みんな、資格は持っているかな? この前の衆議院選挙では刺客がブームとなりましたが、刺客と書いて “しかく” と読むんですね。ちっとも知りませんでした。僕はてっきり、 “さすきゃく” だとばかり思っていました。…という人は問題外なんですが、 “しきゃく” だと思っていた人は少なくないと思います。刺客を “しきゃく” と読んでいるようではアナウンサー失格で、それが元で失脚させられても仕方がない気もするんですが、刺客は “しかく” と読んでも “しきゃく” と読んでも “せきかく” と読んでも間違いではない。…という話もあって、いや、漢字ひとつをとってもなかなか難しいものでありますな。ところで君は、漢字が得意かな?僕はですね、からしき駄目なんですよね。僕が自分の中で、いいっ♪…と思っているものを思いつくままに書いてみると、顔だとか、スタイルだとか、ルックスだとか、知力だとか、学力だとか、決断力だとか性格だとか、ま、いろいろと有るんですが、こんな僕にも駄目なところがいくつかあって、走り高跳びだとか、走り幅跳びだとか、長距離走だとか、中距離走だとか、野球だとか、ソフトボールだとか、バスケットボールだとか、水球だとか、競歩だとか、漢字とかはですね、ちょっぴり苦手としているんですよね。体育系が全般的に駄目な以外は概ね大丈夫なんですが、学力系の中でも例外的に漢字だけは苦手なんですよね。あとは英語だとか、フランス語だとか、中国語だとか、物理だとか、生物だとか、地理だとか、微分積分だとか、代数幾何だとか、確率統計だとか、日本史だとか、地学だとか、政治経済なんかもあまり得意ではなかったんですが、絵とか音楽なんかの芸術的な才能もないし、よく考えたら学校の勉強で得意だったのは化学とキリスト教倫理くらい?…という気がしないでもないんですけどね。
キリスト教倫理というのはカトリック系の私立高校に特有の科目だと思うんですが、テストではですね、ケラー氏のモットーを書け(10点)。…とか、そういう問題が出ます。暗いと不平を言うよりも、進んで明かりを付けましょう。…というのが正解なんですが、教科書に書いてあるのをそのまま丸暗記するだけで、出題に何のひねりも工夫もありませんでしたので、僕は得意としておりました。あとはまあ、世界史なんていうのも基本的に暗記科目なのでけっこう好きだったんですが、中国史のところで挫折したんですよね。どうして挫折したのかと言うと、漢字が書けなかったからなんですが、カタカナ言葉はわりと覚えるのが得意だから、やっぱり日本史よりも世界史だよね。…と思っていたのに、どうして中国人の名前は漢字ばっかりなんや!?…と、恨めしく思ったものでございます。唯一、中国史で大丈夫だったのはヌルハチとホンタイジくらいなんですが、冒頓単于とか、耶律阿保機とか、そんなんカタカナでええやん!…と言いたくなりますよね。 そんな僕でありますので、 “よろしく” を正しく漢字で “夜露死苦” と書ける暴走族の人は思わず尊敬してしまいますが、特に最近、文章をワープロとかパソコンで書くようになって、漢字の書き取り能力が著しく減退しているような気がします。読むほうはまだけっこう自信があるんですが、書き取り能力はおそらく小学4年生レベルであるに違いなくて、ここはひとつ、自分の漢字能力を客観的にはっきりさせておいたほうがいいかも知れませんな。
…と、思ってしまった人にぴったりの資格試験にですね、 “漢字検定” というのがあります。珠算は4級だし、書道も4級だし、英検も4級だし、履歴書の特技とか資格の欄に、何も書くことがないやん!…という人は、 “枯れ木も山の賑わい” で漢字検定あたりを押えておくのも手かも知れません。特技が “消しゴムではんこを作ること。” …というのよりはまだ企業に対するアピール度が高いと言えるでしょう。そもそも漢字検定というのは “財団法人・日本漢字能力検定協会” という、漢字検定意外には他に何の仕事もしてなさそうな団体が主催しておりまして、1級〜8級、それに準1級と準2級というクラスがあるんだそうです。8級は “小学校第3学年までの学習漢字を理解し、文や文章の中で使えるようにする” …というレベルらしいので、僕にはちょうどいいかも知れません。試しに過去の出題例を見てみると、 「このごろクラス全員で、長いなわを使ってとぶ遊びがはやっている。」 という文章の緑色の部分に読み仮名をつける問題が出ております。さすがは小3レベルだけあって、楽勝ですよね。僕だったら “長いなわ” の部分が漢字になって、「長縄所長代理は、とってもウザい。」という問題になったとしてもぜんぜん大丈夫なんですが、人によっては “○○ナワ” だとか “××ナワ” だとか、間違った読み方をしちゃう恐れはあるんですけどね。
で、これが1級になるとどういう問題が出されるのかと言うと、次の熟字訓・当て字の読みを記せ。(1) 飯匙倩 (2) 虎杖 (3) 虎落 (4) 麺乳菓 (5) 翻腕斗 …って、こんなものが答えられたところで、日常生活の上ではまったく何の役にも立たん!…と言いたくなるような漢字が出題されるようで、ちなみに正解は (1) はぶ (2) いたどり (3) もがり (4) ビスケット (5) もんどり …なんだそうですけどね。ま、確かにビスケットというのは生の麺を乳で練って焼いたような菓子なので、 “麺乳菓” と言われれば何となく納得がいかないでもないんですが、普通に考えれば “めんちちか” としか読めませんよね。 “虎落 (もがり)” なんてのは読み方が分かっても、何のことだかさっぱり意味がわかりません。 “翻腕斗 (もんどり) ” というのは何となく格闘家のリングネームとしてよさそうですが、ま、すぐにもんどりうって倒れちゃいそうで、あまり強そうな感じはしませんけどね。で、いちばん許せないのが “飯匙倩 (はぶ) ” なんですが、漢字が3文字もあるのに読み仮名が2文字しかないって、そんなのインチキですよね。 “飯匙倩” のどこの部分が “は” で、どこからどこまでを “ぶ” と読めばいいんでしょうか?…というのは意外と簡単な問題でありまして、ま、おそらく “飯=は” “匙=ふ” と来て、最後の “倩” が濁点のテンテンに相当するのではなかろうかと。 ちなみに、漢字3文字なのに読み仮名が2文字というのは他にもいくつかあって、 “百舌鳥 (もず) ” とか、“香具師 (やし) ” あたりはわりと有名ですよね。 “百舌鳥” の場合は最後の “鳥” を “倩” と同じく濁点のテンテンと考えればまだ何とかなるんですが、 “香具師” のほうはお手上げですよね。そもそも、香具師というのが何をする人なのか、僕には今ひとつよく分かってないんですが、やっぱり椰子の実を獲って生計を立てている人のことなんですかね?
やし 〔「野士」の意という〕 〔縁日などに〕 道ばたで手品・居合抜き・こま回しなどをして見せた後、安い歯磨などの薬や香具類を売りつける人。テキ屋。 【表記】 普通、「香具師」と書く。
なるほど、テキ屋のことを香具師と言うんですかぁ。僕の心の中では、テキ屋=ビフテキとか豚テキを売る人。…というイメージがあったんですが、香具師=椰子の実を売る人…というのと、ダブルで勘違いしていたことになりますね。で、香具師というのは本来、大道芸をダシにして石鹸とか香具なんかを売りつける商売であることが判明したんですが、香具というのはおそらく、香りのする具。そういうものなんでしょう。野士が香具を売っていたから “香具師=野士” になった。…と、そういうことなんだと思いますが、一方、テキ屋というのはですね、漢字では “的屋” と書くんですな。 “まとや” ではなくて、 “てきや” 。 的に矢を射させる “まと屋” という商売から転じて “テキ屋” になったという説もありますが、とにかくまあ、ビフテキを売る人ではないと。ま、最近はビフテキではなくて、牛串焼きを売っている人なら、よく見かけるんですけどね。…とまあそんなことで、漢字検定はおしまい。8級は大丈夫かも知れないけど、1級は難しいかも知れないね。…ということが判明して、ま、小3レベルの漢字能力があると判定されたところで、さほど転職とか再就職に有利になるとも思えませんもんね。役に立たないという点では “ナマハゲ伝導士認定試験” と同レベルではないかという気がするんですが、あと、マニアックなところでは “時刻表検定試験” なんてのもありますな。東北本線・仙台駅で販売している次の駅弁のうち、販売価格が1000円以上のものはどれか。 (1) 松島あなごちらし (2) 仙薹かにわっぱ (3) こだわり弁当各驛停車 (4) 独眼竜政宗弁当 …といった鉄道に関する幅広くてどうでもいい知識が求められるようですが、やはり手に職を付けるなら “初生雛鑑別師” がオススメでありますな。
“初生雛鑑別師” というのはアレです。生まれたばかりのヒヨコの雄・雌を鑑定するお仕事であります。1959年4月に資格制度が始まって、これまでの累計合格者数がたったの 674人だというのだから、もの凄くレアな資格でありますな。合格率は約30%ということなので、極端に難しいと言うよりも、ただ単に受験希望者が少ないというのが実情なんでしょう。それもそのはず、受験資格は25歳以下しか駄目だし、受験費用は1万円で済むんですが、鑑別師養成所の入所試験費用やら養成所での諸費用やらで余分に100万円くらいかかるそうですからね。ただ、新生ヒナのオスメス判定は日本で確立された技術で、手先の器用な日本人にしか出来ないオシゴトのようなので、資格さえ取ってしまえばもう、こっちのものです。国内ではまったく仕事がないそうですが、ヨーロッパでは引く手あまたなんだそうでありまして、憧れのフランス、スペイン、ドイツ、イタリアや、さほど憧れではないハンガリー、ベルギー、チェコ、スロバキアあたりで働けることは確約されていると言ってもいいでしょう。ちなみに新生ヒナのオスメスの鑑別はどのように行うのかというとですね、ヒヨコちゃんの股をガバっと開いて肛門を観察して、そこに微妙な突起があるかないかで見分けるんだそうですけどね。たとえ相手がヒヨコとはいえ、ああん、何だかとっても楽しそう♪…という気がしないでもないんですが、実際にはヒジョーに根気のいる作業のようです。目が疲れるだろうし、股を押し広げるのに親指も酷使するようだし、ま、3羽くらいならちょっとやってみたいと思うんですが、4匹目ですっかり飽きちゃうような気もするしー。
で、試験ではですね、まず予備試験の段階で、卵用種のヒヨコ100羽を 30分でオスとメスに分けなければなりません。とりあえず100羽のヒヨコを50羽ずつオスとメスに分けてやれば、正解率50%はいけるぅ?…という気がするんですが、残念ながらその成績では不合格でありまして、最低でも 98点くらいはないと駄目みたいですね。松本ちえこの 「恋人試験」 のように、65点の人が好き、好き、好き♪…なんて暢気なことを言っているようではとても初生雛鑑別師にはなれないわけです。 で、続いては高等考査でありますが、こちらは卵用種400羽と肉用種100羽、合計500羽ものヒヨコを 45分以内に鑑別しなければなりません。ということは、えーと…、5秒で1匹ペースですか。熟練した初生雛鑑別師は2秒に1匹ペースで仕事をこなすそうなので、これでもまだまだ甘いと言わなければなりませんが、5匹間違えたらアウトだそうなので、かなりの難関であるには違いありません。 で、実技試験のほか、作文や面接考査といった数々の難関を突破して、見事に初生雛鑑別師としてヨーロッパで職を得たとして、一体どれくらいの収入があるのかというとですね、ヒヨコ1羽あたり、約0.030ユーロなんだそうです。1ユーロ=138円として 4.14円。2秒に1羽鑑別したとして、時給7452円。かなりオイシイ仕事であると言えますが、やはり1日8時間、ずっとヒヨコを鑑別するというわけにもいかないので、年収にすると日本円で500〜600万円程度なんだとか。となると、僕の年収とそれほど大きく違うわけでもなくて、何だか苦労のわりには、さほど報われるものでもないな。…という気がしないでもないんですけどね。
ここはやはり、「メスだから大きくなったら卵を産むよぉ。」…と子供をだまくらかしてオスのヒヨコを売りつける、縁日の香具師でもやったほうが得策かも知れませんね。とまあそんなことで、資格の話はおしまい。
ということで、今日はクラーク・テリーです。地味ですね。性格が暗くて、照り焼きが好きな人。…と言うのが、僕がクラーク・テリーに対して漠然と持っていた印象なんですが、実際の彼はそうではなくて、わりと明るいキャラクターだったようですね。照り焼きが好きかどうかはサダカではないんですが、アメリカでは “テリヤキボーイズ” なるヒップホップ・ユニットが話題になっているようなので、クラーク・テリーが照り焼き好きである可能性は絶対にないとは言い切れません。美味しいですからね、照り焼き。 で、今回はキャンディド盤の 『カラー・チェンジズ』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、前衛系アバンギャルド派のイメージが強いキャンディドというレーベルが、保守系中間派の色合いが強いクラーク・テリーに目を付けたというのはちょっと意外でありますな。でもまあ、この人はセシル・テイラーのセッションにも参加してたりして、意外とヴァーサタイルな音楽性の持ち主であるようなので、大丈夫なのかも知れませんけどね。 それにしてもこの作品は参加メンバーがなかなか地味豪華でありますな。ジミー・ネッパー、ジュリアス・ワトキンス、ユセフ・ラティーフ、セルダン・パウエルって、よくもまあ、これほどまで地味で渋いところばかり集めたものでありますが、ピアノがトミー・フラナガンだったりするところもポイントのひとつと言えるのではなかろうかと。ベースがジョー・ベンジャミンだったり、ドラムスがエド・シャウ…えーと、その先が読めない名前の人だったりするところは、さほどポイントが高くはないんですが、そんなことでまあ、では1曲目から聴いてみることに致しましょうか。
1曲目は 「ブルー・ワルツ」 という曲です。これはえーと…、と、ここで原文ライナーの日本誤訳に目を通してみたところ、ボブ・ウィルバーの作曲であることが判明しました。ほぉー、ボブ・ウィルバーですかぁ。言われてみると確かに、いかにも “いかのあみ焼” といった感じのナンバーでありまして、いや、社員旅行の際、バスの中で配布されたおやつ・おつまみ詰め合わせパックの中に入っていたんですけどね、辰屋の “いかのあみ焼” (あまからタイプ)。生いかに北海道産の澱粉を付け、焼き上げてみりんで味付けしました。…などと書かれていて、北海道産なのはイカではなくて、澱粉かい!…と思わずにはいられませんでしたが、お味のほうはけっこうイカ臭くて、なかなかでありました。ま、僕はイカ臭いのがあまり好きではないので、あまり嬉しくはなかったんですけどね。で、そもそもボブ・ウィルバーというのがどういう人なのか、僕はまったくよく知らんのでありますが、曲のほうはいかにもブルーなワルツやな。…と言った感じの3拍子ブルースとなっております。イントロのトミフラのピアノがなかなかいい感じで、続くワルツ・タイムのテーマ部のアレンジも管楽器軍団の統制がよく取れていて、知的で素敵でとっても豚テキなテキ屋。…といった感じがよく出ております。ドラマーのエド・シャウ…えーと、その先が読めない名前の人が、実はエド・ショーネシーという名前であったことが原文ライナーの日本語訳を見て明らかになったんですが、この人がですね、けっこうスインギーなんですよね。4分の3拍子でスイングさせるというのは意外と難しいものなんですが、ショーネシー君のテクニックは少年Cに匹敵するものがあると言えるでしょう。タイコ叩くのがとっても上手ですからね、少年C。 で、ソロ先発はトミー・フラナガンでありますか。この人は 『噂の刑事トミーとマツ』 での好演が強く印象に残っておりますが、色黒の松崎しげるとは対象的な白っぽいスマートさが持ち味ですよね。ここでも実に趣味のいいタッチのピアノを聴かせてくれて、とってもいいと思うんですが、で、ソロ2番手はクラーク・テリーでありますな。参加人数が多すぎて各自のソロ・スペースが短いのでちょっとせわしないんですが、この人はですね、名手だと思いますね。鋭いリリカルさがクラーク・テリー本人…と、ナット・ヘンホフの書いた原文ライナーにありますが、マイルス・デイビスに影響を与えたとされるそのスタイルはマイルスの持つ独特の陰りとは一線を画した能天気フレーバーに満ち溢れていて、そこのところが今ひとつ日本でブレイクしない一因なのかも知れませんけどね。
で、ソロ3番手はテナーのセルダン・パウエルでありますか。古い中国の諺に、 “セルダンは双葉より芳し” というのがありますが、セルダン・パウエルという人は芳しいというよりもカンパチ。…といった感じのする人でありまして、刺し身にすると美味しいと思います。などと適当なことを書いているうちにジミー・ネッパーのトロンボーン・ソロになりましたが、ホントに入れ替わり立ち変わりで忙しい演奏でありますな。地味ネツ君のソロは、ま、普通だと思うんですが、続くユセフ・ラティーフのテナー・ソロはいただけませんね。この人は本質的に日本人受けしないよね。…と思わずにはいられませんが、続くジュリアス・ワトキンスのフレンチホルンのトーンは相変わらず息苦しさ満点で、聴いていると思わず呼吸困難を起こしそうになるところがとってもいいと思います。ということで、テーマに戻って、おしまい。参加者各位、まずは軽くご挨拶。…といった感じの仕上がりで、オープニングとしてまずは適切な幕開けではなかったかと思います。 で、2曲目の 「ブラザー・テリー」 はラティーフのオリジナルでありますな。先日、京都の清水寺の近くで食べた湯料理は、ま、ごく普通の湯豆腐やな。…といった感じで特に文句の付けようがなかったんですが、湯豆腐はよくてもラティーフは駄目ですね。僕はこの人のキャラがけっこう好きで、このコーナーでも彼のリーダー作をたくさん取り上げているんですが、じゃ、聴いて面白いのか?…と言われるとそれほどでもなくて、むしろ苦痛だったりするんですよね。で、この 「ブラザー・テリー」 というのも大変フレンドリーなタイトルとは裏腹に何だかエグい作品に仕上がっておりまして、こんな曲で兄弟呼ばわりされてもテリーとしては迷惑なだけのような気もします。ま、よく言えば前衛バラード風の意欲作で、その鋭意は大いに評価してもいいと思いますが、オーボエ、フルートといった室内楽的な楽器を多様して、内省的な内政干渉。…といった独特の世界が展開されております。いや、つまらんですね。
で、3曲目の 「フラッティン・アンド・フルグリン」 は一転してモダン・スイング的な軽快なナンバーでありますな。いろいろなサウンド・カラーの演奏が楽しめるんだよ。…というのがこの 『カラー・チェンジズ』 というアルバムのコンセプトなんだそうですが、ま、その意味では確かにカラーはチェンジしていると思いますけどね。で、この3曲目はフルートとフリューゲルホーンを融合させるという挑戦への興味によって作られたものなんだそうでありまして、テーマ部はラティーフとセルダン・パウエルの2フルート軍団とテリーのフリューゲルとの掛け合いによって演奏されております。アドリブ・パートもこの3人が短いスパンで代わる代わる登場して、その合間に他の管楽器が絡む。…という手法が取られております。大変にカラフルなフルチン。…といった感じでありまして、いや、フルチンでは基本的に肌色一色ではないかという気もするんですが、その後、トロンボーンとフレンチホルンという最強に地味なコンビが登場して、各自のソロと2人の掛け合いを披露するという算段でありますな。フルチンというのはカラフルではありませんが破廉恥であるには違いなくて、ここでのフレンチホルンの使用は理にかなったところであると思います。で、続いてクラーク・テリーが両手にトランペットとフリューゲルホーンを持って登場して、交互に2つのホーンを吹くという軽業を披露して、テーマに戻って、おしまい。ま、全体的にほのぼのしていて、暖かな雰囲気のウォームビズ。…といった感じで、いいんじゃないですかね。
で、続く 「ノー・プロブレム」 はおなじみ、デューク・ジョーダンの代表作であります。日本では 「危険な関係のブルース」 という名前のほうがとおりがいいと思いますが、そうです。あの曲です。 「シ・ジョヤ」 というよくわからん別名もあったりするんですが、このテリー・バージョンではアル・コーンがアレンジを担当しているんだそうで、コーン好きには嬉しいところですよね。美味しいですからね、コーン。僕はソフトクリームはワッフルよりも断然コーン派でありまして、ちなみにあのコーンはトウモロコシ (corn) のコーンではなくて、円錐形のコーン (cone) なんですが、丹波のドライブインで食べた黒豆ソフトは微妙なところでありましたな。普通のソフトクリームに黒豆の微粒が混入してあって、なめて見ると気持ち黒豆のコナっぽいかな?…という気がしないでもないんですが、でもまあ、黒豆の煮汁を飲まされるよりはマシなんですけどね。昔、ウチで、 「栄養があるで、飲まなあかん。」 と言われて強制的に飲まされたんですが、微妙に黒豆のエキスが滲出しているとことが何とも言えず、気持ち悪かったです。で、演奏のほうはテリーがフリューゲルホーンで吹くテーマ・メロディに、その他の管楽器が絡むコーン君のアレンジが絶妙で、もう、シアニジンが出まくりって感じぃ?いや、黒豆の煮汁にたくさん含まれているらしいんですけどね、シアニジン。で、ソロ先発はセルダン・パウエルのテナーでありまして、この人はユセフ・ラティーフと違ってオーソドックスなスタイルの持ち主でありますので、安心モードでありますな。続くジミー・ネッパーは安定モードで、ソロ3番手のクラーク・テリーは安産型ですな。僕は小尻よりも断然、安産型がタイプでありまして、岩石の中でも安山岩というのがいちばん好きだったりするんですよね。玄武岩とか、流紋岩とか、ああいうヤツはどうもつまらんです。…と、ここまではなかなかいい流れで来たんですが、最後にユセフ・ラティーフが出て来てちょっぴりムードをぶっ壊して、で、気を取り直してテーマに戻って、ややしつこい感じがしないでもないエンディング・パートがあって、おしまい。ま、部分的に問題がないわけでもないんですが、全体的にはまあ、いいのではないでしょうか。
5曲目はテリーの吹くミュート・トランペットとフルート中心の管楽器との絡みが、なんとも言えずに流れるような感じの曲やな。…と思ったら、 「ラ・リヴ・ガウシェ」 という名前の曲なんですな。日本語では 「左岸」 という名前が付けられていて、どうやらセーヌ川の左岸をテーマにしたクラーク・テリーのオリジナルのようであります。いいところですからね、セーヌ川の左岸って。ま、一度も行ったことはないんですが、少なくとも揖斐川右岸の養老町とかよりはヤングでお洒落な感じがしますよね。で、この流れるソングはコミカルでケミカルアンカーなテーマ部に続いて、まず2人のフルート奏者によるソロ、及び絡みパートになるんですが、どちらがセル・パウで、どちらがユセ・ラティなのかはよくわかりません。噂によると左がラティーフで右がセルダン・パウエルらしいんですがスピーカーで聴いているとあまりよくわからなくて、テナーを吹かせれば超絶個性的なラティーフもフルートだと結構マトモですからね。で、スピーカーで思い出したんですが、前述のおやつ・おつまみパックにはですね、イカ系が3つも入っておりました。北海道の澱粉を使った “いかのあみ焼” のほかに、 “さきいか” と “いかくん” がありました。 後先のことを考えると “さきいか” を先に食べるのが正解かも知れませんが、とりあえず “いかくん” を先に開封して、それをカミカミしながらこの原稿を書いているんですが、いかくんというのはさほどイカ臭くないからいいですよね。鰹節のようなダシの味と、ちょっぴり酸っぱいような感じもあって、なかなか奥が深いんですが、演奏のほうはいつの間にやらジミー・ネッパーのソロになっております。エド・ショーネシーのドラミングも切れ味鋭く、そう言えばトミ・フラのソロがめっきり登場しなくなっちゃったな。…というのがちょっぴり残念ではありますが、ソロの最後をクラーク・テリーがきっちりと締めて、流れるテーマに戻って、おしまい。ま、実に左岸であったな。…といった感じのするナンバーでありました。
6曲目の 「ナースタイ・ブルース」 はテリーのオリジナルで、バド・シャンクのアレンジなんだそうです。やや捕らえどころのない作品でありまして、部分部分は確かにブルースなんですが、どこからどこまでがテーマなのか今ひとつ判然しないところがあって、そうこうしているうちにワイルド系のテナー・ソロが聴こえて来ました。けっこう普通なのでセルダン・パウエルかと思ったんですが、原文ライナーを見るとラティーフということになっておりますな。イングリッシュホルンからテナーサックスに持ち替えて…とありますが、イングリッシュホルンらしき音はまったく聴こえてこなくて、あるいはテーマ部ではイングリホルンを吹いていたのが、ソロ・パートではテナーに持ち替えた。…ということなのかも知れません。で、ソロ2番手のクラーク・テリーがそつのないプレイを展開して、とってもナースタイなブルースのテーマに戻って、おしまい。 で、ラストの 「シャッ・キ・ペシュ」 はですね、カルチェラタンのユシェット通り4番地、ノートルダムの裏手にある暖かくて気取らないナイト・クラブの名前なんだそうです。英語表記の 「ア・キャット・ザット・フィッシーズ」 というカッコ書きがあるので、おそらく “猫ザット魚ーズ” の意味なんだと思われますが、猫は魚が好きですからね。酒の肴も好きそうなんですが、猫にイカを食べさせると腰が抜けるという話もあるので、うちの飼い猫、クロコに “いかくん” を食べさせるのはやめておきますけどね。ま、生イカの内蔵でなければ大丈夫らしいんですが、演奏のほうは珍しくフルートが主旋律を吹いていて、そこにその他管楽器が絡んで来て、ちなみにこの曲もアレンジ担当はバド・シャンなんだそうですけどね。ソロ先発は地味熱波で、イカ…いや、以下、ラティーフのテナー、テリーのフリューゲル、セルダン・パウエルのテナー、ジュリアス・ワトキンス、ラティーフ再び、トミー・フラナガン、テリー再び…と続いて、テーマに戻って、おしまい。いや、いかにもアルバムの最後を飾るに相応しいオールキャストでありまして、ま、そんなこんなで今日のところは、おしまい。
【総合評価】
アレンジ重視で何だかウエストコースト色の強い作品でありましたが、ま、そういうものだと思えばそれなりに楽しめるのではなかろうかと。そういうものだと思わないと、あまり楽しくはないんですけどね。何事も気の持ちようですなぁ。