NEW ADVANCED JAZZ (SAVOY)

VALDO WILLIAMS (1966/12/20)




【パーソネル】

VALDO WILLIAMS (p) REGGIE JOHNSON (b) STU MARTIN (ds)

【収録曲】

DESERT FOX / BAD MANNERS / MOVE FASTER / THE CONQUEROR

【解説】

 MP3プレイヤーを買いました。いや、MP3は“ザウルス”や“ジョルナダ”でも聴けるんですが、屋外で原稿とかを書きながら聴いていると、どうしても充電池の残り具合が気になっちゃうんですよね。充電池が残り少なくなった状態で音楽を聴くというのは、ガス欠寸前の車を運転している時とか、ご休憩3時間の残り時間が3分を切っちゃった場合と同じように、精神衛生上あまり好ましい状態であるとは言えません。で、インターネットの通販サイトで調べてみたところ、単4電池1本、中国語で言うところの4號電池×1個で20時間は持つという、抜群の持続力を誇る機種がございましたので、とりあえず頼んでみたんですけどね。ボーナスも出たことだしー。で、それが先日、僕の手元に届いたわけでありますが、なかなかコンパクトでよろしいですな。こういうやつなんですが、大きさでいうとポケベルくらいですかね?あ、今のヤングにポケベルと言ってもあまりピンとこないかも知れませんが、ところでMP3というのは何の略なんですかね?マンホールポンプ3号ぃ?…って、たぶん違いますね。で、このMP3プレイヤーには128MBのマルチメディアカードが付いておりました。これでどれくらいの曲が入るんですかね?音楽CDの収録時間は74分くらいで、これがデータ用のCD−ROMだと700MBくらいに相当すると思われますので、単純に計算して10MBあたり約1分と。で、MP3はデータを10倍くらいに圧縮出来るということなので、1MBあたり約1分と考えておけばいいでしょうか。ジャズのアルバムというのは、だいたい36分前後のものが多いような気がしますので、128MBだと3枚くらいは大丈夫ですね。例えばコルトレーンなら『アセンション』『オム』『クル・セ・ママ』の3枚を切手大のマルチメディアカードに入れて持ち歩くことも可能なわけです。むっちゃ迷惑ですけどね、そんなマルチメディアカード。嫌がらせ以外の何物でもないですよね。

 で、音楽CDからMP3のデータを抽出して本体に転送する専用ソフトとUSBケーブルが付いていたんですが、はっきり言って使えません。1分のデータを転送するのに56秒くらいかかるような気がするんですが、気のせいですかね?僕の場合は「MP3 Jet-Audio」というソフトでMP3に変更してから本体に転送するようにしているんですが、そのほうが速いです。だてにジェットを名乗ってるわけじゃねーな。…という感じでありますが、ところで僕はこの“圧縮”という技術が今ひとつよくわからんのですよね。いや、“圧縮”はまだわからんでもないんですが、それを“解凍”すると元に戻るというのがよくわからんです。“解凍”して元に戻るなら、それは“圧縮”ではなくて“冷凍”ではないのか?…と思うわけです。しかも、いちど冷凍したマグロを解凍した冷凍マグロは、冷凍でないマグロに比べると品質が落ちるというのは常識でありまして、そういう問題をデーターの解凍技術はどのようにクリアしているのか?…というのがよくわからんのであります。しかも相手は冷凍よりも強引な手段である“圧縮”ですからね。例えばここに炊き立てのゴハンがあるとしましょう。茶碗一杯分のゴハンです。これを持ち運ぶにあたって、体積を小さくしようと思ったらどうすればいいでしょうか?簡単ですね。ゴハンを圧縮して“おにぎり”にしちゃえばいいわけです。さらに強く押し固めて“押し寿司”にしてやれば体積はさらに小さくなります。そこに〆サバを乗せてバッテラにしちゃうと、サバとその上に乗せる“おぼろ昆布”の分だけ嵩張ることになっちゃいますが、それはともかく、いちど“押し寿司”にしちゃったゴハンはいくら電子レンジで“チン”したところで、もとのゴハンには戻りません。このことは“圧縮”→“解凍”という概念が根本から間違っているということを如実に示しているわけです。だから僕は“圧縮”というのはあくまでも言葉のあやであって、実際には生シイタケの干しシイタケ化といった原理を利用しているんじゃないか?…と睨んでおりまして、ほら、干しシイタケは水に戻すだけて、少なくとも体積に関しては元の生シイタケのレベルまで回復しますもんね。ただ、味は大きく変わっちゃいますけどね。ということで、今日はデータの圧縮技術についてお勉強してみたいと思います。

 えーと、圧縮のアルゴリズムにはLZ法とかHUFFMAN法なんかがあるそうです。 どういうアルゴリズムなのかはよくわかりませんが、例えば

「うりうりがうりうりにきてうりうれず、うりうりかえる、うりうりのこえ」

 という文章があったとしましょう。これを

「うりうりが(0:3)にきて(0:3)ず、(0:3)かえる、(0:3)のこえ」

といった具合に置き換えるのがLZ法なんだそうです。(0:3)のところには0〜3文字目に相当する「うりうり」が入るわけなんですが、これでなんとか6文字くらいは圧縮出来たかな?…という気がしないでもありませんよね。えーと、TEXT文書などの圧縮技術は、そんだけ。これはいわゆる可逆的圧縮でありますな。元に戻そうと思ったら完全に復元することが出来ますので、オンラインソフトの圧縮などによく使われてますよね。LHAとかZIPというのがこの方式ではないかと思います。一方、不可逆的圧縮というのもありまして、可逆的不可逆的可逆的不可逆的可逆的不可逆的…って、何度も続けると言いにくいですね。で、不可逆的圧縮というのはどういうものかというと、完全には元に戻らへんけど、細かいことはかめへんやん。…といった、全面的に関西人的なノリで作られた圧縮技術でありまして、先ほどのゴハンの圧縮の例でいくと“押し寿司”まで持っていっちゃうタイプですね。“押し寿司”というのも発祥は関西の地でありますので、やはりその精神には相通ずるものがあるんでしょう。そんないい加減なことでいいのか?…という気がしないでもないんですが、例えば画像とか音楽なんかのデーターは、ちょっとぐらい元と違っていたところで、それほどたいした問題ではないっ!…と言い切ってしまえば、うやむやのうちに何とかなっちゃうよね。…といった、そういう考え方であるわけです。例えばの話、僕が書いてるジャケ絵なんていうものはオリジナルの再現度という観点からすれば恐らくは60%にも満たないことと思いますが、それでも何となく雰囲気だけ伝わるからエエやん。…みたいな。

 で、MP3です。すけべ動画を一晩かけてダウンロードしたことのある人ならお馴染みかと思いますが、MPEGというフォーマットがありますよね?これは1988年に設立された“Moving Pictures Expert GroupMPEG)”というエキスパートなグループが考え出した規格なんだそうです。で、このMPEGレイヤー3MP3であると。レイヤーというのは何なんですかね?「えいやー」ならわかるんですけどね。例えば今日の5時までに見積書を出せ。…などという無理難題をふっかけられた場合、いや、ただ僕が「ま、いっかぁ。」とか思って今日まで放置していただけの話なんですが、そういう場合には「えいやーで作る。」と業界内では言ったりします。細かいことは一切無視して、勢いだけでこなす仕事のことをこう言います。で、レイヤーというのは例えばCADなどで図面を階層的に重ねるときに使ったりしますよね。いや、細かいことは分かりませんけどね。で、そのMPEGの技術のレイヤー3に属している音声圧縮技術を活用したのがMP3ではないか?…という気がするんですが、もしかしたら全然違うかも知れません。ま、細かいことはどうだっていいです。で、どのようにして最初のデータを10分の1にまで圧縮しているのかというと、どうやら“間引き”というのがポイントになっているようです。例えば、ポール・チェンバースのアルコ・ソロはうっとうしいから、間引いちゃえ!…といった強引な力技まではさすがにやってないようですが、大きな音の陰に隠れて聞こえないような小さな音は、どっせ聞こえないんだしぃ。…とかいって間引かれちゃうそうです。そういう無茶をすれば、どこかにきっとしわ寄せが出てくる気がするんですけどね。干しシイタケだって干して軽くなった分、なんとなくシワっぽくなってますもんね。ま、MP3の場合はCDの10分の1…とはいわないまでも、60%くらいには音質が低下しちゃうことは覚悟しなければなりません。

 それに比べるとアナログ・レコードというのは凄いですね。あんな単純な仕掛けでCDよりもいい音が出せるんですからね。その気になればコンパスの針でも聴けちゃうという懐の深さも立派だと思いますが、ただ、中古レコード屋で「試聴」と称してコンパスの針で聴いたりすると、大変叱られることになると思いますのでヤメといたほうがいいと思います。ラズウェル細木の漫画にそんなネタがありましたけどね。で、レコードといえば“ビクターの犬”というのがありますが、あの人形…というか犬形が、ウチの近くの民家のガレージに放置されております。僕がコドモだった頃から既に存在しておりまして、当時から「年代モノだなぁ。」という感じだったので、かなりのレアものではないか?…と踏んでいるんですが、どんなもんですかね?高く売れるんですかね?その手の情報に詳しい方がおられましたら、是非ともご一報くださいね。場合によっては今夜にでもバターを持ってビクター犬を手なずけに行こうかと思います。…ということで、今日はおしまい。

 ということで、バルド・ウイリアムスです。知ってますか?僕は知りません。名前すら聞いたことありません。先日、名古屋のたわけレコードに行ったらこの人の『ニュー・アドバンスド・ジャズ』というCDが売られておりましたので、「ま、いっかぁ。」と思ってとりあえず買ってみたんですが、でなけりゃ、この人のことは一生知らないまま死んでいくところでした。危ないところでした。で、一通り聴いてみたところ、「この人のことは一生知らないまま死んでいっても別によかったかな?」…という気がしてきたんですが、いや、「知らないほうがよかったのではないか?」という気すらしてきたんですが、ま、世の中、いいことばかりがあるわけじゃないしぃ。…と自分に言い聞かせて諦めるしかないですね。ということで、今日の後半はあっという間に果てちゃう恐れが多分にありますが、何せ相手がよくわからん人でありますので、日本語ライナーからこの人のプロフィールについて書かれた部分を簡単に紹介してみましょう。えーと、バルド・ウイリアムス。生年月日不明。現在確認されている音源はこの『ニュー・アドバンスド・ジャズ』と、チャーリー・パーカーの『モントリオール1953』のみ。で、藤本文昭クンという人がインターネットを通じて入手したというデータによると、ニューヨークのブルックリンに生まれたと言われるウイリアムスは1949年から57年まではカナダのモントリオールで活動していたという記録があると。58年の12月にはレスター・ヤングのバンドに入団するが、翌年3月にはヤングが若くして死んじゃったので、ふたたびフリーランスになると。この頃まではパウエル系のピアノを弾いていたと伝えられるが、63年にドラムのバリー・アルトシュルと共演するあたりからセシル・テイラーに影響を受けた前衛的なプレイに移行していったようだ…とありますが、そうなんすよね。前衛過ぎて、わけわかんないんっすよね。いや、見た目はわりとカワイイんですけどね。睫毛が長いところが“睫毛が長いおじさん@磯野波平の同僚”に似ております。いや、睫毛が長いところが似ているだけですけどね。ということで、とりあえず1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 えー、このアルバムは全部で4曲です。トリオ演奏なのに4曲。この時点で既に間違ってますよね。僕もCDを手にした時点で「何か間違っているんぢゃないか?」という気はしてたんですが、帯のところに「バップ・スピリッツが炸裂!」とかなんとか書いてありましたので、「ま、フリー系じゃなさそうだしー。」とか思って買ってしまったんですよね。その時点で大きな間違いであったわけですが、まずは「デザート・フォックス」という曲ですね。このアルバムに入っている4曲はすべてウイリアムスのオリジナルなんですが、タイトルは「砂漠のキツネ」の意味ですかね?イントロからしてもう“さっぱわや”です。このおっさん、ピアノの弦をハープみたいに直接指で弾いてるんじゃないか?…というような音を出しております。さすがはセシル系ですね。ただ、テーマに入ると事のほかオーソドックスであります。“バップ・スピリッツ”はまるっきり感じられませんが、ごく普通の“新主流派風モード奏法”といった感じです。日本語ライナーを書いている、えーと、誰でしたっけ?藤本文昭クン?…も、冒頭こそ「いかにも」といった感じのおどろおどろしいはじまりだが、テーマに入ってしまえば何のことはない、DドリアンとEbドリアンの典型的なモード・ナンバーである。…と、正しく指摘しております。あ、ちなみに“Ebドリアン”は「海老ドリアン」ではなく、「いー・ふらっと・どりあん」と読んでくださいね。“Abドリアン”ならともかく、「E」をローマ字で「え」と読むのはちょっと無理がありますしね。ところで“Eb”の場合はドリアンじゃなくて、イオニアンではなかったか?…という気もするんですが、僕は楽理には疎いので、よくわかりません。

 で、演奏はテーマがあって、その後、ウイリアムスのソロになります。このあたりの構成もフツーですよね。いや、構成に凝ることがすなわち前衛…ということではないので、これはこれでいいと思います。で、問題のウイリアムスのソロなんですが、ヤンシー・キョロシーが最もワケわかんない状態になっている時に比べても、よっぽど「まとも」ですね。確かに時折パーカッシブになったりする一面もあるんですが、小難しい印象はありません。で、わりと両手を使うタイプですね。タッチ自体は長い睫毛同様、なかなかキュートなところもございます。で、ウイリアムスのソロで大いに盛り上がった後、ベースの無伴奏ソロで大いに盛り下がります。ピチカートなんですが、いやあ、前衛的ですな。これはいけません。続くドラムスのソロもいただけません。世の中にこれほどスインギーでないドラム・ソロがあってもいいんだろうか?…と、聴いているほうが心配になってくるほどでありまして、特に後半などはコドモがバケツをひっくり返して叩いて遊んでいるのと、一体どこがどう違うのか?…と言いたくなるような出来映えであります。前衛しちゃってます。それでもなんとか最後になって、少しはスインギーになってきたかな?…というところでウイリアムスのピアノが入ってきて、テーマに戻って、おしまい。いや、ベースとドラムスのソロさえなければ、ま、それほど酷い演奏というわけでもないかな?…といった気がしないでもないんですが、ま、そんな感じです。

 はい2曲目。「バッド・マナーズ」ですね。悪いトランス(B型)というのもタチの悪いものでありましたが、悪いマナーというのもよくありませんね。

【総合評価】

 


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