THE EMINENT JAY JAY JOHNSON VOL.1 (BLUE NOTE)

 J.J.JOHNSON (1953/6/20,9/24)

THE EMINENT JAY JAY JOHNSON VOL.1


【パーソネル】

J.J.JOHNSON (tb) KENNY CLARKE (ds)
CLIFFORD BROWN (tp) <#1-5> JIMMY HEATH (ts,bs) <#1-5> JOHN LEWIS (p) <#1-5> PERCY HEATH (b) <#1-5>
WYNTON KELLY (p) <#6-10> CHARLIE MINGUS (b) <#6-10> SABU (conga) <#6-10>

【収録曲】

TURNPIKE / LOVER MAN / GET HAPPY / SKETCH 1 / CAPRI
JAY / OLD DEVIL MOON / IT'S YOU OR NO ONE / TOO MARVELOUS FOR WORDS / COFFEE POT

【解説】

 このところ“すけべ動画”も“青春歌年鑑”もはかばかしい成果が得られずに、次第に馬鹿馬鹿しく なってきた“WinMX”。この現状を何とか打開する方策はないのか?…と思っていたところ、電子書店にちょっと参考になりそうな本がありました。題して、『だから WinMX はやめられない』。紹介文をちょっぴり引用させていただくと、“インターネットユーザーなら誰もが知っているP2Pファイル交換ソフトWinMX」。たった1年半で「」と呼ばれるようになった青年の実体験を追いながら、違法コピー著作権違反不正公開……と悪評高いその実態をすべて記した問題の書”…って、いや、なかなか楽しそうですな。ちなみに僕は“カス”と呼ばれたことはあるんですが、“”と呼ばれたことはありません。うちの事務所のナガナワ所長代理も、よく部下から“ちんかす”と呼ばれてますけどね。本人もそう呼ばれることに既に慣れっこになっているようで、酒の席で「ナガナワさんって、“ちんかす”ですよね。」…と言われても平然としているんですが、ある夜、「ナガナワさんって、ちょろこいですよね。」…と言ったところ、跳びかかって来て首を絞められたそうでありまして。これが世間に名高い“ナガナワちょろこい事件”の全貌なんですが、いや、僕はその場には居合わせてなかったんですけどね。“ちんかす”のほうがよっぽど酷いと思うんですが、“ちょろこい”の何がそんなに彼を激怒させたのでありましょうか? それにしても、皆が口を揃えて、「アレは凄かった。」と証言している“ナガナワ所長代理の跳躍”を、せめてビデオ映像でもいいから見たかったものですなぁ。。。

 …といった時に役に立つのが“WinMX”というソフトでありまして、試しに“ナガナワ お宝”で検索をかけてみると…、ヒットしませんなぁ。いや、問題の映像は相当にレアであるようなんですが、ちなみに“インターネットユーザーなら誰もが知っている”…といっても、詳しくは知らない人も多いと思うのでここで簡単に説明しておくと、いや、僕もあまりよくは知らないんですけどね。とにかく、インターネットの回線を何だか特殊な方法で接続して、人様が持っているファイルと自分の持っているファイルを交換したり、みんなで共有したりするという。交換するファイルというのは、例えば“(ショタ)小学5年生睾丸まる見え画像.jpg”みたいな、基本的に極めて違法性の強いものであるのが常でありまして、あるいは違法コピーの音楽データだとか、パソコンのアプリケーションだとか。いずれにせよ、睾丸画像を交換したりする、実にロクでもない世界であるわけでして、こりゃ、悪名高くなっちゃうのも当然の話でありますな。いけません。ちなみに僕が“WinMX”を始めたきっかけは、自分で書いた原稿やら、ジャズのジャケ絵なんかを、ひとりでも多くの人に見て貰いたい。…という純粋な願望に基づくものでありまして、それが証拠に共有フォルダには“jazz giant”のジャケ絵データだとか、本文の“htmlデータ”しか入れておりません。共有フォルダに違法なファイルを入れて、それをアップロード出来る状態にしておくと、それだけで法律違反になっちゃう。…という話を聞いて、ビビって“共有ゼロ”にしたんだけど、“WinMX”のユーザーというのは“共有ゼロ”の人に対しては極めて冷たくて、まともにはダウンロードさせてくれないと。そりゃそうだよね。人に危ない目をさせておいて、自分だけオイシイ汁を吸おうなんて、虫のよすぎる話だよね。それなりのリターンを得るためには、それなりのリスクを覚悟しなくっちゃ。…ということで、とりあえずどんなゴミでもいいから、ファイルを共有してさえすれば“その場しのぎ”にはなるぅ?…といったアサハカな考えで、 共有フォルダに“塩通”のコンテンツを入れてみましたぁ。…といった人とは志が根本から違っているわけでありまして。

 が、世の中、僕が思っていたほど甘いものではありませんでした。一言、「アホか。」と書かれた“IM”が送られて来たりしました。あ、“IM”というのは“WinMx”上で行う簡易的なメール機能のようなものだと思うんですけどね。“WinMX”におけるダウンロードは基本的に順番待ちが原則でありまして、ほかの人が落とし終わるまで、じっと行列に並んで待ち続けるという。よく言えば健気なんですが、効率が悪いこと、この上ありません。そこで登場するのが“IM”という機能でありまして、まず検索機能で自分が欲するファイル、例えば“(盗撮)女子中学生露天風呂でウキウキ.mpg”を所有しているユーザーを探し出して、その相手に“IM”を入れると。「あなたの所有している“(盗撮動画)女子中学生露天風呂でウキウキ.mpg”を下さい。」みたいな感じですな。すると大抵、無視させるようです。いや、僕はそのような怪しからんファイルを欲したことはないからよくワカランのですが、というか、人知れずこっそりと“(盗撮)女子中学生露天風呂でウキウキ.mpg”をダウンロード出来ないものか?…と思って、辛抱強く順番を待って行列に並ぶほうのタイプなので“IM”という機能は利用したことがないんですが、それでも運がよければそのファイルを持ってる相手と接続状態になることもあるんですけどね。で、僕はド素人だから全然知らなかったんですが、自分が所有しているファイルをこっそりダウンロードしようとしている相手の情報というのは、筒抜けになっているようでありまして。どのようなファイルを共有しているのか、あるいは何にも共有してないのか。…といったことは一目瞭然。で、共有ゼロの相手からの接続は自動的に切るようなアプリケーションもあるそうですな。ああん、せっかく行列に5時間も並んで、やっと順番が来たと思ったのにぃ。。。で、とりあえず共有ファイルを用意して相手にうまく繋がったからといって、まだ油断はなりません。相手が僕の共有ファイルを見て、落とすに足るだけの価値があると判断したら暗黙の了解ファイル交換が成立するわけでありますが、その価値、まったく無し。…と判断された場合には容赦なく切断されることになっちゃいます。ああん、せっかく共有ファイルまで用意したのにぃ。。。

 とまあ、通常は無視されるだけで済むんですが、よほど腹に据えかねるようなことがあると、「アホか。」という“IM”が送られてきちゃうという。そういえば一度、英語で書かれた“IM”が来たことがあるんですが、その内容を要約すると、「チミは“jpg”と“gif”ファイルしか持っていないぢゃないか。じゃ、接続は切っちゃうもんね。」…みたいな。すると何か?君は、“すけべ動画”と僕の書いた“オリジナル・ジャケ絵”を交換するのが嫌だとでもいうのか?そんな物事の価値のわからんヤツは、こっちから願い下げだ。…と思わずにはいられませんでしたが、いやあ、僕もそれはもっともな話だという気がするんですけどね。僕のやってることは、ほとんど詐欺に近いですもんね。…とまあそんなことで、1週間ほど順番待ちに並んでみても、何ひとつ落とせはしない“難攻不落”の状態になってしまって、ワラにもすがる思いで購入してみた『だから WinMX はやめられない』でありますが、いきなり、“看護婦の彼女と同棲生活”みたいな話が出てきて、僕は不快でした。関係ないやん! 僕はジャズの話を読みたいのに、なんで“WinMX”の話や?…みたいな。ま、要するに、この本の主人公は看護婦の彼女から呆れられるくらい、“WinMX”にのめり込んじゃったのでありました。…ということを言いたかったようなんですが、で、結果から申し上げると、“WinMX”で成功するコツは、とにかく人が欲しがるような共有ファイルをしこたま用意して、“IM”で交換相手に懇切丁寧にお願いすること。それに尽きますね。…って、それをしたくないから苦労してるんぢゃん!それにこの主人公は音楽ファイルだとか、パソコンのアプリケーションだとか、映画だとか、アニメだとか、ゲームだとかばかりに興味を持っているようで、肝心の“すけべネタ”の話があまり出てまいりません。スカしてんぢゃねえ! それに、「トホホ。」ぢゃねえ!…と、次第に文体のほうにまでイライラが募るようになってきて、いや、僕のように“リスクを犯さずして簡単にファイルをダウンロードする裏技”みたいなものを期待していた人にとっては、今ひとつ参考にならない本でありましたなぁ。。。

 ということで、“Winny”に寝返りました。これも機能的には似たようなファイル交換ソフトなんですが、“WinMX”みたいに1対1の接続ではなく、途中に第3者を経由することになるので、誰がどのようなファイルを発信しているのか特定されにくいんだとか。おまけにファイルは暗号化してやり取りされることになるので、この意味でも匿名性が高いと。いいぢゃん!…と思いましたね。ただ、初期設定が面倒…というのが難点なんだそうでありまして、でもまあ、僕くらいの技量があれば、余裕ぢゃん。…とタカをくくっていたら、いや、ことのほかクソ面倒でありましたな。興味のある人は ここ でも見ながらチャレンジしてみるといいと思いますが、いや、途中までは楽勝だったんですよね。が、しかし、“ポート開放”というところで蹴躓きました。接続した時に“ポート警告”というのが出ている場合は、“ポート開放”というのをしなければならない。…ということなんですが、何だかとてもクソ面倒くさそうなので、“ポート警告”出るなよ!…と神サマにお願いしながら接続してみたんですが、おおっ、“ポート警告”まるけやん! この時点で僕は無神論者になった次第でありますが、いや、都合のいい時だけ神サマに頼ろうとする、そのいい加減な心掛けがそもそも間違っているような気もするんですけどね。で、あえなく僕はルーターの設定に取り組まなければならなくなってしまったんですが、そもそもこのルーターは塩サバ2号が勝手に買って来て、勝手に設定していったものだから、説明書もなければ、要領もわからん…と。ま、幸いにも“Winny”の入門サイトには“ルーター別設定法”みたいなページがあるから大丈夫だと思うんですが、ちなみにウチのルーターはメルコ製の“BLR2-TX4L”というのでありました。で、“ルーター別設定法”を見ると、“BLR-TX4”“BLR2-TX4”“BLR-TX4S”“BLR3-TX4”“BLR3-TX4L”というのはあるんですが、よく見るとどれもこれも、僕の機種とは微妙に違うんですよね。でもまあ、“2”がなかったり、“L”がなかったり、“2”が“3”になっていたり、“L”が“S”になってたりするだけだから、どれも基本的には同じだよね?…と判断していろいろと試してみたんですが、いや、これがぜんぜん駄目なんですよね。焦ってワケもわからずに設定をいじくりまわしているうちに、インターネット接続まで不能になったりして、いやあ、余計な欲など出さねばよかった。…と反省することしきり。ま、ネットのほうは何とか復旧することが出来たんですが、僕は“Winnyド素人”の象徴である“Port0”という状態で使用することを余儀なくされてしまいました。いや、これでも何となく動いてはいるんですが、“ノード情報”の“ポート警告”という赤い文字を見る度に、心の奥がチクリと痛むぅ。。。

 が、僕は諦めませんでした。ルーターのメーカーサイトから取扱説明書をダウンロードするなど、たゆまぬ努力の結果、2日目にしてようやく“Port0からの脱却”を成し遂げたのでありました。いやあ、人間、努力すれば報われるものなんですなぁ。で、“Winny”の使い心地はというと、これはもう、快適の一言です。今まで“WinMX”であれほど苦労していたファイルが、いやあ、落ちる落ちる。ちなみに“Winny”というのはダウンロードした情報がキャッシュに蓄積されることになり、そのキャッシュファイル共有ファイルとして、自動的に誰かのところへアップロードされていくことになります。つまりキャッシュを定期的に消去しない限り、“共有ゼロ”という状態はあり得ないわけでありまして、その分、ダウンロードのほうもスムーズに行くんでしょうが、いや、おかげで1晩で5GBくらいあったハードディスクの空き容量がダウンロードファイルキャッシュファイルで一杯になっちゃいましたがな。“WinMX”みたいな一本釣り方式の他に、キーワードを入れておくと検索からダウンロードまで自動的にこなしてくれる機能もあって、同じファイルが何度も落ちちゃうという欠点もあります。ま、これは設定次第で何とかなるんでしょうが、もっと始末が悪いのは“騙しファイル”の類ですな。ファイル名と中身がまったく一致していないヤツ。ピンボケ気味のメガネ男の顔。オメーの顔はもう30回くらい見たんだって! 恐らく“WinMX”で意図がよくわからんジャケ絵を落としちゃった人も、似たような心境だったんでしょうなぁ。ちなみに出回っているファイルは“WinMX”も“Winny”も、ほとんど同じであります。で、あと、注意しなければならないのはウイルスの跳梁跋扈でありまして、いや、落としている ソフトがあまりにもロクでもないものであるのは原因なんでしょうが、“ウイルスバスター”に山のように引っ掛かって、何だか空恐ろしい限り。そのうち、皆様にもご迷惑をお掛けすることになるかも知れませんので、予め謝っておきますが、いや、謝ってすむ問題ではない!…という気がしないでもないんですけどね。

 とまあそういうことで、“塩通”の更新が1週間以上も滞るようなことがあれば“猥褻物公然陳列罪”で引っ張られたと思って、僕のことは忘れて下さいね。目指せ、裏ビデオ販売で捕まった横濱のラーメン屋、吉村屋のオヤジ

 とまあそういうことで、今週から何となくトロンボーン編になります。地味ですねー。人材不足ですねー。恐らく3回くらいで終わっちゃうと思いますが、手始めはJ.J.ジョンソン。こと日本ではあまり人気のないトロンボーン奏者なんですが、完璧すぎてつまらないとか言われて。例えば僕の書いたジャケ絵なんかも、あまりにも本物そっくりて面白みに欠ける…みたいなことを言われても嫌なので、わざと実力よりも少し下手に書いたりしてるんですが、実力があり過ぎるというのも、何かと気を遣うものでありますなぁ、お互いに。…と、ちょっぴりJ.J.には同情したい気持ちがあったりもします。で、ブルーノートの第1集、『ジ・エミネント・ジェイ・ジェイ・ジョンソン・VOL.1』 でありますが、何とも古めかしいジャケットデザインと相まって、あまりソソられるものがありませんな。試しに聴いてみたところ、1曲目がわりとよかったので取り上げてみることにしたんですが、2曲目以降はどうも今ひとつなところもあって、恐らく今日も曲解説が充実しないものと思われます。例のごとく、後半の第1カラムもどうでもいい話で行数を稼いでおきましょう。“鉄筋屋と型枠屋物語その3)”。正式に数えたわけではないんですが、おそらくそれくらいになるハズです。で、まず“鉄筋屋”でありますが、相変わらず親方は機嫌が悪いですなぁ。先日、鉄筋屋の間隙を縫って電線管を入れる仕事があったんですが、いや、鉄筋工事と型枠工事、その隙を窺ってゲリラ的に敢行される電気工事というのは1階床、1階壁、2階床、2階壁、2階天井…みたいな感じで順番に行われることになるので、なかなか鉄筋屋や型枠屋と縁を切ることが出来ないワケでありまして。で、先日、鉄筋屋の間隙を縫って電線管を入れる仕事をしようとしたら、「今は近付いたらアカン!」と、監督の栗田クンに制止されました。鉄筋屋の機嫌が悪いから。…というのがその理由でありました。以上で鉄筋屋のお話はおしまい。

 続いて型枠屋です。いつも若手職人を怒鳴りつけている親方と、いつも親方に怒鳴りつけられている。ちょっぴり“ちょろこい”雰囲気の漂う若手職人。それに最近では2人くらい若手の職人がつくようになりました。そのうちの一人の顔がもう、とてつもなく怖いんですよね。丸刈りにサングラス姿で、全身からアチラ系の気配が漂っております。で、先日、屋上に組まれた鉄筋の上を歩いていたら、足元で何やらポキっと折れる音が。みると、型枠屋さんが使う面木(めんぎ)が真っぷたつに折れておりました。僕は逃げました。逃げるが勝ち。この言葉は何時だって僕のモットーでありまして、いや、だって、怖そうな型枠屋の兄ちゃんに怒鳴られたりしたら嫌だしぃ。そして僕はそっと階下へと降りていった次第でありますが、しばらくして、ほとぼりが冷めた頃を見計らって屋上に上がってみると、ちょうど怖い型枠屋のお兄さんが、監督の栗田クンに、「そこに面木、ありませんでしたぁ?」…と尋ねているところでありまして。ほとぼりが冷めた…どころか、もっともタイミングの悪い時に来ちゃったようでありまして。これは下手に隠し立てをすると、かえってヤバい。…と判断した僕は、恐る恐る、「さっき面木を踏んじゃったみたいでぇ、何か折れちゃったみたいでぇ。。。」と申し出ると、やさしい声で、「うん、別にいいよぉ。」という答え。見た目によらず、いい人だったんだね!…というのがこの話の結論なんですが、栗田クンも、「大工さん、見た目は怖いけど、鉄筋屋と違って優しいからぁ。」…と言っておりましたが、正にその通りでありました。あ、そうそう。栗田クンが使っている鉄筋結束用のハッカーを見る機会があったんですが、あまりにも安っぽくて、僕が購入を見合わせたハッカーを使っていたんですな、栗田クン。いや、この人も何だか実にいい人なんだぁ。…と思ってしまいましたが、ということで、本題に入りましょう。

 まず、1曲目はJ.J.のオリジナルの 「ターンパイク」 という曲です。このアルバムは2種類のセッションから成っているんですが、まずはクリフォード・ブラウンジミー・ヒースの参加した53年のほうの演奏であります。リズム・セクションは“初代M.J.Q.”ですね。「ターンパイク」というのは“有料道路のことで、植民地時代のアメリカで、道路をパイク(遮断棒)でふさぎ、料金を払うとそれをターンさせて通したことからこの名前がある。”…とのことでありますが、この演奏から3年後、ブラウニーがペンシルヴァニアのターンパイクで土手に激突して死んじゃったことを思うと、何か運命的なものを感じずにはいられない。…って、いかにも安手のライナーノート書きが言いそうなことでありますが、いかにもターンパイクらしいスピード感に溢れた3管ハーモニーがいい感じですね。サビの部分のハモリ具合など、53年モノにしては実にハード・バピッシュでありまして、さすがは才人のJ.J.らしいアレンジだと思います。愛人にするには今ひとつだけど、祭神として崇めるには最適。…というほどの才人ですからねぇ、この人。いや、何だかよくわかりませんけど。で、ソロ1番手はブラウニーなんですが、溌剌さと、卓越したテクニックと、澱みのないフレージングと、歌心。この人の持っているよさが存分に発揮された素晴らしいソロだと思います。これを聴いた時点で、このアルバムは買いや。…と思ってしまったのぉ。…と、川崎麻世の妻のカイヤも言っておりました。で、続いてはジミー・ヒースのテナー・ソロなんですが、これがまた何と言うか、実にワイルドでバップ・スピリッツに溢れておりまして、いや、地味系のジミー君にもこんな一面があったんですな。少し見直しました。ソロ3番手のJ.J.は相変わらずのテクニシャンぶりで、この楽器らしいモタツキ感が微塵も感じられません。立派です。で、ソロ4番手はジョン・ルイスなんですが、一瞬、ホレス・シルヴァー?…と思ってしまうようなノリのよさでありまして、いや、きっちり系のルイス君にもこんな一面があったんですな。少し見直しました。で、テーマの再現部はドラム・ソロやベース・ソロを巧みに取り入れたりして、編曲的にも完璧な出来栄えなのでありました。

  2曲目、「ラバー・マン」。重厚な3管ハーモニーによる導入部には三菱重工の社員も思わず納得。…といった感じなんですが、物すごくプライドが高い“重工人間”を納得させるとは、JJもやりますな。クラッシーではなかなかこうはいきません。三菱重工のエンジニアが読んでそうにもありませんもんね、“クラッシー”。ま、多分、“JJ”も読んでないとは思いますけど。“女性自身”は読んでいる可能性があります。決してギャル向きという作りではないのに、何故か雑誌は“女性自身”しか置いてない喫茶店とかラーメン屋とか、意外とあったりするんですよね。新聞が出払っていたら、暇つぶしには“女性自身”を読むしかないわけでありまして。で、「ラバーマン」 なんですが、テーマ部はJJのワン・ホーン演奏になります。何かこう、余裕を感じさせる吹きっぷりですよね。途中、ホーンのアンサンブルが絡んでくるあたり、実にモダンな作りなモダン焼き屋。…といった感じなんですが、お好み焼きに焼き蕎麦をいれて、それのどこがモダン焼きなんや?…という疑問は未だに僕の心の中では解決しておりません。煙草の火を手の甲に押し当てて、根性焼き…というのは心から納得がいくんですけどね。相当の根性がなければ、そのような“セルフSM”みたいなことは出来ません。でもって、中間あたりでジョン・ルイスのソロを聴くことが出来るんですが、前曲とは一転して、繊細なタッチのザーサイ。…といった感じで、実にいい出来だと思います。いや、あまり好きではないんですけどね、ザーサイ。大学受験の時に泊まった東京のホテルは夕食券付きのプランだったんですが、中華料理の店しかなくて毎日がザーサイで、もう、いい加減になーさい。…みたいな。で、ピアノ・ソロのあとのホーン・アンサンブルはちょっぴりくどいような気がするんですが、とりあえずのところ、テーマに戻って、おしまい。

 で、今、気が付いたんですが、このアルバムって10曲も入ってたんですね。真面目に曲解説などしている場合ではありませんね。ということで、 「ゲット・ハッピー」 でありますが、何か変な曲ですよね。変な曲ではありますが、それなりにアドリブ・パートは楽しめるのがジャズのいいところでありまして、えーと、まずはJ.J.ですか。2コーラスのソロは機敏だ。…と原文ライナーにあるように、彼のソロは2コーラスです。でもって、機敏です。尿瓶ではありません。で、2番手はジミー・ヒース。頑張ってます。ソロ3番手は“クリフォード・ブラウンです。クリフォード・ブラウンのソロは連続性の感覚がよく”…と原文ライナーにあるように、彼のソロは連続性の感覚がいいと思います。…って、本格的に書くことがなくなってまいりましたが、テーマに戻って、おしまい。で、4曲目の 「スケッチ・ワン」 はジョン・ルイスの曲ですな。僕は“スケッチ”という単語を見ると、反射的に“透け透けえっち♪”という言葉が脳裏に浮かんでくるんですが、そういう症状を呈するのは僕だけでしょうか?僕だけなんでしょうな。で、これはアレです。いかにもジョン・ルイスらしい作品です。妙に凝っているというか、その割には今ひとつ面白みに欠けるというか。…などと失礼なことを言ってはいけません。大作である。…と、とりあえず褒めておきましょう。とってもヨーロピアンな気配が漂うハワイアン。…といった感じでありまして、いや、うちの近くにあるんですけどね、“ヨーロピアン”という名前の喫茶店。が、看板に書かれた絵が“海と砂浜と太陽”…って、いったいヨーロッパのどの国をイメージしているんだ?…という疑問を払拭することが出来ないんですが。いや、きっと“ヨーロピアン”と“ハワイアン”を勘違いしているだけだと思いますけどね。で、演奏のほうはというと、アレンジがちょっとクド過ぎぃ。…といった気がしないでもありません。2曲目以降はどうも今ひとつ…と冒頭に書いたのは、全体的にそういう傾向にあるからなんですが、あ、またウイルスが発見されましたな。どうやら“WORM_ANTINNY.A”というタイプが跋扈しているようなんですが、えーと、特徴としては“これはワームに分類される「トロイの木馬型」不正プログラムです。インターネット上でのファイル共有ソフト「Winny」の仕組みを利用して自身を他のユーザに対して頒布するワーム活動を行います。”…って、なるほど、ウヨウヨと蔓延っているハズですな。ま、とりあえず感染しても、さほど一般の人様に迷惑をかけるようなことはなさそうなので一安心かと思われますが、そうと知らずに“Winny”に接続して、ばい菌を撒き散らしている輩がいるんでしょうな。いや、困ったものです。

 で、4曲目の 「カプリ」 はジジ・グライスのオリジナルだそうです。いい曲を書くんですよね、ジジ・グラって。股座(またぐら)というのもいいですけどね。どこがどういいのか?…と聞かれると困るんですが、何となくいいです。で、「カプリ」。タイトルからして、何となくラテン系?…とか思っていたら、わりと普通の4ビート系でありましたが、シンプルな3管アンサンブルがいいですな。クドいのはもう飽きたって感じぃ? で、ソロ先発はJ.J.です。悪くないですよね。で、ソロ2番手はジミー・ヒースなんですが、原文ライナーではレナード・フェザーが彼の“リトル・バード”という愛称について触れたりしております。日本ではさほど馴染みがない愛称について触れるのはどうか?…という気がしないでもないんですが、ま、これはアメリカ人向けに書かれたものだと思うので、やむを得ない一面もあるんですけどね。僕だって、中沢クンのあだ名は“ターボ付き”だった。…みたいな、アメリカ人が見たら、それがどうした?…と言いたくなるようなネタを書いているわけだから、お互い様だと思います。…とか言ってるうちにブラウニーのソロになっちゃいましたが、彼のプレイは相変わらず溌剌としていて、何より。で、ジョン・ルイスのソロがあって、テーマに戻っておしまい。全体的にソロ・パートが短めで、やや物足りない気がしないでもありません。で、続いては歌物の 「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」 です。いやあ、僕、この曲、好きなんですよね。…と、原文ライナーを書きながら勝手に書き進めていたら、いきなり超アップ・テンポの演奏が始まりました。この曲をこのテンポでやるなんて、何て斬新なアイデア!…としきりに関心していたんですが、テーマが始まって、実はまったく違う曲だったことが判明しました。どうやら 「イット・クッド〜」第2集のほうに編入されたようでありまして、ということで、ブラウニー入りのセッションのほうは、これでおしまい。

 で、もうひとつのセッションもメンバーの豪華さでは負けておりません。ホーンこそJ.J.の1本だけで若干地味な印象はありますが、ピアノには当時まだバリバリの新人だったウイントン・ケリーを起用して、ベースは何とチャールス・ミンガス。でもって、サブーのコンガを加えたところに、トロンボーンのワン・ホーンという編成の地味さを払拭しようとする意図が窺え、これでサブちゃんでも入っていれば完璧だったんですけどね。いや、北島三郎ではなくて、三河屋さんちの御用聞き。いや、そんな地味なキャラを加えてみたところで、どうなるものでもないような気がしないでもないんですけど。ま、口笛で「モーニン」を吹くぐらいの芸当は出来ますかね?…って、それは酒屋の御用聞きではなくて、蕎麦屋の出前持ちですかい。で、既に始まっている超アップ・テンポの曲なんですが、その正体はジェイ・ジェイのオリジナルの 「ジェイ」 でありました。彼も相当、曲名を付けるのに苦慮したようでありますが、バリバリの新人ケリーがイントロから大いに張り切っております。気分は“ディジー・アトモスフィア”って感じぃ? で、J.J.がコンガの軽快なリズムに乗って、ノリのいいテーマを歌い上げ、そのままアドリブ・パートへと流れていくわけでありますが、知性派の彼にしては珍しく勢いだけで押し切ったようなプレイには好感が持てますね。続くケリーも頑張っております。で、ボントロとドラムス及びコンガとの8バースがあって、J.J.がどこかで聴いたことがあるようなメロディを引用しまくるようなパートがあって、おしまい。

 次。「オールド・デビル・ムーン」。46年のミュージカル 『フィニアンの虹』 の中の曲。冒頭、唸りをあげるミンガスの骨太ベース。ラテンのリズム。ケリーのユーモラスなコンピング。コンガの軽快なリズム。J.J.の流麗な中にも余裕を感じさせる吹きっぷり。…と、この演奏の特徴を簡潔にまとめてみましたが、いや、次第に文章を考えるのが面倒になってきまして。ということで次です。「イッツ・ユー・オア・ノー・ワン」。冒頭、ケリーのイントロが何やらセロニアス・モンク的に響くところが面白いですね。わはははははははは。…って、このヤケクソのような笑いが出てくると、この原稿も終末に近いわけでありますが、演奏自体は実にしみじみとしたバラードでありますな。この曲は超アップ・テンポで演奏されたものしか聴いたことがなかったんですが、原曲はとってもスィートでラブリーなバラードだったんですな。マイルスあたりにミュートで吹かせたら、かなりいい感じになりそうです。いや無論、J.J.のこの演奏だって悪くないんですけどね。こと日本では、J.J.はつまらん。フラーは奥が深い。…みたいに捉える傾向があるような気がするんですが、こういう演奏を聴いている限り、J.J.フラーも一緒やん。…みたいな。いや、ただ僕の耳が悪いだけだと思いますけど。で、中間部で聴かれるケリーのソロも実にいい感じです。冒頭ではモンクだったんですが、ソロ・パートではしっかりと自分を取り戻しておりますな。で、9曲目は 「トゥ・マーヴェラス・フォー・ワーズ」 という曲です。注目すべきところが二点ある。第一は強烈なバランス2人のドラマーの混じりあい。第2は、J.J.の一部のソロのバックでの3拍の休止の効果。…ということらしいので、そういうところに注目しながら聴いてみましょう。・・・。今ひとつよくわかりませんでした。とにかくまあ、軽快なミディアム・ファストの歌物ナンバー…といった感じでありまして、それはそれでよかったと思います。

 ということで、いよいよラストです。 「コーヒー・ポット」 というJ.J.のオリジナルでありますな。シンプルなアップ・テンポの曲でありまして、メロディ自体は可もなし、不可もなし。というか、ほとんどアドリブだけで成り立っているような曲ではなかろうかと。コンガのチャコポコ・リズムもそろそろ飽きてまいりましたが、ま、これで最後だしぃ。…と思って諦めるより他ありませんね。が、J.J.のソロ自体は極めて快調にして、好調にして、文鳥。続くケリーもアップ・テンポをモロともしないモロ画像。…といった感じで大いに楽しめます。原文ライナーにも書いてあるとおり、かなりパウエルを思わせるようなスタイルでありますな。で、ボントロとドラムス及びコンガとの4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。あ、一応ちゃんとしたテーマのある曲だったんですな。ということで、ちなみにこのセッションではもう1曲、「タイム・アフター・タイム」も演奏されているようなんですが、第2集のほうに編入されている模様です。興味のある人はそちらのほうを聴いてみるのも一興かと。ハンク・モブレイやホレス・シルヴァーの参加したセッションが収録されている模様です。ただし、収録時間不足から 「ターンパイク」「カプリ」 の別テイクも入っているようで、アルバムの作りとしては、やや無理があるような気もします。んなことでまあ、今日は以上です。

【総合評価】

 ぱっと聴いた時、2曲目以降は今ひとつかなぁ。…という印象があったんですが、それは間違っておりました。全体的にかなり良質なサウンドに仕上がっているのではなかろうかと。特にブラウニー抜きで期待度が極めて低かった後半セッションの踏ん張りが、とてもよかったと思います。


INDEX
BACK NEXT