THE CAPE VERDEAN BLUES (BLUE NOTE)

HORACE SILVER (1965/10/1,22)

THE CAPE VERDEAN BLUES


【パーソネル】

WOODY SHAW (tp) JOE HENDERSON (ts) HORACE SILVER (p)
BOB CRANSHAW (b) ROGER HUMPHRIES (ds)
J.J.JOHNSON (tb) <#4-6>

【収録曲】

THE CAPE VERDEAN BLUES / THE AFRICAN QUEEN / PRETTY EYES
NUTVILLE / BONITA / MO' JOE

【解説】

 “清里” というのはよいところでありますな。どれくらいよいところなのかと言うと、人間としても上司としても尊敬するに足る人格者であられる長網所長代理(仮名)がですね、数年前に訪れていたのではなかろうかと。いや、詳しいことは知らないし、特に興味もないので敢えて聞きもしなかったんですが、あの辺りで購入したのではないかと思しきお土産をですね、会社でみんなに配ったことがあったんですよね。清里という顔かよ!!…と思った人がいたとすれば、それはあまりにも失礼な話でありまして、いつも知的で爽やかな所長代理らしい選択であるな。…と思った次第でありますが、1人あたり1本ずつのワインを買ってきて、営業所全員に配布していたような記憶があります。いくら小瓶とは言え、それ相応の出費だったに違いなく、いや、えらく奮発したものでありますな。その太っ腹な所長代理がですね、どうしてリフレッシュ休暇の際には、 「白い恋人」 のひとつも買ってこなかったのか?…というのが不思議でならないんですが、いや、もう既に済んでしまった過去の過ちをいつまでもぐだぐだと責めるのはよくないので、この話を書くのは今回で最後にしようと思うんですけど。次回、どこかに旅行した際に “地域限定キティちゃんグッズ” を買ってきてくれればそれで済む話でありまして、古い話を蒸し返すのはやめておきましょう。

 で、今回、旅の目的地として “清里” を選んだのはですね、どうしても長網所長代理(仮名)の足跡を辿りたいのぉ♪…という切実な乙女心によるものではなくて、むしろ、出来ればそういう事態だけは避けたいところだったんですが、事前の天気予報によると、どうやら1月2日の北信地方は雪が降りやすい天候になるみたいで、となると、行き先を晴天率の高い中信エリアに変更したほうが無難であるように思われ、そこでまあ、以前から一度行ってみたいと思っていた八ヶ岳エリアのスキー場に行ってみることにしたんですけどね。結果、それが所長代理の足跡を辿るようなルートになってしまったとしても、それは不幸な偶然というヤツでありまして、長い人生、たまにはそういう理不尽な出来事に巻き込まれるということもあるわけでして。毒キノコにあたったようなものだと思って、諦めるしかありません。ちなみにその日の夜の宿泊地は木島平ということになっていて、八ヶ岳山麓から北信地方への移動というのはやや無理がないわけでもないんですが、ま、何とかしようと思えば何とかならないでもないレベルでありまして。それに所長代理は恐らくそのような変則的なルートは取らなかったに違いないので、不幸中の幸いとして、その呪縛から逃れることが出来るわけでありまして。とまあそんなことで、最初の目的地を シャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳 に設定したわけなんですけどね。古いスキーヤーには “八ヶ岳ザイラーバレー” という名前のほうがお馴染みかと思いますが、いつの間にやら経営母体が洋菓子屋さんのシャトレーゼになったみたいなんですよね。スキー場の規模としてはかなりシケたものではあるんですが、ま、地味にボードの練習をするにはちょうど手頃かな?…という気もするし、午後からは “小海リエックス・スキーバレー” に回ることにすれば、それなりの満足感が得られないでもないよいうな気がしないでもありません。

 で、これらのスキー場へ行くにはですね、中央道の小淵沢ICが起点ということになります。いいですよねぇ、小淵沢。 いや、いつも通過するだけで降りてみたことはないんですが、何となく “こぶっち” という愛称で呼べそうなところがいいのではないかと思います。で、1月2日はですね、完璧なまでのパーフェクトな快晴♪…でありまして、それは北信地方も同様だったようなので、わざわざ八ヶ岳に回る必然性もなかったかな?…という気がしないでもないんですが、それはあくまでも結果論というヤツでありまして。八ヶ岳エリアも想定どおりの…いや、想定以上と言ってもいい素晴らしい天気だったので、それはそれでよかったではありませんかー。所長代理が訪れた時はこれほどまでのピーカンではなかったに違いなく、いや、あの人は何だか悪運だけは強そうなキャラであるので何とも言えないんですが、とにかくまあ、心の底から「来てよかったぁ♪」…と思えるような爽やかな朝でありましたな。出来ればこの景色を○○ちゃんと一緒に見たかったところでありますが、あ、塩通ファンのギャルはこの “○○ちゃん” の部分に自分の名前を当て嵌めて読んで下さいね。塩通ファンのおじさんは別に自分の名前を当て嵌めて読んでもらわなくても結構です。長網所長代理(仮名)と一緒にさえない曇天でも眺めながら、黙ってうなだれていて下さいね。で、一方、僕と○○ちゃんはですね、朝靄に煙る諏訪湖の向こうに八ヶ岳がくっきりと浮かび上がる光景を目にすることになります。

 「ああん、とっても綺麗なのぉ♪」
 「まるで○○ちゃんみたいだねっ。」
 「もう、さばさんったらぁ!」

2人が乗ったエクストレイルのカーステレオからは、ソニー・クラークの演奏する 「朝日のように爽やかに」 が流れているのでありました。…って、いや現実的には独りで、「おおっ、すげぇ!」…と感嘆の声を漏らしながら、ドナルド・バードの何やらファンク系の演奏を聴いていたんですけどね。八ヶ岳はまだあまり雪化粧をしておりませんでしたが、個人的にはケバ系よりもスッピンに近いくらいのほうが好きなので、これはこれでよかったと思います。しっかし、これほどまで裾野からくっきりと八ヶ岳の姿を見たのは生まれて初めてでありまして、ちょっぴり感動して瞼の裏がウルウルしてしまいました。こんな感情に襲われるのは、大晦日にテレビで 「ドラえもん」 を見て以来ですかね? 今回は泣ける感動作ばかりを集めてましたからなぁ。…と、 “思い出し泣き” をしながらクルマを進めているとですね、おおっ、今度は目の前に富士山がっ! 条件さえよければ中央道からも小さく富士山が見えることは把握してたんですが、これほどまでに大きく見えたのは初めてでありました。何かこう、年が明けて富士山もひとまわりビッグになったって感じぃ?

 「ああん、とっても富士山なのぉ♪」
 「まるで富士山みたいだねっ。」

 とまあそういうことで、小淵沢ICで高速を降りたんですが、そこから先はスキー場まで八ヶ岳高原ラインというのを走ることになります。大晦日から年明けにかけての大雪で、路面は完全アイスバーン状態でありましたが、景色のほうは最高でありましたな。八ヶ岳はあまりに近すぎてよく見えないんですが、そのかわり、南アルプス富士山の眺めが、ああん、とっても綺麗なのぉ♪ 清里の近くになると今度は八ヶ岳のほうもチラチラと見えてくるようになって、僕は随所に車を止めて、周囲の景色をバーチバチと激写したのでありました。

八ヶ岳高原ラインから見る富士山っ♪ 八ヶ岳高原ラインから見る南アルプスっ♪

 うーん、こうして写真で見ると出来としてはまあまあですかね? 何も、大晦日のドラえもんを思い出してまで泣くほどのことでもなかったかな?…と、今になってみれば冷静に振り返ることが出来るんですが、何せこの日はあまりの天気のよさに、頭の中がピーカン状態になってましたからね。とまあそんなこんなで、朝の8時半頃にはシャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳に到着することが出来たんですが、ま、くわしいゲレンデの情報はそのうちにまたスキー場ガイドのほうで紹介するとして。ま、簡単に概略だけを説明すると、スキーで2本ほど滑ってみた “ホーン” という中級コースは斜度はまずまずなんですが、距離があまりにも短すぎて、物足らなさ過ぎぃ。 一方、 “アルペン” という上級コースは見るからに急でコブコブで、とてもチャレンジする気にならなさ過ぎぃ。 “バレー1” と “バレー3” は斜度がなさ過ぎで、 “ばれーしょ” はジャガイモ過ぎぃ。…って、書いてることがあまりにもつまらなさ過ぎぃ。…といったところでしょうか。ま、 “バレー” のほうはボードの練習には手頃だったんですけどね。ただ、バーンが硬くて、バーン!…とコケたときに半端でなく痛いのがややネックでありましたな。頭をガーンと強打して、ピーカンな上に、ややパーポーにもなりかけたほどでありますが、ただ景色のほうは予想以上の出来栄えであったと言ってもよいのではなかろうかと。おおっ、駐車場からもゲレンデからも、八ヶ岳がモロ見えぢゃん♪ これはもう、多少、頭がパーポーになるくらいのことは我慢しなければなりませんな。 とまあそんなことで、昼まで滑って午後からは “小海リエックス・スキーバレー” に回ることにして、とりあえずスキー場の中にあるシャトレーゼの売店で会社のお土産用に八ヶ岳本館の限定品らしいチーズケーキを購入したのでありました。いや、2週間ほど前に志賀高原のお土産を持っていったばかりなので、今回はもういいかな?…という気もしたんですが、長網所長代理(仮名)がいつのまにやら 『ながりん通信』 といったHPを開設していて、そこにいつまでもネチネチと、 「 うちの会社の麦葉くん(仮名)は、清里に行ったのにシャトレーゼのお菓子を買ってこなかった。 」 …などという話を強調文字のイタリック体の緑色で書かれたりしても癪ですしね。

 ということで、 “さばりん@お正月ゲレンデめぐりの旅” は、次回に続きます。

駐車場から見る八ヶ岳っ♪ コースから見る八ヶ岳っ♪

 皆さま、明けましておめでとうございます。年が明けてからの9日間のうち、5日間をゲレンデで過ごすという生活をしておりましたら、すっかりHPのほうがおろそかになってしまいました。ああ、サザエさんちの隣に住んでる作家?…って、それは “おろそか” ではなくて、 “いささか” ですよね。…って、しばらく頭がパーポーになっていたせいで、ボケが以前にも増して低レベル化してしまったような気もするんですが、とりあえず1週間ほどは雪遊び自粛モードに入ろうかと思っておりますので、本年もよろしくお願いします。ということで、2005年の第1回目はですね、ホレス・シルヴァーということになったんですが、でもって今回紹介しようと思っているアルバムはですね、 『ザ・ケープ・バーディーン・ブルース』 というヤツなんですけどね。 “CAPE VERDEAN” というのは何のことだかよくわからんかったんですが、何でも世界のどこかにそういう名前の諸島があるらしい。…という話を小耳に挟んで、諸島だけに、2005年の初頭に紹介するにはいいかな?…と思ったというわけでもないんですが、ところでこのアルバム、僕の心の中では既出の気分が色濃く感じられていたんですが、このコーナーで取り上げるのは初めてですかね? あるいは “マイ・コンピ” のほうで取り上げたのかも知れませんが、ホレス・シルヴァーのコンピと言うと、おそらく、 『ほれ寿司バーだ、たんと食え』 といった、実につまらないタイトルが付けられていたのではなかったかと。…と思って調べてみたところ、あ、やっぱりありましたな。 ここ ですね。微妙に語尾に “” が付いておりましたが、どういうことが書いてあるのかと言うと、

 前回、 「ケ・パサ」 で安らかな眠りについたシルバー父でありますが、彼が生まれたのが西アフリカのケープ・ヴェルデという島国だったらしいです。んで、若い頃にアメリカにやって来たと。このアルバムの 「ケープ・ヴァーディアン」 というのはきっとそこのことでしょう。前回の 「父ちゃんのシルバー」 が思いのほかの大ウケ状態だったので、味をしめたシルバーがもういちど父ちゃんの威光でお金儲けしようと考えたに違いない 「ソング・フォー・マイ・ファーザー」 の続編、もしくは2番煎じ、あるいは2匹目のドジョウ的アルバムと言えるでしょう。でも、意外に内容は悪くないです。タイトル曲はバリバリのドジョウ路線。ラテン・タッチの、かなりベタなメロディの曲であります。個人的には2曲目の 「ジ・アフリカン・クイーン」 を入れたかったんですが、収録時間の関係でタイトル曲に差し替え。ここらあたりがコンピの難しいところですな。あ、3曲目の 「プリティ・アイズ」 も悪くないなぁ。レコードでいうB面のセッションにはJ.J.ジョンソンが参加して、シルバーにしては珍しい3管編成になります。テーマのハーモニーが分厚いっす。あ、4曲目の 「ナットビル」 もいいなあ、なんですが、ここは 「ボニータ」 を選んでおきましょう。納豆嫌いだしぃ。 「ボニータ」 のほうは新主流派のムードもあるミディアム・スローの演奏であります。シルバーのソロはけっこうファンキーなムードがありますけどね。なお、このアルバムからトランペットがウディ“地下鉄に轢かれた”ショウに変わります。

 …って、いや、ここから引用しただけで今日の後半部は8割がた終わったも同然でありますが、ところでこの “CAPE VERDEAN” というのを僕はずっと “ケープ・バーディアン” と発音していたんですが、 “ケープ・バーディーン” と読むのが正解だったみたいですね。で、国の名前としてはどういうわけだか “カーボベルデ共和国” ということになるようですが、何となくスパゲティのカルボナーラが美味しくて、ズボンのベルトが特産なような気のする共和国ではありますな。いや、実際にはスパゲティのカルボナーラはさほど美味しくなくて、ズボンのベルトも特産ではないような気もするんですけど。とまあそういうことで1曲目のタイトル曲、 「ザ・ケープ・バーディーン・ブリース」 でありますが、これはあれですね、大ヒットした 「ソング・フォー・マイ・ファーザー」 の続編というか、2匹目のドジョウというか、200匹もドジョウがいるのかは過剰というか、可哀想なドジョウに同情的であるというか、ドジョウがプジョーに同乗して道場にやって来るというか、ドジョウのくせにプジョーに乗るとは生意気や!…と思わずにはいられませんが、とにかくまあそういう曲でありますな。情熱的なラテンのリズムに乗って、ホーン陣とシルヴァーのピアノがコール&レスポンスを繰り広げる。…といった感じのテーマが印象的でありまして、で、そのテーマ部のムードはですね、シルヴァーのソロ・パートに入っても色濃く持続しております。いやあ、色濃いですなぁ。長網所長代理(仮名)は、ちょろこいんですけどね。えーと、関係ないことを書いたら話を続けにくくなりましたが、ここでのシルヴァーのソロはアドリブというよりむしろ、タシロ的と言ってもよくて、テーマ・メロディをフェイクして発展させていく。…といった手法が取られているように思われます。いや、タシロはあまり関係なかったんですけどね。で、続くジョー・ヘンダーソンのソロも基本的にはシルヴァーとの呼び掛け&応答形式となっておりまして、黄桃好きな人にはそれなりに楽しめるんですが、自由奔放なフレーズの飛翔…のようなものを期待していると、多少、肩透かし気味かも知れません。で、ウディ・ショウ君は個人としての出番がないまま演奏はテーマに戻ってしまって、全体では4分55秒という、ややあっさりとした仕上がり具合なのでありました。ま、この1曲はアルバムの雰囲気を印象付ける助走のようなものであると思っておいていいかも知れません。

 ということで、2曲目です。 「ジ・アフリカン・クイーン」 は痔に苦しむアフリカの女王様をテーマにした作品だと思われます。苦しいですからね、痔は。 いや、幸いにも僕は今まで痔になったことはないので、本当の苦しみはよくワカランのですが、たまに肛門に疣のようなものが出来ることはあるんですよね。恐らくこれが発展すると、疣痔ということになるんだろうな。…という気配だけは何となく実体験したことがあります。で、この曲はですね、病苦に悩む女王の鎮痛な思いを具象化したのでありましょうか、何やらブルーなムードが漂っておりまして、そこのところが日本人の心をグッと掴むんだよね。…という気がしますよね。深くどこまでも沈みこんでいって、最後のところで何とか立ち直りの兆しを見せるかのようなメロディラインが特徴的でありまして、全体的にはモーダルでいて、ファンキーの香りをそこはかとなく感じさせるところが、素敵♪…ですよね。で、ソロ先発はヘンダーソンですか。慎重に音を選んでいるな。…といった調子でアドリブを進めていって、後半は自由奔放なフレーズの飛翔…というよりも、何やら苦痛のあまり呻き声を上げているかのような感じになっております。で、ソロ2番手はウディ・ショウですかい。ジャズ界広しと言えども戸塚宏とウディ・ショウほど人の痛みが分かる者はいないに違いなく、何せ、片や “スパルタの海” で、片や、弱視&エイズ&地下鉄に轢かれて片腕切断ですからね。いや、宏クンのほうはジャズ界とは何の関係もないような気がしないでもないんですが、ここでのショウ君のソロはいいですなぁ。音にペインがありますよね。そしてフレーズに余韻があります。で、哺乳類の外部生殖器と肛門との間には会陰(えいん)がありますが、ソロ3番手はシルヴァーのピアノでありますか。根が “根っからファンキー” な人なので、モーダルなプレイには若干の不安があったんですが、ま、無難にこなしている感じですかね?全体的にやや地味ではありますが、時折、ブロックコードで盛り上げるあたり、シルヴァーらしさの片鱗を見ることが出来るシステムとなっております。ということで、テーマに戻って、おしまい。

 3曲目は 「プリティ・アイズ」 という曲です。いいですよねぇ、プリティな合図というのは。フリチンな合図というのはあまりよくありませんけどね。パンツを脱いで、いったい何の合図や?…と思わずにはいられませんが、この曲はアレですね。明るい感じのハード・バップ作品。ま、そんな感じの出来栄えでありますな。…と思っていたら、それは “第1テーマ” と言える部分の話でありまして、続いて登場する “第2テーマ” のほうは、何ともモーダルな感じのするワルツに仕上がっておりました。何だかウエイン・ショーターあたりが書きそうなメロディでありまして、60年代も中盤になって、シルヴァーの作風もずいぶんと変化を遂げたものでありますな。で、ソロ先発はジョー・ヘンなんですが、いかにもジョー・ヘンあたりが得意としそうな曲調だけに、いかにもジョーヘンらしい “うねうねフレーズ” を連発しております。続くショウ君のモーダルな吹きっぷりも実に印象的でありまして、あとはえーと…、ま、だいたいそんなところですな。ゆったりと吹いているパートと細かい譜割りで畳み掛けるパートが交互に登場して、演奏全体にめりはりを与える “めはり寿司” って感じぃ? いや、南紀あたりの名物なんですよね、めはり寿司。 寿司といっても水産っ気はまったくなくて、寿司飯をやや漬物フレーバーの葉っぱで包み込んだものなんですが、目を見張るほど大きい。…というのが名前の由来なんだそうです。目を見張るほど美味しい。…というほどのものではないんですが、ま、そこそこは美味しいんですよね。昔、尾鷲のほうに仕事に行ってた頃はよく、 「オークワ」 というスーパーで買って食べておりました。ヘルシーな食品なので健康にもよかったと思うんですが、これだけでは何だか物足りないので、たいてい 「あら竹」 というドライブインの自動販売機で鶏の唐揚げを買って食べておりました。唐揚げ&めはり寿司というのは、今から考えても絶妙の取り合わせでありましたなぁ。…などと言ってるうちにシルヴァーのソロになりましたが、こちらも緩急の変化がモーダルな感じを出していて、秀逸だと思います。最後はブロックコードで大いに盛り上げて、 “第2テーマ” に戻って、最後に “第1テーマ” を合奏して、おりまい。曲の構成にも工夫の跡が見られて、傾聴に値する作品に仕上がっているな。…という印象でありますな。

 で、レコードで言うB面の3曲にはゲスト・プレーヤーとしてJ.J.ジョンソンが参加しております。シルヴァーには珍しい3管セクステットになるわけですが、B面のトップを飾る 「ナットヴィル」 は、こりゃ、アレですな。典型的な3管ジャズ・メッセンジャーズのサウンドであります。ジョー・ヘン、ウディ・ショウ&J.Jというメンバーは、まさしく “裏JM” と言ってもよくて、世の中、必ずしも “” のほうが楽しいとは限らないことは皆様、よくご承知のことと存じます。3管のハーモニーでアップ・テンポのテーマが演奏された後、J.J→ウディ・ショウ→ジョー・ヘン→シルヴァーの順でアドリブ・パートとなりますが、各自のソロの中間点で残ったフロント陣がハーモニーをつけるというアレンジも、まさしくJM的であります。サイドマンの中ではJ.Jだけがやや保守的なイメージがあって、一人浮いているんぢゃないか?…ということが懸念されたんですが、なんのなんの。 このボントロはカーティス・フラーだよね。…と言われれば、誰もが何の疑問も抱かないほど完全に演奏に溶け込んでおります。意外と懐の深いキャラだったんですな。相撲取りになっても幕下7枚目くらいまでは出世していたかも知れません。…と、ここまで先行して書いておいてから改めて演奏を聴きなおしてみると、例の “ソロの間のハーモニー・パート” が、ウディ・ショウの時にはないんですな。で、シルヴァーのアドリブの時はバックのハーモニーも微妙に違う種類になっていて、同じパターンを4回も聴かされたら飽きるよね。…という観客の意見も巧みに取り入れられております。気配り上手ですなぁ、シルヴァーは。 で、最後にロジャー・ハンフリーズのドラムス・ソロもフィーチャーされて、 “JMムード” は最高潮に達します。でもって、テーマに戻って、おしまい。

 はい、次。5曲目は 「ボニータ」 ですな。 「ボニータ」 のほうは新主流派のムードもあるミディアム・スローの演奏であります。シルバーのソロはけっこうファンキーなムードがありますけどね。…と、昔の僕が書いているとおりの演奏でありまして、新主流派のムードもあるミディアム・スローの作品に仕上がっております。3管のハモリ具合が知的なセンスを感じさせ、シルヴァーって、ただのピーカン能天気ファンキー野郎ぢゃなかったんだね。…ということを再認識させられます。で、テーマに続いてピアノ・ソロになるんですが、なるほど、確かにちょっぴりファンキーなムードも感じられますな。純粋にシルヴァーのソロの出来ということで言えば、この曲がベストであるかも知れません。あまり派手さはありませんが、その代わりに地味さがあって、悪くないと思います。 で、以下、ヘンダーソン→J.J→ウディ・ショウと続くソロもなかなかいいっしょう。ということで、テーマに戻って、おしまい。…と、完全に手抜きモードに突入したところで、いよいよラストですな。今日、会社からの帰りに車の中で聴いていて、何だかジョー・ヘンあたりが書きそうな曲であるな。…と思ってしまったんですが、6曲目の 「モー・ジョー」 はやはりジョー・ヘンのオリジナルでありましたかぁ。どこかで聞いたことがあるような題名&曲調でありますので、あるいは彼のリーダー作でも取り上げられているかも知れませんね。果たして、何と言うアルバムに入っているでしょう?…と、調べてみるのが面倒なのでとりあえずクイズ形式にしておきましたが、答えは各自で調べてみてくださいね。 で、この曲は変則ハード・バップといった感じの仕上がりでありまして、やや落ち着いた曲調の作品が多かったこのアルバムの中では、ややパーポーな部類に属すると言えるかも知れません。J.J→ジョー・ヘン→地下鉄轢かれ男…と続くフロント陣の中では、やはり作曲者の張り切りが突出しておりますな。ウディ・ショウ君もまだ地下鉄に轢かれる前の段階ですので元気に頑張っておりますし、シルヴァーのソロだって悪くありません。ボブ・クランショウにも最後の最後になってウォーキング・ソロで活躍の場を与えておいて、で、テーマに戻って、おしまい。ということでえーと…、本日は以上です。

【総合評価】

 ファンキーとはまた一味違ったシルヴァーを堪能出来る、とってもよいアルバムだと思います。ところで今日は “成人の日” でお休みだったんですが、事務処理のためにちょっとだけ会社に顔を出したんですよね。で、何気なく長網所長代理(仮名)の机の上を見るとですね、僕がお土産に買って来たシャトレーゼのチーズケーキが手付かずのまま放置されておりました。食えよ!!…と思わずにはいられません。


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