AT SHELLY’S MANNE−HOLE (RIVERSIDE)

BILL EVANS (1963/5/30,31)

AT SHELLY'S MANNE-HOLE


【パーソネル】

BILL EVANS (p) CHUCK ISRAELS (b) LARRY BUNKER (ds)
【収録曲】

ISN'T IT ROMANTIC? / THE BOY NEXT DOOR / WONDER WHY / SWEDISH PASTRY
OUR LOVE IS HERE TO STAY / 'ROUND MIDNIGHT / STELLA BY STARLIGHT / BLUES IN "F"
ALL THE THINGS YOU ARE
【解説】

 でしたなぁ。というと僕は、あの歌を思い出します。ぼんぼんぼーんと時計がみっつ〜、坊やおやつを食べました〜♪…という、言わずと知れた「大須ういろとないろの歌」でありますが、いや、言わずと知れたと言っても、もしかしたら名古屋圏以外の人は知らないかも知れませんね。民放ラジオを聞いてるとよく流れてくるんですけどね。3時の時報に続いて「わ〜い、3時だぁ。“大須ういろの時間”だぁ。」という子供の声がして、「ぼんぼんぼーんと時計がみっつ〜♪」という歌が流れてくるという仕掛けになっております。いや、仕掛けというほど大層なものでもないんですが、僕はどちらかというと“大須ういろ”よりも“青柳ういろう”派だったので、この歌が聞こえてくる度に「誰が3時は“大須ういろの時間”と決めたんや?」…と苦々しく思っておりました。3時のおやつは文明堂〜♪…のほうが全国的なような気もしますしね。で、他にも“”にちなんだ歌はないものか?…と思って調べてみたところ、ありましたー。まず“盆踊り関連”の歌というのは、間接的ではありますが“”にちなんだ歌と言えるのではないかと思います。よそではどうか知りませんが、うちの近所ではもっぱら「炭坑節」「アラレちゃん音頭」が主流となっているようです。めちゃんこ、めちゃんこ、めっちゃんこ〜、アラレ音頭で、んちゃちゃっちゃ〜、ペンギン村に陽が昇りゃ、ぶたさんマイクでコケコッコ〜♪…って、今時こんな歌で踊っていて、恥ずかしくないのか?…と、傍で聞いてる僕なんかは思ってしまうんですが、当のオバサンたちはさして気にする風でもなく、のんびりと平和に踊っているようなので、他人がとやかく文句を言う筋合いはないんですけどね。

 桑名では「桑名の殿さん、時雨で茶々漬けぇ〜♪」という歌もよく耳にしますが、東京あたりではどうなんですかね?やっぱり「東京音頭」なんですかね?そこで今日は「全国の盆踊り歌」というテーマでいろいろと調べてみたいと思うんですが、そもそも「盆踊り」というのはいったいどんな意味があるんでしょうね?盆に踊って、何かいいことでもあるんですかね?ま、確かに一昔前までは“盆踊りの夜”というのは、イコール“夜這いには絶好のロケーション”みたいな風潮があって、やっぱり帰ってきたご先祖様の前で“子孫繁栄”の現場を見せておくというのは、大切なことだよね?…といった考え方もあったのかも知れませんが、調べてみたところで“盆踊り”の起源については明確な回答を得ることが出来ませんでした。お盆にもどってきた精霊を慰めるためだとか、お盆の供養のおかげで成仏することのできた亡者たちが歓喜する姿を表現したものだとか、お盆にもどってきた精霊たちを踊りに巻き込みながら送り出すためのものだとか、悪霊や亡者たちを踊りながら追い出すためのものなんだとか、色々な説があるようですが、どれも今ひとつピンときませんよね。踊りたいから踊る。ま、その程度のノリで始まったというのが実情なのかも知れませんね。で、「全国の盆踊り歌」でありますが、いろいろと検索してみてもその地方の代表的な盆踊り歌が散発的に書かれているサイトばかりで、なかなかまとまったデータとして使えるものがありませんなぁ。。。貴重な勤務時間を約36分も費やして、結局のところこの企画は ボツかぁ。…と悲観的な気分になりかけた頃、実におあつらえ向きのサイトをようやく発見することが出来ました。題して『民謡CD販売店【E&E】■民謡CD、民謡カセットテープを通信販売。盆踊りCD、よさこいソーラン振付CD、振付ビデオ、伊藤多喜雄CD等も豊富に品揃え。.htm』というところであります。取扱い商品が“民謡CD”や“伊藤多喜雄CD”といった純和風のものであるにもかかわらず、何故、店の名前が【E&E】?…という疑問がないわけでもないんですが、店長の“しん”クンが一生懸命に考えた結果でありますので、他人がとやかく文句を言う筋合いはないんですけどね。

 で、この店のヒット商品であると思われる『日本の民謡 全10タイトル』というCDは、今回の僕のニーズにぴったりではないか!…と一瞬嬉しく思ってしまったんでんが、よく考えると民謡と盆踊りというのは密接な関係にはあるものの、完全にイコールというわけではないですよね。商品ジャンルが「民謡CD、民謡カセット 盆踊りCD」に分類されているのを見て、短絡的に喜んでしまいました。アサハカだった自分を責める次第でありますが、「民謡CD」じゃなくて「盆踊りCD」というのもちゃんとあるんですかね?…と思って調べてみたところ、あ、ちゃんとあるんですね。『盆踊りだよ。全員集合!』というサイトで紹介されている「盆おどり集 全国編(CD)」というのもそのひとつです。えーと、収録曲はというと「盛岡さんさおどり」「北海音頭」「おばQ音頭」「ぼけない音頭」「炭坑節」「秋田音頭」「相馬盆唄」「花笠音頭」「秩父音頭」「阿波踊り」「河内音頭」「東京音頭」「郡上節」「佐渡おけさ」「越中おわら節」「秩父音頭」「花笠さんさ踊り」。うん、これでほぼ全国をクリアしましたね。一件落着です。ところで先程来、いろんな盆踊り系のサイトを調べていて、「ぼけない音頭」というのが最近になって急速に勢力を伸ばして来ているな。…ということを実感したんですが、これはいったいどういう歌なんですかね?早速調べてみることにしますが、えーと、「ぼけない音頭」(作者不詳)。「歌や踊りを習う人、仲間がいる人ぼけません。いつも気持ちの若い人、人に感謝できる人、いくつになっても、年をとっても、ぼけません。」…って、うーん、もうちょっとですなぁ。。。何というか、今ひとつ“ひねり”というのが感じられませんよね。ま、お年寄りに難しいことを言っても「わしゃ、難しいことはわからんっ。」とか言ってヘソを曲げちゃうのが関の山ですので、これくらい平易で安易なほうがいいのかも知れませんけどね。それに4番の歌詞の中には「いつも俳句をひねる人(…はボケない)」というフレーズもあって、僕なんかずいぶんと勇気づけられましたね。いつも気持ちだって若いし、ま、あまり仲間はいませんが、人に感謝は出来るし、その気になれば“顔射”だって出来ちゃうし、おそらくきっと、大丈夫だよね?

 ということで“盆踊り”のお話はおしまい。あ、ちなみに塩サバ家御用達の盆踊りソングは「サバ節」でございます。

 ということで、今日はビル・エバンスです。通称、“ビル・エバ”…って、これはわりとよく使われますよね。「やっぱ、“ビル・エバ”の“ワル・デビ”だよねー。」…とか言って。よく使われることは使われるんですが、ホントに使ったりしたら馬鹿にされる必至です。今どき、“ジャズ”のことを“ズージャ”と言ったりするのと同罪です。で、今日は『ビル・エバンス・トリオ・アット・シェリーズ・マン・ホール』というアルバムを取り上げてみたいと思います。いや、マンホール・ポンプ技師の端くれである僕にしてみれば、いわゆる“シェリーズ・マン・ホールもの”というのは避けては通れない道なんですね。いや、別に避けて通ってもいいんですけどね。ぜんぜん関係ないしー。が、しかし、僕はこのアルバムに惚れてしまいました。何にって、無論ジャケットに決まっております。見た瞬間に「1これや!」と思ってしまいましたもんね。ジャズのジャケットというのはすべからく、登場人物をシルエットにすべきである。…というのが僕の長年の主張なんですが、これで背景が真っ白で、レタリングの字がもうちょっとシンプルだったりしたら言うことはないんですけどね。

 ただ、書くほうからすると非常にありがたいんですが、見る側からするとまったくソソられるもののないジャケットですよね。このジャケットのおかげで、“リバーサイドのエバンスでは最も買う気がおこらない1枚”…という位置付けになっていることは否めず、というか、僕なんかずっとヴァーヴ盤だとばかり思ってましたからね。それがある日、「でもこれ、右下のほうに“RIVERSIDE”って書いてあるぢゃん。」…ということに気がついて、リバーサイド好きの僕としてもあまり気は進まなかったんですが、とりあえず買ってみることにした。…という事の次第でありまして。いや、聴いてみたら悪くなかったんですけどね。えー、ディスコグラフィカルな視点で見てみると、このアルバムはエバンスとしてはリバーサイドの最終作にあたるそうです。しかも既にヴァーブでの吹き込み始めていた時期らしいので、僕がこれをヴァーブ盤であると勘違いしていたとしても、誰がその間違いを責めることが出来るでありましょう?いや、俺が責める。…と言われてしまえばそれまでなんですが、スコット・ラファロ亡き後、ベーシストにチャック・イスラエルが入ってた頃のトリオでありますな。ちなみに僕はイスラエルよりもパレスチナ派なんですが、パレスチナよりも“破廉恥スッチー”のほうが、もっと好きです。…って、かなり無理矢理でしたね。ということで、では1曲目から聴いてまいりましょう。

 まず最初は、ロジャース=ハートの「イズント・イット・ロマンチック?」です。「ロマンチックじゃない?」って、そんなこと僕に聞かれても知りませんが、演奏を聴くと確かにロマンチックですな。ロマンというのは、ま、栗のことだと思うんですが(←それはマロン。←基本中の基本。)演奏のほうはMCもイントロもなく、いきなりテーマから始まります。そこがまたイイと思います。非常に月並みな発言でありますが、ここでのエバンスのプレイは“ワル・デビ”を彷彿させるところがありますね。テーマはしっとりとリリカルに、アドリブに入ってからはスインギーに。…という展開がとってもよく似ていると思います。えーと、似ているところはそれくらいです。途中、イスラエルのソロがあって、テーマに戻って、おしまい。ちょっぴり短めではありますが、オープニングとしては実に無難に仕上がっていると言えましょう。客の拍手も“ヴィレ・ヴァン”の時よりも真剣味が感じられます。『ワツル・フォー・デビー』の拍手というのは、「手ェ叩かないで、拗ねられでもしたら面倒だしぃ。」…といった義理感が感じられましたからね。

 で、2曲目はバラードの「ザ・ボーイ・ネクスト・ドア」です。「隣の少年」…って、まったくソソられるものがありませんな。「隣の女子高生」ならともかく、覗き見する気にもならないし、パンツを盗む気もおこりません。ま、青少年の健全育成という観点からは好ましい周辺環境であると言えるかも知れませんが、ひとつ道を踏み外すと、とんでもない世界にいっちゃいそうですけどね。で、曲のほうはアレです。リリカルです。ワルツ・タイムで、とってもキュートです。この曲はジョニー・グリフィンも取り上げたりしてるんですが、あの“泥臭さ”とは対極の世界です。エバンスほど“アーシー”という言葉が似合わない人もいませんからね。途中、イスラエルのベース・ソロがフィーチャーされて、テーマに戻って、おしまい。はい3曲目。「ワンダー・ホワイ」は風呂が好きなことで知られる作曲家、ニコラス・ブロズキーのナンバーです。とってもリリカルで綺麗なメロディの曲であります。エバンスのプレイはテーマ部はしっとり、アドリブに入るとテンポ速くなってスインギーに。…って、最初から全部このパターンですな。途中、イスラエルのベース・ソロもフィーチャーされておりまして、いや、毎回同じことを書くのも、何だか疲れてまいりましたな。ドン・フリードマンの場合だとここいらでひとつワケのわからん演奏が出てきたりして、聴いている分にはちっとも面白くはないんですが、変化という点では少し工夫が凝らされているような気がします。ただ、エバンスという人も塩サバ2号や、人のこと言えない小学校時代の塩サバ1号とは違って馬鹿ではありませんで、そこらの事情は重々承知しているようです。4曲目には今までとは少し毛色の変わったハード・バップ調の「スウェディッシュ・ペイストリー」という曲を持って来ております。バーニー・ケッセル作のブルースということでありますが、この手の演奏というのは今ひとつエバンスらしくなくって、あまり面白くないんだよねー。…って、じゃ、いったいどうしろっちゅうねん!?

 …と、僕だったらキレているところでありますが、さすがはエバンス、そこは大人です。オトナ、オトナ、オトナ〜、オトナを食べるとぉ〜♪…って、「おさかな天国」はもう古いと分かっていながら、ついつい口ずさんでしまうんですねー、あのメロディ。いや、オトナを食べてはいけませんけどね。どうせ食べるなら、まだ大人になりきれないあどけなさの残った…って、そんなことはどうでもよくて、5曲目はガーシュインの「アワ・ラブ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」です。日本語では「我が恋はここに」とか言うんですが、ちょっと表現が堅いですよね。個人的には「わたしの恋はここなのぉ♪」のほうがいいかな?…といった気がするんですが、このほうがまだ大人になりきれないあどけなさが感じられますよね。で、パウエル派のピアニストはこの曲を概して“単なるアドリブの素材”みたいに料理しがちなんですが、さすがエバンスは違いますね。歌詞の意味をゆっくりと噛みしめるかのように、実にリリカルに園児切って…って、幼児を虐待している場合ではなく、実にリリカルに演じきっております。いや、この歌の歌詞がどういうものなのか、よくは知らんのですけどね。実は僕はこの歌があまり好きではなかったんですが、こうしてエバンスの演奏で聴いてみると、ぜんぜん悪くないですな。で、今まで触れられる機会のなかったラリー・バンカーのブラッシュ・ワークが実に冴えわたっているのでありました。これだったらポール・餅餡じゃなくたって、ぜんぜん大丈夫ですね。ラファロでなくてイスラエルだって、ちゃんと仕事しているしー。少なくとも金曜日の僕よりはよっぽどよく働いております。

 で、6曲目。「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」。実に何というか、わかりやすい曲ばかり選ばれてますよね。この曲は腐るほどたくさんの演奏が残されておりますので、敢えてエバンスが取り上げる必要もないのでは?…という気がしないでもないんですが、さすがはエバンスだけあって、“都会の夜のアンニュイ風”に実にきっちりと仕上げております。途中、マイルス・クインテットの演奏で有名な“ぱっぱっぱー、ぱー、ぱー、ぴゃ〜♪”というフレーズを持ってくるあたり、彼の遊び心が感じられて笑いを誘います。わはははははは。いや、観客はまったくウケてませんけどね。で、ソロの後半はちょっぴりひねったリズムのノリになっておりまして、さすがに一筋縄ではいきませんな。…ということを感じさせ、で、最後はきっちりとリリカルにまとめて、おしまい。はい次。「星影のステラ」は、これまたわかりやすい選曲です。実を言うと僕はこの曲もあまり好きではないんですが、いや、アルトとかだと「吹いてる人は気持ちよさそう。」…という気はするんですけどね。で、ここではチャック・イスラエルを大フィーチャーした演奏となっておりまして、テーマもベースのピチカートによって演奏されています。で、そのままベース・ソロに突入して、チャックはチャック全開で頑張っております。いや、チャック全開ならまだ閉めればいいだけの話なんですが、チャック全壊となると、ちょっと困りますよね。最近のチャックはかなり作りがよくなったんですが、それでもやっぱり“YKK”じゃないと駄目ですよね。パチモンの“KKK”とかでは駄目です。チャックと言えば子供の頃はよく“そのもの”を挟みましたよね。痛いんですよねぇ、アレ。最近ではめったにそういうこともなくなりましたが、やっぱり大きくなったからですかね?いや、“そのもの”が…ではなくて、オトナになったという意味で。

 とか書いてるうちに次の曲が始まりました。チャック・イスラエルのオリジナルで「ブルース・イン・“F”」という曲です。“”ですよね?“”でも“”でもありませんよね?もし違っていても面倒だから掲示板で指摘したりしないでくださいね。見ざる、聞かざる、言わざる、天ざる。それがWeb上で仲良くやっていくコツであります。で、ブルースというだけあって、曲はブルースですね。無論エバンスだから“アーシー”という言葉の対極にあるブルースでありますが、それなりにムードは出ております。あ、日本語ライナーを書いている久保田高司クンは「“4”より以上のアーシーな感覚でもってブルースを演じている、」…と指摘しておりますが、言われてみればそんな気もしますね。エバンスのブルースはアーシーです。で、最後はCDおまけ曲です。「オール・ザ・シングス・ユー・アー」…って、これこそ腐るほどたくさんの演奏が残されておりますので、敢えてエバンスが取り上げる必要もないのでは?…という気がしないでもないんですが、本人がどうしてもやりたいと言い張るのなら、他人がとやかくいう筋合いはありません。“やりたい年頃”なんでしょう、きっと。で、エバンスはイントロに「バード・オブ・パラダイス」を持ってくるというお決まりのパターンで演奏を始め、で、テーマもアドリブも実に悪くない仕上がり具合を確保しております。ただ、途中に出てくるベース・ソロは「もうエエちゅうに。」…という気がします。ということで、今日は以上です。

【総合評価】

 ジャケットの見た目同様、地味ではありますが、じっくり聴き込むとなかなかの出来ではないかと思います。選曲も無難なところが揃っておりますし、ぎゃる系にも安心ではないですかね?ただ、いかんせん地味です。


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