ECLYPSO (ENJA)

TOMMY FLANAGAN (1977/2/4)

ECLYPSO


【パーソネル】

TOMMY FLANAGAN (p) GEORGE MRAZ (b) ELVIN JONES (ds)
【収録曲】

OLEO / DENZIL'S BEST / A BLUE TIME / RELAXIN' AT CAMARILLO
CUP BEARERS / ECLYPSO / CONFIRMATION

【解説】

 僕は今、小田原におります。昨夜は池袋でした。池袋で手羽先をしておりました。いやあ、池袋の手羽先屋さんは予想に反してギャルが多かったですなぁ。名古屋の手羽先屋さんは割とオッサンが多く、手羽先を食べるギャルというのは少数派でございます。手羽先を食べるギャルは「手羽先女」と呼ばれ、「口裂け女」同様、奇異な目で見られる…ような気がしないでもないんですが、あ、今、箱根登山鉄道が発車したところです。箱根登山鉄道というのはもっとローカルなものだと思っていたんですが、ただの小田急線じゃないっすかー。かなり落胆して、血痰吐いて、臥薪嘗胆…といった感じなんですが、いや、箱根登山鉄道がただの小田急線だったくらいで、血の混じった痰を吐いたり、薪の上に座って肝を食べるほどのことでもないですかね?昨日の手羽先屋さんでも砂肝は品切れでしたしね。

 あ、箱根湯元から電車を乗り換えたんですが、こちらはとってもローカルでありました。いや、多分そーなんぢゃないかな?…とは思ってたんですけどね。さっきのは多分、ただの小田急線だったんでしょう。で、箱根登山鉄道というのはスイッチバックで4度ほど進行方向が変わるという、たいへん目まぐるしい乗り物でありました。もしかして、同じところを行ったり来たりして時間を稼いでいるだけなんじゃないか?…という疑念が無きにしもあらずだったんですが、ちゃんと終点に着いたところを見ると、そういう運転方法で正解だったのでありましょう。で、強羅(ごうら)というところでケーブルカーに乗り換えて、発車待ちの時間を利用して原稿でも…と思ったんですが、隣の席にオバサンがやってきて邪魔だったので果たせませんでした。それにしてもオバサンとオッサンばかりですなぁ。。。ま、箱根なんてところは観光地の中でも中高年指数が極めて高いところなので仕方がないんですが、それに比べて昨日の手羽先屋はよかったですなぁ。予約でキープされていた席は、店のいちばん奥の8人掛けテーブルの奥のほうの4席だったんですが、僕の左隣には社会人になってめっきりオトナっぽくなった(…と噂される)ごんあじ嬢が座っておりました。で、8人掛けテーブルの隣の席はギャル3人組でありまして、僕の右隣もギャルでありました。右の前にもギャルがおりました。ただ僕の目の前が鮭師匠で、その隣にかれい技師が座っているというのが唯一にして最大のネックだったんですが、これはまあ、ある意味「必要悪」のようなものですよね。しるこでもスイカでも、ただ甘いだけの味覚が続くと舌が麻痺しちゃうので、それを防ぐために塩を入れたり振りかけたりするわけですが、その塩のようなものだと思って諦めるしかありません。かれい技師鮭師匠を見て感覚を一度“レベル0”まで戻してからごんあじ嬢を見ると、そのプリティさがより引き立つというものでございます。

 で、手羽先屋さんでは手羽先を食べました。ここの手羽先甘口中辛大辛の3タイプがあったので、それぞれ1人前ずつ注文しました。結論から言うと、甘口はただ甘いだけでした。大辛は大きく辛くて、中辛は中ぐらいに辛かったでした。あ、日本語オカシですか?とにかくまあ、ワタクシ的には中辛がいちばん美味しく思われたわけでありますが、すると隣の席のギャル3人も、「中辛のほうがオイシイよね?」という会話を交わして、皆で大きく肯きあっているではありませんかー。僕は思わず、「ね?ね?中辛のほうがオイシイよね?」と同意を求めて仲良くなっちゃおうかと考えたんですが、いや、すんでのところで思いとどまりましたけどね。僕は真摯なまでに紳士なので、そのような軽率な行動は決してとらないわけでありまして。いや、紳士でも風邪をひいたらネオ眞治くらいは飲みますけどね。

 で、池袋で鮭師匠と別れ、新宿に移動して新キャラ・くろだ師匠(←魚名は「黒鯛」ですかねぇ?…と、ごんあじ嬢が言っておりました。)と合流し、鮭…じゃなくて、酒を飲んで、池袋に戻って、12時頃に寝ました。すると翌朝、5時頃に目が覚めたので、とりあえず7時頃にホテルを出て新宿から小田急線の急行に乗って、小田原に着いて、この原稿の最初に戻るわけでありますが、ケーブルカーとバスを乗り継いで大湧谷まで行って黒たまごを買い、そこからバスに乗って小田原まで戻ってまいりました。で、とりあえず静岡までの切符を買って、沼津行きの普通電車を待っておりました。どの車両に乗ろうかなぁ?…と、漫然と考えながらホームを歩いていると、スカートの短い女子高生が一人、ストローでシェイクを飲んでいる姿が目に入ったので、彼女と同じ車両に乗りこむことにしました。残念ながら僕が確保出来た席は彼女から少し離れたところでありまして、4人掛けシートの隣と前の席はオバハン(←それもかなり高齢)でありましたが、ま、それほど激しく怪しまれずにチラチラと盗み見するには、わりといいポジションでありますな。が、残念なことに彼女は3駅くらいで降りていってしまい、ま、おかげで僕はこうして原稿に集中出来るようになったんですが、ふと目をやると、彼女が座っていた席にストローの付いたシェイクの空き容器が。。。僕は今、それをこっそり持って帰ろうかどうか、真剣に悩んでいるところでございます。

 ということでトミー・フラナガンです。いや、オフ会の席で「どのようなJAZZが好きであるか?」という話題になって、いや、ウチって正統派JAZZサイトだから当然そのような話題になるわけなんですが、それに対するごんあじ嬢の答えが「ててもんっ♪」でありました。ああ、ててっと・もんすたー?…って、違います。そんなものはありません。テテ・モントリューですね。じゃ、ケニー・ドリュートミー・フラナガンあたりもイイんじゃないか?…という流れになって、で、鮭師匠がトミフラのオススメ盤として名前を挙げたのが『エクリプソ』『シー・チェンジズ』の2枚でありました。ちなみに“しー・ちぇんじず”というのは、「彼女は変わった。」とか、「夏休みが終わったら突然ケバくなっていた。」といった事ではなく、「大きな変革」を意味する慣用句なんだそうです。「シー」は「彼女」じゃなくて「海」のほうの「シー」なんですね。つまり、海が変わっちゃうくらい大きな変化ということなんだよね。…と、鮭師匠が教養のあるところを披露してくれましたが、ちなみに僕はそのアルバムは持っておりません。が、『エクリプソ』のほうは持ってたような気がするんですよね。トミフラがでかいパイプをくわえているジャケの奴っすよね?確かこれ、数年前のオフ会の席で、誰か(編集部注:おそらくは鮭師匠)から貰ったような気がするんですよね。で、ちらっとデータを見て、「なーんや、70年代モノぢゃん。」とか思って、そのまま押入れの中に放置したような気がするんですよね。これは是非、うちに帰ったら調べてみなければなりません。

 ということで、帰ってきました。調べてみました。ありました。いやあ、昔からなかなかの名盤だと思ってたんですよねぇ、これ。で、改めてデータを見てみると、1977年の録音となっております。これはいけません。僕、生まれてますもんね。僕は基本的に生まれる以前1968年以前)の作品を偏重しておりまして、70年代以降の吹き込みなど、ほとんど門前払いの状態だったんですが、鮭師匠のオススメとなれば、これは外すわけにはまいりません。で、サイドマンはというと、お、エルヴィンが入ってるんですね。そういえば鮭師匠がそのようなことを言っておりました。で、エルヴィンと言えばエルヴィン菅原くんはどうした?…ということと、昔、長崎でジャズの店をやっていて、失敗して夜逃げしたらしいというごんあじ情報が思い出されるわけでありますが、トミフラエルヴィンの組み合わせと言えば、あの『オーバーシーズ』を思い出させますよね。で、ベースはジョージ・ムラーツですね。日本名、情事ムラ通…って、何だか『情事ムラムラ通信♪』という名前の人妻系サイトの略称みたいですが、とにかくまあ、1曲目から聴いてまいりましょう。

 えーと、まず最初にロリンズのナンバーを持ってきましたかぁ。トミフラといえば言わずと知れた『サキコロ』のピアニストですんで、ロリちゃんとのつながりは深いわけですが、まずは「オレオ」でございます。けっこう美味しいですよねぇ、ナビスコのオレオ。僕は少なくともマツ○ガの「しるこサンド」よりはギャルのウケがいいんじゃないか?…という気がするんですが、いや、ギャルのウケは悪くても、お茶うけにはとってもイイんですけどね。で、ここからは後藤誠クンの書いた日本語ライナーに全面的に助けて頂こうと思うんですが、えー、ソニー・ロリンズが書いたリフ・ナンバーで、ここでの演奏は例によってアップ・テンポ…と。そうですね。確かにアップ・テンポであります。これは僕の偏見かも知れませんが、音の鳴り方がいかにも70年代的だなぁ。。。という気がしないでもありません。が、アドリブ・パートに入ると別にそんなこともありませんね。で、全体的にムラ通の超絶的なベース・ワークと、エルヴィンの切れ味鋭いブラッシュ・ワークが光ります。水商売なんかに色気を出さず、一心不乱にタイコを叩いていれば、それでよかったんですけどねぇ。。。ま、ケイコ婦人の謀略だったみたいですけどね。で、肝心のトミフラのピアノはというと、僕が今まで彼に抱いていたイメージからすると、ずいぶんと派手に弾けてます。エルヴィン・マジック炸裂…といったところでしょうかね?で、後半にはちゃんとエルヴィンのソロもフィーチャーされておりまして、まずはめでたしといったところでしょう。

 ということで2曲目です。「デンジルズ・ベスト」という曲なんですが、これは何もデンジル(←豚汁の親戚?)がサイコー!…と言ってるわけではなく、デンジル・ベストという人が書いたからこういう名前になったんだと思います。もちろん、「サイコー!」という意味も掛けてあるんでしょうが、あるいは「デンジルのチョッキ」という意味ですかね?未だにベストのことをチョッキと言いますからねぇ、おじさん。ベルトのことをバンドとか。で、このデンジル・ベストという人は情事・シアリングのクインテットで活躍したドラマーなんだそうですが、「ムーブ」という名曲を残したことでも知られています。で、この「デンジルズ・ベスト」という曲はいかにも日本人好みのブルージーなナンバーでありますなぁ。特にフラナガンの弾くイントロがいかにも彼らしくて、わたくし的には1曲目よりもこういう感じのほうが好きですね。で、テーマはムラーツのピチカートをフィーチャーする形で演奏されます。ここまで技巧的だと、何だかちょっぴり嫌味な感じがしないでもないんですが、世の中には「下手なりの一所懸命さ」ということがありますからね。が、うまいのは確かでありまして、フツーにピアノでテーマを弾くよりは変化があってイイかも知れません。で、テーマに続いて登場するフラナガンのソロがしみじみとblueですね。16進コードだと“#8000ff”なんですが、アタマに“8”を加えた微妙さがポイントですね。…って、普通の人が見ても全然わかりませんけどね。で、中間部ではムラーツのソロも聴け、エルヴィンとトミフラの4バースも聴け、後テーマでは再びムラーツのピチカートが聴け、全体的にはとってもムラムラな1曲でありました。

 はい3曲目。「ア・ブルー・タイム」はあまり聴いたことのない曲でありますが、ダメロンの曲なんだそうです。ちょっぴりスタンダードの「テンダリー」を思わせるようなブルージーなスロー・ナンバーでございます。テーマ部でトミフラはブロック・コードを用いて、2曲目よりも濃厚なblueを聴かせております。今度の16進コードは“#0073ff”なんですが、真ん中を“73”にしたことで、七三分け的な味わいが増したと思います。トミフラというとシングル・トーン主義者という印象が強いんですが、こういうプレイも悪くありませんな。あ、もちろんアドリブはシングル・トーンなんすけどね。で、4曲目はパーカーの「リラクシン・アット・ザ・カマリロ」ですな。“ラバーマン・セッション”で人事不省に陥ったパーカーがカマリロの病院に担ぎ込まれ、そこでリラックスしたという経験を元に作られたナンバーでありますが、どうでもいいけど人事不省って「じんじふせい」って読むんですね。僕は今までずっと「じんじふしょう」だとばかり思っていました。不肖塩サバ、己の無知を深く恥じ入った次第でありますが、強めのピアノ・タッチと的確なウォーキング・ベースがダイナミックなドラミングへと巧く導いている…と後藤誠クンが書いている導入部の処理がなかなかいい感じですね。いや、日本語としては今ひとつ意味不明のような気がしないでもないんですが、あるいは導入部のことではなく、演奏全体の流れのことを言っているのかも知れません。ま、どうだっていいです。賑やかなイントロに続いてシングル・トーンでフラナガンが軽くテーマを提示し、そしてそのままアドリブ・パートへと入ってまいります。エルヴィンの切れ味鋭いブラッシュ・ワークに乗せて、フラナガンがスインギーなソロを披露しております。続いてムラーツとエルヴィンが仲良くソロを取るんですが、ベースとドラムスの出番がかなり多いところに僕は70年代を感じますなぁ。ドラム・ソロの途中でトミフラが出番を間違え、ちょろっとフライングしているのもご愛敬っす。ちなみにこの曲は『オーバーシーズ』でも取り上げられているので、聴き比べてみるとイイかも知れません。

 はい5曲目です。これまたどこかで聴いたことのあるような曲なんですが、「カップ・ベアラーズ」というタイトルであります。作曲したのはトム・マッキントッシュという人なんですが、この人はキットカットを作っているわけではなくて、トロンボーン奏者なんだそうです。けっこう美味しいんですけどね、マッキントッシュのキットカット。ただ、夏場に遠足に持っていくと暑さで表面のチョコがとけちゃうのがネックなんですが、そういう場合は家に持ち帰って冷蔵庫で冷やしてから食べるといいです。一度とけて固まったキットカットはチョコの厚さに濃淡が生まれ、普通に食べるよりも奥の深い味になります。で、ブルー・ミッチェルのリーダー作に『ザ・カップ・ベアラーズ』というのがあるので、あるいはそこに入っていた曲ぅ?…とか思って調べてみたところ、やっぱり入っておりました。2管入りだけにミッチェル版のほうが賑やかな仕上がりなんですが、スイング感ではフラナガンだって負けてはおりません。4分弱のわりと短めの演奏なんですが、エルヴィンのバスドラもバスバス決まって、なかなか印象的なナンバーに仕上がっております。

 ということで、あと2曲です。タイトル曲の「エクリプソ」はフラナガンのオリジナルで、タイトル通りカリプソ風の明るく楽しい系のナンバーでございます。『オーバーシーズ』にも入っているそうですが、僕はどちらかというと『ザ・キャッツ』でコルトレーンやアイドリース・シュリーマンと演ってる演奏のほうの印象が強いですな。ちなみにこの『ザ・キャッツ』というのはプレスティッジお得意のスタジオ・ジャム・セッション風のアルバムなんですが、トミフラの名曲「マイナー・ミシャップ」も入っていて、ハードバップ・ファンにはお薦めでございます。で、エンヤ盤のほうはどうかというとトリオなのに12分24秒というジャム・セッションよりも長い力演でありまして、まさに本アルバムのハイライトと言えるのではないでしょうか。…と、当たり障りのないことを書いておいて、さ、ラストですね。最後のほうはいつも駆け足でありますが、そこはそれ、瀬古俊彦ばりの競技場に入ってからのラストスパートでありまして。よく「瀬古はせこい。」とか言われておりましたが、桑名の出身なので悪口は書けません。で、ラストはパーカーの「コンファーメーション」ですか?確認をとったところ、確かにそうでした。正統派バップ・ピアノといった感じの演奏でありまして、70年代だって、やれば出来るんや!…という当たり前のことを、あらためて再認識させられた思いが致します。ということで、おしまい。

【総合評価】

 70年代モノだって馬鹿にしてはいけないよ。…というのが結論です。いや、僕が勝手に馬鹿にしていただけなんっすけど。


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