A WORLD OF PIANO (CONTEMPORARY)

PHINEAS NEWBORN JR. (1961/10/16,11/21)

A WORLD OF PIANO


【パーソネル】

PHINEAS NEWBORN JR. (p)
PAUL CHAMBERS (b) <#1-4> PHILLY JOE JONES (ds) <#1-4>
SAM JONES (b) <#5-8> LOUIS HAYES (ds) <#5-8>

【収録曲】

CHERYL / MANTECA / LUSH LIFE / DAHOUD
OLEO / JUICY LUCY / FOR CARL / CABU

【解説】

 久しぶりに自転車を買いました。いや、自転車を買うのは久しぶりでありますな。かれこれ15〜18年ぶりくらいではないですかね? 約3年の誤差が生じてしまうほど、いちばん最後に買った自転車というのは記憶の隅に追いやられておりますが、社会人2年目の年に自動車通勤するようになってから、自転車とは無縁の生活をしてますからね。子供の頃はよくお世話になったものなんですけどね。思い返してみると、生活のすぐそばに自転車があったあの頃が、しみじみと懐かしいですなぁ。…といった郷愁の思いはそれほどなくて、むしろ嫌な思い出のほうが多いですね。どのような嫌な思い出なのかと言うと、昔の自転車ってよく壊れたよね。…というのが1点、昔の自転車ってよくカギをなくしたよね。…というのが1点、でもって、自転車ってよく盗まれたよな!…と言うのが最後の1点でありまして、では順を追って当時の自転車事情に思いを馳せてみることに致しましょう。

 当時の自転車はですね、よく壊れました。どのように壊れたのかと言うとですね、まず最初に、よくパンクしました。自転車がパンクするとどうなるかというと、タイヤの空気が抜けてペチャンコになってしまいます。こうなってしまうと、もう駄目ですよね。自転車に乗ることが出来なくなって、仕方なく押して歩くことになるんですが、歩くのが嫌やから自転車に乗っているのに、なんで歩かなアカンねん!?…と、心の底からムカついてきます。今となっては足手まとい以外の何物でもない自転車が心の底から疎ましく感じられて、思わず、たこ焼きひっくり返すヤツでええほうのタイヤも突付いて、両輪パンクさせたろかい!?…という衝動に駆られてしまいますが、いや、さすがに実行に移すような真似はしませんでしたけどね。そんな事をしてもまったくの自殺行為でありまして、自分で自分の首を絞めるだけだよね。…といった理性的な判断が働いたわけではなく、 “たこ焼きひっくり返すヤツ” が手元に無かったからなんですが、大阪人ぢゃあるまいし、そんなもの持って歩いているわけが無いんですよね。ま、大阪人でも普通、そんなものは持ち歩いていないと思いますけど。

 仕方がないので大人しく自転車屋までパンク自転車を押して歩くことになるんですが、歩き初めて700mくらいすると、再び怒りが込み上げてきます。無理矢理、乗ってったれ!…という気分になります。必ずなります。自分の気持ちに忠実な僕は実際、自転車にまたがって、強引に漕ぎ始めることになるんですが、いや、アレはいけませんね。何だかこう、車輪のスポークの継ぎ目の部分の感触がダイレクトに伝わってきますもんね。間違いなく自転車の車輪やタイヤに好ましくない影響を与えていることが体感出来て、いけない悦びに目覚めてしまいそうです。でもまあ、立ち漕ぎしてたから、ある程度のダメージは緩和されていたと思うんですけどね。サドルに座ると全体重が車輪にかかってしまうんですが、立ち漕ぎだったらケツから上の部分の重さは無視することが出来るんだもんね。…と、当時、まだ子供だった僕はマジメに思っていたんですが、今になって冷静に考えてみると、立って漕ごうが座って漕ごうが、車輪にかかる重さはまったく同じような気がしないでもないんですけどね。ただ、直接ケツに振動が伝わらない分、心理的なダメージはかなり軽減することが出来るんですけど。

 ということで、次です。昔の自転車はですね、よくチェーンが外れました。僕の身近にアゴを外したことのある人というのはあまりいませんでしたが、自転車のチェーンを外したことのある人は多数見受けられました。かく言う僕も、よく自転車のチェーンは外しました。いや、意図的に他人の自転車のチェーンを外して嫌がらせをしたことは2〜3回しかないので、僕の乗っている自転車もよくチェーンが外れました。…と言ったほうがより正確なんですが、チェーン外れというのはですね、何の前触れもなく、いきなり来るんですよね。サイクリング、サイクリング、やっほー、やっほー♪…などと、鼻歌混じりに調子よく自転車を漕いでいると、いきなり、ガガガガッ!…と嫌な音がしてペダルが重くなって、やがて今度は急に軽くなって、カカカカカッ!…と何かをこするような音がして、漕いでも漕いでも前に進まなくなってしまいます。パンクの場合は無理矢理にでも漕げば前に進むんですが、チェーンが外れた場合はそういうわけにもいきません。無理をするとチェーンが複雑に絡まって、終始のつかない状態になっちゃう恐れがありますからね。ただパンクと違ってチェーンが外れた場合は、頑張れば何とか自力で修復することも可能でありまして、ただ、油で指が真っ黒になってしまって非常にうっとうしい上に、かなり面倒な作業となりますので、そのへんに止まっている他人の自転車をかっぱらって乗っていったほうが、よっぽど楽なんですけどね。…などという不心得者がいるもんだから、自転車というのはすぐに盗まれちゃうんですよね。困ったものです。

 とまあそんなことで、新しい自転車を買うことにしたんですが、いや、盗まれたとか壊れたとか、そういうことではなくて、衝動的に、折りたたみ自転車が欲しいっ!…と思ってしまったからなんですけどね。折りたたみ自転車。何だかとっても魅惑的な響きですよね。個人的には、少なくともタタミイワシ自転車よりはいいよな?…という気がするんですが、折りたたみ自転車のどこがいいのかと言うとですね、まず第一に、折りたたみが出来るところがいいです。あと−はえーと、タイヤが小さくて乗りにくそうだよね。…とか、カゴがないから大元に “助六” を買いにいくには不便だよね。…といった否定的なイメージしかないんですが、あ、ちなみに大元というのはウチの近くにあった便所紙屋さんなんですけどね。便所紙だけでなく、はたきとか、蝿取り紙だとか、便所のスッポンなんかも売っていたんですが、うちの家ではもっぱら便所紙の購入だけに利用しておりました。 “助六” という名前の店でもいちばん安い便所紙を買って、自転車の前カゴに入れて帰ってくるのが当時の僕のオツトメだったわけですが、 “助六” の運搬姿を友達に見られると、いなば君のところはぼっとん便所なんやね。…ということが丸わかりで、大いに傷付いたものでございます。大きくなったら便所を水洗にして、自転車の前カゴにトイレットペーパーを入れて、颯爽と町の中を走ってやるぅ!…というのが当時の僕の野望であり、夢でもあったんですが、いや、大きくなってしまった今とまっては、もはやそんなことはどうでもよくなってしまったんですけどね。

 さてそこで折りたたみ自転車です。2〜3日ほど前に急に欲しくなって、昨日、仕事の帰りにサンシパークの中のカインズホームまで買いに行きました。いや、ホームセンターならうちの近くにミスター・トンカチというのがあるんですが、金槌や木槌の品揃えはともかくとして、折りたたみ式自転車となるとかなり心許ないものがあるんですよね。で、カインズに行ってみたところ、4〜5タイプ×2〜4色=15種類ほどの折りたたみ自転車が売られておりましたので、僕の選択は正しかったということになりますが、お買い物と中華料理の注文には慎重で優柔不断な僕があれこれ思い悩んでいるうちに、自転車売り場の係員がどこかに行ってしまって、いつまでたっても戻ってこなくなってしまいました。どうやら午後7時を過ぎて、自転車コーナーはヤル気無しモードに突入してしまったようなんですが、いや、そんなことでは困りますよね。自転車の荷台用ゴム紐か何かを買おうとしていたおばさんの2人連れも大いに困惑しておりました。屋外展示スペースから店の中に戻った僕は、思わずそのおばさんから声を掛けられそうになりましたが、いや、作業服姿でホームセンターをうろついていると、よくそういうことがあるんですよね。勝手に僕を店の人だと思い込んで声を掛けてきて、間違いだと分かると、 「なーにぃ、店員と違うのぉ!?」 …などと文句を言ったりして、何の罪もないのに気の弱い僕は思わず 「すいません。」 …と謝ったりして、いや、年上ギャルにもてるキャラというのも時にはツライものがあるんですよね。 ま、この日のおばさんは声を掛ける前に僕の正体に気が付いたようで、どこかへ別の店員を探しに行ったようですが、僕にはそこまでの気力はなくて、結局のところ折りたたみ自転車を買いそびれ、おばさんにも逆ナンパされそびれて、寂しく店を後にしたのでありました。

 しかたなく、駄目モトでミスター・トンカチを覗いてみたところ、総数7〜8台ではありましたが折りたたみ式自転車も売られておりまして、いや、これだけ品揃えが少ないとあれこれと思い悩む必要がなくて、むしろ清々しい思いがしますよね。タイヤサイズの小さなものはいくら必死で漕いでもあまり前に進まないような気がするので、買うのなら20インチだよね。…と思っていたんですが、それだと1種類しかなかったので即断即決。 13,800円でした。鞄穴Cホームプロダクツという、岐阜市にある聞いたこともないようなメーカーの ミリオンクロス という商品なんですが、サイトで調べてみてもわずか数件しかヒットしないので、相当にレアなアイテムであるものと思われます。ほほぉ、定価 35,800円もするんですね。タマチャリ特価でも 18,900円なので、トンカチ特価はかなりお買い得だったということになります。ああん、何だかとっても得した気分♪ ただ重量が 17.5kgもあって、店内から駐車場の車まで持っていくだけで相当に疲れてしまって、普段からあまり重いものを持ち慣れていない公卿の人にとってはかなりの苦行であるかも知れませんね。折りたたんだ時のサイズは 690mm×830mm×420mmということで、ほとんど粗大ゴミ収納庫と化している社有車@カローラフィルダーの後部座席にも積み込むことが出来ましたので、とりあえずは一安心でありますな。いや、車に詰めなくて、うちに持って帰れなかったらどうしよう?…というのが、かなり心配でしたからね。

 機能的には6段ギア前後サスペンションが目立つ程度で、やや物足りない気がしないでもありませんな。1970年代前半に少年期を過ごした僕にとっては、やはりスピードメーターフォグランプ電子フラッシャーくらいは欲しかったところなんですけどね。電子フラッシャーというのは、ま、方向指示器のようなものなんですが、子供の頃、流行りましたよねぇ、 こういう自転車 。塩サバ2号は買って貰ったんですが、僕は当時まだ幼少だったので、補助輪付きのお子様自転車だったんですよね。大きくなったら方向指示器付きの自転車を買って貰って、町中の角という角を曲がりまくってやるぅ!…というのが当時の僕の野望であり、夢でもあったんですが、いや、まっすぐ走っているだけでは電子フラッシャーの出番がまったく無いわけでありまして。 が、大きくなった頃にはこの無意味に過度な機能を満載した自転車のブームは終わってしまったので、結局のところ、どうでもよくなったんですけどね。だからまあ、折りたたみ自転車にスピードメーターやフォグランプや電子フラッシャーが付いてなくても、別にいいかな?…という気もするんですが、あんなもの付けてみたところで、重くてデカくて邪魔になるだけの話で、何のメリットもありませんもんね。 ただ、バックミラーだけはあったほうが便利かな?…という気がするんですが、例えば自転車に乗っていて女子高生とすれ違った時、振り向いたりするのはあまりにもあからさまなので、シャイな僕にはとてもそんな真似は出来ないんですが、バックミラーさえあればこっそりとその余韻を楽しむことが出来ますもんね。 あ、バックミラーとは関係ないんですが、前を走っている “けった女子高生” を追走するのも楽しそうですよね。自動車だといくらゆっくり走ってもやがて自転車を追い抜いてしまうことになるんですが、こちらも自転車だったら大丈夫。で、追走するなら何といっても上り坂ですよねー。いや、立ち漕ぎ状態の “けったギャル” というのは、極めてパンチラ確率が高いですからなぁ。

 今度の週末あたり、エクストレイルの荷室にミリオンクロス号を積み込んで、坂の多い街をゆっくりサイクリングしてみたいと思います。

 ということで今日はフィニアス・ニューボーン・ジュニアでありますが、あ、土日だとせっかくの坂道サイクリングも、制服ギャルが少ない恐れがありますよね?ここはやはり、有給休暇を取るべきでしょうか?…と、真剣に考えてしまいましたが、それはそうとフィニアス・ニューボーン・ジュニアという人はですね、日本ではあまり人気がありません。どうして人気が無いのかと言うと、それは恐らく不人気だからなんだと思いますが、いわゆるパウエル派と呼ばれる人達とは微妙にスタイルが違っているところが不人気の要員だと思いますね。わりと人気がありましたからね、パウエル前国務長官は。今のライスちゃんも個人的には嫌いではないんですが、ホテルの朝食バイキングではどうしてもライスよりパンのほうを選んでしまう僕も、どちらかというと “パウエル派のほうが好き派” でありまして、おかげでこれまでフィニアス・ニューボーンのことは蔑ろにしておりました。ニューボーンよりも “にゅうめん” のほうがいいよね?…とか思っていて、そもそも僕は “めん類は太いほうが好き派” でありますので、にゅうめんなんかまったく好きでもなんでもないんですが、それにも劣るニューボーンというのはかなりポイントが低いものがありますな。そんなことで、この人のリーダー作って、もしかして今回が “jazz giant” 初登場?…という気がするわけなんですが、ま、リーダーはロイ・ヘインズ名義ながら、彼の代表作と言われている 『ウイ・スリー』 は取り上げておりますので、日本人のフィニアス・ニューボーンに対する関わり方としては、ま、平均レベルであるとは思うんですけどね。 とまあそんなことで 『ア・ワールド・オブ・ピアノ』 なんですが、どうしてこれを選んだのかと言うと、サイドマンと選曲がいいから。…というのがその理由でありまして、A面のセッションがポール・チェンバースとフィリー・ジョー、で、B面のほうはサム・ジョーンズとルイス・ヘイズでありますか。素晴らしいっ♪…ですよね。で、一方、選曲のほうはと言うと、8曲すべてが有名ジャズマンのオリジナルとなっておりまして、ま、一部例外的にさほど有名ではない人の曲も混ざったりしておりますが、フィニアス入門には手頃なのではないか?…という気がするので、んなことでまあ、では1曲目から聴いてみることにしましょうかぁ。

 えーとですね、まず最初はチャーリー・パーカーの 「チェリル」 でありますか。いきなり地味でマニアックな曲を持ってきましたな。典型的なバップ・チューンでありまして、フィリー・ジョーのシャープなドラミングと一体化したテーマ部が実にシャープ亀山工場でありますな。いや、三重の亀山にはシャープの大きな液晶工場があるんですよね。おかげで亀山はカメヤマローソクの町から脱却してリッチになりつつあるんですが、桑名には鋳物工場とかしかなくて、今ひとつローカルなんですよね。マンホールの蓋と家庭用かき氷器の生産では全国的にもかなり高いシェアを誇っているようですが、それはともかく、この曲はいかにもフィニアスらしいテクニシャンぶりが発揮されていて、なかなか興味深い演奏に仕上がっておりますな。この人の特徴はアート・テイタムの流れを汲むダイナミックな両手使いテクにあるわけですが、いや、確かにすごくピアノはうまいです。うまい棒よりもピアノがうまいんぢゃないか?…という気もするほどなんですが、ま、うまい棒というのはただの駄菓子でありますので、比較すること自体、まったく意味がないんですけどね。 で、確かにピアノはうまいんだけど、テクに走り過ぎて、哀愁味がない。…というのが世間一般のフィニアス・ニューボーン評でありまして、そこのところが不人気の要因だったりするんですが、偏見を捨てて純粋に演奏に耳を傾けてみると、いや、これはこれでなかなか素晴らしいではありませんか。時折、ハンプトン・ホーズのブルース演奏を彷彿させる瞬間もあったりして、ドライブ感が半端ではありません。これはやはりフィリー・ジョーの参加が大きく影響しているのでありましょう。ややアホそうなキャラではあるんですが、タイコを叩かせたら天下一品ですからね。太鼓持ちとしても恐らく大成していたであろうと思われる “乗せ上手” でありまして、フィニアス君も実に気持ち良さそうにピアノを弾いているのでありました。

 ということで、2曲目です。ディジー・ガレスピー&チャノ・ポゾ&ギル・フラー作のノリノリ・ラテンジャズの名曲、 「マンテカ」 ってか? いや、これはまたフィニアスらしからぬ選曲でありますな。地味な人がカラオケで陽気な歌を歌ったりすると、無理が祟って非常にイタいものになる可能性が高いんですが、そこで僕はもっぱら地味な曲を選ぶようにしているんですけどね。例えば、アリスの 「秋止符」 だとか。が、地味な人が暗い歌を歌うと、陰気臭くてちっとも盛り上がらないのも確かでありまして、たまにはちょっと無理をしてでも陽気な歌にチャレンジしてみるべきなんですかね? で、フィニアスにとってこの 「マンテカ」 というのはちょっとした冒険だったと思うんですが、チェンバースの無伴奏ピチカートに始まり、やがてラテン風のパーカッションが入ってきて、いや、何とも賑々しい導入部でありますな。この曲のピアノ演奏と言えば何ともいってもレッド・ガーランドのバージョンが有名なんですが、コンガが入っていない分、フィニアス版のほうがよりストレートなジャズ演奏に仕上がっているような気がします。ソロ・パートはリズムもストレートな4ビートになって、フィニアス君は相変わらずのテクニシャンぶりを発揮しております。両手をフルに活用した速弾きというのはパウエル派のピアニストの演奏ではあまり耳にすることが出来ず、それはそうと、男の人がパンツを穿かずに局部を露出している状態のことはフリチンというのか、フルチンというのか、どちらが正しいんでしょうね? いや、フルに活用という言葉に触発されて、ふとそんな疑問が頭に浮かんでしまったんですが、ま、そんなことは別にどっちでもいいんですけどね。とまそんなことで、演奏のほうはフィニアスのソロの後、再びラテンなテーマ部に戻って、おしまい。

 3曲目の 「ラッシュ・ライフ」 はもはやスタンダードと言ってもいい曲なんですが、ビリー・ストレイホーンのオリジナルでありますので、根はやはりジャズ・オリジナルであります。イントロ部分は何やらクラシック音楽の影響を感じさせて、何とも拡張の高い胃拡張。…といった感じですよね。テーマ部はピアノの無伴奏ソロなんですが、ぴゃららららららん♪…という装飾音はパウエル的…というよりも、そのルーツとなっているアート・テイタムを彷彿させるものがありますな。途中からリズムが入って通常のトリオ演奏になるんですが、フィリー・ジョーのブラッシュ・ワークが何ともセンシティブでありまして、ただ叩きまくるだけではないところが彼と桑名の石取祭との違いですよね。石取祭のほうは、ただひたすら喧しいだけですもんね。今年から石取の太鼓にもバチだけでなく、ブラシを取り入れてみたらどうか?…と提案したいところでありますが、んなもの、ちっとも盛り上がらないだけのような気もするので、おそらくこのアイデアを採用してくれる町内は皆無であると思われます。…などといってるうちに演奏のほうは終わってしまいましたね。いずれにせよ、フィニアスのバラード・プレイというのも悪くないよね?…という気のする1曲だったような気がします。

 4曲目の 「ダフード」 はクリフォード・ブラウンのオリジナルですな。クリちゃんの書く曲は陽性なものが多く、哀愁好きの日本人にはややウケの悪いところがあるんですが、この曲はマイナー調ではないものの、なかなかいい曲ですよね。テーマ部はフィリーのドラミングとのコンビネーションが素晴らしく、アドリブ・パートはフィニアス君にしては珍しくシングル・トーン中心となっておりまして、途中で聴かれるフィリーとの掛け合い部分もいいですよね。無意味にチェンバースのアルコ・ソロが出て来ないところもいいです。まったく目立った出番がないまま後半はベーシストがサム・ジョーンズに変わってしまうんですが、個人的にはそのほうが好ましく思われて、で、ルイス・ヘイズというのもフィリーほど派手ではないんですが、堅実派でいいですよね。ということで5曲目の 「オレオ」 でありますが、これまたアップ・テンポのかなり派手な演奏となっておりますな。あ、作曲者は言わずとしれたソニー・ロリンズでありまして、これまた必ずしも日本人好みのマイナー・チューンというわけではないんですが、アドリブの素材としては最適でありまして、テクに長けたフィニアス君にはぴったりの選曲であると言えましょう。アレンジ的には時折ドラムスが消えてストップ・タイムになるところが何とも格好よくて、実に粋な計らいだと思いますね。ということで、そろそろ書くことがなくなって来ましたが、ちなみに昨日は新年度から岐阜営業所に転勤となった仙石部長とショージ次長の歓迎会だったんですけどね。宴会の最後を長縄所長代理が締めることになったんですが、ここで “宴たけなわ” という言葉について所長がうんちくを述べる。…というのが最近のパターンになんですよね。所長いわく、何でも “たけなわ” というのは宴会の最盛期ではなく、少し下降ムードになりつつある状態を言うんだそうで、 “中締め” の段階でこの言葉を使うのは間違っているんだそうです。ま、昨日の場合は最後の締めの段階だったので長縄所長代理の挨拶に問題はなかったんですが、「宴たけなわ、僕はナガナワ。」…と、極め付けにつまらんギャグを飛ばしてくれたので、おかげですっかり酔いが醒めてしまったのでありました。

 ということで、6曲目です。ホレス・シルバーの 「ジューシー・ルーシー」 でありますか。フィニアス・ニューボーンという人はあまりファンキー臭を感じさせないキャラでありますので、これまたやや意外な選曲ではありますが、ゆったりしたテンポの何ともリラックスした演奏に仕上がっていて、なかなかよいですな。それから、えーと…、なかなかよいです。何だか本格的に書くことがなくなってしまいましたが、ここでのフィニアスのフレージングからはレッド・ガーランド的なものと、ウイントン・ケリー的なものが感じられたりもして、で、中間部ではサム・ジョーンズのピチカート・ソロも聴けたりします。チェンバースのアルコと違って、個人的にはサム君のソロって、けっこう好きなんですよね。それから、えーと…、他に書くことはありませんので次に参りますが、7曲目は 「フォー・カール」 でありますかぁ。ベーシストのリロイ・ビネガーが交通事故で若死にしちゃったピアニストのカール・パーキンスを偲んで書いた作品でありまして、何ともコンテンポラリー盤らしい選曲でありますな。で、これがまた、絶品っ♪…なんですよね。ワルツ・タイムの哀愁味を帯びたメロディはまさしく日本人好みの真下このみ。…と言った感じでありまして、いやいつも、まさしく日本人好みのブルボン味ごのみ。…というパターンだったので、たまにはちょっと変えてみたんですけどね。ところで、いつの間にやら写真家になっていたんですね、真下このみ。すっかり大人のギャルになってしまって、ロリ好きの僕には寂しい限りでありますが、でもまあ今日 (6月11日) は阪神が勝って、西武とオリックスとロッテと楽天とソフトバンクが勝って、阪神ファンで、パリーグ好きで、日本ハムは、ま、どうでもいい僕にとっては嬉しい限りです。で、曲自体は絶品なんですが、フィニアス君の演奏のほうはややハイテクに走り過ぎた嫌いがあって、そこのところがちょっぴり残念ですね。この手の哀愁ソングは訥々と弾いたほうが味が出るんですが、こういうところが今ひとつフィニアス君の人気が今ひとつ日本でブレイクしない一因なのかも知れません。

 で、ラストです。 「カブー」 です。変な曲名ですね。おまけに作曲者もボストンのテナー奏者ローランド・アレキサンダーって、リロイ・ビネガーよりもさらに地味で、例外的にあまり有名ではない人の代表格となってしまっております。が、これがなかなかの名曲だったりするので、世の中、わからないものでありますなぁ。日本人好みのマイナー・チューンでありまして、いや、フィニアス君の演奏自体はやはり弾き過ぎの感があって、そこのところがちょっともったいない気がするんですが、でもまあ、曲がいいから、まあいいです。ということで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 これとまったく同じ選曲で、メンバーもピアノのところだけデューク・ジョーダンあたりに変えてアルバムを作れば、更に味わい深いものが出来たんぢゃないか?…という気がしないでもないんですが、ま、それではフィニアス君のリーダー作では無くなっちゃいますからね。これはこれでよかったんでしょう。少なくともフィニアス・ニューボーンって、にゅうめんよりはいいよね?…という気分にさせてくれた1枚ではありました。


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