LIGHTS OUT! (PRESTIGE)

JACKIE McLEAN (1956/1/27)

LIGHTS OUT!


【パーソネル】

DONALD BYRD (tp) JACKIE McLEAN (as) ELMO HOPE (p)
DOUG WATKINS (b) ART TAYLOR (ds)

【収録曲】

LIGHTS OUT / UP / LORRAINE
A FOGGY DAY / KEPLUNK / INDING

【解説】

 君の部屋に “潤い” と “安らぎ” はあるかな? 僕の部屋にはですね、ありません。特に冬場は著しく潤いが欠如しているような気がするんですが、私の部屋、ジュンってなってしまうんです。…といった潤い感がまったくと言っていいほど無いですもんね。カサカサに乾燥しちゃってるんだと思います。おかげで朝起きると喉に痛みを覚えることが少なくないんですが、その症状は家にいる時よりも、たまにビジネスホテルなんかに泊まった時のほうがより重篤になるような気がします。狭い部屋で暖房をガンガン効かせている上に、すけべビデオを鑑賞したりするのがよくないのではないか?…という気がするんですが、有料放送の料金がフロント精算式で、チェックアウトの時に係のお姉さんから、「有料放送料金1000円ですね♪」…と言われるのが嫌で鑑賞しなかった時でもちゃんと喉は痛くなっているので、すけべビデオはあまり関係なくて、暖房のほうが問題なのかも知れません。解決策としては、暖房を止めてしまうのがいちばん手っ取り早いんですが、寒くてそうも言ってられない場合には、何か部屋の乾燥を防ぐ手立てが必要となります。枕元に濡らしたタオルをぶら下げておく。…という話をよく耳にするんですが、僕が試した限りではこれはあまり効果がないんですよね。特に無料配布されるタオルが、アンタこれ、ほとんど “日本手拭い” やん。…と言いたくなるような極めて薄手のものある場合、その保水能力は皆無に等しいので効果のほどはまったくもって期待出来ません。そういう場合は枕元に吊るしておくといった生易しい手法では駄目で、直接、自分の鼻と口の上に濡れタオルをかぶせたほうがいいと思うんですが、この方法はひとつ間違えるとそのまま窒息死につながる恐れがあるので、それなりの覚悟が必要になってくるんですけどね。

 もっとポジティブに部屋を加湿しようと思えば、ユニットバスの湯を利用する方法もあります。浴槽に熱めの湯を張って、浴室のドアを全開にしておけばOKなんですが、この時に注意しなければならないのは、ユニットバスのうちの “便器の部” のほうは、中身をきちんと流しておくことでありますな。でないと湯気だけでなくて臭気のほうも部屋に充満することになって、安らかな睡眠環境が確保されないことになってしまいます。臭気の除去には浴室内の換気扇の利用が効果的なんですが、これを回すとせっかくの湯気も同時に逃げてしまうので、便器を使用するタイミングにも留意しなければなりません。部屋に入ったらまず最初に大きいほうを済ませておいて、換気。で、食事を取って、入浴は寝る直前に。風呂の湯をそのまま落とさずにおいて、部屋の加湿に利用。…というパターンが理想的ではなかろうかと。食事の中身にも十分に気を付けなければならなくて、例えば “カニに氷水、ウナギに梅干し” というメニューだったりすると、入浴→睡眠の間に、腹痛→便器の利用→換気といった余計なプロセスが入り込んで、せっかくの湯気がすべて無駄になる恐れもあります。お粥とか、牛乳パンとか、玉子ぼうろとか、そういったロー・インパクトな食材を摂取するように心掛けましょう。 で、もっとアクティブに部屋を加湿しようと思えば、浴室のドアを全開にした状態で、温度設定も蛇口の開度もMAXの状態で浴槽にドバドバと熱湯を注ぎ込むという方法もあります。僕も一度、伊那プリンスホテルというところで試してみたことがあるんですが、“すけべビデオ” の画面が白く霞んで見えるほど部屋中が水蒸気で充満して、こりゃ、いいやぁ♪…と思わずにはいられない住環境を確保することが出来ました。これだけ湿っていれば喉が痛くなる心配はまったくないんですが、そうこうしているうちに部屋の火災報知器が作動して、ホテル中が大騒ぎになってしまったんですけどね。いや、 “潤い” はたっぷりあるんだけど、“安らぎ” がまったくなくて、喉が痛くならずに、胃が痛くなったという、なんとも貴重な体験でありました。

 そんなこんなで、ホテルの部屋の乾燥問題に関してはほとんど諦めモードだったんですが、そんなある日のこと、僕はとってもいいものを発見してしまいました。 これ です。コンパクト気化式加湿器 “マイキュアミスト” …って、いや、これはいいですな。まず第一、コードレスでスッキリお好きな場所へ持ち運び!…というところがよくて、これなら気軽に出張や旅行の時にも持っていけますよね。でまた、気化式というところもポイントが高くて、いや、それが一体どういうものなのか今ひとつよくわからんのですが、僕は渡嘉敷勝男クンがけっこう好きですからね。渡嘉敷がいいのなら、気化式だって悪くないに違いありません。何でも吸水フィルターが空気を浄化する役目も果たすようで花粉症にも効果があるみたいだし、マイナスイオンだって発生しちゃうし、夏場には氷を入れて冷風器として使えるみたいだし、タンクにアロマオイルを入れればリラックスだって出来ちゃうみたいだし、一石二鳥…というか、それを凌駕するほどの画期的な商品ではありませんか。校庭で石をひとつ投げたら2羽のトリに次々に命中しただけでなく、教室のガラスを割って中で勉強していた女子高生の頭に当たり、倒れた拍子にパンツが丸見えになって、おまけに仕留めたトリは1羽が鳥インフルエンザに罹っていて、もう1羽は鳥目だった。…みたいなもので、いや、得をしたんだか何だかよくわからんのですが、とにかくまあ、いろいろな使い方があるという。タンク容量は 500mlで、約20時間の加湿が可能なんだそうです。乾電池式ということなのでコストパフォーマンスがちょっと心配なんですが、アルカリ乾電池を使えば1日10時間の使用で約1カ月の寿命があるそうなので、それほど懸念することもないでしょう。ま、一口にアルカリ電池と言っても色々なんですけどね。パナソニックのアルカリ乾電池、通称 “パナ金” なら大丈夫でしょうが、100円均一の店で買った奴だと1日で無くなる恐れもあります。パナ金と百均とでは、こうも違うのか。…と、愕然とする思いでありますが、そんなことで通販で頼んでおいたブツがですね、手元に届いたんですけどね。

My Cure Mist 外形♪ My Cure Mist 分解状況♪

 デカっ!…というのが僕の第一印象でありました。写真で見た限りでは、ジュースの 350ml缶くらいの大きさ?…と予想してたんですが、実物はトイレットペーパーよりもちょっと大きいくらいのサイズで、これではそう簡単に持ち運ぶという訳にもいきませんな。ま、よく考えたらタンク容量が 500mlなんだから 350ml缶の大きさで出来るわけがないんですが、それに気付かなかった僕が迂闊でありました。 でまた、安っぽ!…というのが分解した時点での僕の感想なんですが、下のタンクの部分には輪になったスポンジが入っているだけで、上のほうの駆動部は電池仕掛けで扇風機の羽根のようなものがクルクルと回るだけの仕組みであります。でまた、乾電池は単2を使用するんですね。単2の電池のストックなど、僕の家には無いっ!…と、思わず怒りが込み上げて来ましたが、ま、これも仕様をよく確認しなかった僕が悪いんですけどね。単3の電池でも何とか宙に浮かせた状態であれば使用可能だったので別にいいんですが、工作精度が悪くて電池ケースの蓋を開けるのにとっても苦労するところなど、さすがは中国製といった感じです。ちなみに上記の写真は後日、ちゃんと単2の乾電池を買ってから撮影したものなんですが、ファンの回転音がとっても静かで、耳元に置いてもほとんど気にならないところはポイントが高いんですけどね。で、マイナスイオンの発生機能というのが電気式ではなくて、ファンがマイナスイオン発生樹脂で出来ているだけというのは、何だかインチキくさいような気がします。んなもん、ものの5分もマイナスイオンを発生させれば、それでおしまいのような気もするんですが、果たして半永久的に効果があるものなんでしょうか? で、動作中を示すパイロットランプが、眩しいっ!…というのもマイナスポイントでありまして、これがまた小さいくせに妙に明るかったりするんですよね。気になって眠れないので、何とかしろっ!…と思わずにはいられませんが、メーカーサイドで何とかしてくれそうな気配は感じられないので、自力で何とかしてみました。机の引き出しの中に、テニスのラケットのグリップテープを止める “YONEX” のシールがありましたので、それをランプのところに張り付けてみました。これでとりあえず、目につく問題点は解決でありますな。

 ということで早速、寝る時に枕元に “マイ・キュア・ミスト” を置いてみました。スイッチを入れても目に見えて霧や蒸気が吹き出すわけではないんですが、それが気化式の特徴らしいですからね。吹出し口からは冷たい空気が出てくるので、確かに加湿効果はあるものと思われます。小さいとはいえ、なかなか頼もしいではありませんかー。ま、最初に思っていたよりは遥かにデカかったんですが、ま、それだけのことはありますな。で、ルンルン気分で眠りについた僕でありましたが、その翌朝、目を覚ました僕は軽い喉の痛みを覚えたのでありました。…って、駄目ぢゃん! いや、不満ですな。もう、すごく不満です。加湿器はいったい、何をやっていたんだ?…と、怒りに満ちた視線でチェックしてみたんですが、タンクの水がほとんど減っていないんですよね。タンク容量 500mlで約20時間の加湿が可能どころか、電池が切れるのが早いか、タンクの水が無くなるのが早いか。…といった感じでありまして、ま、 “節水” という点では非常に優れた加湿器であると評価してもいいかも知れませんけどね。それにしても一体、吹出し口から出ていたあの冷気は何だったんだ?…というのが不思議でならんのですが、試しにタンクから外してファンの部分単体で回してみたところ、それだけで立派に涼しい風が出てくるということが判明しまして、いやきっと、夏には立派な卓上扇風機として活躍してくれることでありましょう。 さ、今晩から枕元に濡れたタオルを吊るして寝よーっと。

 ということで今日は ジャッキー・マクリーン なんですが、いや、僕はまだ “マイキュアミスト” を完全に見捨てたわけではありません。気化式加湿器というのは気温と湿度によって水の減り具合がかなり変わるみたいですからね。おそらくタクラマカン砂漠のようなところに持っていけば、気持ち良くタンクの水も減ってくれるに違いありません。今度、ビジネスホテルに泊まる際には暖房をガンガン効かせて、浴室の湿気もなるべく漏らさないように気を付けて、極限まで部屋を乾燥させた状態で加湿させてみようと思っておりますが、とりあえずのところはアロマオイルというのを買って、芳香を撒き散らす器具として活用しております。買ってしまって、後から気になって口コミ情報をチェックしてみたところ、わりとギャルの間では好評みたいですしね。加湿効果のほうはまったく疑問なんだけど、とりあえず見た目がカワイイから、いっかぁ。…みたいな肯定的な意見が多数見られました。電池ケースの蓋が開けにくいとか、パイロットランプが眩しいという不満の声も寄せられていて、やっぱり誰でも感じることは同じなんだね。…と、ちょっぴり嬉しくなったりもしましたが、そんなことでまあ、今日は 『ライツ・アウト!』 でありますな。プレスティッジ時代のマクリーンというのは作風的に安定したものがありますので、自分の好きなサイドマンが参加していたり、自分の好きなスタンダードが取り上げられているアルバムを選んでおけばまずハズレはないんですが、本作にはですね、ドナルド・バードエルモ・ホープが参加しております。特にホープとマクリーンの組み合わせというのは他にあまり無いような気がするので非常に興味深いところなんですが、ということで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 冒頭、アルバム・タイトル曲の 「ライツ・アウト」 はマクリーン作のブルースであります。ダグ・ワトキンスのウォーキング・ベースで地味ィに静かに幕を開け、そこにアート・テイラーとエルモ・ホープが順に入ってくる導入部が秀逸でありまして、しばらくはブルージーなミッドナイト・ムード満点のトリオ演奏が繰り広げられることになります。で、しばらくしてその場にマクリーンがやってくるわけでありますが、何となく馴染みの酒場に顔見知りが次々と姿を現わすかのような風情が感じられますな。「ヤマちゃん来てる?」 「今日はまだ見ないね。」 とか言ってるうちに、噂をすれば何とやらで、ヤマちゃんがひょっこり顔を出す…みたいな。どこの酒場にも必ず一人はいますからね、ヤマちゃん。ハマちゃんというのもいますよね。で、ヤマちゃんはマグロの山かけ、ハマちゃんはハマグリの酒蒸しが好きだったりするんですが、そういう僕は揚げ出し豆腐がけっこう好きです。ま、別にどうでもいい話なんですけどね。で、ジャズバー 「ライツアウト」 にやってきたマクちゃんは、駆けつけ3コーラスのソロを聴かせるわけでありますが、いや、本当に3コーラスなのかどうかは知りませんが、いかにも彼らしい、カレイの唐揚げ的な見事なプレイであると思います。僕はあまり好きではないんですけどね、カレイの唐揚げ。骨が喉によく刺さるところがよくないと思うんですが、ここでのマクリーンはいいです。情熱と情感と上寿司が感じられるところがいいです。僕はウニとかイクラがあまり好きではないので、寿司は別に並でいいタイプなんですが、とか言ってるうちに今度はドナちゃんが登場することになります。ドナルド・バード、通称ドナちゃん。好きなキャラクターはドナルド・ダックで、好きな歌はドナドナ。哀愁がありますからね、あの歌は。ここでは珍しくミュート・プレイを聴かせておりますが、出来としては、まあまあ。…といった感じでしょうか。途中、マクリーンが軽く絡むところはなかなか面白いと思うんですが、僕としては続くエルちゃんのピアノ・ソロのほうを高く評価したいですね。出だしの部分で微妙にモンクっぽいフレーズを弾いたりもするんですが、イントロからのイメージをうまく踏襲した好演奏であると思います。 で、続いてアルトとトランペットの絡みのパートがあるんですが、今度はオープンで吹いているバードのトランペットがやや上滑り気味で、そんなところがちょっぴり表層なだれ的ではあるんですが、最後にマクリーンが締めのソロを聴かせて、そこにバードが絡んで、おしまい。12分55秒という演奏時間の長さを感じさせないブルー・ディープな1曲なのでありました。

 続く 「アップ」 もマクリーンのオリジナルなんですが、ムードは一転、急速調のナンバーとなっております。 「アイ・ゴット・リズム」 のコード進行に基づいた曲のようで、バード、マクリーン、ホープの順に、ハード・バピッシュな生きのよいアドリブが展開されております。特にですね、パーカー・ライクなマクリーンの吹きっぷりが素晴らしいです。これだけ吹ければ、 “吹き矢” の世界でも大成するのではないか?…と思われるほどなんですが、ま、いくら大成したところで、所詮は吹き矢の世界ですからね。吹き矢でメシが食っていけるとはとても思えなくて、まだキャラブキだったらそこそこメシは食えるんですけどね。いや、僕はあまり好きではないんですけど、キャラブキの佃煮。キャラブキは駄目でも、雑巾のから拭きというのはわりと好きでありまして、ま、好きと言っても、冬場は特に手が冷たくてツライよね。…と思わずにはいられない雑巾の水拭きに比べればまだマシといったレベルの話なんですが、とまあそんなことで、ピアノに続いてアート・テイラーの元気一杯なドラムス・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。4分44秒という、ちょっとした小品なのでありました。 で、続く3曲目の 「ロレイン」 はバードのオリジナルなんですが、あたかもスタンダードの歌曲のような、美しいメロディを持ったバラードに仕上がっております。アイラ・ギトラーは原文ライナーの中で、Lorraine は、そのバラッドであり、そして、彼女が甘くないかもしれないとき、彼女は、確かに包容できる。…と書いておりますが、僕もまったくその通りだと思います。いや、翻訳ソフトの訳文は日本語になっていなくて、今ひとつ意味不明ではあるんですけど。 “embraceable” を抱擁ではなくて包容と訳しているあたり、英語より前に日本語のほうを勉強しなさいね。…と説教したくもなるんですが、ま、 “embrace” には包み込むという意味もあるので、あながち間違いではないんですけどね。で、演奏のほうはエルモ・ホープのクラシカルな響きのピアノのイントロに続いて、バードがワンホーンでテーマを演奏します。これがですね、実にしみじみと優しく、そして味わい深いのでありまして、彼女が甘くないかもしれないとき、彼女は、確かに包容できるよね。…と思ってしまいます。どこまでがテーマで、どこからがアドリブなのかよく分からんくらい自然でナチュラルなバードに続いてマクリーンの登場となるわけですが、こちらはテンポを少し速めて、情熱的に “愛” を語っております。やっぱり宮里藍よりも、福原愛だよね。…みたいな。南の島のしっぽの長いお猿さんはアイアイだよね。…とか。 で、再びバードが登場してテーマを吹いて、最後に短くマクリーンが絡んで、おしまい。いや、僕は好きですね、このバラード。

 続いてはこのアルバムで唯一の歌モノである 「ア・フォギー・デイ」 でありますか。 「霧深き日」 などという邦題もありますよね。マイキュアミストではちっとも霧深き状態にはならないんですが、マクリーンのアルトにバードのミュート・トランペットが絡む導入部がちょっぴりユニークであります。通信講座でユニーク話術を勉強したのか?…と思ってしまうほどなんですが、テーマに入ってからは割とオーソドックスでありますな。テンポ設定はミディアム・ファストで、マクリーンがワン・ホーンで主旋律を吹いて、そのままアドリブ・パートへと突入していきます。このソロが実に快調にして好調で、栄養失調。…といった感じでありまして、この栄養の行き届かなさ具合が彼の持ち味なんですよね。栄養失調はそのままハングリー精神につながるわけでありまして、そのハングリー精神がハンガリーで天津甘栗の店を開業する原動力になったりするわけです。で、続いてバードが珍しくミュートでソロを取るんですが、いや、1曲目でもミュートを使っていたので、もはやそれほど珍しくもないんですが、ここでのソロは、まあまあといったところでしょうか。どうも僕はこの人に対する評価がちょっぴり中辛のような気がするんですが、ま、悪くはないとは思うんですけどね。で、続いてエルモ・ホープのソロでありますが、なんとも軽やかでありますな。軽佻浮薄…とまではいきませんが、浣腸不発…といった感じはあって、そこのところがこの人の持ち味だったりするんですけどね。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。 続くバードのオリジナル 「ケープランク」 は1曲目の 「ライツ・アウト」 をモダンにトリートメントしたようなミディアム・ブルースであります。原文ライナーにそう書いてあったので間違いないと思いますが、聴いてみると、なるほど、確かにモダンにトリートメントされておりますな。モダンというと僕の場合、お好み焼きの中に焼き蕎麦が入っているんだよね。…といったイメージになるんですが、エルモ・ホープのピアノで始まり、そこにベースとドラムスが順に入ってきて、しばらくはトリオでの演奏が繰り広げられるわけですが、不安定な音遣いがいかにもホープらしくて、いいですよね。ホープの抱負は、防府市で豆腐を豊富に食べることだと聞いたことがありますが、そういった大きな目標を持って生きるというのはとても大切なことだと思います。…と、ここまで書いたところで今朝 (2006年4月2日) の新聞を見たら、ショッキングな記事が掲載されておりました。松本竜助さん死去…って、いや、それもショックだったんですが、何とジャッキー・マクリーンの訃報が載っているではありませんか。いやあ、このアルバムの演奏を聴いている限り、とても元気そうだったんですけどねぇ。ということで今回のレビューは急遽、 “トリビュート・トゥ・J・マック” ということになってしまいましたが、しばらくトリオの演奏が続いた後、ドナルド・バードが出てきて、ひとくさりアドリブ・ソロを披露しております。続いてマクリーンが、え、死亡記事?何の話ぃ?…といった感じで登場すると、僕はもう涙が止まらなくなってしまいました。花粉症ですしね、今の時期。ま、僕はあまり花粉が目の症状には出ないほうで、ちょっと充血するくらいで “溢れ出る涙状態” にはならんのですが、鼻水のほうもノーズマスクピットのおかげで、今年はとても快適な春を過ごしております。で、マクリーンのソロも快調そのものでありまして、まさかこの50年後にぽっくり逝っちゃうとは、とても信じられません。諸行無常でありますなぁ。ということで、アルト・ソロの後、2本の管楽器による12小節交換と相互絡みのパートがあって、テーマに戻らずに、おしまい。

 アルバムの最後を飾る 「インディング」 はマクリーンの作曲ということになっておりますが、前曲同様、テーマらしいメロディの登場しないアドリブ一発勝負的な作品であります。2曲目の 「アップ」 同様、 「アイ・ゴット・リズム」 のコード進行を下敷にしているようですが、僕は子供の頃、学校に下敷を忘れた時はボール紙をノートの大きさに切って、それを下敷にしておりました。素材として柔らかすぎて使い勝手は今ひとつでしたけどね。で、演奏のほうはアート・テイラーの太鼓にワトキンスのベース・ランニングか絡む導入部から、バード、ホープ、マクリーンの順で各自のソロがフィーチャーされて、最後のほうでは、どこかで聴いたことのあるマクリーンのオリジナル曲のテーマ・メロディが2管のハモりで登場したりもします。それがいったい何という曲だったのか。マクリーンが死んでしまった今となっては、もうどうでもいいではありませんか。ま、ただ調べるのが面倒なだけの話なんですけど。 ということで、演奏のほうはやや唐突な感じで終わってしまって、今日のところはですね、以上です。

【総合評価】

 日本人好みのファンキー・チューンと呼べるものが少ないので、やや玄人向けの1枚ではありますが、マクリーンのソロに関しては完璧と言える出来であります。彼の訃報に接してしまった今となっては、ただただ 「ロレイン」 を聴いて涙に暮れるしかありません。さようなら、そして、ありがとう。僕らのJ・マック!


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