CALIFORNIA HARD (XANADU)

DOLO COKER (1976/12/27)

CALIFORNIA HARD


【パーソネル】

BLUE MITCHELL (tp,flh) ART PEPPER (as,ts) DOLO COKER (p)
LEROY VINNEGAR (b) FRANK BUTLER (ds)

【収録曲】

JUMPING JACKS / GONE WITH THE WIND / ROOTS 4FB
MR.YOHE / GONE AGAIN / TALE OF TWO CITIES

【解説】

 るんるん♪新しいセイルが来ましたぜ。しかも黄色です。先週、“ビッグ・アイランド”で頼んでおきました。“ビッグ・アイランド”というのは木曽川はマカイ・ゲレンデの近くにある半分つぶれたようなウインドサーフィン・ショップなんですが、ウインドサーフィンというのは何となく“島”のイメージがあるので、このような名前を付けたのでありましょう。…と漠然と思っていたんですが、そのネーミングの謎がようやく判明しました。このショップの店長は大島さんというんですが、“大島”だから“ビッグ・アイランド”。そんだけ。いや、大島のおっさんに直接確かめたわけではないんですが、おそらくそういうことでありましょう。あまり、物事を深く考えて行動するようなタイプには見えないしー。

 切削…って削ってる場合ではなくて、拙作『ウインドで現代病を直すんや!』にも書いたような気がしますが、ここマカイにはかつて、2件のウインド・サーフィン・ショップがございました。“ニフティ”という、小綺麗な店が最初に出来たんですよね。小綺麗ではありますが、店員が僕のタイプではありませんでした。そもそも僕はどちらかというと買物が苦手なんですよね。どうして苦手なのかというと、人と接することがあまり好きではないんですよね。ほら、僕ってシャイで無口で対人恐怖症的なところがありますしー。だから子供の頃、近所の魚屋さんに「タコの足、3本」を買いにいくのが嫌で嫌でなりませんでした。人見知りする内気な少年が明るく元気に「タコの足、3本くださーい。」なんてセコい注文を出来ると思うかぁ?せめてタコを1匹なり…という僕のささやかな願いは結局のところ適えられることはなく、このような酷い仕打ちを受けながらも僕がグレもせずに健全な青年に成長することが出来たのは、もはや奇跡としか思えません。そのかわり、買物というのが何となくトラウマになっちゃったんですけどね。

 で、某・ニ○ティの店員がどう気に入らなかったのかというと、いや、なんとなく。好き嫌いなんてものは感覚的な 物ですからね。ま、強いて言うならシロートを見下すような態度が見られるということですかね?セイルとブームを結ぶ紐が切れたので、勇気を出して明るく「紐くださーい。」と言ってみたところ、「紐ぉ?ああ、シートですね。」…と、いかにも人を馬鹿にしたような態度で言われちゃいましたもんね。シートというのは工事用のシートとか、便座シートみたいな形状のものを言うのであって、このような紐状のものはワシらの国ではシートとは言わん!…と、よっぽど文句を言ってやろうかと思いましたが、ヤメておきました。僕はオトナですからね。そのかわり、馬鹿にされた恨みは一生忘れません。僕が死んだ暁には化けて出て、あの店員の耳元で「紐ぉー。。。」と、暗く低い声でつぶやいてやろうと思っております。いや、ただの逆恨みのような気もするんですけどね。

 で、後発で店を出した某・“ビ○グ・アイランド”のおっさんも“ニ○ティ”を怨むこと尋常でなく、「どっかの店はアフターケアをぜんぜんやりませんからねぇ。」…などと“どっかの店”を敵視する発言をするのが常であります。何か“ニ○ティ”に嫌な思い出でもあるんですかね?あるいはこの店長は元・“ニ○ティ”の店員だったのが使い込みがバレてクビになり、それを逆恨みして嫌がらせで“ニ○ティ”の近くに新しい店を出したのではないか?…という噂まで飛び交っておりましたが、いや、そのストーリーは僕が考え出したものなんですけどね。もっとも、おっさんが言っている“どっかの店”というのは、もしかしたら“関西中古センター”のことだったりするのかも知れませんが、それはともかく。実は僕はこのおっさんのこともあまり得意ではありません。いや、いい人だとは思うんですが、ちょっと“真っ直ぐ過ぎる”ところがありますからね。某・アルペンでフルコンで9万8000円で買ったセットに付いていたジョイントを見せたときなど、瞬時に絶句され、「こういう道具でやってる人が事故にあって、流されたりするんですよねぇ。」…と哀しい口調で言われちゃいました。いや、僕だってこれがイイと思って買ったんじゃないってば!金がなくてこれしか買えなかったんだってば!…と、こちらまで哀しい気分になってしまいましたが、言ってることが正しすぎるというのもちょっと問題ですよね。が、神サマはやはり正しい者の味方だったのでありましょう。バブルなど、とうの昔にはじけ散っているというのに、葉山あたりにまで店を出して拡大路線をひた走った“ニフティ”は無理が祟って倒産してしまい、端から潰れかけてた“ビ○グ・アイランド”のほうが生き残るのだから、世の中はわかりませんな。ま、“ニフティ”のほうは僕を馬鹿にした罰が当たったんだと思いますので、いい気味だという気がしないでもないんですけどね。

 で、選択の余地なく、新しいセイルは今やこの地域では独占企業となってしまった“ビッグ・アイランド”に注文することになったわけですが、5万ナンボを先に払ってしまってから、急に不安になってしまいました。セイルは翌週の土曜日には入るだろうということだったんですが、万一、それまでにこの店が倒産しちゃったら、5万ナンボは丸損ですもんね。大島さんというのは人間的には屎尿の、いや信用のおけるおっさんだと思うんですが、ひさびさに5万ナンボという現金を目の当たりにして、目先の欲につられて持ち逃げしちゃう恐れが無きにしもあらずでありまして。それほどまでこの店の構えというのは困窮しているように見えちゃうんですよね。で、昼からはスクールに出ていることが多いので…という話だったので、翌週の土曜日は午前10時半頃に店に行ってみたんですが、シャッターが堅く閉じられたままでありました。ちょっと早すぎたかぁ。…と思って11時半頃に出直してみたんですが、事態はまったく改善されておりません。わずかではありますが、僕の心の中に不安が広がってまいりました。もし、マジで夜逃げでもされちゃったりしたら、ネタにはなりますがシャレにはなりませんもんね。ま、ネタになるなら5万円くらいの出費は…と思ってしまうほど、最近の僕は追い詰められてはいるんですけどね。

 で、午後2時に再び訪れてみると、シャッターは開いていたんですが、ドアには鍵がかかっておりました。どうやら夜逃げという最悪の事態は避けられたようでありますが、おっさんは川にいっちゃったようです。午後4時頃に覗いてみた時も同様でした 。店番くらい置いとけよ!…という気がしないでもないんですが、とても従業員を雇うだけの余裕があるようには見えないので、ま、しょうがないですね。で、結局その日はセイルを持って帰るのは諦めて、翌日に再チャレンジしました。どうやらこの店のおっさんの出演時間は11時半〜14時の間と、夕方16時以降の1日2回らしい。…ということが判明しましたので、正午を目標に出撃をかけました。12時を少し回っていたので、近所の富田屋商店に焼きそばでも食いにいってるんぢゃないか?…という懸念もあったんですが、無事におっさんを発見。そしてついに念願のニュー・セイルを手に入れたのでありました。いや、もしかしたら“ガストラ”のパチモンで“カステラ”とか言って、“南蛮人のマーク”とかが付いてるんぢゃないか?…という心配もあったんですが、ホンモノでした。ま、5万円もしたんだからそれはそうでしょう。で、僕の希望どおりの黄色でありました。これで多少、黄ばんじゃっても大丈夫だねっ♪ということで、今日の僕はとっても気分がいいのでありました。るんるん♪

 いや、今日の前半はオチもへったくれもありませんでしたね。ま、だからしょうがないよね。…って、だからと言って何でも許されるものではないような気もするんですが、とりあえず今日の後半はドロ・コーカーです。略してドロ・コーって、圧縮率は今ひとつですね。で、この人の素性に関してはあまりよく知りません。ま、前回のフランク・アヴィタビレとかよりは多少の知識は持ち合わせているんですが、ソニー・クリスの後年のアルバムにサイドマンとして参加して、なかなか悪くないピアノを弾いていた人であります。“多少の知識”といっても僕が知っているのはこの程度のことで、“些少の知識”といったほうがよかったかも知れませんが、ジャズ人名俳句には詠み込みやすそうな名前でありますな。 ただ、ものすごく“ひねり”のない句になっちゃうような気がしないでもありません。

 ・ 「路上だと、いつもより燃えるね!」「道路効果っ♪」

 とか。ジャズ人名俳句はもう死にましたね。何でもあ、『塩鯖市場』も死に体であります。出品のほうはぼちぼちなんですが、欲しがる人がありません。市場活性化のため、クレクレタコラを会員にしたほうがよかったですかね?何でも欲しがってくれたほうが僕としてはありがたいんですが、ま、商品が「あきらジャズまつり6点セット」では、欲しがれというほうが無理な話かも知れません。で、泥硬化(←泥でエレクト!…みたいなスヴェルト系の新製品?)なんですが、あ、今、ドーハムの『ジャズ・コントラスト』を聴いてるところです。掲示板の鮭師匠のカキコを見て、無性に聴きたくなったもんで。で、ちなみに今日(8月14日)はニュー・セイルを“筆おろし”して来ました。やっぱりいいですなぁ、新品は。乗る前に破れたところをテープでリペアしなくてもいいんですもんね。大切にしようと思います。5万円もしたんだしー。ただ、僕の隣におっさんとおばさん、それにその息子…といった構成の家族が2組ほど来ておりまして、このおっさんが“知ったふう”なしゃべりをするのがウザかったです。あとデブな警備員がいて、よっぽど暇なのか、いつもつまらんしゃべりをしていくのもウザかったです。この警備員、いつもいるんですよね。ゲレンデのあたりは国営公園になっているので、税金で雇われているのではないかと思われます。ウザいので今度、木曽川に沈めておこうと思います。ちなみに今日の川底はちょっと泥っぽくなってましたな。…ということでドロ・コーカーです。CDプレイヤーの中身を『カリフォルニア・ハード』に変えました。こんな地味なピアニストでもちゃんとリーダー作を作ってるんですな。たいしたもんです。ただし70年代モノです。70年代モノではありますが、レーベルが“ザナドゥ”なので、多分だいじゃぶなのではないかと期待しております。このアルバムはジャケットのドロ・コーカーがムサいのが難点なんですが、サイドマンがいいです。ブルー・ミッチェルアート・ペッパーのフロントなんて、70年代モノでないとなかなか聴けませんぜ。ということで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目は「ジャンピング・ジャックス」という曲です。僕が持っているのは国内盤の紙ジャケ仕様のCDなんですが、最初から入ってなかったのか、それとも紛失したのか、解説を書いた紙が見当たりません。よって作曲者のクレジットが不明いんですが、紙ジャケ仕様なので裏に原文ライナーの縮小版が印刷されております。縮小版なので非常に見にくいんですが、ちょっと解読してみますかね?えーと、アトラクティブなリトル・サムシング、ドロ、プット・トゥゲザー、スペシフィカリー、フォー・ディス・デイトと。要するに、ドロがこの日のために筆おろした、いや、書きおろしたナンバーということですかね?ちょっぴり「ミスター・PC」に似た、アップ・テンポのハード・バピッシュなナンバーでございます。いや、似ているのは最初の2小節だけで、その後はもうちょっと凝った作りになってますけどね。いずれにせよ、「70年代モノかぁ。。。」といったあまり気乗りのしないムードを一気に吹き飛ばしてくれるような、快調な滑り出しでございます。アルトとトランペットのユニゾンによるテーマに続いて、ソロ先発はドロ・コーでありますな。この人のスタイルはパウエル系と言っていいと思いますが、誰に似ているかと言われると、強いて言えばデューク・ジョーダンあたりですかね?いや、ぜんぜん違うかも知れませんけどね。で、ソロ2番手はペッパーです。ボロが出るといけないのでドロのスタイルに関しては適当にお茶を濁しておきましたが、このペッパーのソロがよいですね。76年のペッパーというのはいったいどういう演奏をするのか、まったく見当がつかなかったんですが、一言で言ってしまえば“ハード”です。50年代の『モダン・アート』のような、一種儚さを感じさせるトーンとはかけ離れた“新生ペッパー”のサウンドであります。知らずに聴くと、ぜったいペッパーとは思えませんね。誰か黒人系のヒトなんぢゃないか?…と思ってしまいます。こんなのペッパーじゃねえや。…と思う人も少なくないとは思いますが、ま、いいぢゃん。

 一言で片付けてしまいましたが、ソロ3番手はブルー・ミッチェルです。この人は50年代からまったく変わってませんね。あまりに変わっていないので思わず嬉しくなってしまいましたが、あ、先ほどのペッパーのソロはアルトじゃなくてテナーだったんですね。どうりでペッパーに聴こえない筈であります。サウンド的にはジュニア・クックあたりを思わせるような気がしないでもありません。いや、クックの『ジュニアズ・クッキン』という61年のリバーサイド盤にミッチェルとドロ・コーカーが入っていることからの連想なんですけどね。で、ミッチェルのソロの後、リロイ・ヴィネガーの短いウォーキングがあって、ホーン・アンサンブルとドラムスの掛け合いがあって、テーマに戻って、おしまい。各自のソロはちょっぴり短めでありますが、全体の演奏時間を4分3秒と短めにしたところが、あるいは勝因かも知れませんね。長けりゃエエちゅうもんでもないですからね。いずれにせよ、70年代モノにしておくのはもったいないようなハード・バップの小品ではないかと思います。で、2曲目はスタンダードの「ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド」です。ミッチェルが吹くテーマにペッパーが絡む形でテーマが演奏されます。ペッパーはアルトだと思いますが、その変わりにミッチェルがトランペットじゃなく、フリューゲルを吹いております。言われてみれば確かに、トーンが幾分まろやかなような?…という気がする程度で、基本的なスタイルはいつものミッチェルです。ミッチェル、みちみち、うんこ垂れて〜♪いや、今日の後半はあまり“遊び”がなかったのでサービス・フレーズを入れてみたんですが、逆効果でしたかね?「うんこネタはもういい。」という声が聞こえてきそうであります。で、ソロ2番手はコーカーっすね。家に火をつける?…って、それは放火っすね。…って、ちょっと“ぼけ”も入れてみたんですが、これも逆効果でありましたか?今日はどうも冴えないので、まじめにいきましょう。

 ソロ3番手はペッパー。出だしの部分、少しマクリーンを思わせるようなトーンが興味深い。…。あとが続きませんね。あ、先ほどのコーカーのピアノ・ソロでありますが、ちょっぴりソニー・クラークを思わせるような部分もありましたな。というか、やっぱりデューク・ジョーダンですかね?で、ペッパーのソロは後半になるにつれて、かなり往年のペッパーらしくなってくる…ような気がしないでもありません。詳細は自分の耳で確かめてくださいね。…って、ついに自分の意見を放棄しましたね。で、3曲目は「ルーツ・4FB」という曲であります。1曲目同様、ハード・バピッシュであります。アルト(か?)とトランペット(か?)のユニゾンで、元気にテーマを歌い上げます。で、テーマが終わっていきなりピアノのソロが出てくるところも1曲目と同じパターンですね。コーカー君、見た目はムサいにもかかわらず、意外と自己顕示欲の強いタイプなのかも知れませんね。ま、自分のリーダー作だから、ある程度目立ちたいという気持ちはワカランでもないんですけどね。で、ソロの出来はかなりいいです。大いに張り切っているんですが、それが空回りしてないのがいいです。大向こうウケを狙うと、スベる。…ということは少なくないんですが、ここでのドロは滑ってはおりません。鉄板の上を泥の付いた靴で歩くと、スベる。…ということも少なくないんですが、マットで泥をよく落としておけば大丈夫です。以上、「工事現場の安全な歩き方講座」でありましたが、工事現場では安全靴と安全帯、夜中に工事の飯場近くを歩くギャルは貞操帯の着用を心がけるようにしましょう。で、ソロ2番手はミッチェルですね。吹いているのはトランペットであると判断してよかろうと思います。ソロ3番手のペッパーが吹いているのはテナーであると判断してよろしかろうと思います。ということは、テーマ部のアルト(か?)の部分もテナーであった公算が強いですね。

 で、この曲の問題点はここからであります。あ、今日は何だか改行のタイミングがちょっとずつズレているんですが、この3曲目は演奏時間が14分58秒と、アルバムの中でも飛び抜けて長くなっているんですよね。15分近くも何をヤル気なのか?…と思ったら、その大半がドラム・ソロでありました。4分30秒から14分10秒まで、延々とですからね。ま、ベース・ソロよりはマシ?…という気がしないでもないんですが、いずれにせよこの部分はまったく無意味だと思われますので、ヤメて欲しかったと思います。ピート・ラ・ロカのドラム・ソロというのはあまり面白くないんですが、それに匹敵するものがあるんじゃないですかね?で、さすがのラ・ロカも10分もソロはやらないと思いますので、フランク・バトラーはちょっぴり人格を疑われたとしてもやむを得ないような気がします。ま、ドラムをフィーチャーするというのはプロデューサーのドン・シュリテンの意向のようでありますが、さしものシュリテンもちょっと血迷いましたかね?ま、人間、誰しも間違いはあります。で、4曲目は「ミスター・ヨーン」という曲よーん。いや、曲のタイトルが「ミスター・ヨーン」だからって、わざわざ語尾を「〜よーん。」にする必然性はありませんね。で、4曲目は「ミスター・ヨーン」という曲ずら。いや、語尾を「〜ずら。」にする必然性はもっとないんですけどね。で、これはペッパーのオリジナルのようです。いきなりドラムのソロで始まって“3曲目の悪夢”が蘇る思いがしますが、でも大丈夫。すぐにテーマに入ります。で、曲自体はシンプルなリフ・ブルース風ですね。ソロ先発はペッパーで、これは作曲者の顔を立てたということでありましょう。吹いている楽器はアルトではないかと思われますが、あまり意味不明になる以前のソニー・レッド…という感じでありまして、時折パーカー・フレーズが炸裂するあたりが快感。で、続くミッチェルは本当に50年代のまんまですね。ジャケット裏の縮小盤の写真で見る限り、かなりトシをくっちゃった感は否めないんですが、心はいつも“ブルース・ムーズ”なんですね。続くコーカーのソロはレッドはレッドでも、フレディ・レッドを思わせる…ような気がしないでもありません。ブルーとレッドの共演ですか。いや、ほんの思いつきですけどね。で、リロイ。ヴィネガーの“いかにも”なウォークング・ソロがあって、この人も昔から変わりませんな。で、アルト→ドラムス→ペット→ドラムスの4バースがあって、テーマに戻って、おしまい。古きよき50年代を思わせるハード・バップが快感。そんな1曲でありました。

 5曲目の「ゴーン・アゲイン」はレッドはレッドでも、レッド・ガーランドが名盤『グルーヴィ』で取り上げていた歌モノでございます。ホーン抜きのトリオ演奏なんですが、ここでのドロ・コーカーは“まんまガーランド”ですな。略して“まんまんど”。いや、略すとワケがわからなくなるようなら、略さないほうがよっぽどマシだという気がしないでもないんですが、この“まんまっぷり”は絶対にわざとですよね。ドロぴょんの遊び心なんでしょう。が、原文ライナーを書いたケント・ヘイゼンという人はガーランドとの類似性について、まったく何も触れておりません。所詮、大したヤツではないんでしょうな。ヘイゼンはシケてます。…と、平然と原文ライナー批判を展開してしまいましたが、ドロのオリジナルらしい「テイル・オブ・トゥー・シティーズ」という曲は、軽いボッサのリズムに乗せたマイナー・チューンでございます。まったくもって日本人好みのナンバーでありますな。こういう曲を61年くらいにブルーノートでマクリーン入りで演奏したようなアルバムがあったとしたら、ドロ・コーカーという人は日本でかなりの人気が出たのではないか?…という気がしてなりません。あ、でも見た目がムサいから駄目ですかね?いや、この人も61年頃はもうちょっと爽やかなルックスであったと推測されますので、大丈夫ですかね?トランペットにはこのアルバムと同じくブルー・ミッチェルを配して、テナーにティナ・ブルックスを入れて3管編成にしてもいいかも知れませんね。…と、勝手に想像を膨らましている場合ではなく、現実に目を向けましょう。えーと、テーマに続くソロはコーカーです。軽めのボッサのリズムが効果的です。ドロは前曲ほどガーランド的ではなくて、ここはやはりフレディ・レッドですかね?いや、何が「ここはやはり」なのか、よくはワカランのですけどね。で、ソロ2番手はミッチェルなんですが、フリューゲルホーンを吹いているからなのか、かなりアート・ファーマー的に聴こえたりもしますね。で、ソロ3番手はペッパーなんですが、出だしの部分がかなりマクリーンっぽくて、思わず嬉しくなってしまいます。うふ♪

 はい、ラストです。「ラウンド・ミッドナイト」です。ホーン抜きのピアノ・トリオです。いや、リズムも入ってませんか。無伴奏ソロですね。悪くない演奏ではありますが、全体の流れからすると、この曲はなくてもよかったのでは?…とか思っていたら、あ、これはCDだけのオマケ曲なんですね。その辺はさすがはドン・シュリテンだけあってよくわきまえているわけでありますが、いや、ただ単にLPのフォーマットでは録音時間に収まらなかっただけかも知れませんけどね。だとしたら無意味なドラム・ソロも部分を削って、A面の最後に持ってきてもよかったかも知れませんね。モンクの曲だけに、演奏のスタイルもきっちりとモンク風になっておりまして、ドロ・コーカーという人はムサい外見にもかかわらず(←しつこい)、意外と茶目っ気のある人だったのかも知れません。ということで、今週はおしまい。では皆さま、よい盆を。

【総合評価】

 一言で言って“さば好み”のアルバムですな。70年代モノではありますが、ドロ・コーカーはもう死んでいるから大丈夫ではなかろうかと。唯一残念なのは無意味にクソ長いドラム・ソロの部分でありますな。CDだったらドラムがでしゃばり始めた時点で次の曲にスキップしちゃったほうが賢明ではなかろうかと。


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