HAPPY FRAME OF MIND (BLUE NOTE)

HORACE PARLAN (1963/2/15)

HAPPY FRAME OF MIND


【パーソネル】

JOHNNY COLES (tp) BOOKER ERVIN (ts) GRANT GREEN (g)
HORACE PARLAN (p) BUTCH WARREN (b) BILLY HIGGINS (ds)

【収録曲】

HOME IN AFRICA / A TUNE FOR RICHARD / BACK FROM THE GIG
DEXI / KUCHEZA BLUES / HAPPY FRAME OF MIND

【解説】

 僕は日頃ジャズのレビューを書いていて、人知れず引け目を感じていることがありました。それは何かというと、自分では何の楽器も演奏出来ないということなんですが、いや、まったく何も出来ないというわけではないんですけどね。小学生時代にはトライアングルの達人として鳴らした…とまではいかないまでも、人並みに、チーン♪…と鳴らすことくらいは出来たんですけどね。縦笛だって 「キラキラ星」 くらいの簡単な楽曲なら7回くらい間違えるだけで1曲を最後まで完奏することが出来たし、ピアニカに至っては一度にドとミとソの鍵盤を押えて和音を吹くという高等なテクニックまでマスターしたほどなんですが、僕の音楽的な才能が豊かだったのはその頃までで、中学に入ってからはさっぱりでありました。高校に入って再び音楽に目覚め、カシオの 「弾けますトーン」 というオモチャのキーボードを買ったりしたんですが、これもなかなか上達はしませんでしたなぁ。ちなみにこの 「弾けますトーン」 というのは鍵盤のところにランプが付いていて、その光ったところを押してやればメロディを奏でることが出来るという、まるで “もぐら叩きゲーム” のような仕組みになっていたんですが、いや、なるほど。これだったら僕にも弾けるよね♪…という気がしますよね。ただ問題は、光ガイドで演奏出来るのがプリセットされた曲に限るということでありまして、ま、別売りの “データROM” (4曲入り) なんてのもあったんですが、 「スワニー河」 とか 「ローレライ」 とか 「聖者の更新」 みたいな曲ばかりでは高校生にとってはちょっと物足りないわけでありまして。高校生ならやっぱ、 「高校三年生」 やろ?…と思わずにはいられなかったんですが、残念ながら売ってなかったんですよね、“舟木一夫ベストヒット” (4曲入り) という音楽ROM。

 浪人生活を経て大学受験に落ち、専門学校に通うようになって、僕はジャズを聴くようになったんですが、するとますます、自分で楽器をやってみたい!…という思いが強くなってまいりました。ピアノというのもなかなか捨て難いんですが、その才能がないということは “弾けますトーン” の時点で実証済みだし、ベースなんてのはただ単に弦をボンボンと指で弾いてやればいいだけなので、僕でも何とかなるぅ?…という気もしたんですが、そういえば昔、大正琴で挫折したことがあったようなような気もするので、もしかしたら何ともならないかも知れず、となるとやはり、進むべき道はトランペットかアルトサックスですかね? 管楽器奏者というのはいつも前にいてよく目立つし、吹くのが嫌になったら舞台のそでに引っ込めばいいわけなので、かなりオイシイ商売であるように見受けられます。で、サックスとトランペット、どちらにするかでちょっと迷ったんですが、最終的にはトランペットのほうをチョイスしました。だってサックスって、高いしぃー。安いのでも10万くらいはするみたいなので、もし挫折しちゃった場合のリスクが大きすぎるような気がします。それに僕、サックスの才能はあまりないような気がするんですよね。というのもですね、かつてサックスに憧れてカシオの 「デジタルホーン」 というオモチャの電子管楽器を買ったことがあるんですが、「キラキラ星」 くらいの簡単な楽曲を7回くらい間違えただけで最後まで完奏することが出来るようになったくらいで、なかなかチャーリー・パーカーのような流麗なアドリブを吹く…というところまでは行かなかったんですよね。いや、僕のヴィレッジ・ヴァンガード・デビューへの道は、なかなか険しいものがあるようでありまして。。。

 そこでまあ、トランペットです。安いヤツなら3万円くらいで買えるみたいだし、それに何より、トランペットというのはジャケ絵を書く時にとってもラクなんですよね。サックスという楽器は何だかボタンやらレバーみたいのやらがいっぱい付いていて、もはや嫌がらせとしか思えないような複雑な構造をしているんですが、その点、トランペットはいいです。シンプル・イズ・ベスト。タイム盤の 『ブッカー・リトル』 のジャケットなど、まさに手書きするためにあるようなものですもんね。そんなことでまあ、ええい、買っちゃえー!…と、何度トランペットを衝動買いしようと思ったことか分かりませんが、いつも、すんでのところで思いとどまっておりました。いや、100%吹けないことは明白でしたからね。この楽器はどうやら縦笛のようにとりあえず息さえ吹き込んでやれば音だけは出る。…といった仕組みにはなってなくて、何でも自分の唇を振るわせることによって音を出すんだそうでありまして。素人が音を出せるようになるまで3日から1週間、人によっては一生かかっても駄目な場合もあったりするそうで、いや、僕はきっとその “駄目なクチ” だと思うんですよね。というのも僕は唇にあまり自信がなくて、しょっちゅう口内炎が出来てたりするんですよね。もう、ソースは染みるわ、ケチャップはしみるわ、カラシはしみるわ、天ツユはしみるわ、餃子のタレはしみるわで、とてもトランペットを吹いてる場合ではないっ!…という事態になりかねません。こうして僕は演奏家になるという夢を断たれてしまったわけでありますが、楽器が出来ないというのはジャズのレビューを書く上でかなり引け目を感じてしまうんですよね。この曲でのブッカー・アービンのソロは、はっきり言って今ひとつですな。面白くもなんともありません。…などとエラソーなことを書いてみたところで、ならアンタ、自分で吹いてみろって!…などと言われてしまえば、「すいませんでした!」…と土下座して謝るしかないわけでして。

 実はトランペットが吹ける自分。…というのが、時に夢の中に登場することがあります。シチュエーションはいつも同じでありまして、舞台はどこかの土産物屋さんなんですけどね。地域限定キティちゃんグッズはないかな?…とか思って店内を散策しているとですね、どういうわけだか片隅にポケット・トランペットが売られているわけです。値段を見ると、なんとたったの1980えん(税込み)♪…って、いや、所詮は夢の中なので、そこまで具体的な数字が提示されることは希なんですが、ぜんぜん安いぢゃん。これなら余裕で買えるぢゃん。…と思ってしまうような金額であったことは確かです。で、試しに吹いてみるとですね、吹けてしまうんですよね、これがまた。なーんや、意外と簡単ぢゃん。こんなことならもっと早く通販で29,800円のを買っておくべきやったな。…と後悔したりもするんですが、リー・モーガンの 「キャンディ」 とまでは言わないまでも、マイルスの 「ラウンド・ミッドナイト」 くらいの演奏なら余裕で吹けてしまうわけでありまして。そのうち、お店の若いギャル系の店員が近づいてきて、「まあ、さばさん(←なぜ名前を知ってる?)、ジャズがお上手なのね♪」…と、大いに尊敬されることになるんですが、えーと、その店員というのがですね、髪はショート、ちょっぴりポチャ系で身長は150センチくらい。で、ロリ声の持ち主だったりするといいな♪…と思うんですが、いや、いつも店員が出てくる前に目覚まし時計が鳴ってしまうので、詳しいことは不明なんですけど。目が覚めて、夢だったかぁ。…と、ガックリして、だよねー。あんな簡単に吹けるわけがないよねー。こうして僕は楽器の出来ない似非ジャズ評論家として一生を終えることになるんでしょうなぁ。。。

 …と思っていたら世の中には、いつの間にやらこんな素晴らしい商品が売りに出されていたんですな。ヤマハの “イージートランペット” というのがソレなんですが、何でも鼻歌さえ出来ればトランペットが演奏出来るんだそうでありまして。ジャズはやっぱりナマ楽器だよね。…と、生牡蠣がそれほど好きではない僕にもそういう拘りがあって、電気の力を借りるなんて邪道以外の何物でもないとは思うんですが、この際、そんなことを言ってる場合ではありません。これこれ!こういうのが欲しかったんだよね♪…と思わずにはいられない、実に画期的な商品ではありませんかー。いや、さすがはヤマハですよね。その昔、塩サバ2号は突然、ギターを弾きたい!…という野望に駆られて、いきなり中古のフォークギターを買ってきたことがありました。確か高校生の頃だったと思うので、よくそんな金があったなぁ。…と不思議に思えてならんのですが、ま、おそらく家の金をちょろまかしたんだと思うんですけど。で、「ヤマハのピックが安かった!」…と言って喜んでおりましたが、よく見るとそれには “YAMAHA” ではなくて “HAYAMA” と書いてありまして、「ハヤマやんけ!」…ということに気付いて愕然としておりましたが、この “イージートランペット” は間違いなくヤマハ製だと思います。お値段のほうは約3万円と、今の僕ならポンと衝動買い出来てしまう範囲でありまして、思わずネット通販で衝動買いしてしまいました。噂によると、あのホリエモンもこれを注文したそうではありませんか。注文して、「あなたもにわかマイルスデイビスに?みたいな感じだろうか。」…などと言ってるそうではありませんか。果たしてその噂は本当なのだろうかと思って調べてみたところ、確かに堀江クンのブログにちゃんと書かれておりました。 ここ です。いや、彼の口からマイルス・デイビスの名前が出ると言うのは意外な気がしましたが、しかし何ですな。堀江クンもあまり大したことは書いておりませんな。あなたもにわかマイルスデイビスに?みたいな感じだろうか。もう、動物の皮や骨などを煮沸して作ったゼラチン質の物質が家にいるのにいない振りで、七福神の一種って感じ?…って、そりゃ、にわかマイルスデイビスやなくて、(にかわ)、居留守で恵比寿やがな。…くらいのボケはかまして欲しかったところですね。 ということで、手元に届き次第 “IMPRESSIONS” で紹介したいと思いますので、よろしくでーす。

 ということで、今日はホレス・パーランです。それはそうと、世間ではすっかりゴールデンウィークですな。いや、僕もしっかりゴールデンウィークなんですけどね。うちの会社は暦どおりの休みなので、休休休・出・休休休・出・休休…という形になります。途中の2日間に有給休暇を取れば、10連休♪…ということになるんですが、そんなに連続して休んでも特にやることもないので、出る日は普通に出ることにして。それにですね、某・長網所長代理 (仮名) が5月2日の午後から営業会議をやるということを勝手に決めてしまって、営業所内では休みを取りづらい雰囲気になってしまいました。その癖、自分は午前中半休…って、いや、別にいいんですけどね。どうせ病院に行くんだろうし。端から見ていて、どこでどのようにストレスが溜まるのか不思議でならんのですが、何だか胃か腸が悪いようでありまして。いや、世の中、ストレスとは無関係に病気になっちゃうこともあるんですね。 とまあそんなことで、今日は 『ハッピー・フレイム・オブ・マインド』 というアルバムを紹介したいと思うんですが、 「心の幸せな枠組」 でありますか。何かこう、ストレスとは無縁な生活が送れそうなタイトルですよね。ただこのアルバム自体はそれほどハッピーな人生を歩んできたわけではなくて、録音された当時はオクラ入りになって、1976年にブッカー・アービンの2枚組アルバムの一部としてようやく日の目を見たという、そういう経緯を辿ったようであります。ジャケットのデザインもいかにもブルーノート的で、とてもそのように冷遇されたアルバムであるようには見えないんですけどね。とにかくまあ、このアルバムを選んでしまって、またアービンかい!…という事実に気付いて愕然としているところなんですが、前回のマル・ウォルドロンの 『ザ・クエスト』 では大ハマリしましたからね。が、この “幸せの枠組” のほうはトランペットにジョニー・コールズという渋めの人員が配置されておりますので、アービンのクドさも幾分は中和されているに違いなく、おまけにグラント・グリーンまで入っていて、なかなか興味深いメンツが顔を揃えておりますので、ある程度は期待が出来るのではなかろうかと。んなことで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まずは 「ホーム・イズ・アフリカ」 という曲でありますか。今まで曲名の日本語訳には Excite 翻訳 というサイトを利用してたんですが、この度、必要に駆られて “こりゃ英和” という翻訳ソフトを導入することにしました。どのような必要に駆られたのかというと、外国のすけべサイトを日本語で読んでみたいな。…という思いがあったからなんですが、下手にあちこちクリックしまくって、いつの間にやら勝手に有料サイトに登録させられたりしても困りますしね。クリックしただけでこちらの情報が筒抜けになる恐れはない筈だから、いわゆる “ワンクリック詐欺” は放置しておいても大丈夫だとは思うんですが、いきなり、 「あなたの固有識別番号」 とか 「あなたのパスワード」 というのが画面に出て来たりするとかなり焦っちゃいますからね。それが英語のサイトだったりすると裏で何をされているやら分かったものではないので、とりあえず日本語に訳しておいたほうが無難かな?…と思ったわけなんですが、試しにこのページを翻訳してみたところ、アルバム・タイトルのところは “うれしい気分” となっておりました。 Excite 翻訳 の結果が “心の満足なフレーム” というものだったので、その出来栄えのほどは雲泥の差であると言ってよいでしょう。ちなみに “BLUE NOTE” というレーベル名は “青い重要性” と訳されていて、なるほど、 “NOTE” にはそういう意味もあったんですね。パーソネルのところは基本的に人名がカタカナに変換されただけなんですが、グラント・グリーンだけは “グラント緑” なってました。 で、“ブッカー ERVINティースプーン)”というのがあって、これは何なのかと思ったら、テナーサックスの略語 (ts) を このように訳しちゃったわけですね。ちょっと考え過ぎやろ!…という気がしないでもありません。

 で、1曲目のタイトルはというと、 「後部のためのアフリカ」 …って、これもかなり今ひとつの出来でありました。 が、曲のほうはというと、これがなかなかいい出来なんですよね。ベーシストのロニー・ボイキンスの作ということなんですが、いかにもベーシストが作った曲らしく、いかにもベーシストが作った曲だなぁ。…といった感じのする作品に仕上がっております。反復される4小節のベース・パターンとアフリカ風のリズムうんぬん…と原文ライナーにもあるように、イントロ部ではベースの反復フレーズがアフリカ呪術的なムードを醸し出しておりまして、続くテーマ部では同じベース・パターンをバックに、トランペットとテナーのユニゾンで幾分アフリカ的な香りのするメロディが演奏されます。アフリカ的な香りというのは具体的にどういうものを指すのかというと、えーと、例えばアフリカゾウの匂いみたいなのとか。 で、ソロ先発はジョニー・コールズです。この人は60年台マイルスの演奏を範にしたスタイルの持ち主でありまして、抑制されたフレーズがなんともいえず渋い感じで、個人的にはけっこう好きなんですよね。マイルスのリーダー作以外でマイルス的な演奏を聴けるというのはそう多くはないので、貴重な体験であると言えるでしょう。で、ソロ2番手はブッカー・アービンなんですが、この人が “抑制” とはもっとも縁遠いキャラであることは皆さんもご承知のとおりでありまして、音を抑制して、もうちょっと演奏をよくせぇ。…と説教してみても、それは無駄というものであります。聞く耳持たないですからね、アービン。 が、ここでの演奏は思ったよりもクドくはなくて、何とか我慢出来ないこともないギリギリの線をキープしていて、個人的にはこの程度のアービンだったら大歓迎でありますな。続くグラント緑くんはブルージーなシングル・トーンで訥々とブルース魂を高めておりまして、ソロの後半、ホーン・アンサンブルが被さってくるアレンジも秀逸だと思います。で、続いてパーランの登場となるんですが、前半はわりとファンキーなフィーリングで、ギター・ソロと同じく後半にホーンが被さって来て以降はリズム・パターンを逸脱した、かなりフリーな感じのソロを披露しております。えーと…、そんだけ。あとはテーマに戻って、おしまいですね。どうしてこれほど充実した演奏なのに、オクラ入りなん?…と、アルフレッド・ライオンを問いただしたい気持ちで一杯でありますが、そういえば最近、ぜんぜんオクラを食べておりませんな。いや、ネバネバしているだけでさほど美味しくはないので、別にいいんですけどね。

 2曲目の 「ア・チューン・フォー・リチャード」 は アービンのオリジナルです。恐らくリチャードという中年に捧げられたチューンだと思うんですが、 どこのリチャードさんなんですかね?ベーシストのリチャード・デイビスでありましょうか?…という問題に関しては原文ライナーでも何も触れられていないので、この話はなかったことにして。あ、ちなみにこのタイトルの日本語訳は 「公演からのリチャード」 だったんですけどね。ちなみに僕は公演よりも援交のほうが好きなんですが、そんなことはどうでもいいですね。そんなことより、基本的にAABの構成を持った48小節の曲だ。多くのアーヴィンの曲と同じく、ぐるぐる回るローラー・コースターのような効果と強く前方へ駆り立てる力を持っている。…という原文ライナーの一節を引用するほうがよっぽど重要だと思うんですが、そっかぁ?ぐるぐる回るローラー・コースターのような効果があるかぁ?…という点に関しては、やや異論があるんですけどね。が、強く前方へ駆り立てる力というのは正にその通りだという気がするわけでありまして、で、個人的にはこれ、何だかハンク・モブレイが書きそうな曲だよね?…という感じがするんですけどね。で、何度か聴いているうちに、確かにローラー・コースターのような効果があるかも知れないね?…という気がしてきたりもするんですが、ちなみに僕はローラーよりもローターのほうが好きなんですけどね。 で、ソロ先発はコールズです。相変わらず60年代マイルスしてますね。…という気がしますよね。…と、しみじみ物思いに耽っていると、いきなりアービンが土足でドカドカと家に上がりこんできて、さんざん布団を踏み荒らした挙句、そのまま裏口から出ていってしまって、次にやって来るのがグラント・グリーンでありますか。この人も根は下品なほうなんですが、アービンの後では何だかとっても普通に見えて、少なくとも玄関先で靴を脱ぐくらいの常識はわきまえてますよね。で、最後に登場するパーランは靴だけでなくパンツまでも脱いでしまって、いや、意外とアウトローなキャラだったんですな。…といった感じのアドリブ・パートがあって、テーマに戻って、おしまい。いや、まったく何の解説にもなっていないような気もするんですが、ま、ゴールデン・ウィークだしぃー。

 ということで、3曲目です。 「バック・フロム・ザ・ギグ」 は綺麗なメロディを持ったパーランのオリジナルなんですが、こんな歌物っぽい曲を作れるとは、あるいは歌麿よりも作曲の才能があるのかも知れません。ま、落語家と違って一応は本職ですからね、パーランも。 で、そろそろ本格的に書くことがなくなってきたんですが、ソロ先発はパーランですね。この人のスタイルはちょっと独特でありまして、くぐもったようなタッチが特徴的なんですが、小児麻痺の後遺症による右手の麻痺を克服して現在の地位を得たというのだから、何やら僕と境遇が似てますよね。僕の場合、麻痺こそしませんでしたが子供の頃は蕁麻疹に苦しめられて、いや、痒いのなんの。それを克服して立派な “にわかジャズ評論家” の地位を得たわけでありますので、同じ病苦に苦しむ子供たちにとって、希望の星といえるのではないでしょうか。一方のパーランはリハビリで始めたピアノでここまで大成したわけでありまして、これはもう、 「大勢」 でスッポンでも食べてお祝いするしかありませんよね。いや、桑名にあるんですけどね、 「大勢」 という名前のスッポン料理屋。もう潰れちゃったかも知れませんけど。 で、パーランのソロの後、グラント・グリーン→ブッカー・アービンと各自のソロが続いて、ちなみにここでのアービンはやや覇気が感じられないくらい、あまりハキハキとしないフレーズを吹いているんですが、ま、それなりにブルージーな味があって悪くはないと思うんですけど。ま、さほどよくもないんですけどね。で、ブッチ・ウォーレンのピチカート・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。 ま、全体的にアフター・アワーズの哀愁と気怠さに満ちた1曲であると言っていいかも知れません。

 4曲目はジョニー・コールズのオリジナルで、 「デクシ」 という曲です。日本語ライナーで原田和典クンは、 「ソー・ホワット」 をそのままいただいた…などと書いておりますが、決してそんなことはなく、ちゃんとした立派なオリジナルであると思います。失礼なことを言うな、原田!…と、コールズ君に成り代わって異議を申し立てたいと思いますが、ま、極めてシンプルな曲であるのは間違いないんですけどね。もしかしてこれなら、僕でも吹けちゃうかも?…と、イージートランペットに対する期待が高まるわけでありますが、ちなみにブツは既に僕の手元に届いて、1回目のレビューも書き終えましたので、また読んでみてくださいね。 で、テーマはともかく、アドリブに入ると確かにコールズのプレイは 「ソー・ホワット」 に酷似しているので、おそらく同じモードを使っているんでしょうが、いや、いいですな、こりゃ。とってもマイルスしているところが、とってもいいと思います。 で、テーマ・メロディを挟んでブッカー・アービンの登場となりますが、前曲とは打って変わってハキハキとした覇気のある吹きっぷりでありまして、あるいはこの人、モードをやらせたほうがいいのかも知れませんね。溌剌としているんだけど、クドくはない。そんな理想のアービン像がここにあります。モアイ像というのはイースター島にあるんですけどね。そしてインド象というのはインドにおりますな。 で、ソロ3番手はパーランです。何でもいいけど隣家の犬がうるさいですな。アホみたいによく吠える犬なので、きっとアホなんだろうな。…という気がするんですが、最近はあまり吠えなくなってヤレヤレだと思っていたら、またアホ吠え癖が再発したようです。通販でバークコントロール・DX全犬種用 (無駄吠え防止装置) を買って、無理やり付けたろかい!?…と思わずにはいられませんが、アホ犬のために税込 15,540円もつぎ込むのはアホらしいので、とりあえずはやめておきますけどね。ちなみにこの無駄吠え防止装置、犬が50秒以上吠える場合は自動安全装置が作動して電気を切るそうなので、少しくらいの電流ではびくともしない極度なアホ犬の場合、あまり効果はないかも知れません。スタンガンか催涙ガスで黙らせたほうがいいかも知れませんね。もっとも催涙ガスなど使った日にゃ、もっと激しく吠えられるような気もするんですけど。

 で、何の話でしたっけ? えーと、パーランのソロまで演奏が進んでいたんですよね。犬にかまけているうちにパーランの出番は終わってしまって、今はグラント・グリーンが張り切っているところでありますが、あ、テーマに戻って、終わってしまいましたね。ということで5曲目です。 「クチェザ・ブルース」 はランディ・ウエストンの曲なんですな。 「ウフール・アフリカ・スウィート」 の一部であるということですが、ここでいう “スウィート” というのは甘いものではなくて、 “組曲” のほうだと思われます。甘いものというと僕の場合、 “甘芋” というのが頭に浮かぶんですが、あれはあまりよくありません。甘いだけで所詮は芋ですからね。 それにしてもまだ隣家のアホ犬は吠えておりますな。あるいは天変地異を予知して騒いでいるのかも知れないので念のために現在時刻を書いておきますが、えーと、平成17年5月1日、午前8時7分。これでもし、24時間以内に桑名で大地震でも起こったりすれば、隣のアホ犬は実は卓越した地震予知犬だった!…というので一躍脚光を浴びることになりますが、なにも起こらなければやっぱりただのアホ犬ということになるんですけどね。で、この覚えにくくて発音しにくいランディ・ウエストンの曲は、3拍子のブルースでありますな。パーランのブルージーなイントロに続いて、あまりアフリカ的ではないテーマが2管のユニゾンで演奏されます。あまりアフリカ的ではありませんが、なかなか印象的なメロディを持っておりまして、あるいはウエストン君も歌麿よりは作曲のセンスがあるのかも知れませんな。 ま、その分、 「笑点」 に出ても座布団をたくさん取れるとは思えないので、お笑いのセンスという点では歌麿師匠のほうが上かも知れませんけど。人それぞれ、得意な分野があるんだね。…ということで、パーラン→アービン→コールズ→ブッチ・ウォーレン…と、各自が持ち味を十分に発揮したソロを披露して、テーマに戻って、おしまい。

 アルバムの最後を飾るのはパーランのオリジナル、 「ハッピー・フレーム・オブ・マインド」 です。日本語名は 「うれしい気分」 でしたよね。アルバムのタイトルにもなっているし、いちばん最後に持ってきたということは、よっぽど自信があるんだろうな。…と思っていたんですが、何だか全6曲中で最も印象に残らない作品となっておりました。駄目ぢゃん、パーランの作曲のセンス!…と思わずにはいられませんが、ま、収録曲すべてが “当たり” ということは、なかなかないですからね。ならばせめて曲順を3曲目の 「バック・フロム・ザ・ギグ」 と入れ替えるべきだったな。…という気もするんですが、アービンのソロもそろそろクドさが鼻に付くようになってきましたしね。ジョニー・コールズとビリー・ヒギンズの4バースも何だか今ひとつ投げやりだし、でもまあ、いつの間にか隣の犬も静かになったことだし、これはこれでヨシとしておきましょう。ということで、今日はおしまい。

【総合評価】

 最後の曲がちょっとポイントを下げておりますが、いや、5曲目までは完璧だったんですけどね。ま、最後にミソを付けるというのも世の中にはよくありますしね。コンニャクなんかは味噌を付けて食べるほうが美味しいしー。


INDEX
BACK NEXT