TIVOLI ONE (STEEPLECHASE)

DUKE JORDAN (1978/11/16,17)

TIVOLI ONE


【パーソネル】

DUKE JORDAN (p) WILBUR LITTLE (b) DANNIE RICHMOND (ds)
【収録曲】

SUBWAY BLUES / EMBRACEABLE YOU / NIGHT TRAIN FROM SNEKKERSTEN / MY HEART SKIPS A BEAT
IF I DID - WOULD YOU? / GLAD I MET PAT / FOUR / MISTY THURSDAY / I REMEMBER APRIL / JORDU

【解説】

 さ、“G・Dタイムズ”の続編です。あ、さすがに今日でやめます。それくらいの節度はわきまえております。かつて塩サバ2号が第2号まで発行した“G・Dタイムズ”でありますが、わざわざこのコーナーで2回に亘って紹介するほどのものかぁ?…と思わずにはいられないほど、内容が空虚です。創刊号は紙面のほぼ半分が単なる“G・Dグループ”の宣伝に費やされておりますし、7面なんか“南京産業”の全面広告ですからね。“南京産業”というのは僕が経営していた法人組織なんですが、読者が僕しかいない新聞に自分の会社の広告なんか出して、いったい何の意味があったんでしょうね?しかも書いてあることといえば“21世紀に向かって 南京産業”だけだしー。こんなもん、わざわざ全面広告で出す必然性がどこにあったんでしょうね?“3行広告”にしたところで1行あまっちゃうというのに、なんたる紙面の無駄遣い!で、この7面だけでなく6面にも“南京産業合名会社販売部”の広告が掲載されております。“1円玉バーゲン”2月24日、チョーク4本で65円(白、赤、青、黄各1本ずつ)、一本20円の品、1本で18円…だそうです。通常なら1本で20円もするチョークが、なんと1本18円に。しかも4本セットで買えば、なんと65円!…ということなんでしょうか?我ながら、実にどうでもいいバーゲンセールだなぁ。…と思わずにはいられませんね。

 で、第2号に目を転じてみると、ここでも懲りずに第7面に全面広告を打ち出しております。今度は“南京新聞”です。内容はというと“おもしろい 南京新聞”。以上です。あ、ここまで書いて便所に行くために席をたったんですが、戻ってきたら“G・Dタイムズ”2部が扇風機の風に飛ばされて、ゴミ箱の中へと落下しておりました。あぶない、あぶない。ちゃんと今日の原稿を書きおえてからでないと、捨ててはいけませんよね。で、凝りもせずに5面には“南京産業”の広告が掲載されております。“21世紀い向って!!”とか書いてあって、わけわかんないです。で、その後には“南京産業”の各部の名称が列記してあるんですが、えーとどれどれ。製本部果実部新聞部はんばい部製菓部BANKU部・・・。これをみて思わず涙がこみ上げてきてしまいました。「“G・D BANK”“G・D SHOJI”“G・D GAMBLE”“G・D INSATSU”“G・D GAKUEN”という5つの社名が並んでおります。“BANK”以外はすべてローマ字というのが泣かせます。馬鹿だったんでしょうね、たぶん。」…などと、人のことを馬鹿にしている場合ではありませんね。しかも、読み返してみると“BANK”だけでなく、“GAMBLE”というのもローマ字ではないちゃんとした英語ですしね。僕だったら“GYANBURU”とか書いてますよね、きっと。

 で、また創刊号に戻りますが、第6面は「読者のコーナー」となってますね。ま、読者と言っても僕1人しかいないわけでありまして、僕の投稿したイラストと“意見”が掲載されております。意味ねーぢゃん。…という気がしないでもないんですが、ま、当時から僕は投稿とかするのが好きでしたからねー。雑誌の『投稿写真』だって愛読してたしー。「やっぱ、女子高生のパンチラだよねー。」とか言って。ちなみに“意見”のところには「スロットマシンを入れるといってなかなかいれないのでこまる。たのしみにしているのではやくいれてください。」という切実な陳情が述べられておりました。顧客からのクレームをこうして公表するというのは、企業として褒められるべき態度であるとは思いますが、それにしても“G・Dギャンブル”ではよくスリましたなぁ。“G・Dタイムズ”の第2号はもっぱら“G・Dグループ”の収支報告に紙面が費やされているんですが、これは言うなれば「いかに僕が塩サバ2号から金を巻き上げられたか。」という血と汗と涙の記録ですよね。それによると3月期に“G・Dギャンブル”は580円もの純利益を計上しております。ま、たとえ賭けに勝ったところで換金出来ない紙製のチップが増えるだけで、どっちに転んでも胴元は絶対に損することはないというシステムの“優良企業”でしたからねぇ。で、さしもの塩サバ2号も“読者のページ”は、意味ないぢゃん。…ということに気付いたのでありましょう。第2号になるとこのコーナーは廃止されて、その替わりに「趣味のページ・囲碁講座」という新しい企画が始まっております。ただ、僕は当時から囲碁にはまったく興味を持っておりませんでしたので、まるっきり迷惑なだけでしたけどね。「単なる自分の趣味の押し付けぢゃん。」…と思わずにはいられません。無料のホームページならともかく、1部35円も取る公共の刊行物を私物化するような行為は、断じて許されるべきではないと僕は思います。

 「一.囲碁とは…」

 囲碁とは黒白の石を交ごに打ちあって、どちらが多く陣地をとったかを争うゲームである。ということはできるだけ相手に陣地をとらせないで、自分の陣地をふやすことが必要である。ではどうすれば陣地をふやすことができるか。まずそれには相手の石をとり、相手に自分の石をとられないことが必要となる。

 って、書いてあることも恐ろしいほどまでに意味ないしー。で、その後はわりとマトモな“囲碁講座もどき”が展開されております。当時の塩サバ2号が囲碁に相当入れあげていたことが窺われますが、いや僕にとっては迷惑以外の何物でもない読み物でしたけどね。で、創刊号の最後のページには連載読み物“G・D昔話シリーズその1「浦島太郎(一)」”が掲載されております。これが第2号になると“G・D昔話集「浦島太郎(その2)」”となっておりまして、表記の統一性という観点からはやや問題がありますが、中身のほうは優れております。特に、カメを虐めているところ注意された子供たちが「こんなカメみたい、いじめてもカメヘンで!」と開き直るのに対し、浦島太郎が「そんなこといわんと。カメやって『カメんなさい。カメベンしてください』というとるやないか。」と、関西弁でやんわりと戒めるくだりが秀逸です。ここまで読んだ僕は、藁半紙に書かれた“G・Dタイムズ”を元あった机の引き出しの中へと、そっと戻したのでありました。おしまい。

 ということで、今日はデューク・ジョーダンです。70年代モノです。最近、70年代モノが多いんじゃないか?…とか思っている人もいるかも知れませんが、気にしてはいけません。世の中、そういうものです。で、70年代モノのジョーダンと言えば、何と言っても『フライト・トゥ・デンマーク』が有名なんですが、敢えて取り上げません。わりと有名なアルバムは無視する…というのが僕のポリシーですからね。入れ墨を彫る人?…って、それは“彫り師”。2代目・彫三郎という人が有名です。いや、有名かどうかは知りませんが、国道258号線沿いに看板が出ておりましたので、少なくとも僕は知ってます。しかし“彫り師”だから“彫三郎”って、何だかいかにもパチモンくさい名前でありますな。ということで『チボリ・ワン』行ってみましょう。

 『チボリ・ワン』。昔、イナリワンという名前のうまがいましたが、関係ないですね。デンマークはコペンハーゲンにある“チボリ・ガーデン”でのライブです。“乳搾りガーデン”ではありません。そっちのほうが楽しそう?…という気がしないでもないんですが、無論、“乳揉みガーデン”でも可です。サイドにはウィルバー・リトルとダニー・リッチモンドと、なかなか渋いところを取り揃えております。ま、1978年の録音だけに、ジャケ裏に掲載されている写真を見ても「ウィルバー・リトルも何だかムサくなっちゃったなぁ。。。」という感慨ひとしおでありますが、70年代というのはみんながムサくなっちゃった時代でもあるんですよね。ダニー・リッチモンドは“目付きの悪い、頭のデカい具志堅用高”みたいで、わりとさっぱりしてますけどね。で、1曲目はジョーダンのオリジナル、「サブウェイ・ブルース」でありますな。「地下鉄のブルース」。何となく都会の哀愁を感じさせ、とてもいいと思います。都会の夜ぅ、地下鉄が走るぅ、ゴーゴー、地下鉄、ゴー♪…といった感じですかね?もし歌詞を付けるとすれば。うん、作詞家としても十分に食べていけますね、僕。で、実際の曲はというと無論この歌詞とはまったく関係なくて、なかなかファンキーな味わいに仕上がっておりますな。…といった曲となっております。テーマからそのままジョーダンのソロへと流れていきますが、実に気持ちよさそうな弾きっぷりでありますな。これぞ“乳揉みライブ”の醍醐味でありましょう。後半、彼には珍しいほどの盛り上がりをみせたところでウイルバー・リトルのピチカート・ソロにバトンタッチします。見た目はムサいんですが、どこかで聞いたようなメロディを頻繁に飲尿して、いや引用して、なかなか楽しく仕上げております。で、ドラムスとピアノの4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。以上、アルバムのトップを飾るに相応しい、リラックスしていて、それでいて熱い。そんな1曲でございました。

 2曲目はムード一転、しみじみバラードです。「エンブレイサブル・ユー」。この曲はアレです。パーカーに極め付けの名演がありますよね。でもって、そのセッションでピアノを弾いていたのが外ならぬジョーダンでありまして、中でもその絶妙なイントロはマニアの間でも絶大なる評価を得ております。いわく“イントロの魔術師”…でしたっけ?少なくとも“ネギトロの押し寿司”ではありませんよね?で、トリオによるこのバージョンも絶妙であります。無論、イントロだけでなくテーマやアドリブを含めて素晴らしい出来です。あ、ちなみにこの曲はヴォーグの『ファースト・リーダー・レコーディング』や、翌年のシグナル盤でも演奏されているんだそうです。いや、僕はどちらも持ってませんけどね。で、3曲目は「ナイト・トレイン・フロム・スネッカーステン」という名前のジョーダンのオリジナルです。「スネッカーステンからの夜汽車」。いいですよねぇ、夜汽車。花嫁が乗ってやってくるんですよね。鬼嫁も乗ってくるのかどうかは知りません。で、曲のほうは夜汽車らしく、いかにも夜汽車風に仕上げられているところが笑いを誘います。何もここまであからさまに夜汽車風でなくてもいいんぢゃないか?…という気すらしてしまうほどなんですが、そこが朴訥なジョーダンのジョーダンたる所以でありましょう。で、日本語ライナーで小川隆夫クンが指摘しているとおり、ここでのジョーダンはブロック・コードを多用して、かなり派手目な演奏を繰り広げております。途中、リトルのソロもフィーチャーされ、ピアノとドラムスの4バースもあって、三者が一体となった快演が楽しめる。…という風に評価してよろしかろう。…といった気がします。いやあ、普段は地味なジョーダンも、ライブとなると変わるもんなんですなぁ。

 ということで4曲目。再びムードは変わって“キュート路線”であります。「マイ・ハート・スキップス・ア・ビート」「私のハートは、るんるんるん♪」…といったところでしょうか?いや、出だしこそは静かな“キュート路線”だったんですが、アドリブが進むにつれて次第にノリノリぃ♪…といった感じになってまいりまして、あ、ちなみにこの曲はCDおまけ曲なんですかね?どうやらここから3曲続けてボーナス・トラックのようでありますが、それはあくまでアルバムの収録時間の一身上の都合でありまして、演奏自体に何ら劣ったところはありません。しかしまあ、CDおまけ曲だから敢えて気合を入れて曲解説する必要もないかな?…という気がしないでもないので、次にまいりましょう。「イフ・アイ・ディード・ウッド・ユー?」は、これまたジョーダンのオリジナルであります。「ジョードゥ」「危険な関係」だけぢゃなかったんだね、この人の曲。…ということに改めて驚かされるほどの名曲揃いでありますが、これはバラードです。しみじみとしたいい曲です。演奏内容もとってもラブリーなんでが、CDおまけ曲だから敢えて気合を入れて曲解説する必要もないかな?…という気がしないでもないので、次にまいりましょう。「グラッド・アイ・メイ・パット」は、これまたジョーダンのオリジナルです。ワルツ曲です。彼の代表作のひとつだそうです。『フライト・トゥ・デンマーク』で初めて紹介された曲だそうです。とっても可憐な曲です。

とってもいいと思いますね、僕は。

 で、次の「フォア」からがオリジナルな収録曲ということになるようです。どうして真ん中にオマケを3曲も入れちゃったんでしょうね?これがライブで演奏された通りの曲順ということなのかも知れませんが、いや、途中にオマケが入ったことで全体のバランスが崩れちゃったというわけでもないので、これはこれで別にいいと思うんですけどね。で、「フォア」はアレです。マイルスの演奏で有名な曲です。鮭師匠も葛西の練習スタジオで吹いていたような気がします。とっても調子のいい曲なので、吹いているほうは気持ちいいでしょうな、多分。“尺八”というのは吹かれているほうが気持ちがいいんですが、ピアノで弾いてもいい曲ですね。スインギーでとってもいいです。はい次。僕の曲解説というのは後半になるにつれてスピードが増してくる典型的な、“追い込みタイプ”なんですが、そのそろこのアルバムも最終コーナーを回った感じです。8曲目の「ミスティ・サーズデイ」「グラッド・アイ・メイ・パット」と並ぶジョーダン復帰後の代表作なんだそうです。あ、“ジョーダン復帰後”というのは70年代に活動の拠点をヨーロッパに移して再出発を遂げた以降…といった意味だと思うんですが、「霧の木曜日」。いかにもヨーロピアンなムードの感じられるタイトルではありませんか。いや、うちの近所にある「ヨーロピアン」という喫茶店はどういうわけだか看板にハワイのワイキキ・ビーチ風の絵を掲げておりますが、“ヨーロピアン”というのは元来、このようなミスティなバラードのことを言うのだと僕は思います。いや、「ヨーロピアン」の主人が「“ヨーロピアン”というのは、あくまでも砂浜である。」と言い張るのなら、もはや他人が何を言っても聞く耳を持たないに違いないので、そのまま放置するより他に手立てはないんですけどね。

 で、9曲目は「四月の思い出」です。パウエルがやってますね。ソニー・クラークは意表をついて無伴奏のバラードでやっておりましたが、ジョーダンは素直にミディアムで料理しております。わりと派手目なラテン風のリズムで演奏されることも多いんですが、ジョーダンは素直に4ビートで料理しております。ちょっぴりダニー・リッチモンドのドラムがやかましいんですが、これは録音のバランスの問題もあるので、一概にリッチモンドのでしゃばりを非難することは出来ません。“目付きの悪い、頭のデカい具志堅用高”みたいなルックスに免じて、許してやってもいいと僕は思います。機嫌をそこねて殴られでもしたら嫌だしー。で、最後はおなじみの「ジョードゥ」ですね。2分足らずの短い演奏でありまして、ま、ライブ最後の“お約束”といったところでありましょう。約束を守る。それはとっても大切なことだよ。…と『走れメロス』のメロくんも教えてくれましたし。…ということで、今日はおしまい。

【総合評価】

 悪くないですね。70年代モノも捨てたものではありませんね。いや、70年代モノでもCDになっているということは、それだけ中身があるということなのかも知れませんね。…という1枚でありました。


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