JAZZ IMMORTAL (PACIFIC JAZZ)

CLIFFORD BROWN (1954/7,8)

JAZZ IMMORTAL


【パーソネル】

CLIFFORD BROWN (tp) STU WILLIAMSON (valve tb) ZOOT SIMS (ts)
BOB GORDON (bs) RUSS FREEMAN (p) SHELLY MANNE(ds)
JOE MONDRAGON (b) <#1-3> CARSON SMITH (b) <#4-7>

【収録曲】

DAAHOUD / FINDERS KEEPERS / JOY SPRING / GONE WITH THE WIND
BONES FOR JONES / BLUEBERRY HILL / TINY CAPERS

【解説】

  秋ですなぁ。秋といえばサンマの季節です。が、実を言うと僕はサンマがあまり好きではなくて、どちらかというとサバのほうがいいよね。…と思っているんですが、どうしてサンマがあまり好きでないのかというと、頭があるのが嫌なんですよね。いや、サバにも頭はあると思うんですが、塩サバとかサバの味噌煮になっている段階では切り身になっているので、あまり頭を意識しなくてもいいんですよね。ところがサンマにはですね、頭があります。それどころか “はらわた” まであります。サンマ通の人に言わせれば、あの “はらわた” がうまいんやんか!…ということになるんですが、僕は駄目ですね。なぜ駄目なのかと言うと、苦いからなんですが、ブラックコーヒーとか、正露丸とか、苦いものはどうも苦手なんですよね。もしサンマのはらわたにも正露丸のような糖衣タイプのものがあればいいんですが、 “サンマのはらわたトーイ” が現実のものとならない限り、僕がサンマのはらわたに手をつけることはないと思います。

 はらわたというのは、要は腸ですよね。 “はらわた” とパソコンで入力して変換キーを押すと “腸” という漢字が出てくることからもそれは明らかなんですが、腸というのは早い話がウンコの通り道ですよね。あすは人間ドック…というか、さんまドックの日だから、夜の9時以降は絶食なんだよね。…というサンマならともかく、たいていのサンマは腸の中に消化途中のものやら、ウンコになりかけのもの、あるいは完全にウンコになったものまで、いろいろなタイプの “元エサ” を溜め込んだまま捕獲されているにちがいありません。はらわたを食べれば当然、そのようなものも同時に摂取することになるんですが、あの苦い味というのは腸そのものの味なんですかね?それとも中身の味なんでしょうか? さっき、ゴーヤを食べたんだよね。…というサンマの腸なら当然苦いような気がするんですが、じゃ、お茶請けにヨーカンを食べたサンマの腸は甘いのか?…というと、そんなことはないような気もするし、そういえば肝というのはたいてい苦いような気もするし、そもそも “苦い” というのは人間にとってどういう意味を持っているのでありましょうか?

  味覚には甘味、酸味、塩味、苦味の4つの要素があると言われています。最近はこれに “うま味” を加えて、5つの基本味とすることが多いようですが、あまり基本的でないものには辛味、渋味、刺激味、無味、脂身味、アルカリ味、金属味、電気の味なんてのもあるみたいですけどね。実際にはこれらの要素が複雑に絡み合って、甘酸っぱかったり、うま塩かったり、アルカリ渋刺激かったりすることになるんですが、味覚というのは嗅覚と同じく化学受容体に物質が結合することで検出されるんだそうですね。人間の場合、味覚受容体細胞は主に舌の “味蕾” と呼ばれる部分にあるんですが、それ以外に口の奥の上面や喉頭蓋、食道上部内面などにも分布しているんだそうで、なるほど、食堂で食べた塩サバ定食の塩味は食道の部分でも感じることが出来るんですな。でもまあ、基本的にはモノを飲み込んでしまえばほとんど味を感じなくなってしまうので、喉や食道の味覚受容体細胞はあまり感受性がよくないんだと思いますが、ちなみにナマズなんかは味覚受容体細胞が全身に分布しているんだそうです。ああ見えてけっこう舌が肥えている…というか、全身が舌のようなヤツだったんですな。「わたし、全身が性感帯なのぉ♪」…というギャルがたまにいるそうですが、アレの味覚バージョンとでも言いましょうか、その割には “おちょぼ稲荷” で食べたナマズの蒲焼は値段のわりにさほど美味くもなかったんですが、ま、本人…というか、本ナマズの味覚が発達しているのと、食べて美味しいのとは、また話が別ですからね。

 で、舌の表面には “乳頭” というのがあるんだそうです。舌にそんなものがあるというのは意外なんですが、乳にある乳頭と区別するために、こちらのほうは “舌乳頭” と呼ぶんだそうですが、舌の乳頭には3つの種類があって、舌の先っちょから3分の2までの部分には “茸状乳頭” 、舌の横っちょには “葉状乳頭” 、そして舌の奥の部分には “有郭乳頭” 。キノコには10個程度、有郭には100個程度、そして葉っぱの部分には多数の味蕾が含まれるんだそうで、ということは舌の横っちょの部分がいちばん味を感じやすいということになるんですかね?ちょっと意外な感じがするんですが、今度もし甘みの薄いスイカに遭遇したりしたら、舌の横の部分で味わってみようかと思います。ただ、舌というのは場所によって感じる味の要素が決まっているという説もあって、 それによると舌の先端が甘さに敏感で、前側部が塩味、前後部が酸味、舌の奥のほうが苦味ということになっているので、舌の側面でスイカを味わうというのはあまり得策ではないかも知れません。キャンディとか、ソフトクリームとか、スイカとか、甘食パンは、舌の先でペロペロ舐めるのが一番♪…ということなんでしょうか?そうすれば甘食パンが歯の裏側とか、口の中の上のほうにへばりつく心配もないし、確かに賢いやり方であると言えるかも知れません。そんなふうに甘食パンを食べて、美味しいか?…という気がしないでもないんですが、もともと甘食パンなんてものはそれほど美味しいものでもないので、別にどうでもいいわけでありまして。

 で、味覚は化学受容体に物質が結合することで検出されるという話を最初のほうに書きましたが、具体的にはですね、ナトリウムイオンが味覚受容細胞に受容されると、脳には “塩辛い” という 信号が伝達されるようです。塩辛いものというと、具体的にはイカの塩辛なんかがあるんですが、イカの塩辛を食べるとイカの塩辛に含まれる塩辛いナトリウムイオンが味覚細胞の分布するナトリウムチャンネルを通して細胞内に流入して脱分極がおこり、さらに電位依存性のナトリウムやカリウムのイオンチャンネルが開いてアクションポテンシャルが発生し、塩辛いという感覚が伝達されることになります。いや、まるで他所様のサイトから無断で勝手に文章を引用したかのような解説になってしまいましたが、無論その通りで、 元ネタ はここにありますので、参考までに。あまりに話が小難しいので、書いてあることの2%くらいしか理解出来ませんでしたが、なるほど、苦味を引き起こす成分は “キニーネ” というヤツなんですな。大変よくわかりました。ちなみに “うま味” を除いた4つの基本味のうち、人間がもっともよく感じることが出来るのが苦味なんだそうで、以下、塩味、酸味、甘味と続きます。中には濃度によって味が変わるものもあるそうで、例えば甘いものの代表のように思われているサッカリンは濃度が低いうちは甘味を感じるんですが、あまり濃度が高くなると一転して苦味を感じさせるようになるんだそうで。なるほど、僕が子供の頃に正露丸トーイをずっと舐め続けていたら、最初はとっても甘かったのに、途中で猛烈な苦味に激変してしまたのは、そういう理屈であったわけですな。いや、それとこれとはまったく話が別のような気もするんですが、塩味が甘味を増強する “交差” という現象もよく知られていて、スイカに塩をふって食べたり、ゆで卵に塩をふって食べたりするのはこの原理を応用しているわけですよね。いや、ゆで卵のほうは純粋に塩味が欲しいからそうしているだけのような気もするんですが、それにしても甘味の薄いスイカというのは塩をふりかけさせたり、舌の横のところで食べさせたりと、何かと手間のかかるヤツでありますな。そもそも僕はスイカがあまり好きではないんですよね。俗に“スイカップ”と呼ばれる乳のデカ過ぎるギャルもあまりタイプではなくて、アンデスメロンくらいがいいんぢゃないか?…と思うんですが、ま、そんなことはどうでもよくて。

 苦味を感じさせる代表選手である “キニーネ” というのはキナの木から取れるものなんだそうです。キナの木だから、キニーネ。それではまるで、蛭から取れるからヒルジンという発想と同じではないか!…と思わずにはいられませんが、化学物質のネーミングなんてのはその程度のものなんでしょう。で、このキニーネはですね、マラリアの特効薬として知られていたんだそうです。苦いんだけど、薬効は抜群。まさに “良薬は口に苦し” を地で行く話でありますが、この言葉は正露丸にもそのまま当て嵌めることが出来ますよね。ゴーヤは苦くてマズイんだけど体にはいいし、肝は苦くてキモいんだけど、やっぱり体にいいし、つまりまあ、 “苦い=体にいい” ということが言えそうなんですが、世の中、どんな物にも例外があると言うか、表もあれば裏もあるというか、ま、確かにそれはそうですよね。日本列島にだって表日本と裏日本があるし、茶道の流派には表千家と裏千家があるし、ビデオとかDVDの世界にだって表モノと裏モノがありますよね。ま、中には “超薄消し” といった微妙なものもあったりするんですが、あ、よく通信販売で売られている “モザイク除去装置” というのはまったくのインチキなので注意が必要です。たぶんインチキなんだろうな。…と思いつつ、一縷の望みを託して買ってみたら、やっぱり全然駄目ぢゃないか!…という結果に終わって、苦々しい思いをした人も少なくないに違いありませんが、9800円という値段が絶妙なんですよね。これがもし980円だったらインチキに違いないし、19800円だったら、もしかして本物かも知れないけど、ハズした時のリスクが大き過ぎてなかなか購入に踏み切れないんですが、9800円。それくらい出せば、ビデオのモザイクくらいは除去出来るような気もするし、もし騙されても首を括らなければならないほどの痛手でもないしぃ。…というので、ついつい駄目モノで購入してしまうんですが、やっぱりインチキ商品ぢゃんか! ちなみに製造業者の名誉のために言っておくと、いくつかあるモザイク除去装置のうち、 “ネガポジ反転” という機能だけはちゃんと効果があるんですけどね。ただ、ネガポジ反転したところで丸見えなのは変わりないので、肝心な部分にこの効果が使われていることはないんですが、顔を分かりにくくするためにネガポジ反転してあるギャルの顔を普通の映像で見るくらいのことは出来ます。いや、たったそれだけのために9800円!?…と考えると今でも腹が立ってきちゃうんですが、ま、そんなことはどうでもよくて。

 強い毒性で知られるアルカロイド類というのは、とっても苦いんだそうです。嘘だと思ったら一度舐めてみるといいんですが、ちなみに山菜には苦味のあるものが多いんですが、あれはアルカロイドが含まれているからなんだそうですね。なら、毒ぢゃん!…という気もするんですが、ま、中には食べると毒な山菜もあるだろうし、ちょっとくらい食べるだけなら大丈夫なものもあるだろうし。人間の味覚が苦味に対して一番敏感なのは、アルカロイド系の毒物に対する警戒信号であるという話もあるわけでして。そもそも、アホと天才というのは紙一重なんですが、毒と薬も紙一重ですからね。早い話が薬というのは悪いバイキンをやっつけるものでありまして、やっつけられるバイキン側にしてみれば毒以外の何物でもないわけです。だから用法を間違って薬をたくさん飲みすぎたりすると、人間にとっても毒になる可能性が非常に高いんですが、嘘だと思ったら睡眠薬を死ぬほど飲んでみればいいんですけどね。

 とまあそんなことでサンマのはらわたなんですが、サンマにはですね、胃がないんだそうですね。サンマに胃がないというのはちょっと意外でしたが、そのためサンマは食べたものを長く溜め込むことが出来ずに、食べてから30分後にはウンコとして外に排出されるんだそうで。つまりまあ、サンマのはらわた=ウンコまみれ説はまったくの間違いだったわけでありまして、何も “さんまドック” を前に絶食しているサンマでなくても、腸の中は綺麗な状態であるわけなんですね。ま、そのサンマがたまたま食後30分以内だったとすれば、やっぱり駄目なんですけどね。サンマが1日3回食事をするとすると、1日のうちで食後30分以内である確率は 1.5h÷24h=6.25%ということになります。つまりサンマを16匹食べれば、そのうちの1匹のはらわたはウンコ入りであるという確率になるわけです。日本人が1年間に食べるサンマの量は年間で約10万トン。サンマ1匹の重さが150グラム、日本のサンマ人口が1億人だとすると、1人あたりの年間サンマ消費数は 6.67匹といったところでしょうか。今年食べるサンマのはらわたがウンコ入りである確率は40%強ということになりますが、ま、サンマが1日3回食事をするかどうかは根拠があやふやなので、あまり正確な数字とは言えないんですけどね。1日1回なのかも知れないし、30分で排泄するということはすぐに腹が減ることになるので、のべつ幕なしに餌を食いまくっているのかもしれないしー。

 さんま、さんま、さんま苦いか塩つぱいか。…って、はらわたまで食うから苦いんだって!…と思わずにはいられませんが、ちなみにサンマのはらわたで苦いのは、やっぱり肝の部分なんだそうですね。ただ、サンマの肝も新鮮なうちは苦くはなくて、古くなって肝臓の中にアミンという成分が出来ると苦くなっちゃうんだそうです。捕獲して12時間を経過すると次第に苦味が出始めて、24時間で完全にニガニガになっちゃうんだそうです。捕獲から12時間以内であって、食後30分以内ではないサンマ。そういう条件であれば苦くもなくて、ウンコ臭くもないはらわたを味わうことが出来るわけですが、なかなかそんな新鮮なサンマを口にすることは出来ませんからね。で、調べてみたらやっぱりサンマというのは常に餌を食べ続けていないとすぐに腹が減っちゃう生き物のようでありまして、これで腸内ウンコまみれの可能性は6.25%以上に高いことがほぼ確実になりました。あなたはそれでもサンマのはらわたを食べますか?僕はやっぱり、嫌です。 ということで、サンマのお話はおしまい。

 ということで今日はクリフォード・ブラウンでありますが、栗というのも秋の味覚のひとつですよね。もっとも僕は栗というのもあまり好きではないんですが、何故かと言うと、たまに中に虫が入ってたりするのが嫌なんですけどね。大抵は途中で気が付いて排除しちゃうからいいようなものの、もし気付かずに虫なり食べちゃったらどうしよう?…と思うと、虫酸が走る思いが致します。残留農薬の問題とかは別にいいので、ガンガン消毒しまくって虫ケラどもを殲滅しろって!…と思わずにはいられませんが、そんなことでまあ、クリフォード・ブラウン。僕は栗はあまり好きではないんですが、クリちゃんは割と好きなほうでありまして、クリ派か?中派か?…と言われれば、断然クリ派のほうであります。ちなみにクリ派というのはクリフォード・ブラウン、中派のほうは中曽根康弘を支持する一派のことなんですが、あんなスダレ頭のおっさん、ちっともソソられるものがないですもんね。で、今日はパシフィックジャズの 『ジャズ・イモータル』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、これはブラウニーがズート・シムスシェリー・マンといった白人の面々と組んだ作品でありまして、 「ダフード」「ジョイ・スプリング」 といったおなじみの曲も多く、なかなかいいんぢゃないか?…という気がしないでもないんですが、果たしてどんなものでしょうか?…というので、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 まずはえーと、 「ダフード」 です。ブラウニーの代表的なオリジナルのひとつですよね。この人の書く曲は陽性なキャラと相俟って、あまり陰りのない作風のものが多いんですが、ファンキーではなくてハード・バピッシュな佳曲という点ではなかなかのものではないかという気がしないでもありません。 で、このアルバムにはブラウニーとズート以外にスチュ・ウイリアムソンのバルブ・トロンボーンとボブ・ゴードンのバリトン・サックスが入って、何だか渋い低音中心の4管編成になっているんですが、テーマ部の重厚なアンサンブルなど、いかにもウエスト・コーストといった感じがして、悪くないですよね。いかにもイカの塩辛。…という感じがしたところで、イカ臭くて生臭いだけであまりソソられるものはないんですが、西海岸の白人ジャズというのはオシャレでスマートですからね。ま、僕は編曲偏重のジャズというのはあまり好きではないんですが、本作の場合はテーマ部に続いてアドリブの達人、クリフォード・ブラウンの絶妙なソロが登場するので、気分的には東海岸的ハード・バップのノリで楽しめるところがポイントでありますな。で、ここでのクリちゃんの吹きっぷりはというと、いや、いいですよね。アドリブがちゃんとメロディになってますもんね。アドリブがメロディになるというのは簡単そうでいて、実は春雨がマロニーになるのと同じくらい難しいものでありまして、いや、春雨もマロニーも似たようなものなので、そちらのほうはあまり難しくないのかも知れませんが、ブラウニーの場合はまったく難しさを感じさせずに、さらっとそれをやってのけるところが凄いですよね。1954年の吹き込みということは夭折した彼にしてもかなり初期の部類に入るんですが、すでにそのスタイルは完成の域の寛政の改革に達していると言えるでありましょう。

 で、ソロ2番手のズートも、アドリブが出来るキャラですよね。ごついルックスのわりに、割と繊細なプレイをするおっさんでありまして、ズートの人気は日本でも “ずうとるび” に匹敵するものがありますからね。ところで 「笑点」で座布団運びをやってる山田クンって、ずうとるびの出身だったんですね。ちっとも知りませんでした。というか、ずうとるび自体が 「笑点」 から生まれたバンドだったというのも今はじめて知ったんですが、そんなことでまあ、ここでのズートはなかなかよい演奏をしていると思います。続くボブ・ゴードンのバリサク・ソロも短いながら悪くないんですが、僕はむしろラス・フリーマンのピアノ・ソロに85点を付けてやりたいですね。はずむようなタッチと、よく歌うフレーズ。なかなかの出来だと思います。マイナスとなった15点分は、名前がラス・フリチンマンでないから、つまらない。…という理由によるものなんですが、4分13秒という短い演奏の中に各ソロイストの持ち味と、テーマ・アンサンブルの妙がうまく発揮されていて、なかなかの好演奏だったと思います。 で、次。 「ファインダーズ・キーパーズ」。J.R.モンテローズでないほうのジャック・モントローズの曲のようですが、いかにもウエスト・コーストらしい、流れるようなメロディが印象的な作品ですな。4管のハモり具合も絶妙でありまして、で、ソロ先発はブラウニーなんですが、相変わらずいいフレーズを吹いておりますな。ブラ好きのおじさんにも、ウニ好きのお姉さんにもきっとご満足いただけると思いますが、やはりこの人はくれくらいのミディアム・テンポがいちばん美味しいですよね。続くズートもなかなかの好演で、ただここでテーマに戻ってしまってラス君のピアノが聴けなかったのはちょっと残念なんですが、ま、ちょっとした小品と佳作といった感じの1曲だったと思います。

 で、3曲目、 「ジョイ・スプリング」 。楽しいバネ…ではなくて、スプリングは春のほうだと思うんですが、秋を代表する味覚がサンマと栗であるとすれば、春の食材は春雨と春巻ですよね。僕の心のランキングでは、春巻>>>春雨=栗>サンマという順番になるので、秋よりも春のほうが食べ物に関しては嬉しい気がするんですが、ま、春巻も春雨も、別に春でなくても食べることは出来るんですけどね。で、ここでの 「ジョイ・スプリング」 はブラウン=ローチ・クインテットのヴァージョンに比べるとテーマ部のアレンジが綿密で精密で餡蜜で、その分、ちょっぴり甘い嫌いがないでもないんですが、何せウエスト・コースト編ですからね。これはこれで、こういう路線もアリかな?…という気がしないでもなくて、で、ブラウンのソロもなかなかの出来でありますな。ただ、ちょっと時間が短いところが残念ではありますが、何せウエスト・コースト編ですからね。これはこれで、こういう路線もアリかな?…という気がしないでもなくて、で、続くズートのソロも朗らかな味があっていいと思います。ただ、今度もラス君のソロが聴けないまますぐにテーマに戻ってしまって、全体の演奏も3分14秒と短く、かなり物足りない思いが残ってしまったんですが、でもまあ仕方がないですよね、所詮はウエスト・コーストなわけだしー。 ということで、4曲目。 「ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド」 は、 「風と共に去りぬ」 の邦題で知られるスタンダードであります。個人的には “去りぬ” よりもテリーヌのほうが好きなんですが、ま、テリーヌというのもタロイモに比べればまだまだなんですけどね。タロいですからね、タロイモという奴は。 で、この曲、シェリー・マンとラス・フリーマンの “マンマン・コンビ” が中心となって演奏されるテーマ部が今までにないパターンで新鮮でありまして、そこにホーン・アンサンブルが被ってくるというアレンジも秀逸です。ただ、ピアノとタイコの息がまったく合っていないところがご愛嬌なんですが、ソロ先発にボブ・ゴードンのバリトン・サックスを持ってきたところはなかなかでありますな。いつもブラウニーからズートヘというパターンでは飽きちゃいますからね。で、ボブの後にズートが出てきて、最後はブラウニーが締めるんですが、またしてもラス・フリーマンにソロ・スペースが与えられなかったのは、やはりテーマ部のバタバタした弾きっぷりに対する見せしめでありましょうか?その証拠にテーマの再現部は提示部とは違ってホーン・アンサンブルが中心になったものへと変わっているんですが、ま、中間部にはラス君も登場して、相変わらず息の合ってないプレイを披露しているんですけどね。

 ということで、5曲目です。 「ボーンズ・フォー・ジョーンズ」 はブラウニーのオリジナルなんですが、初めて耳にする曲でありますな。出来としては、まあまあかな?…といったところでしょうか。4管ハーモニーもそろそろ飽きてきちゃったし、似たようなテンポの曲ばかり連続しているので、そろそろバラードとかを聴きたい気分なんですが、またしてもミディアム・ファストでありますな。ブラウニー、ズートと、おなじみのソロが続くんですが、ま、久しぶりにラス・フリーマンのピアノを聴くことが出来たので、これはこれでよかったよね。…ということにしておいて。 で、6曲目の 「ブルーベリー・ヒル」 は4ビートとワルツ・タイムが交錯するところが山田耕筰的に楽しいナンバーであります。ブラウニーのソロの後、珍しくスチュ・ウイリアムソンのバルブ・トロンボーンとボブ・ゴードンのプレイが聴けるところもいいですね。 ということで、ラストです。 「タイニー・ケイパーズ」 。ブラウニーのペンによるなかなか調子のいいナンバーでありまして、その調子のいいところがとっても調子よくて、いいと思います。んなことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 最後のほうはかなりと駆け足になってしまいましたが、しょうがないよね、運動会の季節だしー。 で、運動会と言えば栗ですよね。いや、なんとなく運動会と言えば栗だよね。…という印象があるんですが、クリフォード・ブラウンのこの1枚は、ま、手堅くまとまった作品だとは思うんですけどね。やや似通ったタイプの曲が多くて後半ややダレ気味でありますが、しょうがないよね、夏場の疲れが出る季節だしー。 ということで、総論を述べると、まあまあかな。…という出来なのでありました。


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