LEM’S BEAT (PRESTIGE)

LEM WINCHESTER (1960/4/19)

LEM'S BEAT


【パーソネル】

CURTIS PEAGLER (as) OLIVER NELSON (ts) LEM WINCHESTER (vib)
BILLY BROWN (p) <#1,4> ROY JOHNSON (p) <#2,3,5,6> WENDELL MARSHALL (b) ART TAYLOR (ds)

【収録曲】

EDDY'S DILEMMA / LEM & AIDE / FRIENDLY PERSUASION
YOUR LAST CHANCE / LADY DAY / JUST FRIENDS

【解説】

 “双眼鏡”を買いました。んなもん、“バード・ウォッチング”と“のぞき”以外、何に使うねん!?…といった感じで、今まであまり興味がなかったんですが、僕にはそんな趣味はありませんからね。“のぞき”をするくらいなら“盗撮”するちゅうねん!…というので、デジカメ付き双眼鏡 DIGIBINO DB200 というのを買ってみたんですが、これがなかなか楽しいんですよね。買ってはみたものの何を覗いていいのかわからずに、とりあえずハトを観察してみたところ、さほど面白いものではありませんでした。“ハト・ウォッチング”というのはどうも今ひとつであるな。…ということが判明したので、今度は“亜土・ウォッチング”でもしてみようと思ったんですが、生憎、うちの庭にはなかなか亜土ちゃんが遊びに来てくれませんで。仕方がないからスキー場に持っていってみたところ、これがなかなか楽しかったんですよね。スキー場で何を覗くのかというと、山とか、川とか、山川豊のナマ着替えとか、ま、そんなものであるわけなんですが、いや、そんなものが見えたところで、さほど嬉しくもないんですけどね。どうせ覗くなら、鳥羽一郎の倒幕シーンやろ?…と思わずにはいられませんが、いや、どうして鳥羽一郎が幕府を倒そうとしているのかよくわからないし、そんなものが見えたところで、さほど嬉しくもないんですけどね。ちなみにこの“DIGIBINO DB200”の双眼鏡としての性能は倍率が7倍とのことでありまして、その点では何だか今ひとつ物足りないような気がするんですよね。デジカメでも10倍とか12倍ズームの機種があるというのに、双眼鏡なのにたったの7倍。ホームセンターで売られている双眼鏡は30倍とか、60倍とか、120倍なんてものまであったりするのに、にもかかわらずたったの7倍。しっかりしろ、ペンタックス!…と叱咤激励したくなっちゃいますが、それにもう1点、僕の持ってるデジビノ君はどういうわけだか、右目の視界に何やら陰毛図のような線が見えるようになってしまいまして。中に毛が入り込むようなシチュエーションで使った覚えはないので、おそらくレンズかプリズムに傷が付いたんだと思いますが、これがとっても気になります。気にしなければ気にならない程度のもので、幸い、デジカメ撮影のほうに支障はないようなんですが、気にし始めると、とっても気になります。僕は血液型がA型で根が神経質なもので、こういうのって許せない性質(たち)なんですよね。とまあそんなこんなで、双眼鏡、買ってやるぅ!…という突発的な衝動を抑えることが出来ず、買ってしまったわけなんですけどね。

 双眼鏡と言うのはホームセンターでも売っています。ミスタートンカチではあまり見た覚えがないんですが、少なくとも垂井町のナントカという店にはありました。が、お店で双眼鏡を買うと言うのは何となく気が引けるような気もして、ほら、レジのおばさんに、「このシト、のぞきが趣味なのね。」…などと、あらぬ疑いをかけられたりしてもつまらないですしね。そこでまあ、通販にすがることにしたんですが、幸いにも僕はインターネット通販では失敗したことがなくて、ここまでのところ満足度100%と言ってもいい成績を収めているんですよね。それはまあ、期待していた“すけべDVD”が、思ってたほどよくないぢゃないか!…といった経験は多々あるんですが、ま、あの手の作品に当たりはずれは付き物だし。で、僕の場合、ハズしたな。…と思った商品はとりあえず押し入れの奥に入れて、“なかったこと”にして、その結果として100%という高い満足度が得られているわけなんですが、今回のターゲットはずばり、とにかく倍率の高い双眼鏡でありますな。7倍程度のチンケな双眼鏡でも結構よく見えるものでありまして、例えば赤倉から野尻湖方面を覗いた際は、湖面に浮かぶワカサギ釣りらしいボートを姿を捉えることが出来ました。7倍にしてこの実力ですので、もしこれが70倍ということになれば、その10倍くらいはよく見えるに違いありません。おじさんが釣ったオサカナの顔まではっきり見えて、おっ、あれはワカサギのワカコちゃんじゃないかな?…というところまで識別出来るんじゃないですかね?いや、野尻湖に棲息するワカサギに1匹ずつ名前が付けられているとは思えないんですが、僕にとってワカサギというのは“ワカコ”か“サギりん”のどちらかですからね。確率としては五分五分ではなかろうかと。で、色々と調べてみたところ、高倍率の双眼鏡には若干の問題点もあるようでして、それは何かと言うと、図体がでかくなるということなんですけどね。倍率が100倍を超えるような機種だと重さが350グラムくらいもあって、これは気軽に携行するにはちょっぴり抵抗がありますよね。30倍なら250グラムくらいのがあったので、倍率的にはやや物足りない気もしたんですが、妥協の産物として、ケンコーというとっても健康的なメーカーの ルシード 10〜30X23 というのを頼んでおきました。メーカー小売希望価格は 22800円 と、けっこうなお値段なんですが、実売価格は 8000円 前後といったところ。定価などあって無いに等しい状態でありますが、通販サイトのポイントがたまっていたので、ジャスト 5000円 で手に入れることが出来ました。

 で、色々と調べていて気になったのは、双眼鏡のスペックのところに必ず書いてある“8×27”といった数式なんですが、これはいったい何を意味しているのでしょうか? 答えは簡単、 “8×27=216” だよねっ♪…って、いや多分、そのような“2桁までの掛け算”の問題を出題されているわけではないような気がするんですよね。で、調べてみたところ、その謎が判明しました。この数式が示しているのは “倍率×対物レンズ有効径” なんだそうでありまして、つまり “8×27” というのは倍率が8倍で、対物レンズの有効径が 27mm であると。アンタ、そんなことも知らずに双眼鏡を買ったのか?…とか言われそうですが、だって僕、双眼鏡に関してはド素人だしぃ。ちなみに対物レンズの有効径というのはですね、大きくなるほど視野が広く明るくなって、見やすくなると。その分、双眼鏡自体が大きくなって、重くなっちゃうと。ま、当然といえば当然なんですけどね。中型双眼鏡としては 27mm くらいのものがいちばん使いやすいそうなんですが、僕の頼んだのは、えーと、“10〜30X23” だから、23mm でありますか。軽くっていいやぁ。…と思っていたら、要はレンズが小さいだけの話だったんですね。で、前半が “10〜30” となっているのは10〜30倍まで倍率を変えられることを意味しておりまして、こういうのを専門用語では“ズーム双眼鏡”と言うみたいですね。ま、専門用語と言ってもあまり大したことはありませんけど。

 とまあ、色々と双眼鏡の謎が解けたのはいいんですが、通販でルシードちゃんを注文してしまってから、数々の衝撃的な事実が明らかになりました。まず1点は、僕が頼んだのとまったく同じ機種が “F1マート・陽だまりの丘” で、2980円 で売ってるやん!…ということでありまして、新聞の折込みチラシを目にした時は愕然としてしまいましたね。でもまあ、それはまだいいです。あまりよくないような気もするんですが、そのチラシを見なかったことにしておけば問題はすべて解決します。僕の買った 8000円 くらいの双眼鏡は、F1マートで売ってる安物とはワケが違うんや!…と自分に言い聞かせることによって、心の安寧を得る。…という方法だってあります。世の中、何事も気の持ちようですからね。とまあ、それはまだいいんですが、問題はふと目にしてしまった このサイト でありまして、いや、これを目の当たりにした時の衝撃は、F1マートの折込みチラシ以上でありましたな。ここに書かれていた内容を要約するとですね、ズーム双眼鏡要注意! 高倍率の双眼鏡買ってはいけない! ギラギラ色付きレンズ双眼鏡買ってはいけない!…ということだったんですが、その3つの要素を全て兼ね備えた双眼鏡を注文してしまった僕の立場はどうなる!?…みたいな。僕のルシードちゃんってば、レンズがマルチコートで、何だかとっても凄い!…みたいなことが自慢げに書かれていたんですが、ギラギラ色付きレンズの一言で切り捨てられてしまいました。で、このサイトのWebマスターによれば、10倍以上の双眼鏡というのはまったく意味がないんだそうでありまして、言われてみればニコンあたりの双眼鏡には8倍以上の高倍率のものはありませんもんね。30倍だの、110倍だの、今度は120倍や!…みたいなのを作って喜んでいるのはケンコーくらいのものでありまして、ケッ!たったの7倍かよ!…と思って馬鹿にして、しっかりしろ!…と叱咤激励したペンタックスは、実は良心的な正しいメーカーだったようでありまして。でもなぁ、今さらそんなこと言われてもなぁ。。。

 とまあそんなことで、問題のルシードちゃんが届きました。いや、見た目は悪くないですよね。都会的なフォルムが魅力的であるな。…と評価していいと思います。そっかあ?別にフツーぢゃん。…という気がしないでもないんですが、本人が自分でそう言っている以上、その言葉を信じてあげましょう。信じるところから“”が始まります。で、手にした感じからもさほど安っぽさは感じられません。22800円…は、ま、無理としても、2980円 よりは高く見えるよね?…みたいな。で、覗いて見た感じとしても、素人目には、それほど酷評されるほどのことでもないよな?…という気がしないでもありません。少なくとも10倍で見ている分は大丈夫でありましょう。問題はやはりケンコーの売りである“ズーム機能&高倍率”でありまして、しかし何ですな。ズーム機能というのはもっと高度な仕組みなのかと思ったら、意外と単純なものなんですな。レバーをスライドさせるだけで10倍から30倍までグイーンと倍率が変わるんですが、お前、それ、ただレンズを前後に移動させてるだけやろ!?…みたいな。ま、ズームと言うのは基本的にそういうものであるような気もするんですが、ズームしたところでカメラのように自動でピントを合わせてくれるわけでないので、単純だけどけっこう面倒なものでありますなぁ。で、家の窓から道路を眺めていても電線とか標識とかが見えるだけでさほど面白くもないので、水源地にシゴトに行ったついでに配水池の上にのぼって、養老山脈のほうを覗いてみることにしました。手始めに10倍で試してみて、そろそろとズームレバーを30倍に近づけてみると・・・。おおっ!

 結論から申しましょう。これは酔います。もの凄ぉ〜く、酔います。その日はけっこう風が強くて、立っているだけでもフラフラする感じだったんですが、それに合わせて視界が揺れる、揺れる。高倍率双眼鏡は視界が狭くて対象を捉えるのが困難。おまけに手ブレがひどいので、三脚を使わないと駄目。…というのが、“買ってはいけない”主な理由だったんですが、まさにおっしゃるとおりですな。ああん、だからあれほど、高倍率双眼鏡は買ってはいけないって言ったのにぃ!! こんなに気持ちの悪い思いをしてまで、山なんか覗きたくねーや!…と心の中で叫んだ僕は、そっと双眼鏡を鞄の中にしまったのでありました。

 ということで今日は レム・ウィンチェスター です。しかしなんですな。血迷って120倍とかにしなかったのが、せめてもの救いでしたな。ズーム機能はなかったことにして、これは10倍の双眼鏡だよね?…と自分に言い聞かせて使えば、ま、何とかならないこともないかな?…という気がしないでもないですからね。ちなみに、配水池の上から山を眺めた際は酔って気持ち悪くなって、ちっともケンコー的ぢゃないぢゃないか!…という感じだったんですが、昨日、木曽川でウインド兄ちゃんを覗いた際は概ね良好でありました。被写体としては面白くもなんともなかったんですが、対岸近くにいる兄ちゃんの表情まではっきりと見て取ることが出来ました。最初10倍で目的物を捉えて、しかるにちに30倍にズームという使い方をすれば、ま、何とかならないこともないかな?…という気がします。決して無駄金を遣ったわけぢゃないよね?…と自分に言い聞かせておいて、では本題に入りましょう。レム・ウインチェスター。この人はアレです。ロシアンルーレットで死んじゃった人です。しかしロシアンルーレットというのは、どう考えても無茶ですよね。根性だめしなら“黒ヒゲ危機一髪”でもいいぢゃん?…という気もするんですが、それはともかく 『レムズ・ビート』 。これはアレです。メンバーが今ひとつです。オリバー・ネルソンという人はイメージ的に何となく、猿と人間の合いの子?…といった感じがするところがネックだし、それにこの人、アレンジャーとしては秀でた才能があるのかも知れませんが、テナーを吹かせたらあまりにも抑揚が無さ過ぎで、つまらんっ!お前の演奏は、つまらんっ! あとはえーと、アルトがカーティス・ピグラー(?)で、ピアノがビリー・ブラウンロイ・ジョンソンですかい?知らんっ!そんな演奏家は、知らんっ! ということで、期待度は17%程度のものであるわけですが、とりあえずまあ、いっちゃいましょう。

 1曲目は 「エディズ・ジレンマ」 ですか。ジャズマンのオリジナルには「○○のジレンマ」というタイトルのものが少なくないような気がするんですが、個人的には“ジレンマ”よりも“煮メンマ”のほうが好きです。ま、どうでもいい話なんですけどね。で、これはアレです。オリバーくんのオリジナルです。演奏はややいきなりな感じのピアノのイントロで幕を開けますが、ブルージーでご機嫌なフィーリングが感じられて、悪くないですよね。えーと、えーと…、ド忘れして咄嗟には名前が出てきませんが、えーと、リチャード・ワイアンズ。そうそう。そのあたりの香りがありますよね、ビリー・ブラウン君。で、続いてアルトとテナーのユニゾンによってテーマが演奏されますが、これはブルースである。…と言ってしまってもよろしいのではなかろうかと。オリバー・ネルソンという人は 『ブルースの真実』 で知られるように、ブルースのモダン化ということに心血を注いで貧血でぶっ倒れるという、そういったキャラなんですよね、おそらく。彼の考えるモダンなブルースというのは、要するに抑揚のないのっぺりとしたブルースなんやな。…という気がするわけなんですが、この 「エディのジレンマ」 という曲はわりとトラディショナルな感じ。AA形式のシンプルな構成なんですが、2回目のAの部ではウィンチェスターのヴァイブが絡んで来て、より華やかな装いとなっております。で、ソロ先発はネルソンですな。ちょっぴりコルトレーンにも似ているような、それでいて意外とオーソドックなところあって、でもそのうちに平坦な感じが高まってきて、でもまあ、この人にしては上出来ですかね?…という気がしないでもないんですが、このソロはちょっと長すぎる嫌いがありますな。後半、レムのヴァイブが絡んできて、退屈感はやや希薄になりますが、個人的にはこの人のソロは、15秒くらいでよかったかな?…という気もします。続くレムのソロは、ま、普通ですな。途中、単一のトーンを4本マレット(←たぶん)で叩き続けるあたりは、なかなかモダンな感覚も感じられますが、基本的にはミルト・ジャクソン系列と考えてよろしいのではなかろうかと。ミルトとウォルト・ディッカーソンの中間形といったところですかね? で、続くカーティス・ピグラー(?)のアルトは野卑なパーカー派といった感じで、幾分R&B的なノリもあったりします。続くビリー・ブラウンのピアノ・ソロがなかなか趣味がよくて思わぬ儲けものだったんですが、何しろトータルで11分37秒もあるものだから、意外とまともな解説になってしまって、演奏のほうも、全体的にまあまあかな?…といった感じではないかと思われます。

 2曲目の 「レム&アイデ」 もネルソンのオリジナルなんですが、いや、これは悪くないですな。アルトとテナーのハモリ具合も絶妙だし、ヴァイブの絡みもいい感じだし、曲の構成としてもけっこう手が込んでいるし、ハード・バピッシュだし、ファンキーでジャンピーなムードもあるし、なにより調子がいいしー。 ちょっとした小編成のプチ・ビッグバンド…というのは表現的にやや矛盾がありますが、6重奏という楽器編成以上の奥行きが感じられて、さすが、こういうところはネルソン君の手腕なんでしょうな。曲自体の調子がいいものだから、ソロ先発のネルソン君だってけっこう調子がよくて、意外とこの人、お調子者なのかも知れませんね。千葉の銚子の出身で、長姉は長身だったりするのかも知れません。で、ソロ2番手はレム君ですね。レム君の特技はレム睡眠だそうでありますが、ヴァイブを叩かせてもわりと達者でありまして、…と、ここまで書いて、また最初から聴きなおしてみてふと思ったんですが、テーマのあとに出てくるソロって、よく考えたらカーティスなんたら君のアルトですよね。調子がいいと感じられたのはカーティス君のほうでありまして、よってネルソン君はお調子者で、千葉の銚子の出身で、長姉は長身。…という発言は撤回したいと思います。いや、銚子の出身というのは端から怪しいとは思っていたんですけど。で、アルトに続いて、わりと達者なヴァイブのソロがあって、次に登場するのがネルソンでありました。うん、この人のソロはやはり、さほど調子がよくはありませんな。だらだらと一本調子で上昇したり下降したりして、モーダルと言えばそうなのかも知れませんが、この人、テナーさえ吹かなければいい人なんですけどねぇ。で、再びレム君の短いソロがあって、テーマに戻って、凝ったエンディング・パートがあって、おしまい。いや、作曲と編曲の腕だけは確かなんですが、これでテナーさえ吹かなければねぇ。。。

 3曲目はムードが一変して、歌物バラードとなります。「フレンドリー・パースアション」。いや、正確には何と発音するのか、今ひとつワカランのですが、意味としては“親しみのある説得”でありますか。個人的には“説得”よりも“ひょっとこ”のほうが好きなんですが、ま、どうでもいい話なんですけどね。で、演奏のほうはと言うと、ウィンチェスターのヴァイブが主導するメロディに2管のハーモニーが絡むアレンジが絶妙でありまして、何ともお洒落で現代アート的な仕上がりになっているように見受けられます。ソロ先発はウィンチェスターで、何というかその、MJQ的な香気を感じさせる小品って感じぃ? ややアレンジ過多でジャズ的スリルに欠ける嫌いはあるんですが、個人的にはスリルよりもフリルのほうが好きなので、別にいいかな?…という気もするんですけどね。いいですよねぇ、フリフリのお洋服。で、4曲目はオリバー・ネルソンのオリジナルに戻って、 「ユア・ラスト・チャンス」 という曲でありますな。いかにもアート・テイラーらしいサトルなリズムに乗ったコール&レスポンス風のブルース。…といった感じの曲で、ファンキーな香りもあって、シンプルながら、なかなか媚惑的な作品に仕上がっております。ウィンチェスターのソロは出だしの数音がGOOD。 出だしの数音だけかい。…というと決してそんなことはなく、ソロの全体を通じて概ね良好な仕上がりであるわけですが、続くカーティス・ペグラー(←正確には何と読むのか分からん。)のアルトも、どことなく蓮っ葉でアバウトな感じがあって悪くないですよね。誰に似ているかというと、えーと、えーと…、咄嗟には名前が出てきませんが、えーと、ソニー・レッド。あの辺りに近い感じですかね? 続くピアノ・ソロは2人いるうちのほうのビリー・ブラウンのほうですか。もう一人のロイ・ジョンソン君のほうはまったくと言っていいほど印象に残っていないんですが、ビリ・ブラ君はいいですよね。前述のとおり、リチャード・ワイアンズを彷彿させるスタイルの持ち主でありまして、で、ここでのソロを聴くとちょっぴりソニー・クラーク的な資質を持ち合わせているような感じもあるんですが、ま、いずれにせよ日本人好みのブルボン味好み。…といった感じで、しかし何ですな。ブルボンというのは新潟のイナカのほうの今ひとつ垢抜けない菓子メーカー。…というイメージがあったんですが、最近はけっこう小洒落たものも出しておりますな。“味好み”はまあ、ともかくとして、“チョトス”なんかけっこうイケてますよね。少なくとも“ぼんち揚げ”よりはお洒落だと思います。いや、美味しいんですけどね、“ぼんち揚げ”。 で、続くネルソンのソロはまあいいとして、テーマに戻って、おしまい。あ、テーマの前に、若干のバリエーションを施したセカンド・テーマみたいなパートがあって、アレンジ的にも完璧を期しているあたり、やはりオリバーという人はなかなかの猿人…ではなくて、才人でありますな。

 5曲目の 「レディ・デイ」 はピアニストとして参加しているロイ・ジョンソンのオリジナルです。まったくと言っていいほど印象に残っていない。…と思っていたら、こんなところで曲を提供していたんですね。で、これはアレです。実に綺麗なバラードです。ミルト・ジャクソンの 「ハート・ストリングス」 を思わせるようなメロディで、いわゆる“心の琴線に触れる”ってヤツですかね? 最近、トシのせいか涙腺も肛門括約筋も緩くなって漏れやすくなってきちゃった僕でありますが、知らず知らずのうちに涙がじんわりと滲んでくるような、実にしみじみとした名バラードでありますな。アドリブらしいアドリブもない3分足らずの小品なんですが、中間部に聴かれるネルソンのノン・ビブラートなトーンが秀逸です。オーボエを思わせるようなところもあって、横暴なところがなくて、良好です。この人も15秒くらい吹くだけなら、さほど実害はないんですよね。ということで、ラストです。ここでスタンダードの 「ジャスト・フレンズ」 を持ってきましたか。全体の流れからすると、やや意外な選曲のような気もするんですが、ま、悪くはないですよね。テンポはミディアム・ファスト。レムが叩く主旋律にホーン・アンサンブルが絡むテーマ部に続いて、ヴァイブのソロが出て、あとはえーと、アルト、ピアノときて、えーと、これは再びアルトということになるんすかね? となると2番目は何だったんだ?…という疑問が生じるわけですが、仕方がないからもう一度最初から聴きなおしてみたところ、えーとこれは、やはりテナーと判断したほうがいいんですかね? いや、ちょっと迷ったんですよね。あまりネルソンらしくなくて、けっこう小マシなソロなんですよね。ちょっぴりジミー・ヒースっぽいフレージングだったりして。やれば出来るぢゃん!…と思わずにはいられませんが、あるいは自分のオリジナルだと“モダンなブルース”を意識し過ぎて、モード風の路線に走ってしまう嫌いがあるとか。…ということが判明したところで、今日はおしまい。

【総合評価】

 どちらかというとレム君よりもネルソン君のカラーが色濃く出ている1枚でありますが、そういうもんだしぃ。…と思って聴けば、ま、それなりに楽しめるのではなかろうかと。


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