HAPPY TIME (JAZZLAND)

JUNIOR MANCE (1962/6/20)

HAPPY TOME


【パーソネル】

JUNIOR MANCE (p) RON CARTER (b) MICKEY ROKER (ds)

【収録曲】

HAPPY TIME / JITTERBUG WALTZ / OUT SOUTH / TIN TIN DEO
FOR DANCERS ONLY / TAGGIE'S TUNE / AZURE TE / THE SIMPLE WALTZ

【解説】

 今日はヤル気がありません。ということで、今日はヤル気タル木というテーマでお届けしたいと思います。タル木というのはアレですね。屋根板などを支えて棟から軒にわたす木ことですよね。…って、そんなものについて考えてみたところでヤル気が回復するとも思えませんので、他のことを考えて見ましょう。ヤル気カルキ。これがいいかも知れません。カルキというのはプールとか水道の消毒に用いる塩素系のクスリのことなんですが、どうしてカルキという名前が付いたんでしょうね?…という問題について考えてみたいと思うんですが、僕がまず最初に考えたのは「塩素カルキ」という説であります。塩素は化学記号で書くと“Cl”なんですが、これは塩素を意味する「クロール」という英単語から来ております。いや、もしかしたら全然違うかも知れませんが、塩素で消毒したプールではクロールで泳いだりしますし、ま、正解の確率はフィフティ・フィフティではなかろうかと。あ、それにギャルなどを襲う時に用いる薬剤にクロロホルムというのがありますが、あれはホルムに塩素(クロール)がくっついているからクロロホルムなんですよね、多分。で、その「クロール」をオランダ語読みすると「カルキ」になるのではないか?…というのが僕の説なんですが、ほら、クロール→クロール→クロール→クロール→カルキー…といった具合に。

…と思って調べてみたところ、全然違っておりました。いや、全然ということはなく、塩素はやっぱり「クロール」だったんですが、英語ではなくてドイツ語でした。都都逸好きの僕も「クロール」がドイツ語だとは気付きませんでしたな。こりゃ、一本とられたぁ♪…という感じでありますが、日本の近代化学というのはドイツを模範としていたんだそうでありまして、そういえば水素イオン濃度を表す“pH”もドイツ語風に「ぺーぱー」と読んだりするよね。…と、林家ペーとパー子の夫妻も言っておりましたが、人の誕生日を覚えているだけでなく、化学とかドイツ語の世界にも堪能だったんですな、林家ペー。で、水道の消毒に用いられるのは純粋な塩素ではなく、いや、一昔前までは純粋な塩素ガスを使っているところも少なくなかったんですが、万一、ガス漏れを起こしたりすると雑菌だけじゃなくて近隣の住民までも死んじゃう恐れがありますので、最近では塩素系の化合物を使うことが多くなりました。具体的に言うと次亜塩素酸ナトリウムでありますな。昔は次亜塩素酸カルシウムを使うことも多かったそうですが、これは何かというと、さらし粉でございます。バジリコではありません。で、このさらし粉のことをドイツ語では「クロークカルク」と称するために、水道水が消毒臭いことを「カルク臭い」、転じて「カルキ臭い」と言うようになった次第でありますが、カルキのほうは塩素ではなくてカルシウムのほうを示す言葉なので、厳密に言うと正しい使い方ではないんですが、そんなに厳密でなくてもいいんじゃ。…と、あんみつ姫も言ってましたしね。それにしても大学受験の時に新宿のホテルで見た『ポルノあんみつ姫』はよかったですね。やっぱり着物というシチュエーションがソソられるっていうか、いや、そんなことはどうでもいいですね。

 ところで、夏になると水道の水が“カルキ臭く”なるような気がするな。…ということに気付いた人は少なくないと思いますが、その理由は簡単です。夏になるとカルキの量が多くなるから、カルキ臭くなる。そんだけのことです。どうして夏になるとカルキの量が増えるのかと言うと、水温が高くなって雑菌が繁殖しやすくなるため、その分、どうしても消毒液の量を増やさなければならないわけです。カルキ臭い水を飲むか、それとも下痢になるか。そういう選択を迫られるわけです。塩素が増える分、洗濯物は白くなるような気がするんですが、カルキ臭い水を飲むのをやめるか、黄ばんだパンツで我慢するか、そういう選択も迫られるわけです。で、下痢をすることを思えば、多少カルキ臭いのは我慢してでも黄ばんだパンツが白くなったほうがいいよね?…と考えて、お役所は夏になるとカルキの量を増やすことになるわけです。

 0.04ppm というのが、人が水道水にカルキ臭を感じるかどうかの境目なんだそうです。ppm というのは100万分の1ですね。ドイツ語風に「ぺーぺーえむ」と発音してもよさそうなのに、これは普通に「ぴーぴーえむ」と読みますね。「ぺーぺー」という言葉の響きが平社員を連想させて、よくない。…ということなのかも知れませんが、そんなこと言ったら「ぴーぴー」のほうは下痢便を連想させて、もっとよくないような気がするんですけどね。とにかくまあ、0.04ppm というのが、人がカルキ臭を感じるかどうかの境目であると。最近はSI単位の導入で“mg/l”という単位を使うようになりましたが、数字としては同じであります。でもって、水道水の残留塩素濃度というのは通常“0.03mg/l”程度に設定されているわけでありますが、これが夏場になると“0.04〜0.06mg/l”くらいまで上げられることも珍しくなくて、これではカルキ臭いと感じちゃうわけですよね。

 では水道水のカルキを飛ばすにはどうすればいいのかというと、これも簡単です。沸かす、もしくは凍らせる。そんだけのことです。ただ、水を沸かして熱湯にしちゃうと、飲むときに「熱いじゃないか!」と文句のひとつもいいたくなってしまいますので、夏場は凍らせたほうがいいかも知れませんね。夜中のうちに凍らせておいて朝から日向に放置しておけば、昼頃にはちょうど飲み頃になるのではないかと思われます。ただ、こうしてカルキを飛ばしちゃった水というのは当然のことながら雑菌が繁殖しやすくなっておりますので、注意が必要です。早く飲まないと下痢します。また氷水というのは腹が冷えますので、これまた下痢します。水を飲みすぎると胃液が薄くなって消化の働きが弱くなりますので、これまた下痢の原因となります。カニと一緒氷水を飲んだりすると、てきめんです。下痢が嫌で消毒液を増やしているのに、その消毒液の臭いが嫌で氷水を飲んで下痢になっていたのでは、何が何だかよくわかりませんね。ま、いずれにせよ「春はあけぼの、夏は下痢。」と清少納言も書いておりますし、この時期、下痢からは逃れられない運命にあると言うことでありましょう。んなことで、やる気のないカルキの話しはおしまい。

 ということで、今日はジュニア・マンスっす。通称“ジュニ・マン”。ジャズマンには大きくわけて2つのタイプがありまして、それは何かというと“4文字に略してサマになるタイプ”と“サマにならないタイプ”なんですが、ジュニ・マンの場合は明らかに前者ですよね。いいことだと思います。で、ピアニストとしてはオスカー・ピーターソンとウイントン・ケリーを“ハーフ&ハーフ”にして、レス・マッキャンとラムゼイ・ルイスのフレーバーをトッピングしたって感じぃ?少なくとも“ごんべえ”よりはイケてそうですよね。いや先日、会社で宅配ピザを取ったんですが、チラシに載っていた“ネギトリ”というのが既に製造中止となっておりまして、似たような和風フレーバーで“ごんべえ”というのにしたんですが、今ひとつでした。何か、ゴボウのキンピラみたいなもんがのっかってましたもんね。ピザにゴボウは合わんやろ?…みたいな。でもジュニ・マンは大丈夫です。特にバルド・ウイリアムスとかいうワケのわからん前衛風ピアノを聴いた後は、マンスのような何にも考えてない“ノリだけピアノ”を聴くと、心底ほっとしますよね。で、この人はリバーサイドの傍系レーベルであるジャズランドにいくつかアルバムを残しておりまして、で、本国アメリカではそこそこ、あ〜ん、そこぉ♪…といったくらいには人気があるようで、わりと輸入盤でCDになっております。で、今日はその中から『ハッピー・タイム』というアルバムを取り上げてみたいと思うんですが、いや、マンスのアルバムには似たようなのが多いのでよくわからんのですが、恐らくこのコーナーでは初出場ではなかったかと。もしダブっていたら、すまんこってす。

 ということで、1曲目です。マンスのオリジナルでタイトル曲にもなっております「ハッピー・タイム」という曲です。「幸せな時間」。いいですね。「日変わりな痴漢」よりよっぽどいいと思います。いや、「日変わりな痴漢」というのも日々新鮮でいいかな?…という気もするんですが、サワられるほうにしてみれば「幸せな時間」どころの話じゃないですもんね。で、曲自体はアレです。完璧にゴスペル調でありまして、マンスが“ひとりコール&レスポンス”に励んでおります。で、そのまま勢いだけのソロへとなだれ込んでいくわけでありますが、いやあ、凄いですね。「ジャズは本能や。」…という関西人の叫びが聞こえてきそうな真っ黒フレーズの連発でありまして、これぞジャズの醍醐味、木曜日は生ゴミの日。…と思わずにはいられません。あ、使用済みのゴム製品は木曜日に出してはいけません。確かに中身は生っぽいんですが、中身を捨ててよく洗ってから燃えないゴミの日に出すというのが正解です。社会人としての最低のマナーは守りましょうね。で、マンスのプレイはまだ続いておりますが、これはもう、理屈抜きで押し寄せてくるグルーヴに身を任せるというのが正しい聴きかたではないかと思います。いや、手抜きとかそういうことではなくて。

 で2曲目はファッツ・ウォーラーの「ジターバク・ワルツ」です。“ジターバク”というのは何なのか?…と思って調べてみて、その答えを知って「へー。」と感心したことを覚えているんですが、その肝心の意味のほうを忘れてしまいました。何か、花の名前ではなかったか?…という気がしないでもないんですが、もしかしたらぜんぜん違ったかも知れません。覚えていたらウチに帰ってから調べておこうと思いますが、あ、今は木曽川にいるんですよね。お外で原稿を書くのにいいかな?…と思って、“コミュニケーション・パル”というのを買いました。シャープの携帯用メール端末でありまして、ま、要はキーボードがついた簡易ザウルスのようなものです。“じょるなだ”は外ではまったく画面が見えなくて、期待外れでしたからね。一方、9800えんの白黒ザウルスは外でも抜群の視認性を誇っているんですが、さすがにこのトシになってペン入力はつらい…と。で、通販でこのコミパルが安く売られている(9500えんくらい)のを発見して買ってみたんですが、よく調べずに買ったら通信機能が“cdma-one”専用でありまして。使えねーって!…と、手元に届いて思わず叫んでしまいましたが、仕方がないから光通信でザウルスにデータ送って使ってますけどね。電源の心配がない乾電池式で、外でもよく見える白黒画面というので買ったんですが、誤算がありました。ザウルスとは液晶の質が違うのか、温度が高くなると液晶が真っ黒になって、何にも見えん!

 ということで、たまにクーラーボックスの中に入れて冷やしつつ原稿を書いているんですが、あ、MP3プレイヤーのほうは快調です。で、「ジターバク・ワルツ」ですね。前曲とはうって変わって、マンスのキュートな1面が窺えるナンバーとなっております。シングル・トーンのタッチがとってもプリティです。このあたりはピーターソンの影響を強く感じさせますね。あ、コミパルを冷やしている間、“MP3プレイヤー”を外に放置してたらスイッチが入らなくなりました。少し冷やしたら元に戻りましたが、真夏の炎天下というのは電子機器にはあまりよい環境ではないようですな。コミパルの画面もだんだん黒くなってきたしー。が、しかし、マンスのほうは快調であります。暑さにもめげず、歌心に富んだ演奏を披露しております。ま、このアルバムが吹き込まれたのは6月なので、まだそれほど暑くはなかったのかも知れませんけどね。スタジオの中だろうしー。もし、真夏の炎天下でピアノを弾いたりしたら熱くて黒鍵に手を触れることが出来ず、Dドリアンのモード奏法みたいになるかも知れませんね。

 ということで3曲目です。「アウト・サウス」。再びマンスのオリジナルで、黒いマンス節が堪能できます。いや、別に遊び過ぎということでもないんでしょうが、黒いんですよね、マン〇って。あ、こんなところを伏せ字にするとあらぬ誤解を受ける恐れがありますね。黒いんですよね、マンスって。…と、きちんと名器…いや、明記しておいたほうがよろしいかと思われます。ファンキーというよりはソウルと言ったほうが彼の場合はぴったりくるんですが、ロン・カーターのピチカート・ソロをフィーチャーしながら、演奏はグルーヴィーに進んでまいります。ハッピーにスイングする…という形容がぴったりくるような演奏ですね。後半、ちょっぴりミッキー・ローカーのソロもフィーチャーされて3者が一体となった演奏が堪能出来ます。ということで、はい4曲目。おなじみチャノ・ポゾの「ティン・ティン・デオ」ですな。「チンチン帝王」ではなくて。ロン・カーターがピチカートでおんじみのイントロを弾いた後、ラテンのリズムに乗せてピアノでテーマが演奏されます。わりとシンプルなタッチであっさりめに料理しておりますな。テーマを2回繰り返すんですが、2度目もそれほど気負いは感じられません。が、アドリブ・パートに入ると俄然“ノリ”が違ってまいります。ブロック・コードとシングル・トーンの使い分けも適切だし、適度な黒さもあるし、かと言ってそれほど下品でもないし、とってもいいんじゃないかな?…と僕は思います。いやあ、それにしても外は暑いですな。風もまったくなくて原稿がはかどるのはいいんですが、さ、“カラムーチョ”でも食べよっと。

 はい5曲目。「フォー・ダンサーズ・オンリー」という曲ですね。ジミー・ヒースのオリジナルに「フォー・ダンサーズ・オンリー」というのがありますが、こちらほうが元祖なのでありましょう。どこかで聴いたことのある曲ですね。ゆったりしたテンポのグルーヴィなナンバーでありまして、あ、また画面が黒くなってまいりましたので、ここで一休みです。はい、復活です。しかし何ですな。こうも暑いとアタマがアホになりそうですな。先ほどは液晶だけでなく目の前も真っ暗になりそうになりましたが、熱中症の前貼り…いや、前触れかも知れませんね。気をつけなければなりません。で、演奏のほうはわりと淡々としたタン麺タッチで進んでいくんですが、後半になるとピーターソン的な盛り上がりを感じさせる場面もあって、概ね良好ではなかったかと思います。

 で、6曲目。このアルバム3つ目のマンス・オリジナルで、「タジーズ・チューン」というチューンです。「タギーズ」かも知れませんが、よくわかりません。で、この人の書く曲というのはパターンが決まってますよね。ゴスペルでノリノリぃ♪…みたいな。ワンパターンと言えかも知れませんが、「自分の世界を確立している。」と評価することも出来ます。人は褒めてやらないと伸びていかないですからね。…と、いつも同じネタで勝負をしている僕は他人のマンネリに関しても寛容なんですが、アドリブに入ってからの失踪感には…って、行方不明になってる場合ではなくて、アドリブに入ってからの疾走感には特筆すべき点がありますな。シングル・トーンがコロコロとフンコロガシのようによく転がっております。ミッキー・ロウカーの老化を感じさせない心地よいバッキングもいいですね。いや、老化といっても、それほどトシはとってなかったと思うんですけどね。ということで7曲目です。「アズレ・テ」(?)は歌物っぽいバラード・ナンバーです。出だし、ちょっぴりパウエルっぽい無伴奏ソロで始まり、…と思ったら一転してマンスっぽいブロック・コードが出てきて、いつもの黒い世界になりかけるんですが、その後は持ち直してピーターソン的なバラード世界が展開されます。途中、ロン・カーターのソロがフィーチャーされますが、出過ぎることのない控え目なピチカートには好感が持てますね。で、その後再び登場するマンスは若干装飾過多気味ではありますが、ま、いいことにしておきましょう。暑くてモノを考えるのが億劫だしー。

 ということで、結局のところ、ここまで書いて野外執筆は挫折してしまいました。いや、マジでまともに物事を考えられるような環境ではありませんでした。今日の原稿が支離滅裂だとすれば、それは劣悪な環境に起因するものですんで、どうか大目に見ろって。(←態度でかい。でも、あそこは小さい…て大きなお世話ですね。あ、もちろん「あそこ」というのは「心」のことです。)で、1曲だけ残ってしまましたが、アルバムの最後を飾るのは「シンプル・ワルツ」という曲です。どういう曲なのかと言うと、シンプルなワルツ。ま、そういったところです。クラーク・テリーの作曲ということでありますが、マンスのオリジナルであると言われてもまったく違和感がないほど、アルバムにしっくりと溶け込んでおります。イントロからロン・カーターが繰り返して弾いているベースのフレーズが独特のムードを醸し出しておりますな。で、マンスの弾きっぷりはいつもどおり好調です。リラックスなムードがアルバムの末尾を飾るにふさわしい佳曲であると、かように思う次第であります。…と有り体なことを書いておいて、今日はこれでおしまい。あ、ちなみに“ジターバク”というのはダンス音楽のひとつである“ジルバ”のことでありました。いったいどこが“花の名前”なんでしょうね?

【総合評価】

 マンスのアルバムに“ハズレ”はありませんね。どれもこれも“ソツ”がありません。ま、どれもこれも似たよーなものと言ってしまえば、それまでなんですけどね。


INDEX
BACK NEXT