UNDILUTED (VERVE)

WYNTON KELLY (1965/2/5)

UNDILUTED


【パーソネル】

WYNTON KELLY (p) PAUL CHAMBERS (b) JIMMY COBB (ds)
RUDY STEVENSON (fl) <#1>

【収録曲】

BOBO / SWINGING 'TILL THE GIRLS COME HOME / MY SHIP / OUT FRONT
NEVER / BLUES ON PURPOSE / IF YOU COULD SEE ME NOW / SIX-EIGHT

【解説】

 “小海” というのはちょっと不思議な地名ですよね。そもそも“小海” というのはどの辺りにあるのかというと、JRの小海線の沿線。…ということで、大体の位置は分かって頂けると思いますが、小海線というのはアレですよね。山梨県の小淵沢と長野県の小諸とを結ぶローカル線でありますな。JRの路線名というのは八王子高崎を結ぶ八高線のように、始発駅と終着駅の名前から一文字ずつ取って合体させるというパターンが少なくないんですが、小淵沢小諸では “小小線” となってしまって、少々語呂がよろしくないので、途中の駅名を取って “小海線” ということにしたのでありましょう。で、この路線はですね、JRで最も標高の高い地点を走るということで、世間には広く知られております。いや、あまり世間では広く知られていないかも知れませんが、少なくとも鉄道マニアの間では有名な話であります。マニアですからねぇ、鉄道マニアというのは。生きていくためにはまったく何の役にも立たなさそうな無駄な知識をたくさん蓄えているわけでありますが、例えば、JRの駅の中でいちばん標高が高いのは小海線野辺山駅で、その標高は 1345.67mである。…みたいな。いや、妙に覚えやすい数字ではあるんですが、身長の話やないんやから、何もセンチの単位まで覚えなくてもいいんぢゃないか?…という気がしないでもないんですけどね。1センチくらい、列車が通過した瞬間には駅全体で重みで沈下しちゃうような気もするしー。

 が、このような、一見すると生きていくためにはまったく何の役にも立たなさそうな無駄な知識を知らなかったがために、大いなる敗北を味わってしまうというのも世の中には多々あるわけでありまして、例えばの話、小学生の頃に桑名市の市民会館で公開録画されたCBCテレビの 『天才クイズ』 に出場した塩サバ2号なんですけどね。そもそも 『天才クイズ』 というのがどのようなものであるのかというのは、 ここ を見て頂ければ一目瞭然なんですが、おおっ、珍しくこのページには僕の生写真が掲載されておりますな。ちょっぴり恥ずかぴぃ〜。…ので、リンクするのをヤメておこうかとも思ったんですが、それはそうと今年の春の花粉症は、凄いっ!!…んだそうですね。昨シーズンはぜんぜん症状が出なくて、ついに僕の花粉症も完治したか?…などと喜んでいたんですが、ただ単に飛散している花粉の量が少なかっただけの話のようで、それに比べてこの春の飛散量は何だか悲惨な量になるみたいですね。去年の30倍っ!…という恐るべき飛散予想が出されておりまして、恐らく完治したはずの花粉症がまたぶり返すのではないかということが懸念されますが、それはそうと 『天才クイズ』 ですな。「間違いなく天才賞を取って、天体望遠鏡をGETするっ!」…と豪語していた塩サバ2号でありますが、結果的には前半戦で撃沈しちゃったんですよね。その時に出された問題が、「日本でいちばん標高の低い駅は、愛知県の弥富駅で、あ・る?」…というものでありまして、それに対して塩サバ2号は、「ノー!」の帽子をかぶってしまったんですよね。

 ちなみに 『天才クイズ』 の前半戦は近くにいるお友達と相談出来るというシステムになっておりまして、リーダーシップのあるヤツが運良く賢いヤツであった場合、チーム全体が無傷のまま前半をクリアすることが出来る可能性がある反面、リーダーシップだけはあるんだけど、オツムのほうは今ひとつ芳しくないヤツだったりすると、途中で全滅っ!…という恐れもあったりするんですよね。で、塩サバ2号の場合、何となく、「イエス」なんちゃうか?…という気はしていたそうですが、結局は周囲の声に押されて、「ノー!」の帽子をかぶっちゃったんだそうでありまして、結果、ボーイズチームは多くの人員が共倒れとなってしまいました。やっぱり、「イエス」やったんや!…と後悔しても、時は既に遅し。塩サバ2号にとって初の公開録画は公開の残る結果に終わってしまったわけでありますが、しばらく、「人の言うことを信じるんやなかった。」…と、ぶつぶつ言ってましたからね。ま、そういう貴重な教訓が得られただけでも、人生においては大きなプラスであったと評価することも出来ようかと思いますが、だいたい愛知県の弥富駅なんてものは桑名駅の隣の隣くらいの半地元駅でありまして、そういう名前をわざわざ出して来たということは、正解なんとちゃうか?…と読むくらいの洞察力が欲しかったところでありますな。…って、ま、小学生にそこまで求めるのは少し酷かも知れませんが、何せ、テレビに出るっ!…というので、かなり舞い上がっていたに違いありませんからね。ちなみにこの時点でボーイズチームは戦力半減以下という大きな痛手を負ったにも関わらず、最終的には “勝ち組賞” の食パン10斤をGETしましたので、この日のガールズチームにも、あまり賢いギャルは多くなかったようでありまして。。。

 とまあ、つまるところ何が言いたかったのかと言うと、 “小海” というのは標高の高い “” とは遠くかけ離れた場所にあるのに、どうして “小海” などという名前が付いたのか?…と、ふと不思議に思ったのでありました。…ということを言いたかったわけなんですが、小海線の沿線には他にも “海ノ口” とか “海尻” といった “” の字の付く地名がいくつかあるんですよね。物事は “” に始まり “” に終わるので、“海ノ口” と “海尻” があっても別に不思議ではないんですが、ま、もう少し正確に言うと、物事は “” に始まり “肛門” に終わるということになるので、例えば “海肛門” といった地名があったとしても別に不思議ではないんですが、 その “” や “肛門” の前段階にある“” の部分がどこにも見当たらないのが不思議なんですよね。となると “小海” という地名はシーやオーシャンの海とは直接関係はなくて、例えば “小海一族” といった人名に起因しているんぢゃないか?…といった可能性も出てくるわけなんですが、となると “海ノ口” のほうは説明が付かなくなっちゃいますよね。ま、百歩譲って “海ノ口一族” というのもいた!…という仮説が成り立たなくもないんですが、これが “海肛門一族” となると、かなり無理があるわけでして。いや、もともと “海肛門” なんて地名はないんだから、そんな水戸黄門の海洋版みたいな一族がいなかったとしても、別に支障はないんですけどー。

  で、小海線の駅名を眺めているうちにですね、僕は “松原湖” という駅があることに気が付きました。山梨県側から出発すると、小淵沢甲斐小泉甲斐大泉清里…ということになるんですが、あ、 “サンメドウズ大泉・清里” という名前のスキー場があるのはこの辺りですよね。ちなみにここは1〜2月はボードの滑走全面禁止という変な規制がありますので、今回の “お正月@7ゲレンデ巡りの旅” からは除外しておいたんですが、ちなみにここは数年前まで “キッツメドウズ大泉・清里” という名前だったんですよね。何か変な名前やな。…と思っていたんですが、ちょっと調べてみたところ、 “キッツ” というバルブメーカーが経営母体だったんですな。 “キッツ” というのは一般にはあまり馴染みがないかも知れませんが、管工事施工業者の間ではわりと有名なんですよね。で、 “キッツ” のほうは分かったとして、ぢゃ、 “メドウズ” のほうは何なんだ?…というと、こちらのほうは “Meadows草原” という意味であるようです。 “バルブ会社の草原” では意味がわからんぢゃないか!…というので、 “サンメドウズ=太陽の草原” に改名したものではないかと思われますが、えーと、その後、小海線のほうは、野辺山信濃川上佐久広瀬佐久海ノ口海尻松原湖小海…と続くことになります。前回ここで紹介した “シャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳” の所在地は長野県南佐久郡川上村ということになっていて、川上村って、何でまたそんな近所のおっさんの名字みたいな名前を付けたのかと思ったら、ここは千曲川の源流にあたる村なんですね。甲武信岳(こぶしだけ)の山頂近くに源を発した千曲川は、やがて信濃川と名前を変えて日本海に注ぐことになるんですが、その長さは367km。うち、上流の長野県側が千曲川と呼ばれていて、その長さは214kmなんだそうです。で、その千曲川が八ヶ岳の噴火によってせき止められて誕生したのが “松原湖” なんだそうでありまして、ちなみにこれはひとつの湖の名前ではなくて、大小10あまりの湖沼群の総称とのことでありました。いちばん大きいのは猪名湖(いなこ)という湖なんですが、猪名湖では何だかイノシシの名前みたいでオシャレ感に欠ける嫌いがあるためか、この湖のことを “松原湖” と呼んだりすることもあるみたいですね。

 八ヶ岳の噴火によって突如生まれた小さな湖沼群。それを見た彼の地の人々は、まだ見たことのない遠い “” に思いを馳せて、ここに “小海(こうみ)” という名前を付けたのでありましょう。うーん、何かロマンのある話や〜。 “小海” 、何だかとっても綺麗な名前ですよね。いや、若干、婆さんの名前っぽい感じがしないでもないんですけど。ということで、 “さばりん@お正月ゲレンデめぐりの旅” は、川上村からちょっとだけ北上した地点で足踏みをしているのでありました。 (つづく)

 ということで今日はウイントン・ケリーでありますが、いや、今年に入って1日中、家の中に引きこもっている休日というのは今日が始めてでありますな。1月1日は “親戚家@肉食い会” で、昼から親戚の家に行って肉を食っていたしぃ。僕は例年、この “肉食い会” で肉を食いすぎて下痢になるのが通例だったんですが、今年は大丈夫でした。いや、今年はあまり肉を食いませんでしたからね。で、2〜4日は話がぜんぜん前に進まない “さばりん@お正月ゲレンデめぐりの旅” に出て、5日からはオシゴト。8〜10日の3連休のうち、前半2日は嬬恋〜菅平方面に滑りに行っておりまして、あまりにも滑ってばかりの生活だったのでちょっぴり良心の呵責を覚えて、10日の成人の日は会社に行って少しだけ事務処理をしておりました。で、昨日の土曜日は朝から生コン打ちの仕事をして、10時くらいには終わるか?…と思っていたら意外と3時くらいまで長引いて、会社に寄って帰ったらもう夕方になってしまったので、夜はほとんど “すけべ動画” の鑑賞で終わってしまいました。で、今日は朝から頑張って原稿を書いて、今、ちょうどお昼になったところでありますが、ほとんど1日仕事になっちゃいますからね、 “jazz giant” の執筆は。

 ということで今日はウイントン・ケリーなんですが、1週間ほど前に取り上げるアルバムの選定作業を進めていて、今回は 『ファイナル・ノーツ』 というのが珍しくていいかな?…と思って聴いてみたところ、内容的にあまり芳しいものではありませんでしたので、仕方なく Amazon.co.jp で2枚ほど注文しておきました。いやあ最近、電車で名古屋に行く機会がほとんどないので、CDはいつも通販なんですよね。お店で買う場合なら録音年月日やパーソネル、それに収録曲などのデータからある程度の情報を仕入れることが出来て、僕くらいのジャズ通になると、手に取った時点で演奏が聴こえてくるような気がするわけなんんですが (←ホンマか?)、通販はいけません。画面をぼーっと眺めていても、まったくイメージが浮かんできませんもんね。ま、その気になればそれなりの情報を手に入れることが出来て、場合によっては試聴まで出来るんだから、場合によっては店で買うよりも便利なのかも知れませんが、僕は駄目ですな。デパ地下の試食コーナーと同じく、手を出してしまった以上、責任を取って買わなければならないな。…と思ってしまう性質(たち)なので、CDの通販でも試聴は自重して、とりあえず目についたアルバムを適当に買ってしまうということになってしまいます。そして先日、注文したケリーのアルバムが2枚届いた次第でありますが、いやあ、失敗しました。2枚のうちの 『ポット・ラック』 というヤツは、何てことない、ヴィージェイ時代のコンピ盤でありまして、そういうのにもっともらしいタイトルとジャケットを付けて、売るな!…と思わずにはいられません。ま、よく調べもせずに買った僕が悪いんですが、 『ヴィー・ジェイ・ベスト・コレクション』 みたいな無難な名前を付けておいてくれれば、さすがの迂闊な僕も気が付いたと思うんですけどねぇ。ま、幸い、もう1枚の 『アイダイルーテッド』 というヴァーブ盤は聴いたことがないヤツだったので、僕とアマゾンとの対決は1勝1敗という結果に終わったんですが、んなことでまあ、今日はこのアルバムを聴いてみることにしましょうかぁ。

 えー、メンバー的にはポール・チェンバースジミー・コブとのトリオなんですな。これはもう、ケリーのレギュラー・メンバーと言ってもよくて、新鮮味という意味では今ひとつなんですが、安定感ということで言えば、まずハズレはないでしょう。で、新鮮味ということで言えば、1曲だけルディ・スティーブンソンがゲスト参加しているというのが興味深いところでありますな。スティーブンソンという人に関してはあまりよく知らんのですが、確かケリーとはお友達同士の関係にあって、ギタリストで作曲も得意としていて、ケリーのリーダー作にもいくつかオリジナル曲を提供している人。…といった人であったような気がします。もし僕の記憶に間違いがなければそういうことでいいかと思いますが、もし僕が何か重大な勘違いをしてたりすると、この情報が正しいかどうかはまったくサダカではないんですけどね。で、このアルバムにも彼は4曲のオリジナルを提供していて、ゲスト参加した1曲ではギターではなく、フルートの演奏も披露しているみたいですが、フルートも吹ける人なんでしょうか?あるいは僕が思っているのとはまったく違う人だったりするのかも知れませんが、この人が参加している1曲目はですね、ケリーのオリジナルで、 「ボボ」 というタイトルが付けられております。もし僕が九州系のギャルにこの曲のタイトルを訊ねられた場合、大きな声で答えられる自信はまったくないんですが、なるほど、 “ボボ” なだけのことはあって、ちょっぴりブラジルっぽい曲調ではありますな。が、結論から言ってしまうとですね、スティーブンソンのフルートは、余計や!…という気がしないでもありません。何かこう、とってもオマヌケで能天気な雰囲気が漂っていて、演奏の品位を著しく阻害している気がしてなりません。ま、明るくて陽気…と、褒めることも出来ようかとは思いますけど。とにかくまあ、この1曲目を聴いた時点で、何ぢゃこりゃ?…という違和感を覚えたのは確かでありまして、ま、これはこういうものだと思って諦めて、2曲目以降の展開に期待することにしましょうかぁ。

 2曲目の 「スウィンギン・ティル・ザ・ガールズ・カム・ホーム」 はモダン・ベースの巨匠、通称 “おすぺ師匠” こと、オスカー・ぺティフォードのオリジナルであります。個人的には不評だったスティーブンソンのフルートは姿を消して、通常のトリオ・フォーマットになっておりますが、うん、こっちのほうが遥かに出来はいいですな。ベーシストのオリジナルらしく、テーマ部はピアノとベースのピチカートのユニゾンで演奏されておりますが、ま、基本はブルースと言ってもいいでしょう。テーマとアドリブ・パートのつなぎの部分ではストップ・タイムが効果的に用いられて、でもって、そこからケリーのソロへと流れていくわけですが、いや、ここでのケリーの弾きっぷりは、もうどうしようもなくケリー節でありますな。正直、変な帽子をかぶってニヤけているジャケット写真の印象から、あまり多くのものは期待していなかったんですが、これほどまで生き生きとしたプレイが聴かれるとは思ってもいませんでした。慇懃でないスインギーさは、まさにケリーの真骨頂と言えるでありましょう。ああ、蘇る絶好調な頃のケリー♪ で、ベーシストのオリジナルらしく、きちんとチェンバースのソロもフィーチャーされておりますが、得意のアルコを封印しているところに救いがありますなぁ。ということで、再びケリーのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。伊達にスウィンギンなガールがホームにやってきたわけぢゃねーな。…ということを実感させる、ちょっとした名演奏でありました。6分30秒という、本アルバムではもっとも長い演奏になっていて、聴き応えもたっぷりであります。

 3曲目は歌モノの 「マイ・シップ」 ですか。タイトルは “私の船” でも “私の貼り薬” でもなくて、スキンシップとか、そういう時に使うシップなのではなかろうかと。いや、あまりよくはわからんのですが、サロンシップのようにスースーしていて、毛に貼って一気に剥がすと意外と快感だったりするイメージとは違っていて、何かこう、優しく包み込むかのような雰囲気のバラードに仕上がっております。演奏から伝わってくるのはリリカルさというよりも、むしろ一抹の寂寥感といったほうがよくて、いかにも晩年のケリーらしい枯れた味わいを堪能することが出来て、秀逸です。 で、4曲目の 「アウト・フロント」 は、一転してスインギーな味わいの作品でありますな。作曲したのはルディ・ スティーブンソンでありまして、この人はフルートの才能はともかくとして、曲を作るセンスに関してはなかなか秀でたものがありますよね。扇子職人としても大成したんぢゃないか?…と思えるほどなんですが、この演奏ではジミー・コブのドラミングにも注目!…でありますな。ジミー・コブという人は、何だか地味な昆布やな。…といった印象があって、フィリー・ジョーに比べると数段は劣るよね。…というのが僕の評価だったんですが、ここでの彼は意外な健闘ぶりでありますな。バッテラの上に乗っているトロロ昆布くらいの存在感はあって、いや、バッテラの上にそんなの乗ってたっけ?…と思ってしまう人が少なくないほど、大した存在感でもないんですけどね、トロロ昆布。 で、コブ君のドラミングに鼓舞されて、ケリーも素晴らしくスインギーなソロを披露しておりまして、いや、いいですなぁ、これは。 途中、ジミー・コブのドラム・ソロを挟んで、彼のテンションは最後まで落ちることはありません。テーマに戻って、最後はフェードアウトで終わっておりますが、放っておけばいつまでも引き続けていそうな勢いだったんでしょうな。アルバムA面の最後を飾るに相応しいエネルギッシュな名演であると思います。

 5曲目の 『ネヴァー』 は、これまたスティーブンソンのオリジナルでありますか。軽いボッサのリズムに乗ったいかにも日本人好みの曲調でありまして、これなら局長だって気分よく決算の書類にハンコを押してくれることでありましょう。場合によっては局長に浣腸したって、許してくれるかも知れませんね。…といった “官庁街の浣腸” を彷彿させる演奏に仕上がっておりまして、いや、実際のところはそんな変態じみた雰囲気ではなくて、アンダルシア地方で痴呆老人の介護に励むような、そんな爽やかさが横溢していて、秀逸です。あまりにもベタ過ぎて、辛口な人には大いに馬鹿にされそうな懸念がありますが、女はちょっと馬鹿なくらいのほうが可愛い。…と、バカ貝も言ってましたしね。いや、たかが貝類にそんなことを言われる筋合いはないような気もするんですが、そういう女性差別とも受け取られかねない発言は、いくら貝類とはいえ、許せるものではないと思います。とまあそんなことで6曲目。またまたスティーブンソンのオリジナルで、 「ブルース・オン・パーパス」 という曲ですね。僕はやっぱり、おむつと言えばパンパースだよね♪…と思っているんですが、パンパースではなくて、 “パーパス” ですかい。 ピアノとピチカート・ベースのコール&レスポンス形式によるテーマの処理が面白くて、ちょっぴりゴスペル・ライクな感じもあって、いいですなぁ、やっぱり “おむつ” は。 漏らしても大丈夫♪…というのは何物にも変えられない安心感であるように思います。 “おむつ” を “おつむ” にかぶったりするのも、なかなか稚気があっていいと思いますが、いや、さすがに使用済みのものはあまり頭からはかぶりたくはありませんけどね。で、ここでのケリーのアドリブは、本アルバムでもベストの出来と言ってよいノリのよさでありまして、やはりこの人は根がブルース・プレイヤーなんでしょうな。この手の曲を演奏させれば、彼の右に出るものは右大臣くらい?…という気がするわけなんですが、もう半端じゃないくらい右に出ますからね、右大臣は。ということで、テーマに戻って、おしまい。

 で、続いては“しっとり系”とまいりましょうか。 「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」 はタッド・ダメロンの手による美しい旋律の戦慄的なバラードであります。数え切れないほどたくさんのピアニストがこの曲を演奏しておりますが、ケリーのこのバージョンもさすがの仕上がりでありますな。ややカクテル・ピアノっぽいところが無きにしもあらずなんですが、所詮、人生は多かれ少なかれ、カクテルですからね。いや、意味はわかりませんけど。ということで、いよいよ最後の曲になりましたか。ラストを締めくくるのもスティーブンソン作品でありまして、 「シックス・エイト」 という、6で8なタイトルが付けられております。6/8拍子の曲なんすかね?いや、よくわからんのですけど。 アルバムの最後を飾るに相応しい…と言うには、やや地味な感じのする曲なんですが、センシティブなジミー・コブのブラシに乗せて繰り広げられるテーマ部は、ピアノとピチカート・ベースとのユニゾンが耳に心地よく、アドリブ・パートに入るとスティックに持ち帰るコブのバッキングの冴えも鮮やかで、ケリーのピアノはいつもどおりの好調さを持続しております。途中、ポール・チェンバースの力強いピチカート・ソロも聴かれ、メンバー全員が三位一体となった極上のインタープレイを堪能できます。…と、ステレオタイプな曲解説に終始してしまいましたが、ちゃんちゃん♪…といって終わるエンディングは “鮭のチャンチャン焼き” みたいで、なかなか悪くないと思います。ということで、おしまい。

【総合評価】

  『イッツ・オールライト』 の持つ胡散臭さと、 『フル・ビュー』 で感じさせたワビ・サビの精神を同時に味わうことの出来る1枚…と言ってもいいのではないでしょうか。1曲目のフルートだけは余計でしたが、思った以上に聴き応えのある1枚でしたな。スティーブンソン作品とジャズ・オリジナルと歌モノとのバランスも絶妙で、あとこれでジャケットさえよければ完璧だったんですけどねぇ。 「ボボ」 という言葉を頭に描いてニヤけているケリーの表情は…ま、愛嬌がある言えばそれまでなんですけどー。


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