SNAP YOUR FINGERS (ARGO)

AL GREY (1962/1/31,2/19)

SNAP YOUR FINGERS


【パーソネル】

AL GREY (tp) BILLY MITCHELL (ts) BOBBY HUTCHERSON (vib)
EDDIE WILLIAMS (b) HERMAN WRIGHT (ds)
DAVE BURNS (tp) <#1-5> DONALD BYRD (tp) <#6-8> FLOYD MARRIS (p) <#1-5> HERBIE HANCOCK (p) <#6-8> 

【収録曲】

NOTHING BUT THE TRUTH / THREE-FOURTH BLUES / JUST WAITING / R.B.Q / GREEN DOLPHIN STREET
MINOR ON TOP / AFRICAN LADY / HI FLY

【解説】

 “大人の科学”のシリーズも3回続けてやったので、さすがに僕も厭きました。読んでいるほうはもっとうんざりしていることと思います。今回くらいはうんざりしない話題を提供したいところでありますなぁ。例えばそうですね、 「うんざりしないウンコザリガニの話」 とか。いや、極限までつまらなさそうですけどね。そもそも“ザリガニ”というのはどう考えてもエビの仲間だと思うんですが、どうして“ザリエビ”ではなくて、“ザリガニ”なのか?…というのが僕の長年の疑問なんですが、そもそも僕はザリガニに関してあまりにも無知であるような気がするんですよね。その要因は恐らく、学研の 「科学」 の付録の “ザリガニ飼育セット” にザリガニが付いてなかったからだと思うんですが、ザリガニも付けないで、どうやってザリガニを飼育しろと言うんでしょうね?自分でザリガニを捕獲してこいとでも言うんでしょうか?いや、多分そういうことなんだと思いますが、ということで今日は “登録商標” について考えてみたいと思います。脈絡はありません。脈絡はありませんが、もうひとつ思いついた “大人の雅楽” というネタよりはマシ?…という気もするので、ひとつお付き合いの程よろしくお願いします。

 “登録商標”というのはアレです。登録された商標。ま、簡単に言ってしまえばそういうことになるわけですが、“トレードマーク”と言い換えてもいいかも知れませんね。…と思ったら、“登録商標”と“トレードマーク”というのはまったく別のものだったんですね。すなわち、登録されている商標が“登録商標”で、登録されていない商標が“トレードマーク”。そういう明確な違いがあるそうです。記号で言うと (TM) というのがトレードマーク、(R) というのが登録商標でありまして、どうして(R) なのかというと、“Registrated Trademark”だから。なるほど、トレードマークというのは登録商標ではなくて、ただの商標だったわけですな。とまあ、そういう細かい話はさておいて、世の中には一般名詞だと思って日常的に使っている言葉が、実は登録商標だった。…という事例が意外とたくさんあるんだねっ♪…という話をしてみたいと思うんですが、例えば有名なところでは“ジープ”とか、“サランラップ”とか。おばさんという人種は僕がザリガニに疎いのと同様、車のメーカーやら車種に関してはまったく無知である人が多く、パジェロだろうが、ランクルだろうが、ジムニーだろうが、とにかくジープみたいな形をしている車はジープっ!…と思い込んでいる節がありますよね。その点、おじさんのほうはことクルマに関しては、かなりの知識を有しているのが普通でありまして、パジェロのことをどうしても「ぱじょれ」と言ってしまうおじさんだって、ジープというのは実はどっかの会社の登録商標なんだよ。…という程度のことは知っていて、じゃ、どこの会社の登録商標なのか?…と聞かれると急に自信がなくなっちゃうわけでありますが、一般的な話としてはダイムラー・クライスラー社。が、元を正せばウィリス・オーバーランド社というところがジープという商標を登録したんだそうです。それが小型四輪駆動車の代名詞みたいに言われるようになって、やがてほとんど一般名詞と化した次第でありますが、今でもジープというのはれっきとした登録商標でありまして、例えば塩サバ物産(仮名)が性能的には本家ジープをも凌駕する素晴らしい性能のマンホールポンプの開発に成功したとしてもジープという名称を名乗ることは出来ないわけでありまして、じゃ、どうすればいいのかというと、例えば“ジープ”ではなくて“人糞”。…という名前だったとしたら、たぶん大丈夫だと思うんですけどね。

 で、車のメーカーやら車種に関してはまったく無知で、世の中にクルマというのはバストラックライトバンカローラミニ(←軽自動車のこと)の5種類しかない。…と思い込んでいるおばさんも、こと台所製品に関してはそれなりの知識を持ち合わせているのが常であります。少なくとも“サランラップ”と“銀行で貰った安っぽいラップ”とは、明らかに品質が違うよね?…ということは実感として持ち合わせていることと思われます。すぐ斜めにピーッと破れて、100巻分あるうちの37巻分くらいは駄目になっちゃいますもんね、銀行で貰った安っぽいラップは。その点、本家“サランラップ”のほうは強度においても粘着性の点でも秀でた性能を持ち合わせておりまして、どんぶりに豚汁を入れてラップで蓋をしちゃえば、もう逆さまにしちゃっても大丈夫。一滴の汁だって外にこぼれることはありません。(←たぶん。)“接して漏らさず”…という貝原益軒センセイの言葉はサランラップのためにあるんぢゃないか?…と思ってしまうほどなんですが、衛生用品のオカモトあたりもその辺りはしっかりしていることと思いますけどね。ちなみにサランラップというのは旭化成の登録商標でありまして、一般的には“食品包装用ラップ”と言うんだそうです。

 上記2点はある商品が卓越した性能を持ち合わせていたり、圧倒的なシェアや知名度を誇っているために一般名詞化した事例でありますが、このパターンとしては“シーチキン”なんかがそうですよね。NHKの料理番組では何の疑問もなく「材料はシーチキン1缶…」とか言って、アナウンサーに「いわゆるツナ缶ですね。」…と言い直されるケースが後を断たないわけですが、言ったほうとしても、もはや何の疑問も持たないほど一般化してしまった感があります。“ヤクルト”とか“カルピス”なんかもそうですね。とくにおばさんと呼ばれる人種は、この辺りの感覚が極限までアバウトなような気がします。友達の家に遊びにいって、友達のおかんに「ヤクルト飲むぅ?」と言われて出されたものがローリーエルビーだったり、「カルピス飲むぅ?」と言われて出されたものがコーラスだったり、「わかもと飲むぅ?」と言われて出されたものがエビオスだったり…といった事例は後を断たないわけでありまして、いや、子供の友達にエビオスを飲ませるおかんというのは、それだけでやや問題があるような気もするんですが、一方、おじさんが苦手としているのはOA関係の用語でありますな。おじさんから「これ、ゼロックスして。」などと言われたら今の若いOLさんには何のことだかさっぱりわかんないし、登録商標とは関係ないんですが、「これ、コピーして。」…とフロッピーディスクを渡されて別のフロッピーに複製しようとしたら、「そうじゃなくて、紙に出して欲しいんだけどぉ。」…って、そりゃ“コピー”ぢゃなくて、“プリントアウト”やがな!…と、心の中でツッコミを入れたこともしばしば。そんなおじさんでも意外と器用にデジカメを使いこなしていたりして、おおっ!…と感心することもあるんですが、ちなみにこの“デジカメ”というのも登録商標なんだそうですね。どこの会社の登録商標なのかというと、意外にも三洋電機だったりします。サンヨーのデジカメって何だか全然ぱっとしないし、“デジタルカメラ”を略して“デジカメ”と呼んでいるわけだから、登録商標とかそういうのって、全然関係ないぢゃん。…という気がしないでもないんですが、駄目なものは駄目。こういうのは早い話が“早いもの勝ち”の世界なので、サンヨーがいちばん最初に“デジカメ”という名前を登録しちゃった以上、他のメーカーはどうあがいても“デジカメ”という名称を使用することは出来ません。面倒でも“デジタルカメラ”と言わなければなりません。それにしてもサンヨー側としても、まさか“デジカメ”という名称がこれほどまで一般化するとは思っていなかったに違いないし、それにも増して自社のデジカメがこれほどまでに売れないとは思ってもみなかったことでしょう。登録商標が一般名詞化して、とんだ恥さらし。…という稀有な例でございます。

 略称的なものをちゃっかり登録しちゃった例としては“デジカメ”のほかに“セロテープ”というのがありますが、これはニチバンの登録商標ですね。積水化学の商品を用いてペナントを壁に貼り付けたりする場合、面倒でも「セロハンテープでペナントを貼り付ける。」…と言わなければなりません。こうなってくると、“ペナント”というのも既にどこかの会社によって登録商標されているんぢゃないか?…という疑心暗鬼が生じてくるわけですが、一般的には“長三角的飾り布”と言わなければならない…とか何とか。いや、子供の頃、集めてたんですよねぇ、ペナント。“白銀にシュプールを描く・妙高高原”とか書いてあるやつ。“京都ばーじょん”は金閣寺とか舞妓さんとかの写真があって今ひとつ趣味がよろしくなかったんですが、“奈良ばーじょん”は黒を基調にした若草山の山焼き。コドモ心にも「渋いなぁ。」と思えるような出来栄えでありまあいて、僕のお気に入りだったんですが、家もろとも火事で焼けちゃいましたけどね。で、ざっと調べてみたところ、“ペナント”というのは大丈夫そうでしたが、略称系では“着メロ”というのも登録商標なんですね。アステルグループが申請を出しているようです。こりゃ、うかうかしてると“塩サバ通信”の略称の “塩通”というのも既に“日本塩辛通信社”あたりに押さえられているかも知れず、いや、個人的には“サバ通”でもいいんぢゃないか?…という気もするんですが、こちらは“東印度サバイバルゲーム通勤快速委員会”あたりに先を越されていたりして。んな、ワケのわからん組織に遅れを取ったのか!…と、無念な気持ちで一杯でありますが、“チャック”というのも登録商標だったんだそうですね。KKKファスナー社の製品のみ、この名称を名乗ることが出来るんだそうで。いや、僕はてっきり“KKK”というのは“YKK”のパチモン会社だとばかり思って馬鹿にしていたんですが、実は立派な企業だったんですな。馬鹿にしてすいませんでした。今後、ズボンの前の開閉機構で肉体の一部を挟んじゃった場合、メーカーを確認した上で、「チャックで挟んじゃったー。」、もしくは「ファスナーで挟んじゃったー。」…と使い分けて、正確を期するようにしたいと思います。いや、痛くてそんな余裕はないかも知れませんけどね。

 で、どう考えても普通名詞やろ。…と思えるものの中にも登録商標されているのがいくつかありまして、例えば“ポリバケツ”。積水化学工業の製品でない限り、こう呼んではいけません。じゃ、何と呼べばいいのかというと、プラスチックのバケツ。とっても面倒なんですが、積水化学工業が“ポリバケツ”を商標登録しちゃった以上、他社製品はプラスチックのバケツと呼ばなければなりません。“万歩計”というのも駄目です。山佐時計計器の製品以外、この名称を名乗ることは出来ません。歩数計と言い換えましょう。“ラジコン”。これも駄目です。増田屋が作ったもの以外は無線操縦装置と呼びましょう。 “アーモンドチョコレート”。グリコ製品以外、この名前を使う権利はありません。じゃ、どうすればええねん?…とフルタ食品の人は思ってしまうに違いありませんが、グリコが“アーモンドチョコレート”という名前を登録してしまった以上、もうどうすることも出来ません。申し訳ございませんが、“セコイヤチョコレート”で食いつないでください。セコイヤチョコレートはセコいや。…と、子供たちにも大人気ですからね。“信州味噌”。長野県味噌協同組合に加盟しているメーカーの味噌以外、信州味噌と呼ぶことは出来ません。信州のみそ。これなら大丈夫です。“ティーカップ”。これも駄目です。ここでいうティーカップというのは一般的な紅茶カップのことではなく、遊園地の遊具のほうなんですが、後楽園遊園地にあるもの以外、この名称を使用してはいけません。僕が前に書いた原稿の中に、「“コーヒーカップ”は長島スパーランドでは“ティーカップ”という名前だったような気がしますが…」という一文がありますが、それはとんでもない間違いでありました。これはもう、世が世なら切腹モノの大失態でありますが、んなもん、どっちでもエエやん。…という気がしないでもありません。“バルサン”。何につけてもアバウトな性格のおばさんだったりすると、中外製薬の製品でなくても平気で「バルサンたいといて〜。」…とか言いそうですが、これはまあ、どう考えても商品名ですよね。“ピアニカ”。意外にも東海楽器という、あまりよく知らないメーカーの登録商標でありました。“けん盤ハーモニカ”というのが普通名詞のようです。で、僕が一番意外だったのは一般名称で言うところの“エアキャップシート”…って、そう言われてもぜんぜんピンと来ませんが、要はクッキーの缶なんかに入っている衝撃緩衝用のシート、俗に“プチプチ”と言われるヤツですね。で、俗に“プチプチ”と呼ばれるのは分かるんですが、正式には何と呼ぶのがずっと不思議に思っていたんですが、ようやくその疑問が解決しました。“プチプチ”というのが正式名称だったんですな。川上産業という会社の登録商標なんだそうで。“プチプチ(R)”というのはイライラした時にプチプチ潰していると結構ストレス解消になるものなんですが、その事実を知ってしまった以上、「“プチプチ(R)”をこうしてプチプチしていると、とってもすっきりするね♪」…などと悠長なことを言っておれなくなってしまいました。クッキーの缶に入っていたこのプチプチ状の物体は、果たして川上産業の商品なんだろうか?…ということを確認の上、もしそれが他社の製品だったりしたら、「“エアキャップシート”をこうしてエアキャップシートしていると、とってもすっきり…しねーよ!」…ということになって、ああん、余計にストレスが溜まるぅ。。。ということで、今日のお話はおしまい。

 ということで今日はアル・グレイでありますが、僕はとんでもない間違いを犯してしまいました。サンヨーの人には深くお詫びを申し上げなければなりませんが、何の話かと言うとサンヨーの“デジカメ(R)”なんですけどね。僕は前半部において、サンヨーデジカメがこれほどまでに売れなくて、とんだ恥さらし。…とまで書いてしまったんですが、塩サバ2号の情報によると、“デジカメ(R)”のシェアというのはサンヨーが一番なんだそうでありまして。いや、意外な話ですな。ま、情報源が塩サバ2号という、限りなく信用のおけない信用調査機関であるところがちょっと弱いんですが、OME生産で他社ブランドとして発売しているので、中身をばらしてみると実はサンヨー製品だったりするという。言われてみれば成るほど。…と納得のいく話ですよね。いや、よく調べもしないで知ったかぶりしてサンヨーデジカメ(R)を馬鹿にしたりして、どうもすいませんでした。人様の登録商標関連のサイトからネタを拾ってきて、ちょっとボケを入れただけぢゃん。…ということが露呈して、とんだ恥さらしになるところでした。とまあそういうことでアル・グレイなんですが、僕はこの人に関しては何の知識も持ち合わせておりません。知らないときは知らないと素直に告白しよう。…と、“サンヨーのデジカメ事件”をきっかけに心に決めた次第でありますが、知ったかぶりとか半可通というのはよくありませんもんね。で、半可通というのはアレですね。太田裕美の歌にありますよね。涙吹く木綿の〜半可通下さい〜♪…って、知ったかぶりもともかくとして、つまらないボケもやめて欲しいところでありますが、ということでアル・グレイの 『スナップ・ユア・フィンガーズ』 。よく知らないアルバムなんですが、たまたま店で見かけて何となく買ってしまいました。ジャケ写を見る限り、アル・グレイというのはドスの利いたオッサン風のルックスなんですが、 このアルバムがアーゴ盤であることから類推するとシカゴ出身なのかも知れません。なるほど、シカゴにはゴマンといそうな顔をしてますもんね。これはあくまでも僕の推計なんですが、おそらくシカゴにはこの手の顔の人が五万くらいはいるんじゃないかと。で、あまりよく知らないので迂闊なことは書けないんですが、アル・グレイという人は恐らくカウント・ベイシー楽団にいた人なんじゃないかな?…と思われるわけでありまして、世間ではプランジャー・ミュートの名手…として知られていると。このプランジャー・ミュートというのはアレですね。俗に“便所ミュート”と呼ばれているもので、便所が詰まった時に使う“すっぽん”。アレのカップの部分に酷似した形状をしております。そういえばこのアルバムのジャケットにも写ってますよね。僕は最初、どうしてこの人、便所の“すっぽん”持ってるの?…とか思ってしまったんですが、なるほど、 プランジャー・ミュートの代用品だったんですな。

 で、この“すっぽん”という名称も、もしかしたらどこかの会社が登録商標しているのかも知れませんが、それはともかく。このアルバムはメンバーが悪くありませんな。テナーのビリー・ミッチェルをフィーチャーした全体的にワイルドな仕上がり具合なんぢゃないか?…と思わせておいて、影でこっそりボビ・ハチのヴァイブが入っていたりして、しかもB面のセッションではハービーがピアノを弾いていたりします。実際に聴いてみるまでどんなサウンドが飛び出してくるのかまったく見当がつかん。…というのが実感なんですが、『スナップ・ユア・フィンガーズ』 というタイトルもいいですよね。“君の指を鳴らせ”…でもいいんですが、ここはやはり “指パッチンしようぜ!”…のほうが感じが出るのではないかと。いや、“指パッチン”というのはポール牧の登録商標なので勝手に使用することは出来ないわけなんですが、それはともかくとしてとりあえず1曲目から。えーと、まずは 「ナッシング・バット・ザ・トゥルース」 という曲ですな。作曲したのはえーと、“Bowen”という人です。輸入盤CDにはそれだけしか書かれておりませんので、詳細は不明です。で、演奏が始まってみて、意外だったというか、なるほどこういう路線だったのか。…と納得したというか、とにかくまあ、指パッチン的なノリノリ世界でありますな。タンバリンの軽快なリズムに先導されて、ホーン陣とヴァイブ&ピアノ組とでコール&レスポンスなゴスペル風のテーマが演奏され、なんとも御陽気な片イナカの教会の御様子が脳裏に浮かんでまいります。で、ソロ先発はアル・グレイ。なるほど、この独特のトーンが“すっぽん効果”なんですかね?言葉で説明するのは難しいんですが、トロンボーンのベルの部分に“すっぽん”をかぶせて開閉させているなぁ。…といった感じの音色。いや、実際はオープンで吹いていたりするのかも知れませんが、世の中というのは思い込みひとつですからねぇ。で、ソロ先発も何もグレイのあとは再び御陽気なテーマに戻って、3分15秒の何ともあっさりとした演奏ではありました。ニューオリンズ的というか、クリスマス・ソングにもありがちな展開と言うか、とにかくまあ賑やか。そういう1曲でしたね。いや、ジャズ的なスリルは今ひとつ希薄でしたけど。

 で、2曲目の 「スリー・フォース・ブルース」 は一転して陰気なムード。ベースの無伴奏ソロに思わず心も深く沈みこんでしまいます。…と思っていたら、ここで気分は一転、お祭りモードに。基本的に“お祭り野郎”だったんですな、アル・グレイ。テーマ部はホーンを中心としたアンサンブル風なんですが、途中からピアノをフィーチャーした形になってきて、そしてそのままフロイド・モリスのピアノ・ソロへと流れていきます。この辺りのアレンジはなかなか凝っていて、単なる便所のすっぽん野郎。…と言い切ってしまうにはもったいない程、卓越した知性が感じられるのではなかろうかと。で、ピアノのモリスという人に関しては、まったく何もよくわからんのでありますが、ここでの演奏を聴いている限りではレス・マッキャン風というか、ジュニア・マンスっぽいというか、とにかくまあ、ゴスペル・ライクな、おスペ好き。…といったキャラを彷彿させるプレイを展開しております。で、ソロ2番手はデイブ・バーンズですな。どちらかというと知的で地味なプレイをするトランペッターなんですが、ここでは割と熱めの演奏に終始しているような気がしますね。割と熱め…というのは一体どれくらいの状態を言うのか?…と聞かれると困るんですが、ま、風呂の温度にして42.3度くらい。ま、その辺りを想定して貰えればよろしいかと。途中、トロンボーンとヴァイブが絡んでくる辺り、瞬時ではありますが42.5度くらいにまでヒートアップする場面もございます。で、ソロ3番手はボビ・ハチでありますな。クールなプレイを心情とする人でありますが、ここでは思わず途中で声を上げたりして、かなりホットな演奏に仕上がっているのではなかろうかと。で、トリはグレイでありますな。アーシーでいてワイルドという、JJやフラーにはない特徴を持ち合わせておりまして、その下劣なところがたまらなく好きっ♪…という人もいえば、どうしようもなく嫌い。…という人もいたりして、やや好き嫌いの別れるタイプであると言えるかも知れません。ということでまあ、とりあえずそんなところですかね。

 で、3曲目は 「ジャスト・ウェイティング」 という曲です。作曲者に“M.Liston”という名前がクレジットされておりますので、あるいはギャル系トロンボーン奏者・メルバ・リストンのオリジナルなのかも知れませんね。ギャル系と言えば先ほど、近所のミスター・トンカチへ長靴を買いにいったんですが、その際、レジのお姉さんにとても迷惑をかけてしまいました。いや、餅網状に2段に組まれた鉄筋の上を歩いていて踏み抜いて長靴が破れちゃったので新しいのを買いにいったんですが、長靴につけ何につけ、ゴム製品というのは破れて漏れたりするとタイヘンなことになっちゃいますからね。で、一口に長靴といっても色々な種類があるものでして、ごく普通の黒いものやら、マリンレジャーっぽいもの、高いものやら、安いもの、大きいものやら小さいもの…と、普段から優柔不断な僕には到底即断の出来ないような状態でありまして、片っ端から手に取ったり、足を突っ込んだりして吟味しておりました。安全靴みたいにつま先の部分に硬い板の入っているのもあったりして、やはり作業員としてはこういうタイプを選ぶべきだよな。…という気がするんですが、“土木作業用”と書かれたタイプの奴は今ひとつデザイン的に垢抜けてなかったりして、僕の美的センスに合致しないものがあったんですよね。で、さんざん迷った挙句、ま、どれでもいっかぁ。…と思ってデザイン的にややマシな“安全長靴タイプ”のヤツに決めてレジまで持っていった次第でありますが、悪いことにバーコードの書かれたタグが取れてしまって、レジでは値段が確認出来ない状態になってしまっていたようでありまして。いや、こういう時に待たされるのって、何だか決まりが悪いんですよねぇ。早速、値段確認要員のおばさんが現地に派遣されたわけでありますが、わるいことに僕が手にした商品は相当のレア物だったようで、なかなかレジには戻って来ませんで。待ってる僕も辛いんですが、レジのお姉さん(←けっこう可愛い。)のほうも何だかとっても所在無げでありました。気は焦るし、レジにはどんどん客が並んでくるしで、彼女にとってもかなり辛い時間であったに違いありません。ゴメンよぉ。僕が“土木作業用”のほうにしておけば、こんなことにはならなかったんだよぉ。。。

 ということで 「ジャスト・ウェイティング」 ですな。ビリー・ミッチェルのテナーをフィーチャーしたバラードでありまして、咽び泣くムード・テナー的なサブトーンが何とも泣かせてくれますなぁ。そこに絡むアル・グレイのボントロも実にいい味を出しております。ただ下品なだけのおっさんじゃなかったんだね。…と改めて認識した次第でありますが、ボビ・ハチのヴァイブも実に効果的に使われております。2分50秒という小品なんですが、アルバムのチェンジ・オブ・ペースとして、ま、こういうのが1曲くらいあっても別に罰は当たらないんぢゃないかと。で、4曲目はアレです。「R.B.Q.」 という曲です。“BBQ”だったら、あ、バーベキューの略だな。…ということがすぐに分かるんですが、“RBQ”というのは何のことだかよく分かりません。バーベキューの綴りは“barbecue”だから、“BBQ”という略語はおかしいんぢゃないか?…という気もするんですが、でもまあ、“オバケのQ太郎”は“オバQ”だから、別にいっかぁ。…ということで、納得出来ないこともないですよね。それに比べて“RBQ”というのはどうにも納得がいきません。納得がいかない…というか、何の略称なのかよくワカランというのが実情なんですが、でもまあ、何の略称だとしても聴いている分にはまったく何の関係もないので、話を先に進めましょう。曲としてはアレです。無伴奏のウォーキング・ベースで幕を開けて、テーマ自体は明るく楽しいスイング調ですな。ベイシー楽団的なジャンピーさが感じられなくもなくて、で、テーマに続いてはホーン・ アンサンブルをバックにボビ・ハチがヴァイブ・ソロを披露する。…みたいな企画。このあたりはライオネル・ハンプトン的である。…と言っていいかも知れませんね。いや、ハンプトン楽団の演奏は1度も聴いたことがないんですけど。で、続いてビリー・ミッチェルがドライビングなソロをかましたりして、アンサンブルとも絡み具合も実にたいへんよく盛り上っておりますな。以後、デイブ・バーンズ、アル・ヘイグと同趣向のソロが続いて、全体的にはモダン・スイング・コンボとでも言いたげな演奏となっております。とまあ、この曲に関してはだいたいそんなところかと。

 で、5曲目はご存知、「グリーン・ドルフィン・ストリート」。なんとなく 「デライラ」 を彷彿させるベースのイントロにピアノが絡んで、でもってテーマ部はボビ・ハチのヴァイブがリードする形で演奏されております。出だしこそモード調なんですが、やがてすぐにいつものモダン・スイング調に転じます。アドリブ・パートも例のごとく、時折ホーン・アンサンブルの絡む形で始まるんですが、その後はほとんどボビ・ハチの一人舞台でありまして、で、そのままテーマに戻って、おしまい。…と、ここまでがレコードで言うところのA面でありまして、ここから先のB面セッションはムードも一転、“バードランド”におけるライブ録音となっております。で、まずは 「マイナー・オン・トップ」 という曲なんですが、作曲者に“T.Jones”とクレジットされていることから考えて、恐らくサド・ジョーンズのオリジナルではなかろうかと思われます。いや、わかりませんけどね。たけし・ジョーンズ…という日系二世が作った曲。…というセンも完全に払拭することは出来ません。ま、完全に払拭してしまってもいいんぢゃないか?…と思われるほどその確率は低いわけではありますが、なかなか凝った作りの曲ではありますな。ややアブストラクトな曲調にボビ・ハチのヴァイブが絡むあたり、後期ドルフィーの作風を感じさせないこともありません。が、アドリブ・パートに入るとごくオーソドックスなハード・バップでありまして、ソロ先発のビリー・ミッチェルのイカした吹きっぷりが素晴らしいです。ライブになるとこれほどまでノリが違うのか?…と思ってしまうほどの熱演ぶりでありまして、いやあ、熱いです。ソロ2番手のハッチャーソンが割と淡々と演奏しているのでそのギャップがかなり感じられるんですが、そのボビ・ハチもソロ後半では次第に熱くなってきて、さあ、これからいよいよ!…と思っていると、テーマに戻って、おしまい。ま、それはそれで別にいいとは思うんですけどね。それはそうと、アル・グレイはどうした?…と、今になってから気付いたほど、彼の出番はまったくなかったんですが、ま、とりあえず2曲目に参りましょう。恐らくメルバ・リストンによるものと思われる 「アフリカン・レディ」 という曲ですね。“フリチン・レディ”ではありません。レディの場合“フリチン”とは言いませんもんね。じゃ、何というのかと言うと、“フリマ…”って、いや、そんなことはどうでもよくて、そもそも“レディ”と呼ばれるような人はそのようなはしたない状態にはなったりしないものと思われます。パンツだってもう、2枚くらい重ね履きしちゃったりして、いやあ、さすがは淑女ですなぁ。で、曲のほうはアレです。とってもモダンな感じのバラードです。アフリカンな野性味というのはあまりなくて、もっとこう、都会的なギャルって感じぃ?で、テーマ部はドナルド・バードのトランペットがリードする形で進んでいきます。でもって、ソロ先発はアル・グレイでありますな。3管ジャズ・メッセンジャーズにも通じるモダニズムが…とか言ってるうちにいきなりテンポが速くなって、ビリー・ミッチェルのテナーが咆哮するワイルドなパートに転じ、…とか思っているとまたしみじみバラードに戻ったり、また速くなったり…と、めまぐるしいがな!…とか思っているうちに終わっちゃいましたけどね。

 で、ラストはランディ・ウエストンの 「ハイ・フライ」ですな。「蝿フライ」ではありません。確かに蝿は英語ではフライと言いますが、揚げ物にしてみたところでさほど美味いとも思えないしぃ。“鱒フライ”というのも駄目ですね。 “道の駅・大桑”のレストランのメニューにあるんですが、サンプルを見ると頭の付いた1匹なりの状態で体の部分にだけコロモが付けられて揚げられておりまして、何だかソソられるものがまったくありません。ま、鮭の一種なので揚げればそれなりに美味しいような気もするんですが、頭の部分が付いているのは、何だかやっぱり嫌ですなぁ。で、 「ハイ・フライ」 はアレです。さほど日本人受けのする曲調ではないのでイメージ的にはアレなんですが、ミディアム・テンポで演奏されるアル・グレイ版はアレです。なかなか無難な仕上がりではあります。ソロ先発のビリー・ミッチェルが歌心に富んだ演奏を聴かせ、ソロ2番手のドナルド・バードが歌心に富んだ演奏を聴かせ、ソロ3番手のボビー・ハッチャーソンが歌心に富んだ演奏を聴かせ…って、いくら何でも3番目はパターンを変えてくるだろう。…という読みの裏をかいて同じパターンで押し通してみましたが、いや、他に書くことを思いつかなかっただけの話なんですけどね。で、ボビ・ハチのソロの後、テーマに戻るところがやや不自然だったので、あるいはテープ編集が施されているのかも知れませんが、とにかくまあ、テーマに戻って、おしまい。で、今日は以上です。

【総合評価】

 前半と後半でガラッと印象の変わる1枚でありますな。ジャズ的なスリルを探究するならやはりライブB面のほうがよくて、特にビリー・ミッチェルの奮闘ぶりには目を見張るものがあります。その分、アル・グレイはぜんぜん目立たないんですけど。グレイを聴くならスタジオ・セッションのA面のほうがよかです。


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