THE CAT WALK (BLUE NOTE)

DONALD BYRD (1961/5/2)

THE CAT WALK


【パーソネル】

DONALD BYRD (tp) PEPPER ADAMS (bs) DUKE PEARSON (p)
LAYMON JACKSON (b) PHILLY JOE JONES (ds)

【収録曲】

SAY YOU'RE MINE / DUKE'S MIXTURE / EACH TIME I THINK OF YOU
THE CAT WALK / CUTE / HELLO BRIGHT SUNFLOWER

【解説】

 みんな、もう “紅葉狩り” には行ったかな? 紅葉狩りというのはアレですよね。もみじの葉っぱを採って、それを天ぷらにして食べるという、そういうレジャーですよね。…と、子供の頃に思っていた人は少なくないと思います。ま、天ぷらにして食べるかどうかはともかくとして、 “狩る” という言葉から、どうしても葉っぱを取るというイメージが浮かんでくるんですよね。かく言う僕もそうでありました。紅葉狩りというのは、もみじの葉っぱを採って、それを天ぷらにして食べるという、そういうレジャーだよね。…と固く信じたまま、大人になってしまいました。子供の頃、家庭や学校で正しい紅葉狩りというのを体験させて貰ったことがなかったので、そういう間違った考え方を持った大人になってしまったわけですが、そういう自分の体験からしても、つくづく “教育” というのは大切だと思いますね。よくよく考えてみると、僕は子供の頃から紅葉狩りに限らず、“○○狩り”と名前の付くものはほとんど経験したことがないんですよね。親がそういうレジャーにまったく興味がなかったからなんだと思いますが、りんご狩りも、みかん狩りも、ぶどう狩りも、梨狩りも、桃狩りもやったことがなくて、思えば “狩人” という言葉とは無縁の少年時代と青年期を送ってきたことになります。いや、狩人の歌とか、けっこう好きだったんですけどね。 「あずさ2号」 とか 「コスモス街道」 とか、とってもいい歌だと思うしー。

 そういった果物採取系の “狩り” に限らず、友達と一緒におやじ狩りをした記憶もないんですが、そういえば小学生の頃に学校の遠足で潮干狩りに行ったことはありましたな。中学に入学する時には学校の規則で丸刈りにすることを強要されたし、高校の頃には柔道の授業で大外刈りの練習をさせられたこともあるので、対象を “○○刈り” にまで拡張すれば “○○かり” とまったく無縁の生活を送ってきたわけではないんですが、今後は給料の前借りとか、金銭のたかりとか、そっち方面の “○○かり” にも力を入れていきたいと思っております。 とまあそんなことで、 “紅葉狩り” なんですが、紅葉 (こうよう) というのはいいですよね。紅葉した赤い葉っぱを見ていると、気分が高揚します。来年もまたこの綺麗な紅葉を見にこうようね。…とか思ってしまいます。紅葉っていいよね。…と、僕の知り合いのコヨーテ (←イヌ科の哺乳類) も言っておりましたが、色弱であるとされるイヌ科の哺乳類にだって、紅葉のよさは分かるものなんですな。となると、赤緑色弱の気があって、紅葉の綺麗さが今ひとつ鮮やかに見えないような気がする僕だって、紅葉のよさを実感出来るかも知れません。ま、紅葉が駄目だとしても、葉っぱが黄色く変わる “黄葉” のほうはぜんぜん大丈夫だし、ここはひとつ一念発起して、ホッケの塩焼きでも食べてみようではありませんか。

 ということで行ってまいりました、北軽井沢、万座温泉、志賀高原。ホッケの塩焼きなら北海道やろ?…という意見もあろうかと思いますが、僕はそれほどホッケが好きではないので塩焼きのほうはどうでもよくて、ターゲットを “紅葉” 一本に絞りました。コヨーテに負けてはいられませんからね。ま、正確に言うと紅葉狩りが主目的ではなくて、 “鹿沢スノーエリア” というところに初滑りに行くついでに、その周囲を散策してみたという位置付けになるんですが、ちょうどよい紅葉の身頃であったような気がします。確かに木々の葉っぱが明らかに緑色とは違う色をしているよね。…という感じがしないでもなかったので、あれがおそらく紅葉というものなんだと思いますが、いや、紅いというよりも薄緑色いというか、オレンジ色い。…といったものが多かったような気がするんですけどね。それにしても木の葉っぱというのはどうして秋になると色が変わるのでしょうか?ま、中には秋になってもちっとも葉っぱの色が変わらずに、ずーっと緑やん。…といったエバーグリーンな常緑樹もあったりするんですが、どうして種類によって色が変わるものと、変わらないものとがあるんでしょうか?

 世の中の樹木は大きく分けて、広葉樹と針葉樹の2つの種類があるんですが、僕は断然、広葉樹のほうが好きですね。針葉樹というのはどうも信用出来ないような気がします。見るからに性格もトゲトゲしそうだし、だいたい松の葉っぱとかって、あんな針みたいなのできちんと光合成出来るんですかね?事実、針葉樹というのは樹木としては原始的なものらしくて、ある日、針葉樹の中でも例外的に賢いやつが、こんな細い葉っぱでは光合成しにくいじゃないか!…ということに気付いて葉っぱの面積を広くして、そこから広葉樹という新しい種類が誕生したんだそうです。で、そのことに気付かなかったあまり頭のよろしくないタイプの針葉樹は、とにかく高く高く上に伸びて少しでも日光を浴びようとするんだそうでありまして、その結果、材木としてはまっすぐで加工がしやすいのが特徴なんだそうです。ま、アホはアホなりに何か取り柄があるものなんだね。…ということが言えるわけでありますが、樹木にはまた、常緑樹と落葉樹という分類もありますよね。樹木にまったく詳しくない僕は、針葉樹=常緑樹=紅葉しない、広葉樹=落葉樹=紅葉する。すなわち、広葉樹は紅葉するんだね♪…というふうに理解してたんですが、これはまったく間違っておりました。針葉樹には確かに常緑のものが多いんですが、中にはカラ松のように針葉樹の分際で落葉するのもあるんだそうです。 ちなみに、どう見ても広葉樹やんけ!…としか思えないような葉っぱの形をしているイチョウの木も分類学的には針葉樹なんだそうでありまして、日本ではこのイチョウとカラマツの2つだけが針葉樹なのに落葉樹ということになるんだそうです。

 逆に、広葉樹の中にも椿のように年がら年中、緑色のテカテカの葉っぱを付けているものもあって、この広葉樹かつ常緑樹という仲間には楠や金木犀なんかがあるんだそうです。となると、広葉樹が紅葉するというわけではなく、常緑樹は紅葉しないと言ったほうが正確だと思いますが、もし常緑樹が紅くなったり黄色くなったりしたら、その時点で常緑ではなくなっちゃいますもんね。つまりまあ、紅葉するのは落葉樹であるということが言えるわけですが、しかし何ですな。広葉樹の落葉樹というのは、よく考えるとちょっと変ですよね。せっかく太陽の光をよく浴びれるように葉っぱの面積を広くしたというのに、そのせっかくの広い葉っぱを秋になると自ら放棄しちゃうわけですもんね。譬えて言うなら、高い養毛剤を買って、毎日ブラシでかかさず刺激を与えて、ようやく産毛のようなものが生えてきたな。…と思ったら、いきなり仏門に入って頭を剃っちゃうようなものでありまして、傍から見ている限り、いったい何の為の努力やったんや?…と思ってしまいますよね。が、よくよく調べて見ると、樹木には樹木なりにやむにやまれぬ事情があるようで、どうやらポイントは寒さと乾燥にあるようなんですけどね。

 日の光をたくさん浴びるために、葉の面積を広くする。これは実にナイスなアイデアであると思われたんですが、いくつかのデメリットを抱えることにもなってしまいました。面積の広い葉っぱを維持するには、葉っぱの細い針葉樹よりもたくさんのエネルギーを必要とすることになってしまいます。ソーラーカーに譬えるなら、エネルギーをたくさん得るために大きな太陽電池パネルを取り付けたら全体の重量が重くなって、より多くのエネルギーを必要とする羽目になってしまったじゃないか!…というジレンマに陥ってしまうわけで、その需給バランスが何とも難しいわけであります。ま、暑い季節であれば光合成もバンバン進むから多少葉っぱが広くなったくらいのことは何とかなるんですが、温度が下がって乾燥した状態になると根の働きが弱くなって、生産能力が落ちてしまうわけです。こうなってくると葉っぱの面積を広くした事が裏目に出てしまって、なまじ葉っぱを広くしたばかりに熱も水分も逃げやすくなって、ますます低温化と乾燥化が進むという、負のスパイラルに陥ってしまいます。そこで樹木としては、今となっては足手まとい以外の何物でもない葉っぱを自ら落とすことにより、寒い冬を眠ったようにやり過ごすことになるんですが、そもそも、葉っぱの面積を広くすれば、光合成が楽になるよね。…という発想自体が安直すぎたんですよね。後先のことを考えずに、その場の思い付きだけで行動しちゃうから後から泣きを見ることになるんですが、秋になって寒くなって、広葉樹は初めて自分の選択ミスに気付いて愕然として、ヤケ酒に走った結果、アルコールが回って葉っぱが紅くなったり、飲みすぎて肝臓を壊して黄疸になって、葉っぱが黄色くなったりするわけでありますな。

 つまり紅葉する樹木よりも、黄葉する樹木のほうがより症状が重篤であることになりますが、葉っぱが黄色くなる代表格であるイチョウなんかは肝臓だけでなく、胃腸のほうも悪くしているらしいんですよね。おまけに肛門括約筋の活躍の度合いも弱くなっていて、糞を垂れ流している始末であります。ギンナンの実がウンコ臭いのはそんなところに原因があるんですが、そもそもイチョウと言うのは針葉樹であるにもかかわらず、葉っぱを広くして光合成を楽にしよう!…などと余計なことを考えるから、歳をとってからその報いを受けることになるんですよね。そこへ行くと、イチョウ以外の針葉樹というのは立派ですよね。生まれつき、光合成に不利である細い葉っぱというハンディキャップを背負いながら、それを克服するために少しでも上へ上へと伸びていこうとするその生き様は、尊敬に値するとおもいます。いやあ、針葉樹というのは本当に信用出来るやつでありますな。

 冬が来てもあなたよ枯れるな、木枯らしに耐える針葉樹のりりしさのように♪

 ヤングな若者たちは野口五郎のこの歌を胸に、これからの人生を歩いていって欲しいと願わずにはいられません。

 ということで今日はドナルド・バードでありますが、本題に入る前にひとつ、どうでもいい訂正がございます。前回、このコーナーの最後のところで “安藤なつ” という名前の漫画家とAV女優について触れましたが、漫画家のほうはともかくとして、AV女優のほうは間違っておりました。 “安藤なつ” ではなくて、 “杏童なつ” というのが正解ですよね。ま、別にどうでもいいことなんですけど。ところで今日の落葉樹ネタは、なかなかいい教訓話に仕上がりましたよね。イソップ童話の 「アリとキリギリス」 と似ているところもあるんですが、ただこの落葉樹の話にはちょっとした “まやかし” があるんですけどね。葉っぱが広くても落葉しない、椿みたいな樹木もあるぢゃないか!…という点にまったく触れてないとろこが難点なんですが、常緑広葉樹というのはたぶん、落葉する広葉樹よりも進化した姿なんだと思うんですけどね。ポイントはおそらく分厚くてテカテカした葉っぱにあると思うんですが、厚着をすることによって寒さと乾燥から身を守っているのでありましょう。いや、植物というのも生きるために色々と考えているものなんですなぁ。 ということで、今日は 『ザ・キャット・ウォーク』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、 いいですよねぇ、『ザ・ねこ歩き』 。猫は足音をたてずに、忍び足で歩く。…てなことを言われますが、うちで飼っている黒猫のクロコはですね、ペタペタという足音を立てて歩きます。そこのところがまた、何とも言えずに可愛いにゃ〜♪…と思うんですが、土の上では音をたてずに歩くことが出来る猫の足の裏の肉球も、まだフローリングの床に対応出来るところまでは進化していないようでありまして。で、この “ねこ歩き” はですね、ドナルド・バードのブルーノートにおける第7作目ということになりますな。当時のレギュラー・メンバーと言えるペッパー・アダムスデューク・ピアソンが入っておりまして、特にピアソンの参加は、彼の魅惑的な歌謡曲風オリジナルが聞けるという点で、非常に楽しみなところとなっております。タイコがフィリー・ジョーというのも期待が持てますよね。尺八とかだったら抜きキャバ嬢とかが得意そうなんですが、スインギーなドラミングとくれば、やっぱりフィリー・ジョーのほうがいいと思うんですよね。とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目の 「セイ・ユア・マイン」 は、ピアソンらしさ満開っ♪…といった感じの哀愁ファンキーな曲でございます。ゴリゴリとしたペッパー・アダムスのバリトン・サックスと、ドナルド・バードの吹くミュート・トランペットとの対比が絶妙でありまして、でもって、これほどまでベタに日本人好みのメロディというのも珍しいですよね。ちょっぴりサル顔のピアソンには、間違いなく日本人の祖先と同じサルのDNAが入っているとしか思えないんですが、この曲は確かピアソンのリーダー作でも取り上げられていましたよね。それが何というアルバムだったのか、面倒なので調べるのはやめておきますが、テーマに続いてそのままバードのミュート・ソロへと流れていきます。バードという人はあまりミュートを使わない印象があるんですが、マイルスとはまた一味違ったサウンドとなっておりますな。どのように一味違うのかというと、一味唐辛子と七味唐辛子との違いといったところでしょうか?マイルスの研ぎ澄まされたサウンドが一味だとすれば、バードのほうは山椒だとか、みかんの皮だとかが入っていて、よりマイルドなフレーバーとなっております。前半はゆったりとしたテンポでグルーヴィに、後半は倍テンポでドライビングなプレイを展開したりして、いや、なかなかいいんぢゃないですかね。で、ソロ2番手はペッパー・アダムスでありますな。ワイルドな吹きっぷりが何とも言えずに魅力的なんですが、それにしても長島スパーランドの “ワイルドマウス” というのは思いのほか、おっそろしい乗り物でありましたな。子供の頃、ワイルドマウスの前身であるマッドマウスというのに乗って、怖いというより面白い乗り物であったような記憶があるのですっかり安心してたんですが、マッドがワイルドになって、数段パワーアップしちゃいました。特に前半のUターンの連続部分ではほとんど半泣き状態になってしまいましたが、後半はオーソドックスな上下運動になったので、何とか泣かずに済みましたけどね。で、アダムスに続いてピアソンのソロになるんですが、ソフィスティケイティッド・ファンキーとでもいうべきこの人のピアノ・スタイルは非常に趣味がよく洗練されていて、いや、サル顔のわりにはけっこうやってくれるんですよね。ということで、哀愁のテーマに戻って、おしまい。アルバムのオープニングとしては申し分のない出来であると言えるでしょう。

 2曲目の 「デュークス・ミクスチュア」 は同じくピアソン・ナンバーながら、1曲目とはちょっと違ったタイプの曲となっております。何というか、微妙にマーチ風というか、御機嫌に跳ねるテーマだとか、とんでもないダンサーを思い出させるようなリフとか、原文ライナーではナット・ヘンホフがいかにもアメリカンな感想を述べておりますが、とんでもないダンサーというのは、いったいどんなダンサーなんすかね?踊りながら北海道の警備と開拓にあたっているとか?…って、それは屯田兵なダンサーでありますな。とにかくまあ、ウキウキ系のリフ・ナンバーと言った感じでありまして、ただテーマを引き継ぐバードのソロはどちらかというとムーディな味付けなんですけどね。続くペッパー・アダムスは相変わらずワイルドでありまして、ソロ3番手のピアソンは相変わらず趣味がよくて、いや、2曲目にして早くも書くことがなくなってきちゃいましたね。あ、ピアノ・ソロのあと、短いセカンド・テーマみたいなのが出てくるという試みは、なかなかよく考えられていると思いますが、それもすぐに終わってメインのテーマに戻って、演奏はおしまい。ま、アルバムの2曲目としては、まずまずといったところではないでしょうか。 で、続く3曲目の 「イーチ・タイム・アイ・シンク・オブ・ユー」 はバードとピアソンの合作となっております。ファンキーというより、ハード・バピッシュといった感じの曲調なんですが、ところどころ哀調を帯びたフレーズが出てくるところはさすがでありますな。そこのところをナット・ヘンホフ君は、曲は切望と陽気さを兼ね備えている。…と書いておりますが、なかなかうまいこと言いますよね。切望と陽気さ。確かにそんな感じがします。鉄棒と楊貴妃。…といった感じは全然しません。で、ソロ先発がペッパー・アダムスで、2番手がドナルド・バードなんですが、この曲にはペッパー・アダムスの最も熱烈なソロの一つと突進するような刺激的なバードのコントリビューションがある。…というヘンホフ君の意見にも基本的には同感でありますな。コントリビューションというのがどういう意味なのか、今ひとつよく分からないところはあるんですが、コントリというのは恐らく、ニワトリの親戚みたいなものだと思うんですけどね。そのコントリがビューっと飛んでいく。コントリビューションというのは恐らく、そういう状態なのではなかろうかと。いや、ぜんぜん違うような気がしないでもないんですけど。 で、熱烈と刺激的の後を受けるピアソンのソロが相変わらず趣味が悪くないのはいいんですが、熱気という点ではあきらかにこの段階でちょっぴりクールダウンしちゃいますよね。この人の場合、熱いプレイが不得手ということは言えるかも知れません。その弱点を補うべく、ピアノ・ソロの後はホーンとドラムスの8バースで大いに気分を盛り上げて、フィリーもここぞとばかりに大いに張り切って頑張っております。 ということで、テーマに戻って、おしまい。これぞ、典型的なハード・バップやな。…といった感じでありまして、A面の最後を飾るには申し分のない出来であると言えましょう。

 で、B面のトップにはアルバム・タイトル曲の 「ザ・キャット・ウォーク」 を持ってきましたか。ドナルド・バードのオリジナルなんですが、これがなかなか日本人好みの名曲でありまして、テーマ部からソロ・パートの冒頭にかけてのストップ・タイムの使い方も絶妙だと思います。何だかこう、猫が忍び足でやってきては、時おり足を止める。…といった情景がうまく描かれておりまして、なんでもいいけど猫という字と描くという字は、よく似ていますよね。若いという字は苦しい字に似ておりますが、餃子と鮫子というのも紛らわしいですよね。で、テーマの後、バードのソロになるんですが、バードのソロはホーンを 「語らせる」 能力が成長したことを強調している。ヴォーカルの手法を真似ているということを言っているのではない。むしろ、個人的な音楽に対する考え方と感じ方が楽器を支配し、非常に個性的なフレーズとリズムの扱いに反映されているということだ。…と、なにやらナット・ヘンホフが小難しいことを書いておりますな。ちょっと偏屈なイメージがあるんですよね、ヘンホフって。ちょっぴり変でホフなところがあるような気がします。…と、自分では何の意見も述べずに人のライナーを勝手に引用して、文句を付けている自分がちょっぴり可愛いな♪…と思わずにはいられませんが、ソロ2番手はペッパー・アダムスで、3番手はデューク・ピアソンでありますな。 …と、当たり障りのない事実関係だけを書いておいて、各自のソロの後、セカンド・テーマみたいなのが出てくるという手法はなかなかいいと思いますね。ホレス・シルバーがよくやる手なんですが、ところで年寄りのことをどうしてシルバーというんですかね?シルバーシートというのは別に年寄り専用とは限らないんですが、シルバー人材センターと言う場合のシルバーというのは、年寄りのことですよね。年寄りは白髪の人が多いから、シルバー。年寄りにはいぶし銀の渋さがあるから、シルバー。物知り婆さんを略して、知る婆。…と、3つくらいの説が考えられるんですが、これだと髪の毛が黒くて、別に渋くもなくて、物知りでも婆さんでもなかったりする爺さんの場合にはちょっと立場がないですよね。でもまあ、話の本筋とはまったく関係のない話なので、あまり深くは追求せずに先に進むことにしますが、ということで、テーマに戻って、おしまい。

 5曲目にはニール・ヘフティの 「キュート」 という曲を持ってきましたかー。タイトルからして、とってもキュートなバラード・ナンバーを想像してたんですが、予想に反して馬鹿っ早いテンポで演奏されておりました。いきなりフィリーのタイコが炸裂、カツレツ、奇天烈、お下劣。…といった感じでありまして、続いて2本の管楽器とドラムスとの掛け合いによって短いテーマが演奏され、でもってドナルド・バードの急速調のソロへとなだれ込んでいきます。こうもテンポが馬鹿っ早いと、どうしてもフレーズの垂れ流しになってしまいがちなんですが、バードはですね、大丈夫ですね。必要十分にメロディアスなプレイを展開していると思います。人工肛門はまだ必要ないと見ていいでしょう。続くペッパー・アダムスのソロも見事としか言いようがなくて、よくもまあバリトンサックスなどという、傍で見ているだけで肩が懲りそうな楽器でここまでの速吹きが出来るものでありますな。ソロの後半にはちょっぴりバードが絡んで来て大いに盛り上がって、続いてはフィリー・ジョーのドラムス・ソロでありますか。メロディックなマックス・ローチのソロとは違って、この人の場合、ただタイコを叩いとるだけやん!…といった感じなんですが、その単純さがむしろシンプルで清々しくていいと思います。頭よりも先にスティックが動いてしまう、そういうタイプですからね、フィリーは。あ、ドラムのソロに入る直前、ペッパー・アダムスが1小節だけ余分に吹いちゃってる気がするんですが、勢い余ったのか、あるいはコーラスを数え間違えたのか。ま、いずれもジャズ世界ではよくあることですんで、これもご愛嬌かと。 ということで、テーマに戻って、おしまい。

 ラストの 「ハロー・ブライト・サンフラワー」 はピアソンの曲なんですが、何だかこう、童謡みたいなほのぼのとしたナンバーでありますな。ナット・ヘンホフは無邪気という表現を使っておりますが、まさしくそんな感じです。邪気がありません。バードがミュートで軽くテーマをバウンスさせて、そこにペッパー・アダムスが絡んで来て、で、バードとフィリーの4バースという形でアドリブ・パートが進んでいって、それから普通のトランペット・ソロになって…、という構成もなかなか面白いところでありますな。がははははははははは。…って、それほど大笑いするほどのことでもないんですけど。で、ソロ2番手はピアソンでありますか。こういう小粋な曲調だと彼のスタイルもよく活きてくるわけでありますが、続くペッパー・アダムスのソロはやや下世話でお下劣で、無邪気なムードがやや損なわるような気がしないでもないんですが、それはそうと、今日は朝っぱらから右翼の宣伝カーに乗った兄ちゃんがマイクで 「君が代」 を歌っていて、とっても近所迷惑でありました。あんな不愉快な 「君が代」 を耳にしたのは、何かのイベントで郷ひろみが歌っているのをテレビで見た時以来でありますな。今後は是非、自粛して頂きたいところでありますが、その後、何気なく大学駅伝のテレビ中継を見ていると、右翼の街宣車が走っているのが映っておりました。さすがに歌は歌っておりませんでしたが、もしかしたら同じクルマだったかも知れませんな。それはそうと、解説の瀬古俊彦がいつの間にやら “気さくなオッサン風” のキャラになっていたのには驚きましたな。現役時代から暗いと言われていたのを気にしてイメチェンを図ったのかも知れませんが、かなりスベっていて痛かったです。それに、せっかくの桑名出身者なんだから、もうちょっと地元の宣伝をして欲しかったところなんですけどね。「このコース沿いには地元でも有名なギロチン工場があるんですよね。」…くらいのコメントを期待してたんですが、どうにも使えない奴でありますなぁ。。。 とまあそういうことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 全体として、よくまとまっておりますな。ピアソンやバードのオリジナル曲の出来もいいし、ま、いいんぢゃないですかね。いやあ、それにしても秋ですなぁ。秋茄子とか、秋鯖とかが美味しい季節ですよね。いや、それがどうした?…と言われると、別にどうもしないんですけど。


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