EASE IT (JAZZTIME)

ROCKY BOYD (1961/3/13)

EASE IT


【パーソネル】

KENNY DORHAM (tp) ROCKY BOYD (ts) WALTER BISHOP Jr (p)
RON CARTER (b) PETE LA ROCA (ds)

【収録曲】

AVERS / STELLA BY STARLIGHT / WHY NOT?
EASE IT / SAMBA DE ORFEU / WEST 42nd STREET

【解説】

 もういくつ寝ると、クリスマスぅ〜、クリスマスには凧揚げて、コマを回して、遊ばねーよ。…って、去年の今頃も同じことを書いてたような気がしますが、もうすぐクリスマスですなぁ。みんな、イブの夜はどうやって過ごすかな?やっぱ、ベイエリアだよねー。今年は伊勢湾岸道路の揖斐川大橋(長さ1400メートルくらい)も開通して、何だか地味にライトアップしてるみたいだし、対岸の長島スパーランドのライトアップも綺麗だし、桑名天然温泉「元気村」あたりで過ごすのがいいんじゃないですかね?やっぱ、せっかくのイブの夜は元気じゃないと始まらないと思うしー。…って、クリスマスというのは元来、キリスト教の厳粛な宗教行事である筈なんですが、昨今の日本において、“クリスマスすけべをする日”といった風潮があるのはまことに嘆かわしい限りです。厳粛なカトリック系の高校に通って 教室の前に飾られていた“十字架磔イエス様の像”に消しゴムのカスをぶつけたりして いた僕としては、けしからんっ!…という思いでいっぱいです。だいたい、すけべなんてクリスマスじゃなくても年がら年中やってるような気がしますしね。左官屋の娘はお盛んや。…といった噂もよく耳にするし、ま、クリスマスは“特別にゴージャスでロマンチックなすけべをする日”という位置づけなのかも知れませんが、個人的にはお正月に晴れ着を身につけて“お代官様ぷれい♪”に励んだりするのもイイんじゃないかな?…という気もします。…って、そんなことはどうでもよくて、今日は子供たちに夢を与えるお話をしたいと思います。そう、サンタクロースのお話です。

 サンタクロースのモデルになった人物については諸説があるようですが、聖・黒氏セイント・くろうじ)という名前の日本人聖職者がその起源であるという説はあまり有力ではありません。というか、無力です。だいたいサンタクロースというキャラは日本の風土にはあまりなじまないものがありますよね。日本にトナカイはいないし(←いるのか?)、日本家屋にはサンタが不法に侵入できるような煙突もないし、日本のおじさんにとって中にプレゼントを入れるに耐えうるような臭くない靴下というのも、まず考えられません。ま、靴下を吊るすのは子供のやることだから、おじさんの靴下が臭いのは関係ないんぢゃないか?…という意見もあるかとは思いますが、少しでも大きなプレゼントが入るようにと、お父さんの靴下を吊るす健気な子供がきっといる筈だから、やはり靴下の臭いというのは避けては通れない問題であるわけでありまして。じゃ、サンタの出身地はどこなのかというと、北欧である。…という説が有力のようです。ちなみに南半球のオーストラリアにもサンタクロースは存在して、トナカイの引くソリの替わりにサーフィンに乗ってやってくるそうですが、これは問題外ですな。バランスを崩して海に落ちたりしたら、背中に背負ったプレゼントが水浸しになって、台無しですもんね。もし、そのプレゼントの中身が“高野豆腐”だったりしたら海水にふやけて塩辛くなっちゃうし、“増えるワカメちゃん”だったりしたらワカメが増えまくって、エラいことになっちゃいます。豪州のサンタクロースはもっと現実的な陸上交通手段を考慮すべきである。…と提言する次第でありますが、その前に、もうちょっと子供が喜びそうなプレゼントを持ってこいよ!…という気もしますけどね。

 で、さば君がまだ睾丸の…いや、紅顔の美少年だった頃の“さば家のクリスマス”はどんなだったかと言うと、寝ているうちに靴下の中にプレゼントをこっそり。…というシステムではありませんでした。あるいは靴下が臭かったことがネックになっていたのかも知れませんが、親からゼニを貰って自分で好きなものを買いに行く。…といったシステムでありました。いや、幼少のみぎりはどうだったのか記憶にありませんが、少なくとも“家が燃えた以降”に相等する、小学校高学年の頃はそうでした。夢もロマンもへったくれもないような気もするんですが、ま、家が燃えたのにロマンなど追い求めている場合ぢゃない!…という気分だったのかも知れません。で、僕は貰ったお金で何を買ったのかというと、学研の“メカモ”を買いました。シャクトリムシが欲しかったんですが、いもやにはムカデしかなかったので、それで我慢しました。テレビで『スターどっきりマル秘報告』を見ながら組み立てたんですが、この“メカモ”というものは一度組み立ててしまうと後は邪魔になるだけで、どうも今ひとつだなぁ。…という気がしました。人はこうしてオトナになっていくんですね。

 ところで今、“サンタクロース追跡プロジェクト”という秘密計画が行われていることをご存知ですか?いや、ラジオで言っていたくらいだからあまり秘密でもないのかも知れませんが、プロジェクトの推進者は“北米航空宇宙防衛司令部NORAD)”というところでありまして、レーダー網を駆使してサンタの動きを追跡してインターネットで映像を配信するんだそうです。高性能な赤外線センサーでミサイルを追跡するシステムを応用しているそうですが、これでどうしてサンタクロースの行動が把握出来るのかというと、赤鼻のトナカイというのがいますよね?いつもみんなの笑いものでありましたが、サンタから「暗い夜道はぴかぴかの、お前の鼻が役に立つのさー♪」と言われて喜んだ。…というエピソードから、このトナカイが相当に単純な性格であることが窺えますが、このトナカイの鼻はただ赤いだけでなく、実は赤外線を出していたんだ。…というから驚きですね。いや、嘘ではありません。“北米航空宇宙防衛司令部”がそう言っているのだから間違いありません。で、そのトナカイの鼻から放射される赤外線を頼りにサンタクロースの行動を追跡するというんですが、そんなことで本当に大丈夫なんすかね?強い赤外線に反応して跡をつけていったら、ただの“赤外線こたつ”だった。…といった昔の『水曜スペシャル』みたいなオチで子供達の夢を壊さぬことを願わずにはいられませんが、問題のサイトは ここ にありますので、興味のある人は覗いてみてくださいね。

 ちなみに今現在の僕が欲しいと思っているクリスマス・プレゼントは“メカモ”のシャクトリムシ…ではなくて、デューク・ピアソンの『メリー・オウル・ソウル』であります。もし、このCDをプレゼントしてくれるギャルがいたら、桑名天然温泉「元気村」で熱い一夜を一緒に過ごしてもいいかな?…と思っております。ということで、よろぴく♪

 さ、ロッキー・ボイドですな。知ってますか?僕は知りません。もしこのロッキー・ボイドの『イーズ・イット』というアルバムが、たわけレコード新宿店の“”の棚に置かれていたら僕は確実に見逃すところでありましたが、この店のジャズ担当者は賢明でした。ケニー・ドーハムのところに置いてあったので、僕は思わず手にとってしまいました。いや、それにしても先日の東京出張はラクでしたな。“お客様の立ち会わない工場立会検査”でありまして、町工場みたいな地味なところで適当に“検査に立ち会っているフリをしている写真”を撮ってもらって、実質労働時間は約5分でありました。お昼には1600円のすき焼き弁当をおごってもらったし、で、あまりにも早く終わりすぎて、そのまま帰るには気が引けたのでたわけレコード新宿店に寄って来たんですけどね。いや、ディスクユニオンという手もあったんですが、ここは以前、朝の早い時間に店に入りこんでCDを漁っていたら店のオネーサンに「あ、まだやってません!」と言われ、とっても気分を害した経験があるのでヤメました。僕を敵に回すと恐ろしいということをディスクユニオンと横浜の中華料理屋のオネーサン(←豆腐料理の連続注文に難癖を付けた。)は肝に銘じておいて欲しいと思いますが、ということで 『イーズ・イット』 です。アルバムを3枚出しただけで潰れちゃったジャズタイムの原盤で、リーダーのロッキー・ボイドこそ無名でありますが、いや、僕が無知無知ボーイで知らないだけかも知りませんが、サイドマンが凄いです。地味ですが渋いところを集めております。たわけレコードではリーダーを差し置いて自分のコーナーに並べられていたケニー・ドーハムをはじめ、リズム隊はウォルター・ビショップロン・カーターピート・ラ・ロカときましたか。特にウォルター・ビショップに関してはジャズタイムが出した3枚のうち、最も有名な 『スピーク・ロウ』 というアルバムと同日の録音らしい…との情報もありまして(←未確認)、とってもマニア好みのアルバムではないかという気がします。ということで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目の 「エイバース」 はボイドのオリジナルなんですが、ブルー・ミッチェルの人気盤 『ブルース・ムーズ』 の2曲目に入っていた曲ではありませんか。ただの無名なテナー奏者だと思って馬鹿にしていたら、意外なところでいい仕事をしてたんですな。ちょっぴり見直しました。みんな知ってる曲だと思うので(←決め付け)、詳しい説明は省きますが(←手抜き)、ファンキーなムードのあるなかなかの佳曲でございます。5年目の?…って、それは破局「3年目の浮気」 の続編として知られるヒロシ&キーボーのヒット曲でありますな。(←ヒットしてねーって。)いや、今日の原稿は何だか括弧書き(←こういうの)が喧しいんですが、ボイドとドーハムのユニゾンで演奏されるテーマは何とも言えず黄昏た雰囲気があって、秀逸でございます。で、テーマに続いてボイドのソロになりますが、この人のスタイルというのはアレですな。一言で言えば“風格のないデクスター・ゴードン”。略して“風ドン”…って、略し過ぎて何がなんだかわからなくなっちゃいましたが、決してトーンに根性はないものの、フレージングはなかなかマグロのフレーク缶詰風であります。ソロの出来で言うと、正直なところ2番手のドーハムのほうがいいですね。たわけレコードの店員が思わずドーハムのところに並べちゃったのもわかるような気がしますが、テーマ・メロディの一節を挟んでのウォルター・ビショップのソロもいいですな。 『スピーク・ロウ』 でのプレイは何だか今ひとつ下卑たムードを湛えておりましたが、根は正統パウエル派ですからね。決して派手ではないが、その代わり地味。そういったスタイルで僕たちを魅了してくれます。で、ロン・カーターのうざったいアルコ・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。ま、曲のよさだけで聴かせる1曲…と言えるかも知れません。

 で、このアルバムでわりかし評判がいいのが2曲目の「星影のステラ」であります。とかくジャズマンはこの曲をアップ・テンポでやりたがるんですが、ボイドはしっとりとバラードで仕上げております。テーマ部はボイドのワン・ホーンで演奏されるんですが、やっぱり“風格のないデクスター”ですな。風格はないけど趣味は神社仏閣巡り。…って、何だかよくわかりませんが、テーマ・メロディをストレートに歌い上げるボイドのプレイからは、ある種の風格が感じられますね。…って、言ってること、矛盾しまくりでありますが、途中ドーハムを挟んで、ほとんどアドリブらしいアドリブもなく、ま、確かに分かりやすい演奏ではありますな。いや、何だか日本語怪しいしー。で、3曲目です。ピート・ラ・ロカ作曲の「ホワイ・ノット」ということになっておりますが、ほとんどコルトレーンの「インプレションズ」と同じです。典型的なモード・ナンバーでありまして、恐らく“Dドリアン→Dドリアン→半音上がってEb なんとか→最後にもう一度Dドリアン”という構成でありましょう。“Eb”のモードは何といいましたっけね?耳クソほじっている休みの日は耳クソホリディやん…の“ミクソリディアン”でしたっけ?いや、違いますか。こういう場合はマイルスの 『カインド・オブ・ブルー』 のライナー・ノートを読むのが一番なんですが、そういえばラズウェル細木の漫画に 『カインド・オブ・ブルー』 のライナーをもたもた読んでる爺ィ。実はその正体はジャズ仙人。…といったネタがありましたな。で、読んでみたところこれといった成果が得られなかったのでしかたなく 『インプレションズ』 のライナーを見たところ、あ、“Eb”もドリアンでよかったんですね。深く考えて損しちゃったぁ。…という感じでありますが、モード曲だとボイドのプレイも途端にコルトレーンになっちゃうのはご愛嬌ですね。それどころか、ドーハムまでけっこうマイルスしちゃっておりまして、笑えます。こういう分かりやすい反応というのは、僕はけっこう好きです。ビショップはエバンスしてるしー。

 で、4曲目。タイトル曲の 「イーズ・イット」 はポール・チェンバースのオリジナルなんですね。「伊豆一等」という、伊豆観光の発展に願いを込めて作られたナンバーではないかと思われますが…って、これは「ゴーンはきっと一等」の二番煎じで今ひとつでありますが、テーマ部はドーハムとビショップ抜きのピアノレス・トリオで演奏されているため、ボイドのプレイはとってもロリンズ風であります。心底、分かりやすいキャラですね。が、すぐにドーハムとビショップが入ってきて、普通のハード・バップ調になります。で、ソロ先発はドーハムなんですが、この人特有のくすんだトーンが実に味わい深いですな。で、フレージングは極めてスムーズでありまして、本アルバムでもベストと言えるプレイを展開しております。やっぱ、ドーハムを聴くための1枚ですな、こりゃ。 …って、リーダーのロッキー・ボイドの面目は丸つぶれでありますが、えーと、ここでは何だかハンク・モブレイ風のプレイを展開しておりまして、ま、色々な名前を出しておけば、当たらずと言えども遠からず。…といった感じになって、僕の面目はなんとか保たれるんじゃないですかね?で、ソロ3番手はビショップです。地味ながら、なかなかヒップなソロを展開しております。そんだけ。で、ロン・カーターの地味なピチカート・ソロがあって、トランペット→ドラムス→テナー→ドラムスの4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。ピート・ラ・ロカのドラミングもオーソドックスにスインギーだし、ま、タイトル・チューンに相応しい熱演である。…とでもまとめておけば、ま、無難なところではないかと。

 5曲目の 「オルフェの産婆」 は僕の好きな曲なのでけっこう期待してたんですが、出来としてはまあまあですかね?ラテンの乗り…というにはロイドの吹きっぷりが地味すぎるのが難点であります。ただ、ドーハムが登場すると空気が変わります。根は“お静か”でも、やる時はウナ・マス。…という人ですからね。で、ドーハムに触発されたのか修行僧に托鉢されたのか、ソロを吹くボイドは、まあまあかな?…といった程度には盛り上がりを見せ、さ、残すところあと1曲ですね。 「西42丁目ストリート」 はウィルバー・ハーデンのオリジナルで、日本人ウケしそうなハード・バップ調の作品に仕上がっております。ボイドは好調です。おいどは浣腸です。…って、あ、“おいど”というのは関西でヒップのことを言うんですけどね。で、続くドーハムも快調です。ビショップも大銀杏です。…って、いつから関取になったんでしょうな。お花見の時に席取りをして以来ですかね?とにかくまあ、アルバムの最後を飾るに相応しいリラックスしたムードの演奏で、とってもよかったと思います。ということで、今日はおしまい。

【総合評価】

 リーダーのロッキー・ボイドはとっても地味でありましたが、ケニー・ドーハムがうまくフォローしている感じですな。だからと言ってジャケットの左端にドーハムの小さな写真を載せるのはヤメて欲しかったと思います。どうしようもなく面倒です。


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