THE QUEST (PRESTIGE)

MAL WALDRON (1961/6/27)

THE QUEST


【パーソネル】

ERIC DOLPHY (as,cl) BOOKER ERVIN (ts) MAL WALDRON (p)
RON CARTER (cello) JOE BENJAMIN (b) CHARLIE PERSIP (ds)

【収録曲】

STATUS SEEKING / DUQUILITY / THIRTEEN
WE DIDDIT / WARM CANTO / WARP AND WOOF / FIRE WALTZ

【解説】

 えー、今日は “温泉” について考えてみたいと思います。またかい!…と思われるかも知れませんが、股が痒い時には温泉が効果的だと思うしー。

 ランドマーク妙高高原 (新潟県・妙高高原村)

 日帰り温泉施設というのは大抵、ぱっと見て、日帰り温泉設備だよね。…ということが分かるような名前が付けられております。 “○○温泉・なんとかの湯” みたいなパターンですよね。それを見て人々は、そうか、温泉なんだな。しかも湯なんだな。 “鈴木鉱泉・みかん水” とは違うんだな。…ということを理解するわけでありますが、いや、鈴木鉱泉というのがうちの近くにあるんですけどね。日帰り入浴施設とは何の関係もないただの町工場なんですけど。何を作っているのかというと、もっぱら清涼飲料水を商っているようです。あ、生意気に ホームページ まで持っているんですな。鈴木鉱泉のくせに生意気だぞ!…と思わずにはいられませんが、中身を確認したところ、どうもこれは僕が思っていた鉱泉会社とは違うよな。…ということに気付いてしまいました。主要製品が “コトブキラムネ” になってますもんね。ああん、僕が書きたかったのはここではなくて、 “銀矢サイダー” を作っているところだったんですが、それは “伊藤鉱泉” のほうだったんですね。僕ってば、ずっと勘違いしておりました。で、こちらのほうはホームページなど作っていないようなので、仕方がないので鈴木鉱泉を話をしたいと思いますが、いや、意外と手広く商売をしているんですね。コトブキサイダーって、銀矢サイダーほどメジャーではないよね。…と思っていたんですが、いや、地元民以外にしてみれば、そんなの、五十歩百歩ぢゃん。…と思われるかも知れませんが、僕の心の中では月とスッポンくらいの違いがあるんですよね。少なくとも、イヨさん(←編集部注:駄菓子屋の名前)に銀矢サイダーは売っておりましたが、コトブキはありませんでした。鈴木鉱泉の商品で一番のヒット作といえば、これはもう “スマック” に尽きると思うんですが、これはいわゆるクリームソーダのような飲み物なんですけどね。 “スコール” とか、 “アンバサ” とか、 “カルピスソーダ” とか、その手合いの清涼飲料水でありました。 銀矢サイダーとか、みかん水とか、桑名で作っとるジュースには、ろくなものがないな。…というのが、もっぱら地元民の共通した認識でありましたが、このスマックだけは例外的に評判がよかったんですよね。ちなみにこのスマックという名称は鈴木鉱泉の登録商標ではなくて、全国で28社ほどの中小鉱泉メーカーが統一ブランドとして製造販売していたそうです。

 で、あと、 “氷みつ” なんかも扱っていたんですね。氷みつというのはアレです。カキ氷にかけるイチゴとか、レモンとか、メロンとか、せんじなんかのシロップのことですよね。長島温泉のカキ氷にかかっているのが鈴木鉱泉の氷みつだったとは始めて知りましたが、それにしても “せんじ” というのは地味なキャラですよね。無色透明で、味のほうも、ただ甘いだけやん!…といった感じで、子供たちの間でもあまり評判はよくありませんでした。 “せんじ” をかけたカキ氷というのは一見すると何もかかってないようなので、「何にもかかってないやん!」…と文句を言うと、お母さんから、「食べてみぃ! “せんじ” がかかっとるやん!」…と反論されて、食べてみると確かに味としては甘かったりするんですが、「ただ甘いだけやん!」…と再び文句を言うと、「そんなこと言うなら、もう食べんとき!」…ということになって、家庭不和の元凶になるので、青少年の健全な育成のためにはあまりお薦めできない氷みつでありました。 “せんじ” が原因でグレて、悪の道に入ってしまったという話はよく耳にします。 “せんじ” が原因でグレて、ゼンジー北京に弟子入りしてしまった人までいたりして、これなど悲惨な幼児体験が元になって、人の道を踏み外してしまった典型的な例でありますな。ちなみに “せんじ” というのは名古屋でしか通用しない名称のようでありまして、標準語では “みぞれ” というのが正しいようでありますが、なるほど、コトブキ製品も確かにその名前になっておりますな。全国で通用するように統一名称を用いたものと思われますが、何だか魂を売り渡してしまったようで、ちょっぴり寂しいですなぁ。。。

 で、いったい何を言いたかったのかというと、 “ランドマーク妙高高原” というのは、何だかあまり日帰り温泉施設らしくない名前だよね。…ということが言いたかったんですが、何だかこう名前だけを見ると横浜のランドマークタワーみたいなのを想像しちゃいますよね。場所的には妙高高原池の平スキー場の近くになるので、 “池の平温泉・イケイケの湯” とかでよかったんぢゃないか?…という気もするんですが、行ってみたらなるほど、このあたりではかなり目立つ立派な建物でありました。温泉のほかに地ビールやレストランや仮眠施設、お土産物屋などもあって、妙高高原の用件はすべてここでまかなえるな。…といった感じですよね。僕はいつも妙高のお土産を買うのにJRの駅前まで行ってたんですが、何もそこまで行く必要は無かったわけですな。もし、これを読んだ全国50人ほどの塩通読者が妙高高原駅前の土産物屋に行くのをやめてランドマークに走ってしまい、その結果、駅前のお店の経営が傾いたりしたら大変に申し訳ないことでありますが、ま、 「安田の牛乳ラングドシャー」 を置かなくなってしまったので、もし潰れちゃったとしてもやむを得ないな。…という気はするんですけどね。 “安田の牛乳” というのは何でも新潟県酪農発祥の地で作られた牛乳なんだそうでありまして、それを使ったラングドシャーが美味しいよ♪…と、この店のおばさんに薦められたので試しに買ってみたところ、本当に美味しかったので、また買うのを楽しみにしてたんですよね。で、今年の冬にこの店を訪れたところ、安田の牛乳関連商品はすっかり姿を消しておりまして、愕然としてしまった次第でありますが、ちなみに “ラングドシャー” というのはフランス語で “猫の舌” という意味があるそうで、つまりこれは “牛タン” のようなものか?…というとそうではなく、では “血痰” のようなものか?…というと、もっとそうではなく、ま、要はクッキーのようなお菓子なんですけどね。その形と表面のざらざらした感触からこんな名前が付けられたんだそうです。

 わざわざ駅前まで足を延ばしたというのに、肝心の “安ドシャ” が無いぢゃん!…と、やさぐれた気分で妙高を後にした次第でありますが、その猫舌がですね、ランドマークに売っていたんですよね。思わず買ってしまいました。20枚入りのやつを買って、誰にもやらずに全部一人で食ってやるぅ!…と思ったんですが、思うところあって、会社用のお土産に回してしまいました。いや、会社用には既に草津温泉で 「湯のたまご饅頭」 というのを買っていたんですが、草津のお土産物屋のビニール袋をゴミ袋にしちゃったか何かで、見当たらなかったんですよね。手元にあるのはランドマーク妙高高原の名前が入ったビニール袋だけでありまして、草津のお土産を妙高の袋に入れていくというのはどうか?…という気がしたので、泣く泣くラングドシャーのほうを会社に持っていくことにしました。血液型がA型で、潔癖主義者ですからね、僕って。で、 「湯のたまご饅頭」 のほうは泣く泣く、全12個入りをすべて一人で片付けることにしたんですが、いや、こんなもの会社に持っていかなくてよかったですな。いや、決して不味いということはないんですが、何ともありきたりな湯のたまご饅頭やな。…といった感じでありまして、もしこれを社員に配布したとしても、「ふーん。」…という気の無い感想を得られるだけだったと思います。己の欲望を犠牲にしてまでラングドシャーのほうをみんなに配った僕の博愛行為は広く後世まで語り継がれるに違いなく、ま、一緒に買った “安田の牛乳チョコクランチ” のほうは全部一人で食べちゃったので、別にいいんですけどね。ちなみにこのクランチのほうは今ひとつ “乳っ気” が希薄でありまして、ラングドシャーほど感心しなかったことを付け加えておきます。

 で、一方、温泉のほうでありますが、こちらは入浴料が大人1000円と、やや高めではあります。が、高いだけあってバスタオルとフェイスタオルのセットを貸してくれるので、フリチンで行っても大丈夫です。いや、フリチンというのはちょっとまずいですね。手ぶらでいっても大丈夫です。…の間違いだったかも知れませんが、手をブラブラさせるのはよくても、その他の部位をブラブラさせるというのはちょっと問題かも知れません。で、この温泉、成分的にはやや怪しいものがあるのも事実なんですよね。名付けて、南地獄谷黒泥湯露天風呂っ!…でしたっけ? 微妙なニュアンスは違ったかも知れませんが、何だかそのような、いかにも怪しげなネーミングであったような気がします。何でも妙高山の南地獄谷の地下に溜まっている黒い泥を持ってきて、それを湯に混ぜているそうでありますが、泥には温泉の成分が凝縮されていて、効能も抜群!…なような気もするし、何だか混ぜ物をして誤魔化しているだけのような気もするしー。 で、入ってみたところ、黒泥湯といってもそれほど黒くはなかったし、ドロドロでもなかったんですが、そんなことより洗い場のところに畳がひいてあったのが珍しかったですね。水に濡れても大丈夫な合成タタミなんでしょうが、これは露天風呂の手前のところにもあって、寝転がって、火照りを冷ますには最適でありました。タタミイワシ好きの人にもお薦めの温泉でありましょう。…って、いや、まったく関係のない話ですけどー。

 大滝乃湯 (群馬県・草津町)

 こちらについて触れるスペースがほとんど無くなってしまいました。鈴木鉱泉の話が余計やったな。…と思わずにはいられませんが、えーと、これはですね、 “湯畑” の近くにあります。が、今ひとつ場所が分かり難いです。草津のユースホステルの兄ちゃんは、「歩いて20分くらいすかね?」…などと調子のいいことを言っておりましたが、1時間以上もかかってしまったではないか!…って、ま、これは僕が極度の方向音痴であることに問題があるんですけどね。いやあ、迷いましたな。ユースで草津のマップを貰って、念のためにハンディGPSまで持っていったとういうのに、思いきり道に迷って、ワケがわからなくなってしまいました。どうせ道に迷うやろ。…と思って、用心して最終入館時間(20時)の1時間も前にユースを出たのに、結果的にはギリギリ5分前の到着となって、いや、もうほとんど半泣き状態でありましたな。何だか怪しげな裏道に迷い込んでしまって、貞操の危機を感じてしまうほどでありましたが、もう、 “ベルツ温泉センター” でもいっかぁ。…という、ステバチな気分にもなってしまいました。ベルツのほうはスキー場のすぐ近くにあったので、場所はわかっていたんですよね。夜の9時まで入館OK!…らしいのでまだ時間的にも余裕はあるし、ただユースの兄ちゃんに 「 “大滝乃湯” はどうでしたか?」 と聞かれた時、 「場所がわからなくって、ベルツにしたのぉ。」…と正直に答えるか、「うん、なかなかよかったすよ!」…と、嘘をつくのかが問題ですよね。前者の場合はプライドが許さないし、後者の場合は良心の呵責を感じるしぃ。 ま、こういう場合、「場所がわからなくてベルツにしたが、それがどうした!?」…と開き直るのがいちばん自分の心が傷付かなくていいとは思うんですが、ほとんど諦めの境地に入った頃、ようやく “大滝乃湯” に辿り着くことが出来まして、いやあ、タイムリミット5分前、ギリギリのところでありましたなぁ。一度場所さえわかってしまえば、どうしてこんなことろで道に迷った?…と、思わずそんな自分が愛しくなっちゃうほど、分かりやすいところだったんですけどね。

 受付のおばちゃんに、「まだ、大丈夫ですよね?」…と尋ねると、彼女はにっこりと微笑んで、「いいよー♪」と言ってくれまして、いや、僕ってわりと年上のギャルにはウケのいい “マダムキラー” ですかね。いや、マダムと呼ぶにはやや人生経験を重ねすぎた嫌いのあるおばちゃんでありましたが、それはともかく。時間ギリギリだのが幸いして、中はかなり空いておりました。ちなみにこの施設は古めかしいムードをだそうと懸命に頑張ってはおりますが、根はけっこう新しいものであると思われ、風情があるかどうかは、うーん、微妙なところですな。かなり照明を暗くしてあるので、おじさんにジロジロ見られて、思わず萎縮しちゃう心配が少ないところはいいんですけどね。内湯はかなり広めでありまして、ゆったりと入ることが出来ます。あと、サウナもあったような気がします。で、外に出るドアのようなものがあったので試しに外に出てみたところ、そこはまるっきり外やん!…といった感じでありまして、こんなところをフリチンでうろうろしていてもいいのか?…と、かなり不安になっちゃいました。何せ入った時間がギリギリだったので、他に客があまりいないんですよね。外は左手に池のようなものがあって、右手のほうには何だか下に降りていく階段のようなものがあったんですが、そこにあった貼り紙には “女性専用” という文字が見えたので、慌てて中に戻ってきました。いやあ、男湯からいきなり女湯に出ちゃうとは、恐ろしいシステムになっているところでありますなぁ。。。

 で、しばらくすると一人のおっさんがフラフラと外に出ていったんですよね。はて、どうしたものか?…と様子を窺っていると、そのおっさんは左側の池のほうへと歩いていって、そこにざぶんと身を沈めたのでありました。そうか!あれは露天風呂だったのか!…ということに初めて気が付いたんですが、いや、あるいはそうではないかと思ってたんですけどね。が、露天風呂だと思って入ろうとしたら、中に鯉が泳いでいたりして、しかも水が冷たいじゃないか!…という事態が往々にしてあるので、十分に注意しなければならないわけでありまして。が、このおっさんの勇気ある行為によって、そこが紛れもなく露天風呂であることが判明した次第でありまして、いや、そのおっさんが “間違えて池に入ってしまった自分” をカムフラージュするため、いかにもそれが露天風呂みたいな振りをしているという事も考えられなくはないんですけど。そのおっさんはフリチンでありましたので、振りをしている恐れは十分にあるわけです。で、おっさんがそこから立ち去るのを待って僕もそこに入ってみた次第でありますが、そこはまごうことなき露天風呂でありました。鯉も泳いでいなかったので、たぶん間違いはないでしょう。で、先ほどまで露天風呂に入っていたおっさんでありますが、今度は階段を歩いて禁断の女性専用エリアのほうへと降りていってしまったんですよね。一人では心細いものの、同士がいれば安心だねっ♪…と思ってその後をつけてみることにしたんですが、もう一度例の貼り紙をよく見てみると、どうやら時間帯によって女性専用タイムと、おっさんタイムを分けているという、そういうシステムのようでありまして。で、時間を確認すると、どうやら今はおっさんでも大丈夫タイムのようでありました。僕は胃を決してこっそりと地下への階段を降りて行った次第でありますが、するとそこには、おおっ!!…ということで、この続きはまたいずれ。

 さ、今日はマル・ウォルドロンでありますな。で、温泉ネタも4回目となるとさすがに、ええ加減にせえ!…と言われそうなので今回でヤメにして “大滝乃湯・禁断の地下室” の秘密をばらしておくと、そこはですね、 “合わせ湯” というものになっていたんですけどね。一人が入れるくらいの浴槽が5つほど並んでおりまして、それぞれ湯の温度が変えてあります。場内にあった説明書きによると、どうやら温度の違う浴槽にそれぞれ1分間ずつ浸かりなさい。…というのが正しい入浴法であるようで、熱い湯とぬるい湯に交互に入ることでメリハリをつけて、血行をよくしようという魂胆のようです。紹介文にはよく、「ぬるい湯から入って次第に体を慣らし、最後にいちばん熱い湯に入るのがポイント」などと書いてありますが、それは間違いだと思います。説明書きにはちゃんと入る順番が明記してありましたからね。確かに最初はぬるい湯から入るそうですが、その次は2番目くらいに熱い湯だったと思います。ちなみに、いちばん熱い湯の温度は46度か47度もあって、こりゃ、とても1分間も入っていられる温度ではありません。血行が良くなる前に、脳の血管切れるちゅうの!…と思わずにはいられなくて、熱湯コマーシャルに挑戦するギャルというのは相当に我慢強いものであるな。…ということを身をもって実感することが出来ます。あ、ギャルで思い出しましたが、男湯のほうから入るドアの反対側はガラス窓になっていて、ロッカーが並んでいるのが見えました。おそらくその先は女湯につながっているんでしょうな。男湯連絡のドアには内側から鍵がかかるようになっているので、恥ずかしがり屋のギャルは施錠を忘れないようにしなければなりません。おっさんというのは平気で、「あ、間違えちゃったぁ♪」…とか言って、時間を無視して入ってこようとしますからね。もし僕がおっさんだったりしたら、きっとそうすると思います。ま、生憎と僕はおっさんではなくて分別のある青年でありますので、そんな恥さらしな真似はしませんけどね。ちなみにこの “合わせ湯” は何ともレトロな雰囲気が漂っておりますので、気軽に草津の湯治場ムードを味わうにはオススメでありますな。

 ということで、 『ザ・クエスト』 でありますが、これはですね、サイドマンがエグいです。エリック・ドルフィーブッカー・アービンって、この2人を一緒にしたらアカンやろ?…みたいな。ほとんどもう、サラシ粉に塩酸をかけるみたいなものですもんね。塩素ガス発生するちゅうに!…と思わずにはいられません。ま、毒気のないジャズなんて、面白くもなんともないので、これくらいデンジャラスな組み合わせのほうが楽しくはあるんですけどね。で、このアルバムではもうひとつ、ロン・カーターがチェロを弾いているのもポイントでありまして、これはもう、絶対にマトモなものにはならないな。…ということが確信を持って言えます。つまらないですからね、ロン君のチェロは。 ロン・カーターにこの楽器を持たせるのは、ロン・カーターをロン毛にするくらい論外であると思わずにはいられませんが、でもまあ、持っちゃったものは今さらどうしようもないしー。 ということで、では1曲目に参りましょう。 「ステータス・シーキング」 。地位を求める、地井武男。…といったところでしょうか。ステータス。確かに手に入れたいものではありますよね。ステータスはもう、捨てたっす。…などと達観したことを言える心境にはなかなかなれないものです。で、この曲はですね、ライナーノートによると、マルが “なりふり構わぬ” 人間の生きざまと呼んでいるものを反映しているそうでありまして、ここでマルが示そうとしたのは地位を得るための闘いにおける2つの様相なんだそうです。なんだかよくわかりませんね。この手のよくわからん主張が織り込まれた音楽というのは得てしてつまらんものになりがちなんですが、政治と金が絡んだジャズは駄目だとも言われますしね。これがもし政治と金でなく、銭形平次と亀だったりしたら少しはマシなのかも知れませんが、このマルの曲もどうも今ひとつ面白くない仕上がりとなっております。曲自体は単純。何だかよくわからん前衛風の短いメロディが2回ほど反復されて、おしまい。その後すぐにドルフィーのソロとなりますが、いや、これはさすがの出来栄えなんですけどね。もっともドルフィーのアドリブというのは、どの曲でも解釈が同じや!ん…という気がしないでもなく、それは続くブッカー・アービンにもそのまま当て嵌めることが出来るんですが、とにかくまあ “個性” という点では特出しているわけでありまして。ま、個人的には “特出” よりも “特ダシ” のほうが好きなんですけどね。ということで、ロンくんのチェロのソロ(←つまらん)があって、マルのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。ま、マルのソロはそれなりに持ち味が出ていて、悪くはないと思うんですけどね。

 2曲目、 「ドゥクイリティー」 。言いにくいがな!…と思わずにはいられない曲名でありますが、デューク(←エリントン)の “tranquility” (←やすらぎ) という意味があるんだそうです。大和明クンの日本語ライナーによると、通常の32小節型 (8小節単位のAABA形式) ではなく、変則的な 2-6-4-4形式となっているそうでありまして、はあ、そうですか。ちなみに僕、大和クンはあまり好きではないですからね。鯨の大和煮缶詰は好きだったんですけど。で、この曲はアレです。ロンくんがチェロのピチカートでテーマ・メロディを弾いておりまして、それがなんとも幻想的でミステリアスなムードを演出しております。そこにジョー・ベンジャミンのベースが絡んで妖しいムードをより一層盛り上げているわけでありますが、管楽器の2人は時折アンサンブルに絡んでくるだけで、あまり出番はありませんね。中間部で聴かれるマルのほの暗いピアノが夜間部的な悲哀を感じさせ、とってもいやらしいです。いや、いやらしいのは卑猥であって、悲哀ではありませんな。ということで、テーマに戻って、おしまい。室内楽的なちょっとした小品でありました。 で、次。 「サーティーン」 。テーマの意味は 「13」 ですよね。テーマが13の音符から成立しているところからきたタイトルなんだそうです。そのまんまですね。“13(サーティーン)”といえば、ゴルゴやろ?…と思わずにはいられませんが、イワシを油に漬けたやつはサーディンですけどね。で、この曲、テーマが本当に13の音符から出来ているのか?…と思って数えてみようとするにはあまりにも複雑な構成でありまして、えーと、最初にアンサンブルが出てきて、ドラムの無伴奏ソロがあって、チェロのピチカートが出てきて、ドルフィーが出て、アービンが出て、で、そこからドルフィーのアルト・ソロへと流れていくわけでありますが、いや、相変わらずドルフィーですな。どの曲でも解釈が同じや!ん…という気がしてしまうところが実にドルフィーであります。続いてロン君のチェロのアルコのソロがあって(←つまらん)、で、3番手のアービンも相変わらずでありますな。ま、続くマルのソロは悪くないと思うんですけどね。影ながらチャーリー・パーシップも頑張っていると思いますが、最後にまた複雑怪奇なテーマが出てきて、おしまい。

 4曲目の 「ウィ・ディディット」 は軽快なナンバーですね。ま、テーマ自体はごく短いもので、すぐに終わっちゃうんですけどね。で、相変わらずのドルフィーのソロと、アイデアと輝きに満ちたロン・カーターのチェロを堪能したら、これまたお楽しみのブッカー・アービンでありますか。いや、個人的にはドルフィーもアービンも大好きなキャラクターなんですが、こうも同じようなソロばかり聴かされるとさすがに辟易して、飽き飽きして、ウキウキ♪…って、最後は結局、何だか気分が浮かれてしまいましたが、チャーリー・パーシップのドラムス・ソロも聴かれたりして、全体としては、ま、フツーの出来ですかね? で、続いては 「ウォーム・カント」 という曲です。フリジアン・モードで組み立てられた作品だそうでありますが、このフリジアン・モードというのは太古小アジアにあった王国、フリジアに発する旋法なんだそうですね。フリジアの人はみんなフリ (←フリチンのこと) じゃ。…ということはなく、みんなちゃんとパンツを穿いていたそうですが、ここでのポイントは何といってもドルフィーがバスクラではない普通のクラリネットを吹いていることでありましょう。そのノン・ビブラートなトーンが何と静謐なムードを醸し出しておりまして、何でもいいけど “静謐” って、こんな難しい字を漢字のテストに出題されたら絶対に書けませんよね。でもまあ、よく見るとこの字を構成しているパーツはわりと単純なので、 “ごんべんに必ず皿” と覚えておけば大丈夫ですよね。これで1学期の国語の試験は5点は貰った!…という感じでありますが、いや、この漢字が出題される確率は0.2%もないと思いますけど。で、演奏のほうはというと、ドルフィーのクラリネット・ソロの後、ロン・カーターのピチカート・ソロがあるんですが、これが意外と悪くない出来でありまして。地味なのが幸いしましたかね?続くマルのピアノ・ソロも反復フレーズを繰り返したりして、いや、繰り返すから反復フレーズなんですが、とにかくまあ “黒い情念” と呼ばれる彼のスタイルが顕著に現れた県庁所在地。…といった感じでありまして、ちなみに三重県の場合は津なんですけど。

 ということで6曲目は 「ワープ・アンド・ウーフ」 ですか。タイトルは 「縦糸と横糸」 という意味のようですが、なるほど、確かに縦糸と横糸が絡んで織物になるんだよね。…といったマニュファクチュア (工場制手工業) 的な雰囲気の感じられる作品でありますな。具体的にいうとホーン・アンサンブルが横糸で、ロン・カーターのチェロが縦糸なんですかね?ハッピー&ブルーのリーダーは “敏いとう” ですけどね。テーマの後、マルのソロがあって、続いてブッカー・アービンが登場するんですが、先ほどの曲では出番がなかったので、何だか妙に懐かしい気分になりました。で、さしものアービンも冷たくあしらわれて “前に出過ぎていた自分” を反省したのでありましょうか? ここでは何やら神妙な面持ちで抑制されたアドリブを展開しておりまして、その謙虚な態度は大いに評価していいと思います。続くドルフィーはまったく反省する様子もなく、いつものマイペースで飛ばしておりまして、ま、これはこれで立派だとは思うんですけどね。特に中盤以降のフレーズは世の中を舐めきっているとしか思えなくて、後半は大人しくしていた筈のアービンも乱入してきて、コレクティブ・インプロヴィゼーションの様相を呈しております。んなことで、テーマに戻って、おしまい。

 で、アルバムの最後を飾るのは、かの有名な 「ファイアー・ワルツ」 でありますな。言わずと知れたドルフィー&ブッカー・リトルの 『ファイブ・スポット』 で演奏された曲でありますが、あのライブ・ヴァージョンと比べるとこのスタジオ・セッションは地味そのものでありまして、ドルフィーのソロさえ聴くことが出来ません。マルの後、ロン・カーターがピチカートでチェロを弾いて、アービンが出てきて(←くどい)、最後には珍しくジョー・ベンジャミンのベース・ソロがフィーチャーされて、いや、演奏自体、早く終わらないかな?…と思っているのに、なかなかしつこいんですよね、これがまた。ジャスト8分もありますからね。ということで、ようやくテーマに戻って、今日のところは、おしまい。

【総合評価】

 つまらんです。…って、ああん、そんな簡単に一言で片付けるんじゃなくて。でもまあ、あまり面白くないですね、こりゃ。やはりドルフィーとアービンを一緒にしたのは失敗だったか?…と思わずにはいられなくて、ロン・カーターのチェロもやっぱり邪魔でした。いや、前衛してるね!…というのは評価してもいいと思うんですけどね。以上、とっても保守的なさば君の見解でありました。


INDEX
BACK NEXT