FAT JAZZ (JUBILEE)

 JACKIE McLEAN (1957/12/27)

FAT JAZZ


【パーソネル】

WEBSTER YOUNG (cor) JACKIE McLEAN (as) RAY DRAPER (tuba)
GIL COGGINS (p) GEORGE TUCKER (b) LARRY RITCHIE (ds)

【収録曲】

FILIDE' / MILLIE'S PAD / TWO SONGS
WHAT GOOD AM I WITHOUT YOU / TUNE UP

【解説】

 

 つまらないことだと思うんです。いいトシこいて、何をいまさら…という自覚もあるんです。でも、つい誘惑に 負けて買ってしまったんです、『怪異!学校の七不思議』。いや、クレジット決済の電子書店だとゼニを払っている意識がまったくなくて、面白くも何ともなさそう?…といった本でもついダウンロードしちゃうんですよね。いや、“書評deポン♪”のネタに使える?…と思って。で、これまでのところ、打率は1割2分8厘といったところですかね?ハズレが多いです。で、今回は3打数1安打といったところでしょうか。『筒井康隆100円文庫全セット』というのは内容がわかっているからアタリとして、『怪異!学校の七不思議』と、もう1冊、『ドキュメント・セクハラ』というのは大スカでした。もう、大須賀クンもびっくり?…といった感じのハズレ具合でありましたが、いや、もうちょっと真面目な内容だと思っていたんですよね、『ドキュメント・セクハラ』。ほら、僕ってセクハラにはまったく無縁なジェントルな紳士だから、ちょっと“恐いもの見たさ”みたいな心理で、興味があったんですよね。しかし何ですな。“セクハラ”という4文字略語は完全に世間に浸透しましたね。“セクハラ”と聞いて、「“セクシー・はらたいら”の略ぅ?」とか思う人はいませんからね。“ハラスメント”などという単語はまったく一般的で無いにも関わらず、恐らく“嫌がらせ”という意味であろうと推測出来るほど、この言葉は完全に定着しました。同じような傾向の言葉として、“ドメスティック・バイオレンス”という言葉もありますが、こちらのほうはあまり“ドメバイ”と略したりはしませんよね。あまりにも語呂がよくないのがその理由かと思われますが、でも大丈夫。日本人はそれくらいのことで4文字に略すことを諦めたりはしません。ちゃんと“DV”という略語が誕生しております。“DV”は2文字なんですが、言葉にすると“ディーブイ”なので、これも一種の4文字略語と考えてもいいでしょう。しかし何ですな。『ドキュメント・セクハラ』は、ハズしましたな。もう、脱臼癖のある武双山くらいハズしちゃってますが、ことわざに、“歳とった牛ほど、若い草を食む”といわれるように、黄昏せまる熟年のオスほど正邪の見境なく、ピチピチギャルを賞味する傾向があるのです。…という一文を目にした時点で、アホらしくなってファイルを閉じました。電子ブックとしては破格の会員価格1106円(税別)も出したというのに、どうしてくれる!?

 で、『怪異!学校の七不思議』のほうはまだマシでした。ま、内容が内容なので、たかが知れている。…と、最初から何も期待していなかったので、心的被害のほうもさほど深刻ではないわけでして。物理的被害のほうも会員価格427円(税別)だから、さほど痛い出費でもありませんし。しかし、“歳とった牛ほど、若い草を食む”って、そんな諺、聞いたことありませんな。いや、僕が知らないだけかも知れませんが、ネットで調べてみても該当はありませんでしたからね。自分の論理に都合のよい諺を捏造したとしか思えず、実にけしからんことだと思います。これはもう、画像処理ソフトで完成写真を捏造するに匹敵する社会的犯罪だと思いますが、ま、そういうことは人生にはよくあることなので、ここはひとつ大目に見てあげることにしましょう。いやあ、実に寛容ですなぁ、今日の僕。で、『怪異!学校の七不思議』でありますが、まえがきの部分には「音楽室のベートーベンの肖像画の目が動く。」という、実に古典的な例が紹介されております。ちなみに著者は“山岸和彦と恐怖委員会”というプロジェクトチームなんですが、この本は『怪異・日本の七不思議』というHPに書き込まれた投書を元に編集されたものなんだそうで。1996年9月の開設以来、この本が執筆された時点で166万件のアクセスを誇る人気サイトだそうですが、URLも書いてありますので、ちょっと紹介してみましょう。 http://www.orange.ne.jp/~kibita/jp7 ですな。アクセスしてみたところ、実に270万超までカウントが増えておりましたが、いやあ、大したものですなぁ。“無断転載NO!”というマークがあって、タタられても嫌なのでサイトの引用はやめておきますが、しかし何ですな。どうして学校の音楽室で怪異現象を起こすのは、決まってベートーベンなんですかね?「モーツアルトの肖像の毛が伸びる。」なんて話はついぞ耳にしたことがありませんからね。ま、恐らく、ベートーベン顔が恐い。…というところが怪異関係者に好まれる要因ではないかと想像されますが、確かに“クラシック界のマッコイ・タイナー”みたいな感じがありますからね。「運命」などという作品を残しているところもポイントが高いわけですが、その意味ではショパン「葬送行進曲」なども、いい線いってると思うんですが、ショパンの場合、名前がちょっとだけ食パンに似ているところがマイナス材料ですよね。「天才クイズ」の“勝ち組賞”で10斤貰えそう?…といったイメージがあって、あまり怪談にはオススメ出来ない。…という気がしないでもありません。

 で、怪談と言えば“階段の怪談”というのも紹介されてますね。「夜になると12段だった階段が13段になる。」というのがソレなんですが、これはさほど恐ろしくはありませんな。「夜になると12段だった階段が段田男になる。」…のほうが恐いんじゃないか?…という気がするんですが、いや、その昔、「玄界灘」という歌を歌った段田男(だんだ・だん)という歌手がいたことを知らないと笑えないところがネックなんですけどね。…って、怪談で笑ってちゃいけませんね。しかしまあ、段田男になるのならまだしも、12段だった階段が13段になったところで、いったいどのようなメリットがあると言うんでしょうね?“13”という数字はキリスト教の世界では不吉な数字とされているので、とっても気色が悪い。…という意味が込められているのかも知れませんが、普通、階段を昇り降りする時にいちいち段数を数えたりしないので、別にどうだっていいよなぁ?…という気もするんですけどね。「階段を1段昇ると、寿命が10秒延びる。」などという、これは怪談ではなくて健康ジンクスみたいなものなんですが、ま、そういった説もあることですので、どうせなら夜中に階段を昇ったほうが寿命が余計に10秒延びて、いいかもしれません。でもって、“学校の怪談”に欠かせないシチュエーションとしては“夜中のトイレ”と“夜中の体育館”と“夜中の理科室”というのがございます。某女子高に伝わる怪談として、「2階のいちばん北側のトイレの右から2つめの個室には、カメラが仕掛けられている。」というのがあるそうですが、これは怪奇現象ではございません。僕が仕掛けた盗撮用カメラなので、まったく害はありません。どうぞごゆっくり用を足してくださいね。で、“夜中の体育館”と来れば、これはもうパターンが決まっております。「女のすすり泣きが聞こえる。」というのがソレなんですが、君はまだ子供だからわからないと思うんだけど、それはきっと近所の若いペヤングが紛れ込んでいるんだろうね。で、女の人が泣いているように聞こえるかも知れないけど、それはきっと、あまりによくって泣いているんだと思うんだ。君もオトナになったら女のコを泣かせるくらいのテクニシャンになって欲しいと先生は思うなー。

 ということで、残るところあとひとつです。“理科室”です。恐い話というか、都市伝説と言うか、わりとよく知られた話に“恐怖のリカちゃん電話”というのがありますが、理科室というのも不気味なところですよね。骨格標本とか、人体模型とか、ウミウシのホルマリン漬けだとか、もう昼間でも何だか気色の悪い雰囲気が漂っております。おまけに理科室というのは“実験ミスによる事故”というのがつきものでございます。アルコールランプがいきなり燃え上がって髪の毛がチリチリになっちゃったりとか、ガスバーナーがいきなり燃え上がって髪の毛がチリチリになっちゃったりとか、水素の発生実験をしてたらいきなり爆発して髪の毛がチリチリになっちゃったりとか、いや、髪の毛がチリチリになる以外、特に適当な例が思い浮かびませんでしたが、おかげで「理科室に髪の毛がチリチリになったチリ人の幽霊が出る。」という噂が後を絶えない次第でありまして。いや、そんな話、聞いたことないぞ。…という人もいるかも知れませんが、塵もつもれば山となる。…という諺もあるくらいで、“チリ人幽霊目撃情報”を集めてみると、けっこうな数になるわけでありまして。

 で、後はどんな事故がありますかね?“中毒騒ぎ”というのもありますよね。さらし粉サンポールをぶっかけたら塩素が発生して中毒さわぎが起こった…というのがポピュラーな事例ですが、薬品の誤飲というのもよくありますよね。塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム…と、理科室には危険な薬品がたくさんありますが、意外なところでは僕の経験した例で“ヨウ素誤飲事件”というのがありました。“ヨウ素”というのはアレです。“唾液によるでんぷんの分解実験”で用いられる試薬なんですが、この実験はまず“じゃがいも”を“おろし金”で擦りおろすところから始まります。クラス40人が4人ずつ10のグループに分けられたんですが、僕のグループは、ひろ子ちゃん(仮名)、よし子ちゃん(仮名)、さばクン(仮名)、イカくん(仮名)という構成でありました。おおっ♪…と、さばクンは思ったそうです。というのもですね、さばクン(仮名)はひろ子ちゃん(仮名)に密かな恋心を抱いていたらしいんですよね。ちなみに、よし子ちゃんイカくんが好きでした。あと、ピーナッツとかジャイアントコーンなんかも好きだったようです。“乾きもの”が好きなギャルだったんですな。で、実験の第2段階として、すりおろしたじゃがいもの溶液を試験管に入れて、そこにヨウ素溶液を滴下します。するとどうでしょう。今まで、じゃがいもを擦りおろした溶液だなぁ。…という色をしていた液体が、鮮やかな紫色に変化したではありませんかぁ♪…と、ここまではこの実験ではさほど重要なポイントではなく、でんぷんヨウ素を加えると、紫色になるね。そんだけ。…という事実を認識していただければ結構です。で、ここからが実験のハイライトです。紫色になってしまった溶液を捨てて、再度、あらたなる“じゃがいも溶液”を試験管に満たします。そしてそこに唾液を加えます。で、ここで必ず「誰が唾液を提供するか?」ということで一悶着起きるんですよね。人前で唾を吐くなんて、恥ずかぴいのぉ。…と、シャイな僕…じゃなかった、シャイなさばクン(仮名)は思ってしまうわけです。イカくんなんて奴は根がガサツなので、そんなことは気にする筈もないんですが、根がワガママなので「やだ。」と言下に断ったりして、まったくもって困った奴ですなぁ。。。

 で、結局のところ、「じゃんけんで負けた人が唾液を提供する。」ということになって、あろうことか、あるまいことか、アルマイト鍋か、ひろ子ちゃん(仮名)がその担当になっちゃったんですよね。「ああん、見ないでぇ。。。」と恥ずかしそうに教室の隅っこに隠れたりして、いやあ、カワイイですなぁ。…と、さばクン(仮名)は思った。…と伝えられております。で、唾液を加えられたじゃがいも溶液唾液の働きによって“でんぷん”が分解されているので、ヨウ素を入れても紫色にはならないね。そんだけ。…というのがこの実験の全貌なんですが、授業が無事に終了して“お開き”になった後、後片付け係のさばクン(仮名)は“紫色にならなかったじゃがいも溶液”の入った試験管をじっと眺めて、ふと思いました。この中にひろ子ちゃん(仮名)の唾液が・・・。ゴクッ・・・。

 とまあ、以上が“ヨウ素誤飲事件”の全貌なんですが、いや、誤飲というより意図的というか、故意というか、アホというか。。。その直後、この学校では理科室横のトイレの個室がしばらく、“開かずの扉”になったんだそうです。おしまい。

 ということで、ジャッキー・マクリーンです。あ、このお話はあくまでもフィクションなので、登場する人物は 実在する人物とはいっさい関係ありません。いや、僕もコドモの頃から「かしこい。」と言われ続けてきた少年ですんで、ヨウ素溶液を飲んだらマズい。…と判断出来るくらいの分別はあるわけでして。いや、じゃがいも唾液だけだったら、飲んでいたかも知れませんけど。ちなみにさばクン(仮名)は溶液を飲んでみた感想として、「ちょっぴり甘かった。」と告白しておりますが、今日はそんな甘いもの好きのさばクン(仮名)にぴったりの1枚を紹介しましょう。題して、『ファット・ジャズ』。甘いもの満載のジャケットが食欲をソソりますなぁ。僕はどちらかというと甘いものよりも鋳物のほうが好きなんですが、桑名の名産ですからね。マンホールの蓋とか。お隣の四日市では先日、“万古まつり”という万古焼きの祭典が行われたようなんですが、地場産業は大切にしなければなりません。で、『ファット・ジャズ』です。僕の持っているCDの原文ライナーの隅っこにはジュビリーのマークが書かれておりますが、“猫のマクリーン”同様、 原盤はアドリブなんすかね?よくわかりません。で、用紙の反対側の端っこには“ブルーノートクラブ”のクーポンが付いておりました。5年ほど前、ウチにある東芝EMIのCDを片っ端から引っ張り出し、三角形のクーポンを切り取りまくって、ボール紙に張りまくったところ、総計で150枚くらいあったような気がするんですが、まだ残っているのがあったんですな。全部まとめて事務局に送ったところ、ばかでかい段ボールが2箱も届いたのでちょっとビビりましたが、クッションとかバスタオルとか、使えないものが多かったですね。小マシなものは読者プレゼントにしちゃいましたが、見事、ネクタイピンをGETした関サバ師匠はお元気でしょうか?某・三○重工業へ研修に行くと貰える“温度によって色が変わる戦車柄のネクタイピン”と同じくらい実用性がなさそうでしたけどね。で、『ファット・ジャズ』です。このアルバムはメンバーが地味ですね。えーと、まずはコルネットのウエブスター・ヤングですか。僕はかつてこの人の名前で、

・ 二人姉妹 上、ブスだー ヤングのほうは可愛い

 > 妹は可愛い。

 という、かなり無理のある俳句を詠んだことがあるんですが、いや、“上、ブスだー”はともかくとして、“ヤングのほうは…”というのはひどいですね。若気の至りというか、ワカメの祟りというか、とにかくまあ、名誉挽回の意味でもう一度この名前にチャレンジしてみますかね?

・ 女に飢え ブスだ、天狗だと 手当たり次第

 > 見境なし。

 うーん、今ひとつですな。“ブスだ”の発想が昔とぜんぜん変わらないのもいただけませんが、“やんぐ”→“てんぐ”の読み換えもちょっと無理がありますよね。だいたい、いくら飢えてるからって、天狗にまで手を出すのはどうかと思うしぃ。で、チューバのレイ・ドレイパーですか。この人の名前と言うのは、奴隷パーであると決め付けているところに人種差別的な問題があるわけですが、録音当時まだ高校生だったというから、なかなかの早熟ブリでありますな。が、個人的に男子高校生にはあまりソソされるものを感じないので、別にどうだっていいです。で、ピアノにはギル・コギンズが入っております。地味ですね。地味ではありますが、4文字に略すと“ギルコギ”となって、“プルコギ”や“すりこぎ”みたいで、プリティ?…という気がしないでもありません。とまあそういうことで、では1曲目から聴いてまいりましょう。えーと、まずは「フィリデ」ですか。

・ 「今夜のコンパ、どんな格好でいくぅ?」「ああん、フリでぇ♪」

 > 気が早すぎ。

 えー、演奏のほうは無伴奏のホーン・アンサンブルで地味ィに始まります。で、リズムが入ってテーマが始まるわけですが、ファンキーなムードのなかなかよい曲でありますな。J.マックとR.ドレパーの共作ということでありますが、アルト、コルネット、チューバという異色の組み合わせが地味にして特異なムードを醸し出しております。特にチューバは、いても、いなくても、一緒ぢゃないか?…という気もするんですが、それを言って高校生のドレイパーくんがグレちゃっても困るしぃ。で、イントロで効果的に地味だった無伴奏アンサンブルがテーマ部とアドリブ・パートをつなぐブリッジとして地味に活用されておりまして、ここら辺りはいかにもハード・バップだなぁ。…という感じですな。で、ソロ先発はマクリーンです。ここでの彼のソロは決して悪くないとは思うんですが、ま、普通。そんなところですね。えーと、マクリーンのソロに関しては、そんだけ。続くウエブスター・ヤングのソロは何だかあまりコルネットらしくない音色でありまして、オープンでトランペットを吹いてる時のマイルスに似てるぅ?…という感じがしないでもありません。えーと、ウエブスター・ヤングのソロに関しては、そんだけ。で、問題はレイ・ドレイパーでありますな。僕が彼に言いたいのは、「何故、チューバなんか選んだ?」という、その一言に尽きるわけですが、やはりチューバでドライブ感溢れるアドリブというのは、どう考えても無理があるんじゃないっすかね?聴いているだけで息苦しくなっちゃう感覚はフレンチホルンの比ではなく、喘息の人は耳にしないほうがよろしいかと。纏足の人もヤメといたほうがいいかも知れません。豚足の人はあまり関係ないから大丈夫です。ということで、その後、ギルコギのソロもあったような気がするんですが、とりあえずこれで1曲目はおしまい。

 いやあ、ひさしぶりの“聴かず執筆”のため、まるっきり充実していない曲解説でしたね。で、2曲目です。 「ミリーズ・パッド」です。パッドというのはアレですね。(1)肩・胸・腰などの当てもの、いすなどのつめ物 (2)用せん、はぎ取り式の一冊 (3)犬・猫などの足の裏の肉…という意味ですね。(1)は肩パッド乳パッドパッド、(2)の“用せん”というのは今ひとつよくわからんのですが、猫の肉球のこともパッドと言うんですな。で、“MILLIE”というのが猫の名前だとすれば“ミリーの肉球”、人の名前だとすれば“ミリーの乳パッド”ということになりますが、以上、演奏のほうはあまりよく覚えていないので、どうでもいい話で行数を稼いでおいてと。で、作曲者はウエブスター・ヤングでありましたか。ちゃららららら〜ら〜、でれれで〜でぇ♪…とアルトとコルネットが奏でるバックでチューバが地味にオブリガードを付ける。…というのがテーマ部の処理だったように思われます。ファンキーというのともちょっと違う感じなんですが、えーと、何と言うか、要するに言葉では表現しにくいような曲調ですね。…って、やっぱり“聴かず執筆”は諦めて、おとなしくウチに帰ってから書くことにしましょう。…ということで、「ミリーズ・パッド」です。実際に聴いてみたところで、やっぱり言葉で表現しにくい曲であることは変わりありませんでしたが、頼みの綱のライナーノートも小川隆夫クンの日本語ライナーは曲解説がなくて役立たずでした。こうなったら原文ライナーに頼るしかありません。えーと、「ミリーズ・パッド」はウエブスター・ヤングのペンによる“poignant”なブルースで、以上で“サイド1”(日本で言う“A面”)はおしまい。そんだけ。今ひとつですな。ま、どうやらブルースらしいというのが判明したのがせめてもの収穫でありますが、後は“poignant”の意味がわかれば完璧でしょう。痛烈な、刺すような、激しい。なるほど。いや、曲自体はさほど痛烈でも激しくもないんですが、要はブルースです。テンポはミディアムですな。シンプルにテーマを2回繰り返してマクリーンのソロとなりますが、ここでの彼のソロは決して悪くないとは思うんですが、ま、普通。そんなところですね。もうちょっとのところで完全には乗り切れない彼の姿がここにはありますが、ま、気分が乗らない日というのは長い人生のうちに何度かありますからね。で、続くウエブスターも、もうちょっとですな。トーンがややマヌケ調で、フレージングのノリもあまりよくありません。ドレイパーのチューバは端からドライブ感など期待してないから、ま、こんなもんだとして、ジョージ・タッカーのピチカート・ソロも何だか地味で、ただ、ピアノのギル・コギはブルージーな弾きっぷりで、でもやっぱり何だか地味で、テーマに戻って、おしまい。

 大丈夫か?このアルバム。…と、だんだん心配になってきましたが、でも大丈夫です。“サイド2”で彼らは見事に復活を遂げます。「トゥー・ソングス」。レイ・ドレイパーの作ったこのマイナー・チューンはいかにも日本人好みのメロディを持ったファンキーな佳曲でありまして、テーマの後、“作曲者特権”でドレイパーがソロの先陣を切り、ま、これはどうでもいいんですが、それを引き継ぐマクリーンのソロはなかなかの好調ぶりでございます。泣きがあって、迷いがない。一言で言えば、それだけなんですが、ちなみにこれ、ドレイパーがマクリーンの2人のヤングなボーイにインスパイアされて作った曲だそうでありまして。曲名は「TWO SONGS」なんですが、ライナーノートの本文では「TWO SONS」となっております。2人のヤングなボーイ…というところからすると“息子説”のほうが有力になってまいりますが、いずれにせよ、マクリーンとしては「父ちゃん、エエとこ見せたるでぇ。」ということで、気合が入ったのでありましょう。負くぇるな!父ちゃん。(←会社の近くにある“花まる屋”というパチンコ屋に掲げてある垂れ幕の文句。あ、垂れ幕とは違いますか。のぼり…とも違うし、ま、そんなことはどうでもいいですね。)いずれにせよ、復調マクリーンに引っ張られてウエブスター・ヤングもキレのあるフレーズを聴かせているし、でもやっぱり、この人のプレイは50年代マイルスっぽく響きますね。コルネットだからってナット・アダレイみたいなのを期待すると、ちょっと違うかな?…という感じなんですが、これはこれでいいと思います。で、ジョージ・タッカーのピチカート・ソロも前曲よりは気合が入っているし、で、ここではギル・コギのピアノ・ソロが思わぬ拾い物ですな。決して素直にパウエル派。…というスタイルではなく、ちょっぴりマル・ウォルドロンっぽかったりもするんですが、でもって僕がこのアルバムで好きなのは、この「トゥー・ソングス」「トゥー・サンズ」?)から、B面2曲目の「ホワット・グッド・アム・アイ・ウィズアウト・ユー」への流れでありますな。あまり他では耳にしない曲だと思いますが、マクリーンの泣き節が最大限に発揮された名バラードでございます。まず、ギル・コギの弾く無伴奏ソロによるイントロがいいです。泣けます。で、テーマ部はメロディをウエブスター・ヤングがしみじみと歌い上げ、レイ・ドレイパーが渋くオブリガードでサポートします。で、サビの部分になってマクリーンがサブで副旋律らしきものを吹くんですが、これがもう、たまらなくたまらんです。ビリー・ホリデイのバッキングを勤めるレスター・ヤングを思わせる。…てなことが原文ライナーに書かれておりますが、これはまさしく“愛の旋律”ですな。戦慄的に背筋がゾクゾクしますね。貴方なしで、何が幸せなの?…そう、切々と歌い上げるマクリーンのアルトに目頭が熱くなる思いが致します。

 …てなことを書いておいて、さ、ラストですね。このアルバムは全部で5曲しか入ってないから、勝負が早くていいですね。で、最後を飾るのはマイルス・デイビスの「チューン・アップ」です。彼のオリジナルの中では屈指の“調子よさ”を誇るナンバーでありますが、何を血迷ったのか地味ィな“管楽器の無伴奏音出し”で演奏は幕を開けます。が、すぐに思い直して、リズムが入って、快調なテンポでテーマが演奏されます。アルトとコルネットのユニゾンにチューバが絡む…というパターンなんですが、チューバは別にいなくてもよかったような気がしないでもありません。が、そんな細かいことはマクリーンのソロが始まった途端、どうでもよくなってしまいます。それほど、ここでの彼のソロは吹っ切れております。本アルバムでも屈指の出来じゃないっすかね?もう、絶え間のないドライブ感に圧倒されっぱなし…という感じなんですが、やがてドレイパーのチューバが出て来て、スピード感はぐーんと減速しちゃいます。いい加減、この楽器には愛想を尽かしたほうがいいんぢゃないか?…と、傍から見ている僕としては思ってしまうんですが、ドレイパーくんはドレイパーくんなりに、この楽器に愛着を持っているんでしょうな。チューバに“チューちゃん”なんて名前を付けて、死んじゃったらお庭にお墓を作ったり。でもチューバを埋葬するだけの穴を掘ろうと思ったらそれはかなりの労力でありまして、スコップで20センチくらい掘ったところで面倒になって、「ま、いっかぁ。」ということになって、“チューちゃんのお墓”はチューバが1メートルくらい地上に露出した状態になっちゃうんですよね。で、洗濯物を乾そうとしたお母さんがチューバに蹴つまずいて顔面を殴打して、「あんな邪魔なもの、捨ててきなさいっ!」と叱られて、泣く泣く粗大ゴミの日に集会場の前に捨てに行くドレイパー17歳の春。…と、どうでもいい話をしているうちに演奏のほうは終わっちゃったので、今日はこれでおしまい。

【総合評価】

 チューちゃんの存在をどう判断するか?…で、好き嫌いの評価が分かれるかも知れませんが、ま、とりあえずマクリーンのプレイに集中すれば、それなりに楽しめる1枚ではなかろうかと。明らかに“サイド2”のほうが出来がいいような気がしないでもないので、…って、“明らかに”と大きく出たわりには後半が弱気でありますが、ま、「トゥー・ソングス」「ホワット・グッド・アム・アイ〜」の2曲、プラス、マクリーンのソロを純粋に愛でるなら「チューン・アップ」ということで、どうかお楽しみくださいまし。


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