MAL−2 (PRESTIGE)

MAL WALDRON (1957/4/19,5/17)

MAL-2


【パーソネル】

BILL HARDMAN (tp) <#1-5> IDREES SULIEMAN (tp) <#6-8>
JACKIE McLEAN (as) (tp) <#1-5> SAHIB SHIHAB (tp) <#6-8>
JOHN COLTRANE (ts) MAL WALDRON (p) JULIAN EUELL (b)
ART TAYLOR (ds) <#1-5> ED THIGPEN (ds) <#6-8>

【収録曲】

POTPOURRI / J.M.'S DREAM DOLL / DON'T EXPLAIN
BLUE CALYPSO / FALLING IN LOVE WITH LOVE
THE WAY LOU LOOK TONIGHT / FROM THIS MOMENT ON
ONE BY ONE

【解説】

 昔、「改札せっと」という玩具(おもちゃ)がありましたよね?あるいは「鉄道せっと」とか「車掌せっと」とか「こども鉄道」などという名前だったかも知れませんが、玩具といってもそれほど高級な玩具ではなく、駄菓子屋さんとかスーパーのお菓子売り場で、申しわけ程度のラムネ菓子やガムと一緒にパッキングさせて売られている類のものでありまして、この手の玩具の中では「銀行せっと」と並ぶ人気商品ではなかったかと思われます。「銀行せっと」というのは「こども銀行券」と書かれたお札や、プラスチック製の限りなく安っぽい硬貨がセットになったものなんですが、僕がコドモ心にも「かっき的だな!」と感心したものに「じぶんでおさつを作るたいぷの銀行せっと」というのがありました。どういうものかというと、お札の大きさ(編集部注:「こども銀行券」の大きさ)に切られた白い紙の束と、ものすごく簡略化された1まんえんさつ、5000えんさつ、1000えんさつ、500えんさつのスタンプがセットになっておりまして、自分で好きなだけお札を印刷出来るというのがコドモ心にも画期的に思えるアイデア商品でありました。あ、今のヤングな人は知らないと思いますが、おじさんが子供だった頃は500円というのは硬貨じゃなくて、お札だったんですよね。1万円札には福沢諭吉じゃなくて聖徳太子が書かれておりました。だから、おじさんが子供だった頃に歴史上の人物でいちばん人気があったのは聖徳太子だったんですが、それはともかく。「自分で好きなだけお札が印刷できる」というのは実に魅力的でしたね。もし付属の紙がなくなったとしても、チラシの裏とかを使えばすむ話でありまして、ただスーパーヤオトクのチラシは紙が黄色かったので、紙幣用としては今ひとつでしたけどね。…って、話題がローカルでした。「その気になれば、1おくえんだって作れちゃうなー。」と、僕の夢は期待に高鳴ったものでありますが、いや実際に「1まんえん」のお札をスタンプで1万枚も作っちゃう子供がいたとしたら、それは「忍耐強い」とか「物事に熱中出来る」といった範疇を超えて、日常生活に於いて、かなり行動に問題のある児童ではないか?…という気がしないでもないんですけどね。

 いっぽう、「改札せっと」のほうは「切符」と「切符切り」がセットになっておりました。今のヤングな人は知らないと思いますが、おじさんが子供だった頃は、鉄道の切符というのはかなり分厚くて硬いものでありました。たとえポケットの中に入れておいたとしてもそんじょそこらでへこたれることのない、かなり根性の座ったものでありました。専門用語では「硬券」と呼ぶのでしょうか、確かにその名に相応しいだけの硬度はありましたよね。そして駅の改札には「改札のおじさん」もしくは「改札のおにいさん」と呼ばれる職業の人がいて、乗客が手渡した切符に「切符切り」と呼ばれる専用の器具でもって、“ぱちん”と切れ目を入れるんですよね。これが何とも粋で鯔背(いなせ)な感じがして、子供達の憧れの的だったんですよね。子供の頃、切符に切れ目を入れることに憧れを抱いた少年達は、長じて人肌に温めたコンニャクに切れ目を入れたりするようにわけですが、それはともかく。改札の切符切りの人達というのは実にカッコよかったですよね。この人たちは乗客がいない時でも常に切符切りの道具をカチャカチャいわせておりまして、これはある意味、暇つぶしという側面もあったんでしょうが、それよりもむしろパフォーマンスとしての要素が強かったかのように思われます。その人なりの独特のリズムというのがあるんですよね。ある人はボサノヴァ風だったり、もしくはスカ風だったり。年配の駅員になるにつれ、しだいに“こぶし回し”が巧みになっていたりして、この音は一日中聞いていても、決して飽きるということがありません。いや、実際に切符切りをカチャカチャいわせる音を一日中飽きずに聞いている少年がいたとしたら、それは「忍耐強い」とか「物事に熱中出来る」といった範疇を超えて、日常生活に於いて、かなり行動に問題のある児童ではないか?…という気がしないでもないんですけどね。

 そして切符切りに憧れた少年は駄菓子屋やスーパーで「改札せっと」を買い求め、オモチャの切符をオモチャの切符切りで“ぱちん”と切っては喜んでおりました。友達のいる子は一人が乗客の役、一人が切符切りの役になって、オモチャの切符を切符切りで“ぱちん”と切っては喜んでおりました。そして必ず、「たかしくんはいつも、きっぷ切りの役ばっかりやるぅ!」というので喧嘩になりました。でも、たかし君は腕力が強いので、「うるさいっ!」と言ってはひろし君の耳たぶをオモチャの切符切りで挟みつけ、そしてひろし君は「たかしくんが、虐めたぁ!」と泣きながら、夕暮れの商店街を走っておうちまで帰るのでありました。友達がいなかった僕はひとりで遊んでましたね。ひとりで切符を取り出しては“ぱちん”と切って、そしてそれを繰り返しておりました。今にして思えば、かなり「さみしい子供」やったんですねぇ。そして今となっては、もうこんな遊びをする少年はおりません。駅の改札が自動化され、切符がぺらぺらの味気ないものに変わってしまったのは、いつ頃のことなんでしょうか?…ということで、次回のこのコーナーでは「自動改札機の登場と世論」というテーマでお届けしようと思うんですが、いや、世論のほうはぜんぜん関係のない話になるかも知れませんけどね。で、ネットで「改札せっと」について調べていたら、前回の「電子ブロック」同様、おじさんのノスタルジーを激しく呼び起こす一品が売られていることが判明しました。ここです。売り切れちゃったみたいですけどね。「券を10枚束ねている“輪ゴム”が劣化にて券の表面に張り付いてる可能性があります。ご了承ください。」という注意書きが時代を感じさせ、涙を誘いますね。そしておじさんはこれを見て、「そういえば最近“ゴム製品”を使う機会がないが、劣化してしやしないか?」と、ふと心配になったのでありました。

 ということで、マル・ウォルドロンです。顔は四角いけどマル。ジャケ絵は似てないけどマル。好きな便器は「おまる」…って、いや本人に直接確かめたわけではないんですけどね。で、マルといえば『レフト・アローン』と日本では相場が決まっておりますが、プレスティッジの『マル−1〜4』の4部作もわりと有名ですよね。で、今回は『マル−2』です。ジャケットがいいですよね。マルの写真のバックに、子供が書いたかのようなとっても適当なピアノのイラストをあしらったデザインが秀逸ですね。僕の場合、絵心があり過ぎるのが災いして、このようにわざとヘタに書くというのは苦手としているんですが、何とか頑張ってヘタに書いてみました。マルの顔のほうもなるべく似ないように努力しました。その結果、中途半端に似てねぇなぁ。…といった感じになってしまいましたが、それはともかく。ではとりあえず1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目は「ポットポウリ」とかいう曲ですね。マルのオリジナルです。ウリ科の植物か何かですかね?…と思って調べてみたら、「1.(部屋に芳香を漂わせる)香りつぼ 2.(文学の)雑集、(音楽の)混成曲」とありました。あ、「POTPOURRI」と書いて「ぽぷり」と読むんですね。そういえば「香りのポプリ」とかいう芳香剤がありましたよね。ちなみにこのアルバムは2つのセッションからなっている(音楽の)混成作品なんですが、1曲目から3曲目まではビル・ハードマン、ジャッキー・マクリーン、ジョン・コルトレーンの3管編成でありますな。で、僕が持っている輸入盤CDにはオマケ曲が2曲入っているんですが、それが3曲目までと同じセッションであるためか4曲目と5曲目のところに入っているんですよね。迷惑な話ですよね。オリジナル・アルバムを何と心得ているんでしょうね?もっともプレスティッジというレーベルは適当にセッションをやらしておいて、後でそれを適当に6曲ずつまとめてアルバムを作ってみたのぉ♪…といった手合いのものが少なくないので、あまりオリジナルの曲順にこだわる必要もないんですけどね。で、1曲目の「ポプリ」は明るく楽しいハード・バップ風のナンバーでありまして、『レフト・アローン』風の陰鬱路線を期待していた向きにはちょっぴり許せないかも知れませんね。僕も演奏が始まった瞬間、「何じゃこれは?」と思ってしまいました。「マルの1曲目は暗い。」という、そういう先入観を持ってましたからね。しかし「マルだって1曲目から明るいこともあるんだぁ。」ということを自分自身に納得させてしまえば、これはこれで悪くない曲ですよね。コルトレーン(だと思う)がリードするメロディにハードマンとマクリーンが絡み、アレンジとしてもけっこう凝っているように思います。で、テーマに続いて飛び出すマクリーンのソロがよろしいですなぁ。ブルーノートのJ・マックも悪くないけど、やっぱりプレスティッジだよねっ。…ということを再認識させられますよね。

 …と、ここまで書いたところで原文ライナーに目を通したところ、そもそもこのCDはオリジナルの曲順をまるっきり無視したものであるということが明らかになりました。オリジナルはA面に「フロム・ジス・モーメント・オン」「ドント・エクスプレイン」「今宵の君は」のスタンダードを持ってきて、B面にオリジナルの「ワン・バイ・ワン」「J.M'sドリーム・ドール」「ポプリ」を配するという構成になっているようです。となってくるとアルバム全体のイメージも変わってくるわけでありますが、今さら取り返しはつきませんのでCDの曲順で話を進めていきたいと思います。怨むんだったら米国のCD会社を怨んでくださいね。で、1曲目の「ポプリ」はマクリーンのソロがいいと。とってもいいと。そのあたりまで話が進んでいたと思うんですが、続くビル・ハードマンのソロも悪くないです。トーンこそ、この人独特の寸詰まり気味のものではありますが、フレージングは流麗です。日本でもこの人の資質は再認識されてしかるべきではないかと思うんですが、ソロ3番手のトレーンもよいですね。この頃のトレーンのプレイはかなりくどいものがあるので好き嫌いが分かれるかとは思いますが、よくも悪くも「いかにもプレスティッジのコルトレーンだなぁ。」といったプレイに終始しております。ソロの最後を飾るマルもとってもマルらしいプレイでマルですね。…と、いかにも適当な解説でお茶を濁しておいてと。

 さ、陰鬱好きのみんな、おまたせ。輸入盤再編CDで2曲目に入っているのは「ジャッキー・マクリーンのドリーム・ドール」でございます。b>ドリーム・ドールというのは無論「南極2号」とはなんの関係もなく、マクリーンの1号妻であるドリーの愛称でありますな。ドリーさんの羊ぃ、羊ぃ、羊ぃ♪…って、それはメリーさんですね。いや、クローン羊はドリーで正解ですけどね。で、曲としてはいかにもマルらしい“ほの暗さ”を感じさせる名バラードでありまして、マクリーンを中心とした3管ハーモニーで切々とテーマが歌い上げられます。いや、このトーンでこのメロディを吹かれると、陰鬱派としてはもうたまりませんね。でもって、ソロの先陣を切るマルのプレイがこれまたよろしいです。ほの暗いです。「黒い情念」しております。英語で言うと、ブラック・ジョーネーンって感じ?…って、今日の僕はとっても適当ですね。続いてコルトレーンのソロとなりますが、彼のバラード・プレイには定評がありますよね。いらんものは、定評に売ろう。…って、そんなローカルなネタは名古屋地区以外では通用しませんね。いや、名古屋地区においても面白くないのは同様でありますが、続くビル・ハードマンのソロも彼は彼なりに健闘しているのではないかと思います。さて、おまたせ。いよいよマクリーンのソロでありますな。正直なところ、悪くはないんだけど、後半はちょっぴり緊張の糸が切れちゃってるぅ?…という気がしないでもないんですが、いいんです。マクリーンがやることなら何だって。

 さ、陰鬱好きのみんな、おまたせ。輸入盤再編CDで3曲目に入っているのはこれまたバラードの「ドント・エクスプレイン」。アレンジがかなり凝ってますね。懲りすぎて、それが災いしてちょっぴり失敗気味ですらありますが、「ぼーん」というベースの音と、時おり聞こえる「じゃーん」というシンバルの音だけをバックに、淡々とテーマが綴られていきます。ちょっぴり失敗気味どころか、完璧に詰めを誤ったような気がしないでもないんですが、それだけにサビの部分になって登場する3管ハーモニーが泣けますなぁ。歌詞でいっても、いちばんの泣かせどころですからね。悪い噂に泣かされて、そして騙されていることを知りました。いい事か悪い事かは別にして、えーと…その先は忘れました。で、ソロ先発はハードマンですね。何となくもたついたような吹きっぷりでありますが、不器用なところも彼の持ち味ですからね。続くコルトレーンはテーマのメロディをところどころに絡ませながら、かなりディープなソロを展開してります。マクリーンとマルはソロでは出番がなくて、テーマに戻って、おしまい。オリジナルの曲順だと、明るい曲の間にきちんとバラードを持ってきていてバランスが取れているんですが、こうして2曲続けられるとちょっとツライですなぁ。何だか極限まで気分が落ち込んでまいりました。

 …と思っていら、ここで一転、極めつけの能天気ナンバーの登場です。CDだけのオマケ曲…というか、マル&トレーン名義の『ザ・ディーラーズ』というアルバムに入っている曲らしいんですが、「ブルー・カリプソ」はロリンズの「セント・トーマス」を思わせる陽気なカリプソ・ナンバーです。「生グソ」ではありません。カリプソです。マンホール・ポンプ業界では生のウンコのことを「生グソ」と称しているわけでありますが、先日、某市民病院の便所のポンプの取替えをやっていた中堅のマンポン技師は、貯留されていたウンコをじっと眺めて、「やっぱり病院のクソやなぁ。。。」と、しみじみつぶやいていたそうであります。見ればわかるんですかね?僕はまだまだ駆け出しなので、とてもじゃないけどその境地までは至っておりませんが、いや、ただ単純に下痢便がたまっていたのかも知れませんけどね。で、「青いカリプソ」なんですが、テーマ部はトリオによって演奏されております。とっても陽気な曲なので、御陽気に3管でお祭り騒ぎ風にやればイイんじゃないか?…という気がしないでもないんですが、マルにはマルなりの考えがあるんでしょう。他人がとやかくいうス試合…って、ハンドヘルドPCの日本語変換はまったくなっておりませんな。しばらく「A-TOK POKET」を入れていたんですが、メモリーを食いすぎるのでやめちゃったんですよね。今日はちょっとワケあって「ドント・エクスプレイン」の途中あたりから“じょるなだ”による執筆なんですが、他人がとやかくいう筋合いではないですよね。…と書きたかったわけでありまして。で、トレーン、ハードマン、マクリーン、マルの順にソロが続くんですが、ここでの聴きものは何と言ってもマクリーンですね。特にカリプソのリズムが途中で4ビートに転じてからの吹きっぷりは、もうパーフェクトに完璧です。かの名盤『4,5&6』でのプレイを髣髴させる出来栄えでありまして、当時の彼は旬のサバのようにアブラがのりきっていたと言えるのではないでしょうか。とにもかくにもCDオマケ曲にしておくのがもったいないような快演ぶりなのでありました。

 「ブルー・カリプソ」がマクリーンを聴くナンバーなら、同じくオマケ曲の「恋に恋して」はビル・ハードマンを聴く曲でありますな。この手の“小プリティ”な曲調は彼のような寸詰まりトーンのトランペッターには最適でありまして、テーマ部からして実にいい感じに仕上がっておりますね。マクリーンの絡み具合もいいです。で、きょうは名古屋のたわけレコードでCDを8枚ほど仕入れてまいりまして、そっちのほうを早く聴いてみたくて原稿なんか書いてる場合ぢゃないっ!…という感じなんですが、いや、買ってきたその日のうちにざっとでも聴いておかないと、そのまま忘れ去られて3年半ほど放置…という事態もあり得ますからね。で、原稿なんか書いてる場合ではないんですが、ハードマンのソロがもう最高っ♪続くマクリーンのソロも最高っ♪その次のコルトレーンも悪くなくて、最後のマルだって悪くないよね。…という程度の解説なら、ものの20秒もあれば書けますので、さて続いては6曲目の「今宵の君は」ですね。ここからが2つめのセッションでありまして、マクリーンの変わりにサヒブ・シハブが入ります。略して“サヒシハ”…って、ただ言いにくいだけですね。聞いてサヒシハ〜、ちょっと言いにくいんだけど〜♪…って、歌いにくいですしね。あ、今日の「汎用ポンプ&送風機の初級講習」なんですが、ぎゃるが1人参加しておりました。わりと今風の感じのギャルで、とても素手でウンコをさわるようには見えなかったんですが、あ、ポンプと言ってもマンポンとは限りませんよね。で、トランペットもビル・ハードマンからアイドリース・シュリーマンに変わります。地味なところではドラマーもアート・テイラーからエド・シグペンに変わります。…って、丁寧にパーソネルを紹介してる場合ではありませんでしたね。

 「今宵の君は」はミディアム・テンポで演奏されております。最初の数小節は普通のノリなんですが、真ん中のところがちょっぴり間伸びした感じになっているところがご愛敬ですね。ソロ先発はサヒシハです。マクリーンと比べられるとちょっとツライところもありますが、アルト、テナー、バリトンのどれを吹かせてもだいじゃぶ。ここではアルト1本に絞っておりますが、ストレートなパーカー・スタイルには好感が持てますね。続いてはアイドリース・シュリーマンです。長ったらしい上にローマ字カナ変換もしにくいので、彼こそが4文字に略さなければならない素材であるわけなんですが、アイ・シュリ。うーん、今ひとつですね。で、シュリーマンは同じ“マン系”ということでビル・ハードマンとも類似したスタイルの持ち主なんですが、シュリーマンのほうがトーンがクリアですかね?ここでもなかなかよいプレイを披露しておりまして、よいと思います。続くトレーンとマルのソロもまあまあです。…って、どうもこの2人に対する解説に愛情がないんじゃないか?…という気がしないでもないんですが、この後には8枚ものCDが控えているし、昨日、一晩かかってダウンロードした“すけべ動画”だって待ってるしー。

 で、7曲目です。「フロム・ジス・モーメント・オン」です。オリジナルではこれがアルバムの冒頭に来ているようなんですが、やはり「マル=陰鬱」という印象を強く持っていた者にとっては、ちょっと違和感を覚えるサウンドかも知れませんね。原文ライナーではアイラ・ギトラーが『マル−1』に収録されていた「バッド・スタディ」という曲との類似性について触れているんじゃないか?…と判断しても、あながち間違いではないんじゃないか?…という気がしないでもない英文が並んでおりますが、どうでもいいけどギトラーって、ウルトラ怪獣に出てきそうな名前ですよね。ウルトラマン・コスモスは主演の俳優が捕まって、打ち切りになっちゃいましたけどね。もともと関東地方では放送コードに引っかかりそうな名前でしたしね。で、ソロはコルトレーン、シハブ、シュリーマン、マルの順です。トレーンとマルのソロがいいですね。シハブとシュリーマンはまずまずです。…と、いつもと違う人のほうを誉めてバランスを取っておいて、いや実際の内容のほうはまともに聴いてるだけの時間がないのでよくわかりません。はい、ラストです。「ワン・バイ・ワン」はマルのオリジナルなんですが、はっきり言ってこれは失敗作でしょう。前衛風を意識し過ぎて、はっきり失敗に終わってます。ヘン過ぎますもんね。原文ライナーでギトラー@ウルトラ怪獣はマルがミンガス・グループで活躍していたことを指摘しておりますが、なるほど、ミンガス的であると言えば確かにそうかも知れませんね。基本は16小節のファンキーなムードもあるブルースなんですが、途中からシュリーマンの吹く「ぱぱっ、ぱぺっ♪」という短いフレーズが無茶苦茶になってまいります。で、そのままシュリーマンのソロへと突入するわけですが、そこでは一転して素晴らしいフレーズを連発しておりまして、演奏自体はまったくもって悪くないんですけどね。続くシハブも達者なソロを聴かせ、3番手のコルトレーンもねちっこいソロを聴かせ、最後のマルは相変わらずの黒い情念ですね。「スイングする」という事からまったく別のところに意義を見いだしているかのような彼のプレイは、いわゆるパウエル派からは一線を画したものとなっております。で、テーマに戻って、おしまい…かと思ったら、途中に短いドラム・ソロがありましたが、すぐにテーマに戻って、おしまい。

【総合評価】

 いや、聴き直してみるまでは今ひとつ印象のよくない作品だったんですが、悪くないじゃないっすかぁ。というか、いいじゃないっすかぁ。ただ、オリジナル盤と大きく曲順を変えてきた輸入盤CDの方針は評価が別れるかと思いますが、ただマクリーンを目当てに聴くのならオマケ曲の出来があまりにも素晴らしいので、絶対にオマケ入りのほうを買うべきです。スーパーのお菓子売場に売っている「改札せっと」と同様、オマケのほうに価値がある作品と言えるかも知れません。ということで、さ、買ってきたCDでも聴こうっと。


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