THE INCREDIBLE JIMMY SMITH VOL.3 (BLUE NOTE)

JIMMY SMITH (1956/6/12)

THE INCREDIBLE JIMMY SMITH VOL.3


【パーソネル】

JIMMY SMITH (org) THORNEL SCHWARTZ (g) DONALD BAILEY (ds)
【収録曲】

JUDO MAMBO / WILLOW WEEP FOR ME / LOVER COME BACK TO ME
WELL YOU NEEDN'T / FIDDLIN' THE MINORS / AUTUMN LEAVES / I COVER THE WATERFRONT

【解説】

 今日は “柔道とマンボ” というテーマでお届けしたいと思います。 “柔道” と “マンボ”。 どう考えても、何のつながりもありませんよね。これがもし、 “柔道と剣道” だったら話はわかります。 ありきたりすぎて面白くも何ともないんですが、同じ武道の道を生きるものとして、通じ合うものだって少なくないに違いありません。ケンドー君だったらいいんだけど、マンボではどうもなぁ。…というのが柔道クンのいつわざる五輪真弓だと思うんですが、僕も柔道クンの意見には同感ですね。マンボというのは陰謀と権謀が渦巻く現代社会において、あまりにもピエトロ・ベンボ過ぎやしないか?…と思うわけでありまして、いや、イタリアの作家・人文主義者らしいですけどね、ピエトロ・ベンボ。個人的にはピエトロよりもネギトロのほうが好きなので、自然とマンボに対する風当たりも強くなっちゃうわけですが、“マンゴー”というのもあまり好きではありませんな。だいたいこの果物はですね、名前がスレスレ過ぎますよね。例えば 『僕の好きなもの』 という題で作文を書きなさい(原稿用紙3枚程度)。…という宿題が出されたとして、熱帯系の果物が大好きな具志堅タカシくん(11歳)が、「ぼくはマンゴーが大好きです。」…と書いたとしますよね。で、それをガリ版刷り(←今どき?)にして、みんなに配ることになった次第でありますが、運の悪いことにインクが部分的にかすれてしまって、“マンゴー”の濁点と長音記号の部分が印刷されなかった。…という事態だって充分に考えられるわけでありまして。ああん、“グアバ”にしておけばよかったのにぃ。。。

 とまあそんなことで、今日は “バナナ” について考えてみたいと思うんですが、いや、 “柔道とマンボ” はどこにいった?…と思われるかも知れませんが、大丈夫です。後で出ます。“柔道とマンボ”では1回分の原稿を賄えそうもないな。…という気がするので、とりあえず脱線して行数を稼いでおこうという、そういう魂胆であります。タカシくんの作文だって、マンゴーで原稿用紙3枚分はきついな。…と思ったからなのか、「さっちゃんとバナナについて」という話が全体の3分の2くらいを占めていましたからね。さっちゃんはね、バナナが大好き、ほんとだよ♪…って、誰も疑っているわけじゃないから、いちいち念を押さなくってもいいじゃねーか!…みたいな。何でもいいけどタカシくん、小学生なのにちょっぴり柄が悪いですなぁ。だけどちっちゃいからバナナを半分しか食べられないの 、かわいそうね、さっちゃん♪…って、ガキなんてバナナを半分も食えば腹一杯になるんだから、別に可哀想でも何でもねーじゃないか!…って、あのね、タカシくん。この歌はそんなことを言ってるのではなくてですね、さっちゃはバナナが大好きだから1本でも、2本でも、3本でも、4本でも、5本でも、6本でも…って、いくらなんでもそれは食べ過ぎやろ!…という気がするんですが、とにかくバナナをいっぱい食べたいにもかかわらず、いじわるなママがいじわるをして、半分しか食べさせてくれなかったわけなんですよね。つまりまあ、これは“幼児虐待”をテーマにした歌だったわけなんですが、僕が“バナナ”について言いたかったことは、全部タカシくんに先を越されちゃいましたなぁ。仕方がないから“柔道のヤマシタ”について考えてみたいと思うんですが、山下泰裕くんはですね、ちいちゃな頃から大きかったそうですね。生まれた時には既に母親の身長を越していたというのだから、いったいどうやって腹の中に入ってたんや?…と思わずにはいられませんが、いや、僕がつい勢いで書いてしまっただけの話なので、信憑性はゼロなんですけどね。

 で、彼の生い立ちとしてはですね、2歳の時に庭でイタチを見た。…というのが後の人格形成に大きな影響を与えているものと思われます。長島町や東員町のあたりではわりと普通に棲息している小動物らしいですからね、イタチ。だから熊本県上益城郡矢部町に出没したとしても別に不思議ではないんですが、そういえばうちのオヤジは子供の頃に“大イタチ”を見た。…と言っておりましたな。昔は祭りと言うと見世物小屋が出てな。“大イタチ”とか言うて、中に入ったら笑い話みたいなもんでな、大きな板に血がついとって“大板血”とかな。…というのがオチなんですが、とてもつまらない話だと思います。とてもつまらない話だと思うんですが、毎年、金魚祭りの度に同じ話を聞かされて、とても苦痛です。とても苦痛なので無視していると、聞こえなかったのか?…と勝手に判断して同じ話を繰り返したりするので、ますます苦悩は深まるばかりです。…って、いや、僕もこの話を何度かしつこく書いているので、あまり人のことは言えないんですけどね。で、2歳の時に庭でイタチを見た山下少年でありますが、その後、別にイタチの研究家になるわけでもなく、柔道家の道を歩んだところを見ると、この経験は彼の人格形成の上ではまったく何の影響も与えていないようですが、イタチよりもむしろ、爺ちゃんの存在のほうが大きかったようですね。両親は仕事で忙しくて、幼い頃は爺ちゃんが面倒を見ていたそうなんですが、離乳食にフカヒレのスープを与えるなどして、強く逞しい孫を育成したと伝えられております。バナナを半分しか食べさせて貰えなかったさっちゃんとは、えらい違いでありますなぁ。でもまあ、さっちゃんは幼児期の苦労の甲斐あって、後にイギリスに渡ってサッチャー首相にまで上り詰めることになるわけなので、一概にどちらがいいとは言えないところもあるんですけどね。 さっちゃんがね、遠くへ行っちゃうってほんとかな?…って、いや、まさかイギリスまで行っていたとは今の今まで知りませんでしたなぁ。幼児虐待の歌かと思っていたら、子供を甘やかしてはいけない。…という、教訓を含んだ歌だったんですな。“孟母三遷の教え”に対する“バナナ半分の教え”。略して“バナ半の教え”というのを、子供を養育するにあたって肝に銘じておかなければならないと思います。

 で、山下少年が本格的に“柔の道”に歩む決意をしたきっかけはですね、東京オリンピックの柔道無差別級の決勝戦だったと言われております。神永昭夫がオランダの巨人・へーシンクに押さえ込まれるシーンをテレビで見ていたヤマシタは、ショックのあまり猫踏んじゃったと言われております。あ、違いました。ショックのあまり寝込んじゃったと言われております。で、柔道王国ニッポンの復活を目指して猛練習に励んだそうですが、ちなみにマラソンの宋猛(そう・たけし)という人も猛練習する人だったみたいですけどね。双子の兄弟でありながら宋茂(そう・しげる)選手のほうは茂練習しかしなかったそうでありますが、そんなことはどうでもよくて、東京オリンピックで苦杯をなめた神永昭夫という人に関しては、この前、 『プロジェクトX』 で取り上げられておりましたな。今までは何となく、プレッシャーに負けて金メダルを取り逃した男。…みたいな印象があったんですが、この番組を見てイメージが一変しました。試合に負けても一切の言い訳をせず、“非国民”呼ばわりされても、「じゃ、アンタがヘーシングとやればいいぢゃん!」…と“逆ギレ”したりもせず、カミソリを送りつけられてもそれで剃毛プレイに走ったりもせず、試合の翌日には何事もなかったように出社して、いつものように淡々と仕事をこなしていたというのだから、大した人格者でありますなぁ。僕は駄目ですね。ちょっと現場で嫌味な監督にいじめられたり、掲示板に1週間ほど書き込みがなかっただけですぐに拗ねてヤル気をなくして、「どうせ僕なんか。。。」とイジけて、坦坦麺を食べにいっちゃいますもんね。淡々と坦坦。その違いは細微なようでいて、とてつもなく大きいと言わなければなりません。で、現役を退いた後も神永クンは指導者として、また社会人として、誰に対しても分け隔てなく接して、“理想の上司”と呼ばれたそうでありまして。いやあ、いいですなぁ、理想の上司。きっと寿司とか奢ってくれたりするんでしょうな。…って、最近、その話ばかりですけど。いや、僕は別に寿司を奢って欲しいと思っているわけではないんですが、でもまあ、たまには淡々麺くらいは奮発してくれてもいいんじゃないか?…と、かように思っている次第でありまして。

 とまあ、そんなこんなで山下泰裕クンでありますが、この人に関する思い出といえば、やはりロサンゼルス・オリンピックですかね? 決勝戦を前に右足ふくらはぎの肉離れだか、筋断裂だかの重傷を負って、歩くのもやっとという状態だったんですが、対戦相手のエジプトのラシュワンくんは決してヤマシタの右足を攻めようとせず、おかげでヤマシタくんは見事に金メダルを獲得したという。いや、敵ながらあっぱれ!…と、感動しましたね、ラシュワンくんの態度。ま、後になってみると、ラシュワンくんは序盤、ヤマシタくんの右足をガシガシ攻めていたとか、右足を痛めているんだから、左足を攻撃すれば立っていられなくなってイチコロぢゃん。…みたいな話が出てきたりもするんですが、ま、いいぢゃん、細かいことは。とまあそんなことで、ヤマシタ選手の話はおしまい。いやあ、ぜんぜん盛り上がりませんでしたね。ちなみに僕も高校時代、体育の授業でちょっぴり柔道をカジった経験があるんですが、何だかほとんど盛り上がらないうちに終わってしまったような記憶があります。剣道のほうも高校時代に体育の授業でちょっぴりカジった経験があるんですが、こちらのほうも盛り上がらず仕舞でありました。何かこう、“前進後退面”をやっただけで終わっちゃったな。…みたいな。いや、“前進後退面”というのは一歩前進して“メーン!”を打ち、一歩後退して“メーン!”を打つという、そういう素振りの練習なんですが、進んで戻って、進んで戻って…の繰り返しだからいつまでたっても前に進むことがなくて、何だか今ひとつ盛り上がるということが無かったような気がします。一方、柔道のほうはというと、受身の練習ばかりしていたような記憶がありますな。背負い投げとか巴投げで一本を取ったら、すんげぇスカッとするだろうな。…という気はするんですが、ぜんぜんそんなレベルまで到達することは出来ませんでした。僕はこのままずっと“一本”を取ることなく、一生を終えることになるんだろうな。…と、ちょっぴり寂しい気持ちで柔道場を後にして、そしてそのまま検尿に臨んだらタンパクが出て再検査になっちゃいましたが、いや、世の中はすっかり進歩しておりますな。実生活では夢にしか過ぎなかった“一本”をヴァーチャルで体験出来る、そんな素晴らしいサイトを発見しました。ここ(↓)です。(要 “Shockwave”)

 ヴァーチャル柔道

 技が3種類しか使えないのがややネックなんですが、タイミングさえ掴めればわりと簡単に“一本”を取ることが出来ます。う〜ん、すっきり♪ 左側の青い野郎を“ヴァーチャル上司”に見立てて、日頃のストレスを解消しようではありませんか。 ということで、おしまい。

 さ、クールで都会的だった“ヴァイブ編”に別れを告げて、今日からはコテコテで脂っこい“オルガン編”が始まります。いやあ、このクソ暑いのにやめて欲しい気分で一杯ですよね。その気持ち、よぉ〜くわかります。気持ちはよくわかりますが、でもやります。しかも今日はジミー・スミスです。うわぁ。。。モダン・ジャズ・オルガンの開祖として一部マニアの間では崇め奉られているので、この道を避けては通ることは出来ないんですが、何かこう、ソソられるものがないんですよね。アルバムの数が多すぎるのが一因ではないかと思うんですが、ブルーノート1500番台のコンプリート・コレクションを目指そうとすると、この人のアルバムが多いこと。しかも似たようなタイトルばかりで、何だかワケわなんないしー。で、そのワケわかんないコレクションの中から、今日は 『ジ・インクレディブル・ジミー・スミス・Vol.3』 というのを選んでみました。ほら、タイトルを言われてもどんな内容だったのかちっともピンと来ませんよね。ジャケットを見てもぜんぜん演奏が蘇ってこないし、昨日の土曜日は仕事だったし、今日は暑くてちっともヤル気が出ないし、週間予報を見ると7月1日から3日まで、沖縄と石垣島地方は見事に雲と傘のマークが並んでいて、もうどうだっていいやぁ。ちなみに僕は2日には竹富島の“コンドイビーチ・フリープラン”、3日には小浜島の“はいむるぶしフリープラン”というのを申し込んでおいたんですが、もし2日とも雨だったらどのように暮らせばいいんですかね? それを考えると、とっても投げやりムードが漂ってしまいますが、とりあえず1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まずはスミスのオリジナルで、「ジュードー・マンボ」 という曲ですね。今日の前半ネタはこのタイトルにインスパイアされて書き始めたものなんですが、テーマが今ひとつ明確でないので、かなり適当になってしまいました。でもまあ、どうせ石垣島も竹富島も小浜島も雨だから、どうだっていいやぁ。で、この演奏はアレですね。冒頭近くに聞かれる“ぽこぽっ、ぽこっぽっ♪”という、何とも不思議な効果音に耳を奪われますよね。原文ライナーには“カエルの鳴き声のような音”とありますが、ああん、全然そんなんじゃなくって、僕がこのアルバムを“マイ・コンピ”で取り上げたときの表現を引用するとですね、水から泡がプカプカ浮かんでくるような意味不明の音…ということになるんですが、巨大ストローで空気をブクブクとコップの中に吹き込んでいるようなこの音を除けば、演奏自体は意外とまともだったりします。「柔道マンボ」 などというタイトルの曲が、こんなにまともで大丈夫なのか?…と、かえって心配になってしまうほどです。激しいラテンのリズムがマンボである!…と言われれば、確かにそうなのかも知れませんが、どうしてこれが“柔道”なのかというのは恐らくスミス自身も分かっていないに違いありません。でもまあ、そんなことは別に大した問題ではないくらい、全体の雰囲気としてはパウエルの 「ウン・ポコ・ローコ」 に近いものがありますな。ま、言うなればオルガン版 「柔マン・ポコ・ローコ」 といったところでありましょうか。オルガンでわりと粋な感じのテーマが演奏された後、ギターのソーネル・シュワルツのソロになるんですが、こいつがまた傑出しているんですよね。正直、期待度はゼロに近いキャラだったんですが、超アップ・テンポでここまでシャープなプレイを展開してくれるとは思ってもみませんでした。で、続くスミスも絶好調ですね。オルガンでありながらこの頃のスミスにはまったくソウル臭がなく、これは紛れもなくバップ・オルガンの最高峰だと思います。おそるべきドライブ感! 手に汗握る大熱演というのはこういうのを言うんでしょうな。いやあ、何かこう、ソソられるものがない。…などと失礼なことを書いて、申し訳ない気持ちで一杯であります。いいですなぁ、スミスの 「ジュードー・マンボ」

 で、2曲目は一転してスロー・バラードです。「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」 。日本名、 「柳よ泣いておくれ」 ですかい。個人的にはあまり好きではないんですよね、この曲のメロディも、あまり粋なものが感じられないこの邦題も。一時期、吉本新喜劇に“やなぎ浩二”という人が出ていたことがありますが、僕はこのやなぎ君もあまり好きではありませんでした。「ちゃーすぞ、ちゃーすぞぉ。」…と、「芸者の時に言う話や。」…の2つしかギャグのないキャラでしたからね。芸人たるもの、最低でも3つのネタがなければ食ってはいけないわけでありまして、例えば“検便ネタ”と、“女子高生のぱんつネタ”と、“大イタチねた”とか。いやもう、さすがにそれだけでは食っていけない領域に入っているわけなんですけどね、僕のHPも。で、スミス版の“柳泣き”でありますが、これはアレですね。かなりソウルフルなバラードに仕上がっておりますね。AABA形式の“Aの部”はオルガンがメインで、でもってサビのメロディはシュワルツ君がギターで弾いております。いやあ、僕はけっこう好きなんですよね、キダ・タロー。 「夫婦でドンピシャ!」 のテーマ曲とか。いや、ぜんぜん関係のない話なんですけど。とか言ってるうちにアドリブ・パートが始まりましたが、えーと、まずはスミスですか。バックのリズムはスローのままなんですが、前半はかなり細かい譜割りで弾いておりますな。一転して後半は“ひっぱるフレーズ”でまったりと勝負して、短いシュワルツのソロを挟んで、かなりフェイクの入ったテーマ部の再現があって、おしまい。最後のところのいかにもオルガンらしい盛り上げ方はなかなかだと思いますが、全体的には、まあまあかな?…といったところですかね。やはりスミス君は馬鹿っ速いプレイのほうが似合っているような気もします。

 で、3曲目は 「ラバー・カムバック・トゥ・ミー」 ですかい。このアルバムは日本人にもお馴染みの有名スタンダードがたくさん並んでいるのが魅力のひとつなんですが、この“ラバ・カン”はかなり独創的な仕上がりになっておりますな。僕の好きなサビのメロディはカットされて、コード進行が面白いらしいAABA形式の“Aの部”だけで勝負しております。しかも超アップ・テンポで、メロディ自体もかなり崩した感じになっているので、“ラバ・カン”のコード進行に基づいたオリジナル曲と言ってしまってもいいのではないかと。が、その分、アドリブ・パートのほうは凄まじいほどのハイ・テンションでありまして、バップ・オルガニスト・スミスのオルガスムスを感じることの出来る快演と言えるでありましょう。いや、ただうるさいだけやん。…という意見もあろうかとは思いますけど。続くシュワルツくんのギター・ソロも超アップ・テンポをもろともしない素晴らしい出来でありまして、途中からはスミスとの絡みになって、物すごぉ〜く盛り上がっております。ああん、絶頂♪ ということで、4曲目です。セロニアス・モンクの 「ウェル・ユー・ニードント」 。 モンクの曲とオルガンというのは相性がいいような気がするんですが、中庸テンポで演奏されるこの曲もなかなかミステリアスな仕上がり具合でありますな。ソロ先発のソーネル・シュワルツの蓮っ葉な弾きっぷりがリズム&ブルース的なフィーリングを醸し出し、合っているのかズレているのかよくわからんドナルド・ベイリーのドラムスも“堅実派”の彼にしては珍しい味があります。 2番手のスミスは余裕のある弾き始めから、次第に熱さを益子焼。…といった感じでありまして、でもまあ、モンクの曲は個性が強過ぎて、好き嫌いがはっきりと分かれるんだろうな。…という懸念もあって、スミス一派の演奏も全体的にはかなりヘンな感じに仕上がっているのでありました。

 んなことで5曲目の 「フィーリン・ザ・マイナーズ」 はスミスのオリジナルですね。タイトルからして、いかにも日本人好みのファンキーなマイナー・チューンが期待されるところでありますが、果たしてこれはアレですな。いかにも日本人好みのファンキーなマイナー・チューンでありますな。…といった期待にそえるものではなくて、ちょっぴりモンクの影響も感じさせる変則ビ・バップで、「ジュードー・マンボ」 と比べてもインパクトは今ひとつ。…といったところでしょうか。ソロ先発のスミスも特筆すべきような出来でもなくて、でもソロ2番手のシュワルツは極めて快調で、それに触発されたスミスの2回目のソロは、托鉢にして一触即発といったところでしょうか。いや、托鉢というのはぜんぜん関係ないような気もするんですけど。先日もマックスバリュー輪之内店に托鉢の坊主がぼーっと立っていたんですが、ただぼーっと立っているだけでお金が貰えると思ったら大間違いですよね。せめて、何かパフォーマンスを披露するくらいの努力はして欲しかったところでありますが、例えば“托鉢僧のタクワン早食いショー”とか。タクワンを切らずに1本なり、どれだけ早く食えるかにチャレンジするわけでありますな。いや、金を払ってまで見たいものでもねーな。…という気がしないでもないんですけどね。で、6曲目はアレです。シャンソンの名曲、 「オータム・リーブス」 ですかい。オルガンで 「枯葉」 というのは暴挙に近いものがあるように思われたんですが、これがまた、意外とあっさりしたお洒落な仕上がりなんですよね。特に冒頭の“はらひれほれはれ♪”というオルガンの音色など、枯葉の舞い散るパリのシャンゼリゼ通りを彷彿させるものがあったりします。いや、懐かしいですな、シャンゼリゼ通り。いや、一度も行ったことはないんですけどね。でもまあ、桑名の八間通りなら歩いたことがあるので、ま、似たようなものなのではなかろうかと。秋になればそれなりに枯葉も舞い散ってますからね。で、この「枯葉」はアレですな。テーマに入るとテンポがぐっとスローになって、ソーネル・シュワルツが淡々と弾く哀愁のメロディが絶品です。後半はスミスがオルガンでエモーショナルに歌い上げていて、いや、なかなか凝ったアレンジが施されているではありませんか。アホそうに見えて、意外と繊細なキャラだったんですなぁ、ジミー・スミス。ドナルド・ベイリーの堅実なブラッシュ・ワークも光りますね。異色作ではあるが、決して遺書臭くはない。そんな 「枯葉」 の隠れた名演だと思います。

 で、7曲目はこれまたお馴染みの 「アイ・カバー・ザ・ウォーターフロント」「水辺にたたずみ」 とは、最後までさば好みの曲を持って来てくれるではありませんか。原文ライナーに“予想よりテンポが速く”とあるように、バラードではなくミディアム・ファーストで演奏されておりますが、前曲がバラード調だっただけにこの措置は正解だったと思います。スローが2曲続くと、どうしてもダレますからね。で、これはアレです。ジミー・スミスの歌心が存分に発揮されたナンバーでありまして、ちょっと軽めのタッチはヴァーブ時代の 『オルガン・グラインダー・スイング』 あたりを彷彿させるものがありますな。フワフワと浮かび上がるようなスイング感が絶妙です。こういう肩肘張らない演奏というのも肩や肘が張ったりしなくていいものですよね。んなことでまあ、おしまい。

【総合評価】

 ラテン調ビ・バップから、しみじみバラード、更にはお気楽な歌モノまで、ジミー・スミスの持つエッセンスが十二分に発揮された快作と言ってよいでしょう。いや、地味な印象とは裏腹なよい出来でありましたな。オルガン・ジャズを聴くと蕁麻疹が出るのぉ。…というアレルギーぎゃるにも是非聴いて頂きたいと思います。いや、決してギャル向きというわけではないんですが、たまには痒いのもいいかも?


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