CROSS SECTION (PRESTIGE)

BILLY TAYLOR (1953/5/7,1954/7/30)

CROSS SECTION


【パーソネル】

BILLY TAYLOR (p) EARL MAY (b) PERCY BRICE (ds) <#1-8>
CHARLIE SMITH (conga) <#9-12> JOE MANGUAL (bongo) <#9-12> UBA NIETO (timbale) <#9-12> MACHITO (maracas) <#9-12>

【収録曲】

EDDIE'S THEME / MOOD FOR MENDES / LULLABY OF BIRDLAND / GOODBYE
TUNE FOR TEX / MOONLIGHT IN VERMONT / BIDDY'S BEAT / I'LL BE AROUND
I LOVE TO MAMBO / CANDIDO MAMBO / EARLY MORNING MAMBO / MAMBO AZUL

【解説】

  “ころうどん” の “ころ” というのは、どういうものなのか?…というのが今日のテーマなんですが、いや、今日のお昼に食べたんですよね、ころうどん。 みんながころうどんを頼んでいるので、主体性のない僕もそれに乗ることにしたんですが、僕が想像していたのとはかなり違った食べ物が出てきたので、ちょっと焦りました。僕が頭の中に描いていたのは、上にコロッケが乗った温かい煮込みうどんだったんですが、上にコロッケは乗っていないし、温かくはないし、煮込んでもないし、僕の予想と合致していたのは、うどんである。…という、ただその一点だけだったんですが、ころうどんの “ころ” がコロッケの “ころ” でないとすれば、ころうどんの “ころ” はどこに転がっているというんでしょうか? …と思って調べてみたところ、どうやら “ころうどん” というのは岐阜ローカルなメニューのようですね。あるいは名古屋あたりでも食べられるのかも知れませんが、少なくとも桑名の荒木屋とか橋本屋にはそのようなうどんはありませんでした。 “しっぽく” というのはあったんですけどね。 “しっぽく” というのは具が何にも入っていない、うどん屋の中でも最下層のメニューであるわけですが、世間一般ではそのようなうどんのことを “素うどん” というらしい。…ということを知ったのは、かなりオトナになってからのことでありました。コドモの頃には “しっぽく” という名前からして、海老の天麩羅はまあ無理としても、海老の天麩羅のしっぽくらいは入っているのか?…と思っていたんですが、それすらも入っておりませんでした。ま、海老天のしっぽが入っていたところで邪魔なだけの話で、うれしくも何ともないのでそれはそれで別にいいんですが、しっぽくの語源が “しっぽ食う” でないとすれば、 “しっぽく” という言葉はどこから来たというんでしょうか?

 …とまあ、ふと気がついたら前々回の鍋焼きに続いてまたしても “うどんネタ” になってしまいましたが、最近、事務所にいて昼食を食べにいく時のバリエーションが “一番楼” 一辺倒ではなくて、何だか難しい漢字四文字の定食屋だったり、 “たくみ屋” という名前のうどん屋だったりするんですよね。 で、今日は中華の気分だよね。…と思っていたところ、連れて行かれた先が “たくみ屋” でありましたので、やむを得ずまた “うどんネタ” ということになったんですが、ちなみに昨日はですね、タカシ、マサル、ヒロシ (敬称略) の浜田ファミリーと一緒に大垣市内の “めしの郷” へ行きました。出来合いのおかずが陳列されたケースから自分で好きなものを取って来て食べるセルフ方式の店なんですが、リーズナブルなように見えて、ついつい油断して皿を取りすぎると平気で1000円オーバーになったりするので、なかなか油断ならないんですよね。 昨日の店もけっこう値段が高くて、最初に登場する “冷おかずの部” でハムサラダに手を伸ばしかけて、さんびゃくナンボという値段に目がいって思わず手を引っ込めてしまったんですが、浜田ファミリーに奢ってもらうのに、あまり贅沢をしては罰が当たりますからね。結局、天麩羅の盛り合わせ+ご飯+味噌汁という、かなり貧相なメニューになってしまって、ハムは無理だったとしても、せめてスパゲティサラダくらいはたかっておくべきやったな。…と、2時間近くも後悔することになってしまったんですが、何だかプアーでしたからねー。 天麩羅の盛り合わせを食わせて貰って、何を贅沢ぬかしておるか?…と思われるかも知れませんが、天麩羅といってもイモとシシトウとチクワだけで、エビがなかったところが寂しかったです。 ま、個人的にチクワというのは素材としてエビと同等…とまでは言えないまでも、エビの六掛けくらいの価値があるから別にいいんですが、何だか悔しいので今日のお昼は普通の “ころうどんランチ” ではなくて、 “天ころうどんランチ” を頼んでしまいました。一匹ではありますがちゃんと海老の天麩羅が入っていて、僕は大いに満足した次第なんですが、ところで、ころうどんの “ころ” というのは一体どこに転がっているというんでしょうね?

 という問題に入る前に、まず “しっぽく” を片付けておかなければなりません。 “しっぽく” というと、かなり豪華な料理を想像する人もいるかも知れませんが、それは恐らく長崎の “しっぽく料理” をイメージしているのでありましょう。しっぽく料理の “しっぽく” は漢字では “卓袱” と書いて、もともとはテーブルクロスを意味する言葉なんだそうですが、それが転じて食卓の意味になり、そこに乗せる料理のことを “しっぽく料理” と呼ぶようになったそうです。何だか今ひとつ論理的ではないネーミングでありまして、この伝 (つて) でいくと食卓の上にさえ乗っていれば、たとえスッポンのしっぽをアルミホイルで包んで焚き火で焼いたようなものでも “しっぽく料理” ということになってしまいますよね。どうも僕は未だに “しっぽ食う” という呪縛から逃れられずにいるわけなんですが、ま、要するに “しっぽく料理” というのは食卓の上に並べきれないような豪華なコース料理といった意味合いがあるんでしょう。その意味では、なんでもかんでもとにかく大きな皿に盛り付けて客に食わせる高知の “皿鉢(さわち)料理” と同じようなものですよね。さわち料理というと何となく、サワラとハマチが出てくるのか?…という印象があるんですが、そういうものではないみたいですからね。 で、豪華な料理の代名詞である “しっぽく” という言葉が、うどんになった途端に最下層の素うどんになってしまうメカニズムが今ひとつよくわからんのですが、ちなみに、うどんの本場の讃岐でいう “しっぽくうどん” というのは僕がイメージしているしっぽくとはまた違ったタイプのうどんなんだそうでありまして。

 学問の神様、滝宮天満宮のすぐ近く、綾川が流れる静かな町にうどん通ならだれもが知る 「松岡」 はある。今回のお目当ては、期間限定の人気メニュー 「しっぽくうどん」 。さっそくのれんをくぐってみよう。 熱心にうどんを練るご主人の横で奥さんが出してくれたあつあつの一品は、大根、ニンジン、揚げ、里芋、そして風味の良いカシワ肉と、田舎料理さながらの具だくさん。 …って、そんな具だくさんのうどんは、しっぽくとは言わん!…と、僕は思うんですよね。ここでいうしっぽくは、明らかに長崎で言うしっぽくのしっぽを引きずってておりまして、ま、大根、ニンジン、揚げ、里芋、そして風味の良いカシワ肉…といった具の内容からは決して“豪華”という印象は得られないんですが、 “とにかくたくさん” といった意味は残されているわけです。話を少し東のほうに進めてみることにしましょう。 西日本でも地域によって具がちゃいますねんけど、野菜系の具が多いおうどんの事をしっぽくうどんと言いますねん。 そうですか。やっぱり具だくさんなんですか。言葉遣いから判断して、大阪あたりでも “しっぽく=具だくさん” という法則は生きているようなんですが、僕の記憶違いでなければ、桑名の荒木屋や橋本屋のしっぽくうどんというのは決して具だくさんではなかったような気がするんですけどね。 具だくさんも何も、具と呼べるようなアイテムはネギくらいしか入ってなかったような気がするんですが、 “しっぽくうどん” で490件ほど検索してみても、素うどんのことをしっぽくうどんと呼ぶなどという話はただのひとつもありませんでした。桑名限定の局所的な呼び方なのか、あるいは単なる僕の思い違いなのか。一度、荒木屋と橋本屋に行って確認してみなければなりませんが、そんなことでまあ、続いては “ころうどん” なんですけどね。

 ころうどん : 岐阜県発祥の郷土料理。冷やしたうどんの上にみりん醤油などの冷たい出汁 (香露) をかけてたべる。讃岐うどんのぶっかけによくにている。

 そうそう。確かにそんな感じのうどんでありました。 で、“ころ” というのは “香露” のことだったんですな。今度、ギャルと一緒に “ころうどん” を食べるような機会に恵まれたら、「 “ころ” というのは “香露” のことなんだよ。」 という知識を披露して、「まあ、さばさんって物識りなのぉ♪」 という高い評価を得たいと思っておりますが、ただ井上章一センセイの 『アダルト・ピアノ』 という本には、知識自慢をする爺さんはモテない。…などと書書いてありましたので、ヤメておいたほうがいいかも知れませんけどね。 で、知識自慢ついでに、もうひとつウドンねたを披露しておきますが、うどんと冷麦とでは、どこがどう違うか知ってますか? 僕は知りません。うどんより冷麦のほうが細いよね。…くらいの知識しかなかったんですが、調べてみたところ、日本農林規格 (JAS) では実に厳格な基準が設けられておりました。丸麺では断面の直径が 1.7mm以上、角麺では幅 1.7mm以上のものを 「うどん」 としており 「ひやむぎ」 の角麺( 幅 1.2〜 1.7mm、厚さ 1.0〜2.0mm )と区別している。…とのことでありました。この定義から僕たちは何を読み取ることが出来るのかというと、まず第1に、うどんには丸麺と角麺とがあるんだね。…ということなんですが、それに対して、ひやむぎのほうは角麺しか存在しないんですね。ひやむぎは細いから、あまりその断面をしげしげと観察したことはなかったんですが、言われてみれば確かに四角かったような気がします。ちなみに、うどんとひやむぎというのは太さだけでなくて、製造工程にも違いがあるそうですが、生地を麺棒や機械で伸ばしてから切るのが “うどん” で、細く丸めた生地を引っ張って伸ばすのが “ひやむぎ” なんだそうで。 じゃ、生地をあまりにも細く切り過ぎて太さが 1.69mmくらいになったものだとか、丸めた生地を引っ張って伸ばしきれずに 2.00mm を超過してしまったものとかはどうするんだ?…という気がするんですが、それと同時に、丸めた生地を引っ張って伸ばしたものがどうして角麺になるのか?…というのも不思議ですよね。ところてんのように四角い網から押し出すのであれば間違いなくその断面は四角くなるような気がするんですが、あるいは生地を麺棒や機械で伸ばしてから切っても角麺になると思いますが、では、そうめんとか、きしめんはどうなっているのか?…という新たな問題も登場して、更にそこにビーフンでも加わったりすれば、事態はより一層深刻になってしまいます。

 ビーフン : うるち米を原料とする乾麺のひとつ。

 こいつは原材料が違うから仲間はずれにしても大丈夫ですね。仲間はずれにされて、グレて、根性焼きに走ったりして、焼かれた箇所が焼きビーフンになっちゃうかも知れませんが、それは自業自得というヤツでありまして。 で、そうめんなんですが、これはですね、直径 1.3mm未満です。油をまぶしながらよるようにして伸ばして作ります。丸麺なのか角麺なのかはよく分からんのですが、いろいろと調べているうちに、麺の断面が丸かろうが、四角かろうが、そんなことはどうでもいいような気もしてきました。もしかしたら丸麺のひやむぎというのもあるかも知れず、かと思えば細うどんとひやむぎの製法は同じという話も出てきたりして、僕は大いに混乱しているところでありますが、でもってきしめんはですね、幅 4.5mm以上、厚さ 2.0mm未満なんだそうです。平たいですよね。この平たさが独特のビラビラ感を生んでいるわけなんですが、そもそもどうしてきしめんは平たいのかというとですね、茹でる時間を節約するためだと言われております。なるほど、確かにヒラヒラしているほうが早く中心部にまで火が通るような気がしますよね。実際のところ、うどんを茹でるのに 10〜12分ほどかかるとすると、きしめんの場合は 6〜7分と、約半分で済むんだそうです。とっても経済的ですよね。ま、それを言うなら、ひやむぎとかそうめんのほうが全体的に細い分だけ茹で時間も短くて済むんですが、ひやむぎとかそうめんは全体的に細い分だけ何だか物足りないような感じもあって、ああん、やっぱり太いほうがイイのぉ。…などと贅沢なことを言ってるギャルの言い分も、ま、分からんでもないんですけどね。 その点、きしめんというのは満足度と経済性が見事にバランスしておりまして、いや、昔の尾張の人はなかなかうまいことを考えたものでありますな。

 そっか!大きくも太くもならない以上、平たくすればいいのか!…と、きしめんから得られた教訓は決して小さくないわけでありますが、もし万力で挟むなどしてきしめん状の形状が得られたとしても、実際のところは、「ああん、何だかヘンな形なのぉ。」…とか言われて気味悪がられるだけのような気もするので、その苦痛に見合うだけの成果は得られないような気もするんですけどね。…って、いつの間にやらきしめんではなくて、海綿体の話になってしまいましたが、そんなことで麺類の話は、おしまい。

 ということで、今日はビリー・テイラーです。地味ですね。地味なんだけど目立たない。そういうキャラであるわけなんですが、それにしても “中央自動車道名物・ソースぬれせんべい” は今ひとつでしたなぁ。パーキングエリアで見つけて、ああん、とっても美味しそうなのぉ♪…と思って買ってみたんですが、思った以上に今ひとつでありました。いや、餅のような独特の食感をお楽しみください。…と書いてあったので、ちょっと嫌な予感はしていたんですが、食べてみたら餅のような独特の食感でありましたので、愕然としてしまいました。こんなん、ただのシケったせんべいやん!…としか思えなくて、噛みしめるとソースがたっぷり染み込んだ生煮えのゴハンの味がして、とっても不快です。ひさしぶりにマズいお土産に出会ったな。…という充実感でいっぱいでありますが、そういえば浜名湖で買った “メロンバウム” もかなり今ひとつでありましたので、2カ月に1回くらいの割合でまずいお土産を食っているような気もするんですけどね。 とまあ、ビリー・テイラーでは間が持たないのでどうでもいい話で行数稼ぎをしておきましたが、今日紹介するアルバムは 『クロス・セクション』 というヤツなんですけどね。2つのセッションを寄せ集めたような構成になっているんですが、古い方は 1953年の録音ということなので、凄ぉーく初期の作品ということになりますね。そういえばジャケットを飾っているテイラー君の顔がとってもヤングですよね。 いるいる!同じクラスにこの手の顔のヤツって、必ず一人はいる!…という気がする、丸っこい眼鏡をかけたなかなかポピュラリティーのあるルックスの持ち主なんですが、モテるタイプかというと、ちょっと微妙なところではあるんですけどね。性格はいいんだけどねぇ。…という評価は得られるものの、そこから先には一歩も進んでいかないようなところがあって、ま、図書委員でもやらしておけばそつがない仕事をこなしてくれるに違いないので、それなりに便利な存在ではあるんですけどね。 とまあそういうことで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 前半のセッションのほうが録音は新しくて、1954年となっているんですが、よく考えたらテイラー君がまだ若かったこの時代から、すでに半世紀もの時間が経過しているわけですよね。モダン・ジャズはもはやクラシックの領域に足を踏み入れつつあるわけですが、演奏のほうはまったく古さというものを感じさせません。…という事もなくて、さすがに 54年の録音となるとレトロな雰囲気が強く感じられたりするんですが、まずはオーソドックスなピアノ・トリオによる演奏でありますな。1曲目の 「エディーズ・テーマ」 はニューマンの作曲ということなんですが、このニューマンというのがどういう人なのか、よく知りません。ニューマンだけに、乳男ですかね? 曲そのものはバピッシュな感じのナンバーなんですが、歌モノっぽいところもあったりして、その正体はよくわかりません。軽快にバウンスするテイラーのピアノ、切れ味鋭いパーシー・ブライスのドラムス、そしてネチっこいアール・メイのベース…と、三位が一体となった演奏が繰り広げられておりますが、テイラーのスタイルはやはりパウエル派と言ってもいいのでしょうか? 地味な感じは何となくエルモ・ホープを思わせるような気がしないでもなく、全然違うような感じがないでもなく、フレーズの一部にはちょっぴりモンク的なところもあったりして、ま、要するによく分からんキャラではあるんですけどね。 ということで、2曲目です。 「ムード・フォー・メンデス」 はテイラーのオリジナルなんですな。粉を練ったものを細長く切った食品は麺です。…といった感じのムーディな作品に仕上がっておりまして、いや、確かにメンデスですよね。 顔に似合わずなかなか綺麗なメロディを書くものであるな。…と感心してしまいますが、演奏のほうはアドリブというより、テーマを軽くフェイクする形で淡々と進められておりまして、ま、ほとんど灰汁(あく)がないところは山ウド嫌いの人にはいいんじゃないですかね。ウドとかあまり、ウドンとかに入れて食べたくないですもんね。…と思ったら、世の中には “うどうどん” を売り物にしている店もあるみたいなのでなかなか油断がなりませんが、とにかく全体として3分前後の演奏ばかりでありますので、ちょっともの足らない感じがしないでもないんですけどね。

 で、3曲目はジョージ・シアリングの 「ララバイ・オブ・バードランド」 でありますか。個人的にはシアリングよりもイカリングのほうが好きだったりするんですが、イカはいいですよね。イカしていると思います。そのまま胴体を輪切りにしただけでリング状になるところも偉いし、中が空洞だからいろいろなものを詰め込むことが出来ますよね。もっとも僕はイカの詰め物蒸しがあまり好きではないので、中に余計なものを詰めずに、そのまま素直に輪切りにしろって!…と思わずにはいられないんですが、それに対してジョージ・シアリングのほうはあまりよくありません。何となく、常時シアリングしていそうなところが今ひとつよくないと思うんですが、ま、本人にしてみればそんなワケのわからん理由で嫌われたりするのは心外でしょうけどね。 とまあ、あまりシアリング好きでない僕ではありますが、この 「バードランドの子守歌」 という曲は高く評価しておりまして、何と言っても邦題の語呂がいいですよね。ちゃんと七五調になっているところがポイントでありまして、これがもし、 「バードランドの子守歌丸」 だったりすれば、字余りになってぜんぜん駄目ですもんね。 で、この有名曲をテイラー君たちはなかなかスインギーに料理しておりまして、特に知名度ゼロで期待度もゼロだったパーシー・ブライスという人のドラミングがなかなかシャープでいいと思います。で、テイラーのプレイとしてはソロの後半、かなり高度な両手弾きテクが出てくるあたりが聴き物でありまして、 “一人室内楽” 的なサウンドは傾聴に値すると思います。 ということで4曲目でありますが、 「グッドバイ」 はバラードでありますな。演奏はですね、ま、そつがないバラードであるな。…といった感じでありまして、悪くはないんですが、さほどインパクトもなくて、淡々としたプレイが繰り広げられているといったところでありましょう。そろそろ面倒になってきたので解説が投げやりでありますが、えーと、5曲目は 「チューン・フォー・テックス」 でありますか。テックスに捧げられたチューンでありまして、作曲したのはテイラー自身でありますな。ミディアム・ファストの快活にしてエビカツなナンバーでありまして、いや、けっこう好きなんですよね、エビカツ。少なくともイカカツよりはいいと思うんですが、リング状になっているもの以外、あまり僕は評価していませんからね、イカを。 で、演奏のほうは相変わらずドラマーの生きのよさと、テイラーの両手弾きが目立っておりまして、ま、総体的に見れば、まあまあ。…といったところではなかろうかと。

 で、6曲目は再びスタンダードのバラードとなって、 「ムーンライト・イン・バーモント」 。日本では 「バーモントの月」 の名前で知られている甘口カレーのテーマ曲ですよね。で、演奏のほうはですね、まあまあです。 で、7曲目はテイラーのオリジナル、 「ビディーズ・ビート」 。曲、演奏ともに、なかなかです。 8曲目、 「アイル・ビー・アラウンド」 。バラードです。…と、ここまでが全体的にインパクトの薄い前半部でありまして、僕のヤル気のなさが浮き立っている気怠い土曜の昼下がりでありますが、さ、ここからは気分を入れ替えて頑張りましょう。後半のセッションは “ビリー・テイラー・トリオ・ウィズ・マチートズ・リズム・セクション” と題されておりまして、マチートのマラカスを始めとするパーカッションが多数参加しておりますので、ま、ちーとは賑やかな演奏になっているのではなかろうかと。4曲すべてがテイラーのオリジナルで、しかもタイトルにはすべて “マンボ” という文字が見られるんですが、テイラーという人はあんな顔をしておきながら、実は意外とマンボ野郎だったりするんですよね。ま、見ようによっては典型的なマンボ顔と言えないこともないので、それほど不思議な話ではないんですが、なまじ中途半端にマンボなんかにハマっている分、日本ではあまり評価されない原因にもなっているんですけどね。 とまあそんなことで9曲名の 「アイ・ラブ・トゥ・マンボ」 でありますが、これはアレですな。マンボの曲なんですな。コンガ、ボンゴ、ティンバル、マラカスのリズムも楽しく、でもリーダーが今ひとつ地味だから、なんだか物悲しい気配も漂ったりしていて、ま、1953年ですからね。録音の古さもやや派手さを低減させているところがあるんですが、ま、テイラーのマンボなんてのはこの程度の物でありましょう。

 10曲名、 「キャンディド・マンボ」 。マンボです。 11曲名、 「アーリー・モーニング・マンボ」 。マンボです。 12曲名、 「マンボ・アズル」 。マンボです。 ということで、おしまい。

【総合評価】

 前半は地味です。で、後半はマンボです。そんだけ。


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