THE RETURN OF HOWARD McGHEE (BETHLEHEM)

HOWARD McGHEE (19//)

THE RETURN OF HOWARD McGHEE


【パーソネル】

HOWARD McGHEE (tp) SAHIB SHIHIAB (bs) DUKE JORDAN (p)
PERCY HEATH (b) PHILLY JOE JONES (ds)

【収録曲】

GET HAPPY / TAHITIAN LULLABY / LOVER MAN / LULLABY OF THE LEAVES
YOU'RE TEASING ME / TRANSPICUOUS / RIFFTIDE / OO-WEE BUT I DO
DON'T BLAME ME / TWEEDLES / I'LL REMEMBER APRIL

【解説】

 いよいよ、伊予柑の季節でありますなぁ。いや、伊予柑の旬は2月頃だったような気がするので、僕がこれを書いている11月現在、いよいよ、伊予柑の季節でありますなぁ。…と書くのはちょっと気が早いような気もするんですが、みかんと、伊予柑と、キンカン。この3つの中では、僕はみかんが一番好きです。キンカンが一番好きではなくて、伊予柑は2番目ということになります。これがもし、みかんと、伊予柑と、キンカンと、昆虫図鑑ということになると、伊予柑は昆虫図鑑に抜かれて3番目ということになって、更にここに水上置換と、与謝野鉄幹と、目黒寄生虫館が加わると、伊予柑は6番目ということになって、どんどん順位が下がってしまうんですが、つまりまあ、僕はあまり伊予柑が好きではないんだけど、でもまあ、キンカンよりはマシ?…と思っているわけなんですけどね。

 伊予柑というのはですね、柑橘類の果物ですよね。柑橘というのは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の総称なんだそうですが、ミカン類、雑柑類、オレンジ類、グレープフルーツ類、香酸カンキツ類…と、いろいろな種類があるうち、伊予柑はタンゴール類という、かなりマイナーなところに属しているようです。タンゴール。何となく痰切り地蔵のような名前でありますが、いや、タンゴールと痰切り地蔵では、最初の “たん” しか合ってないぢゃん。…という気がしないでもないんですが、タンゴールというのは “交配する” という意味なんだそうですね。(ウマ+ロバ)÷2=ラバ、(ヒョウ+ライオン)÷2=レオポン、(チンパンジー+人間)÷2=オリバー君と、動物の世界では限られた組み合わせでしか合いの子が誕生しないんですが、植物の世界ではわりと何でもアリのようで、柑橘の世界のタンゴールというのはですね、みかん類とオレンジ類が交配した結果、出来ちゃったようなんですけどね。

 みかん類には “うんしゅうみかん” “マンダリンオレンジ” “ポンカン” などがあり、オレンジ類には “バレンシアオレンジ” “ワシントンネーブル” があって、これらの柑橘類たちが乱交パーティを繰り広げると3×2=6通りの“みかん×オレンジ系タンゴール”が誕生する可能性があるんですが、伊予柑がどの組み合わせで生まれたのかは、はっきりしていないんでそうです。もう、とっかえひっかえで、誰と誰とがどうなっちゃんだか、よくわからない状態だったんでしょうな。嘆かわしいことでございます。…という、倫理的な問題はとりあえず置いといて、なるほど、普通のみかんより大きくて皮も分厚いんだけど、何とか手で皮が向けないこともないよね。…という伊予柑の特徴は、まさしくオレンジとみかんを足して2で割ったものだったんですね。同じタンゴールの仲間には “清美” という種類もあって、これも世間では “手で皮が剥けるオレンジ” として知られているわけですが、さらにこの清美とポンカンとを掛け合わせたものが、 “デコポン” ということになるわけですね。このデコポンは別名 “キヨポン” とか “ヒメポン” と呼ばれることもあって、ここまで血筋が怪しくなってしまったものはもはやタンゴール類の仲間には入れてもらえずに、分類上は “雑柑類” ということになっちゃうようです。

 “夏みかん” や “ハッサク”、イスラエルから来た柑橘類として知られる “スウィーティー” なんかも雑柑類であるようで、 これはえーと…、グレープフルーツとブンタンの雑種でありますか。ブンタンなんてやつは実に何とも垢抜けないキャラで、無骨で無口で田舎臭くて、ソッチ方面に関してはまるっきりオクテなんだよね。…と思って陰で馬鹿にしていたんですが、ああ見えて、裏ではこっそりカリフォルニア・ギャルなんかとよろしくやっていたんですな。侮れません。それにしても日本の九州あたりの出身と思われるブンタンと、アメリカ西海岸出身のグレープフルーツとの子供が、どうしてイスラエルなんかで生まれたのか、その経緯が今ひとつよくわからんのですが、ちなみにスウィーティーというのは商品名で、正式には “オロブランコ” という品種なんだそうですね。生まれたのはやはりカリフォルニアなんだそうで、その後、何らかの政治的な事情でイスラエルに移住したというのが実情のようで、1958年生まれということなので、これを書いている2005年現在で47歳ということになります。いや、中年ですなー。

 で、一方、スウィーティーちゃんの父親にあたるブンタンはですね、菅原文太が好きなんだそうです。ブンタンだから菅原文太って、発想があまりにも安易過ぎやしないか?…と思わずにはいられませんが、ま、所詮は柑橘類の考えることですからね。おれんちにはオレンジが一杯とか、柚子は融通が利かないとか、その程度のネタを考えるのが精一杯なんでしょう。 とまあそれはともかく、 “ブンタン” というのは “ボンタン” と同じものなのか?…というのが、僕の子供の頃からの疑問でありまして、近くのスーパーで “ボンタン飴” を買ってきて食べる度に、あれ?ボンタン飴だっけ?ブンタン飴だっけ?…と、悩んだものなんですよね。いや、近くのスーパーで “ボンタン飴” を買ってきて食べているわけだから、それはボンタン飴であるに違いないんですが、そういえば “ブンタン飴” というのも無かったっけ?…と、ふと疑問に思ったりしていたんですよね。そこでちょっと調べてみたんですが、結論から言いましょう。同じでした。 “ブンタン” と “ボンタン” は同じものでありました。ま、恐らく “ブンタン” と “ボンタン” は同じものなんだろうな。…と思っていたので、予想通りの結果だったんですが、 “ブンタン” と “ボンタン” が同じなだけではなくて、実は “ザボン” というのも同じものだったんですね。いや、ちっとも知りませんでした。ブンタンはボンタン飴にして食べるものだし、ザボンのほうはザボン漬けにして食べるものだから、まったく別の果物だとばかり思っておりました。ブンタンとザボンが同じものだということは、ブンタンをザボン漬けにして食べてもいいし、ザボンをボンタン飴に加工しても、何ら問題はないということになりますよね。そんないい加減なことでいいのか?…と思わずにはいられませんが、ま、別にそれはそれでいいような気もするんですけどね。

 で、柑橘類には他に “セミノール” というのもあったりします。手で皮が剥けるオレンジというのはもしかして、 “清美” ではなくて、こっちのほうではなかったか?…という気がしてきたんですが、ま、もし間違っていたとしてもそれほど大した問題ではないんですけどね。 “清美” だってその気になれば手で皮が剥けないこともないような気がするしぃ。…ということで、訂正もしなければ、お詫びをする気もありませんが、このセミちゃんはですね、柑橘類の中ではタンゼロ類ということになっております。いや、また新しい分類が登場しましたね。これが一体どういう類のものであるのか、もはや調べる気力も無くなりつつありますが、セミノールというのは “ダンカングレープフルーツ” と “ダンシータンゼリン” との雑種なんだそうですね。 “ダンカングレープフルーツ” や “ダンシータンゼリン” というのが一体どのような種類の柑橘類であるのか、もはや調べる気力が完全に無くなってしまったので、話を原点に戻しましょう。 “うんしゅうみかん” 。これこそ、日本における柑橘類の基本であるわけですが、改めて考えてみると、僕たちは “うんしゅうみかん” について、あまりにも無知であるような気がするんですよね。どうして “温州みかん” と書いて “うんしゅうみかん” と読むのか?…というところからして、正確に説明出来る人はそれほど多くないような気がします。

 柑橘の名産地であった中国浙江省の温州に因んでウンシュウミカンと命名された。 はい、 “うんしゅう問題” はこれで解決しました。中国の地名だったんですね。どうして “温” と書いて “うん” と読むんや?そんなん、おかしいやん。…と文句を言ってみたところで、漢字の本場である中国人がそう決めてしまった以上、日本人の僕にはどうすることも出来ないわけでありまして。ただ、日本の柑橘類の代表選手のように思われていた “温州みかん” が中国由来だったとは、ちょっとショックでありますな。ただ、この温州みかんは名前は温州でも、原産地は鹿児島県だと言われているそうで、だったら “薩摩みかん” とか、そういう名前にしておけばよさそうなものなんですけどね。で、いろいろと調べてみたところ、温州みかんにはそれほどネタになるような話がないね。…ということが明らかになったので、仕方がないので話を “” に転じましょう。いや、いよいよ、梨の季節でありますなぁ。僕はけっこう梨が好きなんですよね。どれくらい好きなのかというと、水上置換と、与謝野鉄幹と、目黒寄生虫館の次くらいに好きです。

 現在の日本における生活には、和式のものと洋式のものとが混在しております。家の中を見回せば、畳を敷いた和室もあれば、フローリングの洋室もあるし、朝に御飯と味噌汁と漬物の和食を食べたと思ったら、夕食は “洋食屋さんのハンバーグ” だったりします。家では洋式便器に座っていても、外に出れば和式便器をまたがなければならないこともあるし、で、愛国主義者の僕としてはですね、やはり和風の暮らしを大切にしたいと思うんですよね。ロリ系サイトは洋ロリよりも断然、和ロリのほうがいいと思うしー。でもまあ、便器は最近すっかり洋式に慣れちゃったし、食べ物もゴボウのキンピラだとか、ひじきの煮たのなんかよりも、アメリカンドッグだとか、フランクフルトなんかの洋食のほうが嬉しいんですけどね。とまあそんなことで “梨” なんですが、梨にもですね、和モノの梨と洋モノの梨とがありますよね。和モノの梨は “梨” 、洋モノの梨は “洋梨” と呼ばれて区別されているんですが、最近では洋梨を見掛けることも珍しくなくなりました。実を言うと僕はこの歳になるまで洋梨というのを食べたことがなくて、いや、サンガリアの洋梨ジュース “梨洋(なしひろし)” というのは飲んだことがあるんですけど。あ、サンガリアではなくて、チェリオでしたかね?とにかくまあ、僕はこの歳になるまで洋梨というのを食べたことがなかったんですが、先日、万座ハイウェイの休憩所で “ラフランス” を見掛けて、モノは試しだと思って買ってみることにしました。

 ラフランスという果物は、外観は確かに、あ、ラフランスやな。…といった感じなんですが、皮を剥いてしまうとまるっきり “ただのリンゴ” でありますな。で、ただのリンゴやな。…と思って口に入れると、味も歯ざわりもただのリンゴとは違っているので、「ん?」…と、怪訝な気持ちになるんですが、洋梨というのはアレですね。梨の味がする、まずいリンゴのようなものだったんですね。僕はリンゴでも歯ごたえのない柔らかいやつは駄目なんですが、洋梨の歯ごたえというのはまさしく、まずいリンゴそのものでありました。ちなみに外国の人たちは自分たちが食べている梨のことを “洋梨” とは呼ばないそうですね。ま、外国のものを “洋” と表現するのは日本だけだし、外国の人たちにとって自国の梨はちっとも洋モノではないので、洋梨という言い方をしないのは当然なんですが、では何と呼んでいるのかというと、 “バタリーペア” 。つまりまあ、バターのようなねっとりとした舌触りのペア (梨) というわけでありますな。バターの舌触りなんて、僕はバター犬ではないのでよくわからんのですが、バターのような梨というのは何となくわからんでもないですよね。一方、日本産のシャキシャキした歯ざわりの梨のことはですね、 “サンドペア” と呼んで馬鹿にしているんだそうでありまして。オー、ノー!まるで砂を噛んでいるような梨やんけ!…と、ヤンキーの兄ちゃんは日本の梨を食べて騒いでいるんだそうです。とんでもない話だと思いますね。

 洋梨というのはジュースにしたり、タルトにしたりするにはいいかも知れませんが、ナマで食べるならやっぱり日本の梨のほうがいいですね。今後、万座でナマのラフランスを見掛けても、決して手に取ることはないでしょう。かくして洋梨は僕にとって、要無しの果物となったのでありました。おしまい。

 ということで、今日はハワード・マギーでありますが、それにしても今日の前半ネタのオチは、あまりにも安易でありましたなー。ハワード・マギーというのはアレですよね。マギー司郎の弟子で、尚且つ、マギーブイヨンの発明者として知られている人ですよね。…と言っているのと、ほとんど同レベルですもんね。ところで僕は今までずっと、マギー司郎のことを “史郎” だとばかり思っておりました。マギー史郎、マギー史郎と、しつこいくらい何度のこのコーナーで書いてしまいました。あれ?もしかして “司郎” だったっけ?…と思って調べてみて、初めて自分の間違いに気付いたんですが、Google で “マギー史郎” を検索したところ、 “もしかして: マギー司郎” と、ツッコミを入れられてしまいました。Google ごときに間違いを指摘されるとは、はなはだ不本意でありますが、過去のアヤマチは今さら消し去る事は出来ません。とりあえずマギー司郎には、漢字を間違えて、ごめんねシロー。 …と謝っておきたいと思いますが、岸辺シローには別に謝らなくてもいいと思うんですけどね。 そんなことでまあ、今日は 『ザ・リターン・オブ・ハワード・マギー』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、そうですか。帰ってきましたか、マギー。ちなみにこのハワード・マギーという人は1918年にオクラホマの辺りで生まれたそうでありまして、年齢で言うとディジー・ガレスピーと だいたい同じくらい。…ということになるようです。若かりしヤングだった頃はロイ・エルドリッジの影響を受けたスイング派のスタイルだったようですが、ガレスピーの影響でバップに目覚めてしまったと。で、ファッツ・ナヴァロと並ぶ、バップ・トランペットの期待の星☆…と目されていたんですが、クスリとか、掏りとか、ゴマすりとかの悪癖が祟って活動休止を余儀なくされ、ジャズ・シーンから姿を消してしまったと。が、1955年、久々の復活を遂げたのがこの 『ザ・帰ってきたハワード・マギー』 であるわけですが、ま、結局、この年に2枚ほどのアルバムを残しただけで、また4年間にわたって姿を消しちゃうことになるんですけどね。

 で、つかの間の復活を捉えたこのアルバムでありますが、サヒブ・シハブデューク・ジョーダンパーシー・ヒースフィリー・ジョー・ジョーンズというハード・バップ系の先鋭でバックを固めて、さぞや洗礼されたファンキーな演奏を聴かせてくれるのでは?…ということが期待されたんですが、その思いはですね、1曲目の 「ゲット・ハッピー」 が始まった瞬間に打ち消されてしまいました。何すか、この、ショぼい演奏は?…と、僭越ながら僕はそう思ってしまったんですが、あ、去年の健康診断で引っかかっていた潜血がですね、今年は大丈夫になっておりました。ま、高尿酸値と高コレステロールのほうは相変わらずだったんですが、少なくとも潜血反応が消えたのは喜ばしいですよね。…って、僭越という言葉で、つい関係ないことを思い出してしまったんですが、僕はそもそもこの 「ゲット・ハッピー」 という曲があまり好きではないんですよね。ただハッピーなだけで哀愁が感じられないところが駄目だと思うんですが、ここでのマギーは何とも垢抜けないトーンでこの曲を吹いておりまして、いや、アドリブ・パートに入ってからはまずまずだと思うんですが、ジャズに対する造詣が手賀沼くらい浅い僕はどうしても、テーマ部の印象だけで好悪を決めてしまうんですよね。でもまあ、マギー、シハブ、ジョーダン、で、再びマギーと続く各自のソロはどれも溌剌としておりまして、悪くない出来だとは思うんですけどね。思ったよりも純正バップな演奏なんだね。…ということで、僕のアレとはちょっぴりソレだったんですが、これはこれでアレだとは思います。

 次、マギーのオリジナルで、 「タヒチアン・ララバイ」 。これはいいです。いかにもタヒチアンらしいラテンのリズムがとってもハワイアンな感じでありまして、いや、タヒチは別にラテンでもハワイでもなくて、どちらかというと、ひたちなか市に近いところであるような気もするんですが、この曲のリズムはラテンでありますな。こんな曲で子供が寝付くのか?…というのはやや疑問ではありますが、ま、 「五木の子守唄」 よりはマシなような気もするんですけどね。おどんが打死(うっちん)だば、道端(みちばた)いけろ〜♪…って、そんな暗い歌、怖くて寝れへんちゅうねん!…みたいな。それに比べればまだ、タヒチの子守唄はお子様にとって安心な歌であると言えるでしょう。マギーのミュートとシハブのバリサクのユニゾンで演奏されるテーマ部は哀愁味があって、とてもよいと思います。で、ソロ先発はシハブでありますな。朗々とした吹きっぷりがとってもタヒチアンでいいと思います。続くマギーのソロはオープン・トランペットですかね?メロディアスな展開には円熟味が感じられて、そこのところがとってもタヒチアンでいいと思います。続くデューク・ジョーダンのピアノは、いかにもこの人らしい前に出過ぎない控えめなところが常陸宮(ひたちのみや)親王っぽくていいと思います。ということで、テーマに戻って、おしまい。

 3曲目は 「ラバー・マン」 ですか。 “ゴム男” でも、 “ウマとロバとの雑種男” でもなくて、 “愛する男” という意味ではないかと思うんですが、 ジャズの世界のジャズ界ではですね、 “パーカーのへろへろセッション” で有名ですよね。ヘロインが切れてヘロヘロになったパーカーがウイスキーを大量に飲んで意識朦朧とした状態で 「ラバーマン」 を演奏してぶっ倒れ、逮捕されて精神病院に強制入院させられて、カマリロ病院でリラックスすることになるんですが、その “ラバーマン・セッション” で競演していたのが他ならぬハワード・マギーでありますな。彼はそうした過去の嫌な思い出には捉われず、淡々と歌いあげている。…と、日本語ライナーで大和明クンが書いておりますが、僕はけっこう “やまと” が好きだったりするんですよね。いや、明クンではなくて、 「味カレー」 を作っている会社の “やまと” のほうなんですけど。で、ここでのマギー君はですね、過去の嫌な思い出には捉われずに淡々と歌いあげているような気がしますね。サヒブ・シハブはお休みで、ジョーダンのソロもなくて、本当に淡々とした演奏やな。…といった感じなんですが、ま、それはそれで、アレだと思います。 ということで、4曲目。タヒチの子守唄に続いて、今度は 「木の葉の子守唄」 でありますか。いい曲ですよね、こりゃ。日本人の感覚からすると、木の葉と子守唄とは、ぜんぜん結びつかないような気もするんですが、それはそれ、これはこれとして、日本人好みの哀愁味を帯びたいい曲だと思います。この曲をマギー君はミディアム・ファストで料理しておりまして、テーマ部はトランペットが中心で、後半にシハブのバリトンが絡んでくるという形ですね。で、ソロ先発はマギーです。バリバリ吹くというよりも、どちらかというと味で勝負の味カレーといったタイプなんですが、どことなく乾いた感じがするところがマギーでありますな。中間部にジョーダンの美しいピアノ・ソロを挟んで、後半も再びマギーが登場して、なかなか溌剌としたプレイを聴かせるんですが、シハブ君はソロイストとしての出番がなくて、テーマの再提示もなくて、ソロからそのままエンディングに入るという構成は、なかなかよく考えられているな。…という気がしないでもありません。

 次。 「ユア・ティージング・ミー」 はマギーのオリジナルでありますな。 “tease” というのは、いじめるとか、からかうとか、せがむとか、けば立たせるとか、逆毛を立てるといった意味であるようですが、 「あなたは私をけば立たせる」 ではなくて、 「あなたは私を悩ませる」 と訳したほうが何だか詩的で、素敵ですよね。(男の気をそそる)なまめかしい女、性的に思わせぶりをする人という意味もあるようなので、そっち方面で悩まされるんだと思いますけどね。悩ましいと言えば、名古屋には “納屋橋饅頭” というのがありますが、僕はどちらかというと桑名のとらや饅頭のほうが好きです。…という話はぜんぜん関係ないので別にどうでもいいんですが、この曲はアレです。すごく綺麗なバラードです。マギーはクリフォード・ブラウンのウォームビズな温かみを感じさせるプレイを展開しておりまして、えーと…、と、その先を考えているうちに終わっちゃうような、ごく短いちょっとした小品なんですが、こういうちょっとした演奏というのもですね、悪くないと思います。 ということで、6曲目。A面の最後を飾るのはこれまたマギーのオリジナルで、 「トランスピキュアス」 という、難しい名前の曲でありますな。50年代初めに極東ツアーに参加した時、韓国で作った曲なんだそうですが、ちっとも韓国的ではない、明るいバップ曲といった感じの仕上がりです。トランペットとバリサクのユニゾンでテーマが演奏されて、で、ソロ先発はジョーダンですか。…と思っていると、すぐにシハブが出てきて、マギーが出てきて、何とも展開が早いんですが、ま、2分33秒ですからね。中ではマギーのソロ・パートがわりと多くのスペースが割かれているんですが、と言ってるうちにテーマに戻って、あっという間におしまい。いや、バップですな、こりゃ。

 で、B面のトップを飾るのはですね、 「レディ・ビー・グッド」 のコード進行を借りてコールマン・ホーキンスが作った 「リフタイド」 という曲です。いや、これもバップですな。いや、これは河童ですな。…といった感じはまったくしないので、河童ではなくて、バップ。そういうことでいいと思います。フィリーのタイコで始まって、急速調でテーマが演奏されて、しばらくマギーとシハブが絡み合ったりして、で、ソロ先発はマギーでありますか。で、ソロ2番手はシハブでありますか。いずれも、本アルバム屈指と言ってもよいエキサイティングな展開となっておりまして、続くジョーダンのソロも地味ながらなかなか頑張っていると思います。その後、マギーとシハブの4バースがあって、後半に展開するマギーとシハブのフォー・バースが聴きもの。…と、大和明クンが書いているのは、まったくもって正解だと思います。で、その後、フィリーの派手なドラム・ソロもフィーチャーされて、テーマに戻って、おしまい。いや、演奏時間が5分35秒となると、なかなか充実した充足感が得られるものでありますなぁ。…という気がしないでもありません。

 次。 「ウー・ウィー・バット・アイ・ドゥ」 。 “oo-wee” だから、 “ウー・ウィー” ではなくて、 “オオ・ウェェ” ではないか?…という気がしないでもないんですが、日本盤の表記に従いました。マギーのオリジナルで、グルーヴィな演奏だ。…と、大和クンが書いているとおり、マギーのオリジナルで、グルーヴィな演奏です。ミディアム・テンポで、テーマ部の演奏がグルーヴィです。マギー、シハブとソロが続いて、トランペット→ドラムス→バリサク→ドラムスの4バースがあって、グルーヴィです。後半、4バースのフォーマットが無茶苦茶になって、なし崩し的にマギーのソロになったりするところが、洋ナシ的になし崩しだと思います。ちなみに塩サバ2号一家は万座土産のラフランスを、さすがは高級果物や!…と、感動しながら食べたんだそうでありまして、いや、蓼食う虫も好きずきでありますなぁ。“梨の味がする、まずいリンゴのようなもの”ではなくて、 “桃の味のする梨” というふうに捉えたようでありますが、 なるほど、リンゴではなくて桃だと思ってたべれば、あのバタリーな食感も気にならないかも知れませんな。 ということで、9曲目はスタンダードの 「ドント・ブレイム・ミー」 です。 “イントロの魔術師” の異名を取るジョーダンの弾く前奏が何とも言えずに絶妙なんですが、ま、さしものジョーダンも魔術師としての実力はマギー司郎の足元にも及ばないんですけどね。そもそも “イントロの魔術師” という呼び方自体、僕が 『塩サバ通信』 で2回ほど書いているだけで、ちっとも世間には浸透していないような気もするんですが、えーと、テーマ部はですね、前半と後半をマギーとシハブが吹き分けるという形を取っておりますな。酸いも甘いも噛み分けた、すっぱい甘夏煎餅みたいな実に味わい深いバラード・プレイが展開されておりまして、で、ここでの注目点はやはりジョーダンのソロですかね?マジシャンとしては今ひとつでも、ピアニストとしては一流でありまして、短いながらも実に印象的なピアノ・ソロを堪能することが出来ます。いや、よいですなー。

 で、10曲目の 「トゥイードルズ」 はハード・バップ的フィーリングによるマギーのオリジナルである。…と、大和クンが書いているとおりのマギーのオリジナルであります。…と、ここまで書いたところで、ふとCDの解説紙ペラを眺めて気が付いたんですが、パーソネルのところのサヒブ・シハブの持ち楽器が (ts) となっておりますな。確かにバリトン・サックスの音が聞こえていたような気がするんですが、オリジナルLPをそのまま縮小した英語表記版のほうを見ると、ただ単に (sax) となっておりますので、あるいは曲によってはテナーを吹いているのもあるのかも知れません。でもまあ、1曲目からまた聴き直してみるのも面倒なので、この話はなかったことにして、で、いよいよ最後の曲ですな。 「四月の思い出」 …って、何だか僕があまり好きではない曲の名前が書かれておりますが、ま、人間、自分の好きなものばかりを食べていては大きくなれませんからね。 “心頭滅却すれば火もまた涼し” …という諺もありますし。(←関係ない。) で、このあまりよくない曲をですね、マギー君達は早いテンポのラテンのリズムで料理しております。ロリンズ入りブラウン=ローチ・クインテットのバージョンとよく似た感じの持っていき方なんですが、いや、なかなかいいではないですか。マギーのプレイが見事であり、うんぬん…と日本語ライナーにあるように、マギーのプレイがですね、見事だと思います。…って、今日はこのパターンばかりでありますが、確かにここでのマギーはブラウニーを彷彿させるバフンウニといった感じでありまして、回転寿司だったら420円の皿に乗せて回しても大丈夫だと思いますね。続くサヒブ・シハブのテナー・サックスもしくはバリトン・サックスのソロもワイルドだし、ジョーダンのピアノはマイルドだし、マギーとフィリーの4バースはフィヨルドだし…って、ノルウェーの海岸の地形はあまり関係ないような気もするんですが、とにかくまあ、エキサイティングな演奏であるな。…というふうに思いますね。ということで、テーマに戻って、おしまい。 ということで、今日のところは以上です。

【総合評価】

 1曲目を聴いて、ちょっとどうカナ?…って思ったんだけどぉ、2曲目以降は大いに持ち直したのではないでしょうか。良く言えば円熟した魅力を示した、また悪く言えばかつてのスリルや凄みが薄れたマギーの姿うんぬん…と、日本語ライナーには書かれておりますが、7曲目とかぁ、11曲目とかぁ、じゅうぶんスリルあると思うんだけどぉ。どんなもんでしょうかね? で、5曲目とか、9曲目とかは、とっても円熟していると思います。何だかこう、熟した円広志って感じぃ?いや、いいですな。


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