LOVE,GLOOM,CASH,LOVE (BETHLEHEM)

HERBIE NICHOLS (1957/11)

LOVE,GLOOM,CASH,LOVE


【パーソネル】

HERBIE NICHOLS (p) GEORGE DUVIVIER (b) DANNY RICHMOND (ds)
【収録曲】

TOO CLOSE FOR COMFORT / EVERY CLOUD / ARGUMENTATIVE
LOVE,GLOOM,CASH,LOVE / PORTRAIT OF UCHA / BEYOND RECALL / ALL THE WAY
45°ANGLE / INFATUATION EYES / S'CRAZY PAD

【解説】

 湯の山温泉に行ってまいりました。と言っても別に温泉に浸かってきたわけではなく、その辺りを周遊というか、徘徊というか、散策というか、ま、要するにぶらぶらしてきたわけなんですが、行き先は別にどこでもよかったんですけどね。目的としては高速道路を走りたいという、ただそれだけのことでありまして、というのもですね、この度、自分の車に “ETC” を付けたんですよね。 “ETC” というのは “援助交際ときめきキャンパス♪”の略…とか、そうものではなくて、 “Electronic Toll Collection System” を省略したものなんだそうでありまして、日本語に訳すと、えーと…、 “電子工学通行料収集装置” ということになりますか。要するに有料道路の料金所でいちいち通行券を受け取ったり、通行料を支払ったりしなくてもゲートを通過させて貰えるという、そういうシステムでありますな。料金を支払わなくても通過出来る…と言っても、後からきっちり料金は徴収されるわけなので、決して高速道路をただで通行出来るというわけではないんですが、そこはそれ、ここはあれ。このシステムには実にたくさんのメリットがあるわけでありまして、例えばえーと…、そうですね。 (1)「料金所渋滞の緩和」とか、(2)「利便性の向上」とか、(3)「沿道環境の改善効果」とか。いや、日本道路公団のHPを見ても、メリットとしてはこの3つしか書いてなくて、何だかあまり大したことはねーな。…と思わずにはいられないんですが、何かこう、もっと劇的な効果というのはないんですかね?下痢便症が、一気に便秘症になるっ!…というのなら、ちょっと考えてもいいかなという気がするんですが、利便性の向上だけではいまひとつインパクトが弱いわけでありまして。要するに、あれば確かに便利なんだろうけど、無くてもさほど不便ではないよね。…といった程度の装置なんですよね、 “ETC” なんてものは。

 ところでこの “ETC” って、正確には何て読むんでしょうね? 日本道路公団側としては、しきりに “イーテック” と呼んでね♪…という方向に世論を操作しようとしているみたいなんですが、その呼び方はかつての “E電” と同じくらい、一般社会ではまったくと言っていいほど普及してませんよね。それにしても小林亜星は “E電問題” で株を落としましたな。ま、“パッとサイデリア”で社会復帰を果たしたからよかったものの、そうでなければ“E電”と心中する破目になるところでしたよね。で、 “イーテック” という愛称も同じような運命を辿りそうな気配が濃厚に感じられるんですが、どうしてまた、JHは “イーテック” にこだわっているんでしょうね? 僕としては、普通に “イー・ティー・シー” でいいぢゃん。…と思うわけなんですが、ま、恐らく上層部に、「 “イーテック” は “いいテクノロズィ” にも通じるから、いいっ!」…と、強硬に自己の主張を曲げようとしない困った爺さんがいたりするんでしょうな。 “テクノロズィ” じゃねーだろ!…と思わずにはいられないんですが、どこの役所にも必ず2〜3人はそういう “テクノロ爺” がいたりするんですよね。小泉クンがいくら頑張って日本道路公団を民営化してみたところで、そういう爺ィが根強く存在している限り、道路行政の将来展望は暗いでしょうなぁ。。。

 とまあそんなことで、システム導入後、しばらく “ETC” の普及率は伸び悩んでいたんですが、料金所に“ETC専用レーン”はたくさん出来ても、肝心の利用客はほとんどいませんでしたからね。ざっと見たところ、ETCを利用しているのは50台に1台もあればいいとこ?…といった感じだったんですが、専用レーンでゲートをひとつ占有しちゃったものだから、一般の料金所は以前よりも渋滞がひどくなってたりして。そんな中、とある1台の白いセダンが料金所から出ようとしている場面に出くわしたことがありました。のろのろと、いかにも場慣れしてない感じだったので、嫌でも目に付いてしまったんですが、どういう奴が運転しているのかと思ったら、いかにも風采のあがらないパッとしない感じの爺ィだったんですけどね。で、こやつはですね、ずらっと横に並んだ料金所のゲートの手前で一時停止して、はて、どこを通ったものか?…と思案している様子だったんですが、やがて、意を決したように “ETC専用” と書かれたゲートのほうへと車を進め行くのでありました。いや、一瞬、目を疑いましたね。まだほとんど ETC が普及していなかった頃の話で、まさかこんなハイテクノロズィにはまったく縁がなさそうな爺ィがETC装着車に乗っているとは、夢にも思いませんでしたな。いや、人を見た目で判断してはいけませんね。…と、自戒の念を胸に抱きつつ、ハイテク爺さんがノンストップで料金所を通過する様子に注目していると、爺さんの車はETC専用レーンで一時停止して、そしてそこから動こうとする気配がまったく感じられません。よく見るとバーは下に降りたままだし、「ん?」と思って様子を伺っていると、爺ィはおもむろに車をバックさせ始めたのでありました。間違えて入っただけかいっ!!

 人を見た目で判断しても、何ら問題はなかったな。…という貴重な体験が得られた次第でありますが、“ETC専用”という意味がよくわからなかったら、とりあえず“一般”と書かれたレーンを通ろうとするのが普通の人の発想だと思うんですが、いや、世の中には突拍子もない行動を取る爺ィがいるもんですな。車を運転するにはあまりにも適正が欠如しておりまして、免許を剥奪しろよ!…と思わずにはいられませんでしたが、それくらい当時はまだETCが世間に知られてなかったという証でもあるわけでして。が、このところ、ETCを付けてる車が飛躍的に増えてきましたな。料金所でも5台に1台くらいは専用レーンを通っている感じで、無論、料金所でいきなりバックするようなアホも見かけなくなりました。車載機の低価格化+高額ハイウェイカードの廃止&ETC前払い割引制度の導入=普及率の増加…という公式が当て嵌まるのではないかと思いますが、あらかじめ5万円を払い込んでおけば、5万8000円分は走行することが出来るというのだから、高速道路を利用する機会の多い人にとっては、かなり大きいですよね。車載機も2万円くらいで手に入ることになったので、ま、15万円分くらい高速道路を利用すれば元が取れてお釣りがくる計算でありまして。それに加え、この11月からは “ETC深夜割引” という制度も始まりました。これはどういうものなのかと言うと、夜中の0時から早朝4時までの間に、ETC装着車が専用ゲートから高速に乗り入れるか、あるいはその時間帯に専用ゲートから出るか、もしくはその時間帯をまたいで専用ゲートから出入りすれば、料金が3割引になるというものでありまして。ま、詳しいことは ここ を見て貰うとして、長距離を走る場合、3割引というのはかなり大きいですよね。ただ、深夜0時〜早朝4時までという時間帯はトラックの運ちゃんか、“丑の刻参り”の人、もしくは、すけべホテルを “ご休憩” で利用する人以外にはあまり需要がないような気がするんですが、幸い僕の場合、 “ご休憩” はともかくとして、スキーに行く際にこの時間帯の高速道路をよく利用するんですよね。夜中の2時か3時に家を出て、3時か4時前に高速道路の入口を通過することが多いので、ちょうど割引制度の該当者に相当するわけであります。例えば名神の一宮ICから上信越道の信州中野ICまでは通常なら6400円かかるところが、4480円で済むわけです。1920円もお得♪…ということになりますね。帰りは夕方から夜の時間帯なので割引制度の適用外なんですが、前払い割引制度と併用すれば、2万円くらいの初期投資はすぐに元が取れるよね?…と試算して、この度、ETCの導入に踏み切ったという事の次第でありまして。

 ETCの導入というのはちょっぴり面倒でありまして、大きく分けて “ETCカードの作成” と、 “車載機の取り付け&セットアップ” という手順が必要となります。基本的にカード作成のほうはクレジット会社で、車載機関係のほうは車のディーラーで受け持つことになるんですが、僕の場合は “日産カード” というクレジットを持っているので、どちらもディーラーで手続きをすることが出来ました。愛想のいいお姉さんに、「ETCカードを作りたいんですけど。」と申告すると、「はいはい♪」と愛想よく申請書を持ってきてくれて、愛想よく手続きを進めてくれました。サービスのお飲み物(ホットコーヒー)も提供してくれて、いやあ、ETCカードというのは作ってみるものでありますなぁ。クレジットカードを持っていない人だと、まずそちらから作らなければならないので多少は手続きが煩雑になるかも知れませんが、クレジットさえあればとっても簡単です。ただ、カードが送られてくるまでに3週間ほどかかってしまったので、近いうちに利用予定のある人は1ヶ月前までには手続きをしておいたほうがいいでしょう。一方、車載機のほうは部品取り寄せということで、注文してから1週間後に取り付けることが出来ました。日産の純正部品の場合、どういう種類があって、どれくらいの値段がするのか?…というのは ここ を見て貰うとして、ちなみに僕は2番目に安いのを取り付けて貰いました。いちばん安いのでいいかぁ。…という気もしたんですが、結果的には “音声ガイド付き” というのにしておいて正解でした。…という話はおいおいすることにして、で、車載機の取り付け&セットアップというのは意外と時間がかかるものなんですな。ま、10分もあれば終わるぅ?…と、高(たか)を括っていたんですが、結局は1時間以上も待たされましたからね。しかも応対してくれたのが今ひとつ愛想のよくないお姉さんでありまして、サービスのお飲み物も提供してくれなかったので、僕の心象はあまりよくありません。さんざん待たされて、コーヒーも出なかった上に、ようやく車載機が付いたと思ったらカードのほうがまだ届いてなくて、結局は宝の持ち腐れかい!…と、僕もすっかり腐ってしまって、サバの生き腐れ状態だったわけでありますが、先日、ようやくカードのほうも手元に届いたので、とにかくまあ、とりあえず高速道路を走って、 “ETCおろし” や!…と思って、意味もなく湯の山温泉まで行ってみた次第でありまして。

 と、ここまで書いたところで枚数が尽きたので、この続きはまたいずれ。

 さ、今日からは “ピアニスト編” をお届けしようと思います。ピアノに戻るのはこれで5巡目くらいですかね?そろそろ手元のネタも尽きてきたわけでありますが、一人のミュージシャンで紹介したいアルバムが5枚を超えるというのは、なかなか無いのが実情でありまして。で、今日はハービー・ニコルスを取り上げてみたいと思うんですが、 artist index に漏れがなければ、意外にも本コーナー初登場ということになるみたいです。ハービーのところにハンコックやマンはあっても、ニコルスというのは無いですもんね。 ということで、今日はまず、簡単にハービー・ニコルスのプロフィールについて触れてみたいと思うんですが、あ、今年の流行語大賞は、 「チョ〜気持ちいい!」 ですかい。まさかというか、やっぱりというか、ま、基本的にはどうでもいい賞なので、別にどうでもいいんですけどね。 “ヨン様” というのも絶対選ばれるだろうな。…と踏んでいたんですが、そっちではなくて “冬ソナ” でしたか。ホント、基本的にどうでもいいですよね。その他、 “セカチュー” なんてのもありましたが、何でも四文字に略せばいいと思っている、その安易な発想は何とかして欲しいところですよね。で、 “ハビ・ニコ” ことハービー・ニコルスでありますが、セロニアス・モンクに勝るとも劣らない超俗的な演奏スタイルの持ち主ゆえ、世俗的な人気とはまったく無縁なまま、不遇のうちに死んでしまったおっさん。…として広く知られております。日本のジャズ・ファンって、こういうストーリーって大好きですよね? 成功して有名になったり、金持ちになったり、イイ女といい関係になったりすると、「堕落した。」…とか言われたりして。やっぱり麻薬と、アル中と、強制入院と、電気ショックと、ロボトミー手術くらいはやってもらわないとね。…みたいな。つきあっている女も、映画 『ラウンド・ミッドナイト』 に登場するバターカップみたいなキャラでなければなりません。ハビ・ニコ君の彼女がどれほど不細工だったのかはサダカでありませんが、とにかくまあ、ベツレヘム盤の 『ラヴ、グルーム、キャッシュ・ラヴ』 を聴いてみることに致しましょう。ベースはジョージ・デュビビエ、ドラムスはダニー・リッチモンドと、メンバー的にはかなり期待が持てるんですが、果たして噂どおりのクソ難解なプレイが展開されているのでありましょうか?ヒジョーに楽しみなところです。

 えーと、まず1曲目は 「トゥ・クローズ・フォー・コンフォート」 ですか。クローズというのはアレですよね。黒い酢のことです。少し前、中華料理のチェーン店、 「バーミヤン」 の店先に “黒酢酢豚”というのぼりが立っているのを見て、黒豚の酢豚かぁ。うまそうやん♪…と思ったものでありますが、よく考えたらあれ、豚が黒いのではなくて、酢が黒いだけの話なんですよね。それを知った僕の評価は、あまり大したことないやん!…と、大きく下落してしまったんですが、ま、別にウソをついているわけではないので、勝手に間違えた僕のほうが悪いんですけどね。ま、敢えて注文をつけるとすれば、“黒酢酢豚(注:豚が黒いわけではありません。)…という注意書きがあれば、より親切だったと思うんですが、で、この曲、ジャズの世界では頻繁によく耳にする機会が多いですよね。それほど傑出したメロディというわけではないような気もするんですが、あるいはコード進行が面白いとか、そういうところに秘密があるのかも知れません。個人的にはコード進行よりもヨードチンキのほうが好きなので、あまり詳しいことはよくワカランのですが、ここでのニコルスのプレイは期待とは裏腹に、まったくもってオーソドックスな仕上がりぶりでありまして。超俗的な個性はどこにいった!?…と思わずにはいられないんですが、意外とスインギーだったりするし、パウエル的な要素もあるし、もっと古風なムードも感じられたりして、ま、アドリブに入るとちょっぴりモンク的な個性も垣間見られるようになるから別にそれほど文句はないんですが、それにしても思ったよりもマトモであるな。…というのが率直な感想なのでありました。

 いや、やはり歌モノを取り上げたのが諸悪の根源だったのかも知れません。こういう人は自己のオリジナル曲でこそ、そのオリジナリティを発揮するものでありまして、そういう意味では 2曲目以降に期待がもたれるところですよね。ということで、続いては 「エブリ・クラウド」 という曲です。北陸人は冬、ええブリ、食らうど。…ということをテーマにした作品だと思うんですが、成るほど、いかにも寒ブリらしい脂の乗った作品に仕上がってますよね。ちなみに僕は、ブリは照り焼きにして食べるのがいちばん好きですね。ブリの照り焼き、すなわち “ブリ照り” は、ブルテリアという種類の犬が好んで食べるそうなんですが、いや、洋犬の分際でずいぶんと日本的な食生活を送っているんですな。で、この曲はアレですね。ほの暗いムードがいかにもニコルス的でありまして、いや、いかにも寒ブリらしい脂の乗った作品…という話はなかったことにして。で、演奏のスタイルとしてはテーマ・メロディの断片をアドリブに引用したりするところがモンク的なような気もして、でもやっぱりタイプとしては少し違うような気もして、ま、要するによくわかりません。僕の語彙力ではとても表現しきれない広がりを持っておりまして、とにかくまあ、途中にベースのピチカート・ソロを挟んで、テーマに戻って、おしまい。全体としてダニー・リッチモンドのドラミングも光ってるよね。…と、ドラミちゃんが評価しておりましたが、僕もそう思います。ということで、3曲目。 「アーギュメンタティブ」 ですかい。いかにもニコルスらしい難解なタイトルを付けましたな。「理屈っぽい」 という意味でしょうか。確かに理屈っぽいというか、やや意味不明な曲調の作品でありまして、いや、こんなことなら普通っぽくても1曲目のような芸風のほうが分かりやすくてよかったよね?…という気もしてまいりました。ま、ニコラス君らしさという点では、この理屈っぽい演奏のほうが遥かに個性的ではあるんですけどね。

 で、4曲目です。この辺り、しばらくニコルスのオリジナル曲が続くんですが、ここが我慢のしどころです。えーと、アルバム・タイトル曲の 「ラヴ・グルーム・キャッシュ・ラヴ」 でありますな。 「愛、憂鬱、現金、愛」 。なんとも小難しい哲学的な曲名であります。曲自体はほの暗いワルツ・タイムの作品でありまして、こういうのを聴いていると、後年のマル・ウォルドロンはかなりニコルスの影響を受けたんじゃないか?…という気がしますね。元祖・黒い情念…とでもいいましょうか。個人的には情念よりも法然のほうが好きなんですが、浄土宗を開いたりして、とっても偉いですよね。とか言ってるうちに5曲名になりました。 「ポートレイト・オブ・ウチャ」 は早いテンポのスインギーな作品です。で、作風としては、やっぱり難解です。こりゃ、一般受けしないのもやむを得ないところですよね。不幸な運命を辿ったのも、こりゃ、自業自得やな。…といった感じでありまして、ま、そこはかとなくラヴェルの影響が感じられるところなど、それなりに興味深い演奏ではあるんですけど。いや、ラヴェルなんか一度も聴いたことはないので、書いていることにまったく責任は持てないんですけどね。あ、そういえば今年の流行語大賞に “自己責任” というのが選ばれておりましたが、これは確かに流行りましたよね。少なくとも “セカチュー” なんかより、よっぽど活用範囲の広い言葉でありますが、ま、流行語大賞に選ばれた時点で、その言葉は死んだも同然なんですけどね。とか言ってるうちに演奏のほうは終わってしまいましたが、エンディングの部分はちょっぴり気合の入っているパウエル風なところもあって、わりとよかったと思います。

 6曲目、 「ビヨンド・リコール」 。リコールを乗り越えて…というのは三菱自動車に対するオマージュでありましょうか? 何だかどこかで聴いたことのあるような曲調なんですが、変則歌モノっぽくて、もうちょっとのところで佳曲に大化けしそうな気配もあるんだけど、すんでのところで崩壊しちゃってる。…とまあ、そんな感じの作風ですよね。アドリブ・パート自体は小難しくて、ギャル受けしないことこの上なし。…と、ここまで書いて、何だか混乱している自分に気付いたんですが、ネオ歌モノ的な作風というのは5曲目の 「ポートレイト・オブ・ウチャ」のほうでしたかね? 改めて6曲目を聞き直してみて、ちょっと書いてることが違うな。…という気がしてきたんですが、ニコルスの作品というのは冷徹無比な僕をして、思わず曲数のカウントを間違わせてしまうほどの魔力を持っているわけでありまして、いや、ただぼーっとしてたらワケがわからなくなっただけの話なんですけど。で、6曲目はアレでした。ただ純粋にワケがわからない。そういうタイプの曲でありました。…と、ここまで辛抱強く苦難の日々を耐え忍んでこられた皆さま、お待たせ! ここでようやくニコルス・オリジナルの呪縛を解かれて、心地よいスタンダードに耳を傾ける至福の時がやってまいりました。ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の 「オール・ザ・ウェイ」 って、いや、これはいい曲を持ってきましたな。リー・モーガンの 『キャンディ』 で聴いて以来、僕はこの曲の大ファンになってしまったんですが、ここでのハービー・ニコルスも殊のほかノーマルなバラード・プレイに終始しておりまして、格調が高くて、胃拡張。…といった彼の特徴が遺憾なく発揮されていて、秀逸だと思います。で、次。 「45°アングル」 。アングルというのは“”という意味なので、タイトルは 「45°度」 ということになろうかと思いますが、ニコルスのオリジナルではないので、曲自体はわりとまともな部類だと思います。ダニー・リッチモンドとジョージ・デュビビエのプレイもきっちりとフィーチャーされていて、とっても三位一体な演奏が展開されていると思います。あ、小泉クン渾身の “三位一体” というのは流行語大賞から漏れちゃいましたな。個人的には “尿漏れ” という言葉を今年のイチ押しにしたかったんですが、こちらも選からは漏れちゃいました。来年こそは!…という野望をまだ捨て切れていないんですが、ま、そんな言葉が流行したところで、何がどうなるわけでもないんですけど。

 9曲目。 「インファチュエーション・アイズ」 。究極の無伴奏ソロでありまして、ちなみにタイトルは 「夢中にさせる瞳」 といった意味でありましょうか? いずれにせよ、ピアノの無伴奏ソロというのは個人的にはどうも退屈でいけません。で、ラストは 「スクレイジー・パッド」 という曲ですね。ニコちゃんオリジナルなんですが、歌モノっぽい親しみやすさを持ったメロディが印象的で、でもよく聴くとやっぱりかなりヘンだったりするんですけどね。とにかくまあ、今週もこれで何とか終わったので、とりあえずのところは安泰です。ということで、おしまい。

【総合評価】

 うーん、評価が難しいですな。聴いていて楽しいか?…と聴かれれば、間違いなくそんなワケはないんですが、でも、期待したほどにはチョ〜難解でもなくて、ごく普通につまらん作品。…ということが言えるかも知れません。いや、個人的には嫌いではないんですけどー。


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