械” の4科目のうち、今年1個、来年2個、再来年に1個合格するという予定だったんですが、途中で考えが変わりました。 もし今年が全滅だったとしても、来年2個、再来年に2個合格すればまったく問題はないわけだし、もっと長い目で見て、20年後に1個、21年後に2個、22年後に1個というのでも、別に構わないではないか。…と思うんですよね。 人生80年。焦る必要はまったくありません。 ただ人間、オッサンになればなるほど記憶力や思考能力が急激に低下し、試験に合格出来る可能性は指数関数的に急降下すると言われておりますが、でもまあ、 “亀の甲より年の功” という諺もありますしね。 若い頃には見えなかったものが、年齢を重ねるに従って見えてくるかも知れず、例えば僕は子供の頃、ピーマンとか、人参とか、鮎の甘露煮とか、サバの煮たのとかがあまり好きではなかったんですが、大人になった今では大好物…とまではいかないまでも、それなりには食べることが出来るようになりましたからね。 38歳の今はちょっぴり苦手な “キルヒホッフの法則” が、58歳になれば大丈夫になっているかも知れません。 また、59歳の夏に突然UFOがやってきて、宇宙人に拉致されて、 “鳳−テブナンの定理が分かる物質” というのをインプラントされちゃうかも知れず、もしそうなったとしたらしめたものですよね。 ちなみに “鳳−テブナンの定理” を発見したのはフランスの技術者シャルル・テブナンと、日本の鳳啓介…ではなくて、東京大学工学部の鳳秀太郎 (ほう・ひでたろう) 教授なんですが、ちなみにこの人は与謝野晶子の実兄なんだそうで。 ほぉ。…と、思わず感心してしまう、ちょっとした小ネタでありますな。

 とまあそんなことで、スイカです。JR東日本の非接触型ICカード乗車券の愛称でありますな。 改札口をスイスイ通れるカードだから “スイカ” ということなんでしょうが、これがJR西日本になると “イコカ” という名前になります。ちょっと天王寺まで行こか?…というノリなんでしょうが、ちょっぴりサザエさんの同級生のイカコさんと紛らわしいネーミングだと思います。 ちなみに、サザエさん関連の小ネタでは、 このサイト が妙に詳しかったりするんですが、最近、JR東海でもようやく非接触型ICカード乗車券が使えるようになったみたいですね。スイカ、イコカと来て、ここは名古屋人のネーミング・センスに大きな期待が寄せられるところでありますが、そのカードの愛称は “トイカ” なんだそうでありまして。ふーん、ああそう。 トーカイだからトイカ。…という事なのかも知れませんが、本当にトイカでいいのか?…と、関係者に問い掛けたい気持ちで一杯です。 トイカよりもノシイカのほうが酒のつまみになるんじゃないか?…という気もするんですが、もし乗車券がノシイカだったりしたら、手がネバネバするし、電車内はイカ臭くなるしで、いい事などひとつも無かったりするので、ヤメておいたほうがいいのかも知れませんけど。

 とまあそんなことでスイカでありますが、西瓜と書いて、スイカ。 南瓜と書いて、カボチャ。 南と西だけあって、北瓜とか、東瓜とか、南々東瓜とか、北々西瓜といった種類のウリは無いんですが、もし 北々西瓜というのがあったりしたら、ホクホクしていて美味しそうな感じがするんですけど。 でもまあ、実際のところ北々西瓜というのは無いので、ホクホクしたウリと言うと南のほうの瓜のカボチャで代用するしか無いわけなんですが、僕はどうもカボチャというのがあまり好きではないんですよね。子供の頃からあまり好きではなかったんですが、大人になった今でも、あまり好きではありません。58歳になったとしてもカボチャが好きになるとはとても思えないんですが、ま、突然UFOがやってきて、宇宙人に拉致されて、 “カボチャが好きになる物質” というのをインプラントされたらどうなるか分かりませんけどね。 で、困ったことに、うちのおかんはカボチャが好きなのか、あるいは、ただ安いから重宝しているだけなのか、とにかくおかずに “カボチャの煮たの” というのがよく出てくるんですよね。3回に1回くらいの割合で焦げていて、ちょっぴり苦み走ったカボチャになったりしておりますが、特に冬至の日になると、冬至の日にカボチャを食べると風邪をひかないし、中気にもならん。…という理由で必ずカボチャの煮たのを食べさせられることになるので、夏の盛りのこの時期から、冬至が来るのが憂鬱だったりします。 そもそもどうして冬至の日にカボチャを食べるなどという、 大きなお世話的な風習が生まれたんでしょうね?

 調べてみたところ、冬至の日にカボチャを食べるという風習は (1) 酒造りの仕事に携わっている人、すなわち、杜氏の間で広まった。 (2) 放蕩な子。道楽息子。すなわち、蕩児の間で広まった。 (3) デラックス東寺の踊り子たちの間で広まった。…という3つの説のうち、どれも正しくないということが判明しました。 どれも “とうじ繋がり” というだけで、カボチャとはまったく何の関係ありませんからね。 ま、近いものがあるとすれば “蕩児説” が挙げられるかも知れませんが、道楽して放蕩して、肉ばかりを食べていたりすると脳の血管が詰まるなり切れるなりして中気になっちゃう可能性は多分にありますからね。 年に1度、冬至の日くらいはカボチャを食べて、カロチンを補給しろという戒めなのかも知れません。 が、さらによく調べてみると、やはり蕩児とはあまり関係が無かったようで、そもそも南瓜というのは夏場が旬の野菜ですよね。 それが証拠に3日前の弁当にもカボチャの煮付けが入っていたんですが、ただ煮付けにするだけでなく、せめて “カボチャのそぼろあんかけ” とかにしてくれたら美味しく食べられるんですけどねー。 ピーマンもそのまま焼いて醤油をかけただけではあまり美味しくないんですが、ピーマン肉詰めにすると主食を張れるだけの豪華なおかずとなります。 茄子もそのまま焼いて醤油をかけただけではあまり美味しくないんですが、油で炒めて肉味噌をかけてたべると非常に美味しいです。 ぱっとしない野菜を御馳走に変える秘訣は “ひき肉” であるな。…という気がするんですが、それはともかく。 カボチャという奴は包丁さえ入れなければ夏に採れたものを冬まで保存することが可能でありまして、とかく野菜が不足がちになる冬至の頃にカボチャを食べれば栄養のバランスがよくなって、風邪をひきにくくなるし、中気にだってなりにくい。 どうやらそういう事のようでありますな。

 つまり、冬至南瓜という風習は、冬場に食べれる野菜がカボチャくらいしかなかったウン十年前にはそれなりに意味があったんでしょうが、どんな野菜でも年中食べられるようになった現在では、あまり意味がないと言ってもいいでしょう。 ま、どうしても風邪をひきにくいというおまじないに何かを食べたいというのなら “ひき肉” のほうがいいような気がしますよね。冬至の日に “ひき肉” を食べると風邪をひきにくい。語呂だってばっちりです。今年の冬至はカボチャの煮たのではなくて、カボチャのそぼろあんかけ、ピーマン肉詰め、茄子を油で炒めて肉味噌をかけたもの。…の3点セットで乗り切ることにしようと思いますが、それはそうと西の瓜のほうであるスイカ。 スイカだけではとても1回分のネタを賄えるとは思えないので、JR東日本のスイカとカボチャの話で引っ張れるだけ引っ張ってみましたが、そろそろ本題に入らなければなりません。 スイカと言えば夏を代表する食べ物でありますが、僕はスイカがそれほど好きではありません。 僕の“ウリ類・心のランキング” では1位がマスクメロン、2位がプリンスメロン、3位がアンデスメロン、4位がメロンパン、5位がメロンパンナちゃん。…ということになっていて、スイカはかろうじて6位に入賞している程度です。 ウリ類・心のランキングであるにも関わらず、ウリとは直接関係がない菓子パンやアンパンマン・キャラにも抜かれているわけですが、ま、キュウリやカボチャや冬瓜よりはマシ?…といったところでしょうか。僕は冬瓜というのもあまり好きではないんですよね。 困ったことに、うちのおかんは冬瓜が好きなのか、あるいは、ただ安いから重宝しているだけなのか、とにかくおかずに “冬瓜汁” というのがよく出てくるんですよね。特に椎茸が一緒に入っていたりすると最悪でありまして、まだ椎茸抜きで “ひき肉” が入っていたりすれば結構美味しく食べられたりするんですけど。 一方、スイカのほうはというと、あれは何かにつけて面倒なところがよくないと思うんですよね。まず、大きくてクソ重たいから、八百屋で買って家に持って帰ってくるのが面倒な。大きくて丸っこいから包丁で切るのも面倒。 カボチャのように表面に溝が付いていれば刃が滑らなくて安心なんですが、スイカにはそのような配慮もありません。まったく人の都合というものを考えないんですよね、スイカって奴は。

 また、スイカという奴は皮が固くて分厚すぎます。みかんとかバナナみたいに薄くて柔らかい皮であれば簡単に手で剥くことが出来るんですが、スイカはいったい何を考えてあんなに固くて分厚い皮にしちゃったんでしょうね? で、スイカの皮は固くて分厚いだけではなくて、不味いですよね、これがまた。 どこまでが実で、どこまでが皮なのか境界線が曖昧なところもよくなくて、いつも皮ぎりぎりの白いところまで食べることになって、皮の部分は不味いじゃないか!…と思わずにはいられません。 ま、実の部分はそれなりに甘くて美味しいとは思うんですが、ただ種があるのがちょっと邪魔ですよね。種なしスイカなら種は無い筈なんですが、最近のスイカというのはけっこう種があったりしますよね? どうしてなのかと思ったら、種なしスイカというのは栽培が難しくてコストがかかる上に、あまり美味しくないので現在ではほとんど栽培されていないそうでありまして、なるほど、だからけっこう種があったりするわけなんですな。 種の問題はともかく、大きくて重くて持ち運びが面倒で、切るのも面倒で、皮を食うのが不味いというのなら、カットスイカにすればいいではないか?…と言う意見もあろうかと思いますが、あんなものはちっともスイカらしくなくて、面白みがありません。大きくて切るのが面倒で、不味い皮があってこそのスイカだと思うわけでありまして、では一体どうせえちゅうねん!?…と言われると、適切な対処法が無いというのが現状でありまして。

 ところで君はスイカには塩をかけるかな? 僕はですね、断然 “かける派” なんですが、塩をかけてこそ初めて “すいか甘いか塩っぱいか。” という境地を味わうことが出来るわけですからね。 ただ甘いかだけというのでは単なる子供の食べ物でありまして、酸いも甘いも噛み分けた渋い中年としては、やはり塩をかけて食べたいところでありますな。ま、スイカに塩をかけたところで塩辛くなるだけで、酸っぱくはならないわけなんですけど。 甘くて、ちょっぴり塩辛い。 それだけでも十分なんですが、苦み走った中年向けには更に “苦み” という要素を加味したスイカがあってもいいかも知れません。 あるいはゴーヤとスイカを交配してやれば苦西瓜という新種を作ることも可能なのかも知れませんが、手っ取り早くチョコレートを使うという手もありますな。 すなわち、スイカの種をすべてほじくり出してやって、代わりに明治のチョコベビーをインプラントしてやればいいわけです。 邪魔な種かと思ったら、ああん、チョコレートで苦甘(にがあま)美味しい♪ それはそうとチョコベビーって、ゴキブリの糞にそっくりだよね。… ということに思いを馳せながら、この夏、是非一度お試し頂きたいと思います。 ということで、スイカのお話はおしまい。

 ということで今日はソニー・ロリンズです。その前にひとつ、小ネタを披露しておこうと思うんですが、“ウリ類・心のランキング” の第3位にランクインしていたアンデスメロンというのがありますよね。あれはどうしてアンデスという名前なのか知っていますか? 南米のアンデス山脈あたりが原産地だからやろ?…と、誰もが思いますよね。僕もそう思っておりました。 が、違っておりました。アンデスメロンの原産地はアンデス山脈でも何でもなくて、 “サカタのタネ” なんだそうです。 害虫が付きにくくて栽培しやすいところから、作って安心、売って安心、買って安心。 そこで当初は “安心ですメロン” という名前で売りに出そうとしたんですが、それではあまりにもネーミングのセンスがアレなので、アンシンデスメロン→アンデスメロンとなったんだそうで。 これってもしかして、僕が知らなかっただけで世間では有名な話なのかも知れませんが、ちなみにマスクメロンというのはマスクのような網をかけるからマスクメロン。…ではなくて、ムスク (麝香) のような香りがあるからムスクメロン→マスクメロンなんですよね。 ちなみにプリンスメロンというのは皇太子のご成婚にちなんだネーミングであるそうです。 それはそうと、スイカというのはあまりたくさん食べ過ぎると、汗の色が赤くなっちゃいますよね。 いや、もしかしたらならないのかも知れませんが、赤い汗が出ても不思議ではないような気がします。 血の汗流せ、涙を拭くな〜♪ の星飛雄馬はおそらくスイカの食べ過ぎではないかと思うんですが、汗だけでなくて尿だって赤くなっちゃうような気がしますよね。血尿と間違えやすいので、検便の際のコーンやひじきと同じく、検尿時のスイカにも十分気を付けたいところでありますが、そんなことで今日は 『ザ・サウンド・オブ・ソニー』 という1枚を紹介してみたいと思います。

 ロリンズなのにリバーサイド盤、ロリンズなのにソニー・クラークと共演。…というのは、ちょっと珍しいかなという気もするんですが、ただ僕が知らないだけの話で、別に珍しくも何ともなかったりするのかも知れませんけど。 そんなことで1曲目なんですが、 「ザ・ラスト・タイム・アイ・ソウ・パリス」 という曲でありますな。直訳すると 「最後に私がパリを見た時」 ということになるんですが、 「思い出のパリ」 などという小洒落た邦題が付けられていたりします。いやあ、懐かしいですなぁ、パリ。 昔、よく食べたんですよね、紀文のパリパリポテト。見た目はギョウザっぽいんですが、皮の中にはコロッケの中身のようなポテトが入っていて、油で揚げて付属のスパイスをかけて食べると非常に美味なんですよね。少しコーンも入っていたような気がするので検便の前日には注意が必要でありますが、フランスのパリには一度も行ったことがないので、別に懐かしくも何ともないんですけど。 で、僕が持っているCDの日本語ライナーは内藤遊人クンが書いているんですが、 “内藤遊び人 (あそびにん) ” ではなくて、 “ゆうじん” と読むんでしょうか? ま、いずれにせよ、曲そのものの解説がなかなか親切丁寧だったりするんですが、この曲はアレです。子供の頃パリで過ごしたことのあるオスカー・ハマースタイン2世が、1940年 6月のナチス・ドイツ軍によるパリ占領を嘆き悲しみ、良き時代のパリに想いを寄せて詩を書いた。それにジェローム・カーンも共鳴し、一気に曲を書き上げた。そんなエピソードを持つ曲である。…とまあ、そういうことであるようです。 が、ナチス・ドイツのパリ占領もなんのその、ロリンズ君はひたすら能天気な演奏に終始しておりますな。 イントロ無しでいきなりテーマが始まるんですが、テンポは中くらいのミディアムで、ピアノレス・トリオというフォーマットが採用されております。 テーマが終わるとストップ・タイムになってロリンズ君が朗々としたソロを繰り広げて、ようやくリズムが入って来たな。…と思ったらそのまま後テーマになって、様々なバリエーションを施しながら主旋律を歌い上げて、おしまい。 2分55秒という短い演奏で、ほんのちょっとした小品という感じでありましたが、ロリンズらしさは十二分に発揮されていたと思います。

 ということで、次。 「ジャスト・イン・タイム」 はジュール・スタインの作曲、ベティ・コムデンとアドルフ・グリーンの作詞で、1956年のミュージカル 『Bells Are Ringing』 で歌われた曲。…なんだそうです。基本的には2つの音が上がったり下がったりするだけのシンプルな作りなんですが、これまたイントロ無しでいきなりテーマが始まっておりますな。テナーとピアノのユニゾンでメロディを演奏して、つなぎの部分がストップ・タイムになるというアレンジが実にユニークだと思います。 もう “ユニーク車掌と行く東北・味巡りの旅” って感じぃ? 車掌がユニークな上に、ウニ食うことも出来るという欲張りなプランでありますが、ま、僕はウニがあまり好きではないので、あまりソソられるものを感じないんですけど。ユニーク車掌よりも、お色気バスガイドとかのほうがいいですしね。 とか言ってるうちに演奏のほうはアドリブ・パートに入りましたが、よどみのないフレージング、豪放磊落な図太いトーン。まさにロリンズの真骨頂と言えるでしょう。僕はジャズにまだ素人だった頃、 『サキコロ』 を聴いてもあまりピンとこなかったので、ロリンズ、大したことない。…と思ってしまったんですが、大人になって初めて彼のよさや凄さが分かるようになりました。いやあ、亀の甲より年の功ですな。 で、素人の頃から好きだったソニー・クラークも短いながら味のあるソロを披露しておりまして、続いて ts→ds→ts→ds のフォー・バースで大いに盛り上がって、テーマに戻って、最後はカデンツァデおしまい。いや、完璧っす。

 3曲目は 「トゥート・トゥート・トゥートシー」 です。 タイトルは「ラッパを吹く、ラッパを吹く、ねえさん」 という意味でしょうか? 辞書を引いたら単語的にはそのような意味が載っておりましたが、詞を書いたのはガス・カーンとアーニー・アードマンで、作曲したのはダン・ルッソーという人なんだそうです。ユニーク車掌と同じくらいユニークな作品で、非常にノリもよくて、ロリちゃんにはぴったりの曲であると言えましょう。ソロの出来も文句の付けようがないし、続くクラークのソロも、らしさが横溢していて見事だと思います。  ts→ds→ts→ds の4バースも完璧でありますな。 で、その後、テーマに戻らずに、アドリブだか何だかうやむやなうちにエンディングに突入しちゃうところも実にスリリングでありまして、まさに天性のインプロバイザーといったところでありましょう。立派です。 ということで、次。  「ホワット・イズ・ゼア・トゥ・セイ」 はバラードです。 これぞまさしくソニー・クラークやな。…といった感じのブルージーなピアノのイントロに続いて、ロリンズが朗々とテーマを歌い上げます。いや、これは深いですな。 子供の頃、西田クンの友達の深井クンがはまった落とし穴と同じくらい深いんですが、いや、僕の子供の頃には深井クンという名前の友達はいなかったので、まったく関係のない西田クンに登場してもらうことにしたんですが、近所に西田という名前の同級生はいたんですよね。とっても性格が陰険なヤツだったので友達ではなかったんですが、それはそうと、マンガに出てくるようなスポっと頭の先まで隠れるくらい落下する深い落とし穴というのは、素人ではなかなか製作が困難ですよね。2mの穴を掘るというのは水谷建設で重機でも借りてこない限り無理な話でありまして、だから深井クンが落ちた落とし穴というのもせいぜい深さ15センチくらいで、深く掘る変わりに犬のウンコを入れて嫌がらせに走ったタイプのものだと思うんですが、ここでのロリンズのプレイはそれと同じくらいの深みが感じられます。 ま、土建屋でない彼にしてみれば上出来と言えるのではないでしょうか。 でまた、中間部で聴かれるクラークのソロも秀逸でありまして、いや、冒頭からなかなか優れた演奏が続いておりますな、このアルバムは。

 5曲目の 「ディアリー・ビラヴド」 は、もの凄くよく粘るロリンズの吹きっぷりが印象的でありまして、泥臭くなる極限ギリギリの後ノリ・フィーリングでありまして、途中、ストップ・タイムを適当にうまく使ったりして、なかなか遊び心のある演奏に仕上げております。そんだけ。 で、6曲目はお馴染みのスタンダード、 「エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ」 でありますな。バラードではなく、ミディアム・テンポで仕上げているところがミソでありまして、これがただの味噌ではなくて、ひき肉を加えた肉味噌だったりするともっと嬉しいんですけどね。 肉味噌は茄子を油で炒めたやつだけでなく、風呂吹き大根につけても美味しいんですが、あるいはそのまま温かいご飯の上にのっけて、肉味噌丼にして食べるとか。 湯豆腐にも合うかも知れませんな。スイカには…あまり付けたくないところでありますが、キューリだったらぜんぜん大丈夫ですよね。モロキューではなくて肉味噌キューリ、略して “肉キュー” という名前で居酒屋のメニューにも取り入れたいところであります。 で、続く7曲目はキューリではなくて、 「キューティー」 という曲なんですが、これはCDオマケ曲を除けば本アルバムで唯一のロリンズのオリジナルとなっております。 キューティーなだけに、なかなかキューティーでハニーな作品に仕上がっておりますが、ロリちゃんってば作曲の才能もなかなかなものがありますよね。 キュートなだけでなく 8・8・4・10小節で1コーラスという、なかなか凝った作りとなっておりまして、ただしアドリブ・パートは 8・8・4・8小節単位で演奏されているという、いや、これは内藤遊人クンの受け売りなんですけど。遊人クンってば、ただの遊び人ではなくて、なかなか楽理にも詳しいようですが、こういう人を友人に持っておくと原稿を書く際に便利かも知れませんな。意味もなく肉味噌の話をするよりも、よっぽど評論らしくなりますもんね。 で、この曲ではロリンズのラララ縦横無尽くんなアドリブに続いて登場するベースのソロもなかなかの聴き物なんですが、2人参加しているベーシストのうち、この曲で弾いているのはパーシー・ヒースのほうなんですな。 かつてアーネット昆布青年から、血の気の薄い “チアノーゼ・トリオ” の一員と馬鹿にされたりしておりましたが、なかなかどうして、図太くて血の気の多い秀逸なピチカート・ソロだと思います。続くクラークのソロも良好で、で、その後、ロリンズが再登場してアドリブを披露して、テーマに戻って、おしまい。

 8曲目の 「イット・クッド・ハプン・トゥ・ミー」 はテナーの無伴奏ソロです。個人的に管楽器の無伴奏ソロという試みはあまり好きではないんですが、ま、アルバムの中で1曲だけですからねそれも3分44秒という、ほどほどに節度をわきまえた演奏時間となっておりますので、ま、大目に見てあげることにして。誰にだって独りになりたい時はあるものですからね。 ということでラストです。 「マンゴーズ」 って、何だか楽しそうな曲でありますな。個人的にマンゴーという果物はあまり好きではないんですが、熱帯系フルーツ独特の癖がある上に、名前に品がないところもよくないですよね。 上品を旨とする当サイトには相応しくないと言わざるを得ませんが、ロリンズお得意のラテン系ナンバーということで、演奏のほうは明るく楽しく仕上がっているんですけどね。 特に一番最後、チャチャチャ♪…という3つの音をしつこく繰り返すところなど、とっても粘着質で素晴らしいアイデアだと思います。 ということで、いよいよラストでありますが、いや、僕の持っているCDにはオマケが1曲入っているんですよね。 「ファンキー・ホテル・ブルース」 という名の、ファンキーなホテルのロリンズのオリジナル・ブルースなんですが、アルバム全体の流れからすると、この曲は無くてもよかったかも?…という気がしないでもありません。ということで、この曲は最初から無かったことにして、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 いや、よいですな。…という、ただそれだけの1枚です。


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