BLUES IN THE CLOSET (VERVE)

BUD POWELL (1956/9/13)

BLUES IN THE CLOSET


【パーソネル】

BUD POWELL (p) RAY BROWN (b) OSIE JOHNSON (ds)
【収録曲】

WHEN I FALL IN LOVE / MY HEART STOOD STILL / BLUES IN THE CLOSET
SWINGING 'TIL THE GIRLS COME HOME / I KNOW THAT YOU KNOW / ELOGIE
WOODY'N YOU / I SHOULD CARE / NOW IS THE TIME / I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS
BE-BOP / FIFTY SECOND STREET THEME

【解説】

 プロレスの技にパイルドライバーというのがありますよね。相手の腰のあたりをグッと抱えて逆さに吊り上げ、頭を自分の股の間に挟み込んで、そのままガツン!…と脳天からマットに叩きつけるという荒技でありますが、いや、これはいかにもダメージがありそうですよね。プロレスの技の中にはジャイアント馬場の十六文キックとか、ジャイアント馬場の逆水平チョップとか、ジャイアント馬場のジャンピング・ネックブリーカー・ドロップとか、その効果のほどが疑問視されているものがいくつかあるんですが、いや、これは技をかけているのがジャイアント馬場であるところに問題があるのであって、他の人が同じ技を繰り出せばそれなりの破壊力はあるような気もするんですけどね。が、パイルドラーバーの場合、たとえジャイアント馬場にやられたとしても、それなりに痛いんぢゃないか?…という気がするわけなんですが、いや、果たしてジャイアント馬場に相手を逆さ吊りにするだけの体力があるのか?…とか、相手の脳天をマットに叩きつける前に、自分のほうが脳卒中で倒れちゃうんぢゃないか?…といった心配は度外視しての話なんですけど。いずれにせよ、パイルドライバーというのはブラッシーの噛み付き攻撃に匹敵するほど凶暴な技であるということが言えるわけでありまして、よく、プロレスごっこをしている子供がこの技を食らって入院しちゃうのもよくわかるような気がしますよね。

 ところでこのパイルドライバーは、日本語では “脳天杭打ち” と訳されていますよね。実にこう、言いえて妙というか、絶妙のネーミングであるな。…と感心するわけなんですが、僕はずっと “パイルドライバー” が “脳天杭打ち” なんだから、“パイル”の部分が“脳天”で、“ドライバー”というのが“杭打ち”なんだろうな。…と思っていたんですよね。ドライバーというのは“ねじ回し”、もしくは“運転手”のことではないのか?…という気もしたんですが、そこはそれ。世の中にはコドモには窺い知ることの出来ない、数多くの謎と秘密が隠されているわけでありまして、オトナの世界ではきっと、ドライバーが“杭打ち”であるというのもアリなんだろうな。…と、自分で自分を納得させておりました。そんな純情可憐な僕も、さすがにアントニオ猪木とモハメッド・アリの“世紀の対決”の結末には、こんなのアリか?…と思ってしまったんですが、それはそうと、僕の考えがまったくの間違いであったということが、つい最近になって判明しました。というのもですね、この度、ポンプ場の管理棟を新築するにあたって杭打ち作業を行なうことになったんですが、その施工要領書をぱらぱらと眺めているとですね、杭種のところに “PHCパイル” などと書かれているんですよね。僕の頭の中ではずっと、 “パイル=脳天” という公式が出来上がっていたので、一瞬、「PHC脳天…?」と思ってしまったんですが、次の瞬間、すべての謎が判明しました。そっかぁ! “パイル” の部分が “” で、 “ドライバー” が “打ち” だったのかぁ!!

 すべての謎が明らかになった今となっても、それでもやっぱりドライバーは “ねじ回し” か “運転手” やん。…という思いと、ではいったい “脳天杭打ち” の “脳天” の部分はどこから出てきたんや?…という新たな疑問も生じてきて、蟠り(わだかまり)が完全に消失したわけではないんですが、ま、いいでしょう。パイルドライバーは “杭打ち” であるということにしておきましょう。負けは負けとして、潔く認めます。 が、杭打ち工事の施工要領書を読んでいるうちにですね、プロレス技のパイルドライバーは、決して正しい施工要領で実施されていないのではないか?…という疑念が生じてまいりましたので、この点に関しては徹底的に糾弾していこうと思っております。現場代理人と立場としては当然のことですよね。で、今回の杭打ち工事の施工要領を順を追って調べてみるとですね、使用する杭の種類は “PHCパイル” となっております。これは前にも書きましたよね。それが一体どんな種類の杭であるのかというと、杭に関してはまったくのド素人である僕にはさっぱり見当がつかんのですが、おそらくまあ、パーっと派手で、ビタミンCがとっても豊富な杭なのではなかろうかと。…と思っていたらぜんぜん違っていて、“Pretensioned Spun High Strength Concrete Piles” (プレテンション方式遠心力プレストレストコンクリートパイル) のことなんだそうでありまして。いや、何だか思っていたよりも遥かに奥が深くて難しいものなんですなぁ、杭って。ま、杭は地面の奥深くまで打ち込まないと意味がないので、奥が深いのは当然といえば当然なのかも知れませんけど。 で、そのプレテンションで遠心力プレストレストなコンクリートの杭をどのように打ち込むのかというとですね、今回はセメントミルク工法で打ち込むことになるようです。セメントミルクというのが一体どういうものであるのかというと、杭に関してはまったくのド素人である僕にはさっぱり見当がつかんのですが、おそらくまあ、バリウムみたいなものなんぢゃないですかね? とにかくまあ施工方法としてはですね、まずアースオーガというの用いて地面に穴を掘って、そこに根固め液としてセメントミルクを流し込み、杭の周辺には杭周固定液というのを注入して杭を挿入し、支持力を発現させる…と。 なるほど、ただ地面に杭を打ち込めばエエだけの話やん。…というような安易な世界ではなかったんですな。いや、すごーく勉強になりました。

 それからするとですね、プロレス技のパイルドライバーというのは、あまりにも杭打ち作業を舐め過ぎていやしないか?…と思うんですよね。相手の腰のあたりをグッと抱えて逆さに吊り上げ、頭を自分の股の間に挟み込んで、そのままガツン!…と脳天からマットに叩きつけるって、そんな単純な工法で、杭の支持力が発現させられるとでも思っているのか!?…と、にわかに杭工法についてほんのちょっとだけ詳しくなった僕としては思ってしまうわけです。何せ相手は世界のジャイアント馬場ですからね。見事にパイルドライバーを決めてジャイアント馬場をマットに沈めたぜっ!…と思っていたら、支持力の不足が災いしてジャイアント馬場はマットの上にすっくと立ち上がり、十六文キックと、逆水平チョップと、ジャンピング・ネックブリーカー・ドロップの連発で、見事に逆転勝ちっ! やっぱり社長には敵わないやぁ。…という最悪の事態になりかねません。これはもう、屈辱以外の何物でもありませんよね。これもすべて、杭打ち作業を甘く見過ぎていたのが要因に他ならないわけでありまして、同じ過ちを2度と繰り返さないためには、完璧な対策を講じなければなりません。ここはひとつ、にわかに杭工法についてほんのちょっとだけ詳しくなった僕が “正しいプロレスのパイルドライバー工法” というのを伝授しようではありませんか。

 (手順1) スコップ、ツルハシ等を用いてマットの底に穴を掘ります。
 (手順2) そこに根固め液としてセメントやら牛乳やらバリウムやらを流し込みます。
 (手順3) ジャイアント馬場の周囲にジャイアント馬場周固定液を注入してジャイアント馬場を挿入します。

 これでもう、さしものジャイアント馬場もイチコロだねっ♪…って、いや、マットに穴を掘った時点でレフリーに叱られて、反則負けを取られて、終わり。…という気がしないでもないんですけど。 いずれにせよ、今日のうちに杭工事についての理解を深め、明日は悔いのない杭工事を施工したいと、かように思っている次第であります。おしまい。

 ということで、今日はバド・パウエルです。“バリウムうんこネタ”の後に名前を出されたわけではないので、パウエルとしてはさほど不本意ではないと思いますが、ま、それもまた人生ですからね。で、ピアニスト編も5順目に入ると紹介するアルバムのネタも尽きてくるわけでありますが、果たして僕はパウエルのアルバムを何枚持っているのか?…と思って調べてみたところ、8枚ほどありました。いや、モンクよりは好きなキャラなんですが、意外と持ってなかったんですね。 で、そのうち5枚は既に紹介済みで、“ジャケコレ2”のコーナーでジャケ絵を書いた1枚はとりあえず外しておきたいし、…って、あ、 “ジャケコレ2” でジャケ絵を書いた 『ザ・シーン・チェンジズ』 は “jazz giant” で既に紹介済みだったんですな。何だかちょっぴり損をした気分でありますが、とにかくまあ、ソロピアノのアルバムは聴いていてもちっとも面白くないしぃ。…と、気の向かないCDを候補から除外していくうちに、取り上げたいアルバムが1枚もなくなってしまいました。仕方がないから急遽、モンクのアルバムを買うついでに通販で1枚買ってみることにしたわけなんですが、そこで登場するのが 『ブルース・イン・ザ・クロゼット』 なんですけどね。いや、ヴァーヴのパウエルというのは 『ジャズ・ジャイアント』『ザ・天才』 以外、ほとんど眼中になかったんですが、意外とたくさんの枚数が残されていたんですな。ちっとも知りませんでした。中ではこの 『ブルース・イン・ザ・クローゼット』 というのがヴァーヴ盤にしては珍しくジャケットのセンスも悪くないし、いいんぢゃないかな?…という気がしたので、これを選んでおきました。詳しいデータはまったく知らないまま、とりあえず注文を入れておいて、で、手元に届いてはじめて詳細が明らかになったわけなんですが、ほぉ、ベースがレイ・ブラウンで、ドラムスがオジー・ジョンソンでありますかぁ。オジー・ジョンソンという人は、おじさん受けのいいオジーさん。…という印象があって、ヤングな僕にはどうか?…という気がしないでもないんですが、ま、僕もオッサンではないにせよ、ニッサンの車に乗ってることだしー。で、選曲のほうは実に無難な選択がなされておりますな。サプライズという点ではまったく評価出来るものはないんですが、世の中、何よりも安定路線がいちばんだと思うしぃ。…という人にとっては無難なセンではなかろうかと思われます。ということで、では1曲目から参りましょう。

 まず1曲目は 「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」 でありますか。…と、ここまで書いた時点で2週間ほど経過してしまったんですが、いや、極度のスランプでまったく頭の中にいいフレーズが浮かんでこなかったんですよね。フレーズというのはアレですよね。干し葡萄のことですよね。…って、それはフレーズではなくて、レーズンやがな。…という程度のネタしか頭に浮かんでこないほど、事態は深刻でありまして。で、その状態から完全に脱却しきれたわけではなく、症状はさらに悪化の一途を辿っているような気がするんですが、このまま何週間も更新をサボって放置するわけにもいきませんので、気乗りしないままとりあえず1曲目を聴いてみることにしましょう。えーと、 「ホエン・アイ・フォール・イン・ラブ」 でしたね。パウエルらしからぬ選曲やな。…という気がしないでもないんですが、では、パウエルらしかる選曲というのはどういうものかというと、例えばえーと…、 「あらいぐまラシカル」 のテーマとか。で、これがいったいどういう仕上がりになっているかというとですね、意外と淡白というか、あっさりしているというか、脂っぽくないというか、こってりしていないというか、とにかくまあ、ストレートにテーマを演奏しているだけでアドリブらしいアドリブもなく、わずか1分37秒くらいで終わっちゃうので、あれこれ論評するまでもないというか。とにかくまあ、1曲目だから軽く指ならしといった感じですかね?個人的には指ならしよりも “あのよろし” のほうが好きなんですが、花札の赤タンに書いてある “あのよろし” って、ありゃ、一体なんですかね?

 ということで2曲目です。 「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」 はお馴染み、リチャード・ロジャースの曲でありますか。1927年のミュージカル 『コネチカット・ヤンキー』 のために作曲したそうでありますが、コネチカットにもヤンキーはいるんですね。ちっとも知りませんでした。ヤンキーというのは桑名にあるオートコーナー三重のあたりにしか棲息していない生物だとばかり思っていたんですが、意外とどこにでもいるものなんですね。ちょっぴり落胆しました。で、ここでのパウエルの演奏はテーマ部の処理こそ、やや指がもつれている感があるんですが、アドリブに入ってからは概ね好調です。日本語ライナーを書いている岩浪洋三クンの言葉を借りると、スインギーなビートを伴ない、パウエルらしい華麗なプレイを展開している。彼のイマジネーションは飛躍にみちている。好調なパウエルの一曲であり、レイ・ブラウンのベース・プレイも光っている。…ということになりますね。いや、2曲目からライナー丸写しではこの先が思いやられますが、仕方がないよね、スランプなんだしー。

 ということで3曲目です。アルバム・タイトル曲の 「ブルース・イン・ザ・クロゼット」 でありますか。クローゼットというのは洋服なんかを入れておく収納スペースのことですよね。和服なんかはあまり入れておきません。パンツなんかも直接は入れたりしませんよね。パンツとかブラなんかは通信販売で買ったランジェリーボックスに可愛く収納したいところでありますが、僕の場合、ま、冬用のパンツは5枚くらいしか持っていないので、箪笥の引き出しをボール紙で仕切って、入れているだけなんですけどね。で、この曲はオスカー・ぺティフォードの代表作のように言われておりますが、今ひとつ、つまらん曲やな。…という気がしないでもありません。つまらない。…というのはやや言い過ぎかも知れませんが、単純明快というか、シンプル過ぎるというか、工夫が感じられないというか。ま、要はシンプルなブルースですよね。で、ここでのパウエルの演奏はテーマ部の処理こそ、やや指がもつれている感があるんですが、アドリブに入ってからは概ね好調です。単純な曲と言うのはアドリブの素材としては好都合なんだな。…ということが判明した次第でありますが、料理なんかでも豆腐みたいに素材自体にあまり味がないもののほうが料理のし甲斐があるというものですよね。ちなみに僕の得意な豆腐料理は奴のままポン酢をかけて食う。…というヤツでありますが、個人的にポン酢って、かなり好きなんですよね。ポン酢さえあれば、ズボンはいらないよね?…と思うほどでありまして、豆腐にポン酢をかけて食べる時はいつもパンツ姿だったりするんですが、とか言ってるうちに演奏のほうは終わってしまいましたので、続いて4曲目です。 「スインギング・ティル・ザ・ガールズ・カム・ホーム」 も3曲目同様、おすぺ師匠のオリジナルだそうでありまして、ベーシストが作った曲らしく、テーマ部はレイ・ブラウンをフィーチャーした形で演奏されております。で、そのままパウエルのアドリブへと流れていくわけでありますが、いや、なかなかブルージーな趣があって、よい演奏ですな。正直、3曲目まではパウエル君の調子も今ひとつかな?…という感じだったんですが、ここにきて、「んあ〜、んあ〜。」…という呻き声も聞かれるようになって、パウくんも次第に乗ってまいりました。レイくんとオジーさんのサポートも完璧で、三人が三位一体となったインタープレイを堪能出来るナンバーに仕上がっているように思われます。

 で、5曲目は 「アイ・ノウ・ザット・ユー・ノウ」 ですか。かなり早いテンポで演奏される小粋な歌モノでありまして、パウエルはこういう曲を演奏させた時がいちばん生き生きしてますよね。レイくんとオジーさんのサポートも完璧で、三人が三位一体となったインタープレイを堪能出来るナンバーに仕上がっているように思われます。ということで、この曲はおしまい。いや、非常に良好な演奏でありましたが、書くことは何もありませんでしたな。こうなったらもう、困った時の洋三頼みしかありませんが、えーと、ここにはスウィング・ピアノの巨匠アート・テイタムからの流麗で、ピアニスティックなスタイルの影響がみられる。パウエル派アップテンポで軽快に弾いており、指使いも軽やかだ。…って、いや、あまり大したことは書いてありませんな。ま、ライナーノートなんて、所詮はこんなものなんすよね。ということで、6曲目です。本アルバムで唯一のパウエルのオリジナルでありまして、その名もゆかし、 「エロジー」 でありますかぁ。どういう趣旨でこの曲が作られたのかサダカではないんですが、おそらく若いギャルのハダカ好きのエロ爺に捧げたものではなかろうかと。かれい技師が老人になったら、きっとエロ爺になるだろうな。…という気がしてならんのですが、いや、僕は大丈夫なんですけどね。枯れた仙人のようなサバ爺になるに違いありませんが、ボケたふりをして女子高生のスカートをめくっってみたり、手鏡でスカートの中を覗いて見たりとか。いやあ、枯れてますねぇ。で、この曲、実にノリがいいですね。オジー・ジョンソンのブラシも絶妙で、枯れた名人の味わいがあります。レイ・ブラウンのピチカートも効いてますなぁ。ということで、とってもいい演奏だと思います。

 7曲目、 「ウディン・ユー」 。ディジー・ガレスピーの書いたお馴染みのナンバーであります。定番のラテン・リズムに乗ってパウエルが軽快にバウンスしておりまして、ま、敢えて苦言を呈するとすれば、「んあ〜、んあ〜。」…という呻き声がうるせー!…ということぐらいでありまして、いやあ、パウくん、4曲目あたりからここに至るまで、絶好調でありますな。ということで8曲目です。パウエルとは逆に絶不調である僕の曲解説はまったく流麗なフレーズが続くことがありませんが、えーと、8曲目は 「アイ・シュッド・ケア」 ですね。「哀愁に 満ちた土建屋 哀愁土建屋」 …という句を詠んだ頃が、俳人としての僕のピークであったな。…と思うわけでありますが、最近はほとんど廃人と化してますもんね。ま、廃人とまではいかないまでも、三ケ日人レベルのギャグのセンスにまで落ちぶれてしまったような気がするんですが、この 「アイ・シュッド・ケア」 は言うまでもなく、 『バド・パウエルの芸術』 に極めつけの名演が残されております。正直、今回の再演は最盛期の鬼気迫る壮絶な演奏には遠く及ばず、ごく普通のちょっとした佳作やな。…といった程度に終わっているんですが、途中からテンポが速くなってスインギーに転じるあたり、工夫の後が窺えて、これはこれで悪くはない演奏に仕上がっているような気がしないでもありません。アート・テイタム流の流麗な指さばきも見事でありまして、いや、パウエルくんもちょっぴり人間が丸くなったなぁ。…という感じがしますよね。丸大ハムとかをたくさん食べた影響でしょうか?僕もこれからは精出してハムを食べよう。…と思った次第であります。

 で、9曲目です。9曲目は究極の名演…というわけではなく、ま、ごく普通の出来なんですが、パウエルのオリジナル、 「ナウ・イズ・ザ・タイム」 でありますか。通常、 『ナウズ・ザ・タイム』 という名前で知られているわけですが、ここでは何故かフルネームで記載されております。ま、微妙に長くなっているだけだから別にいいんですが、語呂的にはちょっと舌がもつれる感じがありますよね。ここはやはり、 “ナウズ〜” にしておくべきだったよね。…と、パウエル君に忠告しておきたいと思いますが、演奏の出来としても、ま、フツーですしね。相変わらず、「んあ〜、んあ〜。」…という呻き声がやかましいしー。あ、この曲、テーマの処理があまりさば好みではなかったので、大した演奏じゃねーな。…と馬鹿にしていたんですが、アドリブに入ってからは意外と好調でありますな。それほど馬鹿にしたものでもなかったな。…と、自らの判断を反省しているところでありますが、でもまあ、やっぱり呻き声がやかましいしー。で、次。リチャード・ロジャースの 「アイ・ディドゥント・ノウ・ホワット・タイム・イット・ワズ」 。日本では 『時さえ忘れて』 という日本語名で知られているスタンダードであります。僕はこの曲をソニー・クラークのバージョンで聴いて、あまりさば好みではなかったので、大した歌じゃねーな。…と馬鹿にしていたんですが、原曲通りのバラードで聴くと、しみじみとしたいい曲だったんですな。ちょっぴり見直しました。僕の持ってるBN盤の 『ソニー・クラーク・トリオ』 は別テイクが2曲続けて入っていて、それでかなり印象を悪くしたところがありましたからね。で、このパウちゃん版はしっとりバラードで仕上げておりまして、前半はピアノの無伴奏ソロとなっておりますな。で、途中からビートが入ってくるんですが、このベースとドラムスが入ってくる瞬間♪…というのが、たまらなくいいですな。瞬間マニアですからね、僕。

 で、11曲目の 「ビ・バップ」 もBN盤の 『ソニー・クラーク・トリオ』 で演奏されていたナンバーですな。作曲したのはビ・バッパーのディジー・ガレスピーでありまして、ソニー・クラークのアルバムを買った当時、ジャズに関してはまだド素人だった僕は、曲名がそのまんま過ぎるぢゃん!…とか思ってしまったものであります。ジャズに関してある程度の無駄な知識を仕入れた今となっても、やっぱり曲名がそのまんま過ぎるぢゃん!…という思いは変わらんのですけどね。で、このパウエル版はハキハキとした演奏で、覇気があっていいですね。オジー・ジョンソンとレイ・ブラウンのサポートも群を抜いて抜群です。特に中間部で聴かれるブラウンのウォーキング・ソロが素股♪…ぢゃなくて、素敵♪…って、いや、いかにもわざとらしい間違いでしたね。素股と素敵を間違えるか?フツー。…と思わずにはいられませんが、アルバムの最後を飾るのはセロニアス・モンクの 「52丁目のテーマ」 でありますか。52丁目、52丁目、ワオー!…と、 「東村山音頭(一丁目編)」 の 節で歌うにはちょっと無理がありますが、いかにもモンクらしい変な曲でありますな。で、パウエルもその “変さ加減” をギャグとして捉えているような節もあって、モンク風ビ・バップのパロディとも受け取れる演奏に仕上がっております。で、レイ・ブラウンが相変わらず頑張って目立っておりますな。ということで、本日の解説は何とか無事に終了しましたが、ところで例の “杭打ち作業” なんですが、こちらのほうは何とも不本意な結果に終わってしまいまして。全部で10本の杭を打ったんですが、所定の深さまで打ち込めずに地面から顔を出している杭があれば、所定の深さより沈んでしまった杭もあって、かと思えば穴を掘って杭を挿入すると、にゅ〜っと浮かび上がってくる杭すらありました。支持力の発現、皆無ぢゃん!! 中心からの芯ずれもひどいものでありまして、10センチ以内という規定の範囲に収まったものは10本中、わずか4本だけでありました。打率4割っ!…というのは野球ではすごい記録だと思いますが、杭打ちとしてはどうかと思いますねぇ。結果、“悔いの残る杭打ち事例”のオンパレード…といった感じでありましたが、ま、打ち込んじゃったものは今さらどうしようもないしー。ということで、今日はおしまい。

【総合評価】

 一聴すると地味なんですが、三聴すると…やっぱり地味ですね。5回くらい聴くとようやくよさが滲み出てくる感じなんですが、いやあ、それにしても悔いの残る杭打ちでありましたなぁ。ま、僕のせいではないので、別にいいんですけど。


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