OH YEAH (ATLANTIC)

CHARLES MINGUS (1961/11/6)

OH YEAH


【パーソネル】

JIMMY KNEPPER (tb) BOOKER ERVIN (ts) ROLAND KIRK (ts,fl,siren,manzello,strich)
CHARLES MINGUS (p,vo) DOUG WATKINS (b) DANNIE RICHMOND (ds)

【収録曲】

HOG CALLIN' BLUES / DEVIL WOMAN / WHAM BAM THANK YOU MA'AM / ECCLUSIASTICS
OH LOAD DON'T LET THEM DROP THAT ATMIC BOMB ON ME / EAT THAT CHICKEN
PASSIONS OF A MAN / CHARLES MINGUS INTERVIEW

【解説】

僕はが好きです。カレーの中で、どれがいちばん好きか?…と訊ねられたら、迷わずカレーを選びますが、山川豊だったら、うーん…、かなぁ?…と、しばらく考えてから結論を出すくらい、僕はを愛しています。ま、山が好きと言っても別段、そこに登ってみたり、山裾を歩いてみたりといったアクティブな関わりを持っているわけではなくてですね、遠くのほうからぼーっと山を眺めて、ああ、山だなぁ。…としばし感慨に耽る程度のことで十分に満足しているんですが、とまあそういうことで、今日は“日本百名山”について考えてみたいと思います。いや、なんとなく。

 さてここで、ひとつ問題を出してみたいと思いますが、日本で“日本百名山”と呼ばれている山は、一体いくつくらいあると思いますか?100個。はい、正解です。ものすごく簡単な問題でしたね。“日本百名山”とか言いつつ、最後のひとつは、あなた自身が決めるものである。…とか言って、実は99個しか選定されていないんじゃないか?…などと思った人がいるとすれば、それは考え過ぎです。実は“日本百名山(ひのもとひゃくなやま)”とか言う名前の山が日本にひとつだけあるんじゃないか?…とか思った人。そんな山はありません。いや、断定は出来ませんが、たぶん無いと思います。“日本百名山”は100個。単純にそういうことでいいと思います。そもそも“日本百名山”というのは誰が決めたのかと言うとですね、えーと、確か深ナントカという名前の人だったと思います。深キョン?いや、そんなカタカナ系ではなかったですね。深田久弥(ふかだ・きゅうや)。そう、確かそんな名前の人だったと思います。で、深キョンならぬ深キュウは、いったい何を基準に100個の山を「名山である。」と認定したのかと言うとですね、ただ何となく。…というのが実情ではないかと思うんですが、“日本百名山”と言っても、それは一個人が独断と偏見で選んだものなので、客観的に見て、どうしてこんな山が?…と思ってしまうような山が含まれていることもあれば、誰でも名前を知ってるようなメジャーな山でも、キュウちゃんのお気に召さなければ容赦なく選から落とされていたりして、でもまあ大多数の人間が、「ま、無難な線だよね。」…と納得する選定がなされているようでありまして、今もって登山や山歩きをする人達の間で深田久弥の 『日本百名山』 は、まるでバイブルのように扱われているわけでありまして。

 とまあそういうことで、では日本百名山を順に見ていこうと思うんですが、僕の場合、北海道とか、東北とか、関東とか、関西とか、中国地方とか、四国とか、九州とかの山に関しては、まったくと言っていいほどピンと来ないので、中部地方限定ということで話を進めてみたいと思います。ということで、えーと、まずは“男体山(なんたいさん)”ですか。これは栃木県にある山なので僕の範疇外ではあるんですが、けっこう個人的には思い出のある山ですんで、簡単に触れておこうと思います。男体山はですね、中学の修学旅行で日光に行った時、見ました。でも個人的には男体よりも女体のほうが好きっ♪…ということで、この山に関しては、そんだけ。で、続いては“四阿山”ですか。これまた個人的にはもの凄く思い出の深い山でありますな。というのも僕は先々週、群馬のパルコール嬬恋というところにスキーに行ったんですが、そのゴンドラ頂上駅の近くに“日本百名山・四阿山”と書かれた看板が立っていたんですよね。へぇ〜、こんな聞いたこともないような山が“百名山”なのかぁ。…と思った次第でありますが、僕のこの山に関する思い出というのは、そんだけ。いや、看板は立っていたものの、いったいどれがそのナンタラ山なのか、僕にはさっぱり分からなかったしー。ところでこの“四阿山”というの、何て読むのか知ってますか?僕は知りません。知りませんが、例のパルコールの看板には“あずまや”と振り仮名が付いておりましたので、恐らくそのように読むのでありましょう。“四阿山”と書いて“あずまや”と読むのか?とすれば、“”の“”の部分はどこに行っちゃったんだ?…というのがずっと気になっていたんですが、そうではなかったんですな。“四阿”の部分だけで“あずまや”と読むんだそうでありまして、山の名前としては“あずまやさん”というのが正解のようです。知らなければ絶対に読めませんよね。“しあやま?”とか読んで大恥をかく恐れが多分にありますので、ここはひとつ、ポイントとして押さえておいたほうがよいでしょう。

 で、パルコールでは四阿山のほうはまったく識別出来なかったんですが、やはり百名山のひとつである“浅間山”のほうは非常に綺麗に見えておりました。スキー場ガイドのほうで使おうと思っている写真をリンクしておきますが、 こんな感じ で、とってもよく見えておりました。浅ましいほど浅間山でした。えーと、浅間山に関しては、そんだけ。あ、そうそう。僕は男体よりも女体のほうが好きっ♪…ということを少し前のところで告白した次第でありますが、世の中にはちゃんと“女体山”というのもあるんですね。百名山のひとつに挙げられている“筑波山”というのは、別名“女体山”と呼ばれているそうでありまして。いいですなぁ、女体山。何だかちょっぴり“豪勢な女体盛り”みたいな感じがあって、大いにソソられるものを感じてしまいます。いや、せっかくの刺し身が“人肌”に温まってしまって、ちっとも旨くないぢゃないか!…というシロモノではあるんですけどね、女体盛り。“女体”のほうは観賞用の添え物ということにして、刺し身のほうは無難に舟盛りとかにしたほうがいいんぢゃないか?…と、僕としては思ってしまうんですが、あるいは冷え性の女の人を使うとか。

 …って、そんなことはどうでもいいですね。だいたい、ギャルの肉体を刺し身の盛り付け皿にしようという発想自体がどうかしているわけでありまして、どうせやるなら、ソーセージの男体盛り?…って、あ、そんな話ばかりしてるとギャル系読者が根絶してしまう恐れがあるので話を元に戻しますが、百名山が間近に鑑賞出来るスポットと言えば、やはり白馬に止めを刺しますよね。白馬五竜、八方尾根、白馬岩岳、栂池といったあたりのスキー場は、まさしく“北アルプスの展望台”と言った感じてありまして、これまたスキー場ガイドからの流用で恐縮ですが、定番の撮影ポイントとしては 八方のリーゼングラートから見る白馬三山 なんかが有名ですよね。ちなみに白馬三山というのは鑓ケ岳・杓子岳・白馬岳のことを言うんですが、この中で百名山に選ばれているのは“白馬岳”だけですね。同じ“やりがたけ”でも“槍ヶ岳”のほうは選ばれているんですが、“鑓ヶ岳”のほうはキュウちゃんのおめがねには適わなかったようでありますな。ま、すんげえ尖ってるやん。…といった感じの“槍ヶ岳”に比べると、“鑓ヶ岳”のほうは、大して尖ってないやん。…といった感じで、インパクトも弱いような気がするので、ま、落選もやむなしといった気はするんですけどね。ちなみにこの鑓ヶ岳というのは、どうにも槍ヶ岳と紛らわしくてならんので、世間では白馬鑓ヶ岳という呼び方をされることもありますね。個人的には“むつかしいほうの漢字のやりがたけ”とか言ってますけど。ということで、次です。“五竜岳”。この山はいいですよね。ぱっと見て、一目でソレとわかるところがいいです。ポイントは何と言っても山頂付近に見える“武田菱”でありまして、ほら、 この写真 でも何となく確認することが出来ますよね。ちなみに“五竜岳”という名前は、ありゃ、武田様の御領地だけぇ。→御領だけぇ。→ごりょうだけぇ→ごりゅうだけ→五竜岳っ!バンザーイ、バンザーイ!…といった経緯で決まったそうでありまして。いや、山の名前をそんな“笑点”の大喜利みたいなノリで付けてもいいのか?…という気がしないでもないんですが、ま、所詮、山の名前なんてものはその程度のものだしー。日本に山なんてものは腐るほどあるので、いちいち真面目に名前など付けていられないわけでありまして。


 で、次です。“鹿島槍”。この山もいいですよね。槍…といっても槍ヶ岳ほどは尖ってないんですが、鑓ヶ岳よりは尖っております。でもって、この山は双耳峰なんですよね。猫耳のように2つのピークがぴょこん、ぴょこんとある山のことをそう呼ぶそうなんですが、“四つ菱五竜猫耳鹿島槍”と覚えておくと、スキーに行った時なんかにギャルの尊敬を得られることは間違いなし。「あっちのピークが2つある山が鹿島槍、こっちの菱形マークが4つあるのが五竜岳なんだよ。」「ああん、さばさんって、とっても物識りなのぉ♪」…みたいな。いや、もしかしたら「ふーん。」の一言で片付けられて、その後まったく会話が進展しない恐れも多分にあるわけですが、個人的にはそのようなクールなキャラのギャルというのは、あまりタイプではありませんな。やはり、「ああん」で始まって、「♪」で終わらないと駄目ですよね。で、“鹿島槍”というのはどこからでもけっこうよく見えるお山でありまして、天気さえよければ安曇野あたりからでも綺麗に見えるし、条件さえよければ長野市のほうからだって見えちゃいます。 八方尾根の展望ペアリフト終点から見る鹿島槍 というのもいいですね。五竜岳の遠見尾根からの繋がりが実によく見て取れます。えーと、以上、槍ヶ岳鑓ヶ岳鹿島槍が北アルプスの“3大ヤリ”であるわけなんですが、長野にはこのほかにも何だかとっても槍っぽい山があるのを御存知でしたか?僕は御存知ありませんでした。いや、何だかとっても槍っぽい山があるなぁ。…ということは視覚的に認識していたんですが、それが何という山なのかは知りませんでした。その問題の山というのは これ なんですけどね。ちなみに撮影場所は更埴市、いや、今は市町村合併で千曲市という名前になったようですが、そこにある“あんずの里”でございます。残念ながらこの時、僕はひとりでこの里を訪れたんですが、出来れば“ああん系♪”のギャルと一緒に行きたかったところですな。「ああん、あんずなのぉ♪」…みたいな。で、遠くのほうに何だかとっても尖った山があるのが気になっていたんですが、ちなみに、たまたま僕の近くに居合わせたおじさんはその山を見て、「鹿島槍ぃ?」とか言ってましたけどね。違うやろ。鹿島槍はあんな格好ちゃうやろ。…と、たしなめたい気分で一杯でありましたが、幸い、そのおじさんの隣にいた別のおじさんが、「んにゃ、鹿島槍というのはもっとあっちのほうにあって、ここからは見えん。」…と正しい発言をしておりましたので、とりあえず僕は黙って頷いてその場を立ち去った次第でありますが、結局のところ、その尖った山の名前はわからず仕舞でありまして。ああん、何だかとっても気になるのぉ。。。

 で、その山の名前がようやく判明しました。結論から申しあげましょう。高妻山 (2353m) というのがそれです。分かってしまえば、何だか知らなかったほうがよかったかも?…と思ってしまうような地味な名前でありまして、でもまあ、こんなのでも一応は“日本百名山”に数えられているみたいなんですけどね。ま、確かに標高的にはあまり大したことはないんですが、その尖がり具合とか、目立ち加減という点においては、立派な“名山”としての資格を備えているとは思うんですけどね。ちなみにこの山は戸隠連峰の最高峰なんだそうでありまして、戸隠富士なる別名もあるそうです。実に安易な別名ですね。安易な別名でありますが、そういえばこの高妻山というのは結構いろんなところから見えていたような気がします。 木島平から とか、 八方尾根から とか。とまあそんなことで、オチも何にもないんですが、最後にちょっと問題を出しておきましょう。日本百名山の中には“四阿山(あずまやさん)”みたいにけっこう難解な読み方をする山がいくつかあるんですが、次に挙げる山はいったい何と読むのでしょうか?

(1)後方羊蹄山 (2)早池峰 (3)飯豊山 (4)巻機山 (5)燧岳
(6)皇海山 (7)甲武信岳 (8)瑞牆山 (9)トムラウシ

 ということで、今日はチャールス・ミンガスでありますが、本題に入る前に先ほどの問題の答を書いておきましょう。

(1)しりべしやま (2)はやちね (3)いいでさん (4)まきはたやま (5)ひうちだけ
(6)すかいさん (7)こぶしだけ (8)みずがきやま (9)とむらうし

 というのが正解です。いやあ、難解ですね。“”とか“”とか、こんな難しい漢字、読めるわけないやん!…みたいな。で、“はやちね”というのは何となくいいですよね。ちょっぴりコマネチみたいで、いいです。“いいでさん”というのも、いいです。“巻機山(まきはたやま)”というのは、言われてみればなるほどぉ。…といった感じなんですが、知らなければ“まききやま”とか読んでしまいそうです。“甲武信岳”というのは地図上では“甲武信ヶ岳”となっていることが多いんですが、僕はずっと、“こうぶしんがたけ”けぇ?…とか思っておりました。“こぶしがたけ”というのが正解だったんですね。ちなみに名前の由来は、甲州・武州・信州の3県にまたがる山だから。…という、かなり安易なものでありまして、これならまだ大喜利のほうがマシ?…という気もしますよね。ということで本題に入りたいと思いますが、前回からこのコーナー、1回分の分量を 30KB から 20KB 程度にまで縮小する方針が打ち出されました。結果、この前は 25KB くらいになっちゃったんですが、今回は今の時点で既に 15KB に達しております。よって、後半は手抜きモードで行きましょうね。で、今日紹介するアルバムはアトランティック盤の 『オー・ヤー』 です。実はこれ、リーダーであるミンガスがベースを弾いてなくて。全編でピアノを弾いてたりするので、ベーシスト編として紹介するのはどうか?…という気もしたんですが、他にベースのアルバム、ぜんぜん残ってないしー。ちなみに ベーシスト編は極度の人材不足のため、今日でおしまいです。いやあ、3回しか続きませんでしたなぁ。で、このアルバム、リーダーのミンガスはベースを弾いていないんですが、その替わりにベーシストとしてダグ・ワトキンスが参加しておりますので、ま、いいかな。…という気もします。でもって、他のメンバーも凄いでっせ。ブッカー・アービンローランド・カークって、よくもまあ、こんな濃いのを集める気になりましたな。フロントにはもう一人、トロンボーンのジミー・ネッパーも入っていて、その地味ながらも熱波的なプレイには大いに期待が持てるところであります。とまあそういうことで、では1曲目から聴いてまいりましょう。

 えーと、まず最初は 「ホッグ・コーリング・ブルース」 でありますか。このアルバムのジャケットは収録曲のタイトルを、それぞれイメージ化してみましたぁ。…といった感じの珍しいつくりになっているんですが、この曲のイメージはずばり、“”でありますな。翻訳サイトにかけると「豚はブルースを呼んでいます」ですもんね。で、演奏のほうはというと、ミンガスのボーカル…というか、喚き声のようなもので始まっております。何を言っているのか今ひとつ判然としないんですが、ウイ・アー・サマー・ウーマン、どうのこうの〜♪…と言ってるようにも聞こえます。僕たち、夏娘? で、その後、テーマ部に入るわけでありますが、何かこう、3匹の子豚が鳴いているような感じがしますよね。3匹の子豚(アービン、カーク、ネッパー)が時にはコール&レスポンス風に、時には集団即興演奏風にやかましく喚き散らして、それはもう賑やかでありますな。そういえば岐阜の輪之内町というところに「さんびきのこぶた」という名前のトンカツ屋がありましたな。ブタを料理して出す店で、「さんびきのこぶた」というネーミングはどうか?…と思っていたら、いつの間にか潰れておりましたが、演奏の最中もミンガスはしきりに「おー・やー!」と声を出して騒いでいて、それはもう賑やかでございます。で、テーマに続いてアドリブ・パートに入るわけでありますが、カークを中心としたコレクティブ・インプロヴィゼイションといった感じでありまして、とにかくまあパワフルというか、ワイルドというか、原初的というか。人によっては、喧しいだけやん!…みたいな。ちなみにカークはテナー中心なんですが、例によってサイレンなんかも駆使しながら派手派手しく頑張っております。時折、ブタの鳴き声のような音も聞かれますな。とまあそんなことで、この曲に関してはおしまい。

 2曲目は 「デヴィル・ウーマン」 という曲ですね。イメージ・イラストとして、何だかいかにも性格悪そうな目の吊り上がった悪魔風のギャルがあしらわれております。お口が三角だしー。こういう根性がひん曲がっていそうなギャルとは、あまりお友達になりたくありませんなー。が、演奏のほうはと言うと、これがなかなかいい感じでありまして、ミンガスが自ら弾く無伴奏ピアノに、自ら歌うブルース風のボーカルが絡む導入部が印象的ですね。やがてそこに、ねっとりとした3管のハーモニーが絡んできて、ダウン・トゥ・アースな雰囲気がいやが上にも高まってまいります。何かこう、人間という生き物が持っている“根源的な哀しみ”みたいなものを感じてしまいますね。でもって、ソロ先発はローランド・カークでありますか。ここでは常日頃の大道芸人的な“けれん味”を捨て、ダイドーデミタスコーヒー的な渋みのあるテナー・プレイに終始しておりまして、そこのところが実によいと思います。で、ミンガスのブルージーなピアノ・ソロに続いて、ブッカー・アービンの登場でありますな。この人は何と言うか、人生の悲哀がビン底メガネの奥に秘められているかのような鎮痛なムードの漂うキャラであるわけなんですが、一聴してソレとわかる独特のフレージングはミンガスの求めている世界と実によくマッチしていて、秀逸です。アーシーなネッパーのトロンボーン・ソロも味わい深くて、でもって、テーマに戻って、おしまい。悪魔女、悪くないじゃないっすかー。

 3曲目は 「ホワム・バム・サンキュー・マム」 という曲です。タイトルの意味するとことは今ひとつよくわからんのですが、ホワムとバムとマムで韻を踏んでいるところはいいと思います。イメージ・イラストは、こちらのほうも何だかよくわからなくて、やらやらやらやらやらやらみたいなのやら。で、曲のほうはアレです。日本語ライナーで瀬川昌久という人が書いているとおり、デューク・エリントン楽団のアンサンブルをやや不協和的にしたようなジャンプ・ナンバー となっていて、ミンガスのピアノ・プレイや曲のイメージとしては、ちょっぴりモンク的な要素も感じ取ることが出来ますよね。ソロ先発のアービンの吹きっぷりが何とも言えずスリリングで、タンブリングで、泥レスリングですよね。いや、個人的には泥レスよりも金粉ショーのほうが好きだったりするんですが、ここでのアービンのソロはいいと思います。続くカークのストリッチもストレッチ体操的な伸びやかさがあって御開帳です。いや、快調です。ストップタイムも効果的ですよね。でもって、テーマに戻って、おしまい。4分41秒という短い小品なんですが、そこのところがクドくなくて、あっさりしていていいと思います、で、4曲目は 「イククルージアスティックス」 。また難しい単語を持ってきましたな。辞書を調べても載っていませんでしたので、恐らくはミンガスの造語ではなかろうかと。極めてスローなテンポのアンサンブルが、ゴスペル調のサウンドで、黒人地区の教会や通りの風景を画いていく。…と瀬川クンが書いているので、恐らくそういうことなんだと思います。イメージ・イラストは、こりゃ、何なんですかね?“でんでん太鼓”のようにも見えるし、デフォルメされたオタマジャクシのようにも見えるし。で、テーマに続いて、しばらくミンガスのピアノ・ソロが展開されるわけでありますが、次第に熱っぽさを帯びてきて、テンポも速くなってくるところがとってもスリリング。続くカークのソロの途中からは完全なアップ・テンポになっておりまして、お得意の“複数楽器、独りでまとめ吹き”のテクも披露されて、ムードは最高潮にして、胃拡張にして、栄養失調。…といった感じでありまして、でもって最後に再びスローなアンサンブルに戻って、おしまい。

 はい、5曲目です。これは長いです。 「オー・ロード・ドント・レット・ゼム・ドロップ・ザット・アトミック・ボム・オン・ミー」 です。長いですねー。曲名がとっても長いです。あまりにも長すぎてウザいので、日本盤CDでは 「神よ原子爆弾を降らせ給うな」 …などという勝手放題な邦題が付けられておりますが、ちなみに翻訳サイトだと 「おお、君主、それらに私にその原子爆弾を落とさせない」 と出ましたけどね。で、演奏のほうはと言うと、ミンガスのピアノとボーカルに、ネチっこい3管アンサンブルが被さる…という、このアルバムではお馴染みのパターンでありまして、ここまで来ると、ややマンネリ気味というか、食傷気味というか、額田王(ぬかたのおおきみ)というか。で、テーマに続いてミンガスのピアノがあって、アービンが出て来て、最後はカークの角煮風ソロでありますか。いや、きちんと自分の耳で確認したわけではないんですが、日本語ライナーにそう書いてあるしー。で、次です。聴いているほうとしても、原稿を書いているほうとしても、それを読まされているほうとしても、そろそろ疲れが極限に達してくる頃でありますが、ではここで、ちょっと気分直しに鶏肉でも食ってみますかね? 6曲目の 「イート・ザット・チキン」 は、ファッツ・ウォーラーに捧げられた曲だそうでありますが、ニワトリが好きだったんですかね?ウォーラーは。ンなものばかり食ってるから太るんや。…という気がするわけなんですが、いや、鶏肉と言うのはわりとヘルシーな食い物ではあるんですけどね。“鶏肉のヘルシー炒め”なんて料理もあるくらいで。で、この曲はアレです。しばらくアーシー路線が続いて胃が重くなってきたところに、いきなり飛び出す“おまぬけソング”…といった感じでありまして、もう、黒人社会のヤケクソとも思えるような、何とも御陽気な世界が展開されております。みんなで楽しく、基本的にどうでもよさそうな内容の歌を歌って、大いに盛り上がっております。ジミー・ネッパーのソロが鶏がらスープ的ないい味を出しております。そのバックで聞かれる「おや!おや!」という掛け声も何とも間が抜けていて、いいです。

 すっかり肩の力が抜けて脱力したところで、最後は 「パッションズ・オブ・ア・マン」 でありますか。「人間の情熱」…ではなくて、「人間の受難」と訳すべきでありましょう。曲というよりむしろ、効果音をバックにした詩の朗読…と言った感じでありまして、非常に前衛的な作品に仕上がっております。ま、さほど面白くはないんですけどね。“洋風お経”みたいな声やら、ボブ・サップの叫び声みたいのやら、「メ〜〜〜ッ!」という羊の鳴き声みたいのやら、色々な声を聞くことが出来ます。ローランド・カークはもっぱらサイレンの担当でありますな。ということで、ミンガスとしては色々と伝えたいメッセージがあったんだと思いますが、僕、英語はさっぱりわからないしー。

 ということで、おしまい。

【総合評価】

 これだけクドいメンバーを集めたら、演奏のほうはとてつもなくクドいものになっちゃうだろうと思ったら、案の定、その通りだった。…というのが率直な印象ですな。ま、ミンガスらしいというか、何と言うか。アービン好き、カーク好きの人なら文句なしに楽しめますが、あたし、アービンみたいなクドいのはちょっと。…というギャルには苦痛以外の何物でもありません。いや、個人的にはかなり好きなサウンドなんですけどね。ちなみに僕の持ってるCDには演奏の最後に「チャールス・ミンガス・インタビュー」というのが入っております。これは何なのかと思ったら、ミンガスに対するインタビューだったんですけどね。聞き手はネスヒ・アーティガンでありまして、ミンガスの肉声が聞けるという点でも、内容的にも、非常に興味深いものとなっております。…って、あんた、英語わかるんかい?…って、いや、CDにはちゃんとインタビューの日本語訳が添付されておりましたので、興味のある人はどうぞ。


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