梅雨ですなぁ。今年の梅雨はわりと性格が素直なようで、今のところ平日に雨が降って週末には晴れるというパターンが続いております。…と思っていたら、今週は土日とも雨模様でありますな。今年の梅雨はわりと性格が素直だと思っていたらそれは大きな間違いでありました。とまあそれはともかく、昨日、スーパーの雑誌コーナー(成人向けにあらず)を眺めていたら『ニュートン』(『乳頭』にあらず)という雑誌が目にとまり、何となく懐かしくなって思わず買ってしまいました。いや、コドモの頃から根っからの科学少年だった僕はこの手の科学雑誌が好きで、よく買ってたんですよね。生涯で2冊ほど。そういえば『ニュートン』に対抗して学研が『ウータン』というのを出したことがありましたよね。根っからの学研好きだった僕はさっそく買い求めたものでありますが、ネーミングのセンスが今ひとつ科学ギャルのハートを射止めるに足らなかったのか、さほどメジャーになることもなく消えちゃいましたけどね。子供心にも「オランウータンみたいで、今ひとつカッコ悪い名前やなぁ。。。」と思いましたもんね。同じく学研が出した『BOMB!(ボム)』というアイドル情報系(?)の雑誌も買ってみたんですが、「パンツの穴」などという、大変けしからん名前のコーナーがあって、当時からピュアで純真だった僕は「けしからんっ!」と思って買うのをやめてしまいました。何だか、学研に裏切られたような思いがしました。あろうことか映画にもなっちゃいましたけどね、「パンツの穴」。菊池桃子のデビュー作ですからね、「パンツの穴」。もう、人生終わったも同然ですよね。
で、学研と言えば最近「電子ブロック」が復活して、ちょっとしたブームになっているそうですね。子供の頃、むちゃくちゃ欲しかったんだけど高くて変えなかった当時の科学少年が科学中年となり、「電子ブロック」くらいは自分で買えるくらいのお小遣いは貰えるようになって、懐かしくて思わず買っちゃうんだそうでありまして。いや、その気持ちはよくわかります。僕もコドモの頃、むちゃくちゃ欲しかったんですよね。天体望遠鏡も欲しかったんですが、 「電子ブロック」も欲しくて欲しくて、でも高くて買えなかったんですよね。仕方がないから自分で作りました。いや、普通のブロックで犬小屋やらなんやら。小学校5年生にもなって、ぼくはいったい何をしているんだろう?…と思うと哀しくて、ちょっぴり泣きました。が、哀しみは人をオトナにするんですよね。その年の冬、ついに僕は憧れの品を手にすることになるんですが、いや、クリスマス・プレゼントに買ってもらっただけの話なんですが、「電子ブロック」は高かったので遠慮して、ちょっぴりリーズナブルな「マイキット」のほうを買って貰いました。その辺の事情はよくわきまえている、とってもよくデケた小学5年生だったんですよね。が、「“マイキット”のほうでエエから、いちばん高いのにするぅ!」とダダをこねて、いちばん高い“マイキット150”というのを買って貰いました。あ、いや、その上に“マイキット180”というのがあったんでしたか。でもそれは1万円を超えておりましたので、その辺の事情はよくわきまえている僕は、遠慮して“150”のほうにしたんですよね。本当に素晴らしい少年であったな。…と、過去を振り返って見て、自分でもそう思いますね。戦前だったら「“マイキット150”で我慢した健気な少年」として修身の教科書に載っていたに違いありません。
“マイキット”というのはどういうものなのかというと、黒いプラスチック製のケースの中に、抵抗やらトランジスタやら押しボタンスイッチやら電池やら豆電球やらスピーカーやらメーターやらICやらが取り付けられた基板のようなものが収納されているんですよね。高い機種になるほど箱が大きくなって、取り付けられている素子の数も多くなって、それだけたくさんの種類の実験が出来るという仕組みになっておりました。“マイキット150”だと150種類もの実験が出来るというわけですね。ケースの大きさでいうと、僕たちが子供の頃に流行っていたハンディーケースくらいでありましたか。ありましたよね、分厚いボール紙のようなもので出来た四角い箱のような入れ物。当時、アレを持って桑名駅前の「パル」へ遊びにいくのがトレンドだったんですが、雨に濡れるとへにゃへにゃになちゃうのがネックでありましたなぁ。所詮は紙製ですからね。ところでアレって本当に「ハンディーケース」という名前でしたかね?ちょっと心配になってまいりましたが、と言うのもですね、先日どこかのコーナーで「付け刃焼き」という言葉を使ったんですが、「この字で合ってたっけ?」と思って辞書で調べてみたんですが、どこにも載ってなかったんですよね。しかたがないので「付け刃焼き」をキーワードに“google”で検索をかけてみたんですが、『塩通』の昔の原稿を含めて全部で3件ほどしかヒットしませんでした。そんなにマイナーな慣用句だっけ?…と不思議に思っていたんですが、会社で前の席に座っているタケムラ君がISOの予備審査の当日になって、あわてて書類を作りながらふと漏らした言葉を耳にして、すべてを悟りました。「付け刃焼き」じゃなくて、「付け焼刃」が正解だったんだねっ!いやあ、全国の皆さんに僕の無知無知ぶりを披露してしまって、とんだ恥さらしでありましたなぁ。。。
で、“マイキット”なんですが、僕が「よく考えたなぁ。。。」とコドモ心にも関心したのは、抵抗とかトランジスタの足のところにスプリングが取り付けられていることなんですよね。そのスプリングに電線を挟み込むことによって、簡単に回路を組んだり、元に戻したりすることが出来るわけでありまして。僕は思うんですが、これを考えた人はきっと、不器用でハンダ付けが苦手だったんじゃないですかね?よくいますよね、プリント基板にハンダでダイオードとかトランジスタを付けようとしても手がビビって、思わず自分の左手にハンダゴテが接触して“予期せぬ根性焼き状態”になっちゃう人。社会人になって、「俺よぉ、こう見えてもよぉ、学生の頃はけっこうワルでさぁ、よく“根性焼き”をやったもんよぉ。」とか自慢げに左手の火傷の跡を見せたりするんですが、何のことはない、小学生の頃にハンダゴテで失敗しただけのことなんですよね。…というような人が、「何とか熱い思いをせずに電子工作をする方法はないものか?」と考えたあげく、苦心の末に生み出したのが“マイキット”だったのではないでしょうか。で、ちょっと調べてみたら“マイキット180”で実験できる回路の一覧が書かれたサイトがありましたので、ちょっと紹介してみましょう。
●基礎的な実験
1 | ランプをつけよう | 30 | リレーをブザーにする |
2 | スイッチのはたらき | 31 | 表示版に1をあらわす |
3 | 押しボタンスイッチ | 32 | 表示版に2をあらわす |
4 | スイッチで切りかえる | 33 | 表示版に3をあらわす |
5 | 抵抗のはたらき | 34 | 表示版に4をあらわす |
6 | メーター式のテスター | 35 | 表示版に5をあらわす |
7 | 食塩電池の実験 | 36 | 表示版に6をあらわす |
8 | 電池のふやしかた1 | 37 | 表示版に7をあらわす |
9 | 電池のふやしかた2 | 38 | 表示版に8をあらわす |
10 | 抵抗のつなぎかた1 | 39 | 表示版に9をあらわす |
11 | 抵抗のつなぎかた2 | 40 | 表示版に0をあらわす |
12 | ボリュームのはたらき | 41 | 表示版に.をあらわす |
13 | コンデンサーのはたらき1 | 42 | 増幅回路の実験 |
14 | コンデンサーのはたらき2 | 43 | 1石式の発振回路 |
15 | コンデンサーのつなぎかた | 44 | 音の変わる発振回路 |
16 | トランスのはたらき | 45 | 光で音が変わる発振回路 |
17 | イヤホンのはたらき | 46 | 電波を出してみよう |
18 | スピーカーのはたらき | 47 | プッシュプル回路の実験 |
19 | マイクのはたらき | 48 | マルチ場イブれーター回路 |
20 | ダイオードのはたらき | 49 | コンデンサーの直列・並列 |
21 | 発光ダイオードのはたらき | 50 | RC時定回路の実験 |
22 | トランジスタのはたらき | 51 | ホイートストーンブリッジ |
23 | CdSのはたらき | 52 | VRを2抵抗とするブリッジ |
24 | サーミスタとは | 53 | サーミスタのブリッジ |
25 | リレーのはたらき | 54 | ACホイートストーンブリッジ |
26 | リレーでLEDを消す | 55 | 電圧を変える回路 |
27 | ついたままになるスイッチ | 56 | 整流回路の実験(1) |
28 | 消えたままになるスイッチ | 57 | 整流回路の実験(2) |
29 | すぐには消えないスイッチ |
●テスター、チェッカーの実験
58 | LED式ダイオード検査器 | 74 | 抵抗値の測定器 |
59 | メーター式ダイオード検査器 | 75 | メーター式水質検査器 |
60 | トランジスタの増幅率測定 | 76 | LED式水質検査器 |
61 | トランジスタ検査器 | 77 | トランジスタ式水質検査器 |
62 | 1.5ボルト用の電圧計 | 78 | かんたんな照度計 |
63 | 10ボルト用の電圧計 | 79 | 感度切りかえ照度計 |
64 | 切りかえ付きの電圧計 | 80 | 高感度の照度計 |
65 | ランプつきの電池検査器 | 81 | 高・低の切りかえ温度計/TD> |
66 | LED式導通テスター | 82 | 2電源方式の温度計 |
67 | デジタル式導通テスター | 83 | 高感度電子温度計 |
68 | 高感度導通テスター | 84 | ダイオードの温度計 |
69 | 低い抵抗をはかる抵抗計 | 85 | 2石式ダイオード温度計 |
70 | 高い抵抗をはかる抵抗計 | 86 | 音の大きさをはかる |
71 | 導体と不導体の検査 | 87 | 高感度音量計(IC式) |
72 | 高感度絶縁計(2石式) | 88 | 電解強度計(2石式) |
73 | 切りかえつき抵抗値測定器 |
●コンピューターの基礎回路
89 | OR回路とは | 96 | トランジスタ式OR回路 |
90 | AND回路とは | 97 | 表示板の1と0の切りかえ |
91 | NAND回路とは | 98 | 表示板の4と7の切りかえ |
92 | NOR回路とは | 99 | ON、OFFを1と0であらわす |
93 | リレー式AND回路 | 100 | トランジスタで1と0を表示 |
94 | リレー式NOR回路 | 101 | 1と0であらわすAND回路 |
95 | トランジスタ式NAND回路 |
●通信機、電信機の実験
102 | LED式モールス練習機 | 109 | スピーカー式の単線電信機 |
103 | メーター式モールス練習機 | 110 | 単線式電話通信機 |
104 | イヤホン式モールス練習機 | 111 | 無線電信機の原理 |
105 | スピーカー式モールス練習機 | 112 | 2石式無線電信機 |
106 | 音と光のモールス練習機 | 113 | 1石式ワイヤレスマイク |
107 | メーター式の単線電信機 | 114 | 2石式ワイヤレスマイク |
108 | LED式の単線電信機 | 115 | IC式ワイヤレスマイク |
●アンプとラジオの実験
116 | 1石アンプ | 124 | 抵抗結合式2石ラジオ |
117 | 2石アンプ | 125 | トランス結合式2石ラジオ |
118 | ICアンプ | 126 | ダイオード検波2石ラジオ |
119 | VUメーターつきアンプ | 127 | レフレックス2石ラジオ |
120 | ダイオード=ラジオ | 128 | ICラジオ |
121 | 1石ラジオ | 129 | メーターつき高級ラジオ |
122 | 再生式1石ラジオ | 130 | 夜は静かになるラジオ |
123 | レフレックス1石ラジオ |
●いろいろな楽しい実験
131 | 高感度リレー | 156 | 湯わかし報知器 |
132 | タッチリレー=スイッチ | 157 | おふとの湯かげん報知器 |
133 | スローなスイッチ | 158 | 寒くなると明かりがつく |
134 | すぐには切れないスイッチ | 159 | 低い温度を音で知らせる |
135 | 1石式タイマー | 160 | リレーとスピーカーのブザー |
136 | 2石式タイマー | 161 | 1石式のブザー |
137 | メーターつき明るさ調節器/TD> | 162 | しばらく鳴るブザー |
138 | だんだん明るくなるLED | 163 | 明かりを感じて鳴るブザー |
139 | LEDの自動点滅 | 164 | 光りをさえぎると鳴るブザー |
140 | インパルス発生器 | 165 | 電子オルガン |
141 | 水質検知器 | 166 | カーボン=オルガン |
142 | 発光式満水報知器 | 167 | 光で鳴らすオルガン |
143 | 音による満水報知器 | 168 | 温度の変化で音が変わる |
144 | 音が変わって水位を報知 | 169 | 電子ねこ |
145 | 水の量を表示板であらわす | 170 | 電子小鳥 |
146 | 水位を0、5、9で示す | 171 | 夜は鳴かない電子小鳥 |
147 | LEDのどろぼう警報機 | 172 | 電子メトロノーム |
148 | 鳴りやまないどろぼう報知器 | 173 | 電子マシンガン |
149 | しばらく鳴るどろぼう報知器 | 174 | オートバイ音発生器 |
150 | 光りを感じるリレー | 175 | 電子睡眠器 |
151 | 感度が変わる感光リレー | 176 | パトカーのサイレン |
152 | 光線銃 | 177 | 自動式パトカーサイレン |
153 | 明るくなると切れるリレー | 178 | 赤ランプのつくパトカー |
154 | 音がするとはたらくリレー | 179 | 消防車サイレン |
155 | サーミスタの温度検知器 | 180 | 変声器 |
ここのサイトのWebマスターの人、すいません。まるまる写させていただきましたが、ちなみに“マイキット150”だと、ここに書かれた実験のうち30個は出来なかったということになりますね。僕がよくデケた小学生だったばかりに我慢を強いられる苦難の日々を送らされていたというのに、同じ頃、金持ちのボンボンはウイスキーボンボンなんぞを口にしながら「電子ねこ」とか「LEDのどろぼう警報機」とか「電子睡眠器」とか「光線銃」などといった楽しそうな実験に明け暮れていたというわけなんですな。なんだか口惜しくて涙が出そうですが、しかし何ですな。「表示版に1をあらわす」「表示版に2をあらわす」「表示版に3をあらわす」「表示版に4をあらわす」「表示版に5をあらわす」「表示版に6をあらわす」「表示版に7をあらわす」「表示版に8をあらわす」「表示版に9をあらわす」「表示版に0をあらわす」「表示版に.をあらわす」…って、ンなもん、「表示版に.と0〜9をあらわす」にしておけば1つの実験で終わりぢゃん?…という気がしないでもないんですが、こうでもしなければ180個分も間が持たなかったんでしょうね。最もマイコンチップを使わずに7セグメントLEDに表示をさせるには、いちいち回路を組み替えなければなかないから、仕方がないといえば確かにそうなんですが、どっせ“マイキット150”には7セグメントLEDなどという気の効いたものは付いてなかったから、どうでもいいんだけどよぉ。…と、昔“マイキット180”を買って貰えなかった中年の心は、過去を思い出しては次第にやさぐれていくのでありました。ところで、48番にある「マルチ場イブれーター回路」というのは何でしょうね?あ、「マルチバイブレーター回路」の間違いですね。ここに挙げられいるのは、今やってみたら間違いなく面白くもなんともないだろうな…と確信出来るものがほとんどなんですが、この実験だけは「ちょっとイイかも?」という気がします。ということで、今日のお話はおしまい。
ということで、フレディ・レッドです。一瞬「誰?」と思った人もいるかも知れませんが、『ザ・コネクション』の人…と言えばわかるのではなかろうかと。ピアノのスタイルとしてはよくわからんところもあるんですが、作編曲の才能に関してはなかなかの逸材であると言えるのではないでしょうか。逸材。えーと…「逸材と骨材」、あるいは「逸材と猥褻罪」というテーマで何か書こうと思ったんですが、特に思いつかなかったので先に進みます。えー、フレディ・レッドは『ザ・コネクション』以外にもう1枚、ブルーノートに『シェイズ・オブ・レッド』という素晴らしいアルバムを残しているんですが、それ以外にもう1枚、未発表の音源が残されているということが明らかになりました。発掘したのは恐らくマイケル・カス食うなでしょうな。彼はブルーノートの倉庫から多くの未発表音源を発掘したことから、マニアの間からは「神の手」と崇められているわけでありますが、あまりにも簡単に見つけてくるものだから、一部の学者からは「捏造ではないか?」とか「たけぞうかも知れない。」とする噂がないわけではありません。昔、僕と同じクラスにいたんですよね、「武蔵」のことを「たけぞう」と読んだヤツが。捏造というのはどういうことかというと、例えばカスクーナが自分でピアノを弾いてラジカセに吹き込んだ演奏を「フレディ・レッドの未発表音源である。」とか言って発表しているのではないか?…といった疑惑なんですが、その真偽のほどは皆さんの耳にお任せすると致しましょう。ということで『レッズ・ブルース』であります。いかにも後付けっぽいタイトルではありますが、日本語ライナーを書いた小川隆夫クン、ここでは「たかお」の「た」を取って、「かお」と呼ばせてもらいますが、かおクンの説によれば『ザ・コネクション』と『シェイズ・オブ・レッド』の売り上げがあまりにも芳しくないので、第3弾の発売は見送られたのではないかということでありました。アルフレッド・ライオンという人は商売というよりミュージシャンの救済、あるいは個人の趣味でアルバムを作ってたようなところがありますからね。で、この『レッズ・ブルース』というアルバムはオクラ入りとなっていたのが不思議なほどの充実した内容となっておりまして、とってもいいとおもうので、1きょくめからきいてみたいとおもいます。
このあるばむはぜんきょくがれっどのおりじなるなんですが、まずは「なう」というきょくですね。あ、「むさし」のことを「たけぞう」とよんじゃったきみにもわかるようにときをつかって、ひらがなばかりでかいてみたんですが、かえって わかりにくいですかね?で、このアルバムはサイドマンがいいですよね。マクリーンは『ザ・コネクション』からのお付き合いだし、ティナ・ブルックスは前作の『シェイズ・オブ・レッド』にも参加しておりました。加えて今回はトランペットのベニー・ベイリーが入って3管編成になっているのが特徴でありまして、で、ベースはチェンバース、ドラムスはサー・ジョン・ゴッドフリーでありますな。サー・ジョン・ゴッドフリーって誰?…と聞かれたら「さぁ?」と答えるしかないわけでありますが、ドラマーだから恐らくタイコを叩く人ではないかと思われます。この人を含めて、なかなか渋いところを揃えてきたな。…という感じですね。で、1曲目の「ナウ」。この人はオリジナルにつける曲名がシンプルで、勝負が早くていいですね。ハード・バピッシュなテーマがいきなり3管のアンサンブルによって演奏される。…と隆夫クンが書いておりますが、確かに「いきなり」ですね。いかにもレッドらしいファンキーさを持ったテーマでありまして、サビの部分の複雑なハーモナイズも彼ならではですね。「ハーモナイズ」というのが何だかソレっぽくていいですね。一度で覚えきれない人は「年寄りは歯が抜けて、歯もないぞ」と語呂合わせで覚えるといいと思いますが、いや、そこまでしてまで暗記するだけの必然性はないんですけどね。ただ言ってみたかっただけです。他にあんまり書くこともないしー。で、ソロ先発はマクリーンなんですが、ここでのJ・マックは隆夫クンも指摘しているとおり、「当時の彼にしては少々アウト君のフレージング」でありますな。冬至の彼は中風除けにカボチャを食べたりしておりましたが、61年初頭のマクリーンと言えばリーダー作で言うと『ブルース肉』の頃ですね。カボチャだけでは体がもたないので肉も食べていたということでしょう。ただ肉の食べすぎは中風は避けられたとしても痛風になる恐れがあるので、注意が必要かと思います。
で、ソロ2番手はデイブ・ベイリーですね。この人はどちらかというと中間派っぽいスタイルの持ち主なんですが、ここではしっかりモダンなアドリブを披露しております。名前のわりにはちっともハードじゃないビル・ハードマン路線に近いですかね?あるいは名前のわりにはちっとも青くないブルー・ミッチェルとか。黒いですもんね、黒人だから。で、その3番手はティナ・ブルックスであります。この人のサウンドはブルーですよね。『トゥルー・ブルー』というアルバムも作っておりますし。フレージングで言うと、結構マクリーンと似てたりもします。“ライオン好みのテナーマン”と誰かが書いておりましたが、これは別に猛獣好きというわけではなく、アルフレッド・ライオンの好みにマッチしたスタイルということでありましょう。濡らす恥部、ライオンと犬、どっちがいい?…というような趣味があったという話は聞いておりません。で、ここでのブルックスはわりとワイルドな拭きっぷり…って、あまり強く拭くと痔が悪化する恐れがありますが、わりとワイルドな吹きっぷりであると思います。で、問題は4番手のレッドなんですよね。この人のスタイルというのは何だか捉えどころがなく、ライナーノート・ライター泣かせなんですが、隆夫クンはさすがにうまいこと書いてますね。コード・ワークから入って、やがてシングル・ノートで構成されたラインに繋げていくが、適度に和音を駆使して変化に富んだプレイを展開する…と。なるほど。ケニー・ドリューのように聴こえるところもあれば、もっと下世話になったりもしますな。で、チェンバースのピチカート・ソロがあって、テーマに戻って、おしまい。いや、何だか久しぶりに演奏を聴きながらまともに解説を書いたような気がします。2曲目は「キュート・ドゥート」という曲ですね。ラテンのリズムに乗せて3管が複雑に絡み合うナンバーでありまして、とってもいいです。心がウキウキしますね。今は雨季ですけどね。いや、雨季というか、ただの梅雨なんですが、イササカ先生の娘は「うきえ」ですよね。高校生にしては少し落ち着き過ぎているんじゃないか?…という意見もあるんですが、その分、波平さんが大人気ないからちょうどバランスが取れているんだと思います。いや、うきえさんが女子高生だったかどうかサダカではないんですが、セーラー服で登場することがありましたよね?「なんちゃって」かも知れませんけどね。で、「キュートなドゥート」のソロ先発はベイリーです。余裕のある吹きっぷりで僕たちを楽しませてくれます。…と、適当なことを書いておいて、ソロ2番手はブルックスですね。この人はいきなり「メリーさんの羊」を吹き始めたりとか、発作的にワケのかわらないフレーズを出しちゃう病癖があるんですが、ここでは無難なセンにまとめておりますね。途中、何度かヤバそうな場面もあるんですが、なんとか最後まで吹き切っております。で、続いて飛び出すマクリーンがなかなか元気でいい感じです。ただ、1コーラスだけでちょっぴり物足りないですね。続くレッドは最初からかなりコードを使っております。ちょっぴりハーマン・フォスターですかね?いや、たんなる思いつきですんで、根拠はありませんが。で、最後に賑やかなテーマに戻って、おしまい。
はい、3曲目です。「古いスパイス」という曲です。モノは何でも腐ると酸っぱくなりますので、「古くて酸っぱいっす」という意味ではないかと思われます。いや、たぶん違うと思いますけどね。ゆったりとしたテンポのキュートなムードのナンバーでありまして、デイブ・ベイリーのミュート・トランペットがノスタルジックな雰囲気をかもしかセンター。いや、湯の山温泉にあるんですよね、カモシカセンター。カモシカしかいなくて、カモシカに何の興味も持ち合わせていない人が行ったとしても、おそらく何にも面白くないとは思いますが、でもだいじゃぶ。近くにはクマ牧場もあります。で、ソロはブルックス→ベイリー→マクリーン→レッドでありますな。面倒なのでまたしても日本語ライナーからの引用でお茶を濁しておきたいと思いますが、ブルックスは余裕綽々、ベイリーのソロがヴェテランの味の聴き物であって、マクリーンはメロディックというよりライン的なプレイで、レッドはややオールド・ファッションドなリズムを用いて、そこに個性的なフレージングを重ねてみせるのがファッション・マッサージ的であると。で、ここでもけっこうコードを使ってますよね。高度なコード・ワークといったところでしょうか?やはり世の中、ポールというのは大きさよりも硬度がポイントではないかと思うんですが、ポール・チェンバースのピチカート・ソロはなかなかの硬派ぶりでありまして、とってもいいと思います。限りなく地味ですけどね。で、3管ハーモニーがなかなかよく出来ているテーマに戻って、おしまい。
4曲目は「ブルース・フォー・ベッツィー」ですね。これは無理です。何が無理なのかというと、おじさんが正確にの曲のタイトルを発音することは、どだい無理な話だと思います。どうしても「ぶるーす・ほー・べっちぃ」と言っていまいます。ま、別にいいんですけどね。おじさんが「べっちぃ」と発音してしまったところで、日常生活において実害が及ぶというわけではないですからね。ただ聴いていてちょっぴりイライラするだけの話で。で、曲としては、ま、ハードバピッシュといったところでしょうかね。アップテンポで、なかなか調子のいいナンバーであります。で、ソロ先発のベイリーがいいですね。隆夫クンも書いているとおり、高音をヒットさせて、なかなか派手なブロウを披露しております。そんだけ。続くブルックスはいきなり「ラブ・フォー・セイル」っぽいフレーズで吹き始めてノッケから破綻しかかっておりますが、その後は何とか立ち直っております。続くマクリーンも出だしこそブルックス同様に失敗気味でありますが、中盤からは持ち直してフレディ・レッドにバトンタッチしております。で、ピアノのスインギーなソロに続いて、あ、とうとう出てしまいましたかぁ、チェンバースの弓弾きがぁ。。。隆夫クンは「チェンバースのアルコ・ソロが聴けるのも嬉しいし…」などと書いておりますが、僕はちっとも嬉しくありません。むしろ迷惑だと思っているんですが、本人が「弓で弾きたいっ!」と言い張る以上、レッドやアルフレッド・ライオンとしても、なすすべがなかったのでありましょう。ま、個人の尊重こそがジャズの真髄だから、しょうがないよね。…と、ゴンズイ(ゴンズイ科の海水魚)も諦めムードでありましたが、5曲目の「サムホエア」はこれまたキュートなムードのナンバーでありますな。ベイリーが効いてますね。彼のほのぼのとしたトーンが何ともいえないソフトモヒカンな雰囲気をかもしか…はもういいですね。ちなみにベッカーで人気のソフトモヒカンでありますが、あれは扁平な日本人の顔には絶対に似合わないと美容院関係者の間では悲観的に受け止められているようであります。モヒカンだけに悲観的。えっと、僕が言いたかったのはそれだけです。
はいラストです。「ラブ・ロスト」は「セロニアス・モンクが書きそうなスロー・ナンバー」だと小川隆夫センセイがおっしゃっておられますが、そっかぁ?それほどモンク的な響きはないような気がしないでもないんですけどね。ま、確かにスローはスローですけどね。で、3管のハモリ具合がいいです。僕はホモは嫌いなんですが、ハモはけっこう好きですからね。感じで書くと「鱧」。山川豊のそっくりさんの芸名でありましたよねぇ、山川鱧(ハモ)。テーマが終わるとテンポが少し速くなってミディアム・スローくらいになるんですが、ここでフィーチャーされるのはデイブ・ベイリーとソニー・レッドのソロであります。マクリーンとブルックスは「ハモリ部」だけの登場ですね。山川鱧は出ません。演歌歌手(しかもパチモン)に出番などありません。…って、そうして音楽のジャンルによって差別するような発言はどうかと思うんですが、ま、所詮はハモだからねぇ。…とサッカー解説の加茂周も言っておりました。野茂は頑張ってますけどね。阪神はこのところさっぱりですね。ようやく本来の調子を取り戻してきたということでしょうか。3ヶ月足らずでしたが、いい夢を見させてもらいました。で、ここではレッドのソロがいいですね。言葉で説明するのは難しいんですが、要するにいい感じです。悪くない感じと言い換えてもいいかもしれません。ということで、このアルバムはおしまい。
【総合評価】
いいですね。悪くないです。