BOOKER LITTLE 4 & MAX ROACH(UNITED ARTISTS)

BOOKER LITTLE (1958/10)

BOOKER LITTLE 4 & MAX ROACH


【パーソネル】

BOOKER LITTLE (tp) GEORGE COLEMAN (ts) TOMMY FLANAGAN (p)
ART DAVIS (b) MAX ROACH (ds)

【収録曲】

MILESTONES / SWEET AND LOVELY / ROUNDER'S MOOD
DUNGEON WALTZ / JEWEL'S TEMPO / MOONLIGHT BECOMES YOU

【解説】

 今年 (2006年) の 「成人の日」 は1月9日でありました。新成人の方、どうもおめでとうございます。ついでにバルタン星人の方もおめでとうございます。いや、僕は子供の頃からずっと、 「せいじんの日」 というのはバルタン星人の日なんだよね。…と思っていたんですが、さすがに自分が成人の日を迎える頃になって、それが間違いであることに気付きました。それ以来、僕は成人の日にはあまり興味がなくなって、桑名市で行われた式典にも出席しなかったんですが、友達いないですからね、僕って。式典というのもあまり好きではなくて、どちらかというとイカ天のほうが好きだったりするんですが、美味しいですからね、イカの天ぷら。 とまあそれはそうと、成人の日というのは今でこそ1月の第2月曜日ということになりましたが、一昔前まではですね、1月15日ということになっておりました。「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます日」として1948年に制定されたそうなんですが、どうして1月15日に決まったのかというとですね、よく分かりません。ま、1月15日は “小正月” だし、1年の最初の祀りの日にヤングな若者を祝う儀式をするには丁度いいんじゃない?…といった軽いノリだったみたいですけどね。 そもそも旧暦で言うところの15日というのは十五夜お月さまが出る日でありまして、小正月というのはすなわち、その年で最初の満月の日であるわけです。その昔、1年の始まりは満月だよね。…という取り決めがあったので、この日に様々な行事が行われていたようなんですが、その代表的なものとしては、えーと、 “小豆粥” でありますかー。

 個人的な話をするとですね、僕はお粥というのがあまり好きではありません。お粥というのは何だかこう、 “水増しした飯” というイメージがありますよね。米粒の量をケチるために水をたくさん入れて増量しているだけぢゃないか!…としか思えないのに、ちゃんとしたお店でちゃんとしたお粥を注文すると、普通の定食屋で普通の小ライスを注文するのに比べて法外としか思えないような高額の料金を請求されるのが常でありまして、たかが下痢の時に食う流動食のようなものなのに、世の中を舐めているとしか思えません。ちなみに僕がまだ子供だった頃、下痢の時の食事と言えば “お粥” か “かたくり” と相場が決まっておりました。 “かたくり” というのはですね、大森屋 (←近所にある輪島似の叔父さんが経営している八百屋) で買ってきた片栗粉をお湯で溶いて砂糖で味付けをした料理なんですが、粘りつくような食感とほのかな甘さが “ヤマト糊” を彷彿させて、僕は好きでした。毎日 “かたくり” を食べれるなら、下痢も悪くないかな?…と思ったりもしたんですが、朝食が “かたくり” なら、夕食は大してうまくもない “お粥” と相場が決まっていたので、やはり下痢というのはそれほどよいものではなかったんですけどね。

 とまあそんなことで、今日は今年の新成人がまた新生児だった20年前に思いを馳せてみたいと思うんですが、今から20年前というとですね、1986年 (昭和61年) ということになりますね。当時、僕は17〜18歳の多感な少年でありました。多感であると同時に痴漢が好きな少年でもあったんですが、イカ缶はあまり好きでない少年でありました。イカ臭いですからね、イカ缶は。イカ缶はいかん。…というのが座右の銘である少年だったわけですが、そんな僕の高校時代に流行っていたものといえばですね、まず音楽の世界でいうと、おニャン子クラブでありますかー。この年のオリコンチャートでシングル1位を獲得した46曲のうち、実に30曲もがおニャン子クラブ関係だったというのだから、おニャン子率は実に65%を越えるわけでありますが、では具体的にどういう曲があったのかと言うと、まったく思い出せないところがちょっと凄いと思うんですけどね。僕が唯一覚えているのはデビュー曲の 「セーラー服を脱がさないで」 なんですが、これは85年の発売でありまして、じゃ、何か?ブレザーの制服だったら脱がしてもいいのか?…と、当時、制服がブレザーだったメリノール女子学院の女子生徒に憧れていた多感な少年である僕は思ったりもしたんですが、それ以降となると2作目の 「およしになってねTEACHER」 がうっすらと記憶にある程度で、4作目の 「おっとCHIKAN!」 になると、どういう歌なんだかまったく見当がつきません。いや、何となく想像出来ないことはないんですが、いやあん、触らないでぇ♪…とか、ああん、そこは駄目ぇ♪…とか、うっふん♪…とか、あっはん♪…とか、そういう内容なんですかね? あるいは、四日市行きの近鉄急行〜、海星高校のカリアゲ男に触られて〜♪…といった歌なんでしょうか?

 ちょっと気になったので歌詞を調べてみたんですが、おっと危ないタイプの人がこっちに寄って来たわ、牛乳瓶の眼鏡かけた、刈り上げヘアーのお坊ちゃまよ〜♪…って、ほとんどそのまんまやん! ただ、内容としては僕の思ってたのとは大きく違っていて、要するに純情可憐でマジメな僕のような生徒を痴漢に仕立て上げてストレスを解消しようという、そういうとんでもない歌なんですな。ま、その彼が、実は自分に宛てたラブレターを持っていたという、とっても青春を感じさせるオチが付いてはいるんですが、こんな歌が20万枚も売れてオリコンチャートの1位になるとは、ある意味、とてもいい時代だったのかも知れません。日本はこの頃からバブル経済へと突入していくことになるんですが、ところで君は、おニャン子クラブ全員の会員番号と名前をすべて正しく言えるかな? んなもん、簡単ぢゃん。会員番号1番:奥田美香、会員番号2番:榎田道子、会員番号3番:吉野佳代子…と、会員番号52番まで言える人がいるとしたら、僕はその人をちょっぴり尊敬すると共に、かなり激しく軽蔑してしまいますが、新田恵利、国生さゆり、河合その子、渡辺満里奈、工藤静香、生稲晃子くらいですな、僕が知っているのは。さすがに会員番号までは分かりませんけど。ずーっと、演歌歌手だよね。…と思っていた城之内早苗が実はおニャン子出身だったとは初めて知りましたが、2004年に 「夕やけニャンニャン」 のプロデューサーだった16歳年上のフジテレビ社員の男性と結婚したんだそうで、いや、何だかドラマチックな人生を歩んでいるんですな。

 他にはえーと、小林明子の 「恋におちて」 ですか。最近はこの歌を聞くと、どうしても最後のところが、コクと風味の金のゴマだれ〜♪…になってしまって困るんですが、これはなかなかいい歌ですよね。 あ、本田美奈子の 「1986年のマリリン」 なんてのもありますな。去年、彼女が38歳という若さで死んじゃったのは、ほぼ同世代である僕にとってはかなりショックだったんですが、ちなみに本田美奈子という芸名のホンダというのは、松田聖子のマツダに対抗して付けられたんだとか。ついでにいうと、デビュー当時は本田美奈子という名前だったんですが、2004年11月に本田美奈子.と名前を変えているんですね。 え?どこが違うの?…と思ったら、名前の最後に “.” (ドット) が付いているんですが、これは名前の総画数が31画になるように変更したものなんだそうです。30画は縁起が悪いとか何とか、占いの偉い先生に言われたんでしょうね。その甲斐もなく早死にしてしまって何とも無念なお話でありますが、でまたこの1986年というのは岡田有希子が飛び降り自殺した年でもあるんですよね。人気絶頂の頃だっただけに、多感な少年たちは大いに衝撃を受けて、みんな後追い自殺をしたものでありますが、幸い、僕は岡田有希子にはそれほど入れあげておりませんでしたので、こうして今日まで無事に生き延びているんですけどね。 とまあ、この年の歌謡界というのは何とも悲喜こもごもでありますなぁ。

 で、一方、出版業界に目を転じてみるとですね、この年の最大のベストセラーと言えば、何と言っても 「スーパーマリオブラザーズ完全攻略本」 でありましょう。マリオの発売は前年の85年だったんですが、攻略本が売れたのはこの年だったんですな。マリオについて書きたいとこは山ほどあるんですが、えーと…、特に書くことを思いつかないので先に進みますが、86年によく売れた本を調べてみて、その著者としてちょっと意外な人の名前を見つけました。細木数子著 「自分を生かす相性・殺す相性」 「運命を読む六星占術入門」 「大殺界の乗りきり方」 。こんな昔から稼いどったんかい、このオバハン。…と思わずにはいられませんが、この年、なんと3冊もベストセラーを出しております。その他にはですね、 「うつみ宮土里のカチンカチン体操」 なんてのもあって、ロクな本が売れてないな。…と思わずにはいられません。 で、一方、ヒット商品にはどのようなものがあったのかというと、えーと、シャンプードレッサーですか。え?そんなもん売れたっけ?…という気がするんですが、この頃はですね、 “朝シャン” というのが流行ったんですよね。朝にシャンプーをする。それが朝シャンなんですが、男たるもの、そんなしゃらくさいこと出来るかー。 …と、当時、多感な少年だった僕は思っておりました。朝立ちしても、朝シャンはしない。…というのが座右の銘だったんですが、いや、 “イカ缶はいかん。” はどうした?…とか、そういう細かい話は置いといて、どうせ僕のこの堅固としたポリシーは、 「朝シャンもしないなんて、不潔ぅー。」 …とギャルに言われて、あっさりと撤回することになるわけですしね。 で、使い捨てカメラの “写ルンです” が発売されたのもこの年なんですね。こんなオモチャみたいなもので写るんかい?…と、多くの人が疑問に思ったものでありますが、ちゃんと写るんですよね、これがまた。ま、画質自体は決して褒められたものではなかったんですが、他にはえーと…、毛玉取り器の “とるとる” …って、どうもこの年は文学界と同様、製造業の世界でもさほど目立つような目覚ましいヒットは生まれなかったようですね。

 最後に流行語について触れておきたいと思うんですが、こちらのほうは大豊作でありますな。流行した翌年には死語と化していることの多いこのジャンルにおいて、20年後の今でも立派に使われている言葉がこの年に多く誕生しております。家庭内離婚、究極、檄辛、テレクラ、プッツン…なんてのがそうなんですが、プッツンというのは片岡鶴太郎だったんですか。でもって、 “新人類” という言葉が登場したのもこの年でありまして、流行語部門・金賞の受賞者が西武ライオンズの清原和博、工藤公康、渡辺久信だというのだから、いやあ、時代を感じさせますなぁ。 とまあ、そんな時代にこの世に生を受けた今年の新成人であるわけですが、あ、今年の新成人って、1985年に生まれた人のことを言うんですか? とすると、僕の今日の話はまったく意味がなかったということになりますが、日本の首相が誰だって、80年代は帰らない〜♪ (おニャン子クラブ 「ショーミキゲン」 より。) ということで、みんな、過去を振り返るのはヤメようじゃないか!

 ということで、今日はブッカー・リトルです。ブッカーと言えば1986年当時の物価はピース (10本入) が120円だったそうですが、次回、どうしても他にネタが思い浮かばなかった場合は1985年という年を振り返ってみたいと思うんですけどね。思い出というのは人生において、とっても大切なものですからね。 で、今回紹介する 『ブッカー・リトル・4・アンド・マックス・ローチ』 というアルバムは1958年に作られているんですが、この年がリトルにとってどういう意味を持っていたのかと言うと、クリフォード・ブラウンの後釜としてマックス・ローチのグループに参加したのがこの年の8月であります。つまり本作はその直後の吹き込みということになるわけですが、有名なタイム盤 『ブッカー・リトル』 の録音が1960年なので、自己のスタイルを確立する以前のフレッシュな彼の姿を聴くことが出来る、歴史的に見て非常に興味深い1枚であると言えるでしょう。ま、はっきり言ってしまえば、何だかちょっと今ひとつ完成度の高くない作品だったりするんですが、しょうがないぢゃん。手持ちのリトルのアルバムでまだ紹介してないのはこれしか残っていないんだしー。 ジャケットのセンスもよくないですよね。机の上にトランペットと写真立て…という構図は、一工夫すればなかなかイカしたデザインになるような気もするんですが、何の工夫もなされていないので、単なるロー・インパクトな地味な仕上がりとなってしまっております。で、写真立ての中身もよくないですよね。 ここに、おニャン子クラブのポートレートでも持ってくればそれなりに華やいだものになるんですが、ただのオッサン4人組ですからね。ブッカー・リトル・4・アンド・マックス・ローチだから本来なら5人いなければならない筈なのに、4人組。誰が村八分にされているのかと言うと、さすがにリトルとローチはこの中に入ってますよね。トミフラの顔も見えるので、残りはジョージ・コールマンが、アート・デイビスということになるんですが、僕はどうもジョージ・コールマンのような気がしますな。 “はば” にされがちなキャラですもんね、ジョージ・コールマンって。 とまあそんなことで、あまり気乗りはしないんですが、とりあえず最初から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目はですね、マイルス・デイビスのオリジナル、 「マイルストーンズ」 でありますな。ただしこれはマイルスの 「マイルストーンズ」 というタイトルから誰もが頭に思い描くあっちのほうの 「マイルストーンズ」 ではなくて、そっちのほうの 「マイルストーンズ」 なんですよね。パーカーと共演していた頃に作った同名異曲なんですが、あえてこっちのほうの 「マイルストーンズ」 を選んだところに、ブッカー・リトルのビ・バップに対する熱い思いを見た!!…ような気がします。個人的にも能天気で単純なあっちの 「マイルストーンズ」 よりも、スリリングでメロディアスはこっちの 「マイルストーンズ」 のほうが好きで、急速調のテーマ部におけるリトルの吹きっぷりからはバップの香りが漂ってきます。バップの香りというのはアレですよね。スーっとして、肩凝りとか打ち身、筋肉痛に効きそうな…って、それはバップでなくてハップの香りなんですが、適当で粗削りなヘッドアレンジがいかにもバップしていていいと思います。サビの部分のハモり具合は十分にハード・パップしていると言っていいと思いますが、最初にソロを取るリトルのプレイからはブラウニーの影響から既に脱しつつある斬新なスタイルを感じ取ることが出来ます。彼がドルフィーと共演したのはずっと先のことだと思うんですが、リトルの吹くフレージングにドルフィーの方法論と同じ匂いを嗅いでしまうのは僕の考え過ぎでありましょうか? ちなみに僕は先日、志賀高原の熊の湯で万座温泉と同じ匂いを嗅いだような気がするんですが、ま、あれはどちらも卵が腐ったような硫化水素の匂いだと思うので、考え過ぎではないと思うんですけどね。 で、いかにもヤングな若者らしい覇気のあるリトルのソロに続いて登場するジョージ・コールマンは、何だか今ひとつ切れ味とアイデアに欠けるような気がしないでもなくて、そんなことだからジャケットにも写真を載せてもらえないんだって!…と思わずにはいられません。いや、姿が見えないのが彼と決まったわけではないんですけどね。 で、続いてトミフラの無難なピアノ・ソロがあって、 tp→ds→tp→ds の4バースがあって、派手なローチと地味なアート・デイビスとの絡みがあって、テーマに戻って、おしまい。いや、以前に聴いた時の、何か今ひとつやな。…といった思い込みとは裏腹に、なかなかよい演奏ではありませんかー。

 で、2曲目は歌モノの 「スウィート・アンド・ラブリー」 でありますか。甘くてラブリー。いいですよね。僕は甘くてラブリーなものが大好きな、ちょっぴりオチャメでキュートな37歳♪…なんですが、ただこの曲自体はそれほど好きではないんですけどね。ここでのリトルはミディアム・テンポで料理しているんですが、テナーが抜けたワン・ホーン編成になっているんですね。またしてもジョージ・コールマンは仲間外れなわけですが、いかにもリトルらしい不安定にも聞えてしまう独特の節回しで演奏されるテーマ部は、ちょっと微妙ですかね?枯れ木も山の賑わい…という諺もあるくらいなので、ジョージ君がいたほうがよかったかな?…という気がしないでもないんですが、アドリブ・パートに入ってからのリトルのフレージングは基本的にテーマ・メロディを踏襲しつつも、時折、かなりアウトになったりして、何ともアウト、セーフ、ヨヨイのヨイでありますな。楽しいですからね、野球拳は。野球拳とバター犬とではどちらが楽しいかと言うと、生憎、僕はバター犬のほうは体験したことがないので何とも言えないんですが、続くトミー・フラナガンのソロは何ともオーソドックスでいいですよね。さすが、歌モノをやらせればトミフラか、歌丸か。…と言われているだけのことはありますな。玉を転がすようなタッチは、ソープ嬢としても十分に勤まる?…といった感じでありまして、ということで、テーマに戻って、おしまい。いや、2曲目はやや地味ではありましたが、今のところなかなか順調なのではなかろうかと。

 3曲目はリトルのオリジナルで、 「ラウンダーズ・ムード」 という曲です。タイトル通り、とってもラウンダーなムードの曲でありまして、ハード・バピッシュでもあり、モーダルなようでもあり。…といったところがいかにもこの人らしいですね。ソロ先発はジョージ・コールマンなんですが、この人のやや平坦なプレイがアルバム全体の印象を地味にしているような気がしないでもなくて、でもまあ、すぐに終わってリトルのソロになるから、ま、いいとして、それにしても今日のリトル君ってば、いつになくキャラが明るいですな。晩年…と言っても23歳で死んでいるから必要十分に若かった筈なんですが、後年の彼はもう少し落ち着いていて、陰気臭くて、辛気臭い雰囲気がありましたからね。これが若さということなんだと思いますが、続くフラナガンのソロもきびきびしていて、きび団子好きの人にはいいかも知れません。で、その後は1曲目と同様、地味なアート・デイビスと派手なローチとの絡みになるんですが、もしかしたらこれは絡み合いを意図したものなのではなくて、本来ならベースが前面に出てくるべきところをローチが前に出過ぎて、こういう形になっているのかも知れませんね。目立ちたがりのキャラですからな、ローチ。僕の場合、朝立ちしても目立たない。…を座右の銘にしている極めて控えめな性格でありますので、とても真似は出来ません。しかし何ですな。朝立ちしても目立たない…って、そういう状態なのに、ちっとも分からないサイズだよね。…という意味だと誤解される恐れがあるので、今後、これを僕の生きて行く指針にするのはヤメにしようと思います。とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。

 4曲目の 「ダンジョン・ワルツ」 もリトルのオリジナルなんですが、こういうワルツ・タイムの曲というのはいかにもこの人らしいですよね。なかなか複雑な構成の曲であるな。…といった感じがするんですが、こういう小難しい系のサウンドを得意としていますからね。おりこうさん…と揶揄まじりに評されることもある所以なんですが、このアルバムの中ではこの曲がもっともリトルらしさを感じさせる出来であると言えるかも知れません。で、トランペットのソロに続いてジョージ・コールマンの登場となるんですが、ま、彼にしては精一杯ヴァーティカルなフレージングとなっていて、悪くないんぢゃないですかね?…と、たまには褒めておくことにしますが、実は個人的にはわりと好きなキャラだったりするんですよね、ジョージって。ジョージ君となら情事をしてもいいかな?…とは絶対に思わないんですが、一緒に障子張りくらいならしてもいいと思っております。 「ほら、ちゃんと桟を霧吹きで濡らさなきゃ駄目よぉ。」 「ゴメン、さばりん。」 …とか言って、いや、意外と楽しいかも知れません。とまあそんなことで、以下、ピアノ、ベースとソロが続いて、テーマに戻って、おしまい。 で、続く 「ジュエルズ・テンポ」 もリトルのオリジナルなんですが、これまたやや捕えどころのないメロディでありますな。悪くはないけど、そんなによくもない。…といった感じで、リトル、ジョージ・コールマン、トミー・フラナガンと、ま、ここまでの曲と似たようなソロが展開されております。ここに来て、僕のレビュー意欲は急速に薄れてしまったと言わざるを得ませんが、えーと、トランペットとドラムスの4バースがあって、ドラムスとベースの絡みがあって、テーマに戻って、おしまい。

 さ、ラストですな。ここのところ、やや疲労感と被帽感と残尿感を感じる演奏が続いたんですが、あ、被帽感というのはあれです。何だか帽子を被っているような感じがするな。…という頭痛の症状のひとつなんですが、僕も仕事中にヘルメットを被っていると、よく被帽感を感じてしまいます。ま、ヘルメットというのも帽子の一種のようなものなので病気ではないと思うんですが、ヘルメットを被っているとちょっぴり頭が重いような気もするので、やっぱり軽い病状が出ているのかも知れません。いや、もしかしたらただヘルメットが重いだけの話なのかも知れませんけど。 とまあそんなことはどうでもよくて、身も心も疲れてしまった時はですね、やはりしみじみとしたバラードがいいと思います。とまあそこで、 「ムーンライト・ビカムズ・ユー」 でありますな。ジミー・ヴァン・ヒューゼンの作品としてはマイナーな部類ではないかと思いますが、僕はこの人の書いた曲がとっても好きなんですよね。作曲家としてはキダ・タローの次くらいに才能がある人だと思うんですが、この 「月光はあなたになる」 というのもいいですよね。タイトルの意味は今ひとつよくわからんのですが、トミフラの玉を転がすようなタッチの珠玉のイントロに続いて、リトルがワン・ホーンでしみじみとテーマ・メロディを歌い上げます。ここにはですね、愛と哀しみがあります。 “Love and sorrow” 。 彼がその短い人生において捜し求めていたのは、この2つではなかったのか?…と思わずにはいられませんが、ちなみに僕が求めているのは “愛と早漏” だったりするんですけどね。早くたってぜんぜん構わないのぉ♪…って、それが真の愛だと君は思わないか?

 とまあそんなことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 タイム盤 『ブッカー・リトル』 の世界を頭に描いていると、ちょっと期待外れかも知れません。 “Love and sorrow” は最後の1曲くらいですからね。その替わりに、ここには若いリトルの姿があります。希望と無謀は紙一重だったりするんですが、ま、この若者の洋々たる前途を温かく見守ってあげようではありませんか。…って、ま、この3年後には死んじゃうんですけどね。


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