AT THE CROSSROADS (PEACOCK)

SONNY CRISS (1959/3)

AT THE CROSSROADS


【パーソネル】

SONNY CRISS (as) OLA HANSEN (tb) WYNTON KELLY (p)
BOB CRANSHAW (b) WALTER PERKINS (ds)

【収録曲】

SWEET LORRAINE / YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS / I GOT IT BAD (AND THAT AIN'T GOOD) / SYLVIA
SOFTLY , AS IN A MORNING SUNRISE / BUTT'S DELIGHT / INDIANA (BACK HOME AGAIN IN INDIANA)

【解説】

 高速道路を走っていると、電光掲示板で様々な情報が提供されます。いちばんポピュラーなのは “渋滞情報” なんですが、渋滞というのは嫌なものですよね。渋滞のいちばん先頭のクルマは、いったい何をしているのか?…というのは昔からよくある疑問なんですが、おそらくですね、道の真ん中にクルマを止めて爆睡しているものと思われます。少なくとも大雪が降った日の一般道の大渋滞は、ほとんどがフテ寝をしているトラック運転手によって引き起こされているものなんですが、ま、さすがに高速道路ではあまりそういうことはないと思うんですけどね。ちなみに旧・日本道路公団による渋滞の定義は、“時速 40km以下で 1kmの車列の延長が 15分以上継続したとき” ということになっているようですが、そんな定義など、別にどうでもいいっ!…と言いたくなるほど渋滞というのはイライラして、精神衛生的にもよくありません。それに対して対向車線の渋滞というのは楽しいですよね。他人の不幸ほど幸せな気分になれるものはないわけでありまして、反対車線が何キロにもわたって大渋滞しているのを見ると、心の底からウキウキしてしまいます。きっとみんなイライラしているに違いなく、それを確認するためにわざわざ自分のクルマの速度を落として向こうのドライバーの表情をチェックしたりして、それが結果的にこっちの車線の “わき見渋滞” の原因になったりするわけなんですが、助手席に乗っているギャルの脇毛がチラチラ見えたりする場合も、気になってわき見運転をすることになってしまうので、しっかりとお手入れをしなければなりません。

 高速道路ではまた “低速車作業中” という電光標識を見かけることがありますよね。高速道路なんだから低速ではなくて、高速で作業しろって!…と思わずにはいられませんが、ま、除雪車が時速120キロで周囲に雪を撒き散らしながら走っていたりしたら、それはそれでちょっと恐いような気もするので、低速作業もやむを得ないところなのかも知れません。で、低速車は低速ながらも動いているだけまだマシでありまして、中には完全に止まってしまったクルマもあったりします。どうして止まってしまったのかというと故障したからなんですが、故障車というのはですね、どういうわけだか必ずと言っていいほど止まってますよね。ラジオの道路交通情報でも、○○インター付近を故障車が走り回っています。…という話はほとんど耳にしたことがないんですが、僕はそれが不思議でなりません。中にはブレーキが壊れて走り回ることを余儀無くされている故障車もあるに違いないんですが、どうして そういう情報はラジオで知らせてくれないんですかね? ま、そのような状況に置かれたクルマのドライバーというのは、とても電話で故障を知らせるだけの心理的な余裕がないのかも知れないし、走り回っている故障車はそのうちどこかにぶつかって、故障車ではなく事故車ということになってしまうので、表には出てこないということなのかも知れませんけどね。

 高速道路の電光標識でたまに見かけるものに “逆走車注意” というのもあるんですが、これは嫌ですな。かなり嫌です。故障車というのは大抵、路肩に寄せられて止まっていることが多いので、さほど交通の障害になることはないんですが、逆走車というのは交通の障害になるとか、ならないとか、そういったレベルの話ではないっ!…と言いたくなるほどかなり危険な存在であるに違いなくて、走り回っている故障車以上に事故車へと発展する可能性が高いと言わねばなりません。で、 “逆走車注意” の表示を見たドライバーはどうすればいいのかと言うとですね、前から走ってくるクルマの運転手に対して、「反対向いて走ってるよぉ。」…と、注意してやればいいわけなんですが、何せ高速道路上での話ですからね。こちらも100キロ、向こうも100キロで走ってるいるわけだから、相対速度としては時速200キロということになります。これほどのスピードともなると、 「反対向いて走ってるよぉ。」…という言葉の最後のほうはドップラー効果で音程が下がっちゃうに違いなくて、相手にとってはかなり聞き取りにくいものになるに違いありません。この際、逆走しているドライバーへの注意はあきらめて、自分がそのクルマと正面衝突しないように注意を集中したほうが得策かも知れませんが、その意味では “逆走車あり、走行注意” という表現にしてもらったほうがより親切であると言えるかも知れませんね。ちなみに高速道路を逆走しちゃう原因としては、そのほとんどがサービスエリアやパーキングエリアから出る際に間違えて反対車線に出てしまうことによるんですが、僕も一度だけ間違えそうになって、前から走ってきたパトカーに、「そちらに行くと逆走になりまーす。」…とスピーカーで注意されたことがあって、いや、他人事ではありませんな。あの時、たまたまパトカーが通りかからなかったらヤバいことになっていたかも知れなくて、で、逆走車というのはですね、とにかく左側走行だよね。…という意識があるので、普通に走っている側からすると追越車線(右車線)のほうを走ってることが多いそうです。逆走車による正面衝突事故の実に94%が追越車線で起こっているようなので、 “逆走車あり、走行注意” という標識を見たら、とりあえず走行車線(左車線)を走ったほうが無難かも知れません。ま、運の悪い人というのは大抵、わずか6%の確率で貧乏くじを引いたりするものなんですけどね。

 僕が一度だけ遭遇したことがある電光標識に “トンネル内火災” というのがあるんですが、事実関係が淡々と述べられているだけで、どうしろという指示があるわけでもなくて、一体どうせいちゅうねん?…と思わずにはいられませんでした。他のクルマの様子を窺ってみると、どうやら誰も何がどうという気もなさそうなので、とりあえずそのままトンネル内に突入してみることにしたんですが、別段、クルマやモノや人が炎上している様子もなくて、ぜんぜん大丈夫だったんですけどね。実際問題、止まっている故障車を除けばトンネル内火災にせよ、逆走車にせよ、標識どおりの事態に遭遇した例(ためし)がないので、 民主党の永田議員が提出したメール同様、どうせ “ガセ” やろ。…くらいにしか思わなくなってしまったんですが、先日ですね、野沢温泉でのスキーから帰りに中央道を走っていると、 “5キロ先、落下物注意” という表示が出ていたんですよね。この “落下物注意” という文字を見ると、僕はいつも、落ちてるんなら拾わんかい!…と思ってしまうんですが、ま、実際のところは係のおじさんがきちんと拾っているようで、今までは実際に落下物が落下している現場に遭遇したことはありませんでした。で、その時もちょっとナメてかかっていたんですが、5キロ先よりもかなり手前のところにですね、落ちていたんですよねー、落下物。何やらブリキの板のようなものではなかったか?…という気がするんですが、注意しようにも除けようがないやろ!…と言いたくなるほど、道路一面に大量の落下物が落下しておりました。幸い、ぺしゃんとした形状の物体だったので、さしたる被害もなく通過することが出来たんですが、いや、しかし、5キロ先と表示しておいて、その数キロも手前に落下物があったというのは、旧・日本道路公団の情報収集能力もかなりアバウトであると言わざるを得ませんなー。

 ところがですね、5キロ先のところにもあったんですよね、落下物。あれだけ大量に落下させちゃったんだから、もうこれ以上、落とす物なんて何もないよね。…と思ってすっかり油断してたんですが、すぐ目の前を走っていたトラックが思いきり貧乏くじを引きました。やはりブリキの板のようなものではないか?…と思うんですが、今度のヤツは折れ曲がっていて、厚みのある形状になっていたみたいです。不意をつかれたトラック運転手はモロに落下物に突っ込んで、そのまま車体の下に異物を引っかけたまま、異音と路面に火花を撒き散らして高速道路を爆走することになって、いや、路肩で止まれよ!…と思わずにはいられませんでしたけどね。いつ異物が外れてすぐ後ろを走っている僕のクルマのほうに飛んでくるか分からなくて、気が気でなりませんでしたが、トラックの運ちゃんは落下物を轢いたことに気が付かないのか、あるいはパーキングエリアが3キロほど先にあるので、そこまで強硬突破する心積もりなのか、まったくスピードを落とすでもなく元気に走り続けております。ある意味、胆の座った運ちゃんであると評価していいかもしれませんが、別に胆なんか座ってなくてもいいって!さっさと車体の下に挟まった落下物を何とかしろって!…と思わずにはいられなくて、ま、さすがに3キロ先のパーキングエリアにクルマを止めて、黙々と異物の撤去作業に勤しんでいましたけどね。僕が便所に行ってる間にそのトラックは姿を消して、パーキングの隅には何事もなかったかのように落下物の残骸が放置されておりましたが、直撃を受けてボディに傷のついた乗用車も何台がいたようで、いや、 “落下物注意” の標識もなかなか侮れないものでありますなー。

 その先、およそ10キロにもわたって落下物の残材らしきものがたまに落ちていたりして、何とも気の抜けない状況でありましたが、落とし主は一体どういった状況で、これ程まで広範囲に落下物を撒き散らしたんでしょうな?クルマを傷つけられた兄ちゃんが警察に届けたと言っていたので、恐らくおまわりさんから厳重に注意されていることと思いますが、高速道路にはですね、落下物の他に “全裸男” が出没することもあるんですよね。あれも確か中央道の下り線だったと思うんですが、その男はですね、路肩のところに立っておりました。路肩のところに立って、くねくねと絶妙な踊りを披露しておりました。どこが絶妙だったのかと言うと、局部の隠し具合が何とも絶妙だったんですが、腕をゆらゆらと動かしているのに、きっちりと肝心の部分だけはガードされているんですよね。その恍惚とした表情からは精神に異常をきたした人であることが感じ取れましたが、その隠蔽のテクニックには卓越したものがありまして、今ではすっかり露出狂にまで身を持ち崩してしまったものの、かつてはその筋の世界でそれなりの地位を築いた人だったのかも知れませんね。いや、その筋というのが一体どんな筋なのか今ひとつよくわからんのですが、いずれにせよ不意をつかれた全裸男との遭遇だったので思わず後ろを振り返ってしまい、高速道路での運転中としてはちょっぴりデンジャラスな状況でありました。旧・日本道路公団も民営化されたのをきっかけに、是非とも電光掲示板に “○○キロ先、フリチン男出没注意!” という情報を表示出来るよう、プログラムを改良して欲しいということを提案して、今日のお話はおしまい。

 ということで、今日は ソニー・クリス なんですが、いやあ、すっかり春ですなぁ。ギャルの人は夜道で変質者に遭遇すると、もうすっかり春なのね。…ということを実感するそうですが、僕の場合はですね、鼻水で春を感じることになります。いつもこの季節になると花粉症で鼻水が止まらなくなるわけなんですが、空前絶後の花粉の飛散量だった去年と比べると、今年はずいぶんと少ないみたいですけどね。が、東海地方の杉花粉の飛散量は例年並みということなので、ちょっと油断すると悲惨な目にあうに違いなくて、事実、1週間ほど前から突如として発作に襲われる羽目になりました。以来、マスクが手放せないというか、手放すと手鼻をかまずにはおれないというか、しかしですね、マスクをして夜道をうろうろしていると変質者と間違われるという恐れがあるんですよね。ま、これほどまで世間に花粉症が認知されてマスク姿の人の数が増えてくると、マスク=変質者やん。…と思うような人はもういないと思うんですが、マスクをしているといろいろ面倒なことがあるんですよね。電話でしゃべる時にはマスクを取らなければならないし、メガネを掛けている人はレンズが曇って前が見えなくなるし、何よりマスクをしていると手鼻をかめなくなるところが痛いですよね。手鼻をかむ度にいちいちマスクを外すのも面倒なので、そのままマスクを鼻紙がわりにして鼻をかんだりするんですが、するとマスクの内側が鼻水でべとべとになったりして、不快です。いやまったく、何とかならないものですかねぇ。…と思っていたらですね、いい物を発見しました。 これ です。鼻の穴に直接挿し込むマスク “ノーズマスクピット”♪ いや、これはいいですな。マスクのように目立たず、会話にも支障がなくて、化粧崩れも防ぐことが出来る…と。モデル役のギャルの鼻がちょっぴり上向きになっているように見えるのと、鼻の穴だけガードしても、口から吸った花粉が鼻のほうに回ってくるのではないのか?…という2つの点がちょっと心配だったりするんですが、装着を始めて1日半。今のところ花粉症の症状とブタ鼻になる副作用は生じておりません。ま、やっぱり手鼻をかめないことには違いないんですが、そんなことでまあ、今日は 『アット・ザ・クロスロード』 という1枚を紹介してみたいと思うんですけどね。

 ピーコックなどという超マイナーレーベルの作品なんですが、1959年の録音というと、インペリアル3部作とプレスティッジ時代との空白を埋める時期にあたり、契約の関係でジョー・スコットなどという名前でクレジットされているウイントン・ケリーの参加が嬉しいところです。でまた、ワン・ホーン作の多いクリスには珍しく、オラ・ハンセンなどという、何となく東北訛りで自己紹介しているみたいなトロンボーン奏者が入っているところも興味深く、ま、本人としては故郷の訛りを気にしているらしく、日本語盤の片仮名表記ではオラ(オレ)・ハンセンと、括弧して標準語版の自己紹介も用意されていたりするんですけどね。とまあそんなことで1曲目の 「スウィート・ロレイン」 なんですが、ジョー・スコットのピアノによるイントロはウイントン・ケリーを彷彿させるブルージーな味わいがあって、よいですね。で、続いてクリスがワン・ホーンでテーマを吹いて、そのままアドリブ・パートへと入っていくんですが、旧・林家こぶ平が言うところの “納豆のばし的” な節回しが顕著でありまして、このあたりはインペリアル時代のスタイルを彷彿させるところがありますね。しかし何ですな。こぶ平クンも林家正蔵の名跡を襲名して以来、何だかすっかり立派なキャラになっちゃいましたな。こぶ平という名前の時は単なる “ナニワのソフト昆布飴” が好きな兄ちゃんといった印象だったんですが、名前が変わるだけでこれほどまでイメージがよくなるものなんですね。今では林家一門の中でも林家ぺーに次ぐ重鎮でありますが、それはそうとここでのケリーのソロは素晴らしい出来栄えですよね。いくら、僕、ジョー・スコットだしぃ。…と言ってみたところで、すぐにそれと分かるケリー節全開状態でありまして、そんなこんなでアルバムの出だしとしては上出来であると言っていいのではないでしょうか。

 ということで、2曲目です。スタンダードの 「恋を知らないあなた」 でありますか。ほの暗いケリーのイントロに続いてトロンボーンのワン・ホーンでしみじみとテーマが演奏されるんですが、そう言えばオラ・ハンセン君は1曲目ではまったく出番がなかったんですよね。ここに来ての大抜擢でありますが、この曲をこれほどまで陰気に表現出来るのはこの楽器をおいて他はなく、実に的を得た選択であると思います。で、オラ君に続いてクリスが登場してソロを吹くんですが、アドリブというよりもテーマ・メロディのフェイクといった感じで、彼の持ち味であるクドさ、しつこさも十分に発揮されていて、好き嫌いの評価が別れる演奏であるような気がしないでもありません。個人的には続くケリーのピアノ・ソロを大いに評価したいところなんですが、すぐにオラ・ハンセンの吹く後テーマに戻ってしまって、全体的にはやや印象の薄い出来でありましたが、おおっ。タナボタで準決勝進出が決まったワールド・ベースボール・クラシックの対・韓国戦は8回表の途中で6対0でありますか。これで藤川球児が出て来て3点くらい取られても、まだ大丈夫ですね。このまま決勝進出が決まれば、メキシコさまさまといったところなんですが、しかしどうしてまた韓国戦なんですかね?ドミニカとの試合なんかも見たかったのに、どうも運営が今ひとつですよね。とにかくまあ試合のほうは雨で中断しているようなので、デービッドソン審判が、雨でノーゲーム!…とか言い出さないこと祈りつつ、次の曲に行くことにしましょう。

 バラードが続いて3曲目は 「アイ・ゴット・イット・バット」 なんですが、これはですね、絶品にして、でらべっぴん。…といった出来でありまして、ちなみに 「でらべっぴん」 という名前のエロ本の “でら” というのはデラックスの略なんだそうですね。名古屋では 「とっても葡萄の一品種だよね。」 というのを 「でら、デラウェアだぎゃ。」 と言ったりするので、 てっきり名古屋弁だとばかり思っていたんですが、この曲におけるクリスのバラード奏法はプレスティッジ時代のそれを思わせる哀感と伊予柑とイカ缶が感じられて、秀逸です。中間部で聞かれるケリーのソロもよいですな。オラ君はまたしても出番が無くて、今ひとつ冷遇されている感は否めないんですが、ここはやはりワン・ホーンにしておいて正解でありましょう。クリスの持つクリスタル・キングな大都会に、余計な管楽器など不要です。…と、ここまで書いたところで僕はメガネ屋に行ってきたんですが、そろそろ運転免許証の更新に行かなければならんのですよね。3年前の更新の時は眼鏡を掛けても視力検査に合格しなくて、係のおばさんに 「すぐに眼鏡を作り替えなさい!」 と厳命されたんですが、その場さえクリアしてしまえばこっちのものでありまして、おばさんの言い付けを守らずに、そのまま3年間ズルズルと惰性で生きてまいりました。が、さすがに今度ばかりはヤバいので、実に18年ぶりで新しい眼鏡を作ることにした次第でありますが、最近の眼鏡というのはどうも何だかカニ目タイプのものが多いんですね。僕はカニ目の眼鏡を掛けるとガニメデ衛星人みたいになるのであまり好きではなくて、なるべくカニっぽくないタイプを選んだんですが、とまあそんなことで4曲目の 「シルヴィア」 でありますか。クリスのオリジナルなんですが、ブルーでマイナーな日本人好みのファンキー・チューンでありまして、この手のちょっぴり泥臭い曲調になってくるとトロンボーンの参加が実に効果的でありますな。テーマ部ではなかなかいい感じにユニゾっております。で、ソロ先発はクリスなんですが、ここでの吹きっぷりはいかにも彼らしい情熱の嵐に満ち溢れていて、いいと思います。あとはえーと…、特に書くことを思いつきませんが、続いてはオラ君のボントロ・ソロでありますか。この人はここまでテーマ部以外には出番がなくて、その実力のほどがあまりサダカではなかったんですが、大丈夫でした。ちゃんとアドリブ出来るくらいの実力は持ち合わせておりました。訥々とした訥弁スタイルはいかにもこの楽器らしい泥臭さに満ち溢れていて、でもって、続くケリーは相変わらずの好調ぶりでありますな。変名を使ってまでこの人を召喚したのは大正解でありまして、ケリーの参加がこのアルバムの価値を大いに高めていると言ってもいいでしょう。で、続いてボブ・クランショウのベース・ソロがあって、演奏のほうは大いに盛り上がる…わけがないんですが、個人的にはけっこう好きだったりするんですけどね、ベースのピチカート・ソロ。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 続いてはお馴染みのスタンダード、 「朝日のように爽やかに」 なんですが、おおっ、日本は韓国に快勝しましたな。先発の上原から、名だたるメンバーの中でも指折りに地味な薮田クンを挟んで、最後は大塚で締めて、見事に完封勝利を収めました。僕は子供の頃、喘息持ちの虚弱児童でありまして、それを克服するために乾布摩擦をやらされて、それがとっても嫌だったんですが、野球の完封というのは気分がいいものですよね。しかしまあ、韓国に2回負けて、デービッドソン君の疑惑の判定があったとは言えアメリカにも負けて、それでいて決勝進出とは運がいいとしか言いようがありませんが、相手がキューバということであれば、もしかしたら何とかなるかも知れませんな。アマチュア最強とはいえ、所詮はアマでありまして、海に潜ってアワビとかを採るのは得意そうでも、野球のほうは大したことないような気がしないでもなくて、で、 「朝日のように爽やかに」 はですね、かなり速いテンポで演奏されておりますな。ピアノの短いイントロに続いて、テーマ部は2管のユニゾンで、一部は微妙にハモって演奏されておりまして、サビの部分はちょっとだけ凝った構成となっております。で、ソロ先発のクリス、2番手のケリー、続くオラ・ハンセンと、アドリブ・パートはいずれも好調でありまして、特に何も言うことはありません。特に書くこともないまま後テーマまで進んでいって、で、今度はサビの部分がドラムスのソロになっているという一工夫があったところで、この曲はおしまい。 で、続く 「バッツ・ディライト」 はクリちゃんのオリジナルなんですが、これはアレですね。シンプルなビ・バップ調のリフ・ブルースでありますな。日本人好みの哀愁のメロディこそがすべて。…といった観点からはまったく得られるものがない曲なんですが、急速調でパーカー・ライクにアルトを吹きまくるクリスを鑑賞するには最適でありまして、このアルバムの中でも玄人受けするという点では随一だよね。…と、真木蔵人も褒めておりました。あ、それはそうと、WBCの対韓国戦は一人のピッチャーが投げ切ったわけではないので、完封ではなくて、零封と言うんですね。が、子供時代の乾布摩擦のエピソードまで持ち出した以上、今さら修正は出来ません。零封という表現は見なかったことにしておきますが、クリスに続いてケリーのソロがあって、オラ君のソロがあって、最後に掛け合いの4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。

 で、アルバムの最後を飾るのは 「インディアナ」 という曲なんですが、これはパウエルが演っている例の曲と同じものなんですかね?ここで聴かれるのはミディアム・テンポのなんとも言えず、ほのぼのとしたナンバーでありまして、とても同じものとは思えないんですが、クリス君が大変に伸びやかなプレイを繰り広げております。こういう、何ということのない演奏というのもいいものでありますな。とまあそんなことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 とてもよいと思います。ジャケットは地味で、今ひとつですけどね。解説もやや手抜き系統でありましたが、ま、たまにはそういうこともありますわいな。


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