BAIYINA <THE CLEAR EVIDENCE> (PRESTIGE)

 PAT MARTINO (1968/6/11)

BAIYINA (THE CLEAR EVIDENCE)


【パーソネル】

GREGORY HEERBERT (as,fl) PAT MARTINO (g) BOBBY ROSE (2nd guitar)
RICHARD DAVIS (b) CHARLIE PERSIP (ds) REGGIE FERGUSON (tabla) BALAKRISHNA (tamboura)

【収録曲】

BAIYINA / WHERE LOVE'S A GROWN-UP GOD / ISRAFEL / DISTANT LAND
【解説】

 みんな、敬老の日のプレゼントは何を貰ったかな?敬老の日の贈り物というのはなかなか難しいものがありまして、というのも、特にこれといった定番モノがありませんからね。例えば母の日だったら、カーネーションに “肩たたき券” でも添えておけばお母さんは感激して、その日の夕食のおかずを奮発してくれるに違いありません。普段ならマルシンハンバーグだけなんだけど、今日は特別にイシイのミートボール日本ハムの肉団子も付けてみたのぉ♪…とか、いつもならチャーハンだけのところを、今夜はおかずとして焼き飯ピラフも作ってみたのぉ♪…とか。いや、そんな同じようなものばっかり、いらん!…という気がしないでもないんですが、母の愛ですからね。黙って受け入れなければなりません。で、一方、父の日というのは何だかとっても影が薄いので、忘れていたことにして黙殺するというのが正しい対処法ではないかと思うんですが、ま、どうしても何かを贈りたいというのなら、奈良漬けとか、靴下とか、カミソリの刃程度のものでいいのではないかと。靴下も無論、高いものは必要ありません。ダイエーで3足1050円(税込み)のやつを買っておけば十分でありましょう。1足ずつに分割すれば3年は使えますからね。で、そんなお父さんもトシを食って老人になってくると、父の日だけでなくて敬老の日にも何か与えなければならなくなってくるわけでありますが、ところで “敬老の日” というのは一体、いつ頃に制定されたものなのかご存知ですか?僕はご存知でなかったのでちょっと調べてみたんですが、従来の “老人の日” を新たに祝日として1966年に制定したものなんだそうでありまして、いや、意外と歴史の浅いものなんですね。今年(2004年)の時点で “敬老の日” は満38歳になるわけでありまして、老人と呼ぶにはまだ若すぎるような気がします。現役バリバリの中年ですよね。場合によっては “青年” と言ってしまってもいいのではないか?…と思うほどでありますが、何せ僕と2つ違うだけですもんね。僕が中学1年生だった頃、 “敬老の日” は中三だったわけでありまして、もしかしたら学校のどこかですれ違っていたかも知れませんね。そういえば当時の3年生に何だか妙に年寄り臭いヤツがいたような記憶があるんですが、あるいはアイツが “敬老の日” だったのかも知れません。

 で、そんな “敬老の日” のプレゼントとして、 “電子辞書” が人気であるというのをご存知でしたか?僕はご存知でした。年寄りにそんなハイカラなもん、使いこなせるのか?…という気がしないでもないんですが、意外と大丈夫なんだそうです。使いこなせる老人にとっては、何とかなるもののようであります。ま、ぜんぜん使いこなせない老人にとっては宝の持ち腐れというか、豚に真珠というか、猫に小判というか、馬の耳に念仏というか、干し椎茸に乾物というか、とにかくまあ、そういう状態になってしまうような気もするんですが、いや、ゲロとウンコに汚物…というのも考えたんですが、あまりにも子供じみていて下品なので自粛するとして、 “電子辞書” が老人の間で人気になっているポイントとしてはですね、字が大きくなるというのがあるようです。なるほど、老人というのはたいてい老眼になっているものなので、普通の辞書の小さな字を見るのはかなり辛いものがあるでしょうが、電子辞書だったらかなり大きく文字を拡大することが出来ますからね。コンテンツが豊富というのも老人の知的好奇心を満足させるには好適です。老人というのはたいてい片仮名言葉に弱いので、いきなり “コンテンツ” と言われても、 “インポテンツ” の親戚かぁ?…くらいにしか理解が出来ないわけでありますが、いや、最後の “テンツ” しか合ってないやん!…とか、 “インポテンツ” も片仮名やん!…とか、ツッコミどころはいくつかあるんですが、老人と言えども、そのような関係の言葉に関しては意外とお達者だったりするんですよね。中学生の頃、辞書でスケベな言葉を調べてドキドキした経験は誰にもあろうかと思いますが、そういう知的で破廉恥な好奇心を、もう70年も80年も積み重ねてきているわけですからね。 “おばあちゃんの知恵袋” と “おじいちゃんのタマキン袋” には、いろんなものがいっぱい詰まっているんだねっ♪

 で、新聞や雑誌で “コンテンツ” という言葉を目にして、人を “不能” よばわりするとは、怪しからんっ!…と甚く憤慨した老人もですね、電子辞書があればもう大丈夫。電子辞書にはたいてい “カタカナ語辞典” というのが入っておりますので、スイッチを入れて、“KONTENTU”と正しくローマ字入力して、検索キーを押せるだけの知力があれば、たちどころに、「そおか。“コンテンツ”というのは “中身・内容・目次” の意味であつたのか。」…というのが判明する仕組みになっております。老人というのはたいてい心の中で思ったことを口に出して言う傾向にあるので、そばにいる人はやかましくて気が散ることになるんですが、ま、それが老人というものですからね。諦めて放置しておくより他に手立てはないんですが、そうすると今度は、「ひろし、“コンテンツ”というのは “中身・内容・目次” の意味なんじゃぞ。」…と、こっちに話題を振ってきたりして、いや、老人というのはまったくしょうがないものでありますなぁ。。。

Sharp 電子辞書 PW-9805V♪

 とまあそんなことで、僕も電子辞書を手に入れました。いや別に敬老の日にプレゼントされたわけではなくて、自分で買ったんですけどね。いつ買ったのかと言うと、今年のホワイトデーのことだから、もうかなり前のことになります。今年のバレンタインは誰からもチョコレートを貰えずに、仕方がないから自分で自分に不二家のルックチョコレートを贈っておいたんですが、そのお返しとしてホワイトデーに電子辞書を贈ってみたわけなんですよね。ルックチョコと電子辞書では “3倍返し” どころではないんですが、好きな体位は “仏壇返し” …って、そんなことはどうでもいいですね。ホワイトデーのお返しといえば “白いパンツ” というのが定番なんですが、僕はトランクス派なのでやめておきました。白いトランクスって、あまりないんですよねー。もしあったとしても、あまり履く気にはなれないしぃ。最近、ちょっぴり尿漏れの傾向があるので、白いパンツは “しみ” になってよくありません。パンツはやはり、黄ばみの目立たない濃色系のトランクスが一番だと思いますが、そんなことでまあ、電子辞書。今年の3月に手に入れて、いつかネタに困ったらその話を書こうと思っていたんですが、ついにその日がやってまいりました。えーと、 “Sharp 電子辞書 PW-9805V” という機種でありますな。22,800円でありました。高いといえば高いですよね。もし老人が、「電子手帳、欲ちい♪」…とか言い出したら、全力で阻止することになると思います。どうせ使いこなせないって。宝の持ち腐れだって。豚に真珠だって。猫に小判だって。…と、言葉を尽くして説得に当たり、なんとか “塗り箸” ぐらいで妥協して欲しいと思います。で、これ、大きさとしてはですね、縦 106mm ×横 138mm 、厚さは最大部で 19mmでしょうか。CDのプラケースを2枚ほど重ねて、縦方向に若干短くしたような感じです。ポケットに入れるにはちょっぴりデカいですよね。でもまあ、キーの押しやすさや画面の見易さを考慮するとこういうサイズになるんでしょう。ま、老人向けだからしょうがないですよね。で、コンテンツとしては広辞苑英和辞典和英辞典英英辞典などの基本形のほか、「家庭の医学」「薬がわかる本」「食の医学館」「冠婚葬祭入門」などなど、実に豊富であります。特に老人の場合、 “冠婚葬祭” の “葬の部” には大いに感心があるところだと思います。ま、本人は黙って焼かれていくだけなので、あまり詳しいことは知らなくても大丈夫なんですけど。

 で、このバラエティに富んだコンテンツ群の中で、僕がいちばんよく活用しているのは “逆引き広辞苑” であります。というか、ほとんどそれしか使ってないような感じがあって、ちょっぴり宝の持ち腐れかな?…という気もするんですが、ちなみに “故事ことわざ&四字熟語” という辞書もあるんですけどね。宝の持ち腐れ : 役に立つすばらしいものを持っているのに、その使い道を知らなかったり、出し惜しみをしたり、しまい込んだりして、それを十分に活用できずにいるたとえ。…みたいな。で、そのことわざに該当する英語のことわざも併記されておりまして、ほお、アメリカでは “Not possession but use is the only riches.” というんですか。所有ではなく使用が富というもの。…という訳があって、何だか今ひとつよくわからん日本語ではありますが、でもまあ言ってる意味はなんとなくわかりますよね。要するに、宝の持ち腐れということではなかろうかと。で、それはそうと “逆引き広辞苑” でありますが、これは一体どういうものかというと、逆に引く広辞苑。ま、簡単に言ってしまえばそういうことですね。例えば “念仏” という言葉を調べようとする場合、普通の辞書ではアタマの “” のところを引くことになるんですが、逆引きではそれとは逆に、語尾の “ぶつ” のほうから調べることになります。するとですね、愛玩動物朝題目に夕念仏飛鳥大仏アゾ化合物…と、語尾に “ぶつ” のつく言葉がずらーっとリストアップされることになります。さすがは広辞苑だけあってペット系、ことわざ系、仏教美術系から化学的化合物系に至るまで、実にバラエティに富んだラインナップでありますが、いや、ンなものがずらずらと出てきたところで、一体それが何の役に立つんや?…という気がしないでもないんですけど。。

 …と思った人は、考えが浅はかですね。浅はかにして、オアハカ。…といった感じでありまして、いや、オアハカというのはメキシコ南部の高原都市で、先住民が多くて金銀細工や焼物なんかが盛んなところなんですけど。…というふうに、 “〜はか” で逆引きをすると、そのようなワケのわからん中南米の地方都市がヒットしたりするわけでありまして。う〜ん、ボケを考えるのにぴったり♪…って、いや、“浅はかにして、オアハカ。”…などというワケのわからんボケは、書かなかったほうがよっぽどマシだったような気がしないでもないんですけど。

 んなことで、この多機能電子辞書は僕にとって “宝の持ち腐れ” であると同時に、“鯖の生き腐れ” でもあるような気がしてなりません。おしまい。

 ということで、今日はパット・マルティーノです。マルティーノというのはアレですよね。イタリア人のイエズス会士で、東インド巡察士に任命されて天正7年から慶長3年にかけて3回来日した人ですよね。…って、そりゃ、ヴァリニャーノやがな。…って、そういう誰も知らないような人が出てくるところが “逆引き広辞苑” の弱点なんですよね。僕の書く文章がつまらない原因の大半はここにあるのではないかと思うんですが、今日はですね、 『バイイナ』 というアルバムを紹介したいと思います。“BAIYINA”。こういうワケのわからん横文字が出てきた時は電子辞書の英和辞典の出番であるわけですが、えーと、該当なしですか。ま、そうでしょうな。とても英語とは思えないアルファベットの並びですからね。おそらくアメリカ人にとっても意味不明の言葉であると思われ、そのため、 ( THE CLEAR EVIDENCE ) という英語の注釈らしきものが併記されております。 “くっきりと目に見えるもの” といった意味でしょうか? 何だか今ひとつよくわかりませんが、おそらくそういうものなんでしょうね、 “バイイナ” というのは。 “バイイナ” というのはハイエナ科の哺乳動物なんですけどね。で、ジャケットを見ると ( THE CLEAR EVIDENCE ) という英語名のほかに、“A psychedelic excursion through the magical mysteries of the Koran.”という注釈もあって、どうやら “バイイナ” というのはコーランに出てくるサイケデリックでエクスクージョンでマジカルでミステリーな何物かであるようですね。幻覚的で、逸脱していて、謎めいていて、不思議。そういうものがくっきりと目に見えるというわけでありますな。んなことで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まずはアルバム・タイトル曲の 「バイイナ」 であります。11分54秒もあるので、心してかからなければなりませんが、何せ、幻覚的で、逸脱していて、謎めいていて、不思議なものらしいですからね。イメージからすると、マジックマッシュルームをカジって、パンツを脱いでそこらへんを走り回りながら、ツタンカーメンの謎に迫る。…といった光景が脳裏に浮かんでくるわけでありますが、演奏のほうはというと、イントロの部分から何やら怪しげなオーラが漂っておりますな。イスラム的というか、インド的というか、そして幾分ロック的というか、そのような反復フレーズをですね、ギターの人が繰り返しておりますね。テンポはわりとゆったりとしておりまして、あまり激しさは感じられないんですが、サイケデリックで、エキセントリックで、メランコリックで、ブロックまぐろな感じはよく出ておりますな。で、これ、何だかたくさん弦楽器の音が聞こえておりますが、パーソネルを見るとマルティーノのギターとボビー・ローズのセカンドギターのほかに、“tabla”や“tamboura”といった楽器も参加しているようです。タブラというのは田村正和が得意な楽器として知られておりますが、田中健のケーナと並んで芸能界では有名ですからね。ちなみにタブラというのはヒンディ語だそうでありまして、要はインドの太鼓のようなものではなかろうかと。あ、弦楽器、ぜんぜん関係ないぢゃん。…ということで、これでもし“tamboura”というのが弦楽器でなかったら僕の立場はなくなっちゃうわけでありますが、えーと、電子辞書でも該当がありませんでしたので、どういう楽器であるのかよくわかりません。第一、何と発音するんですかね?タンボウラ?何だか田んぼの裏のほうで演奏するのによさそうな楽器ではありますが、この曲のテーマはわりとカッコいい感じがしますよね。インド音楽にかぶれたカブレラ(←西武ライオンズ在籍)が好んで演奏しそう?…という気がするわけですが、そうこうしているうちにフルートのソロが始まりました。テーマの間もアドリブのバックでも、例の反復フレーズはしつこく繰り返されているわけでありますが、フルートのソロ自体はなかなかモーダルな味があって、悪くないと思います。後半はややコレクティブ・インプロヴィゼーション風になって、演奏は次第に混迷の度合いを強めていくわけでありますが、

 で、続いてはギターのソロですかね?原文ライナーには何やら難しいことが書いてありまして、最初のセッションは7/4拍子のコンスタントなベースラインで、セカンド・セッションは16ビートのチンタルなタブラのソロ。…ということなんですが、あ、なるほど、確かにタブラのソロが始まりましたな。16ビートというより、何だかノン・ビートな感じでありますが、チンタルな雰囲気はよく出ていると思います。で、ここでまたリズム・パターンが変わって、ややレイジーで切れ痔なムードが漂い始めるわけでありますが、えーと、ファイナル・セッションは1小節が4/4拍子、4小節が7/4で、また4/4拍子の部分が1小節だけあって、最後は7/4拍子が8小節でありますか。ややこしいこと、すな!…と思わずにはいられませんが、そういうところが幻覚的で、逸脱していて、謎めいた雰囲気を醸し出しているわけなので、一概に市谷の駐屯地をチュートン族に引き渡すわけにはいきません。いや、ゲルマン人の一部族らしいですけどね、チュートン族。で、このパートではリチャード・デイヴィスの重厚なベース・ワークを堪能することが出来ます。んなことで、テーマに戻って、おしまい。…かと思ったら、まだ演奏時間は6分を30秒ほど過ぎたところでありますな。いわゆる“中締め”のパートだったのだと思われますが、新年に夫婦が初めて交合する日は“姫始(ひめはじめ)”。いや、ちゃんとそんな言葉まで掲載されているんですね、広辞苑。ちなみに 『好色一代男』 には、「暦の読始、姫始(ひめはじめ)をかし」…という記載があるそうです。で、中締めのテーマを挟んで、ギターの粋な感じのソロがあって、今度はアルトのアドリブでありますか。最初、フルートを吹いていたボビー・ローズ君が持ち替えで吹いているんですが、モーダルで斬新で新鮮で、なかなかよいソロだと思います。で、テーマに戻って…、まだ終わりませんかぁ。…と思ったら、何となくフェードアウトして、消えていってしまいました。いや、何とも表現のしようがないナンバーでありましたな。ま、確かにバイイナではあったと思うんですけど。

 で、2曲目は 「ホエア・ラブズ・ア・グロウン・アップ・ゴッド」 「どこで、愛の成長した神」 という意味でしょうか?日本語としてはやや意味不明ですが、僕はですね、髪が成長してちょっとウザくなってきたので、今から床屋に行ってこようと思うんですけどね。…ということで、行ってまいりました。何でもいいけど、タイガースの井川は早く床屋に行けよ!…と思わずにはいられませんが、あんな髪型でノーヒットノーランを達成されてもなぁ。…と思った人も少なくないに違いありません。で、髪を切った僕のほうはというとですね、ちょっぴり変になっちゃいました。まったく何の相違工夫もないナチュラルな髪型なんですが、自分としては床屋に行って2週目〜3週目の長さがベストだと思うんですよね。よくもまあ、俺の髪を切ってくれたな!…と、床屋のおばちゃんを非難したい気持ちでいっぱいでありますが、ま、チョコボールをくれたから許すことにしてと。しばらく “バナナ味” などという今ひとつなヤツしかくれなかったんですが、ようやく在庫がなくなったのか、最近は“ピーナッツ味”に戻って、よろこばしい限りです。個人的には“キャラメル味”というのも、あの独特のニチャニチャ感が嫌いではないんですが、ということで、 「どこで、愛の成長した神」 ですね。6分35秒だからジャズの演奏時間としては標準的なんですが、タイプとしては1曲目と似たような感じでありますな。幾分、ロックっぽいノリの感じられるところがパット・マルティーノの特徴なんですが、フルートで奏でられるテーマはなかなか新主流派な感じがあって、悪くありません。9/4拍子の作品のようですが、それほど変な拍子だな。…という感じではなくて、拍子抜けするようなことはありません。で、ソロ先発はボビー・ローズのフルートですか。その後、ビートが無くなってギター2本の無調ソロ…といった感じになるんですが、でもまあ全体の演奏時間が6分35秒だからそれほど耳障りになるほどの長さでもなくて、そうこうするうちにテーマに戻って、おしまい。ま、わりと普通でありましたな。

 3曲目は 「イスラフェル」 という曲です。一瞬、エバンスで有名な 「イスラエル」 か?…と思ったんですが、よく見たら微妙に違っておりました。曲としてはこれはもう、ぜんぜん違いますね。僕の頭の中ではすっかり、スチャラカ、チャンチャカチャチャンチャン♪…という哀愁のメロディが鳴り響いていたので、何だか拍子抜けしちゃいましたが、ま、勝手に勘違いした僕のほうが悪いんですけどね。で、 「イスラフェル」 のほうはアレです。出だしこそ得体の知れない楽器(タンボウラ?)の音色でインド的ミステリアスな雰囲気が漂っておりますが、やがて炸裂するチャーリー・パーシップのドラミングに煽られて、なかなか派手で賑々しい世界が展開されております。原文ライナーには “オーネット・コールマン風味のテーマ” という記載も見られますが、ま、言われてみれば確かにそんな感じが無きにしもあらずという気がしないでもありませんね。で、演奏のほうは全編的にマルティーノのギターがフィーチャーされておりまして、何だかとっても落ち着きがなくて喧騒的な演奏に仕上がっております。呪術的な反復フレーズ、呪縛的な大和田獏。…と、マルティーノらしさが横溢したプレイとなっておりまして、いや、それにしても何だか落ち着きがなくて騒がしいだけの演奏でありますなぁ。。。

 ということで、ラストです。 「ディスタント・ランド」 は13分08秒もあるんですね。なんだか聴く前から気分がげんなりしてまいりましたが、いや、個人的にはパト・マル君というのは好きなミュージシャンなので、最後まで耐えるだけの覚悟は出来ているんですけどね。で、この曲、出だしの部分は “びよよ〜ん、びよよ〜ん♪” という、得体の知れない楽器の音で始まりまして、思わず、またかいっ!…と思ってしまします。アルバム全体がひとつの組曲であると言ってもいいくらい、トータルなコンセプトで貫かれているようでありますな。で、 “起・承・転・結” の “” の部を担うのがこの演奏でありまして、ただ個人的には “転結” よりも “半ケツ” のほうが好きなんですけどね。 “はみケツ” というのもいいと思うんですが、昔の相撲取りでは “魁傑” というのがけっこう好きでした。何だか、何でもすぐに解決してくれそうなところがいいですよね。で、一方、 「ディスタント・ランド」 のほうはですね、テーマが終わってすぐ、かなり長いベース・ソロへと突入致します。ま、13分もの長丁場を乗り切るには、こういう手段も必要だったのだと思いますが、 “jazz giant” における本筋とはまったく何の関係もない “魁傑ねた” のようなものだと思って諦めてもらうよりほかありません。しかしまあ、無伴奏で長々と地味なベース・ソロを披露してくれるものでありますなぁ。リチャード・デイヴィスとしてはこれでもう大満足なんでしょうが、聴いているほうにしてみれば近所迷惑以外の何物でもなくて、もし隣の家に一晩中、延々とベースの無伴奏ソロを繰り広げるような人がいるとすれば、それはもう限りなく迷惑な話ですからね。幸い、リチャ・デビ君のソロは数分程度で終わるんですが、続くギターとベースのデュオというのも何とも言えず地味でありますなぁ。ま、そこはテクニシャンであるマルティーノ君故、次第に盛り上げていく術(すべ)は持ち合わせてはいるんですが、 “貝合わせ” ほどは楽しくないな。…という気がしないでもありません。

 で、その後、タブラが入って、アルトのソロも出てきたりして、それなりに盛り上げようとする努力は評価しないでもないんですが、ま、1〜3曲目までの、ただ喧しいだけやん!…といった演奏に比べて落ち着いた風情が感じられるのは確かなんですけどね。で、その後、チャーリー・パーシップのドラム・ソロというのもあったりします。チャリ・パー君はどちらかというとオーソドックス系のドラマーという印象があるんですが、どうしてまたこんな変態的なセッションに参加することになったんですかね?もっとも彼のサトルなドラミングのおかげで、何とかぎりぎり耐えられないこともない世界に留まっているわけなんですが、これでバックでパルス・ビートでも刻まれた日にゃ、開始から3分でプレイヤーの“STOP”と“EJECT”を押していたと思われますからね。で、このドラム・ソロがまた、けっこうクソ長いんですが、ま、ベース・ソロよりは遥かに盛り上がるので、ま、これはこれでいいのではなかろうかと。ということで、テーマに戻って、おしまい。いや、13分08秒もあるというので覚悟を決めていたんですが、意外とあっさり終わった感じですね。ま、面白いか?…と聞かれると、決して肯定は出来ない演奏ではあるんですけど。とまあそういうことで、おしまい。

【総合評価】

 インドかぶれで、やぶれかぶれ。…といったところでしょうか。インドはヒンドゥ教の国だから、コーランとはあまり関係ないんじゃないか?…という気もするんですが、そんなことはお構いなしや!…みたいな。いやあ、強引ですなぁ、マルティーノ君も。


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