IN ORBIT (RIVERSIDE)

CLARK TERRY (1958/5/7,12)

IN ORBIT


【パーソネル】

CLARK TERRY (flh) THELONIOUS MONK (p) SAM JONES (b) PHILLY JOE JONES (ds)
【収録曲】

IN ORBIT / ONE FOOT IN THE GUTTER / TRUST IN ME / LET'S COOL ONE / PEA-EYE
ARGENTIA / MOONLIGHT FIESTA / BUCK'S BUSINESS / VERY NEAR BLUE
FLUGELIN' THE BLUES

【解説】

 

 君は由紀さおりを知っているかな?んなもん、誰でも知ってるやろ。…と思っていたらそれは大きな間違いでありまして、例えばウチの会社のタケムラ君(27歳)など、「“水戸黄門”のサービス・シーンですかぁ?あの入浴シーンの。」と言って、「たわけ。それは由美かおるや。」と、所長からたしなめられておりました。由紀さおり由美かおる。確かに字面的にはかなり肉薄してますけどね。で、そもそも、どうして由紀さおりが話題に上ったのかと言うと、ウチの会社がたまに仕事を貰っている岐阜県内の某町で『由紀さおり・安田祥子童謡コンサート』というのが開 かれることになったと。ついてはひとつ塩サバ物産(仮名)さん、協力して貰えないかと。協力と言っても別に由紀さおりに“強力わかもと”を届ける係をやってくれとかそういう話ではなく、要はチケットをちけっとばかり買ってくれという、そういう話なんですけどね。

 で、僕はその話を「由紀さおり安田祥子なら、童謡コンサートとしては超一流ぢゃん。」と思いながら聞いていたんですが、町の関係者からその話を持ちかけられたタケムラ君(27歳)自身は「由紀さおりって、誰ですかね?」でもって、さらにやんぐなタカシマ君も一言、「知らないっすよ。」いやあ、この時ほど“ゼネレーション・ギャップ”の根深さを思い知らされたことはありませんでしたな。もしかして現役時代の双葉山の相撲をナマで見たことがなかったりするんですかね?いや、僕もないんですけどね。とまあそれはともかく、とっても太っ腹な所長は「10枚くらい協力したれよ」と。ま、どうせ会社の経費で出すわけなので、何とでも言えるわけですよね。僕も同じ立場だったら「ついでに家紋もサービスで入れちゃえよ。」とか何とか、ワケのわかんないことを言ってるに違いありません。で、その10枚のうち、どうせ誰も欲しがらないだろうから2枚ほど貰ってきたわけでありますが、いや、ウチのおふくろ(←得意な料理は油揚げの袋煮。よくカボチャを焦がす。)がこういうの、わりと好きなんですよね。月に2回、童謡教室にも通ってるみたいだしー。

 で、その童謡コンサートというのが今日であります。塩サバ2号の嫁、塩サバにご子(仮名…って、かなり無理やりな仮名ですな。)と一緒に行くことにしたようですが、何せその会場というのが公共交通機関を利用するにはあまりに不便なところでありまして、どっせ近所のおばはんしか来やへんやろ。…とたかをくくっているんでしょうな。おかげで、そのようなチケットを持ち込んだ僕が責任を取ってクルマで送り迎えすることになったんですが、一度ウチに戻って待機するにはちいと遠いので(片道1時間強)、近くのスーパーの駐車場にクルマを停めて、こうしてザウルスで原稿を書いているわけでございます。ちなみにこのスーパーというのは僕がかつて発電機用エンジンのメンテナンスに何度となく足を運んだところでありまして、どこに何が売られているかもよく熟知しております。といっても僕が把握しているのは総菜関係だけなんですけどね。よく手羽先の唐揚げを買ったものでございます。で、今日の晩飯はどこかで適当に食え。…というお達しだったので、先ほど1階の食品売場で手羽先の唐揚げを買ってきて、クルマの中で食べました。かなり期待外れでした。いやあ、昔はもっと美味しくて、毎日食べても飽きないねっ。…と思いながら毎日のように食べていたんですけどねぇ。揚げてからかなり時間が経過しているのか、全体的にカピカピしておりました。“お値打ち品”ということでかなりダンピングされていたんですが、売れ残りだったんでしょうか?今後、由紀さおりの名前を目にするたびに「手羽先が今ひとつだった。。。」ということを苦々しく思い出すに違いなく、いやあ、由紀さおり安田祥子の姉妹は株を落としてしまいましたな。いや、彼女達にはまったく何の落ち度もないんですけどね。

 手羽先は今ひとつでしたが、一緒に買った“マグロづくし”のほうは絶品でした。どのようにマグロがつくされているのかというと、中トロ赤身の握りが3個ずつ、それにネギトロ巻が4個。…という内容でありました。いやあ、僕、まぐろ好きなんですよね。サバなんかよりよっぽど美味しいです。サッカー選手でもマグロンが好きです。ギャルで“マグロ”というのはどうか?…という気はするんですが、すけべ丸出しよりも貞淑な感じがあっていいかも知れません。モノは考えようです。で、本日の“マグロづくし”の中トロは中程度にはトロっとしてたし、赤身は必要十分に赤い身をしてたし、ネギトロは…ま、これはどこで食べてもそれほど大差はないような気もするんですが、特に問題もなく無難に仕上がっておりました。ま、全体的にみて今夜の食事は“成功”の部類ではなかろうかと思われます。もしこれでマグロの出来が今ひとつだったら童謡姉妹の評判は地に堕ちるところでした。危ないところでした。

 …と、ここまで書いたところで会場の体育館に戻ってきました。会場の駐車場には入れないほ どの盛況ぶりで ありまして、近くの中華料理屋の駐車場を無断で借用しております。こちらのほうは打って変わってガラ空きです。いや、2時間半もの間、どうやって暇を潰そうかと心配してたんですが、原稿を書いていたらあっという間でありましたな。その意味では有意義な1日であったと言えるかも知れませんね。さ、家に帰ったらタケムラ君から借りた“すけべ動画CD−ROM”でも見ようっと。

 ということで今日はクラーク・テリーです。しかし何ですな。夜の堤防ドライブというのは非常に疲れますな。いや、いつも会社の帰りに走っている道なんですが、後ろに人を乗せていると1.5倍くらい余分に神経を使います。おかげで神経痛になっちゃいました。…って、あまり関係のない話ですよね。で、テリーです。好きなブリの調理法は照り焼き。…といった感じの名前でありますが、その素性に関してはほとんど知られておりません。好きな合わせ調味料は酢醤油。…ということだけは密かに漏れ伝わっているんですが、それ以外のプロフィールに関しては深いヴェールにつつまれております。いや、ただ僕が知らないだけなんですけどね。「ベテランである。そんだけ。」…って、僕が知っているのはそんだけなんですが、この『イン・オービット』というアルバムはモンクとの共演というのが珍しいので、とりあえず買ってみました。ちなみにテリーは全編でフリューゲルホーンを吹いております。ということで、では1曲目から聴いてまいりましょう。

 1曲目はテリーのオリジナルでタイトル曲の「イン・オービット」っす。“orbit”というのがどういう意味なのか、新しいザウルスには辞書機能がないのでよくわからんのですが、僕には強い味方があります。“漢字涅槃”っ!これで調べてみましょう。該当なし。まったく役にたたんソフトですなぁ。おすすめ度を20点から5点くらいに下げたほうがいいですかね?とりあえずタイトルの意味は保留にして、肝心の演奏のほうに耳を傾けてみましょう。ミディアム・ファーストでハード・バピッシュでAABA形式でわかりやすいナンバーでありますな。吹いてる楽器がフリューゲルで、吹いてる人がテリーなので、ややもすればスリルに欠ける演奏になるんぢゃないか?…と懸念されたんですが、だいじゃぶでした。トーン的にはコルネットに近い感じで、やや上品ではありますが、立派なハード・バップに仕上がっております。チンケな表現ではありますが、ベテランの味って感じ?でもって、続くモンクのソロも彼なりに出来る範囲で懸命にスイングしております。やれば出来る。この言葉は世のED患者をどれだけ勇気づけることでありましょうか。で、テリーとフィリーの4バースがあって、サム・ジョーンズのウォーキング・ソロ(前半、モンクの絡みあり)があって、テーマに戻って、おしまい。構成的にも無難なオープニング・ナンバーでありました。

 2曲目、「ワン・フット・イン・ザ・ガター」。これはアレですな。デイブ・ベイリーのリーダー作のタイトルにもなった曲ですな。クラーク・テリーの曲だったんですね。ちっとも知りませんでした。直訳すると「ドブに片足つっこんだ」という意味だと思うんですが、何かこうもっと気の利いた慣用句のような訳語があるのかも知れません。「ドブ板を踏み抜いた」みたいな。いや、あまり変わり映えしませんか。で、曲自体はアレです。アレというのはそれではなくて、ブルースです。フリューゲルで吹くブルースというのも悪くないですね。何ていうか、ベテランの味って感じぃ?で、ブルースでありますが、サビのところでワルツになるあたりがテリー的お洒落感覚ですよね。だてに照り焼き好きをやってるわけじゃねーぞ。…みたいな。いや、ぜんぜん関係ないですけどね。アドリブに入ってもテナーの落ち着いた吹きっぷりは相変わらずで、この人はハメを外すということがありませんね。ドブ板は踏み抜いてるみたいですけどね。で、2番手のモンクは曲のテンポがゆっくりなこともあって、1曲目よりもより訥弁でありまして、彼らしさは充分に表現されていると思います。ヘタにスイングしてたりすると「どこが具合でも悪いのか?」と心配になっちゃいますからね。で、型通りサム・ジョーンズのピチカート・ソロがフィーチャーされて、ワルツのところからテーマに戻って、エンディング。これまた無難な仕上がりでありました。で、3曲目の「トラスト・イン・ミー」はバラードです。フリューゲルホーンの場合はどうしてもバラードのイメージが強いので、タイミングとしてはいいんじゃないですかね?で、「テリーがバラードを吹くと、こういう感じになるんぢゃないかな?」と想像していたとおりのプレイが展開されます。途中、モンクのソロも彼らしからぬ“普通のリリカルさ”で、心に染みます。冷たい水は歯に染みますけどね。…という人は“シミテクト”で染み具合をプロテクトしたほうがいいんぢゃないか?…という気がしますが、このアルバムはCDおまけ曲を含めて全部で10曲も入っているので先に進みましょう。

 4曲目の「アイ・ミーン・ユー」はおなじみモンクのオリジナルであります。モンクがサイドマンとして参加するというのは極めて異例ではないかと思われますが、本アルバムでは唯一の自身のオリジナルということもあって、演奏自体もかなりモンク色の強いものとなっております。その結果として生じてくるのが“フィリーとのミスマッチ”でありまして、いや、これは笑えますな。どんなヘンな曲でもとりあえずスイングさせないことには気が進まないフィリーと、そんなことは知ったこっちゃないモンクのピアノとが笑えるくらい全然マッチしてなくて、とっても笑えます。わははははは。間に立つテリーとしても、これはもう諦めムードですね。無理を言ってサイドで参加してもらったんやから、ま、1曲くらいはしゃあないか、と。で、5曲目。再びテリーが主導権を握って、「ピー・アイ」。イカピー、エビピー、ピー・アイ。ぜんぜん違いますね。“イカピー、エビピー、下痢ピー”ならかなりイイ線いくんですが、そうなると今度は肝心の“ピー・アイ”がどっかへ行っちゃうのが難点でありまして。で、曲のほうはと言うと、これはアレです。スピーディでなかなか吹いてて気持ちがよさげなナンバーですな。フィリーとサム・ジョーンズが全体の流れをぐいぐい牽引していくわけでありますが、これなら彼らもやり甲斐があるというもんでしょう。テリーのソロも元気溌剌…とまでは言えないまでも、それなりに破綻のないフレーズを繰り出しております。そのスピード感はモンクが出てきた時点で一歩後退しますが、サム・ジョーンズのベース・ランニングで徐々にペースを取り戻し、フィリーのソロで炸裂します。「アイ・ミーン・ユー」のストレスを一気に解放。…といったところでしょう。で、続く「アージェンティア」では冒頭、フィリーのブラッシュ・ワークが絶妙です。テーマ・メロディもいかにも日本人好みでいい感じですな。んでもってソロ先発はモンクです。スティックに持ち替えたフィリーのタイコをバックに、まずまずスムーズなお通じ。…といった演奏を聴かせております。ちなみに僕の場合、ネタに詰まったことはあってもウンコが詰まったことはなく、お通じはいつもスムーズです。…って、誰もそんなことは知りたがっていませんか。で、ピアノに続いてベース、そのあとフリューゲルという順でソロが続きますが、ここでのテリーはかなり美味しいフレーズを連発しております。ブラウニー同様、この人もミディアム・テンポが一番いいかも知れませんな。で、フィリーのタイコを挟む感じでテーマが再現され、おしまい。

 続く「ムーンライト・フィエスタ」はラテン調です。その次の「バックス・ビジネス」は真性ビ・バップ風です。えーと、あと2曲ですか。あ、ここまで作曲者については詳しく触れませんでしたが、5曲目以降では「ムーンライト・フィエスタ」がエリントン楽団で長らくトロンボーンを務めたジュアン・ティゾル(「きゃー、ラバ、ん〜♪」の作曲者ですな。)の曲である以外、すべてテリーのオリジナルとなっております。あと、3曲目のバラードが歌モノみたいですね。でもって9曲目にもうひとつスローなナンバーを持ってきて、「ベリー・ニアー・ブルー」はサラ・キャッセイの作品のようであります。なんとなく荘厳なムードの毛根。…といった感じの曲で、3分02秒という短めの演奏であります。テリーが厳かにメロディを歌い上げ、アドリブらしいアドリブもなく、なんとなく中途半端な気分のまま、おしまい。ま、曲が終わるだけならこれでいいかも知れませんが、アルバム自体もこれでおしまいということになると、ちょっぴり消化不良という気がしないでもありません。…ということを懸念したわけでもないんでしょうが、CDだとこの後に1曲オマケが追加されます。テリーがフリューゲルホーンで吹くブルース、その名も「フリューゲリン・ザ・ブルース」…って、そのまんまですなぁ。。。というか恐らく、曲のほうが先に出来ちゃって、「これ、何て曲?」と聞かれて返答に困り、咄嗟の思いつきで、「ふ、ふっ、フリューゲリン・ザ・ブルースっ!」…と適当に答えた手合いでありましょう。そんなもんなんだって、ジャズマンが付ける曲のタイトルなんて。…ということで、おしまい。

【総合評価】

 一言でいえば“渋い”。二言でいえば“渋く地味”。三言でいえば“渋く地味通好み”。で、ブルボンは“味ごのみ”。いや、全然関係ないですね。あ、ちなみに“orbit”というのは「軌道」の意味で、“ONE FOOT IN THE GUTTER”は翻訳ソフトでは「溝における 1 フィート」と出ました。使えねーヤツ。。。で、デイブ・ベイリーの『ワン・フット・イン・ザ・ガター』にはクラーク・テリーも参加しているんですな。先ほど調べて判明しました。興味のある人は聴き比べてみるといいでしょう。ということで、じゃ。


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