MORNING MIST (PRESTIGE)

CHUCK WAYNE (1964/12/8)

MORNING MIST


【パーソネル】

CHUCK WAYNE (g,banjo) JOE WILLIAMS (b) RONNY BEDFORD (ds)
【収録曲】

GOODBYE / SEE SAW / LI'L DARLIN' / I'LL GET ALONG
THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE / SHALIMAR / SOMEONE TO WATCH OVER ME
THE SONG IS YOU / ALONE AT LAST / LOVELY

【解説】

 今日は“懐が暖かくなる話”をしたいと思います。これは誰もが興味を持つ話題だと思うんですが、と同時に、僕は“(ふところ)”に関して、ひとつだけ分からないことがあります。それは何かと言うと、 “(ふところ)” と “田所(たどころ)博士” は、何か関係があるのか?…ということなんですが、あ、ちなみに田所博士というのは 『日本沈没』 に登場する地球物理学の権威なんですけどね。いやあ、懐かしいですなぁ、 『日本沈没』 。子供の頃、よく風呂場で “日本沈没ごっこ” とかやりましたもんね。 “日本沈没ごっこ” 、略して “日沈(にっちん)ごっこ” というのはどういうものかと言うと、湯の上にタライを浮かべて、その上に乗って遊ぶという。タライと言ってもウチにあったのはそれほど大きなものではないので、上に乗るとすぐに沈んじゃうんですが、タライが沈んだのを見届けて、「わ〜、沈没や〜。日本沈没や〜!」…と騒ぐという、ま、簡単に言ってしまえば、そういう遊びなんですけどね。大人になって冷静に考えてみると、ありゃ、沈没したのは “日本” ではなくて、ただの “タライ” だったんじゃないか?…という気がしないでもないんですが、ま、所詮は子供のやる事なので、あまり深くは追求しないほうがいいかも知れません。もうひとつ、風呂場での遊びとしては “蒸し風呂ごっこ” というのもあったんですが、これはどうするのかというとですね、湯船に浸かった状態で上から蓋を閉めて、湯面と蓋の間のわずかなスペースが湯気で蒸し風呂状態になるのを確認して、「わ〜、蒸し風呂や〜!」…と騒ぐという、ま、簡単に言ってしまえば、そういう遊びでありました。ご家庭でお気軽にサウナ気分を味わえるという、子供ながらの生活の知恵と評価することも出来ますが、ひとつ間違えば溺死する恐れがあるし、そこまで行かなくてもまず確実に頭がのぼせて鼻血が出そうになるので、お子様にはあまりお薦め出来ません。よい子のみんなは真似しないようにしましょうね。

 とまあそんなことで、 “” と “田所博士” は、まったく何の関係もないことが判明したところで、本題に参りましょう。懐が暖かくなる話。懐を暖かくするのはやはり、カイロを利用するのがいちばん手っ取り早いような気がしますね。カイロというのは漢字では “懐炉” と書くわけでありまして、まさにこう、懐を暖めるために生まれてきた男!…という感じがしますよね。いや、カイロのパンツを脱がせて確認したわけではないので、カイロが本当に男なのかどうかはサダカではないんですが、 “男の本懐” という言葉もあるくらいだから、きっと男なんだろうなという気がしますよね。ただ、カイロという商品自体はどちらかというと、冷え性のギャルとか、寒がりのオバハンとか、気が付いたら冷たくなっていた婆さんとかが愛用しているイメージがあるんですが、いや、最後の例は、もう既に手遅れなんじゃないか?…という気がしないでもないんですが、そもそもカイロというのはどの国で発明されたものなんでしょうね? この問題に関してはお父さんが詳しいので、一度聞いてみるといいと思うんですが、ま、おそらく97%くらいの確率で、「あー、そりゃエジプトだよ。エジプトの首都はカイロ…ってか!?」…という答が返ってくるに違いなく、いや、真面目に質問するだけ無駄でありましたな。仕方がないから自分で調べてみたんですが、結論から申し上げましょう。よくわかりません。ま、カイロなんてものは仕組みが単純なので、どの国でも誰か一人くらいは考え付くような気がするんですが、ちなみに日本ではその昔、禅寺の坊さんが懐炉の原型のようなものを使っていたらしいですね。それは何かと言うと“懐石”というものでありまして、原理は極めて簡単、火で熱した石を布で包んで懐に入れるという、ただそれだけ。ま、恐らく、永平寺の修行僧が冬のあまりの寒さに耐えかねて考え出したんでしょうな。 「あー、あったけぇ!極楽極楽♪」…とか言って、いや、禅の修行僧ともあろうものが寒さに耐えもせずに、そんな簡単に極楽往生してもいいのか?…という気がしないでもないんですが、ちなみに “懐石料理” というのも語源としてはここから来ていて、禅寺で出される、腹を温めるほどの軽い料理といった意味なんだそうです。

 で、この “懐石” でありますが、問題点もありました。それは何かというと、温度調節が難しいということなんですが、ついうっかり布で包むのを忘れてそのまま懐に入れたりすれば、 “根性焼き状態” になっちゃうことは必至。ま、修行の一環としてはそれもいいかも知れませんが、マゾっ気のない人にはやや辛いものがあるに違いないし、それに“石”という素材は すぐに冷めちゃうので実用的にはどうも今ひとつでありました。そこで登場するのが “胴の火” というグッズであります。これを考え出したのは忍者なんだそうでありまして、いや、忍者なんだから、少しの寒さくらいは耐え忍べよ!…という気がしないでもないんですが、でもまあ、火種としても使えるしぃ。…ということで、ひとつ大目に見てやってくださいね。ちなみに “胴の火” というのは、銅製の筒に和紙や植物繊維を黒焼きにしたものを詰めたものだそうでありまして、和紙や植物繊維の他にイモリの黒焼きなんかも詰めておくとアッチのほうにも効果があって、まさに一石二鳥と言えるでしょう。やがてこの “胴の火” が民間にも転用されて、元禄年間(1688〜1704年)には広く世間で “懐炉” が使われるようになったんですが、これで大儲けをしたのが越後屋でありました。懐炉で儲けたお金で悪代官に賄賂を送ったり、髪の毛を茶色に染めたりしたそうですが、いや、自分で儲けたお金で髪を染めるのは別に悪いことではないんですけどね。ちなみに炭の燃焼を利用した “桐灰カイロ” というのは今でも使われていて、夜間、カメラのレンズが結露するのを防ぐにはとっても重宝なようで、天文写真家や盗撮愛好家の間では広く使われているそうです。

ハンディウォーマー(開封前)♪ ハンディウォーマー(開封後・ライターは付いておりません)♪

 さて、今、僕の手元に “ZIPPO ハンディウォーマー” が届きました。通信販売で買いました。これはどういうものかというとですね、ハンディなウォーマー。ま、簡単に言ってしまえばそういうものなんですが、ま、早い話が “ZIPPO” のカイロなんですけどね。個人的には “ZIPPO” って、けっこう好きなんですよね。 「 “ZIPPO” を使うまで、結構というなかれ。」…という座右の銘のあるくらいで、ま、煙草を吸わないからさほど使用頻度は高くないんですが、 “ZIPPO” のライターは風に強いので、屋外でゴミ箱なんかに放火する時にはとっても重宝しております。蓋を開け閉めする時のカチッという感触がいいし、点火して指を離してもまだ燃えているので、燃えにくいゴミに火をつける時も指が痛くならないのが嬉しいですよね。で、今回手に入れたカイロでありますが、大きさとしては手のひらにやや余るくらいでありましょうか。ライターと並べて写真を撮っておきましたので、そこから類推してください。ちょっと大きめかな?…という気がしないでもないんですが、厚さがライターと同じくらいなので、懐に入れても邪魔にはならないと思います。デザインとしては、ま、そうですな。“zippo”というロゴが入っているからまだいいようなものの、でなきゃ、普通とカイロと大差はありませんな。蓋も上にスライドして外すタイプなので、カチッというあの “ZIPPO” 特有の感触など得られる筈もなく、ヒョン…と、頼りなく外れるだけです。ま、付属のフリース製の袋がなかなかいいデザインなので、中身を出さない限りはさほど問題はないんですけどね。で、カイロが暖かくなる仕組みとしては、気化したオイルがプラチナの触媒作用で酸化発熱するという、実にケミカルでハイテクノロジーなものでありまして、さすがは “ZIPPO” じゃん!…と感心することしきり。特にプラチナ触媒というのが何とも高級感に溢れていていいですよね。が、これってよく考えると、原理としては“白金カイロ”とまったく同じなんじゃないですかね?ベンジンがライターオイルに変わっただけの話で。ブランドイメージに騙されてしまった気がしないでもないんですが、ま、とりあえず試してみることにしましょうか。

 使い方としてはまず、本体にオイルを注入するところから始まります。付属の注油カップ1杯で12時間、2杯で24時間の使用が可能ということなんですが、思ったよりもたくさんのオイルが必要なんですな。カップ7〜8杯で 133ml 入りのオイル缶が空になる感じですかね?1缶 300円として、1回(12時間)あたりのコストパフォーマンスは 37.5円。3個パックで100円の使い捨てカイロといい勝負といったところです。で、オイル給油が終わったらバナーをはめて、ライターでプラチナ触媒を3〜5秒ほど加熱してください。うまくいけばそのうち暖かくなってくるはずです。いつまでたっても暖かくなってこない場合は失敗したものと思って諦めて下さい。人生に諦めは付きものですからね。ちなみにプラチナ触媒というのは何だか汚らしいネズミ色の繊維のようなものでありまして、あわよくばアクセサリーに転用して大儲け♪…といった野望を叶えてくれるものでは決してありませんので、念のため。白金カイロの白金がどのようなものであったのか記憶にはないんですが、ま、似たようなものなんでしょうな。で、暖かくなったら本体をフリース袋に入れ、ブリーフの中に入れるなどしてご使用下さい。フリース無しで直接ブリーフの中に入れるのは局部火傷の恐れがありますので、やめておいたほうがいいのではなかろうかと。いや、強い刺激を求める向きには、敢えて止めはしませんけどね。

 で、使用してみた感想でありますが、暑苦しいやんけ!…というのが率直なところでありました。いや、残暑厳しい9月半ばに使うのは、やや時期尚早でありましたか? でもまあ、もう少し待てば、カイロの温もりが恋しい日々がやってくることでありましょう。ほら、昔からよく言いますよね、“待てばカイロの日和あり”…ってか?

 …と、お寒い空気が流れ始めたところで、今日はチャック・ウエインです。 誰、それ?…などという難しい質問をしてはいけません。僕もぜんぜん知りません。ま、敢えて言うなら、

 ・ チャック上 陰部見えてる こんにちは

   > こんにちは。

 という俳句を読んでみるくらいのことであるわけですが、いや、それにしてもクソ暑いですな、ハンディウォーマーは。 トランクス派の僕はブリーフの中ではなくて、トランクスの中にフリースに包んだカイロを入れてみたんですが、こういう部分はどちらかというと、温めるよりも冷やしたほうがいいといいますからね。フリースをやめてフリーズしたほうがいいのではないか?…という気もするんですが、冷凍というのも何だか “しもやけ” になっちゃいそうですしね。何事もほどほどがいいような気がします。 で、この、チャック・ウエインの 『モーニング・ミスト』 というアルバムは、先日、名古屋のエ○ラ製作所へ監督者講習に行った帰りに、名駅のタワーレコードで見つけました。チャック・マンジョーネのところに紛れ込んでおりました。チャック・ウエインなんて全然知らない人だし、ジャケットのデザインにもパーソネルにも、まったくソソられるものはなかったんですが、僕のコレクションはギタリスト編が極めて希薄で、“jazz giant”のネタにも事欠く状態でありましたので、とりあえず押さえておきました。たかだか原稿のために余計な出費をさせやがって!…と思わずにはいられませんが、他にはアンドリュー・ヒルの 『パッシング・シップス』 というのを買ってみました。何かこれ、持ってたような気がするなぁ。…と思いつつも買ってしまったんですが、家に帰って調べてみると、案の定、持っているヤツでありました。しかも、2枚もあるやん!“ダブり買い”ならぬ、“トリプり買い”でありますな。何だか思い出しただけでも不愉快なので、 『モーニング・ミスト』 、いっちゃいましょう。“モーニング・ミスト”というのは朝霧のことだと思うんですが、なるほど、アルバム・ジャケットも下のほうが何だか霧に包まれたように白っぽくなっておりますな。考えに考え抜かれたデザインだとは思いますが、それにしてもこのような地に足のつかない状態でギターを弾くのはやめたほうがいいと思うんですけどね。何だかこう、レストランで出してくれる“お子様用の椅子”みたいな。 とまあそんなことで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まず最初は 「グッドバイ」 ですか。始まっていきなり 「さよなら」 とは、つれない話でありますが、僕は先日、某キャンプ場の釣堀でニジマスを釣りました。ニジマスというのはイクラで釣るんですね。マスというのはサケの仲間だから、半ば共食いというか、同居している男の子供を橋の上から川に投げ落とすような行為であると言えますが、何だかこう、何にもテクニックのいらない釣りでありましたな。池の中に放り込まれたイクラはすぐに色が白くなっちゃって、寿司にこんなイクラがのって出て来たら、とても食べる気はしないだろう。…と思うんですが、それでも構わずに食いついてきましたからね。イクラなら何でもいいのか?…と、問い詰めたい気持ちで一杯でありましたが、ま、イクラなら別に何でもいいんでしょうな。腹が減ってたら見た目など気にしている場合ではないしぃ。で、演奏のほうはアレです。ギター、ベース、ドラムスという必要最小限トリオによるものだけあって、極めて地味であります。しみじみと味わい深いと褒めることも出来るんでしょうが、個人的にはやっぱりあまりにも地味です。いきなり「さよなら」というのも、わからんでもないですね。今後の展開とか盛り上がりとか、まったく期待出来そうもないですもんね。で、チャック・ウエインという人はアレです。テクニックに依存しない、朴訥タイプのギタリスト。ジャズ・ギターの世界にはまったく詳しくない僕の耳には、そのように映りました。

 で、続いては 「シー・ソー」 です。チャック君のオリジナルなんですね。シーソーという遊具は個人的にはけっこう好きですね。高いところが大の苦手な僕にとってはジャングルジムというのは恐怖以外の何物でもないですからね。落ちたらどないしてくれるねん!?…みたいな。落ちたらどないしてくれるねん!?…で思い出したんですが、昨日、現場で足場の解体作業というのが行なわれました。排水機場の吐出水槽に仮設の足場を組んでいたんですが、もう必要がなくなったので撤去することにしたんですよね。6段組みだったから、いちばん高いところは地上から10mくらいはあったでしょうか。僕が水槽の底で完成写真を取って外に出ようとすると、こともあろうに鳶のジイさんってば、いちばん上のところの階段をとっぱらっているんですよね。仕方がないから半泣き状態で足場の枠をよじ昇ったんですが、ホントにもう、落ちたらどないしてくれるねん!?…ということで、この2曲目はですね、テンポが速めであることもあって、1曲目と比べると少しは派手な演奏になっております。特にソロの後半、チャック君はオクターブ奏法まで駆使して、ぷちウエス・モンゴメリー的なスタイルで大健闘。短いながらもベースやドラムスのソロまであって、まずはなかなかシーソーなんぢゃないか?…と、そういう気がしました。

 3曲目はニール・ヘフティの 「リル・ダーリン」 。なんとも気怠い、ダルな雰囲気がよいですな。チャック君はここでもオクターブ奏法を駆使して、ソロの中盤は倍テンポも用いて瞬間的に大いに盛り上げて、でも演奏全体としてはアンニュイなムードが漂っていて、短いベース・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。熱いっちゅうに!…って、いや、チャック君の演奏ではなくて、ハンディウォーマーのほうなんですけど。フリース越しだと全然大したことなくて、所詮はオイルの酸化作用だね。…と思っていたんですが、試しに本体を袋から出してみると、熱いっちゅうに!使い捨てカイロの約13倍の熱量という触れ込みは嘘ではありませんな。ま、使い捨てカイロの熱量でも充分実用に耐えているわけなので、その13倍もの熱量は不必要な気がしないでもないんですけどね。ただ、無意味に熱いだけやん!…みたいな。でもまあ、子供に焼きを入れるにはこれくらいの熱量がないと駄目だから、その意味では一石二鳥と言えるかも知れませんね。ということで、4曲目です。 「アイル・ゲット・アロング」 はウエイン君のオリジナルで、とってもボサノヴァなノリの作品となっております。個人的にボサノヴァというのは“ノヴァうさぎ”よりも好きなので、これはこれでいいんじゃないですかね。ノヴァうさぎも最初の頃はけっこう好きだったんですが、露出度が多すぎて、すっかり飽きてしまいました。モロばかり見ているとそのうち飽きてきて、“胸チラ”みたいなのがよくなったりするんですよね。ボサノヴァもあまりやり過ぎると嫌味になるので、 “ボサちら” くらいが無難なところなんですが、このアルバムでは初めての試みなので素直に賛意を表しておきましょう。で、続いては5曲目です。エリントン・ナンバーの 「シングス・エイント・ホワット・ゼイ・ユースド・トゥ・ビー」 。長ったらしいタイトルですね。あまりにも長ったらしい曲名はいちいちカタカナ表記するのが面倒なので、適当な邦題が付いているのが常なんですが、この曲は 「昔はよかったね」 で、よかったですかね? 何だか年寄りが懐古趣味に走って、「カイコはよかったね。」…と、養蚕農家だった昔を懐かしんでいるようで、個人的にはあまり好きな日本語名ではないんですが、四字略語では 「むかよか」 などと呼ばれているようです。「“むかよか”やろうか?」とか言うと、何だかギョーカイっぽくていいですよね。相手にはぜんぜん通じなくて、 “ムカデ好き余暇連合” の略ぅ?…とか思われる恐れはあるんですけど。で、ここでのチャック君達の演奏は、ベースのピチカートによって昔を懐かしむ風のスローなテンポでテーマが演奏され、 続いてオクターブ風のギター・ソロになって、途中でダブル。テンポになってそこそこ盛り上がって、ロニー・ベッドフォードのキレのよいブラッシュ・ワークも特筆モノでありますな。続いてジョー・ウイリアムスのベース・ソロがあって、ドラムスとの短い絡みがあって、ベース主導のテーマに戻って、おしまい。いや、「昔はよかったね」は、なかなかよかったですね。

 続く 「シャリマー」 はファンキーな香りのするチャック・ウエインのオリジナルです。曲の出来としては個人的なイチ押し作品でありまして、これなら日本でも充分にやっていけるんぢゃないですかね?演奏者を伏せてブラインドフォールドで聴かせたら、無知な人なら「ウエス・モンゴメリーけぇ?」…と思ってしまうに違いなく、ウエイン君ってば、根はおそらく白人だと思うんですが、なかなかブラックなフィーリングも持ち合わせているように感じ取れました。好きなロッテのガムは「ブラックブラック」ですかね? で、7曲目はスタンダードの 「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」 です。 「優しき伴侶を」 という、原題からはちょっと連想しにくい邦題が付いているんですが、どこから“伴侶”などという日本語が出てきたんですかね?…という問題について考える暇も与えず、演奏のほうは2分54秒で終わってしまいました。えーと、“伴侶”と言うと、後は“僧侶”とか、“ムリーリョ”(←セビリア派のスペインの画家)とか。…と、ボケる暇もありませんでした。ギターの無伴奏ソロでテーマが演奏され、リズムが入ってギターのアドリブになって、テーマに戻って、おしまい。…というパターンでありました。しみじみとした、なかなかよい出来のバラードであったと思います。

 8曲目の 「ザ・ソング・イズ・ユー」 はイントロ無しで、いきなりテーマ演奏から始まります。この曲を急速調で演る場合の定番ですよね。本人は、意表をついて、いひょー!…などと思っているのかも知れませんが、みんなが同じことをやっているので、 「いひょー」 じゃねーって!…と思ってしまいますよね。が、このクソ速いテンポで淀みのないフレーズを繰り出すチャック・ウエインってば、当初の目論見とは違って、なかなかのテクニシャンぢゃん。…という感じが致します。ゴメンな、思い込みだけで勝手な発言をして。後半、ロニー・ベッドフォードのドラム・ソロもあって、派手という点では本アルバムでも随一かも知れません。ま、初心者が聴いて楽しいかどうかは、また別の問題なんですけど。 で、9曲目の 「アローン・アット・ラスト」 はボサノヴァ風のナンバーです。このアルバムではまだ2回目だから、ま、大目に見てあげることにしましょう。極上のイージー・リスニングにして、極道の栄治・リスと人魚を食う…って感じぃ? リスと人魚を食うなんて、栄治クンも無茶するなぁ。…と思わずにはいられませんが、ま、極道だから仕方がないと言えばそれまでなんですけどね。特に人魚の場合、下半身ならただのオサカナ好きで済まされるんですが、上半身となると人肉を食べるに匹敵する行為でありますので、これはちょっと問題ですよね。栄治クンが食べたのが人魚の下半身であることを願わずにはいられませんが、ということでラストは 「ラブリー」 という曲です。ここでのチャック君はギターではなくてバンジョーを弾いているんですが、その試みははっきり言って失敗であったと断言せざるを得ません。ここまでなかなかいい感じで来てたのに、最後の最後でお間抜けなバンジョーはないじょー。…みたいな。ま、若気の至りというか、鼻毛の痛みというか、そういうものでありますので、大目に見てやって欲しいとは思うんですけどね。鼻毛を抜くのはけっこう痛みの伴うものでありまして、先日は抜きどころが悪かったのか、ちょっぴり鼻血が滲んできたりしましたが、とまあそういうことで、今日のお話はおしまい。

【総合評価】

 ギター・トリオで全10曲は、ちょっとツライか?…と思っていたんですが、意外と最後まで持ちこたえました。特に6曲目の 「シャリマー」 、いいですな。 ま、最後のバンジョーだけは余分なんですけど。


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