SWAMP SEED (RIVERSIDE)

JIMMY HEATH (1963/3/11,5/28)

SWAMP SEED


【パーソネル】

DONALD BYRD (tp) JULIUS WATKINS (flh) JIM BUFFINGTON (flh) DON BUTTERFIELD (tuba) JIMMY HEATH (ts)
HAROLD MABERN (p) <#1,2,4> HERBIE HANCOCK (p) <#3,5,6,7> PERCY HEATH (b) ALBERT HEATH (ds) <#1,2,4>
CONNIE KAY (ds) <#3,5,6,7>

【収録曲】

SIX STEPS / NUTTY / MORE THAN YOU KNOW / SWAMP SEED
D.WALTZ / JUST IN TIME / WALL TO WALL

【解説】

 僕はが弱いです。は大丈夫です。別段、食べても蕁麻疹が出るようなことはありません。ま、さほど好きでもないんですけどね。例えば一人が代表してコンビニ弁当を買いに行くということになった場合、面倒なので「別に何でもいい。」と言って送り出すことになるんですが、ソイツが買ってきたのが“しゃけ弁”だったりすると、心底がっかりしてしまいます。“カラアゲ弁当”買ってこいよ!…と思ってしまいます。ま、確かに口では「何でもいい。」と 言ったんだけど、本当はカラアゲを食べたいんだという空気を察しろって!…と言いたくなっちゃいます。いや、普段から何かと気のきかないヤツなんですよね。…って、文句を言うくらいなら、最初から「カラアゲ買ってこい。」って言えよ!…という気がしないでもないんですが、メニューを限定したりして、人間の小さいヤツだと思われたりしても嫌ですしね。で、逆に反対の立場になった時は気をつかいますよね。人間性を問われるというか、“パシリ”の真価を試されるというか、みんなから「使えねぇ“パシリ”や。」と思われても癪なので、「何がいいっすかぁ?」と注文を取ることにしているんですが、返ってくる答えはいつもお決まりでありまして、「何でもいい。」…と。自分の食いたいものくらい、はっきり言えよ!…と思わずにはいられませんが、そういうヤツに限って“シャケ弁”を買っていったりすると、あからさまに不満を顔に現したりするんですよね。いかにも「カラアゲのほうがよかったのにぃ。。。」と言いたげで、そうならそうと最初から言えってば!

 とまあそういうことで、僕は“”もしくは“シャケ”に対しては、かような立場を取るものであるわけですが、無論、“パシリ”で買いに行かされる場合には“シャケ弁”をひとつ買ってくることを忘れたりはしません。人間、5人も集まれば“鮭好き”の人が1人くらいは混入しているものでありまして、自分があまり好きではないから買ってこないというのでは、人間性を激しく疑われることになってしまいます。“幕の内”×2個、“シャケ弁”、“カラアゲ弁当”、“トンカツ弁当”×各1個…といったところが無難なところでありましょう。で、僕はとっても性格が謙虚なので、遠慮して「僕、余ったのでいい。」というようなことを申し述べることになるんですが、そういう時に限って“シャケ弁”が余ったりするんですよね。いつも“シャケ”を選択するオジサンが。今日に限って「たまには“カラアゲ”にすっかぁ。」…とか言い出して、“シャケ”食えって!その“カラアゲ”は俺のものだって!…と心の中で叫んでみても後の祭り。これからは“幕の内”を1個にして、“カラアゲ”を2個にしようと心に誓った次第でありますが、いやあ、弁当ひとつ買いに行くにも何かと気苦労が絶えないものでありますなぁ。とまあそういうことで、今日は“僕はに弱い”というテーマでお届けしたいと思います。どれくらい弱いのかというと、350ミリの缶ビールを一気には飲みきれない…と言っておけば実力の程をわかっていただけようかと思いますが、たまに出張でホテルなんかに泊まって風呂上りに自販機で缶ビールを買ってくると、半分を過ぎたあたりで限界が訪れてしまいます。最大許容量はおそらく250ミリくらいなんぢゃないっすかね?そこでまあ、酒の席でビールを勧められると、「今日はクルマで来ているから。」とか、「花粉症が悪化するから。」とか、「それに僕、痛風のケもあるしぃ。」とか言って、なるべくなら飲酒を避けるようにしているんですが、最近ではプリン体を大幅にカットしたビールとかも出てますしね。それに痛風のケがあると言いつつ、この前、“でかねた寿司”で“ぼたん海老”を食べてたぢゃん!…と言われれば返す言葉もなく、ま、それはともかく、僕はさほどお酒が好きではないので、お酒に関する知識も極めて貧弱でありまして、ほとんど無知の領域に足を突っ込んでいると言ってもよろしいのではないかと。これではお洒落なキャバクラとかに行っても…って、いや、キャバクラに“お洒落”という形容はあまり似合いませんな。お洒落なジャズ・バーとかに言っても…と訂正しておきますが、何を注文したらいいのかよくわかんなくて、大いに動揺することになってしまいます。特にカクテルの類に関してはまったく何の知識も持ち合わせてはおらず、メニューに書かれた膨大なリストを目の前にして、呆然自失の境地に陥ってしまいます。

 これではいかん!…と危機感を抱いた僕は、一念発起してホッケの塩焼きでも注文しようか?…と思ったりもしたんですが、そんなもん注文してみたところで何の解決策にもならないような気もするし、それに僕、シャケとかホッケの類はあまり好きじゃないしぃ。そこでまあ、ホッケはヤメにして…、というか、最初から頼む気はなかったんですが、あとはえーと、一念発起してホッキ貝を食べる…とか。ということで買ってしまいました、ザウルス文庫の『背徳図鑑』。僕の尊敬する宇能鴻一郎センセイの著作でありますが、あたし、レイコ。人妻看護婦なんです。20年前、大学一年生の夏、軽井沢の別荘の浴室で、上級生の和彦に…って、そんなことはどうでもいいですね。それにこの本、“人妻看護婦”というフレーズにはソソられるものを感じたんですが、20年間に大学一年生ということは、38くらいぢゃん。…ということに気が付いて、結局買うのをヤメたようが気もします。いや、38歳なんてのは“ばりばりストライク・ゾーン”なんですが、ま、お金を払ってまでどうのこうの…というほどのものでもないかな?…という気がしないでもありませんでしたので、そこでまあ、買ってみました 『カクテルカタログ ベース別セレクション1』 と、 『同2』 美しい画像と広範な知識を満載した、クールな一冊。涼しげなカクテルの写真が夏バテした心を癒してくれます。…とありますが、確かにカクテルというのは涼しげでいいですよねぇ。ま、NHKの『ミュージックカクテル』の司会をしているパパイヤ鈴木はさほど涼しげではない。…というか、かなりむさくるしい…という例外はあるんですが、パパイヤジュースを使ったトロピカル系のカクテルの名前にありそうですけどね、“パパイヤ鈴木”。あとはえーと、中日ドラゴンズの正捕手が考案したオリジナル・カクテル、“タニシゲ”なんてのも涼しげでいいですよね。タニシエキスとかも入っていて、体にもよさそうなんですが、何だかとてつもなく不味そうなところが欠点だと言われれば、確かにそんな気はしますけどね。で、 『カクテルカタログ ベース別セレクション1』 には、ウイスキーブランデージンウォッカをベースにしたカクテルが掲載されております。えー、僕のカクテルに関する知識がいかほどのものであるかというと、ウイスキー・ベースで言うと、まずは“ハイボール”というのがありますな。2ヶ月ほど前、都内某所で某ロリ声人妻と一緒に行ったお洒落なジャズ・バーでは、アメリカ帰りのオネーサンが、「“ハイボール”って焼酎じゃないですよね?」などと言っておりましたが、即座に「ちゃうやろ!」と答えられるほど、僕の知識は卓越したものでございます。もっとも、ウイスキーをソーダで割っただけのものが、果たしてカクテルと言えるのかどうかサダカではありませんが、続いてジン・ベースで言うと、“ジントニック”というのがありますね。ものすごく無難なので、僕がお店で注文するときの定番となっておりますが、あと頼むとしたらウォッカ・ベースの“スクリュードライバー”とか。これは確か、 ウォッカにオレンジジュースを混入したものではなかったかと。昔、ロシアの工員がドライバーでかき混ぜて作ったからこの名前になったそうですが、汚いことすんな!…と思わずにはいられませんね。マンポン技士の使ってるドライバーなんか、ウンコが付着しているに違いないわけでありまして、もっとも“スクリュードライバー”を考案した工員の職業がマンポン技師だったかどうかはサダカではないんですが、ま、箸を忘れて蛍光サインペン2本で“ぺヤング・ソース焼きそば”を食べた僕も似たようなものではありんですけどね。

 で、この本ではまず、ベースになるウイスキーの基礎知識について書かれております。考えてみると僕はウイスキーに関しても極めて疎い知識しか持ち合わせていないのが実情でありまして、麦を発酵させて、蒸留したもの?…といった程度のことしか分かっておりません。ウイスキーの銘柄となると完全にお手上げでありまして、「私、最近、アイリッシュ系に凝ってるのぉ♪」とか言われても、僕にはさっぱり何のことだか。ではちょうどいい機会なので、ちょっとお勉強しておきましょう。えーと、主原料は麦芽と穀物なんですな。それらの原料に酵母を加えて発酵させて、過熱蒸留して粗アルコールを採って、さらに蒸留を繰り返した挙句、樽に詰めて貯蔵熟成させる…と。成るほど、樽に入れるわけなんですね。要するに“黒ヒゲ危機一髪”みたいなものであるわけですな。で、“世界の5大ウイスキー”というのがあるんだそうです。スコッチウイスキーアイリッシュウイスキーアメリカンウイスキーカナディアンウイスキージャパニーズウイスキーの5種類がソレにあたるそうなんですが、ジャパニーズも一応5本の指に入れて貰っているんですね。立派なものです。日本映画の『眠り狂四郎シリーズ』はアチラでも人気が高く、アメリカでは“エロチック侍”(←けっこうエロいらしい。)と呼ばれているそうでありますが、日本のウイスキーもまんざら捨てたものではありませんな。で、スコッチウイスキーは更にモルト・ウイスキーグレーンウイスキーブレンデッドウイスキーの3つに分けることが出来るそうです。中でも“グレーンウイスキー”というのは夜遊びに耽って酒を飲みまくり、異性と不純な交遊に励んでいるような青少年にも安心なウイスキーとして知られておりまして、「グレーンを飲む子は、グレん。」と、学校関係者の間でも高く評価されているそうです。最も、夜遊びに耽って酒を飲みまくり、異性と不純な交遊に励んでいる時点で充分にグレているんぢゃないか?…という気がしないでもないんですけどね。要するにイギリス北部のスコットランドで造られるウイスキーが“スコッチ”というわけで、僕もスコッチなら、すこっちくらいは飲んだことがあります。で、“アイリッシュ系”というのはアイルランド島で造られているウイスキーのことなんですな。大麦麦芽のほか、ライ麦。オー紬…ぢゃなくてオーツ麦、未発芽麦芽、小麦などを原料にして、ピートを用いず、単式蒸留機で3回蒸留して、ホワイトオークの樽で3年以上熟成されると。“ピート”というのが何なのか。無知な僕にはさっぱりわからんのですが、ピートによるスモーキーフレーバーがなくて、大麦の香りが高くて、コクがあって、口当たりがなめらかである…と。はあ、そうですかぁ。とりあえず「私、最近、アイリッシュ系に凝ってるのぉ♪」と言われたら、「ピートによるスモーキーフレーバーがなくて、大麦の香りが高くて、コクがあって、口当たりがなめらかだよねっ♪」と答えておけば、話が噛み合うわけでありますな。ついでに、「グレーンを飲む子は、グレん。」の話もしておけば場が盛り上がることは必至でありますが、もしその発言が元で周囲に寒い空気が漂ったとしても、僕は責任を持ちません。

 とまあそういうことで、何らオチが付く予定はないんですが、とりあえずウイスキー・ベースのカクテルをいくつか紹介して、今日はおしまいにしたいと思います。えーと、まずは“マンハッタン”ですか。マティーニが“カクテルの王様”なら、マンハッタンは“カクテルの女王”といわれる…と。いや、いいですな。王様に踏まれたりするのは不本意でありますが、女王様になら踏まれてもいいかな?…とか思ってしまいますもんね。ムチで打たれて、ああん♪ 亀甲に縛られて、うふん♪…といった気配が“カクテルの女王”という異名から伝わってくるわけでありますが、あるいは“女王様の聖水”とかも混ざっているのかも知れませんね。マンハッタンの夕暮れをイメージして作られたそうでありまして、スイートベルモットが夕暮れの色合いを、マラスキーノチェリーが赤く燃えながら沈む太陽を表現しているのだろう。…とのことでありますが、写真を見ると成るほど、赤いお酒の中に赤く燃えながら沈む太陽のような真っ赤なチェリーが沈んでおります。しかしそれにしても“マラ好きのチェリー”って、そんなものをお酒に沈めたりしてもいいんですかね?…と思っていたら、このカクテルにはもうひとつ、“アンゴスチュラビターズ”という苦味成分(←多分)も加えるそうでありまして。ぱっと見た時、最初の“”が“”の字に見えて、3文字目の“”の濁点がよく見えなかったので、ちょっとドキドキしちゃいました。…ということを告白して、次に参りましょう。“ドライマンハッタン”。これはおそらく“マンハッタン”をドライ(辛口)にしたものであろうと思われ、ネタ的にはさほど美味しくはありませんな。次。“ロブロイ”。これは“マンハッタン”のベースをライウイスキーからスコッチにしてみました。そんだけ。…といったものであるようです。マラ好きちゃんもちゃんと入っておりますが、先ほどの“ドライマンハッタン”にはマラ好きちゃんの替わりにオリーブを使うようです。実につまらんカクテルであると言わざるを得ませんね。で、後はネタになりそうもないのがいくつか続いておりますので無視するとして、続いては“オールドファッションド”ですか。これはアレですね。「アイム・オールドファッションド」というスタンダードがあるおかげでわりとお馴染みであるわけですが、その正体は深い謎に包まれております。というか、僕が知らないだけの話でありますが、作り方を見ると、ここにもマラ好きちゃんが顔を出しておりますな。何とかこの貞操観念の著しく欠如したチェリーをネタに“落ち”まで持っていけないか?…と考えているんですが、これだけ頻繁に登場しちゃうと新鮮味がありませんよね。他の手を考えましょう。ということで、ブランデーベースです。ウイスキーベースのカクテルには前半終了の切り札になるようなものがまったくありませんでしたので、ブラちゃんに賭けるしかありません。えー、ブランデー・ベースのカクテルで一番有名なのは“アメリカン”でありまして、作り方はとっても簡単です。ブランデー、水で割ったら、アメリカン。…というのがソレなんですが、こういうのはただの水割りであって、カクテルとは言わんのですかね?じゃ、“電気ブラン”というので攻めてみましょう。ちなみにブランデーというのはブドウなどの果物を発酵させて蒸留したものでありますが、ま、要するに“煮詰まったワイン”とでも申しましょうか。で、ブラ・ベース・カクテルの最初には“サイドカー”というのが出てまいります。かつて“ちょっと小粋にカクテル俳句”を募集した際、昆布青年が詠んだ、「股通る 素チンが再度 かわされる」という句に読み込まれたカクテルとして名高いですね。ちなみに“マタドール”“スティンガー”“サイドカー”の3題詠みであるわけですが、“素股の極意”を詠み込んだ作品として、高く評価されてしかるべきだと思います。3題をひとつにまとめた上、5−7−5の定型を破綻させずにこれだけリアルな情景を読み込んだ作者の才能に脱帽せざるを得ません。しかしここは正直に「素チン」ではなく「粗チン」であると告白すべきだったのではないでしょうか。…と、かれい技士が論評しておりますが、いや、いくらなんでもWeb上でそこまで他人の欠点を暴露するというのはどうか?…という気もしますけどね。この一文が載って以来、昆布青年は『塩通』から姿を消してしまったわけでありますが、某レーザー技士の心ない一言が多感な青年の心をいたく傷付けてしまったに違いなく、あ、そういえば“電気ブラン”の話はどこにいっちゃったんですかね?ま、別にどうでもいいんですけどね。で、あとはえーと、“アレキサンダー”、“スティンガー”、“ニコラシカ”、“ビトウィンザシーツ”、“チェリーブロッサム”あたりが代表的なところでありますが、とある知り合いのバーテンダーにブランデー・ベースのカクテルを作るコツを尋ねてみたところ、即座に「あまりシェイクし過ぎないことだね。」という答えが返ってまいりました。その心は、「ブランデーだけに、あまり振らんでええ。…ってか?」

 僕がその夜、ひどく悪酔いしたのは言うまでもありません。

 ということで、今日はジミー・ヒースです。パーシージミーアルバートの“ヒース3兄弟”の一員として、そこそこ有名でありますが、3人の中ではいちばんがジミー地味ですよね。いや、アルバートパーシーも地味なので、兄弟揃って地味…ということも言えるわけでありますが、いやあ、巷では大ブレイクしてますなぁ、「だんご3兄弟」。まず、“だんご”と“タンゴ”とを掛けたアイデアが秀逸でありあますが、次回作はルンバのリズムに乗せた「ルンペン3兄弟」、もしくはスカのリズムに乗せた「カス3兄弟」あたりですかね?…と思っていたら、あっという間に“だんごブーム”は過ぎ去ってしまいましたが、ジミー・ヒースという人は根が地味なせいか、日本での人気の盛り上がり具合は今ひとつ地味ですよね。が、あっち産のジャズ・ドキュメンタリー作品を見ていると、かなりトシを食ったジミー・ヒースが出てきて、「コルトレーンは不治肩凝りじゃった。」みたいなどうでもいい思い出話をしているシーンによく出くわしたりします。業界の生き証人みたいな存在なのではないか?…と思われるわけでありますが、日本での人気の盛り上がり具合は今ひとつ地味ですね。どうしてなんですかね?地味だからですかね?が、僕は彼の才能をわりと高く評価しておりまして、特に作編曲の才能にはかなり秀でたものがあるのではないか?…と踏んでいるんですが、ま、そういうことで今日は“地味・ヒー”の最高傑作と言われている 『スワンプ・シード』 というアルバムを紹介してみたいと思います。何を根拠に最高傑作であると決め付けたのかというと、日本語ライナーにそのようなことが書いてあったからなんですが、サイト検索で引っかかったサイトにも“地味なテナーマン、ジミー・ヒースの最高傑作は知的な作品”と書いてありましたので、やはり最高傑作なのでありましょう。個人的にはフリューゲル2本にチューバまで加えた楽器編成が過剰気味で、アレンジがややくどいのが難点だと思うんですが、でもまあ、ジャケ絵を書くのが簡単そうだしぃ。ただしこれ、前にも取り上げたことがあったような気もするんですよね。このコーナーも連載650回を超えて、そろそろ僕のアタマでは過去ログを把握出来なくなってまいりましたので、今日は一日、かねてからの懸案だった“jazz giant artist index”というのを作っておりました。このコーナーで紹介したアルバムをアーティスト別に整理しようという魂胆なんですが、とりあえずABC順で“Jの部”までは完成しました。残り3分の1強といったところなんですが、これまでのところ、ダグ・ワトキンス『ブルースニク』が重複していたことが判明してちょっぴりブルーになってしまいましたが、これでダブっているのはブルー・ミッチェル『アウト・オブ・ザ・ブルー』に次いで2枚目ということになりますね。どうやら僕は“ブルー系が弱い”という傾向にあることが判明した次第でありますが、ざっと調べてみた限りではこの『スワンプ・シード』は大丈夫そうだったので、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まずは「シックス・ステップス」です。ジミー・ヒースのオリジナルでありますな。僕の持ってるCDの日本語ライナーは小難しいことを書くことで有名な悠雅彦クンの手によるものなんですが、テーマはFマイナー16小節。もちろんソロの接続部分はトニックの替わりに、減5度と9度の循環コードが用いられる…と。もちろん、そういうことだよね。僕は小学生時代、トニックの替わりにヘアリキッドをつけたりしてたんですが、銘柄としてはブラバスを愛用しておりました。で、リキッドが切れるとヨーグルトの汁とかで代用していた次第でありますが、曲調がマイナーであるというのは、何となくわかるような気がします。哀愁に満ちたいかにも土建屋好みのメロディが嬉しい限りですね。ただ、アルバムの冒頭を飾るにしては若干地味すぎるような気もするんですが、ま、知的な作品だからこんなもんっすかね?アレンジとしては、トランペットとテナーがリードする主旋律に低音のホーン・アンサンブルが絡む…といった感じでありまして、16小節のテーマ(←たぶん)を2回繰り返して、その後、ブリッジ(←たぶん)があって、ソロ先発はハロルド・メイバーンでありますな。なるほど、いきなりピアノ・ソロを持ってきましたかぁ。この人はジャズ・ロックっぽいのでも新主流派っぽいのでも、硬軟どちらでもこなせる才人なんですが、ここでは“知的ファンキー”とでも言いたくなるようなソロを披露しておりまして、シダー・ウォルトンにも通じるフィーリングを…とか言ってるうちにドナルド・バードのソロになりましたが、この人も硬軟どちらでも大丈夫なタイプですよね。ちなみに僕は人生の7割を軟便で過ごし、残りの3割を下痢便で過ごすという人生を送っておりますが、…とか言ってるうちにジミー・ヒースのソロになりました。いつも書いていることですが、この人のテナーというのは、何だか特徴がありませんな。ものすごく教科書的なフレージングに終始しているような感じでありまして、ハメを外すことを知性が許さない…みたいなところが日本であまり人気がでない一因ではないかという気がするんですが、インテリ故の悩みってヤツぅ?いや、僕も根が根昆布好きだから彼の気持ちはよくわかるんですが、いや、インテリと根昆布というのはまったくと言ってもいいほど何の関係ありませんけどね。あ、思い出しましたが、僕がたまに昼飯を食べに行ってた岐阜六条の“めしの里”なんですが、“出来合いの惣菜をセルフで持ってくる方式”だったのが、いつの間にか“日替わり定食の店”に変わったなぁ。…と思っていたら、いつの間にか潰れておりました。それが何かインテリや根昆布とつながりがあるのか?…と言われると、やっぱり何の関係もないわけでありますが、忘れないうちに報告だけしておこうと思いまして。で、演奏のほうは各自のソロの後、知的なアンサンブル・パートみたいなのがあって、テーマの再現部とうまく溶け合っていくうちに、おしまい。…といった感じに仕上がっておりまして、いかにもジミー・ヒースの作品だなぁ。…といった感慨を僕たちにもたらせてくれるのでありました。

 ということで2曲目です。「ナッティ」です。“大きくなったら、馬鹿になっていい?”…というモンク曲名俳句でお馴染みでありますが、いや、僕は子供の頃からとても頭が賢かったので、“馬鹿”という生き物に対する憧れがあったんですよね。大人になったら馬鹿になりたいなぁ。…と小さな頃から願っていたんですが、とうとうその夢が叶えられることもないまま、僕は賢いオトナになってしまいました。で、この「ナッティ」というのは何だかアホみたいな曲でありまして、ヒースが取り上げているのはちょっと意外な気もするんですが、やはり“かしこい系”のオトナである彼にもどこか馬鹿に対する憧憬のようなものがあるんでしょうかね?AA'BA'32小節というごく普通の形式をとったもので、10小節の序奏後に提示される。ちょうど「Good Bait」と同様に、メロディック・ラインが最初のBb から4度上のEb に移行し、サビが終わってもとのBb に戻る作品…って、悠雅彦クンも相変わらずバカに成りきれない解説を加えておりますが、ジミー・ヒースがこのアホっぽい曲に施したアレンジというのは実に凝ってますなぁ。もう、マッサージにいったら「お客さん、凝ってますなぁ。」と言われることは必至。…といった感じでありまして、ま、個人的には、どうせならファッション系のマッサージのほうがいいかな?…という気もするんですが、マッサージされてもちっとも“凝っている”という状態にならなくて、「ああん、オニーサンのそのもの、とっても“りらっくす”してるのぉ。。。」などと言われても困るので…って、ま、そんな話はどうでもよくて、イントロの部分がちょっぴりイイ感じなので、あれ?何の曲だっけ?…とワクワクしながら次の展開を待っていると、いきなりアホなテーマが始まって、愕然としちゃいます。アレンジ的には 、モンクの特異な左手の動きをフォローしているのはチューバである…というところに特徴がありまして、でもってソロ一番手はジミ・ヒーでありますな。テーマの一節を引用しつつ、相変わらず分かりやすいソロを展開しております。いや、個人的には嫌いではないんですけどね。ということで、続いてはドナルド・バードです。基本的にこのアルバムのソロイストはこの2人にピアニストを含めた3人が受け持っておりまして、ジュリアス・ワトキンスを含む低音3人組トリオは“アンサンブル要員”という位置付けになるようです。で、ここではピアノのソロもカットされて、ベースのピチカート・ソロがちょっとだけ出てまいりますが、テーマに戻って、おしまい。

 で、3曲目です。「モア・ザン・ユー・ノウ」は、えーと、ヴィンセント・ユーマンスの曲でしたっけ?しみじみとしたバラード演奏となっておりまして、テナーがリードする主旋律にブラスがハーモニーを付ける…という形式でありますな。悠クンもそのようなことをかいております。事実認定に関しては、悠クン有クン(←僕のこと)の間に隔たりはないわけでありまして、いや、決して間違ったことを書いてるわけじゃありませんからね、悠クンも。で、ソロ先発はジミー・ヒースです。アドリブ・パートは倍テンポになっておりますが、なかなかエモーショナルでいいソロなんじゃないですかね?で、特筆すべきは続くハービーのソロでありまして、このアルバムはハロルド・メイバーンとハービーがピアノを弾き分けているわけでありますが…、とか言ってるうちにソロは終わってしまいましたが、知的でリリカルでスキカルで…、あとは特に語尾に“カル”の付く言葉が思い浮かびませんでしたが、短いながらも充実したソロであったような気がします。ということで、次です。4曲目はアルバム・タイトル曲の「スワンプ・シード」でありますな。哀感に満ちたファンキーな作品でありまして、いかにもジミー・ヒースのオリジナルって感じぃ?…と思いつつ鑑賞に励んでいたんですが、パーシー・ヒースのオリジナルだったんですな、こりゃ。M.J.Q.のベーシストとして知られる、“顔が長い系”の地味なベーシストなんですが、ジミー・ヒースにとっては実兄にあたるわけですね。実兄というは女子高生をガバっと襲って実刑をくらったりして、概して出来が悪い。…というのが世の中の常なんですが、こと“ジャズ兄弟”に関してはこの法則はあまり当てはまらないようでありまして、上にいくほど紳士的になる傾向があるみたいですね。…って、実例としてはこの“ヒース兄弟”と、ハンクサドエルヴィンの“ジョーンズ兄弟”の2例があるくらいなんですが、“塩サバ兄弟”の場合は世間の通例どおりだったりしますしね。ちなみにこの「SWAMP SEED」という曲名を翻訳ソフトにかけると“湿地種”と出てきて何だかよくわからないんですが、悠クンによると、ダーン・モーゲンスターンによると、タイトルは“米ほど神秘的なものはない”という意味だそうだ。…ということなんだそうでありまして。確かに原文ライナーを見ると、モア・ミステリアス・ザン・ライスなどと書いてありますな。成るほど、「おこめほど神秘的なものはない。」でありますかぁ。関西人には至極納得のいく話ではありますが、阪神タイガース、このところ調子が戻ってきましたね。で、しかし、それは、全アルバムの「グレービー」フレーバーにアンダーラインを引くタイトルである。…というようなことも原文には書かれておりますので、おこめというのはグレービーなフレーバーということなのでありましょう。おこめは美味しいです。

 で、曲自体もたいへん“美味しい”ものとなっておりまして、イントロに続いてベースのピチカートによって地味にテーマ・メロディが提示されるあたりが実にニクい演出でありますな。で、続いてアンサンブルで再びテーマが演奏されて、ジミー・ヒースのソロへと入ってまいります。スムーズなフレージングがとっても“化粧惑星”といった感じでありまして、あ、それはフレージングではなくてクレンジングですか。相撲甚句というのもありますよね。ぜんぜん関係ありませんけどね。あとはえーと…、特に思いつかないので先に進みたいと思いますが、いや、“なんとかちんこ”という手がないか?…とも思ったんですが、そういう小学生じみたネタはやめにして、いや、『天使くん』という漫画で、宅配便のお兄さんに「ハンコください。」と言われた天使くんが金庫やらインコやらウンコを持ってくる話は面白かったですけどね。最後に陰部を見せられて、「それは“ちんこ”じゃあ!」と、宅配便のお兄さんはドッカーンと爆発しておりましたが、ここはそのような下品なネタを展開するところではありません。心してトコロテンを食べてみたいと思いますが、いや、食べたところでどうなるものでもないんですけど。酢にむせるだけの話で。ということで、続いてはドナルド・バードのソロです。知的で素敵で無敵でカテキン。…といった感じでありまして、続いてアレンジされたアンサンブルが2コーラスあって、最後はハロルド・メイバーンのピアノ・ソロとなっております。ということで、とってもグレービーなフィーリングの1曲でありました。はい、次。「D ワルツ」はジミー・ヒースのオリジナルです。タイトルどおりのD調のワルツでありまして、いや、D調というのがどのような調子なのか、楽理に疎い僕にはさっぱりわからんのでありますが、そう言えば昔、「C調言葉にご用心」という歌がありましたな。サザンでしたっけ?好きだったんですよね、森雄二とサザンクロス。…って、それはまた違うサザンのような気もするんですが、子供の頃にラジオで聞いていた“クラウンレコード1万円クイズ”でよくかかっておりました。で、「D ワルツ」です。トランペットとテナーの2管にブラス・アンサンブルが絡むお馴染みのパターンでありまして、最初にヒースのソロが出てくるのもややマンネリ化してまいりましたが、テナー・ソロの途中にチューバが絡んでくるあたりはちょっと考えましたかね?変拍子ということもあってやや実験的な気配が無きにしもあらずなんですが、変拍子と言っても3拍子だから、それほどヘンというわけでもないんですけどね。で、その後、ドナルド・バードのソロがあって、ベースのピチカートがあって、悠クン言うところの“ジミー得意のアンサンブル・パート”があって、テーマに戻って、おしまい。あ、その前にハンコックのソロがありましたか。サラっと弾き流している感じでありますが、そこかしこに黒いブラック・フィーリングが潜んでおりまして、根は学会員なんですよね、やっぱ。

 で、続いては歌モノです。「ジャスト・イン・タイム」です。ちょっとアレンジを変えてきたあたり、さすがにヒースもアホではないな。…といった感じなんですが、何とも洒脱なムードに仕上がっておりますよね。ただ、ソロ先発はやっぱりヒースで、アドリブ・パートに入ると今ひとつ新鮮さが希薄になってしまうんですが、ま、これはこういうアルバムなんだ。…と思って諦めてもらうより他ありません。ジミーと同じく作編曲に秀でたベニー・ゴルソンの吹くテナーはとってもくどくて顰蹙モノなんですが、ま、それよりはあっさりしていてまだマシなんぢゃないか?…って、ま、世の中は何事も気の持ちようでありまして。ということで、最後です。「ウォール・トゥ・ウォール」です。獄窓生活の長かったジミーの痛烈な思いが滲みでている。…と悠クンは指摘しておりますが、壁、また壁。なるほど、そういうことなんすかね?そういわれてみると何だか鎮痛なムードが漂っておりまして、いや、いいですよねぇ、鎮痛。もし、『塩サバ通信』が今の名前でなかったら、『チンゲンサイ通信』、略して“チン通”とかでもよかったかな?…と思っているんですが、目先を変えてハービー、バード、ヒースとソロの順番を変えてきたあたりはさすがでありますな。サバごときにマンネリだの何だの、言われたかねーやい。…といったプライドが感じられるわけでありますが、お得意のアンサンブル・パートに続いて、今まで裏方に甘んじていたジュリアス・ワトキンスのソロが聴けるのは嬉しいですね。ちょっぴり短めではありますが、フレンチホルンなんて楽器は長く続くと聴いてるほうが息苦しくなってくるので、この程度が無難なところではなかろうかと。とまあそういうことで、今日のところはおしまい。

【総合評価】

 洒脱なアンサンブルとソロとの絶妙のブレンド。知的なテナーマン、ジミー・ヒースの面目躍如と言える最高傑作。…と、対外的にはなるんでしょうが、ま、正直なところ、練られ過ぎた編曲がちょっぴり鼻につくようなところもあるんですけどね。ま、人の好みというのはそれぞれだし、個人的にはさほど嫌いではありませんが、7回くらいぶっ続けで聴くと、飽きます。


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